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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1341429
審判番号 不服2017-13753  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-15 
確定日 2018-07-03 
事件の表示 特願2015-556369「データアクセスシステム、メモリ共有装置及びデータ読み取り方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月14日国際公開、WO2014/121588、平成28年 5月12日国内公表、特表2016-513316、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2013年7月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年2月6日,中国)を国際出願日とする出願であって,平成27年12月3日に手続補正書が提出され,平成28年11月21日付けで拒絶の理由が通知され,平成29年2月28日に手続補正書が提出され,同年5月2日付けで拒絶査定(謄本送達日同年5月16日)がなされ,これに対して同年9月15日に審判請求がなされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成29年5月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(進歩性)について

・請求項 1-7
・引用文献等 1-2
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2011/161787号
2.特開平05-290000号公報


第3 本願発明

本願請求項1乃至7に係る発明(以下「本願発明1」乃至「本願発明7」という。)は,平成29年2月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された,次のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
データアクセスシステムであって、当該システムは、少なくとも2つのメモリ共有装置により構成されるメモリ共有リソースプールと、前記メモリ共有リソースプールにおける前記メモリ共有装置に対応する少なくとも2つの制御装置とを有し、
前記メモリ共有装置のそれぞれは、データを記憶するよう構成される統一的にアドレッシングされるメモリユニットを有し、前記メモリ共有装置における第1メモリ共有装置がアドレス情報を含み、前記第1メモリ共有装置に対応する第1制御装置により送信されたメモリアクセスリクエストを受信すると、ここで、前記メモリ共有装置のそれぞれはそれぞれ統一的にアドレッシングされるメモリユニットのアドレスの範囲を記憶し、前記それぞれ統一的にアドレッシングされるメモリユニットのアドレスの範囲は互いに異なり、
前記アドレス情報に対応するメモリユニットが前記第1メモリ共有装置におけるメモリユニットである場合、前記第1メモリ共有装置は、前記第1メモリ共有装置におけるメモリユニットからデータを読み取り、前記データを前記第1制御装置にフィードバックし、
前記アドレス情報に対応するメモリユニットが前記第1メモリ共有装置におけるメモリユニットでない場合、前記第1メモリ共有装置は更に、前記第1メモリ共有装置に記憶されるそれぞれ統一的にアドレッシングされるメモリユニットのアドレスの範囲に従って、前記アドレス情報に対応するメモリユニットが前記メモリ共有リソースプールの第2メモリ共有装置におけるメモリユニットであると判断するよう構成され、前記第1メモリ共有装置は更に、前記第2メモリ共有装置に前記メモリアクセスリクエストを転送し、前記第2メモリ共有装置におけるメモリユニット内にあって、前記第2メモリ共有装置によりフィードバックされたデータを受信し、
前記メモリ共有装置の何れかにおける前記第1メモリ共有装置が、アドレス情報を含み、前記第2メモリ共有装置により転送されたメモリアクセスリクエストを受信すると、前記第1メモリ共有装置は、データを読み取り、前記読み取られたデータを前記第2メモリ共有装置にフィードバックするデータアクセスシステム。
【請求項2】
前記メモリ共有装置は、記憶モジュール、処理モジュール及び通信ユニットを有し、
前記記憶モジュールは、前記処理モジュールに接続され、前記記憶モジュールは、前記メモリ共有リソースプールにおける少なくとも1つの統一的にアドレッシングされるメモリユニットを有し、前記メモリユニットはデータを記憶するよう構成され、
前記処理モジュールは、通信インタフェースを利用することによって1つの制御装置に接続され、前記通信ユニットを介し前記メモリ共有リソースプールにおける1以上の他のメモリ共有装置に接続され、前記通信インタフェースを介し前記処理モジュールに接続された前記制御装置により送信されたメモリアクセスリクエストを受信し、前記通信ユニットを利用することによって、前記1以上の他のメモリ共有装置により転送されたメモリアクセスリクエストを受信し、及び/又は前記制御装置により送信されたメモリアクセスリクエストを前記メモリ共有リソースプールにおける1以上の他のメモリ共有装置に転送し、前記1以上の他のメモリ共有装置により転送されたメモリアクセスリクエストは対応する制御装置から前記1以上の他のメモリ共有装置により受信され、前記メモリアクセスリクエストは前記メモリ共有リソースプールの複数のメモリ共有装置における統一的なアドレッシングを受けたメモリユニットのアドレス情報を有し、前記アドレス情報は、前記メモリ共有リソースプールの何れかのメモリ共有装置のメモリユニットにおけるデータを取得するのに利用される、請求項1記載のデータアクセスシステム。
【請求項3】
前記メモリ共有装置は、前記メモリ共有リソースプールにおける統一的なアドレッシングを受けたメモリユニットのアドレッシングデータを取得するため、前記通信ユニットを利用することによって、前記メモリ共有リソースプールにおける1以上の他のメモリ共有装置にクエリメッセージをブロードキャストし、前記取得したアドレッシングデータを前記処理モジュールに記憶する、請求項2記載のデータアクセスシステム。
【請求項4】
前記2つの制御装置における何れかの制御装置は、通信モジュールを有し、前記何れかの制御装置の通信モジュールは、プラグ着脱可能なメモリ共有モジュールを接続することによって当該データアクセスシステムにアクセスする、請求項1記載のデータアクセスシステム。
【請求項5】
前記通信インタフェースは、高速システムバス、スイッチ又はイーサネットインタフェースである、請求項2又は3記載のデータアクセスシステム。
【請求項6】
データ読み取り方法であって、
メモリ共有リソースプールにおける第1メモリ共有装置が、前記第1メモリ共有装置を制御する第1制御装置により送信されたメモリアクセスリクエストを受信するステップであって、前記メモリアクセスリクエストは統一的なアドレッシングを受けたアドレス情報を有し、前記アドレス情報はデータを記憶するよう構成され、前記メモリ共有リソースプールの少なくとも2つのメモリ共有装置において統一的なアドレッシングを受けた1以上のメモリユニットのアドレス情報であり、前記少なくとも2つのメモリ共有装置における何れかのメモリ共有装置は、少なくとも2つの制御装置における1つの制御装置の制御の下でデータを読み取り、前記第1メモリ共有装置は前記少なくとも2つのメモリ共有装置の1つであり、前記メモリ共有装置のそれぞれはそれぞれ統一的にアドレッシングされたメモリユニットのアドレスの範囲を記憶し、前記それぞれ統一的にアドレッシングされたメモリユニットのアドレスの範囲は互いに異なる、受信するステップと、
前記第1メモリ共有装置が、前記アドレス情報に従って、前記アドレス情報に対応するメモリユニットが配置されるメモリ共有装置を決定するステップと、
前記アドレス情報に対応するメモリユニットが配置されるメモリ共有装置が前記第1メモリ共有装置である場合、前記第1メモリ共有装置が、前記第1メモリ共有装置自体におけるアドレス情報に対応するメモリユニットからデータを取得するか、又は、
前記アドレス情報に対応するメモリユニットが配置されるメモリ共有装置が前記第1メモリ共有装置でない場合、前記第1メモリ共有装置が、前記第1メモリ共有装置に記憶されるそれぞれ統一的にアドレッシングされるメモリユニットのアドレスの範囲に従って、前記アドレス情報に対応するメモリユニットが第2メモリ共有装置におけるメモリユニットであると判断し、前記第1メモリ共有装置が、前記メモリアクセスリクエストを前記第2メモリ共有装置に転送し、前記第2メモリ共有装置により返されたデータを受信するステップと、
前記第1メモリ共有装置が、前記データを読み取り、前記データを前記第1制御装置にフィードバックするステップと、
を有する方法。
【請求項7】
前記メモリ共有リソースプールにおける第1メモリ共有装置が前記第1メモリ共有装置を制御する第1制御装置により送信されたメモリアクセスリクエストを受信する前、当該方法は更に、
前記メモリ共有リソースプールにおける第1メモリ共有装置が、前記メモリ共有リソースプールの全てのメモリ共有装置のメモリユニットのアドレッシングデータを取得するため、前記メモリ共有リソースプールにおける1以上の他のメモリ共有装置にクエリメッセージをブロードキャストするステップを有する、請求項6記載の方法。」


第4 引用例

1 引用例に記載された事項
原審における平成28年11月21日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という。)において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,国際公開第2011/161787号(2011年12月29日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は,説明のために当審にて付加。以下同様。)

A 「【0002】
従来から、携帯端末などの端末装置にて、データ共有を行いながら分散処理を行う技術が存在している。たとえば、複数の装置とデータを共有する技術として、たとえば、サーバ側端末とクライアント側となる携帯端末とを無線接続によって接続し、データを共有することで、携帯端末内の限られた保存領域を有効に利用する技術が開示されている。(たとえば、下記特許文献1を参照。)。」

B 「【0008】
しかしながら、上述した従来技術において、特許文献1?特許文献5にかかる技術では通信を行う際に、ファイルを形成するため、小規模なデータを頻繁に通信しあう場合に、ファイルの形成および展開の処理が分散処理におけるオーバーヘッドとなる問題があった。
【0009】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、ファイルの形成を行わずに通信を行うことができる通信装置、通信方法、および通信プログラムを提供することを目的とする。」

C 「【0014】
(通信装置のハードウェア)
図1は、実施の形態にかかる通信システム100のハードウェアを示すブロック図である。図1において、通信システム100は、通信装置101#0と通信装置101#1とを含む。通信装置101の具体例としては、小型の携帯端末装置などが考えられる。通信装置101#0は、CPU102#0と、ROM(Read‐Only Memory)103#0と、RAM(Random Access Memory)103#0と、を含む。また、通信装置101#0は、フラッシュROM105#0と、フラッシュROMコントローラ106#0と、フラッシュROM107#0と、を含む。また、通信装置101#0は、ユーザやその他の機器との入出力装置として、ディスプレイ108#0と、I/F(Interface)109#0と、キーボード110#0と、を含む。また、各部はバス111#0によってそれぞれ接続されている。」

D 「【0025】
図2は、実施の形態1にかかる通信システム100の動作概略を示す説明図である。通信装置101#0を制御するCPU102#0は、バス111#0を経由してMEM201#0にデータ202#0を格納する。MEM201#0とはCPU102#0のワークエリアとして使用されるRAMなどの記憶装置であり、具体的にはRAM104#0などのハードウェアである。また、通信装置101#0は、ソフトウェアとして、OS203#0、メモリドライバ204#0、通信ドライバ205#0、ファイルシステム206#0を実行している。」

E 「【0029】
通信装置101#1も、通信装置101#1を制御するCPU102#1がバス111#1を経由してMEM201#1にデータ202#1を格納する。また、通信装置101#0と同様のソフトウェアを含む。すなわち通信装置101#1は、ソフトウェアとして、OS203#1、メモリドライバ204#1、通信ドライバ205#1、ファイルシステム206#1を実行している。」

F 「【0032】
このように、無線通信によって接続された通信装置101#0、通信装置101#1が、通信ドライバ205#0、通信ドライバ205#1を介して接続先の装置のメモリにアクセスすることで、データを共有しながら分散処理を行うことができる。従来例にかかる通信システム100であれば、通信ドライバ205#0、通信ドライバ205#1を介する前に、ファイルの形成処理が存在する。本実施の形態1にかかる通信システム100では、ファイル処理を行わないため、ファイル処理にかかるオーバーヘッドを伴わずに通信処理を行うことができる。」

G 「【0033】
(実施の形態1にかかる通信システム100の機能)
次に、実施の形態1にかかる通信システム100の機能について説明する。図3は、実施の形態1にかかる通信システム100の機能を示すブロック図である。実施の形態1にかかる通信システム100は、検出部301と、判断部302と、制御部303と、アクセス部304と、通信部305と、通信部306と、アクセス部307と、停止部308と、を含む。」

H 「【0035】
また、図3に示す状態では、検出部301?通信部305が通信装置101#0の機能に含まれ、通信部306?停止部308が通信装置101#1の機能に含まれているが、検出部301?通信部305が通信装置101#1の機能に含まれていてもよい。同様に、通信部306?停止部308が通信装置101#0の機能に含まれていてもよい。」

I 「【0036】
検出部301は、自装置内から発生したアクセス要求を検出する機能を有する。アクセス要求には、読み込み要求と書き込み要求が存在する。たとえば、検出部301は、通信装置101#0にて実行中のプロセスによって発生したアクセス要求を検出する。なお、検出されたアクセス要求の情報は、検出部301が実行されるCPUのレジスタやメモリなどの記憶領域に記憶される。たとえば、検出部301が通信装置101#0にて実行されている場合、検出されたアクセス要求の情報は、CPU102#0のレジスタや、MEM201#0に記憶される。」

J 「【0038】
たとえば、判断部302は、アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが通信装置101#0のMEM201#0に割り当てられたアドレスであるか否かを判断する。具体的には、MEM201#0内のアドレスの範囲が0x00000000?0x1fffffffである場合を想定する。
【0039】
アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが0x00001000であれば、判断部302は、アクセス対象データのアドレスがMEM201#0のアドレスの範囲内であるため自装置のメモリに割り当てられたアドレスであると判断する。アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが0x20001000であれば、判断部302は、アクセス対象データのアドレスがMEM201#0のアドレスの範囲外であるため自装置のメモリに割り当てられたアドレスではないと判断する。」

K 「【0042】
たとえば、制御部303は、判断部302によってアクセス要求がMEM201#0に割り当てられたアドレスであると判断された場合、アクセス部304の処理を選択し、アクセス部304によりMEM201#0にアクセスさせる。また、判断部302によってアクセス要求がMEM201#0に割り当てられたアドレスではないと判断された場合、通信部305の処理を選択し、通信部305によりI/F109#0を用いて通信装置101#1と通信させる。」

L 「【0045】
CPU102#1の機能に含まれる通信部306は、通信部305と等しい機能を有し、アクセス部307も、アクセス部304と等しい機能を有する。また、通信部306は、通信部305によりアクセス要求を受信した際に、アクセス部307にアクセス要求を通知する。アクセス要求を受けたアクセス部307は、アクセス要求に基づいてMEM201#1にアクセスする。」

2 引用発明

ア 上記記載事項Aから,引用例1には,“従来から,携帯端末などの端末装置にて,データ共有を行いながら分散処理を行う技術が存在”することが記載されているといえる。

イ 上記記載事項Bから,引用例1には,“従来技術において,通信を行う際に,ファイルを形成するため,小規模なデータを頻繁に通信しあう場合に,ファイルの形成および展開の処理が分散処理におけるオーバーヘッドとなる”課題を有し,当該課題に対し,“ファイルの形成を行わずに通信を行う”ことを目的とする発明であることを読み取ることができる。

ウ 上記記載事項Cから,引用例1には,“通信装置101#0と通信装置101#1と”を含む“通信システム100”について記載されているといえる。

エ 上記記載事項D及びEから,引用例1には,“通信装置101#0を制御するCPU102#0は,バス111#0を経由してMEM201#0にデータ202#0を格納”すること,及び,“通信装置101#1を制御するCPU102#1は,バス111#1を経由してMEM201#1にデータ202#1を格納”することについて記載されているといえる。

オ 上記記載事項Fから,引用例1には,“データを共有しながら分散処理を行うことができ”ること,及び,“ファイル処理を行わないため,ファイル処理にかかるオーバーヘッドを伴わずに通信処理を行うことができる”ことが記載されているといえる。

カ 上記記載事項Gから,引用例1には,“通信システム100は,検出部301と,判断部302と,制御部303と,アクセス部304と,通信部305と,通信部306と,アクセス部307と,停止部308と,を含”むことが記載されているといえる。

キ 上記記載事項Hから,引用例1には,“検出部301?通信部305が通信装置101#0の機能に含まれ、通信部306?停止部308が通信装置101#1の機能に含まれ”ることが記載されているといえる。

ク 上記記載事項Iから,引用例1には,“検出部301は,通信装置101#0にて実行中のプロセスによって発生したアクセス要求を検出”することが記載されているといえる。

ケ 上記記載事項Jから,引用例1には,“判断部302は,アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが通信装置101#0のMEM201#0に割り当てられたアドレスであるか否かを判断”すること,及び,“MEM201#0内のアドレスの範囲が0x00000000?0x1fffffffである場合,アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが0x00001000であれば,判断部302は,アクセス対象データのアドレスがMEM201#0のアドレスの範囲内であるため自装置のメモリに割り当てられたアドレスであると判断し,アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが0x20001000であれば,判断部302は,アクセス対象データのアドレスがMEM201#0のアドレスの範囲外であるため自装置のメモリに割り当てられたアドレスではないと判断”することが記載されているといえる。

コ 上記記載事項Kから,引用例1には,“制御部303は,判断部302によってアクセス要求がMEM201#0に割り当てられたアドレスであると判断された場合,アクセス部304の処理を選択し,アクセス部304によりMEM201#0にアクセスさせ”ること,及び“判断部302によってアクセス要求がMEM201#0に割り当てられたアドレスではないと判断された場合,通信部305の処理を選択し,通信部305によりI/F109#0を用いて通信装置101#1と通信させ”ることが記載されているといえる。

サ 上記記載事項Lから,引用例1には,“通信部306は,通信部305によりアクセス要求を受信した際に,アクセス部307にアクセス要求を通知し,前記アクセス要求を受けたアクセス部307は,アクセス要求に基づいてMEM201#1にアクセス”することが記載されているといえる。

シ 以上上記ア乃至サより,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「従来から,携帯端末などの端末装置にて,データ共有を行いながら分散処理を行う技術が存在し,
従来技術において,通信を行う際に,ファイルを形成するため,小規模なデータを頻繁に通信しあう場合に,ファイルの形成および展開の処理が分散処理におけるオーバーヘッドとなる課題を解決するため,ファイルの形成を行わずに通信を行う,通信装置101#0と通信装置101#1とを含む通信システム100であって,
前記通信装置101#0を制御するCPU102#0は,バス111#0を経由してMEM201#0にデータ202#0を格納し,前記通信装置101#1を制御するCPU102#1は,バス111#1を経由してMEM201#1にデータ202#1を格納し,
前記通信システム100は,検出部301と,判断部302と,制御部303と,アクセス部304と,通信部305と,通信部306と,アクセス部307と,停止部308と,を含み,検出部301?通信部305が通信装置101#0の機能に含まれ,通信部306?停止部308が通信装置101#1の機能に含まれ,
前記検出部301は,前記通信装置101#0にて実行中のプロセスによって発生したアクセス要求を検出し,
前記判断部302は,前記アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが前記通信装置101#0のMEM201#0に割り当てられたアドレスであるか否かを判断し,前記MEM201#0内のアドレスの範囲が0x00000000?0x1fffffffである場合,アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが0x00001000であれば,前記判断部302は,アクセス対象データのアドレスがMEM201#0のアドレスの範囲内であるため自装置のメモリに割り当てられたアドレスであると判断し,前記アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが0x20001000であれば,前記判断部302は,アクセス対象データのアドレスがMEM201#0のアドレスの範囲外であるため自装置のメモリに割り当てられたアドレスではないと判断し,
前記制御部303は,前記判断部302によってアクセス要求がMEM201#0に割り当てられたアドレスであると判断された場合,アクセス部304の処理を選択し,前記アクセス部304によりMEM201#0にアクセスさせ,前記判断部302によってアクセス要求がMEM201#0に割り当てられたアドレスではないと判断された場合,前記通信部305の処理を選択し,通信部305によりI/F109#0を用いて通信装置101#1と通信させ,
前記通信部306は,前記通信部305によりアクセス要求を受信した際に,アクセス部307にアクセス要求を通知し,前記アクセス要求を受けたアクセス部307は,前記アクセス要求に基づいてMEM201#1にアクセスし,
データを共有しながら分散処理を行うことができ,ファイル処理を行わないため,ファイル処理にかかるオーバーヘッドを伴わずに通信処理を行うことができる
通信システム100。」

3 引用例2に記載された事項
原審拒絶理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特開平5-290000号公報(平成5年11月5日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

M 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、複数のプロセッシングエレメントを備えた並列計算機に関するものである。」

N 「【0012】
【実施例】
実施例1.以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1において、1はプロセッシングエレメント(PE)で、ここでは4個のPEが記載されているが、実際には任意個数のPEで並列計算機が構成される。また、各PEはそれぞれ以下の2から5の要素で構成される。2はプロセッサ(MPU)である。3はメモリ管理ユニット(MMU)で論理アドレスから物理アドレスへのアドレス変換を担当する。4はデータ交換制御装置(DXU)でメモリアクセスの制御を全て担当する。5は分散共有メモリである。分散共有メモリは計算機システム全体で1つのリニアな物理アドレスを持つ共有メモリである。しかし、各PEに分散して配置されているため、ローカルメモリ的な性質を兼ね備えており、各MPUにとって、自PE内のメモリは他のPEのメモリより高速にアクセスできる。6はシステムバスで並列計算機内の全てのPEを接続する。本システムではDXU4がこのシステムバスと接続されている。」

O 「【0014】次に動作について説明する。まず、図1の4個のPEがひとまとまりの処理を分担する場合について説明する。この場合に論理アドレス空間はシステム全体で1つである。各MPUはそれぞれ独自のMMUを持っているがそのアドレスマッピングテーブルはOSよりシステム全体で一元的に管理されている。このOSにより管理されるアドレスマッピングテーブルはプロセスの起動前に設定したものを実行中固定的に使用してもよいし、プロセスの実行中にダイナミックスケジューリングに伴い変更しても良い。
【0015】メモリは分散配置されているが、共有メモリなので、図3に示すように論理アドレス空間12の各領域はそれぞれ物理アドレス空間13のどこかの領域に1対1に割り当てられる。この方式において、たとえば、「論理アドレス空間でのアドレス」15はインデックス番号(上位アドレス)とオフセットアドレス(下位アドレス)で構成される。MMUはこの「物理アドレス空間でのアドレス」15のインデックス番号をページ番号に変換することにより、「論理アドレス空間でのアドレス」16を生成する。この「物理アドレス空間でのアドレス」16におけるページ番号は、たとえば、PE番号とページ番号から構成することもでき、このようにPE番号とページ番号から上位アドレスを構成することにより、「分散配置された物理アドレス空間でのアドレス」17が構成できる。PE番号は、PEのアドレスを示すものであり、たとえば、4個のPEがある場合、PE番号(PEアドレスともいう)は、“00”、“01”、“10”、“11”を用いることができる。このように、物理アドレスの上位ビットはPEを特定するPEアドレスとして使われる。したがって、全てのMPUは特定のデータが自PEの物理アドレス空間に割り当てられているか他PEの物理アドレス空間に割り当てられているかを意識する必要はなく、どちらの場合でも自由にアクセスすることができる。但し、アクセス速度は異なるので従来方式同様に必要なデータをなるべく自PEの領域に置くようにする。」

上記M乃至Oの記載事項から,引用例2には,次の技術的事項が記載されているといえる。

「複数のプロセッシングエレメントを備えた並列計算機であって,
プロセッシングエレメント(PE)と,プロセッサ(MPU)と,論理アドレスから物理アドレスへのアドレス変換を担当するメモリ管理ユニット(MMU)と,メモリアクセスの制御を全て担当するデータ交換制御装置(DXU)と,分散共有メモリとからなり,
前記分散共有メモリは,計算機システム全体で1つのリニアな物理アドレスを持つ共有メモリであり,
論理アドレス空間はシステム全体で1つであって,前記論理アドレス空間の各領域はそれぞれ物理アドレス空間のどこかの領域に1対1に割り当てられている並列計算機。」


第5 対比・判断

1 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「通信システム100」は,「判断部302」によって,「アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが前記通信装置101#0のMEM201#0に割り当てられたアドレスであるか否かを判断」したり,「制御部303」が,「アクセス部304の処理を選択し,前記アクセス部304によりMEM201#0にアクセスさせ」たり,「通信部305の処理を選択し,通信部305によりI/F109#0を用いて通信装置101#1と通信させ」たりするものであることから,本願発明1の「データアクセスシステム」と,データをアクセスするシステムという点で共通する。
また,引用発明の「通信システム100」に含まれる,「通信装置101#0」及び「通信装置101#1」は,「通信装置101#0のMEM201#0」や「MEM201#1」といった「自装置のメモリ」を有し,これらは,本願発明1の「メモリユニット」と共通し,また当該メモリにデータが記憶されるという点で,本願発明1の“メモリ共有装置”と共通する。
したがって,引用発明と本願発明1の「少なくとも2つのメモリ共有装置により構成されるメモリ共有リソースプールと、前記メモリ共有リソースプールにおける前記メモリ共有装置に対応する少なくとも2つの制御装置とを有」する「データアクセスシステム」とは,下記の点で相違するものの,“データアクセスシステムであって、当該システムは、少なくとも2つのメモリ共有装置を有”する点で一致する。

(2)引用発明は,「MEM201#0内のアドレスの範囲が0x00000000?0x1fffffffである場合」に,「アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが0x00001000であれば,…(中略)…アクセス対象データのアドレスがMEM201#0のアドレスの範囲内である」と判断される一方で,「アクセス対象データのアドレスが0x20001000であれば,…(中略)…アクセス対象データのアドレスがMEM201#0のアドレスの範囲外である」と判断された上で,「アクセス要求を受けたアクセス部307は,アクセス要求に基づいてMEM201#1にアクセス」するものであることから,それぞれのメモリユニットである,「MEM201#0」と「MEM201#1」には,それぞれに割り当てられたアドレス範囲が存在するといえ,引用発明と本願発明1の「データを記憶するよう構成される統一的にアドレッシングされるメモリユニットを有し」,「アドレス情報を含」む「メモリ共有装置」とは,下記の点で相違するものの,“データを記憶するよう構成されるメモリユニットを有し,前記メモリ共有装置がアドレス情報を含”む点で一致する。

(3)引用発明は,「通信装置101#0にて実行中のプロセスによって発生したアクセス要求を検出」し,「前記アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが前記通信装置101#0のMEM201#0に割り当てられたアドレスであるか否かを判断」し,「アクセス対象データのアドレスがMEM201#0のアドレスの範囲内であるため自装置のメモリに割り当てられたアドレスであると判断」し,「アクセス要求がMEM201#0に割り当てられたアドレスであると判断された場合,アクセス部304の処理を選択し,前記アクセス部304によりMEM201#0にアクセスさせ」られるものであることから,本願発明1の「前記アドレス情報に対応するメモリユニットが前記第1メモリ共有装置におけるメモリユニットである場合、前記第1メモリ共有装置は、前記第1メモリ共有装置におけるメモリユニットからデータを読み取り、前記データを前記第1制御装置にフィードバック」することと,下記の点で相違するものの,“前記アドレス情報に対応するメモリユニットが第1メモリ共有装置におけるメモリユニットである場合、前記第1メモリ共有装置は、前記第1メモリ共有装置におけるメモリユニットからデータを読み取り、前記データをフィードバック”する点で一致する。

(4)引用発明の「通信装置101#0の機能に含まれ」る「判断部302」は,「アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが前記通信装置101#0のMEM201#0に割り当てられたアドレスであるか否かを判断」した上で,「前記MEM201#0内のアドレスの範囲が0x00000000?0x1fffffffである場合」に,「アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが0x20001000であ」ると,「アクセス対象データのアドレスがMEM201#0のアドレスの範囲外であるため自装置のメモリに割り当てられたアドレスではないと判断」している。このことは,本願発明1の「前記アドレス情報に対応するメモリユニットが前記第1メモリ共有装置におけるメモリユニットでない場合、前記第1メモリ共有装置は更に、前記第1メモリ共有装置に記憶されるそれぞれ統一的にアドレッシングされるメモリユニットのアドレスの範囲に従って、前記アドレス情報に対応するメモリユニットが前記メモリ共有リソースプールの第2メモリ共有装置におけるメモリユニットであると判断する」ことと,下記の点で相違するものの,“前記アドレス情報に対応するメモリユニットが前記第1メモリ共有装置におけるメモリユニットでない場合、前記第1メモリ共有装置は更に、前記第1メモリ共有装置に記憶される,メモリユニットのアドレスの範囲に従って、前記アドレス情報に対応するメモリユニットが第2メモリ共有装置におけるメモリユニットであると判断する”ことと一致する。

(5)引用発明はまた,「判断部302によってアクセス要求がMEM201#0に割り当てられたアドレスではないと判断された場合」,「通信装置101#0の機能に含まれ」る「制御部303」が,「前記通信部305の処理を選択し,通信部305によりI/F109#0を用いて通信装置101#1と通信」するよう制御され,「通信装置101#1の機能に含まれ」る「通信部306」は,「前記通信部305によりアクセス要求を受信した際に,アクセス部307にアクセス要求を通知し,前記アクセス要求を受けたアクセス部307は,前記アクセス要求に基づいてMEM201#1にアクセス」するものである。当該「通信部305」による「I/F109#0を用い」た「通信装置101#1」との「通信」は,「通信装置101#0」,すなわち本願発明1の「第1メモリ共有装置」から,「通信装置101#1」,すなわち本願発明1の「第2メモリ共有装置」への「メモリリクエスト」の「転送」に相当し,「通信装置101#1の機能に含まれ」る「アクセス部307」によってアクセスされた「MEM201#1」におけるデータは,「通信装置101#0」に返信,すなわちフィードバックされ,当該「通信装置101#0」は当該フィードバックされたデータを受信するものと解されることから,引用発明と本願発明1とは,“前記第1メモリ共有装置は更に、前記第2メモリ共有装置に前記メモリアクセスリクエストを転送し、前記第2メモリ共有装置におけるメモリユニット内にあって、前記第2メモリ共有装置によりフィードバックされたデータを受信”する点で一致するといえる。

(6)引用発明は,「判断部302」が,「アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが前記通信装置101#0のMEM201#0に割り当てられたアドレスであるか否かを判断」する際,「前記MEM201#0内のアドレスの範囲が0x00000000?0x1fffffffである場合」に,「アクセス要求におけるアクセス対象データのアドレスが0x20001000であ」ったとき,「通信装置101#0」は,「通信部305によりI/F109#0を用いて通信装置101#1と通信」して,「通信装置101#1の機能に含」まれる「通信部306」が「前記通信部305によりアクセス要求を受信した際に,アクセス部307にアクセス要求を通知し,前記アクセス要求を受けたアクセス部307は,前記アクセス要求に基づいてMEM201#1にアクセス」するものであるが,上記(5)で認定したとおり,その後,「通信装置101#1の機能に含まれ」る「アクセス部307」によってアクセスされた「MEM201#1」におけるデータは,「通信装置101#0」に返信,すなわちフィードバックされるものと解される。
そうすると,本願発明1の「前記メモリ共有装置の何れかにおける前記第1メモリ共有装置が、アドレス情報を含み、前記第2メモリ共有装置により転送されたメモリアクセスリクエストを受信すると、前記第1メモリ共有装置は、データを読み取り、前記読み取られたデータを前記第2メモリ共有装置にフィードバックする」構成と引用発明とを対比すると,引用発明の「通信装置101#0」は,上記構成の「第2メモリ共有装置」に相当し,同じく「通信装置101#1」は,同「第1メモリ共有装置」に相当するといえることから,引用発明と本願発明1の上記構成との間に格別な差異はなく,上記構成において一致するといえる。

(7)以上,(1)乃至(6)の検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
データアクセスシステムであって,当該システムは,少なくとも2つのメモリ共有装置を有し,
前記メモリ共有装置のそれぞれは,データを記憶するよう構成されるメモリユニットを有し,前記メモリ共有装置がアドレス情報を含み,
前記アドレス情報に対応するメモリユニットが第1メモリ共有装置におけるメモリユニットである場合,前記第1メモリ共有装置は,前記第1メモリ共有装置におけるメモリユニットからデータを読み取り,前記データをフィードバックし,
前記アドレス情報に対応するメモリユニットが前記第1メモリ共有装置におけるメモリユニットでない場合,前記第1メモリ共有装置は更に,前記第1メモリ共有装置に記憶されるメモリユニットのアドレスの範囲に従って,前記アドレス情報に対応するメモリユニットが第2メモリ共有装置におけるメモリユニットであると判断するよう構成され,前記第1メモリ共有装置は更に,前記第2メモリ共有装置に前記メモリアクセスリクエストを転送し,前記第2メモリ共有装置におけるメモリユニット内にあって,前記第2メモリ共有装置によりフィードバックされたデータを受信し,
前記メモリ共有装置の何れかにおける前記第1メモリ共有装置が,アドレス情報を含み,前記第2メモリ共有装置により転送されたメモリアクセスリクエストを受信すると,前記第1メモリ共有装置は,データを読み取り,前記読み取られたデータを前記第2メモリ共有装置にフィードバックする
データアクセスシステム。

〈相違点1〉
本願発明1の「データアクセスシステム」が,「少なくとも2つのメモリ共有装置により構成されるメモリ共有リソースプール」を有すると共に,「前記メモリ共有リソースプールにおける前記メモリ共有装置に対応する少なくとも2つの制御装置とを有」するのに対し,引用発明は,そのような構成を有しない点。

〈相違点2〉
本願発明1の「データ共有装置」の「メモリユニット」が,「統一的にアドレッシングされる」ものであるのに対し,引用発明は,そのような構成を有しない点。

〈相違点3〉
本願発明1が,「第1メモリ共有装置に対応する第1制御装置により送信されたメモリアクセスリクエストを受信すると、ここで、前記メモリ共有装置のそれぞれはそれぞれ統一的にアドレッシングされるメモリユニットのアドレスの範囲を記憶し、前記それぞれ統一的にアドレッシングされるメモリユニットのアドレスの範囲は互いに異な」るものであるのに対し,引用発明は,そのような構成を有しない点。

〈相違点4〉
本願発明1が,「前記アドレス情報に対応するメモリユニットが前記第1メモリ共有装置におけるメモリユニットである場合」に,「前記第1メモリ共有装置におけるメモリユニットからデータを読み取り、前記データを前記第1制御装置にフィードバック」するものであるのに対し,引用発明は,単にメモリ共有装置のメモリユニットにアクセスすることのみが特定されるに過ぎないものである点。

〈相違点5〉
本願発明1が,「前記アドレス情報に対応するメモリユニットが前記第1メモリ共有装置におけるメモリユニットでない場合」に,「前記アドレス情報に対応するメモリユニットが前記メモリ共有リソースプールの第2メモリ共有装置におけるメモリユニットであると判断するよう構成」されているのに対し,引用発明はそのような構成を有しない点。

2 相違点についての判断
(1)本願発明1について
相違点1について検討する。
本願明細書の段落1乃至6を参照すると,現在,インターネットの発展及び普及によって,分散システムがより広範に適用されており,当該分散ファイルシステムは,ネットワーク上に確立されたソフトウェアシステムを表し,高い結合性及び透明性によって特徴付けされ,分散システムの間の共有アクセスに対するレスポンスの速度は,分散システムの全体的な性能に影響を与えることを技術的背景とし(段落2),従来技術では,分散システムの間の情報共有の問題を解決するため,交換ネットワークベースの情報共有方式が通常利用され,取得側として機能する制御システムAにおけるCPUが,提供側として機能する制御システムBにおけるメモリユニットのデータを取得することを所望するとき,データの全ての送信が制御システムA及び制御システムBにおける中央処理ユニット(Central Processing Unit,CPU)の参加による処理を受ける必要がある欠点を有していたことを踏まえ(段落5),提供側として機能する制御システムにおけるCPUの性能が過剰に消費されるため,CPUの浪費を生じさせ,システム全体の信頼性が低下するといった従来技術における問題点を解決することを本願発明1の目的としたものであると解される。(段落6)
一方,引用発明は,「従来から,携帯端末などの端末装置にて,データ共有を行いながら分散処理を行う技術が存在」することを前提とし,「従来技術において,通信を行う際に,ファイルを形成するため,小規模なデータを頻繁に通信しあう場合に,ファイルの形成および展開の処理が分散処理におけるオーバーヘッドとなる課題を解決する」ものである。そして,引用発明は,本願発明1の「メモリ共有装置」と共通する,「通信装置101#0」及び「通信装置101#1」を有するものであるが,これらによって,「メモリ共有リソースプール」を構成することは,引用例1には開示も示唆もされておらず,また,引用発明の課題に照らし,これらからメモリ共有リソースプールを構成する動機付けも見いだすことはできない。
さらに,本願発明1の当該「メモリ共有リソースプール」を構成する「データ共有装置」に対応する「制御装置」を別途に設ける動機付けも存在せず,引用例2の,上記記載事項M乃至Oの記載をもってしても,相違点1に対応する構成を見いだせないばかりか,当該構成を引用発明において採用する動機付けも存在しない。
したがって当業者といえども,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項から、相違点1に係る構成を容易に想到することはできない。
したがって,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(2)本願発明2乃至5について
本願発明2乃至5は,本願発明1を直接乃至間接的に引用するものであり,本願発明1の「データアクセスシステムであって、当該システムは、少なくとも2つのメモリ共有装置により構成されるメモリ共有リソースプールと、前記メモリ共有リソースプールにおける前記メモリ共有装置に対応する少なくとも2つの制御装置とを有」するのと同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(3)本願発明6及び7について
本願発明6は,概ね本願発明1とカテゴリー表現が異なるものであるが,本願発明1と同様,「メモリ共有リソースプール」及び「第1メモリ共有装置を制御する制御装置」との構成を有するものであり,本願発明7は当該本願発明6を引用するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-18 
出願番号 特願2015-556369(P2015-556369)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 塚田 肇  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 辻本 泰隆
山崎 慎一
発明の名称 データアクセスシステム、メモリ共有装置及びデータ読み取り方法  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  

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