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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1341427
審判番号 不服2017-5887  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-24 
確定日 2018-07-03 
事件の表示 特願2015-126961「管理装置、管理方法及び管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月24日出願公開、特開2015-232883、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,
平成19年3月23日に出願した特願2007-77763号(以下,「原出願」という。)の一部を,
平成23年6月2日に新たな特許出願とした特願2011-124031号の一部を,
平成24年3月12日に新たな特許出願とした特願2012-54908号の一部を,
平成25年9月25日に新たな特許出願とした特願2013-197645号の一部を,
平成26年9月29日に新たな特許出願とした特願2014-197709号の一部を,
平成27年6月24日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 1月21日 :手続補正書の提出
平成28年 6月13日付け :拒絶理由の通知
平成28年 8月22日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年 1月19日付け :拒絶査定(原査定)
平成29年 4月24日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成30年 3月 2日付け :拒絶理由の通知(当審)
平成30年 5月 2日 :意見書,手続補正書の提出

第2 本願発明
本願請求項1-12に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」という。)は,平成30年5月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
画像形成装置とネットワークを介して接続し,前記画像形成装置を利用するユーザのユーザ認証処理を制御する管理装置であって,
ユーザを識別するユーザ識別情報と,記録媒体を識別する記録媒体識別情報と,を対応付けたユーザ情報を記憶するユーザ情報記憶部と,
ユーザ認証処理において,ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携し,当該ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,前記ユーザ情報記憶部に記憶されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,が指定された設定を受け付ける設定部と,
前記ユーザが前記画像形成装置にログインするときに利用する記録媒体に記録されている記録媒体識別情報を受信する受信手段と,
前記ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき当該ユーザの存在を確認するか否かを,前記設定部により受け付けた前記設定に基づいて判断する判断手段と,
受信した前記記録媒体識別情報に基づくユーザ認証処理を,前記設定に応じて制御する認証制御手段と,を有する管理装置。」

なお,本願発明2-12の概要は以下のとおりである。

本願発明2は,本願発明1に実質的に対応する「ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携してユーザ認証処理を行うか否かの設定について,管理者により選択された設定を受け付ける設定部」を有する「管理装置」の発明である。また,本願発明3-4は,本願発明1または本願発明2を減縮した発明である。

本願発明5は,本願発明1に対応する「管理方法」の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

本願発明6は,本願発明2に対応する「管理方法」の発明であり,本願発明2とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。また,本願発明7-8は,本願発明5または本願発明6を減縮した発明である。

本願発明9は,本願発明1に対応する「管理プログラム」の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

本願発明10は,本願発明2に対応する「管理プログラム」の発明であり,本願発明2とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。また,本願発明11-12は,本願発明9または本願発明10を減縮した発明である。

第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2003-330686号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

A 「【0039】(2)印刷制限サーバ
(A)ログインによるユーザ認証
図3は,印刷制限サーバ10におけるログインによるユーザ認証手続きの処理手順を示すフローチャートである。クライアントPC30からログインによる認証問い合せを受信する(ステップS1)。先ず,図4に示す印刷情報テーブル15を参照して,既に,同一ユーザからログインが行われたかをログインユーザ名とそのパスワードが登録されているかで調べ,登録されていない場合には,認証サーバ20へ当該ユーザが印刷装置を使用する権限を有するかを問い合わせる(ステップS2)。一方,すでに印刷情報テーブル15に登録されていれば,ステップS5から実行する。
【0040】要求元のユーザが認証サーバ20に登録されていなければ(ステップS3のNO),印刷不許可を要求元のクライアントPC30へ通知し(ステップS7),次のクライアントPCからの送信を待つためにステップS1へ戻る。一方,要求元のユーザが認証サーバ20に登録されていれば(ステップS3のYES),認証サーバ20から返信された当該ユーザの認証情報(ログインユーザ名,パスワード)および印刷枚数情報等(印刷結果枚数,印刷上限枚数,ログイン中の他の印刷制限サーバのリスト)を印刷情報テーブル15へ格納し,ログインカウンタを1つ進めて更新する(ステップS4)。
【0041】この印刷情報テーブル15(図4)は,少なくとも次の情報を保持している。下記の印刷枚数は,用紙の大きさや用紙の品質等によって区別してもよいが,以下の説明では1種類とする。
・ログインユーザ名とそのパスワード
・印刷結果枚数(V)
課金清算後に利用した累積枚数である。
・認証後に印刷した枚数(P)
ログイン後に印刷した結果の印刷枚数である。
・ユーザに与えられた印刷上限枚数(M)
この枚数は,課金を清算する単位でユーザに与えられた印刷枚数である。
・ログイン中の他の印刷制限サーバのリスト
同一ユーザが他の印刷制限サーバを使って印刷している場合,どの他の印刷制限サーバを利用しているかを示す。
・ログインカウンタ
同一ユーザがログインした回数を示す。」

B 「【0057】<実施形態2>図9は,本発明の実施形態2(複合機からのコピー要求)を説明するためのブロック図である。実施形態1と同じ機能をもつ構成要素に対しては同じ符号を付し,その機能説明は相違点についてのみ説明する。
【0058】(1)複合機
(A)複合機からのログインによる認証
ユーザが印刷装置(本例では,複合機)40でコピーを行う際,ユーザ認証は複合機40に接続されたカード読み取り装置でIDカード(社員カードなど)の認証データを読み込むことにより行う。複合機40は,この複合機40の属する印刷ネットワーク50の印刷制限サーバ10に対して,IDカードから読み取ったユーザIDを送信して認証を行う。また,カード読み取り装置ではなく,ユーザがクライアントPCからログインする際に使用するログインユーザ名,ログインパスワードを入力させるようにしてもよい。その場合には,入力されたログインユーザIDとログインパスワードを印刷制限サーバへ送信して認証を行う。
【0059】(B)複合機でのコピー
ユーザは,認証完了以降任意のタイミングにおいて,複合機40でコピーを実行する。この一回のコピー実行が終了したタイミングで,カードユーザIDまたはログインユーザ名と,コピー枚数を印刷制限サーバ10へ通知する。この通知で印刷制限サーバ10から次のコピー不許可の通知があれば,以後のコピー実行は行えなくなる。
【0060】(C)複合機からのログアウト
複合機40は,コピー動作完了から一定時間そのユーザの認証許可状態を保持しておくようにし,連続してコピーをする場合の認証手続きを省略する。なお,一定時間とは,ユーザがコピーを終了して複合機から離脱してから,余熱モードへ移行する時間(1?3分)程度である。しかし,一定時間経過すると複合機40から印刷制限サーバ10へログアウトを通知する。または,他のユーザが使用する場合は,先のユーザに対して複合機40から印刷制限サーバ10へログアウトを通知してから,新しいユーザの認証手続きを行う。」

C 「【0061】(2)印刷制限サーバ
(A)ユーザ認証
図10は,印刷制限サーバ10から複合機40に対する認証要求があったときのユーザ認証手続きの処理手順を示すフローチャートである。複合機40からユーザ認証の問い合せを受信する(ステップS21)。先ず,図11に示す印刷情報テーブル15を参照して,既に,同一ユーザから認証要求が行われたかをカードユーザIDまたはログインユーザ名/そのパスワードが登録されているかで調べ,登録されていない場合には,認証サーバ20へ当該ユーザがコピー権限を有するかを問い合わせる(ステップS22)。一方,すでに印刷情報テーブル15に登録されていれば,ステップS25から実行する。
【0062】要求元のユーザが認証サーバ20に登録されていなければ(ステップS23のNO),コピー不許可を要求元の複合機40へ通知し(ステップS27),次の認証要求が送信されるのを待つためにステップS21へ戻る。一方,要求元のユーザが認証サーバ20に登録されていれば(ステップS23のYES),認証サーバ20から返信された当該ユーザの認証情報(カードユーザIDまたはログインユーザ名/パスワード)および印刷枚数情報(印刷結果枚数,印刷上限枚数,ログイン中の他の印刷制限サーバのリスト)を印刷情報テーブル15へ格納し,ログインカウンタを1つ進めて更新する(ステップS24)。この印刷情報テーブル15(図11)は,図4に加えて「カードユーザID」を保持する。
【0063】印刷情報テーブル15を参照して,当該ユーザが既に上限印刷枚数に達したかを調べる(ステップS25)。この判断は,実施形態1と同様にして判断する。上限に達していれば(ステップS25のNO),コピー不許可を要求元の複合機40へ通知するとともに,認証サーバ20へログアウト通知を発行し(ステップS27),次の認証要求の送信を待つためにステップS21へ戻る。一方,上限に達していなければ(ステップS25のYES),コピー許可を要求元の複合機40へ通知し(ステップS26),次の認証要求が送信されるのを待つためにステップS21へ戻る。」

D 「【0069】(3)認証サーバ
認証サーバの機能は,実施形態1と同様に機能するが,ユーザからの認証データがカードユーザIDであれば,認証情報テーブル25(図12)には,図8に加えて「カードユーザID」を保持するようにする。
【0070】以上のように構成することによって,クライアントPCからの印刷要求と同様に複合機におけるコピー枚数を制限することができる。」

2 引用発明
したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「カードユーザIDとログインユーザ名とログインパスワードと印刷結果枚数と認証後の印刷枚数と印刷上限枚数とログイン中の他の印刷制限サーバのリストとログインカウンタとを対応付けて保持する印刷情報テーブルを参照可能な印刷制限サーバであって,
複合機に接続されたカード読み取り装置でユーザのIDカードから読み取ったカードユーザIDを受信して,
受信したカードユーザIDが印刷情報テーブルに登録されていない場合には,認証サーバに登録されているかを問い合わせて,認証サーバに登録されていない場合には,コピー不許可を要求元の複合機へ通知し,認証サーバに登録されている場合には,認証サーバから返信された当該ユーザの認証情報(カードユーザIDまたはログインユーザ名/パスワード)および印刷枚数情報(印刷結果枚数,印刷上限枚数,ログイン中の他の印刷制限サーバのリスト)を印刷情報テーブルへ格納して,ログインカウンタを1つ進めて更新して,
印刷情報テーブルを参照して,当該ユーザが既に上限印刷枚数に達したかを調べて,上限に達している場合にはコピー不許可を要求元の複合機へ通知して,上限に達していない場合には,コピー許可を要求元の複合機へ通知する印刷制限サーバ。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明の「印刷制限サーバ」は,「複合機に接続されたカード読み取り装置でユーザのIDカードから読み取ったカードユーザIDを受信」するところ,「複合機」とネットワークを介して接続することは明らかであり,「複合機」は“画像形成装置”とみることができることから,引用発明の「複合機」は本願発明1の「画像形成装置」に相当する。
そして,引用発明の「印刷制限サーバ」は,「受信したカードユーザIDが印刷情報テーブルに登録されていない場合には,認証サーバに登録されているかを問い合わせ」ることから,「複合機」と「認証サーバ」との間で“ユーザのユーザ認証処理を制御する”といえる。
そうすると,引用発明の「印刷制限サーバ」は本願発明1の「管理装置」に対応し,両者は,“画像形成装置とネットワークを介して接続し,前記画像形成装置を利用するユーザのユーザ認証処理を制御する管理装置”である点で一致する。

イ 引用発明では,「印刷制限サーバ」は「カードユーザIDとログインユーザ名とログインパスワードと印刷結果枚数と認証後の印刷枚数と印刷上限枚数とログイン中の他の印刷制限サーバのリストとログインカウンタとを対応付けて保持する印刷情報テーブル」を備え,「カードユーザID」は,「複合機に接続されたカード読み取り装置でユーザのIDカードから読み取った」ものであり,「印刷情報テーブル」はユーザを識別可能な「ログインユーザ名」と「カードユーザID」とを対応付け,ユーザの認証に用いるデータを保持していると解されるから,引用発明の「ログインユーザ名」,「カードユーザID」,「印刷情報テーブル」は,それぞれ本願発明1の「ユーザ識別情報」,「記録媒体識別情報」,「ユーザ情報記憶部」に相当するといえる。
そうすると,引用発明と本願発明1とは,
“ユーザを識別するユーザ識別情報と,記録媒体を識別する記録媒体識別情報と,を対応付けたユーザ情報を記憶するユーザ情報記憶部”を有する管理装置である点で一致するといえる。

ウ 引用発明では,「印刷制限サーバ」は「受信したカードユーザIDが印刷情報テーブルに登録されていない場合には,認証サーバに登録されているかを問い合わせ」るところ,上記アでの検討より,「複合機」と「認証サーバ」との間で,ネットワークを介して「認証サーバ」と連携して,“ユーザのユーザ認証処理を制御する”といえることから,引用発明の「認証サーバ」は本願発明1の「ユーザ情報保持装置」に相当するといえる。
そして,引用発明では,受信した「カードユーザID」が「印刷情報テーブル」に登録されている場合には,「印刷情報テーブル」に記憶されるユーザ情報に基づきユーザの存在を確認する,すなわちユーザの認証を行うと解され,「印刷情報テーブル」,「認証サーバ」のいずれかのユーザ情報に基づきユーザ認証を行うといえることから,“ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携し,当該ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認する第1ユーザ認証部”と,“前記ユーザ情報記憶部に記憶されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認する第2ユーザ認証部”を実質的に有しているといえる。
一方,本願発明1では,「管理装置」は「ユーザ認証処理において,ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携し,当該ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,前記ユーザ情報記憶部に記憶されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,が指定された設定を受け付ける設定部」を有するが,「ユーザ情報記憶部」,「ユーザ情報保持装置」のいずれかのユーザ情報に基づきユーザ認証を行うといえることから,“ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認する第1ユーザ認証部”と,“前記ユーザ情報記憶部に記憶されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認する第2ユーザ認証部”を有しているとみることができる。
そうすると,引用発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,
“ユーザ認証処理において,ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携し,当該ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認する第1ユーザ認証部と,前記ユーザ情報記憶部に記憶されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認する第2ユーザ認証部と”,を備える管理装置である点で共通するといえる。

エ 引用発明では,「印刷制限サーバ」は「複合機に接続されたカード読み取り装置でユーザのIDカードから読み取ったカードユーザIDを受信」するところ,ユーザが「複合機」にログインするときに,「カード」に記録されている「カードユーザID」を受信すると解され,上記ア,イでの検討より,引用発明の「複合機」,「カードユーザID」はそれぞれ本願発明1の「画像形成装置」,「記録媒体識別情報」に相当することから,“ユーザが前記画像形成装置にログインするときに利用する記録媒体に記録されている記録媒体識別情報を受信する受信手段”を実質的に有しているといえる。
そうすると,引用発明と本願発明1とは,
“前記ユーザが前記画像形成装置にログインするときに利用する記録媒体に記録されている記録媒体識別情報を受信する受信手段”を有する管理装置である点で一致するといえる。

オ 上記ウでの検討より,引用発明では,「印刷情報テーブル」,「認証サーバ」のいずれかのユーザ情報に基づきユーザ認証を行うといえ,“ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携し,当該ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認する第1ユーザ認証部”と,“前記ユーザ情報記憶部に記憶されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認する第2ユーザ認証部”を有しているといえることから,“ユーザ認証処理を,第1ユーザ認証部,または,第2ユーザ認証部のいずれかで実行するよう制御する認証制御手段”を実質的に有しているといえる。
一方,本願発明1では,「管理装置」は「ユーザ認証処理において,ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携し,当該ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,前記ユーザ情報記憶部に記憶されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,が指定された設定を受け付ける設定部」を有し,「受信した前記記録媒体識別情報に基づくユーザ認証処理を,前記設定に応じて制御する認証制御手段」を有するところ,「認証制御手段」は,上位概念では,“受信した前記記録媒体識別情報に基づくユーザ認証処理を,第1ユーザ認証部,または,第2ユーザ認証部のいずれかで実行するよう制御する”とみることができる。
そうすると,引用発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,
“受信した前記記録媒体識別情報に基づくユーザ認証処理を,第1ユーザ認証部,または,第2ユーザ認証部のいずれかで実行するよう制御する認証制御手段”,を備える管理装置である点で共通するといえる。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「画像形成装置とネットワークを介して接続し,前記画像形成装置を利用するユーザのユーザ認証処理を制御する管理装置であって,
ユーザを識別するユーザ識別情報と,記録媒体を識別する記録媒体識別情報と,を対応付けたユーザ情報を記憶するユーザ情報記憶部と,
ユーザ認証処理において,ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携し,当該ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認する第1ユーザ認証部と,前記ユーザ情報記憶部に記憶されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認する第2ユーザ認証部と,
前記ユーザが前記画像形成装置にログインするときに利用する記録媒体に記録されている記録媒体識別情報を受信する受信手段と,
受信した前記記録媒体識別情報に基づくユーザ認証処理を,第1ユーザ認証部,または,第2ユーザ認証部のいずれかで実行するよう制御する認証制御手段と,を有する管理装置。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1は,「ユーザ認証処理において,ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携し,当該ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,前記ユーザ情報記憶部に記憶されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,が指定された設定を受け付ける設定部」を有するのに対して,
引用発明は,「印刷情報テーブル」,「認証サーバ」のいずれかのユーザ情報に基づきユーザ認証を行うものの,「印刷情報テーブル」,「認証サーバ」のいずれでユーザ認証を行うかを指定する設定を受け付ける「設定部」を有することは特定されていない点。

(相違点2)
本願発明1は,「ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき当該ユーザの存在を確認するか否かを,前記設定部により受け付けた前記設定に基づいて判断する判断手段」を有するのに対して,
引用発明は,そのような構成を有することは特定されていない点。

(相違点3)
認証制御に関し,本願発明1では,「受信した前記記録媒体識別情報に基づくユーザ認証処理を,前記設定に応じて制御する」のに対して,
引用発明では,「受信したカードユーザIDが印刷情報テーブルに登録されていない場合には,認証サーバに登録されているかを問い合わせ」るものの,設定に応じて制御することは言及されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
事案に鑑みて,上記相違点1を先に検討すると,引用発明では,ユーザが「複合機」にログインするときに,「印刷制限サーバ」は「受信したカードユーザIDが印刷情報テーブルに登録されていない場合には,認証サーバに登録されているかを問い合わせ」るところ,受信した「カードユーザID」が「印刷情報テーブル」に登録されている場合には,「印刷情報テーブル」に記憶されるユーザ情報に基づきユーザの存在を確認すると解され,“ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認する第1ユーザ認証部”と,“前記ユーザ情報記憶部に記憶されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認する第2ユーザ認証部”を実質的に有しているといえる。
そして,引用発明では,“第2ユーザ認証部”でユーザの存在を確認することができない場合に,“第1ユーザ認証部”にユーザの存在を問い合わせるといえることから,“第2ユーザ認証部”で優先的にユーザの確認を実行することを目的とすると認められるから,ユーザの確認を“第1ユーザ認証部”,“第2ユーザ認証部”のいずれで実行するか,の指定を受け付ける設定部を設置することへの動機付けがあるとはいえない。
また,情報処理装置が有する所定の機能を有効とするか無効とするかについて,当該情報処理装置の管理者や操作者等が当該装置に設定できるように構成する技術が当該技術分野において慣用される周知技術であったとしても,画像形成装置に係るユーザ認証処理に関し,ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携し,当該ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,前記ユーザ情報記憶部に記憶されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,が指定された設定を受け付ける手段を設置する旨の技術が原出願前に当該技術分野において周知技術であったとまではいえず,設定される事項により技術的意義は異なることから,設定される事項によらず設定手段を設置するかどうかは設計的事項であるとすることはできない。
そうすると,引用発明において,受信したカードユーザIDが認証サーバに登録されているかを問い合わせる機能を有効とするか無効とするかについて,印刷制限サーバに設定できるよう設定部を構成すること,すなわち,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たものであるとすることはできない。

イ まとめ
上記相違点2,3について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1に実質的に対応する「ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携してユーザ認証処理を行うか否かの設定について,管理者により選択された設定を受け付ける設定部」を有する「管理装置」の発明であり,本願発明1の
「ユーザ認証処理において,ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携し,当該ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,前記ユーザ情報記憶部に記憶されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,が指定された設定を受け付ける設定部」(以下,「相違点1に係る構成」という。)
に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明3-4について
本願発明3-4は,本願発明1または本願発明2を減縮した発明であり,本願発明1の「相違点1に係る構成」と同一または対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明5について
本願発明5は,本願発明1に対応する「管理方法」の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であり,本願発明1の「相違点1に係る構成」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5 本願発明6-8について
本願発明6は,本願発明2に対応する「管理方法」の発明であり,本願発明2とカテゴリ表現が異なるだけの発明であり,本願発明1の「相違点1に係る構成」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また,本願発明7-8は,本願発明5または本願発明6を減縮した発明であり,本願発明1の「相違点1に係る構成」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

6 本願発明9について
本願発明9は,本願発明1に対応する「管理プログラム」の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であり,本願発明1の「相違点1に係る構成」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

7 本願発明10-12について
本願発明10は,本願発明2に対応する「管理プログラム」の発明であり,本願発明2とカテゴリ表現が異なるだけの発明であり,本願発明1の「相違点1に係る構成」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また,本願発明11-12は,本願発明9または本願発明10を減縮した発明であり,本願発明1の「相違点1に係る構成」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,請求項1-15について上記引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
しかしながら,平成29年4月24日付け手続補正により補正された請求項1,5,9は,それぞれ
「ユーザ認証処理において,ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携し,当該ユーザ情報保持装置に保持されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,前記ユーザ情報記憶部に記憶されるユーザ情報に基づき前記ユーザの存在を確認するか,が指定された設定を受け付ける設定部」,前記「設定部」に対応する構成を有するものとなっており,
また,平成30年5月2日付け手続補正により補正された請求項2,6,10は,それぞれ
「ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携してユーザ認証処理を行うか否かの設定について,管理者により選択された設定を受け付ける設定部」,前記「設定部」に対応する構成を有するものとなっており,
上記のとおり,本願発明1-12は,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
<特許法第36条第6項第2号について>
(1)当審では,請求項2の「ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携してユーザ認証処理を行うか否かの設定について,前記ユーザにより選択された設定を受け付ける設定部」が特定する事項が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年5月2日付けの手続補正により,「ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携してユーザ認証処理を行うか否かの設定について,管理者により選択された設定を受け付ける設定部」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
また,請求項2を引用する請求項3,4についても同様に,補正によりこの拒絶の理由は解消した。
さらに,請求項2-4に対応する請求項6-8,10-12についても同様に,補正によりこの拒絶の理由は解消した。

(2)当審では,請求項2の「ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携してユーザ認証処理を行う前記設定となっているか否かを判断する判断手段」が特定する事項が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年5月2日付けの手続補正により,「ネットワークを介して接続するユーザ情報保持装置と連携してユーザ認証処理を行う前記設定となっているか否かを,前記設定部により受け付けた前記設定に基づいて判断する判断手段」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
また,請求項2を引用する請求項3,4についても同様に,補正によりこの拒絶の理由は解消した。
さらに,請求項2-4に対応する請求項6-8,10-12についても同様に,補正によりこの拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-12は,当業者が引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-18 
出願番号 特願2015-126961(P2015-126961)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金沢 史明  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 辻本 泰隆
須田 勝巳
発明の名称 管理装置、管理方法及び管理プログラム  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
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