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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1341412
審判番号 不服2017-11952  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-09 
確定日 2018-07-03 
事件の表示 特願2014-520050「電子機器、その制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日国際公開、WO2013/183722、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年6月6日(優先権主張2012年6月8日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年12月19日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年3月13日付けで手続補正がされ、平成29年5月22日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年8月9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年3月23日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成30年5月21日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年5月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-5、9-11、13-15に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.本願請求項1-16に係る発明は、以下の引用文献Aに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2008-165735号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1-16に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2002-297293号公報(当審において新たに引用した文献)
2.特開2005-310039号公報(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1-12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」という。)は、平成30年5月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-12は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
ユーザによる接触操作、又は近接操作を検出する入力検出部と、
第1の操作を受け付ける位置を示す第1の画像を表示する、第1の表示領域を含む表示部と、
前記第1の表示領域内に、前記第1の画像を表示する状態である場合に、前記入力検出部が前記第1の表示領域内でフリック操作又はスライド操作を第2の操作として検出した場合、前記第2の操作に基づいて、前記第1の表示領域の表示態様を変更するとともに、第3の操作を受け付ける第2の表示領域に、第2の画像を表示させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記入力検出部が、前記第2の操作として前記フリック操作を検出した場合、前記制御部は、前記フリック操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を移動し、
前記入力検出部が、前記第2の操作として前記スライド操作を検出した場合、前記制御部は、前記スライド操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を縮小して移動することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第2の表示領域は、前記第1の表示領域が縮小されたことによって空白となる領域を含む請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記第3の操作に基づいて、アプリケーションが実行された場合、前記第2の画像を前記アプリケーションに応じた画像に変更する請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、前記入力検出部が、前記第2の操作を検出した後に、前記第1の表示領域内で、所定の操作を検出している場合、前記第2の表示領域に前記第2の画像を表示させる請求項1乃至3のいずれか一に記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、前記所定の操作の検出位置に応じて、所定の範囲内に、前記第1の表示領域を縮小する請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第1の画像は、前記第1の操作を受け付けるソフトウェアキーボードを表す画像である請求項1乃至5のいずれか一に記載の電子機器。
【請求項7】
第1の表示領域を含む表示部を備える電子機器の制御方法であって、
ユーザによる接触操作、又は近接操作を検出する入力検出工程と、
第1の表示領域に、第1の操作を受け付ける位置を示す第1の画像を表示する工程と、
前記第1の表示領域内に、前記第1の画像を表示する状態である場合に、前記第1の表示領域内でフリック操作又はスライド操作を第2の操作として検出した場合、前記第2の操作に基づいて、前記第1の表示領域の表示態様を変更し、
第3の操作を受け付ける第2の表示領域に、第2の画像を表示させる制御工程と、
を含み、
前記制御工程において、
前記第2の操作として前記フリック操作が検出された場合、前記フリック操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を移動し、
前記第2の操作として前記スライド操作が検出された場合、前記スライド操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を縮小して移動することを特徴とする電子機器の制御方法。
【請求項8】
前記制御工程において、前記第3の操作に基づいて、アプリケーションを実行する工程と、前記アプリケーションが実行された場合、前記第2の画像を前記アプリケーションに応じた画像に変更する工程と、を含む請求項7に記載の電子機器の制御方法。
【請求項9】
前記入力検出工程において、前記第2の操作を検出した後に、前記第1の表示領域内で、所定の操作を検出し、前記制御工程は、前記所定の操作が検出されている場合、前記第2の表示領域に前記第2の画像を表示させる請求項7又は8に記載の電子機器の制御方法。
【請求項10】
第1の表示領域を含む表示部を備える電子機器を制御するコンピュータに実行させるプログラムであって、
ユーザによる接触操作、又は近接操作を検出する入力検出処理と、
前記第1の表示領域に、第1の操作を受け付ける位置を示す第1の画像を表示する処理と、
前記第1の表示領域内に、前記第1の画像を表示する状態である場合に、前記第1の表示領域内でフリック操作又はスライド操作を第2の操作として検出した場合、前記第2の操作に基づいて、前記第1の表示領域の表示態様を変更し、
第3の操作を受け付ける第2の表示領域に、第2の画像を表示させる制御処理と、
を実行し、
前記制御処理において、
前記第2の操作として前記フリック操作が検出された場合、前記フリック操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を移動し、
前記第2の操作として前記スライド操作が検出された場合、前記スライド操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を縮小して移動するプログラム。
【請求項11】
前記制御処理において、前記第3の操作に基づいて、アプリケーションを実行する処理と、前記アプリケーションが実行された場合、前記第2の画像を前記アプリケーションに応じた画像に変更する処理と、を実行する請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記入力検出処理において、前記第2の操作を検出した後に、前記第1の表示領域内で、所定の操作を検出し、前記制御処理は、前記所定の操作が検出されている場合、前記第2の表示領域に前記第2の画像を表示させる処理と、を実行する請求項10又は11に記載のプログラム。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
平成30年3月23日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は重要箇所につき、当審にて付与した。以下同様。)

(a)段落【0004】
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように従来の携帯情報端末装置(PDA)では、装置の小型軽量化のためにキーボード入力手段を備えておらず、これを解消するためにタッチパネル上にキーボード画面を表示してペンによりキーボード入力を可能とするものが提案されているものの、表示されるキーボードサイズは限定されており、上記従来のPDAと同様にユーザの意図した場所と異なる場所へ入力されてしまうという問題点があった。
【0005】そこで本発明は、タッチパネル上に表示されるキーボードサイズを可変にし、押しやすくすることを可能とする携帯情報端末装置を提供することを目的とする。」

(b)段落【0008】-【0010】
「【0008】(第1の実施の形態)図1は、本発明の第1の実施形態に係る携帯情報端末装置の構成を示す機能ブロック図である。図1において本発明の携帯情報端末装置は、キーコード判別手段60からの通常のキー、または拡大/縮小キーなどのキー情報を受けてテキスト表示手段20に表示要求を行うと共にキーボード表示手段30に表示開始/終了要求を行うアプリケーション実行手段10と、アプリケーション実行手段10からの表示要求に応じてテキストの表示要求を行うテキスト表示手段20と、アプリケーション実行手段10からの表示開始/終了要求に応じて表示手段20とキー入力手段50に対する設定と、キーコード判別手段の起動/終了を行うキーボード表示手段30と、テキスト表示手段20からの表示要求およびキーボード表示手段30の設定により表示を行う表示手段40と、キーボード表示手段30に設定により表示するサイズ設定がなされるキー入力手段50と、キーボード表示手段30により起動/終了され、キー入力手段50からのキーイベントを受け、キーイベントが通常キー、シフトキー、または拡大/縮小キーのいずれであるかに応じてキーボード表示手段30にシフトキー、拡大/縮小キーなどのキー情報を伝達すると共にアプリケーション実行手段10に対して、通常のキー、または拡大/縮小キーなどのキー情報を伝達するキーコード判別手段60とから構成されている。なお実際には図2に示すように表示手段40は、LCD(液晶表示装置)とLCDドライバから成り、キー入力手段50は、タッチパネルおよびタッチパネルドライバから成り、さらにアプリケーション実行手段10はCPU、FROMおよびRAMを備えるコンピュータにより構成されている。
【0009】図2は、本発明の第1の実施形態に係る携帯情報端末装置のハードウェア構成を示す図であり、図1に示した機能実現手段はこのハードウェア構成により実現される。図2において、本発明の携帯情報端末装置は、CPU100と、各種プログラムを格納するFROM110と、各種データを記憶するRAM120とで装置全体を制御する制御部と、LCD400及びLCDコントローラ410から成る表示部と、タッチパネル500とタッチパネルコントローラ510から成るタッチキー入力部と、入出力を司どる各種I/O700と、相互接続を可能とする接続バス130とから構成されている。
【0010】図3は、本発明の第1の実施形態に係る携帯情報端末装置により実現される状態遷移図である。図3において本発明の携帯情報端末装置は、上段に示すように画面に表示されるキーボードが縮小されている状態から拡大キーを押すことにより、下段に示すように画面に表示されるキーボードが拡大される状態に移行させたり、または、その逆に、下段に示すように画面に表示されているキーボードが拡大される状態から縮小キーを押すことにより、上段に示すように画面に表示されるキーボードが縮小される状態に移行させることができる。なお、拡大/縮小キーは図3に示されるように画面の最左下端に設けられる。」

(c)段落【0012】-【0016】
「【0012】図4は、本発明の第1の実施形態に係る携帯情報端末装置において実現されるキーボードシフト例を示すものである。
【0013】図4(a)は、「英数」キー押下で遷移されるキーボードシフト例であるが、キーボード表示直後は、このシフト状態(アプリケーションから指定がない場合のデフォルト)が表示されるようになっている。
【0014】図4(b)は、「CAPS」キー押下で遷移されるキーボードシフト例であるが、もう一度「CAPS」キーを押すと大文字表示に戻る。
【0015】図4(c)は、「カナ」キー押下で遷移されるキーボードシフト例である。
【0016】図4(d)は、「かな」キー押下で遷移されるキーボードシフト例である。」

(d)段落【0035】-【0037】
「【0035】(第4の実施の形態)図11は、本発明の第4の実施形態に係る携帯情報端末装置により実現される状態遷移図である。図11において本発明の第4の実施形態に係る携帯情報端末装置は、図3に示される第1の実施形態に係るキーボードデータの拡大/縮小に伴って、アプリケーションの編集領域におけるフォーマットを縮小/拡大させると共に拡大/縮小させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを拡大/縮小させるように状態遷移させるものである。なお、第4の実施形態に係る携帯情報端末装置のハードウェア構成および機能ブロック構成は、上記第1の実施形態に係る携帯情報端末装置のハードウェア構成および機能ブロック構成と同様である。
【0036】図11の上段に示すように画面に表示されるキーボードが縮小される状態ではアプリケーションの編集領域のフォーマットを拡大させ且つ拡大させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを縮小させるようにし、この状態から拡大キーを押すことにより、下段に示すように画面に表示されるキーボードが拡大される状態に移行させるとともに、アプリケーションの編集領域のフォーマットを縮小させ且つ縮小させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを拡大させるよう移行させている。この場合、縮小させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを拡大させると編集領域が小さくなるので、横スクロールボタンを設けて、編集領域が小さくなった分を補強するようにしている。下段から上段に移行させる場合も同様であるので説明を省略する。なお、拡大/縮小キーは図11に示されるように画面の最左下端に設けられる。
【0037】このように本発明の第4の実施形態によれば、画面表示されるキーボードサイズの縮小/拡大に合わせて、アプリケーションの編集領域におけるフォーマットを縮小/拡大させると共に拡大/縮小させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを拡大/縮小させるように選択できるので、PDAでキーボード操作する場合にユーザが利用する入力フォーマットに応じてキーボードサイズを選択することができる。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「キーコード判別手段60からの通常のキー、または拡大/縮小キーなどのキー情報を受けてテキスト表示手段20に表示要求を行うと共にキーボード表示手段30に表示開始/終了要求を行うアプリケーション実行手段10と、アプリケーション実行手段10からの表示要求に応じてテキストの表示要求を行うテキスト表示手段20と、アプリケーション実行手段10からの表示開始/終了要求に応じて表示手段20とキー入力手段50に対する設定と、キーコード判別手段の起動/終了を行うキーボード表示手段30と、テキスト表示手段20からの表示要求およびキーボード表示手段30の設定により表示を行う表示手段40と、キーボード表示手段30に設定により表示するサイズ設定がなされるキー入力手段50と、キーボード表示手段30により起動/終了され、キー入力手段50からのキーイベントを受け、キーイベントが通常キー、シフトキー、または拡大/縮小キーのいずれであるかに応じてキーボード表示手段30にシフトキー、拡大/縮小キーなどのキー情報を伝達すると共にアプリケーション実行手段10に対して、通常のキー、または拡大/縮小キーなどのキー情報を伝達するキーコード判別手段60とから構成され、
機能実現手段はハードウェア構成により実現され、
CPU100と、各種プログラムを格納するFROM110と、各種データを記憶するRAM120とで装置全体を制御する制御部と、LCD400及びLCDコントローラ410から成る表示部と、タッチパネル500とタッチパネルコントローラ510から成るタッチキー入力部と、入出力を司どる各種I/O700と、相互接続を可能とする接続バス130とから構成され、
表示手段40は、LCD(液晶表示装置)とLCDドライバから成り、キー入力手段50は、タッチパネルおよびタッチパネルドライバから成り、さらにアプリケーション実行手段10はCPU、FROMおよびRAMを備えるコンピュータにより構成され、
「英数」キー押下で遷移されるキーボードシフト例であるが、キーボード表示直後は、このシフト状態が表示されるようになっており、
上段に示すように画面に表示されるキーボードが縮小されている状態から拡大キーを押すことにより、下段に示すように画面に表示されるキーボードが拡大される状態に移行させたり、または、その逆に、下段に示すように画面に表示されているキーボードが拡大される状態から縮小キーを押すことにより、上段に示すように画面に表示されるキーボードが縮小される状態に移行させることができ、
上段に示すように画面に表示されるキーボードが縮小される状態ではアプリケーションの編集領域のフォーマットを拡大させ且つ拡大させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを縮小させるようにし、この状態から拡大キーを押すことにより、下段に示すように画面に表示されるキーボードが拡大される状態に移行させるとともに、アプリケーションの編集領域のフォーマットを縮小させ且つ縮小させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを拡大させるよう移行させ、
縮小させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを拡大させると編集領域が小さくなるので、横スクロールボタンを設けて、編集領域が小さくなった分を補強するようにし、
下段から上段に移行させる場合も同様である携帯情報端末装置。」

2.引用文献2について
平成30年3月23日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

段落【0053】-【0057】
「【0053】
仮想入力用画面8には、必要最小限の所定のキー、例えば、前の操作の段階に戻すため等のエスケープキー、文字を入力するための文字入力キー、入力した文字を削除するためのバックスペースキー、数字の入力が可能な数字キー、入力等を確定するためのエンターキー、入力文字を変換するためのキャプスロックキー、他のキーと組み合わせて使用され特定の機能を実行させるためのシフトキー、コントロールキー及びオルトキー、スペースを設ける等のためのスペースキー、カーソルの移動を行うためのカーソルキー等が設けられている。
【0054】
仮想入力用画面8の右端部及び下端部には、それぞれスクロールエリア8a、8bが設けられている。スクロールエリア8aは表示画面5の右側に位置されたスクロールバー6と同様に上下に延び、スクロールエリア8bは表示画面5の下側に位置されたスクロールバー7と同様に左右に延びるように形成されている。
【0055】
使用者は、スクロールエリア8a上に指や入力ペンを宛って、宛った指や入力ペンを上下に移動させることにより表示画面5を上下に移動させることができる。また、スクロールエリア8b上に指や入力ペンを宛って、宛った指や入力ペンを左右に移動させることにより表示画面5を左右に移動させることができる。
【0056】
尚、仮想入力用画面8は、上記したように、初期の表示状態においてはディスプレイ3の右下側に表示されるが、指や入力ペンを所定の位置に宛ってドラッグアンドドロップすることにより、ディスプレイ3内の任意の位置に移動することができる。従って、右利きの使用者においては、上記のように、仮想入力用画面8を右下側に位置させた状態で入力操作等を行えばよく、左利きの使用者においては、例えば、仮想入力用画面8を左下に移動して入力操作等を行えばよい(図5参照)。
【0057】
このように仮想入力用画面8はディスプレイ3内において任意の位置に移動可能であるため、使用者の使い勝手の向上を図ることができる。」

当該引用文献2には、仮想入力用画面を指や入力ペンを所定の位置に宛ってドラッグアンドドロップすることにより、ディスプレイ内の任意の位置に移動することができるという技術的事項が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア)引用発明の携帯情報端末装置は、「キー入力手段50」からのキーイベントを受けており、また、「キー入力手段50」は、タッチパネルおよびタッチパネルドライバから成っている。そして、ユーザの操作によりタッチパネルからキーイベントを受けることは明らかであるので、引用発明の「キー入力手段50」は、本願発明1の「ユーザによる接触操作、又は近接操作を検出する入力検出部」に相当する。

イ)引用発明は「英数」キー押下で遷移されるキーボードシフトがキーボード表示さるもので、引用発明の「キー押下」は本願発明1の「第1の操作」に相当する。また、引用発明の「キー押下」を受け付ける位置は「キー」であるので、引用発明の「キー」の位置は本願発明1の「第1の操作を受け付ける位置」に相当する。
引用発明の「キー」を示す画像は「画面に表示されるキーボード」であるので、引用発明の「画面に表示されるキーボード」は、本願発明1の「第1の画像」に相当する。
引用発明の「表示手段40」は、LCD(液晶表示装置)とLCDドライバから成り、キーボード表示手段30の設定により表示を行い、画面にキーボードが表示されているので、引用発明の「表示手段40」は、「画面に表示されるキーボード」を表示する表示領域を有しているといえ、引用発明の「表示手段40」は本願発明1の「第1の表示領域」に相当する表示領域を有しているといえる。
そのため、引用発明の「表示手段40」は、本願発明1の「第1の操作を受け付ける位置を示す第1の画像を表示する、第1の表示領域を含む表示部」に相当する。

ウ)引用発明の「拡大キーを押すこと」と「縮小キーを押すこと」は、「画面に表示されるキーボード」内での操作であるので、本願発明1の「第1の表示領域内で」「第2の操作」に対応する。また、「拡大キーを押す」「縮小キーを押す」時に、「画面に表示されるキーボード」が表示されている状態であるのは明らかであり、引用発明の「画面に表示されるキーボード」が表示されている状態は、本願発明1の「前記第1の表示領域内に、前記第1の画像を表示する状態」に対応する。
引用発明の「画面に表示されるキーボードが縮小される状態に移行させる」ことと「画面に表示されるキーボードが縮小される状態に移行させる」ことは、本願発明1の「第1の表示領域内で」「第2の操作」に相当する「拡大キーを押すこと」と「縮小キーを押すこと」により行われている。そのため、引用発明の「画面に表示されるキーボードが縮小される状態に移行させる」ことと「画面に表示されるキーボードが縮小される状態に移行させる」ことは、本願発明1の「前記第2の操作に基づいて、第1の表示領域の表示態様を変更する」ことに相当する。
よって、引用発明の、「画面に表示されるキーボード」が表示されている状態で、「拡大キーを押すこと」「縮小キーを押すこと」で「画面に表示されるキーボードが縮小される状態に移行させる」「画面に表示されるキーボードが縮小される状態に移行させる」ことは、本願発明1の「前記第1の表示領域内に、前記第1の画像を表示する状態である場合に、前記入力検出部が前記第1の表示領域内で」「第2の操作として検出した場合、前記第2の操作に基づいて、前記第1の表示領域の表示態様を変更する」ことに相当する。

エ)引用発明の「アプリケーションの編集領域のフォーマットを拡大させ且つ拡大させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを縮小させ」た画面の表示と「アプリケーションの編集領域のフォーマットを縮小させ且つ縮小させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを拡大させるよう移行させ、縮小させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを拡大させると編集領域が小さくなるので、横スクロールボタンを設けて、編集領域が小さくなった分を補強」した画面の表示は、キーボードの表示とは別の画像であるので、本願発明1の「第2の画像」に相当する。また、上記の引用発明の画面の表示は、キーボードとは別の表示領域に表示されているといえるので、引用発明の画面の表示は本願発明1の「第2の表示領域」に相当する表示領域に表示されているといえる。
引用発明の「アプリケーション実行手段」は、キーコード判別手段60からの通常のキー、または拡大/縮小キーなどのキー情報を受けてテキスト表示手段20に表示要求を行うと共にキーボード表示手段30に表示開始/終了要求を行っているので、本願発明1の「制御部」に相当する。

オ)引用発明の「携帯情報端末装置」と本願発明1の「電子機器」は、共に電子機器であるという点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
ユーザによる接触操作、又は近接操作を検出する入力検出部と、
第1の操作を受け付ける位置を示す第1の画像を表示する、第1の表示領域を含む表示部と、
前記第1の表示領域内に、前記第1の画像を表示する状態である場合に、前記入力検出部が前記第1の表示領域内で第2の操作として検出した場合、前記第2の操作に基づいて、前記第1の表示領域の表示態様を変更するとともに、第2の表示領域に、第2の画像を表示させる制御部と、
を備えることを特徴とする電子機器。

[相違点1]
本願発明1は、「第3の操作を受け付ける第2の表示領域に、第2の画像を表示させる」ものであるのに対し、引用発明は、第2の表示領域に表示される第2の画像に相当する「アプリケーションの編集領域のフォーマットを拡大させ且つ拡大させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを縮小させ」た画面の表示と、「アプリケーションの編集領域のフォーマットを縮小させ且つ縮小させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを拡大させるよう移行させ、縮小させたフォーマットに対する編集領域での表示フォントを拡大させると編集領域が小さくなるので、横スクロールボタンを設けて、編集領域が小さくなった分を補強」した画面の表示について、編集領域のフォーマットを縮小させた画面の表示は横スクロールボタンによる操作を受け付けるものであるものの、編集領域のフォーマットを拡大させた画面の表示については、何らかの操作を受け付けるかが明らかではない点。

[相違点2]
本願発明1は「入力検出部が前記第1の表示領域内でフリック操作又はスライド操作を第2の操作として検出した場合、前記第2の操作に基づいて、前記第1の表示領域の表示態様を変更」し、「前記入力検出部が、前記第2の操作として前記フリック操作を検出した場合、前記制御部は、前記フリック操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を移動し、前記入力検出部が、前記第2の操作として前記スライド操作を検出した場合、前記制御部は、前記スライド操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を縮小して移動する」ものであるが、引用発明はこのような構成を有していない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本願発明1の「入力検出部が前記第1の表示領域内でフリック操作又はスライド操作を第2の操作として検出した場合、前記第2の操作に基づいて、前記第1の表示領域の表示態様を変更」し、「前記入力検出部が、前記第2の操作として前記フリック操作を検出した場合、前記制御部は、前記フリック操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を移動し、前記入力検出部が、前記第2の操作として前記スライド操作を検出した場合、前記制御部は、前記スライド操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を縮小して移動する」という構成は、上記引用文献1には記載されていない。
また、引用文献2には、仮想入力用画面を指や入力ペンを所定の位置に宛ってドラッグアンドドロップすることにより、ディスプレイ内の任意の位置に単に移動することができる技術が記載されているのみであり、相違点2に係る本願発明1の構成は記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-6について
本願発明2-6も、本願発明1の「入力検出部が前記第1の表示領域内でフリック操作又はスライド操作を第2の操作として検出した場合、前記第2の操作に基づいて、前記第1の表示領域の表示態様を変更」し、「前記入力検出部が、前記第2の操作として前記フリック操作を検出した場合、前記制御部は、前記フリック操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を移動し、前記入力検出部が、前記第2の操作として前記スライド操作を検出した場合、前記制御部は、前記スライド操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を縮小して移動する」ことと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明7-9について
本願発明7は、本願発明1を方法の発明として特定した発明であり、また、本願発明7-9は本願発明1の「入力検出部が前記第1の表示領域内でフリック操作又はスライド操作を第2の操作として検出した場合、前記第2の操作に基づいて、前記第1の表示領域の表示態様を変更」し、「前記入力検出部が、前記第2の操作として前記フリック操作を検出した場合、前記制御部は、前記フリック操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を移動し、前記入力検出部が、前記第2の操作として前記スライド操作を検出した場合、前記制御部は、前記スライド操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を縮小して移動する」ことと同一の構成を備えるものであるから、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明10-12について
本願発明10は、本願発明1をプログラムの発明として特定した発明であり、また、本願発明10-12は本願発明1の「入力検出部が前記第1の表示領域内でフリック操作又はスライド操作を第2の操作として検出した場合、前記第2の操作に基づいて、前記第1の表示領域の表示態様を変更」し、「前記入力検出部が、前記第2の操作として前記フリック操作を検出した場合、前記制御部は、前記フリック操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を移動し、前記入力検出部が、前記第2の操作として前記スライド操作を検出した場合、前記制御部は、前記スライド操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を縮小して移動する」ことと同一の構成を備えるものであるから、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
平成30年5月21日付けの補正により、補正後の請求項1?12は、「入力検出部が前記第1の表示領域内でフリック操作又はスライド操作を第2の操作として検出した場合、前記第2の操作に基づいて、前記第1の表示領域の表示態様を変更」し、「前記入力検出部が、前記第2の操作として前記フリック操作を検出した場合、前記制御部は、前記フリック操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を移動し、前記入力検出部が、前記第2の操作として前記スライド操作を検出した場合、前記制御部は、前記スライド操作の検出位置が移動した方向に、前記第1の表示領域を縮小して移動する」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献Aには記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-12は、当業者であっても、引用文献Aに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-18 
出願番号 特願2014-520050(P2014-520050)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 萩島 豪  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 松田 岳士
安久 司郎
発明の名称 電子機器、その制御方法及びプログラム  
代理人 青木 充  
代理人 ▲高▼橋 幹夫  
代理人 内田 潔人  
代理人 加藤 朝道  

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