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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60K
管理番号 1341416
審判番号 不服2017-13701  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-14 
確定日 2018-07-04 
事件の表示 特願2016-23650「ドライブトレインおよびドライブトレインを駆動する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年8月18日出願公開、特開2016-147662、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年2月10日(パリ条約による優先権主張2015年2月12日、ドイツ連邦共和国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年9月12日付け:拒絶理由通知書
平成28年12月20日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年5月12日付け:拒絶査定
平成29年9月14日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成29年5月12日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし3に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項4ないし9に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>
1.特表2013-523504号公報
2.特開2010-31984号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、平成29年9月14日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
自動車両を駆動するためのドライブトレインであって、
前記自動車両の純粋な機械駆動を可能にする燃焼機関(12)と、
前記燃焼機関(12)から所定間隔をもって配置された、回転数を変える自動車両トランスミッション(16)であって、前記燃焼機関(12)に連結することができる自動車両トランスミッション(16)と、
前記自動車両の純粋な電気駆動を可能にする高電圧電気機械を少なくとも配置可能な大きさを有している設置空間を含み、前記燃焼機関(12)と前記自動車両トランスミッション(16)との間に設定されたリザーブ空間(18)と、
電気的に発生させた補助トルクを前記自動車両トランスミッション(16)に作用させるための、前記リザーブ空間に配置された、前記高電圧電気機械よりも小さい低電圧電気機械(32)と、
を有し、
前記低電圧電気機械(32)に替えて、高電圧電気機械を前記リザーブ空間(18)内に配置することにより、前記自動車両トランスミッション(16)を前記高電圧電気機械だけで、または前記高電圧電気機械と前記燃焼機関(12)との両方で駆動できるように構成され、
前記高電圧電気機械の電圧は、前記低電圧電気機械の電圧よりも高いことを特徴とするドライブトレイン。
【請求項2】
前記低電圧電気機械(32)は、定格動作電圧UがU<60Vであることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項3】
前記リザーブ空間(18)は、前記燃焼機関(12)で発生したトルクのねじり異常を制振するねじり振動ダンパ(22)によって、エンジン側またはトランスミッション側の軸方向において区切られていることを特徴とする、請求項1または2に記載のドライブトレイン。
【請求項4】
前記リザーブ空間(18)は、前記燃焼機関(12)および前記自動車両トランスミッション(16)に取り付けられたクラッチケース(20)によって、半径方向において区切られていることを特徴とする、請求項1?3のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項5】
前記低電圧電気機械(32)は、3相電流機械として具現化されることを特徴とする、請求項1?4のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項6】
3相電流機械として具現化された前記低電圧電気機械(32)に割り当てられたパワーエレクトロニクス装置が、前記リザーブ空間(18)に配置されることを特徴とする、請求項5に記載のドライブトレイン。
【請求項7】
前記低電圧電気機械(32)は自動車両バッテリに電気的に接続されることを特徴とする、請求項1?6のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項8】
前記燃焼機関(12)は、切換え可能な切り離し要素を用いて、前記ドライブトレインから切り離すことができることを特徴とする、請求項1?7のいずれか一項に記載のドライブトレイン。
【請求項9】
請求項1?8のいずれか一項に記載のドライブトレイン(10)を駆動する方法であって、
前記前記低電圧電気機械(32)を、要求出力に応じて、純粋な電気駆動用として使用し、および/または前記燃焼機関(12)の始動用に使用する、方法。」

第4 引用例、引用発明、引用技術
1 引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特表2013-523504号公報(以下「引用例1」という。)には、「自動車用のドライブトレーン」に関して、図面(特に、図1及び2参照。)とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付した。以下同様。)

ア 「【0002】
一方で一次ドライブユニットを、そして他方で電気機械を備えるハイブリッド駆動システムが一般に知られている。一次ドライブユニットは、たいてい、たとえばディーゼルエンジンなどの内燃エンジンに関係する。電気機械は、一方では、制動エネルギーを回収するために、そして他方では、単独で、あるいは一次ドライブユニットからの駆動力に加えて、蓄えられたエネルギーによって自動車を駆動するために、ドライブトレーンにおいて使用される。通常、電気機械は、このために、一次ドライブユニットを介して加えられるパワーのパワー経路と平行に設置される。」

イ 「【0008】
本発明の目的は、上記問題を回避すると共に、一次ドライブユニットおよび電気機械を用いた効果的なハイブリッド化を依然として可能にする自動車用のドライブトレーンを提供することである。」

ウ 「【0010】
本発明に基づく構造は、少なくとも一つのカップリングを備えた起動要素が提供されることを実現する。この起動要素は、一次ドライブユニットとパワーシフトトランスミッションとの間でパワーフロー(その方向はここではドライブケースを表す)中に配置される。今まで、これは従来技術に基づく形態に対応している。電気機械は、今や、本発明に基づいて起動要素とパワーシフトトランスミッションとの間でパワーフロー中に配置される。電気機械は、入力シャフトあるいはパワーシフトトランスミッションのシャフトに接続される。この結果、この場合には停止状態でありかつ特に内燃エンジンとして構成できる一次ドライブユニットを同時作動させることを要さずに、車両は電気機械およびパワーシフトトランスミッションを介して駆動できる。これは、純粋に電気駆動の間は、効率に関して明らかに有利である。パワーシフトトランスミッションの前方の電気機械の上記配置の結果、それは、相対的に狭い速度および/またはトルクレンジを伴って設計でき、この結果、全体スペースが小さくかつ負荷の要求範囲が相対的に小さな、非常にコンパクトでかつ非常に効率のよい電気機械を使用できる。
【0011】
起動/停止動作といった特殊な種類の動作、すなわち、たとえば赤色信号灯での車両の一時的な停止の間の一次ドライブユニットの非作動化に関して、一次ドライブユニットは、このようにして、容易に非作動化することができる。前進動作の再始動は、この場合、一次ドライブユニットを引きずることを要さずに、(少なくとも初期の段階において)専ら電気機械を用いて実施できる。低速通行場所の通過あるいは低速下り坂移動といった低速移動さえ、電気機械のみで実現でき、この結果、内燃エンジンなどの一次駆動ユニットは、停止モードのままでいることができ、したがってエネルギーを必要とせず、しかもエミッションを生じない。再始動は、電気機械のためのエネルギー貯蔵ユニットが空になった場合、あるいは電気機械(単独)によって供給できないパワーあるいはトルクが必要な場合にしか必要とされない。この場合、一次ドライブユニットは再作動させることができる。この構成は、低負荷レンジでの一次ドライブユニットの作動による、排気ガスエミッションおよび騒音エミッションが回避されるか、あるいは、かなりの程度低減される、という明確な利点を提供する。
【0012】
本発明に基づく電気機械の組み込みによるハイブリッド化を伴うドライブトレーンによって、電気機械のサイズの極めて自由な調整が可能となる。これによって、ドライブトレーンをマイクロハイブリッド、マイルドハイブリッドあるいはフルハイブリッドとして構成することが可能となる。」

エ 「【0020】
図1は、たとえば実用車、特に都市交通のための市内バスにおいて使用可能であるドライブトレーン1の原理を示す図である。ドライブトレーン1の一次ドライブユニット2は、この例では、たとえば内燃エンジン、特にディーゼルエンジンとして構成されている。たとえばガスタービン、さまざまなタイプのモーターあるいは機械的回転力を提供する類似の機械の使用といった一次ドライブユニットの代替実施形態は、いつでも可能である。
【0021】
ドライブトレーン1のパワーフローの方向(これは本明細書では駆動部において生じる方向に関して規定されるべきである)において、起動要素3が一次ドライブユニット2に続くが、この起動要素は、少なくとも一つのカップリング、たとえばロックアップクラッチ5、流体式カップリング4.1,4.2,4.3および/または機械的起動クラッチ43を備える。電気機械6がパワーフローの方向に関して起動要素3に接続されているが、これにはパワーシフトトランスミッション7が続く。ここに示すようなドライブトレーン1の主要かつ概略図においては、パワーシフトトランスミッション7のパワーテイクオフ11が、さらなるトランスファーギア8すなわちディファレンシャルを介して、駆動輪9と接続されている。駆動輪9は、ドライブトレーン1を備えた車両を駆動するために使用されるが、この車両は完全には図示されていない。電気機械は、永久磁石同期モーター(PSM)として構成できる。
【0022】
図1に示すような様式でのドライブトレーン1の形態は、図1に示すような様式で、非常に小型かつ非常に効率のよい電気機械6の使用を可能とする。それは、起動要素3とパワーシフトトランスミッション7との間に配置されるので、電気機械6は、単に、その利用可能なトルクあるいは速度レンジの非常に狭い範囲を保証する必要があるだけであり、なぜなら、それに続いて、パワーシフトトランスミッション7を介して駆動輪9に必要な速度あるいはトルクへの個々のトランスミッションが存在するからである。一方、電気機械3は、起動要素3とパワーシフトトランスミッション7との間で、一次ドライブユニット2(この例ではディーゼルエンジンである)の電気機械6からの切り離しを実現でき、この結果、ディーゼルエンジン2が停止している場合には、発電機あるいはモーターとしての電気機械6の作動の結果としてディーゼルエンジン2の任意選択で必要な抵抗によって引きずり損失が生じないように配置される。この形態は、したがって、特にコンパクトな様式で実現でき、しかも、上述したような様式でハイブリッド式ドライブトレーン1の非常に有利かつエネルギー効率のよい使用を可能とする。」

オ 上記エ並びに図1及び2の記載からみて、パワーシフトトランスミッション7は、一次ドライブユニット2から所定間隔をもって配置されることが分かる。また、パワーシフトトランスミッション7が回転数を変えるためのものであることは明らかである。

カ 上記エ並びに図1及び2の記載からみて、電気機械6は、一次ドライブユニット2とパワーシフトトランスミッション7との間に設定された空間に配置されることが分かる。

キ 上記ア、ウ及びエから、電気機械6は、トルクをパワーシフトトランスミッション7に作用させるものであることが分かる。また、電気機械6は永久磁石同期モーター(PSM)であるから、電気機械6が供給するトルクは、電気的に供給するものである。

上記アないしキ並びに図1及び2の記載を総合すると、引用例1には、「ドライブトレーン1」に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「自動車を駆動するためのドライブトレーン1であって、
前記自動車の駆動を可能にする一次ドライブユニット2と、
前記一次ドライブユニット2から所定間隔をもって配置された、回転数を変えるパワーシフトトランスミッション7であって、前記一次ドライブユニット2に接続することができるパワーシフトトランスミッション7と、
前記一次ドライブユニット2と前記パワーシフトトランスミッション7との間に設定された空間と、
電気的に供給するトルクを前記パワーシフトトランスミッション7に作用させるための、前記空間に配置された、電気機械6と、
を有したドライブトレーン1。」

2 引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開2010-31984号公報(以下「引用例2」という。)には、「車両用駆動装置」に関して、図面(特に、図1及び2参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0012】
実施例1の車両用駆動装置を適用した後輪駆動によるハイブリッド車両(車両の一例)の駆動系は、図1に示すように、エンジン1(動力源)と、フライホイール2と、エンジンクラッチ3(クラッチ)と、モータージェネレータ4と、自動変速機5(変速機)と、プロペラシャフト6と、ディファレンシャル7と、左ドライブシャフト8と、右ドライブシャフト9と、左後輪10と、右後輪11と、を備えている。なお、図1中で、12は左前輪であり、13は右前輪である。
【0013】
前記エンジン1は、そのエンジン出力軸14にフライホイール2が設けられ、エンジンクラッチ3を介して変速機入力軸15に連結される。前記エンジンクラッチ3は、制御型の乾式クラッチであり、自動変速機5の油圧コントロールバルブユニット52(油圧制御ユニット)により作り出されたクラッチ制御圧を用い、クラッチ締結(スリップ締結を含む。)とクラッチ解放(スリップ解放を含む。)が制御される。
【0014】
前記モータージェネレータ4は、永久磁石を埋設するとともに前記変速機入力軸15に連結されるロータ4aと、積層板によるステータコアにステータコイルが巻き付けられたステータ4bと、を有する同期型モータージェネレータである。このモータージェネレータ4は、駆動機能と回生機能と発電機能を有する。前記駆動機能は、バッテリ充電容量が確保されている走行時等において、ステータコイルに三相交流の電流を印加することで回転駆動する機能をいう。前記回生機能は、制動時や減速時等において、前記変速機入力軸15に制動トルクを付与することで発生する発電エネルギー分を回生する機能をいう。前記発電機能は、バッテリ充電容量が不足している走行時等において、エンジン1からの駆動力の一部によりロータ4aを回転駆動させることで発電する機能をいう。
【0015】
前記自動変速機5は、例えば、プラネタリギア列と摩擦締結要素を有し、摩擦締結要素の掛け替え変速により複数の前進変速段を得る有段変速機である。この自動変速機5の変速機出力軸16には、プロペラシャフト6とディファレンシャル7が連結され、このディファレンシャル7に、左後輪10を有する左ドライブシャフト8と、右後輪11を有する右ドライブシャフト9が連結されている。
【0016】
そして、ハイブリッド車両は、走行条件やバッテリ容量条件等に応じて、「ハイブリッド車走行モード」、「エンジン車走行モード」、「電気自動車走行モード」等から最適な走行モードを選択する制御が行われる。前記「ハイブリッド車走行モード」は、エンジンクラッチ3を締結し、エンジン1とモータージェネレータ4を動力源として走行するモードをいう。前記「エンジン車走行モード」は、エンジンクラッチ3を締結し、モータージェネレータ4により発電しながらエンジン1のみを動力源として走行するモードをいう。前記「電気自動車走行モード」は、エンジンクラッチ3を解放し、モータージェネレータ4のみを動力源として走行するモードをいう。」

イ 「【0019】
前記エンジンクラッチ3は、エンジン1と自動変速機5の間に連結されるクラッチ&モーターケース61(クラッチケース)に収容された乾式単板クラッチである。このエンジンクラッチ3は、図2に示すように、クラッチカバー31と、プレッシャープレート32と、ダイヤフラムスプリング33と、クラッチディスク34と、トーショナルダンパー35と、を備えている。」

ウ 図1には、モータージェネレータ4が、エンジンクラッチ3等とともにケース内に設置されていることが示されている。また、図2によれば、当該ケースがクラッチ&モーターケース61であることが分かる。そうすると、図1及び2の図示内容からみて、モータージェネレータ4を設置する空間は、クラッチ&モーターケース61内に設けられているといえる。

上記アないしウ並びに図1及び2の記載を総合すると、引用例2には、「車両用駆動装置」に関して、次の技術(以下「引用技術2」という。)が記載されている。

「モータージェネレータ4を設置する空間は、エンジン1および自動変速機5に連結されたクラッチ&モーターケース61内に設けられている車両用駆動装置。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「自動車」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明1における「自動車両」に相当し、以下同様に、「ドライブトレーン1」は「ドライブトレイン」に、「一次ドライブユニット2」は「燃焼機関」に、「パワーシフトトランスミッション7」は「自動車両トランスミッション」に、「接続」は「連結」に、「電気的に供給するトルク」は「電気的に発生させた補助トルク」にそれぞれ相当する。
引用発明における「駆動を可能にする」と本願発明1における「純粋な機械駆動を可能にする」とは、「駆動を可能にする」という限りにおいて共通する。
引用発明における「空間」と本願発明1における「リザーブ空間」とは、「空間」という限りにおいて共通する。
引用発明における「電気機械6」と本願発明1における「低電圧電気機械」とは、「電気機械」という限りにおいて共通する。

したがって、両者は、
「自動車両を駆動するためのドライブトレインであって、
前記自動車両の駆動を可能にする燃焼機関と、
前記燃焼機関から所定間隔をもって配置された、回転数を変える自動車両トランスミッションであって、前記燃焼機関に連結することができる自動車両トランスミッションと、
前記燃焼機関と前記自動車両トランスミッションとの間に設定された空間と、
電気的に発生させた補助トルクを前記自動車両トランスミッションに作用させるための、前記空間に配置された、電気機械と、
を有したドライブトレイン。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明1においては、「燃焼機関(12)」に関して、自動車両の「純粋な機械」駆動を可能にするものであるのに対して、
引用発明においては、「一次ドライブユニット2」に関して、自動車の「駆動を可能」にするものの、「純粋な機械」駆動を可能にするものであるか不明である点。

〔相違点2〕
本願発明1においては、「前記自動車両の純粋な電気駆動を可能にする高電圧電気機械を少なくとも配置可能な大きさを有している設置空間を含」む「リザーブ空間(18)」を有し、「前記リザーブ空間に配置された、前記高電圧電気機械よりも小さい低電圧電気機械(32)」を有するものであって、「前記低電圧電気機械(32)に替えて、高電圧電気機械を前記リザーブ空間(18)内に配置することにより、前記自動車両トランスミッション(16)を前記高電圧電気機械だけで、または前記高電圧電気機械と前記燃焼機関(12)との両方で駆動できるように構成され、前記高電圧電気機械の電圧は、前記低電圧電気機械の電圧よりも高い」のに対し、
引用発明においては、「空間」がどの程度の大きさの設置空間を含むものであるか及び「電気機械6」の大きさ及び電圧が不明であり、また、「電気機械6」に替えて「高電圧電気機械」を空間内に配置することを想定した構成とはされていない点。

(2)判断
事案に鑑み、先ず、上記相違点2について検討すると、本願発明1は、「高電圧電気機械用に設けられたリザーブ空間を低電圧電気機械用に使用することで、コスト効率のよいハイブリッド機能を少なくともある程度まで利用すること」(本願明細書、段落【0010】)を課題とし、当該課題を解決するために、「高電圧電気機械を少なくとも配置可能な大きさを有している設置空間を含」む「リザーブ空間に配置された、前記高電圧電気機械よりも小さい低電圧電気機械(32)」を有する構成とするものである。
他方、引用発明は、「前記空間に配置された、電気機械6」という構成を有するが、引用例1には、「空間」及び「電気機械6」の大きさについての言及はなく、高電圧電気機械用に設けられた相対的に大きい空間を、相対的に小さい低電圧電気機械用に使用するとの技術的課題又は作用効果を開示又は示唆する記載はない。そうすると、引用例1から本願発明1の上記課題を導くことはできないから、上記相違点2に関して、引用発明を、本願発明1のものとする動機付けは見出せない。
なお、引用例1の段落【0012】における「本発明に基づく電気機械の組み込みによるハイブリッド化を伴うドライブトレーンによって、電気機械のサイズの極めて自由な調整が可能となる。これによって、ドライブトレーンをマイクロハイブリッド、マイルドハイブリッドあるいはフルハイブリッドとして構成することが可能となる。」との記載について検討する。
この記載は、電気機械のサイズを自由に調整できることを示すものであるが、電気機械を設置する空間の大きさについて説明するものではない。そうすると、上記記載は、ある電気機械を設置する空間が、それよりも大きな電気機械を設置可能な大きさを有していることを開示又は示唆するものではない。
また、引用技術2も、この点を開示又は示唆するものではないから、引用発明に引用技術2を適用しても、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、引用発明、又は引用発明及び引用技術2に基いて、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

したがって、本願発明1は、上記相違点1を検討するまでもなく、引用発明、又は引用発明及び引用技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2ないし9について
本願発明2ないし9は、本願発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明、又は引用発明及び引用技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 原査定について
1 理由(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし9は、「リザーブ空間(18)」が「前記自動車両の純粋な電気駆動を可能にする高電圧電気機械を少なくとも配置可能な大きさを有している設置空間を含」むものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし9は、いずれも、引用発明及び引用技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-21 
出願番号 特願2016-23650(P2016-23650)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山村 和人  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 水野 治彦
粟倉 裕二
発明の名称 ドライブトレインおよびドライブトレインを駆動する方法  
代理人 岡島 伸行  

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