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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1341449
審判番号 不服2017-5322  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-13 
確定日 2018-06-14 
事件の表示 特願2013- 59782「光ネットワークにおける波長再割り当て」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月30日出願公開、特開2013-198167〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年3月22日(パリ条約による優先権主張2012年3月22日、米国)の出願であって、平成28年10月12日付けで拒絶理由が通知され、同年12月9日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年3月9日付けで拒絶査定されたところ、同年4月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 平成29年4月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成29年4月13日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。

「 【請求項1】
光信号の波長を再割り当てする光ネットワークであって、前記光ネットワークは、
光経路に沿って光信号を送信するよう構成された第1の光ノードであって、前記第1の光ノードは、前記光信号の搬送波波長を再割り当てするために、連続関数に従って前記光信号の搬送波波長を第1の波長から第2の波長に調整する、第1の光ノードと、
前記光信号を受信するよう構成された第2の光ノードであって、前記第2の光ノードは、前記光信号の前記搬送波波長が前記第1の光ノードにより調整されるのと同じ又は実質的に同一のレートで基準光信号の波長を調整して前記光信号の搬送波波長に近付けるよう構成されたフィードバックループを有する、第2の光ノードと、
前記第1の光ノードと前記第2の光ノードとの間に前記光経路内に配置された第3の光ノードであって、前記第3の光ノードの光パススルー帯域幅は、前記光信号の搬送波波長が調整される間、前記第1の波長と前記第2の波長との間の範囲に維持される、第3の光ノードと、
を有する光ネットワーク。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年12月9日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2は次のとおりである。(引用する請求項1とともに示す。)

「 【請求項1】
光信号の波長を再割り当てする光ネットワークであって、前記光ネットワークは、
光経路に沿って光信号を送信するよう構成された第1の光ノードであって、前記第1の光ノードは、前記光信号の搬送波波長を再割り当てするために、連続関数に従って前記光信号の搬送波波長を第1の波長から第2の波長に調整する、第1の光ノードと、
前記光信号を受信するよう構成された第2の光ノードであって、前記第2の光ノードは、前記光信号の前記搬送波波長が前記第1の光ノードにより調整されるのと同じ又は実質的に同一のレートで基準光信号の波長を調整して前記光信号の搬送波波長に近付けるよう構成されたフィードバックループを有する、第2の光ノードと、
を有する光ネットワーク。
【請求項2】
前記第1の光ノードと前記第2の光ノードとの間に前記光経路内に配置された第3の光ノードであって、前記第3の光ノードの光パススルー帯域幅は、前記光信号の搬送波波長に基づき調整される、第3の光ノード、
を更に有する請求項1に記載の光ネットワーク。」

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、シフト補正の有無、補正の目的要件
上記補正は、本件補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である第3の光ノードの光パススルー帯域幅の調整について、「前記光信号の搬送波波長に基づき調整される」と規定していたものを、「前記光信号の搬送波波長が調整される間、前記第1の波長と前記第2の波長との間の範囲に維持される」とするものである。
そうしてみると、上記補正は、「光信号の搬送波波長に基づ」いた「調整」を、光パススルー帯域幅が第1の波長と前記第2の波長との間の範囲とする調整に特定し、さらに、「前記光信号の搬送波波長が調整される間」「維持される」との限定を加える補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
したがって、上記補正は特許法17条の2第5項2号(補正の目的)の規定に適合している。また、特許法17条の2第3項(新規事項)及び同法17条の2第4項(シフト補正)の規定に違反しないことも明らかである。

(2)独立特許要件
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

ア.本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものと認める。

イ.引用例の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、F.Cugini他,Push-Pull Technique for Defragmentation in Flexible Optical Networks,OFC/NFOEC 2012,米国,2012年3月8日(以下、「引用例」という。)には以下の記載がある。

(ア)「1.Introduction
・・・・A number of defragmentation (i.e., re-optimization) solutions have been recently proposed for flexible optical networks [4-6]. ・・・・
In this study, we propose and evaluate an effective defragmentation technique, called Push-Pull technique, specifically designed for flexible optical networks.」(1頁11行、17?18行、21?22行)(当審訳:1.前書き ・・・・近年、フレキシブル光ネットワークのための多くのデフラグメンテーション(すなわち、再最適化)解決策が提案されている[4-6]。・・・・・本研究では、フレキシブルな光ネットワーク向けに特に設計されたプッシュプル技術と呼ばれる効果的なデフラグ技術を提案し評価する。)

(イ)「2.Defragmentation in optical networks
・・・・・An example to show the advantage achieved through defragmentation is reported in Figs. la-b. The figure shows a portion of a network composed of four nodes and three links. A lightpath from A to B occupies k frequency slots having f_(0) as the nominal central frequency. A second lightpath from B to D occupies k slots on links B-C and C-D (f_(1) the nominal central frequency). This scenario prevents the setup of a new lightpath from A to D even if k slots are globally available along the considered route. In this case, as shown in Fig. 1b, the reroute of lightpath B-D from the nominal central frequency f_(1) to f_(0) efficiently defragments the spectrum utilization, enabling the setup of an A-D lightpath.」(1頁28行、32?38行)(当審訳:2.光ネットワークにおけるデフラグメンテーション ・・・・デフラグメンテーションによって得られる利点を示す例は、図1a-bに示されている。この図は、4つのノードと3つのリンクで構成されるネットワークの一部を示す。AからBへの光路は公称中心周波数としてf_(0)を有するk周波数スロットを占有する。BからDへの第2の光路は、リンクB-C及びC-D(公称中心周波数f_(1))上でkスロットを占有する。たとえkスロットが考慮されたルートの全体に沿って利用可能であるとしても、このシナリオは、新しいAからDへの光路の設定を妨げる。この場合、図1bに示すように、公称中心周波数f_(1)からf_(0)への光路B-Dの経路変更は、効率的にスペクトル利用率をデフラグメントし、光路A-Dの設定を可能にする。)

(ウ)「3.Proposed defragmentation technique
The proposed defragmentation technique, suitable for flexible optical networks thanks to the presence of flexible OXCs (and the absence of arrayed waveguide gratings (AWGs) and fixed-grid OXCs), operates in three steps, as shown in Fig. 1d. The first step consists in the dynamic reconfiguration of the allocated spectrum resources (i.e., the traversed flexible OXCs). The reservation of contiguous and free spectrum frequencies along B-D is performed such that the k slots having f_(0) as nominal central frequency get included within the frequencies allocated to the original lightpath. As a result, at least 2k slots plus possible band guards [2] are allocated to lightpath B-D at the end of the first step.」(2頁1?7行) (当審訳:3.提案されたデフラグメンテーション手法
フレキシブルなOXCの存在(加えて、アレイ導波路回折格子(AWG)と固定グリッドOXCの不在)のおかげによりフレキシブルな光ネットワークに適した、提案されたデフラグメンテーション技術は、図1dに示すように3つのステップで動作する。第1のステップは、割り当てられたスペクトルリソース(すなわち、横断的なフレキシブルなOXC)の動的再構成である。B-Dに沿った連続した空いているスペクトル周波数の予約は、公称中心周波数f_(0)を有するkスロットが光路に割り当てられた周波数内に含まれるように行われる。その結果、少なくとも2kスロットに可能なバンドガード[2]を加えたものが、第1のステップの終わりに光路B-Dに割り当てられる。)

(エ)「The second step consists in re-tuning the original lightpath from the nominal central frequency f_(1) to f_(0). Given f_(B) and f_(D) the actual central frequencies of the transmitter laser at source B and of the local oscillator at the receiver in D, respectively, we have f_(B)●f_(D)●f_(1)(当審注:記号「●」はイコール(=)の上側の横棒を波線符号(?)に置き換えた記号を表す。以下の記載についても同様。) at the beginning of the second step. Then, frequency f_(B) is pushed from f_(1) to f_(0) by tuning the TX laser at a frequency sweep rate f'=df_(B)/dt that, in commercial devices, can typically cover the entire C-band in less than 1 s (i.e., f'●5THz/s). Thanks to its automatic frequency control (AFC) capabilities (see [8], for instance), the coherent RX digitally estimates and compensates the increasing frequency offset Δf=|f_(D)-f_(B)|. Finally, to avoid that Δf exceed the maximum offset tolerance Δf_(MAX) of the AFC, the digital estimate of Δf is used as a feedback error signal to control f_(D). In this way, f_(D) is forced to follow f_(B), slowly pulled from f_(1) to f_(0). Therefore, at the end of the second step, f_(B)●f_(D)●f_(0). Depending on the adopted AFC strategy (e.g., data-aided or non-data aided, open-loop or closed-loop, …), different offset tolerance Δf_(MAX) and tracking speed can be achieved [9].
Typically, for a symbol rate of Rs, the maximum tolerated offset is at least Δf_(MAX)=0.1Rs (even limited by the optoelectronic front-end bandwidth) and a residual (after AFC) offset Δf<10^(-3)Rs should be obtained to avoid performance degradation. Therefore, the AFC can be easily designed (by setting its equivalent bandwidth) to track f' without performance degradation [8][9]. Moreover, the local oscillator frequency f_(D) only needs a rough (more accurate than Δf_(MAX)) and slow (at same rate as f_(B) and with a loop delay shorter than Δf_(MAX)/f') control. As a realistic example, for a DP-QPSK at 100 Gb/s and a laser sweep rate f'=5THz/s, considering f_(D) controlled with an accuracy smaller than 2.5 GHz and a loop delay shorter than 0.5 ms, the re-tuning operation is completed in less than 1 s. In practice, the re-tuning operation is entirely based on capabilities already available in the coherent receiver and it requires no additional costs or complexity.」(2頁8?26行)(当審訳:第2のステップは、光路の公称中心周波数f_(1)からf_(0)へ再調整するものである。ソースBにおける送信レーザ、及び受信機Dの局部発振器のそれぞれの実際の中心周波数として与えられるf_(B)とf_(D)は、第2のステップの始めにおいてf_(B)●f_(D)●f_(1)となる。次に、TXレーザを周波数掃引速度f’=df_(B)/dtで調整することによって周波数f_(B)はf_(1)からf_(0)に押され、それは民生部品ではCバンドの全体を一般的に1秒未満でカバーできる速度である(すなわち、f’●5THz/s)。自動周波数制御(AFC)の能力(例えば、[8]を参照)のおかげで、コヒーレントRXは、オフセット周波数Δf=|f_(D)-f_(B)|の増加をデジタル的に推定し補償する。最後に、ΔfがAFCの最大オフセット許容値Δf_(MAX)を超えることを避けるために、Δfのデジタル推定値は、f_(D)を制御するフィードバック誤差信号として用いられる。このように、f_(D)は、f_(B)を追わされ、f_(1)からf_(0)までゆっくりと引っ張られる。ゆえに、第2のステップの終わりには、f_(B)●f_(D)●f_(0)となる。採用されるAFC戦略(例えば、データ支援又は非データ支援、開ループ又は閉ループ)次第で、異なるオフセット許容値Δf_(MAX)及び追跡速度が達成可能である[9]。
一般的には、Rsのシンボルレート対して、最大許容オフセットは、(光電子フロントエンド帯域幅により制限されても)少なくともΔf_(MAX)=0.1Rsであり、残りの(AFC後の)オフセットΔf<10^(-3)Rsは、性能低下を回避するために取得されるべきである。従って、AFCは、性能が低下することなく、f’を追跡するように(その等価帯域幅を設定することにより)容易に設計できる[8][9]。さらに、局部発振器周波数f_(D)は、大まかで(Δf_(MAX)よりも正確であり)低速な(f_(B)と同一の速度であり、Δf_(MAX)=f’よりも短いループ遅延を含む)制御を必要とするのみである。現実的な例として、100Gb/sでレーザー掃引速度f’=5THz/sのDP-QPSKに対して、2.5GHzを下回る精度及び0.5msより短いループ遅延で制御されるf_(D)を考慮すると、再調整動作は、1秒未満で完了する。実際には、再チューニング動作は、コヒーレント受信機で既に利用可能な能力に完全に基づいており、追加コストまたは複雑性を必要としない。)

(オ)「The third step, consists in the further dynamic reconfiguration of the allocated spectrum resources. The release of spectrum frequencies along B-D is performed such that only the k slots having f_(0) as nominal central frequency remain included within the frequencies allocated to the B-D lightpath.」(2頁27?29行)(当審訳:第3のステップは、割り当てられたスペクトルリソースのさらなる動的再構成である。B-Dにおけるスペクトラム周波数の解放は、B-D光路に割り当てられた周波数を含む公称中心周波数f_(0)を有するkスロットだけが残るように実行される。)

(カ)Fig.1(a)?(d)として以下の図面が記載されている。


上記記載から、引用例には、次の技術的事項が記載されている。

a 上記(ア)?(カ)によれば、引用例は光ネットワークに適したデフラグメンテーションを行っており、当該デフラグメンテーションは光路の周波数を変更することによって行われているから、引用例は光路の周波数を再調整する光ネットワークに関するものということができる。

b 上記(エ)によれば、ソースBにおいてTXレーザが調整され、周波数掃引速度f’=df_(B)/dtで、TXレーザから送信される光信号の周波数f_(B)がf_(1)からf_(0)に変更される。ここで、周波数掃引速度f’=df_(B)/dtで周波数f_(B)が調整されていることから、周波数f_(B)が連続的に変化することは明らかである。また、ソースBが光路B-Dに対してTXレーザにより光信号を送信することも明らかである。
そうすると、引用例は、「光路B-Dに対してTXレーザにより光信号を送信するソースB」を有し、当該ソースBが「送信される光信号の周波数f_(B)をf_(1)からf_(0)に連続的に変化」させているということができる。

c 上記(イ)、(エ)及び(カ)を参照すれば、受信機DはソースBから送信された光信号を受信していることは明らかである。
そして、上記(エ)には、受信機Dにおいて、自動周波数制御(AFC)により、Δf=|f_(D)-f_(B)|がAFCの最大オフセット許容値Δf_(MAX)を超えることを避けるために、Δfのデジタル推定値を局部発信周波数f_(D)を制御するフィードバック誤差信号として使うことが記載されている。そうしてみると、引用例では、局部発信周波数f_(D)を制御して、受信される光信号の周波数f_(B)に近付けるようなフィードバック制御を行っていると考えるのが自然である。そしてf_(B)の変化にともない、f_(D)もf_(1)からf_(0)へ変化するが、このときf_(D)の周波数掃引速度は、上記(エ)に「・・・the local oscillator frequency f_(D) only needs ・・・slow (at same rate as f_(B) ・・・・) control. 」と記載されていることから、ソースBから受信される光信号の周波数f_(B)の周波数掃引速度と同じ速度で制御されると考えるのが自然である。
そうしてみると、引用例において、受信機Dは「ソースBから送信された光信号を受信」し、「受信した光信号の周波数f_(B)の周波数掃引速度と同じ速度で局部発信周波数f_(D)を制御して光信号の周波数f_(B)に近付けるようなフィードバック制御を行う」ものということができる。

d 上記(ウ)及び(カ)によれば、第1のステップの終わりにおいて、f_(1)とf_(0)を含む少なくとも2kスロットにバンドガードを加えた周波数帯域を光路B-Dに割り当てており、この割り当ては光信号の周波数f_(B)がf_(1)からf_(0)に変更される間(第2のステップ)、維持されている。また、光路B-D上にノードCが存在し、ノードCは光ネットワークの一構成であるといえる。
そうしてみると、「光信号の周波数f_(B)がf_(1)からf_(0)に変更される間、f_(1)とf_(0)を含む少なくとも2kスロットにバンドガードを加えた周波数帯域が光路B-Dに割り当てられ」、ノードCが「光路B-D上に位置」しているということができる。

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「 光路の周波数を再調整する光ネットワークであって、前記光ネットワークは、
光路B-Dに対してTXレーザにより光信号を送信するソースBであって、送信される光信号の周波数f_(B)をf_(1)からf_(0)に連続的に変化させる前記ソースBと、
前記ソースBから送信された前記光信号を受信する受信機Dであって、受信した光信号の周波数f_(B)の周波数掃引速度と同じ速度で局部発信周波数f_(D)を制御して光信号の周波数f_(B)に近付けるようなフィードバック制御を行う受信機Dと、
前記光路B-D上に位置するノードCと、を有し、
TXレーザより送信される光信号の周波数f_(B)がf_(1)からf_(0)に変更される間、f_(1)とf_(0)を含む少なくとも2kスロットにバンドガードを加えた周波数帯域が光路B-Dに割り当てられる、
光ネットワーク。」

ウ.引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明の光ネットワークでは、光路の周波数の再調整を行っているが、光の周波数と波長は一対一に対応することに鑑みれば、光路の周波数の再調整により、光信号の波長を再調整することになるから、これは本件補正発明の「光信号の波長を再割り当てする」ことに相当する。したがって、引用発明の「光路の周波数を再調整する光ネットワーク」は、本件補正発明の「光信号の波長を再割り当てする光ネットワーク」に相当する。

b 引用発明の「光路B-D」は、本件補正発明の「光経路」に相当する。そして、前記光路B-Dに光信号を送信する「ソースB」は、本件補正発明の「第1の光ノード」に相当する。
引用発明は「送信される光信号の周波数f_(B)をf_(1)からf_(0)に」「変化させ」ているのに対して、本件補正発明では「搬送波波長を第1の波長から第2の波長に調整」しているが、引用発明の「送信される光信号の周波数f_(B)」は本件補正発明の「光信号の搬送波」の周波数に相当すること、及び波長と周波数が一対一に対応していることを勘案すると、引用発明の「送信される光信号の周波数f_(B)をf_(1)からf_(0)に・・・変化させる」ことは本件補正発明の「搬送波波長を第1の波長から第2の波長に調整」に相当する。また、引用発明の「連続的に変化させる」ことは、本件補正発明の「連続関数に従って・・・調整する」ことに相当する。
また、引用発明において周波数f_(B)をf_(1)からf_(0)に変化させることは、光路の周波数を再調整するために行っているから、これは本件補正発明の「前記光信号の搬送波波長を再割り当てするために」行っていることに相当する。

c 引用発明の「前記ソースBから送信された前記光信号を受信する受信機D」は、本件補正発明の「前記光信号を受信するよう構成された第2の光ノード」に相当する。引用発明の「局部発信周波数f_(D)を制御して光信号の周波数f_(B)に近付けるようなフィードバック制御を行う」ことは、光の波長と周波数が一対一に対応すること、またフィードバック制御を行っているからフィードバックループを有していると考えられることを踏まえれば、本件補正発明の「基準光信号の波長を調整して前記光信号の搬送波波長に近付けるよう構成されたフィードバックループを有する」ことに一致する。
また、光の波長と周波数が一対一に対応することを踏まえれば、引用発明の「受信した光信号の周波数f_(B)の周波数掃引速度と同じ速度で局部発信周波数f_(D)を制御」することは、本件補正発明の「前記光信号の前記搬送波波長が前記第1の光ノードにより調整されるのと同じ又は実質的に同一のレートで基準光信号の波長を調整」することに含まれる。

d 引用発明の「ノードC」は光路B-D上に位置しているから、この点で本件補正発明において「前記第1の光ノードと前記第2の光ノードとの間に前記光経路内に配置された」「第3の光ノード」に対応する。
引用発明の「TXレーザより送信される光信号の周波数f_(B)がf_(1)からf_(0)に変更される間」は、本件補正発明の「前記光信号の搬送波波長が調整される間」に相当する。
引用発明で割り当てられる「f_(1)とf_(0)を含む少なくとも2kスロットにバンドガードを加えた周波数帯域」は、f_(1)を中心周波数とする信号と、f_(0)を中心周波数とする信号の間の周波数範囲を示していると解されるから、光の波長が周波数は一対一に対応することを踏まえれば、本件補正発明における「前記第1の波長と前記第2の波長との間の範囲」に相当する。
引用発明の「周波数帯域」は通過可能な周波数帯域を示しているから、光の波長と周波数が一対一に対応することを踏まえれば、本件補正発明の「光パススルー帯域幅」に相当する。
そして、「前記光信号の搬送波波長が調整される間」光パススルー帯域幅(周波数帯域)は維持されるといえる点で、引用発明は本件補正発明と共通する。

したがって、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりと認める。

【一致点】
「 光信号の波長を再割り当てする光ネットワークであって、前記光ネットワークは、
光経路に沿って光信号を送信するよう構成された第1の光ノードであって、前記第1の光ノードは、前記光信号の搬送波波長を再割り当てするために、連続関数に従って前記光信号の搬送波波長を第1の波長から第2の波長に調整する、第1の光ノードと、
前記光信号を受信するよう構成された第2の光ノードであって、前記第2の光ノードは、前記光信号の前記搬送波波長が前記第1の光ノードにより調整されるのと同じ又は実質的に同一のレートで基準光信号の波長を調整して前記光信号の搬送波波長に近付けるよう構成されたフィードバックループを有する、第2の光ノードと、
前記第1の光ノードと前記第2の光ノードとの間に前記光経路内に配置された第3の光ノードと、
を有し、
光パススルー帯域幅は、前記光信号の搬送波波長が調整される間、前記第1の波長と前記第2の波長との間の範囲に維持される、
光ネットワーク。」

【相違点】
「光パススルー帯域幅」に関し、本件補正発明では「第3の光ノード」に設定するのに対し、引用発明では「光路B-D」に設定される点。


エ.判断
上記相違点について判断する。
引用発明においては周波数帯域(光パススルー帯域幅)を「光路B-D」に設定しており、「ノードC」の周波数帯域については明示されていないが、ノードCも光路B-D上に設置されており、光路B-Dと同じ周波数帯域を有さない場合、f_(1)からf_(0)に連続的に変化する光信号を伝送できなくなることに鑑みれば、引用発明において、ノードCに光路B-Dと同様の周波数帯域が設定されていると考えるのが自然であるから、相違点1は実質的な相違点とはいえない。

したがって、本件補正発明は、引用発明と実質的に同一の発明であるといえ、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、本件補正発明は特許法29条1項3号及び同条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明
平成29年4月13日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年12月9日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1及び2に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1.(2)に記載のとおりのものと認める。


2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
●理由1(特許法第29条の2)について
・請求項 1-4、8-10
・引用文献等 1
●理由2(特許法第29条第1項第3号)、理由3(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-4、8-10
・引用文献等 2
●理由3(特許法第29条第2項)について
・請求項 5-7
・引用文献等 2、3
<引用文献等一覧>
1.PCT/EP2012/055153号(特願2014-559110号)
(国際公開第2013/127472号、特表2015-510367号公報)
2.F. Cugini 他,Push-Pull Technique for Defragmentation in Flexible Optical Networks,OFC/NFOEC 2012,米国,2012年3月4日
3.特開2010-124266号公報


3.引用発明
引用発明は、前記第2[理由]2.(2)イ.の項で認定したとおりである。


4.対比・判断
本願発明は本件補正発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した本件補正発明が、前記第2[理由]2.(2)の項で検討したとおり、引用発明と同一の発明であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明と同一であり、また、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と同一の発明であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号及び同条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-27 
結審通知日 2018-04-03 
審決日 2018-04-23 
出願番号 特願2013-59782(P2013-59782)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B)
P 1 8・ 113- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後澤 瑞征  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 川口 貴裕
山本 章裕
発明の名称 光ネットワークにおける波長再割り当て  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 加藤 隆夫  

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