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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B
管理番号 1341425
審判番号 不服2017-16742  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-10 
確定日 2018-07-03 
事件の表示 特願2016-163265「半田印刷検査装置及び基板製造システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月19日出願公開、特開2017- 15717、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月18日に出願した特願2013-237555号の一部を平成28年8月24日に新たな特許出願としたものであって、平成29年5月24日付けで拒絶理由通知がされ、同年7月18日付けで手続補正がされ、同年9月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年11月10日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年9月4日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1-2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2007-327867号公報
2.特開2005-207918号公報

第3 本願発明
本願の請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成29年7月18日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は、以下のとおりの発明である。

「電極パターン及びパッドが配設されたベース基板に対しレジストを塗布するレジスト塗布工程と、
所定の基板計測装置によって少なくとも前記パッド及びレジストの三次元計測を行う基板計測工程と、
前記パッド上に半田を印刷する半田印刷工程とを経て製造されたプリント基板上の半田の印刷状態を検査する半田印刷検査工程において用いられる半田印刷検査装置であって、
前記半田印刷検査装置は、
前記基板計測工程において得られた前記基板計測装置の計測基準面からの前記パッドの高さ情報、並びに、前記プリント基板上の所定の座標位置における前記レジストに係る前記基板計測装置の計測基準面からの高さ情報及び当該レジストの高さ情報に関連付けて記憶された前記所定の座標位置に係る座標位置情報、又は、前記プリント基板上の所定の座標位置における前記レジストに係る前記パッドからの高さ情報及び当該レジストの高さ情報に関連付けて記憶された前記所定の座標位置に係る座標位置情報を取得する半田印刷前情報取得手段と、
自身の計測基準面からの前記半田の高さ情報、並びに、前記座標位置情報と一致する前記プリント基板上の前記所定の座標位置における前記レジストに係る自身の計測基準面からの高さ情報を取得する半田印刷後情報取得手段と、
前記半田印刷前情報取得手段と前記半田印刷後情報取得手段とにより取得された各種高さ情報を基に、前記パッドに対する前記半田の高さ情報を算出する演算手段と、
前記演算手段により算出された前記パッドに対する前記半田の高さ情報を基に、当該半田の印刷状態の良否を判定する良否判定手段とを備えたことを特徴とする半田印刷検査装置。」

なお、本願発明2-5の概要は、以下のとおりである。
本願発明2-4は、本願発明1を減縮する発明である。
本願発明5は、「電極パターン及びパッドが配設された基板に対しレジストを塗布するレジスト塗布装置と、少なくとも前記パッド及びレジストの三次元計測を行う基板計測装置と、前記パッド上に半田を印刷する半田印刷装置と、前記半田の印刷状態を検査する請求項1乃至4のいずれかに記載の半田印刷検査装置とを備えたことを特徴とする基板製造システム。」の発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図とともに次の事項が記載されている(下線は、当審による。)。

ア 「【0001】
本発明は、電子部品等を表面実装するためのプリント板上にクリーム状はんだが印刷されたときのはんだの形成状態を測定し、検査する印刷はんだ検査装置に関する。特に、プリント板には、はんだが印刷される予定の箇所(以下、「はんだ箇所」と言う。)であるパッド部とそれ以外のはんだが印刷されていないレジスト部があるが、この発明は、実際に印刷されたはんだの高さをパッド部の面からの高さとして測定できる技術に係る。」
イ 「【0003】 そのとき、はんだが印刷されたはんだの高さを基板のどこを基準にして測定するかで、その高さの値が変わる。一般には、基板の一部領域を基準として測定しているのが多い。特許文献1では、はんだ箇所の周辺のレジスト部分の平均高さを求めて、そのレジスト部分の平均高さを基準としてはんだ高さを測定している。特許文献1の技術では、はんだ箇所の周辺のレジスト部分の平均高さを求めるにあたっては、レジスト部分とはんだ箇所との間に隙間があるので、その部分を除いたレジスト部分の平均高さを求めて、これを基準としている。」
ウ 「【0015】
本発明の実施形態を図を用いて説明する。図1は、本発明に係る実施形態の構成を示す機能ブロック図である。図2は、基板に印刷されたはんだの形状を模式的に表した例を示す図である。図3は、印刷はんだされる前の未印刷基板の例を示す図である。図4は、はんだ高さ算出過程での誤差を説明するための図である。
【0016】
図1において、測定手段2は、制御手段9からの指示を受けて、はんだが印刷されていないプリント板1b(以下。未印刷基板1bと言う。)を測定する予備測定モード、及びはんだが印刷されたプリント板1a(以下。基板1aと言う。)を測定する本測定モード、の2つのモードで選択的に測定する。前者は、レイアウトや用途が同一の複数の基板を生産するときに、予め測定して、未印刷基板1bのはんだ箇所であるパッド部の高さ(Hp)とその周辺のレジスト部の高さ(Hr)との差(Hr-Hp)(以下、「オフセット値」と言う。)を求める為のモードであり、例えば、基板1aの生産ロット毎に1枚を測定しておく。後者は、実際の印刷された基板1bを測定して周辺のレジスト部に対するはんだ箇所の高さ(Hh?Hr)を求め、この求めた値と先に求めたオフセット値を基にさらにパッド部の面に対するはんだ高さ(Hh-Hp)を求めるためのモードである。これは、基板1aの枚数毎に測定が行われる。
【0017】
図1において、測定手段2は、制御手段9からの指示を受けて、本測定モードのときは、測定対象とする基板1aのレイアウト情報(外形寸法、はんだ位置)等の情報を受けて、センサ2aを基板1aに対して相対的に移動走査させる移動機構部(不図示)を有し、レイアウトに沿ってはんだ位置における高さ方向の変位を測定する。併せてはんだ位置に対する輝度を測定することもある。予備測定モードの場合は、未印刷基板1bが対象であるが、動作は、基板1aを測定する場合と同様である。
【0018】
図1における測定手段2は、いわば、三角測量によるレーザ変位計の例であって、センサ2aは、基板1に対して移動機構部(不図示)によって走査されながらX軸又はY軸の方向にレーザを照射可能なレーザ光源と、基板1からの反射光を受光する受光手段からなり、特にはんだが印刷されたはんだ箇所の変位、つまりはんだ箇所の高さ(Z軸方向)をその印刷はんだ箇所の位置と対応づけて測定する。そのときはんだ面からは、位置に対応した受光量(輝度)も得られる。レーザ変位計としての詳細の動作説明は省くが、原理としては、同一出願人が出願している特開平3-291512号公報のものがある。
【0019】
オフセット補正手段3は、オフセット算出手段3a、オフセット値記憶手段3b、はんだ高さ算出手段3c、及びモード切換手段3dで構成される。
【0020】
モード切換手段3dは制御手段9からの予備測定モードの指示があったときは、測定手段2の出力をオフセット算出手段3aの入力へ接続し、本測定モードの指示があったときは、測定手段2の出力をはんだ高さ算出手段3cの入力へ接続させる。
【0021】
オフセット算出手段3aは、予備測定モード時に、測定手段2から送られてくる未印刷基板1b(図3を参照)の各パッド部12(印刷はんだ予定箇所)底面のパッド12aの高さHp及びその周辺のレジスト部11の高さを表す測定値を受けている。この測定値は、いわば、未印刷基板1b(基板1aも同じ)のある安定した位置、例えば、端部等を基準とし、その基準とする端部に対する高さ(変位量)である。そして、パッド部12毎に、その周辺のレジスト部11の高さの平均値Hravを算出する。そして、周辺のレジスト部11の平均高さHravからパッド部12の底面のパッド12aの高さHpを差し引いて、オフセット値Hrp=Hrav?Hpを求める。そして、求めたオフセット値Hrpをパッド12aの高さHpを求めたはんだ箇所位置情報(パット部12の中の詳細位置情報)とともに、オフセット値記憶手段3bへ送って、対応させて記憶させる。
【0022】
図3は、図2のはんだが印刷された基板1aに対する未印刷基板1bの図であって、未印刷基板1bの表面はレジストされており、ところどころに、図2のようにはんだ印刷が予定されているパッド部12が凹状に設けられている。
【0023】
オフセット値記憶手段3bは、予備測定モードのときは、制御手段9からの指示でオフセット値Hrpをパッド部12の底面のパッド12aの高さHpを求めたはんだ箇所位置情報と共に記憶し、本測定モード時は、制御手段9からの指示で測定手段が測定しているはんだ箇所の位置情報を受けて、該当する位置におけるオフセット値Hrpをはんだ高さ算出手段3cへ送る。
【0024】
はんだ高さ算出手段3cは、本測定モード時に、モード切換手段3dを介して測定手段2が測定した図2に示すようなパッド部12に印刷されたはんだ箇所の高さHh及びレジスト部11の平均高さHravを受けるとともに、先ず、オフセット値記憶手段3bからそのはんだ箇所の位置に該当するオフセット値Hrpを受けて、下記の計算により、パッド12aからのはんだ高さHhpを算出する。
はんだ高さHhp=Hh?Hrav+オフセット値=Hh?Hrav+Hrav?Hp
=Hh?Hp
【0025】
また、図4(A)に示すように周辺のレジスト部11の一部に盛り上がった異常レジスト部11aがあるような場合は、図4(A)の矢視Aからみた断面図である図4(B)ように本来のオフセット値HrpにΔhに応じた誤差(Δhを周辺のレジスト部11の領域で平均化するので、そのまま誤差にはならない)が出る可能性がある。しかし、上記式からすると次のように計算されるので、周辺のレジスト部11aの高さの誤差の影響をうち消すことができる。
はんだ高さHhp=Hh?(Hrav+Δh誤差)+オフセット値
=Hh?(Hrav+Δh誤差)+(Hrav+Δh誤差)?Hp
=Hh?Hp
【0026】
さらに、周辺のレジスト部11は、検査しようとするはんだ箇所の近くの周辺位置であることが好ましい。離れるとはんだのそり等の影響で誤差がでやすいからである。また、周辺のレジスト部11の高さは、測定しようとするはんだ箇所の最寄りの四方周辺の平均値とすることが望ましい(これは、オフセット算出手段3aが測定手段2が測定した測定値を受けて、四方周辺の予め決めておいた所定範囲に亘って平均化する事により、達成できる。)。周辺のレジスト部11の高さHrのバラツキの影響を防止するため。
【0027】
判定用データ生成手段4は、オフセット補正手段3で補正されたはんだ高さの値(一旦、図示しない記憶手段に記憶しておく。)を受けて、フィルタ、はんだブリッジやはんだパターンエッジ等の繊細パターンを識別する感度を示す数々の所定の画像パラメータ値を基に、測定値を各印刷されたはんだ箇所のはんだ量を表す判定用のデータ、つまり図2に示すように印刷されたはんだの形状を定量な形状値として表すための加工処理をする。なお、基板1の良否を判定するには上記の画像の全てを必要とするとは限らないが、体積、面積、高さ、幅、ずれ、高さムラ、及び/又は欠損の内、少なくともいずれか1つは不可欠である。
【0028】
判定手段5は、この判定用データ生成手段4が出力する判定用形状値(算出した体積、面積、高さ、幅、ずれ、高さムラ、及び/又は欠損)を、図1の制御手段9内の設計情報記憶手段9aに基準データとして記憶している、予め印刷されたはんだ箇所毎に設計された体積、面積、高さ、幅の設計値とを比較し、判定用形状値が、基準データに対して所定の許容範囲に入っていれば良と判定し、範囲外であれば否と判定する。」
エ 「【0029】 また、判定手段5は、判定用データ生成手段4からの実測のはんだ箇所(はんだ位置)に対するはんだの形状値についての良否判定を行うことから、否つまり不良と判定されたはんだ箇所を特定できる。」

したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「測定手段2とオフセット補正手段3と判定用データ生成手段4と判定手段5とを備える印刷はんだ検査装置であって、
測定手段2は、はんだが印刷されていないプリント板1b(未印刷基板1b)を測定する予備測定モード、及びはんだが印刷されたプリント板1aを測定する本測定モード、の2つのモードで選択的に測定するものであり、予備測定モードは、未印刷基板1bのはんだ箇所であるパッド部の高さ(Hp)とその周辺のレジスト部の高さ(Hr)との差(Hr-Hp)(オフセット値)を求める為のモードであり、本測定モードは、はんだが印刷されたプリント板を測定して周辺のレジスト部に対するはんだ箇所の高さ(Hh?Hr)を求め、この求めた値と先に求めたオフセット値を基にさらにパッド部の面に対するはんだ高さ(Hh-Hp)を求めるためのモードであり、
オフセット補正手段3は、オフセット算出手段3a、オフセット値記憶手段3b、はんだ高さ算出手段3c、及びモード切換手段3dで構成され、
モード切換手段3dは制御手段9からの予備測定モードの指示があったときは、測定手段2の出力をオフセット算出手段3aの入力へ接続し、本測定モードの指示があったときは、測定手段2の出力をはんだ高さ算出手段3cの入力へ接続させ、
オフセット算出手段3aは、予備測定モード時に、測定手段2から送られてくる未印刷基板1b(図3を参照)の各パッド部12(印刷はんだ予定箇所)底面のパッド12aの高さHp及びその周辺のレジスト部11の高さを表す測定値を受けて、パッド部12毎に、その周辺のレジスト部11の高さの平均値Hravを算出し、周辺のレジスト部11の平均高さHravからパッド部12の底面のパッド12aの高さHpを差し引いて、オフセット値Hrp=Hrav?Hpを求め、求めたオフセット値Hrpをパッド12aの高さHpを求めたはんだ箇所位置情報とともに、オフセット値記憶手段3bへ送って、対応させて記憶させ、
オフセット値記憶手段3bは、予備測定モードのときは、オフセット値Hrpをパッド部12の底面のパッド12aの高さHpを求めたはんだ箇所位置情報と共に記憶し、本測定モード時は、測定手段が測定しているはんだ箇所の位置情報を受けて、該当する位置におけるオフセット値Hrpをはんだ高さ算出手段3cへ送り、
はんだ高さ算出手段3cは、本測定モード時に、測定手段2が測定した、パッド部12に印刷されたはんだ箇所の高さHh及びレジスト部11の平均高さHravを受けるとともに、オフセット値記憶手段3bからそのはんだ箇所の位置に該当するオフセット値Hrpを受けて、Hh?Hrav+オフセット値の計算により、パッド12aからのはんだ高さHhp=Hh?Hpを算出し、
判定用データ生成手段4は、オフセット補正手段3で補正されたはんだ高さの値を受けて、各印刷されたはんだ箇所のはんだ量を表す判定用のデータの加工処理をし、
判定手段5は、この判定用データ生成手段4が出力する判定用形状値(算出した体積、面積、高さ、幅、ずれ、高さムラ、及び/又は欠損)を、予め印刷されたはんだ箇所毎に設計された体積、面積、高さ、幅の設計値と比較し、判定用形状値が、基準データに対して所定の許容範囲に入っていれば良と判定し、範囲外であれば否と判定する印刷はんだ検査装置。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、引用文献2の【請求項10】等の記載からみて、配線パターン上のレジスト面を基準面とするという技術事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「はんだが印刷されていないプリント板1b(未印刷基板1b)」は、「はんだが印刷される予定の箇所(以下、「はんだ箇所」と言う。)であるパッド部とそれ以外のはんだが印刷されていないレジスト部がある」(引用文献1の段落【0001】参照。)から、本願発明1の「電極パターン及びパッドが配設されたベース基板に対しレジストを塗布するレジスト塗布工程」「を経て製造されたプリント基板」であることは、当業者に明らかである。
イ 引用発明の「予備測定モード」は、「未印刷基板1bのはんだ箇所であるパッド部の高さ(Hp)とその周辺のレジスト部の高さ(Hr)との差(Hr-Hp)(オフセット値)を求める為のモード」であるから、本願発明1の「所定の基板計測装置によって少なくとも前記パッド及びレジストの三次元計測を行う基板計測工程」に相当する。
ウ 引用発明の「印刷はんだ検査装置」は、「はんだが印刷されたプリント板」について「はんだの形状値についての良否判定」(引用文献1の段落【0029】参照。)に用いられるものであるから、本願発明1の「前記パッド上に半田を印刷する半田印刷工程とを経て製造されたプリント基板上の半田の印刷状態を検査する半田印刷検査工程において用いられる半田印刷検査装置」に相当するといえる。
エ 引用発明では、「予備測定モード時」に、「オフセット算出手段3a」により、「測定手段2から送られてくる未印刷基板1bの各パッド部12底面のパッド12aの高さHp及びその周辺のレジスト部11の高さを表す測定値を受けて、パッド部12毎に、その周辺のレジスト部11の高さの平均値Hravを算出し、周辺のレジスト部11の平均高さHravからパッド部12の底面のパッド12aの高さHpを差し引いて、オフセット値Hrp=Hrav?Hpを求め、求めたオフセット値Hrpをパッド12aの高さHpを求めたはんだ箇所位置情報とともに、オフセット値記憶手段3bへ送って、対応させて記憶させ」ている。
引用発明における「予備測定モード時」が本願発明1における「基板計測工程」に相当することは、上記「イ」で述べたとおりであるから、引用発明における「オフセット値記憶手段3b」に記憶された「オフセット値Hrp=Hrav?Hp」は、本願発明1における「前記基板計測工程において得られた前記プリント基板上の前記レジストに係る前記パッドからの高さ情報」に相当するといえる。
オ 引用発明の「はんだ高さ算出手段3c」は、「本測定モード時」に、「オフセット値記憶手段3b」から「オフセット値Hrp」を受けるから、引用発明における「はんだ高さ算出手段3c」が「オフセット値Hrp」を受けることと、本願発明1における「前記基板計測工程において得られた前記基板計測装置の計測基準面からの前記パッドの高さ情報、並びに、前記プリント基板上の所定の座標位置における前記レジストに係る前記基板計測装置の計測基準面からの高さ情報及び当該レジストの高さ情報に関連付けて記憶された前記所定の座標位置に係る座標位置情報、又は、前記プリント基板上の所定の座標位置における前記レジストに係る前記パッドからの高さ情報及び当該レジストの高さ情報に関連付けて記憶された前記所定の座標位置に係る座標位置情報を取得する半田印刷前情報取得手段」とは、上記「エ」を踏まえると、「前記基板計測工程において得られた前記プリント基板上の前記レジストに係る前記パッドからの高さ情報を取得する半田印刷前情報取得手段」の点で共通するといえる。
カ また、引用発明の「はんだ高さ算出手段3c」は、「本測定モード時に、測定手段2が測定した、パッド部12に印刷されたはんだ箇所の高さHh及びレジスト部11の平均高さHravを受ける」ものである。そして、「はんだが印刷されたはんだの高さ」は「一般には、基板の一部領域を基準として測定しているのが多い。」(引用文献1の段落【0003】参照。)ことから、引用発明における「はんだ高さ算出手段3c」が、上記「はんだ箇所の高さHh及びレジスト部11の平均高さHravを受ける」ことと、本願発明1における「自身の計測基準面からの前記半田の高さ情報、並びに、前記座標位置情報と一致する前記プリント基板上の前記所定の座標位置における前記レジストに係る自身の計測基準面からの高さ情報を取得する半田印刷後情報取得手段」とは、「自身の計測基準面からの前記半田の高さ情報、並びに、前記プリント基板上の前記レジストに係る自身の計測基準面からの高さ情報を取得する半田印刷後情報取得手段」の点で共通するといえる。
キ さらに、引用発明の「はんだ高さ算出手段3c」は、「本測定モード時に、(測定手段2が測定した、パッド部12に印刷されたはんだ箇所の高さHh及びレジスト部11の平均高さHravを受けるとともに、オフセット値記憶手段3bからそのはんだ箇所の位置に該当するオフセット値Hrpを受けて、)Hh?Hrav+オフセット値の計算により、パッド12aからのはんだ高さHhp=Hh?Hpを算出」するから、引用発明における「はんだ高さ算出手段3c」が、上記のように「パッド12aからのはんだ高さHhp=Hh?Hpを算出」することが、本願発明1における「前記半田印刷前情報取得手段と前記半田印刷後情報取得手段とにより取得された各種高さ情報を基に、前記パッドに対する前記半田の高さ情報を算出する演算手段」に相当するといえる。
ク 引用発明の「判定手段5」は、「オフセット補正手段3で補正されたはんだ高さの値」を「設計値と比較」して、「はんだの形状値についての良否判定」(引用文献1の段落【0029】参照。)を行うものと認められるから、引用発明は、本願発明1と同様に「前記演算手段により算出された前記パッドに対する前記半田の高さ情報を基に、当該半田の印刷状態の良否を判定する良否判定手段」を備えるものといえる。

以上のことから、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「電極パターン及びパッドが配設されたベース基板に対しレジストを塗布するレジスト塗布工程と、
所定の基板計測装置によって少なくとも前記パッド及びレジストの三次元計測を行う基板計測工程と、
前記パッド上に半田を印刷する半田印刷工程とを経て製造されたプリント基板上の半田の印刷状態を検査する半田印刷検査工程において用いられる半田印刷検査装置であって、
前記半田印刷検査装置は、
前記基板計測工程において得られた前記プリント基板上の前記レジストに係る前記パッドからの高さ情報を取得する半田印刷前情報取得手段と、
自身の計測基準面からの前記半田の高さ情報、並びに、前記プリント基板上の前記レジストに係る自身の計測基準面からの高さ情報を取得する半田印刷後情報取得手段と、
前記半田印刷前情報取得手段と前記半田印刷後情報取得手段とにより取得された各種高さ情報を基に、前記パッドに対する前記半田の高さ情報を算出する演算手段と、
前記演算手段により算出された前記パッドに対する前記半田の高さ情報を基に、当該半田の印刷状態の良否を判定する良否判定手段とを備えた半田印刷検査装置。」

(相違点)
(相違点1) 「半田印刷前情報取得手段」が取得する情報が、本願発明1では、「前記プリント基板上の所定の座標位置における前記レジストに係る前記パッドからの高さ情報及び当該レジストの高さ情報に関連付けて記憶された前記所定の座標位置に係る座標位置情報」であるのに対し、引用発明では、「周辺のレジスト部11の平均高さHravからパッド部12の底面のパッド12aの高さHpを差し引いたオフセット値Hrp=Hrav?Hp」である点。
(相違点2) 「半田印刷後情報取得手段」が取得する「前記プリント基板上の前記レジストに係る自身の計測基準面からの高さ情報」が、本願発明1では、「前記座標位置情報と一致する前記プリント基板上の前記所定の座標位置における前記レジストに係る(自身の計測基準面からの)高さ情報」であるのに対し、引用発明では、「(本測定モード時に、測定手段2が測定した)レジスト部11の平均高さHrav」である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点1及び相違点2について、まとめて判断する。
ア 引用発明では、
(ア)はんだが印刷されていないプリント板1b(未印刷基板1b)について、パッド部の高さ(Hp)と、その周辺のレジスト部11の高さHrを平均した値Hravとの差を「オフセット値」として算出し、
(イ)はんだが印刷されたプリント板1aにおける、はんだの箇所の高さHhと、周辺のレジスト部11の平均高さHravを求め、
(ウ)次の計算式により、パッド12aからのはんだ高さHhpを算出している。
「はんだ高さHhp=Hh?Hrav+オフセット値」

イ しかし、引用発明のように、はんだが印刷されていないプリント板1b(未印刷基板1b)における「オフセット値」の算出の際、及び、はんだの印刷されたプリント板1aにおける周辺のレジスト部11の高さを求める際に、「周辺のレジスト部11の平均高さHrav」を用いると、「印刷されたクリーム半田4がレジスト領域Sにはみ出」(本願明細書の段落【0014】より引用。以下、同様。)した場合に、「半田印刷の前後で、レジスト8の絶対高さの平均値を算出するための計測対象領域が異な」(【0014】)り、「レジスト8の高さは均一ではないため、抽出されたレジスト領域Sの範囲や面積等が異なると、パッド3周辺のレジスト領域Sから得られるレジスト8の絶対高さの平均値は半田印刷の前後で一致しないこととなる」(【0015】)との技術上の問題点のあることは、引用文献1-2に記載も示唆もされておらず、また、本願の原出願時において、周知な事項であるともいえない。
ウ そして、本願発明1は、「パッド12aからのはんだ高さHhp」の「算出」にあたり、引用発明におけるように「周辺のレジスト部11の平均高さHrav」を用いた場合には上記のような問題点が生じることを新たに見出し、これを解決するために、上記相違点1及び相違点2に係る構成(半田印刷の前後で同一座標位置におけるレジストの高さ情報を取得すること)を採用しているのであるから、引用発明において、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明1の構成を採用する動機付けがなく、本願発明1は、当業者といえども、引用文献1-2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2-4について
本願発明2-4は、本願発明1を減縮したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1-2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明5について
本願発明5は、本願発明1-4の半田印刷検査装置を発明特定事項の一つとして備える基板製造システムの発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1-2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
以上のとおりであって、本願発明1-5は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-21 
出願番号 特願2016-163265(P2016-163265)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲うし▼田 真悟  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 清水 稔
中村 説志
発明の名称 半田印刷検査装置及び基板製造システム  
代理人 川口 光男  

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