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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60G
管理番号 1341441
審判番号 不服2017-1108  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-25 
確定日 2018-06-14 
事件の表示 特願2012-252520号「懸架装置と、懸架装置用圧縮コイルばね」拒絶査定不服審判事件〔平成26年6月5日出願公開、特開2014-100949号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年11月16日の出願であって、平成28年3月28日付けで拒絶理由が通知され、同年5月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月20日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して、平成29年1月25日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において、同年12月19日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年2月20日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、平成28年5月13日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「車体に支持されたピボットを中心に上下方向に揺動自在なアーム部材を備えたニーアクションタイプの懸架装置の下側のばね座と上側のばね座との間に配置される圧縮コイルばねであって、
螺旋形に成形された素線を有し、
該素線が、
前記ピボットに近い側に配置されかつ素線径が該素線の平均素線径より大きい大径素線部と、
前記ピボットから遠い側に配置されかつ素線径が前記大径素線部の素線径より小さい小径素線部と、
前記大径素線部と前記小径素線部との間で素線径が連続的に変化する線径変化部と、
前記下側のばね座に接しかつ素線径が前記小径素線部の素線径よりも小さい下側の座巻部と、
前記上側のばね座に接しかつ素線径が前記小径素線部の素線径よりも小さい上側の座巻部と、
を具備したことを特徴とする懸架装置用圧縮コイルばね。」

第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開昭59-219534号公報
引用文献2:特開2008-18784号公報
引用文献3:実公昭50-13293号公報(周知技術を例示する文献)
引用文献4:特開昭56-63139号公報(周知技術を例示する文献)

第4 引用文献
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され本願の出願日前に頒布された、上記引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、下線は当審が加筆したものも含む。以下、同様である。)。
(1a)1頁左下欄8?10行
「技術分野
本発明は、自動車の足周りや産業機械等に使用されるコイルばねに関する。」
(1b)1頁左下欄20行?同頁右下欄18行
「すなわち、座巻部に作用する分布力の合力作用位置はコイル中心に合致しておらず、材料素線に生ずる応力はコイルの場所によって異なる。つまり、材料素線には各巻ごとに強度的に楽なところaと、きびしいところbとができてむらが生じる。このことは、従来の不等ピッチばねや円すいコイルばね等所謂非線形特性をねらったばねにも同様に生ずる現象である。
したがって従来は、ばねの素線径を強度的にきびしいところの設計基準に合せて全体を設定していた。そのため、ばね全体として重量が大となり、また各部の応力の不均一により,曲げや捩りなどのモードが発生し、振動モードが均一でなくなる。
目 的
本発明は、コイルばね全体の軽量化を図るとともに、その振動モードの均質化を図ることを目的とするものである。」
(1c)2頁左上欄5?18行
「第3図において強度的に楽なところaに対応するところの材料素線の線径を小径部2となし、また、強度的にきびしいところbに対応するところの材料素線の線径を大径部3としてなるものである。第6図は同様に第4図におけるa、bと対応するところをそれぞれ小径部2、大径部3としてなるものである。・・・上記は線形特性を有する円筒状コイルばねの例である」
(1d)2頁右上欄1?11行
「効 果
従来の円筒コイルばねにおける主応力とコイル巻数との関係は第7図の曲線4に示すとおりで、コイルの巻線の位置によって主応力が変動するが、本発明の場合は、同図の直線5に示すように、コイルの巻線による主応力の変化は殆どない。したがって、捩り等のモードが発生せず、振動モードが均質化する。そして小径部を設けたことによりばね全体の重量を軽減することができ、省資源ひいては省エネルギーに貢献するところ大である。」
(1e)
第6図は本発明の実施例の一部断面図であるところ、第6図から、円筒状コイルばねは、大径部3と小径部2との間で素線径が連続的に変化する線径変化部を具備していることが、看取できる。

(2)引用文献1に記載された発明
摘記(1a)?(1d)、上記(1e)及び第1?7図を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明1]
「強度的に楽なところaに対応するところの材料素線の線径を小径部2となし、強度的にきびしいところbに対応するところの材料素線の線径を大径部3としてなり、大径部3と小径部2との間で素線径が連続的に変化する線径変化部を具備している、自動車の足周りに使用される、円筒状コイルばね。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され本願の出願日前に頒布された、上記引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(2a)
「【0019】
フロントクロスメンバ22における車幅方向外端22Aと車幅方向中央22Bとの間には、前後一対のロアアーム支持片28が設けられており、リヤクロスメンバ24における車幅方向外端24Aと車幅方向中央24Bとの間には、前後一対のロアアーム支持片30が設けられている。
【0020】
図3に示される如く、ロアアーム支持片28は、車幅方向に長手とされたフロントロアアーム32の車幅方向内端32Aを、車体前後方向に沿う回動軸34廻りに可動自在に支持している。図5及び図6に示される如く、ロアアーム支持片30は、車幅方向に長手とされたアーム部材としてのリヤロアアーム36の車幅方向内端36Aを、車体前後方向に沿う回動軸38(図6参照)廻りに可動自在に支持している。フロントロアアーム32、リヤロアアーム36の各車幅方向外端32B、36Bは、車輪(ホイル)を回転自在に支持するための図示しないアクスルキャリヤに連結されている。
【0021】
図6に示される如く、リヤロアアーム36の長手方向中央部には、スプリング座36Cが形成されている。そして、圧縮コイルスプリング18は、その軸線が車体上下方向に略一致する姿勢で、スプリング座36Cと、後述するようにリヤサイドメンバ12に固定的に保持されたサスメンマウントブレース20のスプリング受け部20Aとの間に配設されている。この実施形態では、圧縮コイルスプリング18は、下端18A及び上端18Bの径が中央部18Cの径よりも絞られたピッグテール形状とされている。また、圧縮コイルスプリング18の下端18Aとスプリング座36Cとの間には、スプリングシート40が挟み込まれており、圧縮コイルスプリング18の上端18Bとサスメンマウントブレース20のスプリング受け部20Aとの間には、スプリングシート42が挟み込まれている。
【0022】
これにより、リヤサスペンション16では、リヤクロスメンバ24すなわち後輪が車体に対し弾性的に支持され、リヤロアアーム36の各車幅方向外端36Bすなわち後輪の車体上下方向の変位が許容される構成とされている。圧縮コイルスプリング18は、後輪の上下動に伴って変形(圧縮)量を変化させて反力を付与しつつ、リヤロアアーム36からの荷重をリヤサイドメンバ12に伝えて該リヤサイドメンバ12に後輪を支持させる構成とされている。」
(2b)
「【0038】
上記構成のリヤサスペンション部構造10では、リヤサスペンション16を構成する圧縮コイルスプリング18、ショックアブソーバ44の荷重が車体に支持される。圧縮コイルスプリング18からの荷重は、サスメンマウントブレース20のスプリング受け部20A、カラー74を介してリヤサイドメンバ12にて支持される。リヤサスペンション部構造10が適用された自動車の走行に伴って後輪すなわちリヤロアアーム36の車幅方向外端36Bがリヤサイドメンバ12(車体)に対し上下動すると、圧縮コイルスプリング18の圧縮量が変化してリヤサイドメンバ12への伝達荷重が変動する。」
(2c)
「【0041】
・・・また図9に模式化して示される如く、リヤロアアーム36の揺動に伴って圧縮コイルスプリング18における回動軸38に近い部分18Cと遠い部分18Dとで圧縮量が異なる変形(所謂アコーディオン伸縮)が生じる・・・」
(2d)
「【0049】
なお、上記実施形態では、リヤサスペンション部構造10、110がマルチリンク式のリヤサスペンション16を備えた自動車に適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えばトレーリングアーム式のリヤサスペンション等の各種形式のリヤサスペンションを備えた自動車に適用することができる。」

(2)引用文献2に記載された発明
摘記(2a)?(2d)及び図1?9を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明2]
「リヤクロスメンバ24には前後一対のロアアーム支持片30が設けられ、ロアアーム支持片30は、車幅方向に長手とされたリヤロアアーム36の車幅方向内端36Aを、車体前後方向に沿う回動軸38廻りに可動自在に支持し、
リヤロアアーム36の長手方向中央部には、スプリング座36Cが形成され、
圧縮コイルスプリング18は、その軸線が車体上下方向に略一致する姿勢で、スプリング座36Cと、リヤサイドメンバ12に固定的に保持されたサスメンマウントブレース20のスプリング受け部20Aとの間に配設され、
圧縮コイルスプリング18は、後輪の上下動に伴って圧縮量を変化させて反力を付与しつつ、リヤロアアーム36からの荷重をリヤサイドメンバ12に伝えて該リヤサイドメンバ12に後輪を支持させる構成とされ、
リヤロアアーム36の各車幅方向外端36Bすなわち後輪の車体上下方向の変位が許容される構成とされている、マルチリンク式のリヤサスペンション16。」

3 引用文献4について
(1)引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され本願の出願日前に頒布された、上記引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(4a)1頁左下欄14行?同頁右下欄5行
「本発明はコイルばねの新規構造に係るものである。圧縮コイルばねは機器適応性に優れ広範な応用分野を有する。その代表的構造は第1図示の円筒形コイルばねであって、横断面同一の円形線材によって多数のヘリカル状巻条1を巻回し、両端部に約3/4巻の偏平状の座巻条2を形成したことを特徴とする。更にこの改良として適用線材の両端部を緩かにテーパー加工して、座巻条2の方向に漸進的に線材横断面が減少する円筒形コイルばねによって剛性を低下させて負荷時に前記テーパー加工線材によるばね両端部巻条を優先的に隣接巻条の線間密着を図り、」
(4b)2頁左上欄8行?同頁右上欄1行
「第3図示は本発明の実施例であって、コイルばね軸心に直交する図示上下方向のばね中心線6を含むばね中央要部の円筒状巻条7は横断面円形の同一径線材9を同一巻条径D_(3)に複数巻回し、円筒状巻条7の端末から座巻条10の方向へ連続的に横断面が次第に漸減する線材9′を、巻条径D_(3)より連続的に座巻条径D_(4)^(n)の方向に漸減するD_(4)′D_(4)″D_(4)^(n)の巻条径であって且最大負荷時に隣接巻条線材9′が偏平渦巻状に位置し合うよう相対関係を満す截頭円錐形巻条8をヘリカル状に巻回形成し、座巻条10はばね座11に対応し約3/4巻偏平巻回した構造を特徴とし、中心線6に対してばね構造は原則的に対称である。」
(4c)2頁右上欄13?17行
「一方材料加工度において線材横断面が漸減するテーパー加工は本発明が前記公知ばねに対比して定性的に最短であり、加工度および材料保留において優位性がある。」
(4d)2頁右上欄18行?同頁左下欄3行
「以上のように本発明は従来のコイルばね概念を逸脱する新規思想に基づいて、前記公知構成における長所を併有し短所を補完する実用性に優れた非線形特性コイルばねを提供し、機器緩衝体として、例えば自動車用懸架装置に優れた適用効果を奏するものである。」

第5 対比
1 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)
引用発明1の「円筒状コイルばね」は、「小径部2」、「大径部3」及び「線径変化部」から構成されており、引用発明1において、「小径部2」は、「強度的に楽なところaに対応するところの材料素線の線径」であり、「大径部3」は、「強度的にきびしいところbに対応するところの材料素線の線径」であり、「大径部3と小径部2との間で素線径が連続的に変化する線径変化部を具備している」から、引用発明1の「小径部2」は、最小の線径部分であり、引用発明1の「大径部3」は、最大の線径部分であり、それぞれ、本願発明の「素線径が前記大径素線部の素線径より小さい小径素線部」及び「素線径が該素線の平均素線径より大きい大径素線部」に相当する。
引用発明の「円筒状コイルばね」は、上記各「素線」が、全体で螺旋形に形成されることで、円筒状となっているといえるから、本願発明の「螺旋形に形成された素線を有し」ているといえる。
(2)
引用発明1の「大径部3と小径部2との間で素線径が連続的に変化する線径変化部」は、本願発明の「前記大径素線部と前記小径素線部との間で素線径が連続的に変化する線径変化部」に相当する。
(3)
懸架装置は、自動車の足周りの構成部品であることから、引用発明1の「自動車の足周りに使用される、円筒状コイルばね」と、本願発明の「懸架装置用圧縮コイルばね」とは、「自動車の足周り用コイルばね」の限りで共通する。
(4)
上記(1)?(3)を踏まえると、引用発明1の「強度的に楽なところaに対応するところの材料素線の線径を小径部2となし、強度的にきびしいところbに対応するところの材料素線の線径を大径部3としてなり、大径部3と小径部2との間で素線径が連続的に変化する線径変化部を具備している、自動車の足周りに使用される、円筒状コイルばね」と、本願発明の「車体に支持されたピボットを中心に上下方向に揺動自在なアーム部材を備えたニーアクションタイプの懸架装置の下側のばね座と上側のばね座との間に配置される圧縮コイルばねであって、螺旋形に成形された素線を有し、該素線が、前記ピボットに近い側に配置されかつ素線径が該素線の平均素線径より大きい大径素線部と、前記ピボットから遠い側に配置されかつ素線径が前記大径素線部の素線径より小さい小径素線部と、前記大径素線部と前記小径素線部との間で素線径が連続的に変化する線径変化部と、前記下側のばね座に接しかつ素線径が前記小径素線部の素線径よりも小さい下側の座巻部と、前記上側のばね座に接しかつ素線径が前記小径素線部の素線径よりも小さい上側の座巻部と、を具備したことを特徴とする懸架装置用圧縮コイルばね」とは、「コイルばねであって、螺旋形に成形された素線を有し、該素線が、素線径が該素線の平均素線径より大きい大径素線部と、素線径が前記大径素線部の素線径より小さい小径素線部と、前記大径素線部と前記小径素線部との間で素線径が連続的に変化する線径変化部と、を具備した自動車の足周り用コイルばね」の限りで共通する。

2 一致点及び相違点
以上から、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「コイルばねであって、
螺旋形に成形された素線を有し、
該素線が、
素線径が該素線の平均素線径より大きい大径素線部と、
素線径が前記大径素線部の素線径より小さい小径素線部と、
前記大径素線部と前記小径素線部との間で素線径が連続的に変化する線径変化部と、
を具備した自動車の足周り用コイルばね。」
<相違点>
本願発明は、自動車の足周り用コイルばねが、「車体に支持されたピボットを中心に上下方向に揺動自在なアーム部材を備えたニーアクションタイプの懸架装置の下側のばね座と上側のばね座との間に配置される圧縮コイルばね」で、「懸架装置用」であり、
大径素線部が「前記ピボットに近い側に配置され」、
小径素線部が「前記ピボットから遠い側に配置され」、
素線が、「前記下側のばね座に接しかつ素線径が前記小径素線部の素線径よりも小さい下側の座巻部と、前記上側のばね座に接しかつ素線径が前記小径素線部の素線径よりも小さい上側の座巻部と」を具備したのに対して、引用発明1は、そのように特定されていない点。

第6 判断
以下、相違点について検討する。
1 引用発明2について
本願発明と引用発明2とを対比すると、以下のことがいえる。
(1)

引用発明2の「リヤクロスメンバ24」は、車体の構成部品であり、「リヤクロスメンバ24」に設けられる「前後一対のロアアーム支持片30」も、車体の構成部品といえる。

引用発明2の「ロアアーム支持片30は、車幅方向に長手とされたリヤロアアーム36の車幅方向内端36Aを、車体前後方向に沿う回動軸38廻りに可動自在に支持し」ていること(図6も参照)から、引用発明2の「車体前後方向に沿う回動軸38」は、「ロアアーム支持片30」に支持されているといえる。

引用発明2の「ロアアーム支持片30」は、車体の構成部品であり(上記ア)、引用発明2の「車体前後方向に沿う回動軸38」は、「ロアアーム支持片30」に支持されているから(上記イ)、引用発明2の「車体前後方向に沿う回動軸38」は、本願発明の「車体に支持されたピボット」に相当する。

引用発明2の「リヤロアアーム36」は、「アーム部材」であるところ、引用発明2の「車幅方向に長手とされたリヤロアアーム36」の「車幅方向内端36A」は、「ロアアーム支持片30」に、「車体前後方向に沿う回動軸38廻りに可動自在に支持」されているから、引用発明2の「車体前後方向に沿う回動軸38」が、本願発明の「車体に支持されたピボット」に相当すること(上記ウ)を踏まえると、引用発明2の「リヤロアアーム36」は、本願発明の「車体に支持されたピボットを中心に上下方向に揺動自在なアーム部材」に相当する。
(2)
引用発明2の「マルチリンク式のリヤサスペンション16」は、「マルチリンク式」であるから、独立懸架式であるといえる。
独立懸架式が、その動作(人間の膝の動きのような動作)から、ニーアクションタイプといわれていることは、技術常識である。
そして、この技術常識に併せて、引用発明2の「マルチリンク式のリヤサスペンション16」の構成部品として「リヤロアアーム36」が設けられ、「リヤロアアーム36の各車幅方向外端36Bすなわち後輪の車体上下方向の変位が許容される構成とされている」こと、及び、引用発明2の「リヤロアアーム36」は、本願発明の「車体に支持されたピボットを中心に上下方向に揺動自在なアーム部材」に相当すること(上記(1)エ)を踏まえれば、引用発明2の「マルチリンク式のリヤサスペンション16」は、本願発明の「ニーアクションタイプの懸架装置」に相当するといえる。
(3)
引用発明2の「スプリング座36C」は、「リヤロアアーム36の長手方向中央部」に「形成され」ていること、及び、引用発明2の「リヤロアアーム36」が、「マルチリンク式のリヤサスペンション16」を構成する部品であり(上記(2))、本願発明の「車体に支持されたピボットを中心に上下方向に揺動自在なアーム部材」に相当すること(上記(1)エ)に併せ、図5及び6の「リヤロアアーム36」における「スプリング座36C」の配置も参照すると、引用発明2の「スプリング座36C」は、本願発明の「ニーアクションタイプの懸架装置の下側のばね座」に相当する。
(4)
引用発明2において、「圧縮コイルスプリング18は、その軸線が車体上下方向に略一致する姿勢で、スプリング座36Cと、リヤサイドメンバ12に固定的に保持されたサスメンマウントブレース20のスプリング受け部20Aとの間に配設され」ている。
引用発明2の上記「配設」に関する「圧縮コイルスプリング18」の「車体上下方向に略一致する」「軸線」の方向と、引用発明2の「スプリング座36C」が、本願発明の「ニーアクションタイプの懸架装置の下側のばね座」に相当すること(上記(3))とを踏まえると、引用発明2の「リヤサイドメンバ12に固定的に保持されたサスメンマウントブレース20のスプリング受け部20A」は、「スプリング座36C」の「上方に配置され」ているといえるから、引用発明の「スプリング受け部20A」は、本願発明の「ニーアクションタイプの懸架装置」の「上側のばね座」に相当する。
(5)

引用発明2の「圧縮コイルスプリング18」は、「その軸線が車体上下方向に略一致する姿勢」で、ニーアクションタイプの懸架装置の下側のばね座である「スプリング座36C」(上記(3))と、ニーアクションタイプの懸架装置の上側のばね座である「スプリング受け部20A」(上記(4))との間に配置されている。

引用文献2には、「自動車の走行に伴って後輪すなわちリヤロアアーム36の車幅方向外端36Bがリヤサイドメンバ12(車体)に対し上下動する」(摘記(2b))と記載されているから、引用発明2の「後輪の上下動」は、車体に対して後輪が上下動することであるところ、上記アの配置を前提としている、引用発明2の「圧縮コイルスプリング18」は、「後輪の上下動に伴って圧縮量を変化させて」いるから、車体に対して後輪が上下動しない状態でも、圧縮量が有る、すなわち、圧縮された状態であるといえる。

したがって、引用発明2の「圧縮コイルスプリング18」は、引用発明の「ニーアクションタイプの懸架装置の下側のばね座と上側のばね座との間に配置される圧縮コイルばね」に相当する。
(6)
上記(1)から(5)で述べたことを踏まえ、本願発明の記載に則ると、引用発明2は、「圧縮コイルスプリング18」に関して、「車体に支持されたピボットを中心に上下方向に揺動自在なアーム部材を備えたニーアクションタイプの懸架装置の下側のばね座と上側のばね座との間に配置される圧縮コイルばね。」であるともいえる。

2 引用発明2(ニーアクションタイプの懸架装置)の動作について
引用発明2のニーアクションタイプの懸架装置の動作、特に、「圧縮コイルスプリング18」に関連する動作について、以下のことがいえる。
(1)
引用発明2の「圧縮量を変化させ」ることに関して、引用文献2には、「図9に模式化して示される如く、リヤロアアーム36の揺動に伴って圧縮コイルスプリング18における回動軸38に近い部分18Cと遠い部分18Dとで圧縮量が異なる変形(所謂アコーディオン伸縮)が生じる」(摘記(2c))と記載されている。
(2)
引用発明2の「リヤサスペンション16」では、「リヤロアアーム36の長手方向中央部には、スプリング座36Cが形成され」、「圧縮コイルスプリング18は、その軸線が車体上下方向に略一致する姿勢で、スプリング座36Cと、リヤサイドメンバ12に固定的に保持されたサスメンマウントブレース20のスプリング受け部20Aとの間に配設され」ているところ、図9の二点鎖線で示されるリヤロアアーム36の状態は、圧縮コイルスプリング18が、その軸線が車体上下方向に略一致する姿勢といえるから、下側のばね座と前記上側のばね座との間で圧縮された状態(以下、「圧縮コイルスプリング18の初期状態」という。)となっている。
引用発明2の「圧縮コイルスプリング18」は、「後輪の上下動に伴って圧縮量を変化させて反力を付与」するものであること、引用文献2には、「自動車の走行に伴って後輪すなわちリヤロアアーム36の車幅方向外端36Bがリヤサイドメンバ12(車体)に対し上下動すると、圧縮コイルスプリング18の圧縮量が変化」すると記載されていること(摘記(2b))、及び、上記1(5)イで述べたとおりのことがいえるから、上記の圧縮コイルスプリング18の初期状態は、車体に対して後輪が上下動していない状態を示しているといえる(なお、実線で示される、リヤロアアーム36の状態は、リバウンドの状態と考えられる。)。
(3)
この車体に対して後輪が上下動していない状態から、後輪が最も上側に動いたフルバンプの状態、すなわち、リヤロアアーム36が上側に回動して、リヤロアアーム36の車幅方向外端(図9のOUT側の端)が、その上に位置しているスプリング受け部20Aに最も近づいた状態となると、圧縮コイルスプリング18の反ピボット側(反回動軸38側)における、リヤロアアーム36とスプリング受け部20Aとの間の距離が、圧縮コイルスプリング18のピボット側(回動軸38側)における、リヤロアアーム36とスプリング受け部20Aとの間の距離よりも、小さくなることが明らかであり、その距離が小さいほど、圧縮コイルスプリング18は、より圧縮された状態となるから、引用発明2は、フルバンプの状態では、圧縮コイルスプリング18の反ピボット側(反回動軸38側)における圧縮量が、圧縮コイルスプリング18のピボット側(回動軸38側)における圧縮量よりも、多くなるといえる。

3 周知技術について
例えば、引用文献4に示すように、「自動車用懸架装置」(摘記(4d))用のコイルばねにおいて、「座巻条の方向に漸進的に線材横断面が減少する」構造(摘記(4a))や「座巻条の方向へ連続的に横断面が次第に漸減する」構造(摘記(4b))、すなわち、他の部分に比べて座巻部の線径が減少し、材料が削減されるといえる構造を採用することは、周知技術といえる。

4 引用発明2及び周知技術の引用発明1への適用について
(1)
本願発明の課題は「ニーアクションタイプの懸架装置に使用される圧縮コイルばねの応力分布を均等化に近付けることができる」「懸架装置用圧縮コイルばねを提供すること」であり(本願の明細書の段落【0006】)、引用発明1の課題は、「ばね全体として重量が大となり、また各部の応力の不均一により,曲げや捩りなどのモードが発生し、振動モードが均一でなくなる」ことを解決し、「コイルばね全体の軽量化を図るとともに、その振動モードの均質化を図る」ものであり(摘記(1b))、これらの課題は、「コイルばねの応力分布を均等化する」という点で共通しているといえる。
(2)
上記2(3)で述べたとおり、引用発明2は、フルバンプの状態では、圧縮コイルスプリング18の反ピボット側における圧縮量が、圧縮コイルスプリング18のピボット側における圧縮量よりも、多くなるといえるところ、コイルスプリングでは、圧縮量が多い側が、圧縮量が少ない側に比べて、強度的に楽なところとなることは、技術常識である(当審拒絶理由に対する平成30年2月20付けの意見書及び同年3月13日の応対記録における補足説明も参照)。
したがって、引用発明2の「車体に支持されたピボットを中心に上下方向に揺動自在なアーム部材を備えたニーアクションタイプの懸架装置の下側のばね座と上側のばね座との間に配置される圧縮コイルばね」を備えた、「ニーアクションタイプの懸架装置」(上記1(6))が、フルバンプの状態となった場合には、圧縮コイルスプリング18である「圧縮コイルばね」は、ピボットから遠い側は、ピボットに近い側よりも圧縮量が多くなり、強度的に楽なところとなる、すなわち、圧縮コイルばねの素線に関して、ピボットから近い側の素線に比べて、ピボットから遠い側の素線は、強度的に楽なところとなっているといえる。
(3)
自動車の足周りの構成部品のうち、コイルばねを使用する部品に懸架装置が該当することは、技術常識であり、この技術常識に鑑みると、引用発明の「自動車の足周りに使用される、円筒状コイルばね」は、懸架装置用コイルばねであるとも解せるし、少なくとも、引用発明の「自動車の足周りに使用される、円筒状コイルばね」から、懸架装置用コイルばねを想到することは自然なことであり、引用発明1の「自動車の足回りに使用される、円筒状コイルばね」の具体的な用途として、引用発明2の「ニーアクションタイプの懸架装置」の「コイルばね」を見出す程度のことは、当業者であれば何ら創意工夫を必要とするものではない。
そして、引用発明2の「ニーアクションタイプの懸架装置」のフルバンプの状態は、上記(2)で述べたとおりであるから、引用発明2の「コイルばね」として、引用発明1の「円筒状コイルばね」を見出し選定する場合に、引用発明1の「コイルばねの応力分布を均等化する」という課題(上記(1))が解決できるように、引用発明1の「材料素線の線径」が「小径部2」となっている「強度的に楽なところa」が、ピボットに近い側よりも圧縮量が多いピボットから遠い側となるように設定し、併せて、引用発明1の「コイルばね全体の軽量化を図る」という課題(上記(1))も解決できるように、例えば引用文献4に示す、材料が削減できる、周知技術(上記3)を適用することで、
引用発明1の「自動車の足回りに使用される、円筒状コイルばね」を、「
車体に支持されたピボットを中心に上下方向に揺動自在なアーム部材を備えたニーアクションタイプの懸架装置の下側のばね座と上側のばね座との間に配置される圧縮コイルばね」及び「懸架装置用」として構成し、
その「コイルばね」について、大径素線部が「ピボットに近い側に配置され」、 小径素線部が「ピボットから遠い側に配置され」、 素線が、「下側のばね座に接しかつ素線径が前記小径素線部の素線径よりも小さい下側の座巻部と、上側のばね座に接しかつ素線径が前記小径素線部の素線径よりも小さい上側の座巻部と」を具備するようにして、上記相違点に係る本願発明の構成に至ることは、当業者が容易になし得たといえる。

5 本願発明の効果について
本願発明が奏する効果について、以下、検討する。
引用発明1の「コイルばね」は、「振動モードの均質化」(引用文献1の第7図を参照すると、「応力分布の均等化」といえる。)及び「軽量化」という効果を奏するといえるところ(摘記(1b)の目的及び(1d))、引用発明2を適用することで、ニーアクションタイプの懸架装置の圧縮コイルばねとされた場合には(上記(3))、本願発明の「ニーアクションタイプの懸架装置に使われる圧縮コイルばねの応力分布を均等化に近付けることができることにより、懸架装置用圧縮コイルばねの軽量化が図れ、ひいてはニーアクションタイプの懸架装置が搭載された車両の軽量化に寄与することができる。」という効果を奏するといえるし、加えて、周知技術(上記3)を適用することで、上下の巻座部の素線径を小さくすることができ、より軽量化ができるといえるから、本願発明が奏する効果は、予測できる効果であって、顕著な効果であるとはいえない。

6 まとめ
以上から、本願発明は、引用発明1、引用発明2、周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-03 
結審通知日 2018-04-10 
審決日 2018-05-01 
出願番号 特願2012-252520(P2012-252520)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田々井 正吾平野 貴也  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 出口 昌哉
氏原 康宏
発明の名称 懸架装置と、懸架装置用圧縮コイルばね  
代理人 特許業務法人スズエ国際特許事務所  
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