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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1341523
審判番号 不服2017-8626  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-13 
確定日 2018-07-10 
事件の表示 特願2015-220775「画面共有システム及び画面共有方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月25日出願公開、特開2017- 91226、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成27年11月10日の出願であって,平成28年11月10日付けで拒絶理由通知がされ,平成29年1月11日付けで手続補正がされ,平成29年3月2日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成29年6月13日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,平成30年3月1日付けで拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,平成30年5月1日付けで手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成29年3月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項1-4,6-7に係る発明は,以下の引用文献A-Fに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2015-041885号公報
B.特開2012-234416号公報
C.特開2011-123868号公報
D.特開2014-236327号公報
E.特開平8-016514号公報
F.特開2015-135641号公報

理由2 請求項5に係る発明は,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであり,本願は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項1-4,6-7に係る発明は,以下の引用文献1-4に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2011-034315号公報(当審において新たに引用した文献)
2.特開2015-069305号公報(当審において新たに引用した文献)
3.国際公開第2013/128508号(当審において新たに引用した文献)
4.村元 正剛,[みんなのケータイ]メールはタッチ入力より音声入力が楽チン!,ケータイ Watch,[online],掲載日:2012年7月10日,株式会社インプレス,[検索日:平成30年2月23日],インターネット<URL:https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/minna/545885.html>(当審において新たに引用した文献)

理由2 請求項5に係る発明は不明確であり,本願は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


第4 本願発明

本願請求項1-6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は,平成30年5月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-6は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
遠隔での作業指示を行う際に,画面共有する画面共有システムであって,
音声入力を受け付ける音声入力受付手段と,
入力された前記音声を音声認識でテキストデータに変換する変換手段と,
前記音声入力を受け付けた機器に関する機器データの内容に応じて,前記変換されたテキストデータの表示方法を変更する変更手段と,
共有領域内の画面データと,前記変更したテキストデータと,を前記共有領域内に表示する表示手段と,
を備えることを特徴とする画面共有システム。
【請求項2】
遠隔での作業指示を行う際に,画面共有する画面共有システムであって,
音声入力を受け付ける音声入力受付手段と,
入力された前記音声を音声認識でテキストデータに変換する変換手段と,
前記音声入力を受け付けた機器に関する機器データの内容に応じて,前記変換されたテキストデータの表示方法を変更する変更手段と,
指定を受け付けた前記共有領域内に画面データを表示するとともに,前記変更したテキストデータを前記共有領域外に表示する表示手段と,
を備えることを特徴とする画面共有システム。
【請求項3】
前記テキストデータをファイル出力する出力手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の画面共有システム。
【請求項4】
前記テキストデータと,前記共有領域の画面データと,を対応付ける対応付手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の画面共有システム。
【請求項5】
遠隔での作業指示を行う際に,画面共有する画面共有方法であって,
音声入力を受け付けるステップと,
入力された前記音声を音声認識でテキストデータに変換するステップと,
前記音声入力を受け付けた機器に関する機器データの内容に応じて,前記変換されたテキストデータの表示方法を変更するステップと,
指定を受け付けた前記共有領域内の画面データと,前記変更したテキストデータと,を前記共有領域内に表示するステップと,
を備えることを特徴とする画面共有方法。
【請求項6】
遠隔での作業指示を行う際に,画面共有する画面共有方法であって,
音声入力を受け付けるステップと,
入力された前記音声を音声認識でテキストデータに変換するステップと,
前記音声入力を受け付けた機器に関する機器データの内容に応じて,前記変換されたテキストデータの表示方法を変更するステップと,
指定を受け付けた前記共有領域内に画面データを表示するとともに,前記変更したテキストデータを前記共有領域外に表示するステップと,
を備えることを特徴とする画面共有システム。」


第5 引用文献,引用発明等

1 引用文献1について
当審拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(なお,下線は重要箇所に対して当審が付した。以下,同様。)。

(1)段落【0014】
「【0014】
したがって,(1)に記載の発明の効果に加えて,サポート対象が中央に表示されていない場合は,携帯電話機のユーザに中央に表示するように誘導することが可能であり,中央に表示された後で,指示データを表示することで,作業の順番に従って的確なタイミングでユーザに指示を行うことができる。」

(2)段落【0028】-【0033】
「【0028】
リモートサポートシステム1は,携帯電話機100と,オペレータ端末50と,公衆回線網(インターネット:WAN(Wide Area Network))3と,から構成される。
【0029】
携帯電話機100は,公衆回線網3を介して,オペレータ端末50と通信可能に接続されたコンピュータ端末である。携帯電話機100は,文字,データ,画像を制御する制御部(CPU(Central Processing Unit),RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory等)を含む),制御部からの出力指示を受けて文字,データ,画像を表示する液晶等の表示部(液晶ディスプレイ等),文字,データ,画像を記憶する記憶部(フラッシュメモリ,ハードディスク,SSD(ソリッド・ステイト・ドライブ)等),ユーザからの入力を受付ける入力部,近隣の交換機(アクセスポイント)と無線通信を行いデータ通信機能,通話機能を実現する通信部,を有する端末である。携帯電話機100は,動画を撮影する動画撮影手段101,画像表示手段102,動画データ送信手段103,指示データ・相対位置データ受信手段104を備える。
【0030】
動画撮影手段101は,動画を撮影する機能を実現する手段であり,光を入力するレンズ及び入力された光を電気信号へ変換するカメラ装置,これらの信号を動画データとして制御し,記憶する制御部,記憶部により実現される。動画撮影手段101により撮影されたサポート対象等の動画データは,動画データ送信手段103により,オペレータ端末50に送信される。
【0031】
画像表示手段102は,文字,データ,画像を表示する手段であり,表示部,制御部,記憶部により実現される。画像表示手段102は,動画撮影手段101が撮影しているライブ動画(動画撮影手段101によりライブ撮影(生撮影)されている動画)を表示するとともに,オペレータ端末50からの指示データを相対位置データが示す場所に,所定の表示態様(重複表示,分割表示)で表示を行う。
【0032】
指示データとは,オペレータが携帯電話機100のユーザに指示を通知するためのデータであり,矢印等の指示アイコン,指示の内容を示す文章,図,イラストで指示をするための画像(オペレータがタッチパネル入力装置により入力したペン表記の画像を含む)である。
【0033】
相対位置データとは,指示データが入力されたオブジェクトデータ内の位置に関する情報である。オブジェクトデータの2次元画像表面:起点(0,0)?終点(XE,YE)における,点(X,Y)に,指示データがオペレータにより入力された場合は,相対位置データは,(X/XE,Y/YE)となる。また,相対位置データは,単に,オペレータから入力された位置座標(すなわち,オペレータにより(X/XE,Y/YE)が直接入
力される)であってもよい。」

(3)段落【0036】-【0046】
「【0036】
オペレータ端末50は,動画データ受信手段52,オブジェクトデータ認識手段53,指示データ入力受付手段54,相対位置データ決定手段55,指示データ・相対位置データ送信手段56を備える。

・・・(中略)・・・

【0040】
指示データ入力受付手段54は,オペレータからの指示データの入力を受付ける手段であり,制御部,入力部により実現される。ここで,オペレータ端末50の入力部は,画面上をオペレータがタッチすることで入力を受付けるタッチパネル入力装置であってよい。この場合は,オペレータからの指示情報をペン入力等で受付けて,入力された位置に関する情報を相対位置データ決定手段55に通知する。
【0041】
相対位置データ決定手段55は,上述のようにオペレータ端末50の表示部であるタッチパネルに携帯電話機100で撮影された動画データが表示され,このタッチパネル表面を,オペレータがタッチパネル入力装置により,ペン入力等のタッチ入力を行った場合は,入力された指示データのオブジェクトデータ内の位置に関する情報を,相対位置データとして決定する。
【0042】
指示データ・相対位置データ送信手段56は,オペレータから受付けた指示データと,相対位置データとを関係づけて,携帯電話機100に送信する手段であり,制御部51と通信I/F部57とにより実現される。
【0043】
[基本処理フロー]
図2を参照して,携帯電話機100とオペレータ端末50が実行する基本処理フローについて説明する。携帯電話機100は,動画撮影処理(ステップS01)によりサポート対象を撮影し,撮影した動画データをオペレータ端末50に送信する(ステップS02)。
【0044】
図6のステップ(S01)では,動画撮影処理(ステップS01)にて,サポート対象であるノートパソコンをユーザが撮影し,携帯電話機100の表示部に表示している状態を示す。次に,オペレータ端末50は,受信した動画データを表示し(ステップS03),動画データから,オブジェクトデータを認識するためのオブジェクトデータ認識処理(オブジェクトデータ認識手段53が実行する)を実行する(ステップS04)。
【0045】
図6のステップ(S04)は,携帯電話機100から送信された動画データから,オペレータ端末50が,オブジェクトデータを認識していることを示す画面イメージ図である。
【0046】
次に,オペレータ端末50は,オペレータから指示データの入力受付処理を実行する(ステップS05)。オペレータ端末50は,図3に示す,指示データ入力受付処理を実行し,指示データと相対位置データを出力し,この指示データと相対位置データとを関係づけて,携帯電話機100へ送信する(ステップS06)。携帯電話機100は,指示データと相対位置データを受信し,所定の位置に所定の表示態様で,指示データを表示する(ステップS07)。」

(4)段落【0050】
「【0050】
次に,オペレータ端末50は,オペレータからメッセージを受付ける文章受付処理を実行する(ステップS11)。オペレータ端末50は,例えば,図6(S11)に示すように,メッセージ60として「左側側面を映してください」と,オペレータによりメッセージの入力が行われる。文章受付処理により入力されたメッセージが,指示データとなる。」

(5)段落【0055】-【0056】
「【0055】
オブジェクトデータ150は,2次元静止画像であって,表面のサイズが起点(0,0)?終点(XE,YE)である。このオブジェクトデータ内の点(X1,Y1)を中心として,オペレータが指示データ300(この場合は,ペン入力による指示画像)を入力したとする。この場合は,相対位置データは,(X1/XE,Y1/YE)と決定される。また,指示アイコンやメッセージの入力を受付けた場合に,ペン入力等により位置の指示を受付けてもよい。また,ペン入力等による位置の指示ができない場合や,上記の方法で相対位置データを決定できない場合は,オペレータから相対位置データの数値を直接,受付けて,決定されてもよい。
【0056】
携帯電話機100に,指示データが表示される例を,図5(c)に示した。携帯電話機100は,ライブ動画として撮影されるサポート対象に対して,オブジェクトデータに対応する部分で占められる画像範囲160を特定し,この画像範囲160の位置と,相対位置データとに基づいて,所定の場所に指示データを表示する。」

(6)段落【0058】-【0059】
「【0058】
次に,オペレータ端末50は,携帯電話機100にて表示される指示データの表示態様について,どのような表示態様をオペレータが望むか選択を受付ける(ステップS14)。
【0059】
指示データの表示態様とは,図6の(S32)にて説明するように,指示データと動画データを重複して表示する重複表示もしくは,指示データと動画データとを左右に分割して表示する分割表示である。」

(7)段落【0064】
「【0064】
ユーザが,誘導オブジェクトが表示された携帯電話機100を視認して,サポート対象を表示部の中央に撮影した場合は,ステップS33:「YES」となり,指示データを,ライブ動画内のオブジェクトデータに対応する画像範囲と,相対位置データとに基づいて表示する(ステップS35)。すなわち,上述の図5(c)に示すように,携帯電話機100は,ライブ動画として撮影されるサポート対象に対して,オブジェクトデータに対応する部分で占められる画像範囲160を特定し,この画像範囲160の位置と,相対位置データとに基づいて,所定の場所に指示データを表示する。同様に,図8(c)に示すように,指示データを,メッセージとして「左側側面を映してください」と表示し,かつ,指示アイコンとして,撮影指示の対象となる部分(例えば,PCIカード挿入口)を指すアイコンをライブ動画内のオブジェクトデータに対応する画像範囲と,相対位置データとに基づいて表示する。」

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「動画を撮影する動画撮影手段101,画像表示手段102,動画データ送信手段103,指示データ・相対位置データ受信手段104を備え,動画撮影手段101により撮影されたサポート対象等の動画データは,動画データ送信手段103により,オペレータ端末50に送信され,画像表示手段102は,動画撮影手段101が撮影しているライブ動画を表示するとともに,オペレータ端末50からの指示データを相対位置データが示す場所に,所定の表示態様(重複表示,分割表示)で表示を行う携帯電話機100と,
動画データ受信手段52,オブジェクトデータ認識手段53,指示データ入力受付手段54,相対位置データ決定手段55,指示データ・相対位置データ送信手段56を備え,指示データ入力受付手段54は,オペレータからの指示データの入力を受付ける手段であり,制御部,入力部により実現され,オペレータ端末50の入力部は,画面上をオペレータがタッチすることで入力を受付けるタッチパネル入力装置であってよく,相対位置データ決定手段55は,オペレータ端末50の表示部であるタッチパネルに携帯電話機100で撮影された動画データが表示され,このタッチパネル表面を,オペレータがタッチパネル入力装置により,ペン入力等のタッチ入力を行った場合は,入力された指示データのオブジェクトデータ内の位置に関する情報を,相対位置データとして決定するオペレータ端末50とを含み,
ここで,指示データとは,オペレータが携帯電話機100のユーザに指示を通知するためのデータであり,指示の内容を示す文章を含み,相対位置データとは,指示データが入力されたオブジェクトデータ内の位置に関する情報である,
リモートサポートシステム1において,
携帯電話機100は,動画撮影処理(ステップS01)によりサポート対象を撮影し,撮影した動画データをオペレータ端末50に送信し(ステップS02),
オペレータ端末50は,受信した動画データを表示し(ステップS03),動画データから,オブジェクトデータを認識するためのオブジェクトデータ認識処理(オブジェクトデータ認識手段53が実行する)を実行し(ステップS04),次に,オペレータから指示データの入力受付処理を実行し(ステップS05),指示データと相対位置データを出力し,ここで,メッセージ60として「左側側面を映してください」と,オペレータによりメッセージの入力が行われると,文章受付処理により入力されたメッセージが,指示データとなり,メッセージの入力を受付けた場合に,ペン入力等により位置の指示を受付けてもよく,この指示データと相対位置データとを関係づけて,携帯電話機100へ送信し(ステップS06),
携帯電話機100は,指示データと相対位置データを受信し,所定の位置に所定の表示態様で,指示データを表示し(ステップS07),このとき,ライブ動画として撮影されるサポート対象に対して,オブジェクトデータに対応する部分で占められる画像範囲160を特定し,この画像範囲160の位置と,相対位置データとに基づいて,所定の場所に指示データを表示し,
オペレータ端末50は,携帯電話機100にて表示される指示データの表示態様について,どのような表示態様をオペレータが望むか選択を受付け(ステップS14),指示データの表示態様とは,指示データと動画データを重複して表示する重複表示もしくは,指示データと動画データとを左右に分割して表示する分割表示であり,
サポート対象が中央に表示されていない場合は,携帯電話機のユーザに中央に表示するように誘導することが可能であり,中央に表示された後で,指示データを表示することで,作業の順番に従って的確なタイミングでユーザに指示を行うことができる,
リモートサポートシステム1。」

2 引用文献2-4について

(1)当審拒絶理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0004】
しかしながら,作業者が情報を手書きする場合,又はタッチパネルやキーボード等を用いて情報を入力する場合,情報の書き込み又は入力作業に手間がかかってしまい,効率的に情報を共有可能にすることができないという問題があった。また,作業現場での情報書き込み作業又は入力作業は手がふさがることによる危険が生じる恐れもあった。そこで,本発明が解決しようとする課題は,作業現場等において効率的に情報を共有可能にすることができる情報共有システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の情報共有システムは,物件の保守点検作業を行う作業員が所持する携帯端末と作業情報を管理する管理サーバと携帯端末とは異なる端末であって作業情報を入出力する端末装置が設置される拠点とを有し,携帯端末に対して作業員によって入力された音声に基づく情報を送信し,携帯端末の所在位置とは異なる位置でも他の作業員が所持する携帯端末又は端末装置等に対して音声に基づく情報を共有可能にする昇降機の保守管理システムにおける情報共有システムである。この情報共有システムは,音声受入部と,音声認識部と,記憶部と,第1出力部と,第2出力部と,を有する。音声受入部は,携帯端末に設けられ,音声を受入れる。音声認識部は,音声受入部が受入れた音声を認識して文字データに変換する。記憶部は,音声受入部が受入れた音声を,音声データとして記憶する。第1出力部は,携帯端末に設けられ,音声認識部が変換した文字データの少なくとも一部を出力する。第2出力部は,拠点に設置される端末装置に設けられ,音声認識部が変換した文字データ,及び記憶部が記憶した音声データの少なくともいずれかの少なくとも一部を出力する。

・・・(中略)・・・

【0010】
情報管理サーバ3は,携帯端末2から送信される情報を処理し,管理するサーバである。端末装置4は,例えば営業所内に配置され,情報共有システム1を構成する各装置と通信を行うPC(Personal Computer)であり,音声,表示及び印刷等による情報の出力を可能にする出力部(図示せず)を有する。音声認識サーバ10は,例えば辞書データベースなどを備え,音声データを受入れて認識・解析し,文字データに変換する音声認識部としての機能を有する。なお,音声認識部としての機能は,携帯端末2における応答を速めるために,携帯端末2が有するように構成されてもよい。」

したがって,引用文献2には,「タッチパネルやキーボード等を用いて情報を入力する場合,情報の書き込み又は入力作業に手間がかかってしまい,効率的に情報を共有可能にすることができないという問題」を解決するために,「音声を受け入れる音声入力部と,入力された音声を認識・解析し,文字データに変換する音声認識部とが設けられた携帯端末」という技術的事項が記載されていると認められる。

(2)当審拒絶理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

「[0002] 近年,携帯電話機などの携帯型端末装置(以下,単に携帯端末という)の性能向上に伴い,端末上で高性能なアプリケーションを実行できる環境が整ってきた。そのアプリケーションの一つに,声で文章を述べる(口述する)だけで,その口述内容を音声認識して文字入力することができるディクテーション用アプリケーションがある(たとえば,下記の特許文献1?6参照)。かかるディクテーション入力(音声認識による文字入力)は,とりわけ携帯端末に有効である。携帯端末の入力デバイスは,タッチパネルなど操作効率の悪いものしか搭載されていないからである。上記のアプリケーションを実装すれば,口述内容をそのまま文字入力できるので,操作効率の悪いタッチパネルなどの入力デバイスを使用しなくても済む。」

したがって,引用文献3には,「声で文章を述べる(口述する)だけで,その口述内容を音声認識して文字入力することができるディクテーション用アプリケーションにより,口述内容をそのまま文字入力できるので,操作効率の悪いタッチパネルなどの入力デバイスを使用しなくても済む」という技術的事項が記載されていると認められる。

(3)当審拒絶理由に引用された引用文献4の第2-3段落には,次の事項が記載されている。

「音声がらみの機能で,筆者がエージェント機能よりも多用しているのが文字入力。最近は,メールやメモなどのテキストを音声で入力できる機種が増えている。筆者が所有しているスマートフォンでは,iPhone 4S,GALAXY S II LTE SC-03D,Xperia acro HD SO-03D,AQUOS PHONE 103Hなどが対応している。おそらく,今後はスマートフォンの標準機能になってくるのではないかと思うし,ぜひ,そうなっていただきたい。
いつまで経ってもタッチでの文字入力に慣れない筆者にとって,しゃべるだけでメールを作成できるのは非常に心強い。さすがに仕事中や電車内など,周囲に人がいる状況では使いづらいが,通勤や移動で道を歩いているときなどは気兼ねなく使える。認識精度も徐々に高まっているようで,ささやくような声で,わりと早口で話してもしっかり認識してくれる。その便利さに気づいてからは,利用する機会がどんどん増え,iPhone 4Sでは,もはやタッチよりも音声で入力することのほうが多いくらいだ。」

したがって,引用文献4には,「音声がらみの機能で,テキストを音声で入力できる文字入力機能は,認識精度も徐々に高まっており,タッチでの文字入力に慣れない者にとって,しゃべるだけでメールを作成できるのは非常に心強い」という技術的事項が記載されていると認められる。


第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明の「リモートサポートシステム1」における「携帯電話機100」では,「動画撮影手段101により撮影されたサポート対象等の動画データは,動画データ送信手段103により,オペレータ端末50に送信され,画像表示手段102は,動画撮影手段101が撮影しているライブ動画を表示」され,「オペレータ端末50」では,「表示部であるタッチパネルに携帯電話機100で撮影された動画データが表示され」るから,「携帯電話機100」と「オペレータ端末50」は,「動画像撮影手段101」で撮影した「動画データ」を「画面共有」しているといえる。
また,引用発明の「リモートサポートシステム1」は,「作業の順番に従って的確なタイミングでユーザに指示を行うことができる」から,「遠隔での作業指示を行う際」に使用されるものであることは明らかであり,本願発明1とは,「遠隔での作業指示を行う際に,画面共有する画面共有システムであ」る点で一致するといえる。

イ 引用発明は,「指示データ」を「オペレータが携帯電話機100のユーザに指示を通知するためのデータであり,指示の内容を示す文章を含」むものとし,「メッセージ60として『左側側面を映してください』と,オペレータによりメッセージの入力が行われると,文章受付処理により入力されたメッセージが,指示データとな」り,この「メッセージ」である「指示データ」は,本願発明1の「テキストデータ」に相当する。
そして,引用発明の「オペレータ端末50」が備える「指示データ入力受付手段54」は,「オペレータからの指示データの入力を受付ける手段であり,制御部,入力部により実現され,オペレータ端末50の入力部は,画面上をオペレータがタッチすることで入力を受付けるタッチパネル入力装置であってよ」いから,この「タッチパネル入力装置」により「入力部」が実現される「指示データ入力受付手段54」は,本願発明1の「音声入力を受け付ける音声入力受付手段」及び「入力された前記音声を音声認識でテキストデータに変換する変換手段」と「テキストデータを取得する手段」である点で共通するといえる。

ウ 引用発明の「動画データ」は,本願発明1の「画面データ」に相当する。
そして,引用発明では,「指示データ」が「携帯電話機100へ送信」され,「携帯電話機100」は,「所定の位置に所定の表示態様で,指示データを表示」し,「指示データの表示態様」の1つは,「指示データと動画データを重複して表示する重複表示」であるから,「携帯電話機100」の「画像表示手段102」では,「画面共有」されている「動画データ」の表示領域に「指示データ」が「重複表示」されるといえる。
そうすると,引用発明における「携帯電話機100」の「画像表示手段102」は,本願発明1の「共有領域内の画面データと,前記変更したテキストデータと,を前記共有領域内に表示する表示手段」と「共有領域内の画面データと,テキストデータと,を前記共有領域内に表示する表示手段」である点で共通するといえる。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「遠隔での作業指示を行う際に,画面共有する画面共有システムであって,
テキストデータを取得する手段と,
共有領域内の画面データと,テキストデータと,を前記共有領域内に表示する表示手段と,
を備えることを特徴とする画面共有システム。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1の「テキストデータを取得する手段」は,「音声入力を受け付ける音声入力受付手段と,入力された前記音声を音声認識でテキストデータに変換する変換手段」であるのに対して,引用発明の「テキストデータを取得する手段」は,「タッチパネル入力装置」により「入力部」が実現される「指示データ入力受付手段54」である点。

(相違点2)
本願発明1は,「前記音声入力を受け付けた機器に関する機器データの内容に応じて,前記変換されたテキストデータの表示方法を変更する変更手段」を備え,この「変更手段」によって「変更したテキストデータ」を表示するのに対して,引用発明は,このような「変更手段」を備えておらず,「変更したテキストデータ」を表示するものでもない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
引用文献2-4に記載されている技術的事項より,「音声を入力し,この音声を認識してテキストデータに変換することにより,タッチパネルよりも効率的にテキストデータの入力ができること」は,本願出願前に周知技術であったといえる。
そして,引用発明において,タッチパネルよりも効率的にテキストデータの入力ができるようにするために当該周知技術を採用して,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
「前記音声入力を受け付けた機器に関する機器データの内容に応じて,前記変換されたテキストデータの表示方法を変更する変更手段」を設け,この「変更手段」によって「変更したテキストデータ」を表示することは,上記引用文献1-4には記載されておらず,本願出願前において周知技術であったともいえない。
したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2も,本願発明1と同じく,「前記音声入力を受け付けた機器に関する機器データの内容に応じて,前記変換されたテキストデータの表示方法を変更する変更手段」を備え,この「変更手段」によって「変更したテキストデータ」を表示するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明3-4について
本願発明3-4も,本願発明1又は2と同じく,「前記音声入力を受け付けた機器に関する機器データの内容に応じて,前記変換されたテキストデータの表示方法を変更する変更手段」を備え,この「変更手段」によって「変更したテキストデータ」を表示するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明5-6について
本願発明5-6は,本願発明1-2に対応する方法の発明であり,「前記音声入力を受け付けた機器に関する機器データの内容に応じて,前記変換されたテキストデータの表示方法を変更する変更手段」と,この「変更手段」によって「変更したテキストデータ」を表示するものであることに対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 当審拒絶理由におけるその他の拒絶理由について

当審では,請求項5の記載では,「機器データ」が如何なるデータであるのかを特定することができず不明であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年5月1日付けの補正において,当該「機器データ」が「前記音声入力を受け付けた機器に関する機器データ」とされた結果,この拒絶理由は解消した。


第8 原査定について

1 理由1(特許法第29条第2項)について
平成30年5月1日付けの補正により,本願発明1-6は「前記音声入力を受け付けた機器に関する機器データの内容に応じて,前記変換されたテキストデータの表示方法を変更する変更手段」を備え,この「変更手段」によって「変更したテキストデータ」を表示するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献A-Fに基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由1を維持することはできない。

2 理由2(特許法第36条第6項第1号)について
審判請求時の補正により,「変換された前記テキストデータの内容に応じて」という記載は「機器データに応じて」に補正されており,原査定の理由2を維持することはできない。


第9 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-06-25 
出願番号 特願2015-220775(P2015-220775)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 洋今川 悟寺谷 大亮  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 松田 岳士
稲葉 和生
発明の名称 画面共有システム及び画面共有方法  
代理人 小木 智彦  

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