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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63H
管理番号 1341488
審判番号 不服2017-14513  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-02 
確定日 2018-07-03 
事件の表示 特願2013-100970「ラジオコントロール用送信機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月27日出願公開、特開2014-221085、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年5月13日の出願であって、平成29年4月7日付けで拒絶理由が通知され、同年6月19日付けで手続補正がされ、同年6月27日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年7月4日)、これに対し、同年10月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、同年12月26日に前置報告がされたものである。

第2 原査定の理由の概要

「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1-5
・引用文献等 1-3

<引用文献等一覧>
1.特表2004-538520号公報
2.特開2006-102010号公報
3.米国特許出願公開第2012/0112894号明細書」

第3 平成29年10月2日付けの手続補正の適否

1.補正の内容
平成29年10月2日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)による補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし5、及び、補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3は、それぞれ以下のとおりである(下線は補正箇所を示す。)。

(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
スティックベースと、
前記スティックベースに回動自在に保持されるブリッジと、
前記ブリッジに取付けられ、ブリッジを回動させるスティックと、
前記ブリッジの回転軸に取付けられ、一端に電圧が印加されて回転角度に応じた電圧を出力する可変抵抗器と、
前記ブリッジの回転軸に取付けられ、コイルへの通電電流によって粘性が変化する磁気粘性流体によって回転抵抗を変化させるマグネットブレーキと、
前記可変抵抗器からの回転角度に応じて得られるアナログ値をデジタル値に変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器からのデジタル信号が与えられ、前記デジタル信号に基づいて前記マグネットブレーキへの通電電流を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は前記スティックの回動範囲で連続的に前記マグネットブレーキへの通電電流を変化させるものであるラジオコントロール用送信機。
【請求項2】
スティックベースと、
前記スティックベースに回動自在に保持されるブリッジと、
前記ブリッジに取付けられ、ブリッジを回動させるスティックと、
前記ブリッジの回転軸に取付けられ、一端に電圧が印加されて回転角度に応じた電圧を出力する可変抵抗器と、
前記ブリッジの回転軸に取付けられ、コイルへの通電電流によって粘性が変化する磁気粘性流体によって回転抵抗を変化させるマグネットブレーキと、
前記可変抵抗器からの回転角度に応じて得られるアナログ値をデジタル値に変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器からのデジタル信号が与えられ、前記デジタル信号に基づいて前記マグネットブレーキへの通電電流を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は前記スティックの回動範囲の少なくとも1箇所で前記マグネットブレーキへの通電電流を増加させるものであるラジオコントロール用送信機。
【請求項3】
スティックベースと、
前記スティックベースに回動自在に保持されるブリッジと、
前記ブリッジに取付けられ、ブリッジを回動させるスティックと、
前記ブリッジの回転軸に取付けられ、一端に電圧が印加されて回転角度に応じた電圧を出力する可変抵抗器と、
前記ブリッジの回転軸に取付けられ、コイルへの通電電流によって粘性が変化する磁気粘性流体によって回転抵抗を変化させるマグネットブレーキと、
前記可変抵抗器からの回転角度に応じて得られるアナログ値をデジタル値に変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器からのデジタル信号が与えられ、前記デジタル信号に基づいて前記マグネットブレーキへの通電電流を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は前記スティックの回動範囲で一定間隔毎に前記マグネットブレーキへの通電電流を増加させるものであるラジオコントロール用送信機。
【請求項4】
前記マグネットブレーキは、
ケースと、
前記ケース内で前記ブリッジの回転軸に連結された回転円板と、
前記ケース内に収納されたコイルと、
前記ケース内で前記回転円板の周囲に封入された磁気粘性流体と、を有するものである請求項1?3のいずれか1項記載のラジオコントロール用送信機。
【請求項5】
前記制御部は、A/D変換値を保持するメモリを有し、前記A/D変換器から得られるデジタル信号と、前記メモリに保持されているA/D変換値とを比較し、これらが一致するときに前記マグネットブレーキへの通電電流を大きくするよう制御するものである請求項1?3のいずれか1項記載のラジオコントロール用送信機。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
スティックベースと、
前記スティックベースに回動自在に保持されるブリッジと、
前記ブリッジに取付けられ、ブリッジを回動させるスティックと、
前記ブリッジの回転軸に取付けられ、一端に電圧が印加されて回転角度に応じた電圧を出力する可変抵抗器と、
前記ブリッジの回転軸に取付けられ、コイルへの通電電流によって粘性が変化する磁気粘性流体によって回転抵抗を変化させるマグネットブレーキと、
前記可変抵抗器からの回転角度に応じて得られるアナログ値をデジタル値に変換するA/D変換器と、
A/D変換値を保持するメモリを有し、前記A/D変換器からのデジタル信号が与えられ、前記A/D変換器から得られるデジタル信号と、前記メモリに保持されているA/D変換値とを比較し、これらが一致するときにのみ前記マグネットブレーキへの通電電流を大きくするよう制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は前記スティックの回動範囲の少なくとも1箇所で前記マグネットブレーキへの通電電流を増加させるものであるラジオコントロール用送信機。
【請求項2】
スティックベースと、
前記スティックベースに回動自在に保持されるブリッジと、
前記ブリッジに取付けられ、ブリッジを回動させるスティックと、
前記ブリッジの回転軸に取付けられ、一端に電圧が印加されて回転角度に応じた電圧を出力する可変抵抗器と、
前記ブリッジの回転軸に取付けられ、コイルへの通電電流によって粘性が変化する磁気粘性流体によって回転抵抗を変化させるマグネットブレーキと、
前記可変抵抗器からの回転角度に応じて得られるアナログ値をデジタル値に変換するA/D変換器と、
A/D変換値を保持するメモリを有し、前記A/D変換器からのデジタル信号が与えられ、前記A/D変換器から得られるデジタル信号と、前記メモリに保持されているA/D変換値とを比較し、これらが一致するときにのみ前記マグネットブレーキへの通電電流を大きくするよう制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は前記スティックの回動範囲で一定間隔毎に前記マグネットブレーキへの通電電流を増加させるものであるラジオコントロール用送信機。
【請求項3】
前記マグネットブレーキは、
ケースと、
前記ケース内で前記ブリッジの回転軸に連結された回転円板と、
前記ケース内に収納されたコイルと、
前記ケース内で前記回転円板の周囲に封入された磁気粘性流体と、を有するものである請求項1又は2記載のラジオコントロール用送信機。」

2.補正の適否
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1及び5を削除して、補正前の請求項2ないし4をそれぞれ補正後の請求項1ないし3に繰り上げるとともに、補正後の請求項3において引用する請求項の請求項番号を繰り上げること(以下「補正事項1」という。)、及び、補正後の請求項1及び2について、補正前の請求項2及び3の「前記A/D変換器からのデジタル信号が与えられ、前記デジタル信号に基づいて前記マグネットブレーキへの通電電流を制御する制御部」を、「A/D変換値を保持するメモリを有し、前記A/D変換器からのデジタル信号が与えられ、前記A/D変換器から得られるデジタル信号と、前記メモリに保持されているA/D変換値とを比較し、これらが一致するときにのみ前記マグネットブレーキへの通電電流を大きくするよう制御する制御部」と補正すること(以下「補正事項2」という。)を含むものである。

補正事項1は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。
補正事項2は、補正後の請求項1及び2について、補正前の請求項2及び3にそれぞれ記載した発明を特定するために必要な事項である「前記A/D変換器からのデジタル信号が与えられ、前記デジタル信号に基づいて前記マグネットブレーキへの通電電流を制御する制御部」を、「A/D変換値を保持するメモリを有し、前記A/D変換器からのデジタル信号が与えられ、前記A/D変換器から得られるデジタル信号と、前記メモリに保持されているA/D変換値とを比較し、これらが一致するときにのみ前記マグネットブレーキへの通電電流を大きくするよう制御する制御部」と限定するものであって、補正前の請求項2及び3に記載された発明と補正後の請求項1及び2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、以下の「第4」から「第6」までに示すように、本件補正後の請求項1ないし3に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

また、本件補正に、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するところはない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第4 本願発明

本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、上記「第3 1.(2)」に記載したとおりのものである。

第5 引用例

1.引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特表2004-538520号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(1)「【請求項1】
触覚型インターフェイスシステムであって、
変位の少なくとも一つの方向に操作者によって可動な触覚型インターフェイス装置、
可変入力信号を受けて可変出力信号与える制御装置、
及び
前記可変出力信号を受けて、前記可変出力信号に比例した前記可変抵抗力を与える磁気制御可能装置を備え、
前記触覚型インターフェイスシステムは、触覚型インターフェイス装置に抵抗力を与え、
前記制御装置は、前記可変入力信号を処理し、それに応じて前記可変出力信号を導き出すプログラムをするように構成され、
前記磁気制御可能装置には、多量の磁気制御可能媒体が入っており、
可変抵抗力は、磁気制御可能媒体の流動性を前記出力信号に応じて変えることによって与えられ、それによって触覚型インターフェイス装置の動きの容易さを直接制御し、
前記可変抵抗力は、触覚型インターフェイス装置の変位に耐えるために前記装置の変位の少なくとも一つの方向に操作者によって与えられることを特徴とする触覚型インターフェイスシステム。」

(2)「【0029】
同様に、同じ対話型のレーシングカー駆動プログラムと操作者22がカーブを回ってカーを動かしていると仮定すると、制御装置28は、実際の遠心力と摩擦力を模擬するために触覚型インターフェイス装置26に操作者22によって加えられる力より小さい可変量の抵抗力を与える。可変抵抗力の量は、カーの速度と牽引力及びカーブの急な度合いによって変わる。結果として、磁気制御可能装置24は、触覚型インターフェイス装置26を通して操作者22によって感じられた抵抗力帰還感覚を作り、対話型プログラムに現実的な感触を与える。したがって、操作者22が触覚型インターフェイス装置26を動かすと、本発明のシステムは、現実の力を模擬するために触覚型インターフェイス装置の動きに対抗するために抵抗を与える。前述のように、本発明の触覚型インターフェイスシステムは、車両の操縦、減速及び制動、並びにコンピュータシミュレーションや機械類の運動と機能性を制御するために用いられてもよい。しかしながら、本発明の触覚型インターフェイスシステムの説明が更に進むにつれて、本発明の動作を説明するために、本システムをコンピュータシミュレーションの制御に用いる。車両/機械のかじ取りハンドル又はジョイスティックに一体化されたシステム20の概略図が図3及び4に示されている。
【0030】
磁気制御可能装置24が触覚型インターフェイスシステム20の費用効果的で、コンパクトで頑丈な設計にうまく寄与する。図5と6を参照すると、典型的磁気制御可能装置24は、一般に、第1の部材38と第2の部材40の間の作業スペース36に入った磁気制御可能媒体34を備えている。矢印によって示されているように、部材38、40は、合せ面に沿った相対運動(例えば直線運動又は回転運動)をするように配置される。磁気制御可能媒体34は、媒体を横切る可変強さ磁場を生成するために付勢できる環状の磁場発生装置42(図6)の作用を受けている。磁気制御可能媒体34は、加えられた磁場の強さに比例して変化する剪断強さを有する媒体である。換言すれば、媒体の「見かけの粘性」は、加えられた磁場の強さに比例して変化し、部材38と40の間の相対運動に耐えるために制御可能な剪断力を与える。」

(3)「【0037】
図5と6を参照すると、磁場発生装置42は、保持器50(例えば、プラスチックボビン又はスプール)に巻付けられた電導線で形成された少なくとも一つのコイル48から成るのが好ましい。導線コイル48の巻線は、コイルに電流を流すことによって、磁気制御可能媒体34と交差する誘導磁場(磁束線44によって表されている)を生じるように巻回される。誘導磁場は、コイル48を付勢するために供給される電流に比例し、電流の大きさは、例えばコンピュータシステム28の出力信号及び導線の巻数から決められる。当業者によって実現されるように、導線コイル48は、広範囲の導電材料から選択でき、所望の磁場強さの範囲、所望の電流の範囲、空間制約と所望の作動電圧によって変わる。例えば、導線は、銅、アルミニウム、金、銀などの材料から成っていてもよい。同様に、導線のゲージとコイル48内の巻回数は、用途に左右され、当業者に知られている方法によって決定されることができる。」

(4)「【0041】
センサ32は、触覚型インターフェイス装置26と連絡していて、触覚型インターフェイス装置を中で動かすことのできる複数の位置のどの中でも検出された位置を識別する。センサ32は、検出された位置に基づいて制御装置28に可変入力信号を与える。接触のインターフェイス装置26が絶えず動いていることがあるので、センサ32は、制御装置28がその出力信号を操作者に対話型プログラムによって計算された接触感覚を与えるように更新できるようにするために迅速に制御装置28に触覚型インターフェイス装置26の更新された検出位置を与えなければならない。理想的には、センサ32は、触覚型インターフェイス装置26の検出された位置の動きに比例して変化する連続信号を制御ユニット54に与える。
【0042】
適当なセンサは、電位差計(例えば、クラロスタット(Clarostat) 10Kオーム電位差計)、光学エンコーダ(例えば、クラロスタット・シリーズ 6000光学回転エンコ-ダ)、ロータリ・エンコーダ又は任意の形式のレオスタット若しくは可変抵抗器を備えていてもよい。例えば、センサ32は、かじ取りハンドルの回転を検出するためにかじ取りハンドルに接続されたシャフトに取り付けられることができる。また、一つ以上のセンサ32が触覚型インターフェイス装置26の複雑な運動を検出するために必要なことがある。例えば、触覚型インターフェイス装置26がジョイスティックである場合、一方のセンサ32は、x方向の動きを決めるためにジョイスティックの一つの成分に接続され、他方のセンサ32はy方向の動きを決めるためにジョイスティックのもう一つの成分に接続されてもよい。この例では、x方向のセンサとy方向センサは各々可変入力信号を各制御ユニット54に送る。
【0043】
制御ユニット54は、センサ32から可変入力信号を受けて、磁気制御可能装置24に可変出力信号を与える。上記のように、継続的な帰還ループが制御装置28と触覚型インターフェイス装置26の制御ユニット54の間、したがって、ホストコンピュータ58、磁気制御可能装置24とセンサ32の間にある。ホストコンピュータ58によって処理される対話型プログラムは、センサ32からの可変入力信号を対話型プログラムへの入力として用いる。この入力に基づいて、ホストコンピュータ58は、更に制御プログラムを処理して磁気制御可能装置24に送る可変出力信号を決める。コンピュータシステムを制御している操作者22の以前に示された例に戻って、そのようなコンピュータシステムにおいて、ホストコンピュータ58内の制御又は対話型のプログラムは、センサ32からの入力信号を処理する。このことから、ホストコンピュータ58は、操作者22が表示装置30で見ているものを操作者が触覚型インターフェイス装置26によって感知しているものと統合して触覚を模擬するために磁気制御可能装置24から要求された半能動抵抗力を求める。ホストコンピュータ58は、表示された映像を更新するために表示装置30に信号を送り、同時に磁気制御可能装置24に出力信号を送る。例えば、磁気制御可能装置24に送られる出力信号は、操作者22によって感知されるように望まれた抵抗力に比例した値を有する電流であってもよい。したがって、触覚型インターフェイス装置26を動かそうとするときに、操作者22は、触覚型インターフェイス装置を通して磁気制御可能装置24によって加えられた抵抗力の変化を感じ、それによって力帰還感覚を定める。」

(5)「【0056】
図7を参照すると、本発明の一実施例は、駆動メカニズム92を通して抵抗力を触覚型インターフェイス装置26に加えるのに適している磁気制御可能装置24を有する触覚型インターフェイス装置55を備えている。図7において、インターフェイス装置は、車両内を示す図3において使用するために示されているかじ取りハンドルである。そのような用途において、磁気制御可能装置24は、回転制動装置であり、モニタ30は、車両操作情報を表示する。駆動メカニズム92は、触覚型インターフェイス装置26(例えば、図示のかじ取りハンドル)と操作可能な接触をしている操作者22(図3を参照)によって駆動されることができる。センサ32は、触覚型インターフェイス装置26の位置に対応する駆動メカニズムの位置を決定して報告するために駆動機構92と回転接触している。触覚型インターフェイス装置55は、さらに磁気制御可能装置24とセンサ32が固定的に取り付けられ、駆動メカニズム92が例えば軸受、ブッシング、スリーブ等のような低摩擦要素で可動に取り付けられたフレーム94を備えている。センサは、かじ取りハンドルの回転変位を感知する。」

上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「触覚型インターフェイスシステムであって、
変位の少なくとも一つの方向に操作者によって可動な触覚型インターフェイス装置、
可変入力信号を受けて可変出力信号与える制御装置、
及び
前記可変出力信号を受けて、前記可変出力信号に比例した前記可変抵抗力を与える磁気制御可能装置を備え、
前記触覚型インターフェイスシステムは、触覚型インターフェイス装置に抵抗力を与え、
前記制御装置は、前記可変入力信号を処理し、それに応じて前記可変出力信号を導き出すプログラムをするように構成され、
前記磁気制御可能装置には、多量の磁気制御可能媒体が入っており、
可変抵抗力は、磁気制御可能媒体の流動性を前記出力信号に応じて変えることによって与えられ、それによって触覚型インターフェイス装置の動きの容易さを直接制御し、
前記可変抵抗力は、触覚型インターフェイス装置の変位に耐えるために前記装置の変位の少なくとも一つの方向に操作者によって与えられる触覚型インターフェイスシステムであって、
車両の操縦、減速及び制動、並びにコンピュータシミュレーションや機械類の運動と機能性を制御するために用いられ、
磁気制御可能装置24は、第1の部材38と第2の部材40の間の作業スペース36に入った磁気制御可能媒体34を備えており、
磁気制御可能媒体34は、媒体を横切る可変強さ磁場を生成するために付勢できる環状の磁場発生装置42の作用を受けており、
媒体の「見かけの粘性」は、加えられた磁場の強さに比例して変化し、部材38と40の間の相対運動に耐えるために制御可能な剪断力を与え、
磁場発生装置42は、少なくとも一つのコイル48から成り、
誘導磁場は、コイル48を付勢するために供給される電流に比例し、
センサ32は、触覚型インターフェイス装置26の検出された位置の動きに比例して変化する連続信号を制御ユニット54に与え、
センサは、可変抵抗器を備えており、
制御ユニット54は、センサ32から可変入力信号を受けて、磁気制御可能装置24に可変出力信号を与え、
ホストコンピュータ58によって処理される対話型プログラムは、センサ32からの可変入力信号を対話型プログラムへの入力として用い、この入力に基づいて、ホストコンピュータ58は、更に制御プログラムを処理して磁気制御可能装置24に送る可変出力信号を決め、
磁気制御可能装置24に送られる出力信号は、操作者22によって感知されるように望まれた抵抗力に比例した値を有する電流であり、
磁気制御可能装置24は、回転制動装置である
触覚型インターフェイスシステム。」

2.引用例2
同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2006-102010号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】
可変抵抗器が設けられた固定部材と、スティックレバーを備えて前記可変抵抗器の回動部位に連結され、且つ、前記固定部材に対して回動自在に軸支されるとともに、外周に歯車状の溝が形成された円弧状溝部を有する回動部材と、前記固定部材に橋架され、自身の弾性力によって前記円弧状溝部を押圧することにより、前記回動部材を任意の回動位置にて保持する押圧部材と、前記押圧部材を前記固定部材に対して位置決め固定し、且つ、前記固定部材に対する前記押圧部材の離間距離を調整可能な調整部材とを有するラジオコントロール装置用スティックレバーユニットにおいて、
前記押圧部材は、前記円弧状溝部と当接する部分が異形状とされる少なくとも二種類の弾性板を備え、その中から前記円弧状溝部に対して当接し、且つ、押圧する弾性板を前記調整部材により選択可能とされていることを特徴とするラジオコントロール装置用スティックレバーユニット。
(中略)
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のラジオコントロール装置用スティックレバーユニットが装備されていることを特徴とするラジオコントロール装置。」

(2)「【0004】
ここで、上述のようなスティックレバーの復帰機構と保持機構とが併設されたスティックレバーユニットについて、図面を用いて具体的に説明する。図10及び図11は、従来のスティックレバーユニットを示したものであって、図10はその平面図、図11はその背面図である。まず、このスティックレバーユニットの基本的な構成について説明する。
スティックレバーユニット2は、固定部材としての固定フレーム21と、回動部材としての回動フレーム22及び回動操作子23と、回動操作子23に取付けられたスティックレバー24を有している。固定フレーム21の略中央には、略矩形状の窓部21aが穿設されている。そして、回動フレーム22は、半円筒状の部材であって、固定フレーム21に取付けられた可変抵抗器25の回動軸25aを一方の回動軸とし、回動フレーム22に設けられた回動軸22aを他方の回動軸として固定フレーム21に対して回動自在に軸支されている。
また、回動フレーム22の略中央には、長方形状の小窓部22bが穿設され、スティックレバー24が取付けられた回動操作子23が前記小窓部22bの範囲内で回動自在に遊嵌されている。この回動操作子23の回動軸は、回動フレーム22に固定された可変抵抗器26の回動軸26aからなり、回動軸26aの先端部は、回動フレーム22に軸支されている。
このような構成により、操縦者がスティックレバー24を上下左右又は斜め方向へ操作することで、回動フレーム22、回動操作子23が回動し、可変抵抗器25、26が回動操作されて被操縦体への出力信号が制御される。」

(3)「【0020】
そして、支柱21b、21cには、回動フレーム22に形成された円弧状溝部22cを押圧する押圧部材として、異形状からなる二種類の弾性板30a、30bが架橋されている。一方の弾性板30aは、模型飛行機操縦時に作用させる押圧部材としての形状、すなわち、回動フレーム22の円弧状溝部22cとの当接部分において、回動フレーム22側へ屈曲する凸部を有した形状とされている。もう一方の30bは、模型ヘリコプター操縦時に作用させる押圧部材としての形状、すなわち、回動フレーム22の円弧状溝部22cとの当接部分において平坦な形状とされている。」

(4)「【0025】
図5(a)に示すように、弾性板30aを選択する場合には、該弾性板30aを固定する調整用ネジ32を締めて弾性板30aの凸部が前記円弧状溝部22cに係合して押圧するようにし、他方の弾性板30bを固定する調整用ネジ32を緩めて該弾性板30bが円弧状溝部22cに当接しないようにする。これにより、円弧状溝部22cは、弾性板30aのみから押圧されることになり、スティックレバー24を回動操作して回動フレーム22を回動操作した場合、段階式にその位置が保持されるようになる。」

上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「ラジオコントロール装置用スティックレバーユニットが装備されているラジオコントロール装置であって、
ラジオコントロール装置用スティックレバーユニットは、可変抵抗器が設けられた固定部材と、スティックレバーを備えて前記可変抵抗器の回動部位に連結され、且つ、前記固定部材に対して回動自在に軸支されるとともに、外周に歯車状の溝が形成された円弧状溝部を有する回動部材と、前記固定部材に橋架され、自身の弾性力によって前記円弧状溝部を押圧することにより、前記回動部材を任意の回動位置にて保持する押圧部材と、前記押圧部材を前記固定部材に対して位置決め固定し、且つ、前記固定部材に対する前記押圧部材の離間距離を調整可能な調整部材とを有し、
前記押圧部材は、前記円弧状溝部と当接する部分が異形状とされる少なくとも二種類の弾性板を備え、その中から前記円弧状溝部に対して当接し、且つ、押圧する弾性板を前記調整部材により選択可能とされ、
操縦者がスティックレバー24を上下左右又は斜め方向へ操作することで、回動フレーム22、回動操作子23が回動し、可変抵抗器25、26が回動操作されて被操縦体への出力信号が制御され、
一方の弾性板を選択する場合には、スティックレバー24を回動操作して回動フレーム22を回動操作した場合、段階式にその位置が保持されるようになる
ラジオコントロール装置。」

3.引用例3
同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2012/0112894号明細書(以下「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(括弧内は当審で作成した日本語訳である。)。

(1)「[0053] The method of generating resistance in stages provides resistances in stages, as shown in FIGS. 4 and 5 . FIG. 4 shows resistance depending on the pressed depth of the haptic feedback generator 600 and FIG. 5 shows that resistance increases in stages according to the pressed depth. This method can be used when the speed of a character, an airplane or a car in a game is controlled and useful when a specific button is controlled without watching the screen of the portable device. Furthermore, this method can be used when the user is informed of the state (for example, locked state) of the portable device.」(第3ページ右欄第5?15行)
(この段階的に抵抗力を発生する方法は、図4及び5に示すように、段階的に抵抗力を供給する。図4は力覚フィードバック発生器600の押圧深さに応じた抵抗力を示しており、図5は押圧深さに応じて抵抗力が段階的に増加することを示している。この方法は、ゲームにおける飛行機や自動車のようなキャラクターの速度が操作される時に用いることができ、ポータブルデバイスの画面を見ることなく特定のボタンが操作される際に有用である。さらに、この方法は、ユーザーにポータブルデバイスの状態(例えば、ロック状態)を報知する際に用いることができる。)

上記の記載事項を総合すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。

「押圧深さに応じた抵抗力を示し、押圧深さに応じて抵抗力が段階的に増加する力覚フィードバック発生器600。」

4.引用例4
前置報告で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2000-321094号公報(以下「引用例4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0013】
【発明の実施の形態】この発明をフォークリフトのステアリング及び操舵輪の回転制御に用いるポテンショメータに適用した場合における一実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。但し、図1はブロック図、図2は動作説明用フローチャート、図3は使用状態におけるブロック図である。
【0014】図1に示すように、可変抵抗から成るポテンショメータ1の両端1a、1bが、中立検出装置2に内蔵された直流電源4の正端子(+V)及び負端子(GND)に接続され、ポテンショメータ1の可動端子1cの電位Vが、直流電源4と共に検出部を構成する入出力部(以下、これをI/Oと称する)6を介して変換部であるアナログ/デジタル変換器(以下、アナログ/デジタル変換をA/D変換と称する)8に入力され、このA/D変換器8により電位信号が8ビットのデジタル信号に変換される。
【0015】そして、A/D変換器8から出力される可動端子1cの電位Vのデジタル値NはCPU10に入力され、このデジタル値Nと、CPU10の内蔵メモリ等の記憶部に予め記憶、設定された中立位置に相当する基準電位のデジタル値である基準値Nsとが比較される。ここで、CPU10による比較処理が比較部に相当する。」

(2)「【0017】このように、CPU10による比較の結果、ポテンショメータ1の可動端子1cの電位Vのデジタル値Nと基準値Nsとが所定の許容誤差範囲内で一致すれば、I/O6を介して報知部12によりその旨を報知すべく制御信号が出力され、この制御信号により報知部12のディスプレイ12aにより“中立”の文字が表示されると共にLED12bが点灯され、ポテンショメータ1の可動端子1cが中立位置にあることが報知される。」

上記の記載事項を総合すると、引用例4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。

「ポテンショメータ1の可動端子1cの電位Vが、直流電源4と共に検出部を構成する入出力部(I/O)6を介して変換部であるアナログ/デジタル変換器8に入力され、このA/D変換器8により電位信号が8ビットのデジタル信号に変換され、
A/D変換器8から出力される可動端子1cの電位Vのデジタル値NはCPU10に入力され、このデジタル値Nと、CPU10の内蔵メモリ等の記憶部に予め記憶、設定された中立位置に相当する基準電位のデジタル値である基準値Nsとが比較され、
CPU10による比較の結果、ポテンショメータ1の可動端子1cの電位Vのデジタル値Nと基準値Nsとが所定の許容誤差範囲内で一致すれば、I/O6を介して報知部12によりその旨を報知すべく制御信号が出力される
ポテンショメータ1。」

第6 対比・判断

1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。

後者の「コイル48」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「コイル」に相当し、同様に「可変抵抗器」は「可変抵抗器」に、「制御ユニット54」は「制御部」に相当する。
後者の「磁気制御可能媒体34」は、「媒体の「見かけの粘性」は、加えられた磁場の強さに比例して変化」するから、前者の「磁気粘性流体」に相当する。
後者の「磁気制御可能装置24」は、「回転制動装置である」から、前者の「マグネットブレーキ」に相当する。
後者においては、「磁気制御可能装置24は、第1の部材38と第2の部材40の間の作業スペース36に入った磁気制御可能媒体34を備えており、磁気制御可能媒体34は、媒体を横切る可変強さ磁場を生成するために付勢できる環状の磁場発生装置42の作用を受けており、媒体の「見かけの粘性」は、加えられた磁場の強さに比例して変化し、部材38と40の間の相対運動に耐えるために制御可能な剪断力を与え、磁場発生装置42は、少なくとも一つのコイル48から成り、誘導磁場は、コイル48を付勢するために供給される電流に比例」するから、後者の「磁気制御可能装置24」は、前者の「コイルへの通電電流によって粘性が変化する磁気粘性流体によって回転抵抗を変化させるマグネットブレーキ」に相当する。
後者においては、「制御ユニット54は、センサ32から可変入力信号を受けて、磁気制御可能装置24に可変出力信号を与え」、「磁気制御可能装置24に送られる出力信号は、操作者22によって感知されるように望まれた抵抗力に比例した値を有する電流であ」るところ、「感知されるように望まれた抵抗力に比例した値を有する電流」が通常より大きな電流であることは明らかであるから、後者の当該「制御ユニット54」と前者の「A/D変換値を保持するメモリを有し、前記A/D変換器からのデジタル信号が与えられ、前記A/D変換器から得られるデジタル信号と、前記メモリに保持されているA/D変換値とを比較し、これらが一致するときにのみ前記マグネットブレーキへの通電電流を大きくするよう制御する制御部」とは、「マグネットブレーキへの通電電流を大きくするよう制御する制御部」との概念で共通する。
後者の「触覚型インターフェイスシステム」は「車両の操縦、減速及び制動、並びにコンピュータシミュレーションや機械類の運動と機能性を制御するために用いられ」るから、車両をコントロールする機器であるといえ、前者の「ラジオコントロール用送信機」とは、「コントロール用機器」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「可変抵抗器と、
コイルへの通電電流によって粘性が変化する磁気粘性流体によって回転抵抗を変化させるマグネットブレーキと、
マグネットブレーキへの通電電流を大きくするよう制御する制御部と、を具備する
コントロール用機器。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
前者が「スティックベースと、前記スティックベースに回動自在に保持されるブリッジと、前記ブリッジに取付けられ、ブリッジを回動させるスティック」を備えるのに対して、後者はそのようなものでない点。

[相違点2]
前者の可変抵抗器が「ブリッジの回転軸に取付けられ、一端に電圧が印加されて回転角度に応じた電圧を出力する」のに対して、後者はそのようなものでない点。

[相違点3]
前者のマグネットブレーキが「ブリッジの回転軸に取付けられる」のに対して、後者はそのようなものでない点。

[相違点4]
前者が「可変抵抗器からの回転角度に応じて得られるアナログ値をデジタル値に変換するA/D変換器」を備えるのに対して、後者はそのようなものでない点。

[相違点5]
前者が「A/D変換値を保持するメモリを有し、A/D変換器からのデジタル信号が与えられ、A/D変換器から得られるデジタル信号と、メモリに保持されているA/D変換値とを比較し、これらが一致するときにのみ」マグネットブレーキへの通電電流を大きくするよう制御するのに対して、後者はそのようなものでない点。

[相違点6]
前者の制御部が「スティックの回動範囲の少なくとも1箇所で」マグネットブレーキへの通電電流を増加させるのに対して、後者はそのようなものでない点。

[相違点7]
前者が「ラジオコントロール用送信機」であるのに対して、後者はそのようなものでない点。

(2)判断
相違点6について検討する。

引用文献2には、「ところで、このようなスティックレバーユニットには、スティックレバーの操作方向によって、操縦者がスティックレバーを操作した状態から手を離すと、予め規定された中立位置にスティックレバーを自動的に復帰させる、スティックレバーの復帰機構が設けられている場合と、操縦者がスティックレバーを操作した状態から手を離しても、そのままの位置にスティックレバーを保持させる、スティックレバーの保持機構が設けられている場合がある。……また、例えば、模型飛行機における模型用エンジンの出力制御をおこなうスティックレバーの操作方向には、エンジンの回転数を一定に維持して飛行をおこなう為、前述の復帰機構を設けずにおき、操縦者がスティックレバーから手を離しても、そのままの制御量が保持されるように上記スティックレバーの保持機構が設けられている。」(段落【0003】)との記載があるから、引用発明2は、スティックレバーの操作位置を保持するために「円弧状溝部を有する回動部材」及び「自身の弾性力によって前記円弧状溝部を押圧することにより、前記回動部材を任意の回動位置にて保持する押圧部材」等を設け「一方の弾性板を選択する場合には、スティックレバー24を回動操作して回動フレーム22を回動操作した場合、段階式にその位置が保持されるようになる」ようにしたものと認められる。
一方、引用文献1には「そのようなゲームにおいて、ビデオディスプレイ上の動き及びジョイスティック又は操縦装置の運動は、ディスプレイに起こっている事象に対する模擬「感じ」を与えるために、ジョイスティック又は操縦装置を通して作業者の手に与えられる物理的力と同等にされる。」(段落【0003】)との記載があるから、引用発明1は「ディスプレイに起こっている事象」に応じてジョイスティック又は操縦装置を通して作業者の手に「物理的力」を与えるためのものであると認められる。そして、引用発明1は、「磁気制御可能装置24に送られる出力信号は、操作者22によって感知されるように望まれた抵抗力に比例した値を有する電流であ」るから、「操作者22によって感知されるように望まれた抵抗力」を与えるものであるところ、その「出力信号」は「入力に基づいて、ホストコンピュータ58は、更に制御プログラムを処理して磁気制御可能装置24に送る可変出力信号を決め」る、すなわち、入力信号を制御プログラムで処理して得られるものであって、触覚型インターフェイス装置の変位に直接対応した抵抗力を与えるものではない。
そうすると、引用発明1が「ディスプレイに起こっている事象」に応じた「物理的力」を与えるために、「入力に基づいて、ホストコンピュータ58は、更に制御プログラムを処理して磁気制御可能装置24に送る可変出力信号を決め」る一方、引用発明2はスティックレバーの操作位置を保持するために「回動部材」や「押圧部材」等に係る発明特定事項を備え「一方の弾性板を選択する場合には、スティックレバー24を回動操作して回動フレーム22を回動操作した場合、段階式にその位置が保持されるようになる」ようにしたものであって、両者はその目的や作用・機能が異なるものであるから、引用発明1に引用発明2を適用する場合に、引用発明1の「磁気制御可能装置24」を、引用発明2の「回動部材」や「押圧部材」等に係る発明特定事項に代わるものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

引用発明3及び4も、上記相違点6に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。

また、上記相違点6に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。

そして、本願発明1は、上記相違点6に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「弾性板を取り換える作業をなくし、ユーザの好みのクリック感や抵抗感を容易に変更できるようにしたラジオコントロール用送信機を提供する」(段落【0008】)という作用効果を奏するものである。

そうすると、本願発明1は引用発明1ないし3に基いて当業者が容易に想到することができたものではない。

2.本願発明2について
(1)対比
本願発明2は、本願発明1の「前記制御部は前記スティックの回動範囲の少なくとも1箇所で前記マグネットブレーキへの通電電流を増加させる」との発明特定事項を、「前記制御部は前記スティックの回動範囲で一定間隔毎に前記マグネットブレーキへの通電電流を増加させる」としたものであるところ、上記「1.(1)」を踏まえて、本願発明2と引用発明1とを対比すると、両者は上記「1.(1)」における相違点1ないし5及び7に加えて、以下の点で相違し、その他の点で一致する。

[相違点8]
前者の制御部が「スティックの回動範囲で一定間隔毎に」マグネットブレーキへの通電電流を増加させるのに対して、後者はそのようなものでない点。

(2)判断
相違点8について検討する。

相違点8については、上記「1.(2)」における相違点6についての検討と同様であって、引用発明1及び2はその目的や作用・機能が異なるものであるから、引用発明1に引用発明2を適用する場合に、引用発明1の「磁気制御可能装置24」を、引用発明2の「回動部材」や「押圧部材」等に係る発明特定事項に代わるものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

引用発明3及び4も、上記相違点8に係る本願発明2の発明特定事項を備えるものではない。

また、上記相違点8に係る本願発明2の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。

そして、本願発明2は、上記相違点8に係る本願発明2の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「弾性板を取り換える作業をなくし、ユーザの好みのクリック感や抵抗感を容易に変更できるようにしたラジオコントロール用送信機を提供する」(段落【0008】)という作用効果を奏するものである。

そうすると、本願発明2は引用発明1ないし3に基いて当業者が容易に想到することができたものではない。

3.本願発明3について
本願発明3は、本願発明1又は2をさらに限定したものである。

そうすると、本願発明3は、本願発明1及び2と同様に、引用発明1ないし3に基づいて当業者が容易に想到することができたものではない。

第7 原査定について

上記「第6」において検討したとおり、本願発明1ないし3は引用発明1ないし3に基づいて当業者が容易に想到することができたものではない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-19 
出願番号 特願2013-100970(P2013-100970)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 古川 直樹古屋野 浩志  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
畑井 順一
発明の名称 ラジオコントロール用送信機  
代理人 岡本 宜喜  
代理人 安田 幹雄  

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