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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1341562
審判番号 不服2017-1014  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-24 
確定日 2018-06-18 
事件の表示 特願2015-121925「半導体装置およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月5日出願公開、特開2015-195389〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年10月19日に出願した特願2010-234790号の一部を平成27年6月17日に新たな特許出願とするものであって、同年7月16日付けで手続補正がなされ、平成28年4月28日付け拒絶理由通知に対して同年6月30日付けで手続補正がなされたが、同年10月25日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成29年1月24日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると共に手続補正がなされ、同年12月20日付け当審の拒絶理由通知に対して平成30年2月6日付けで手続補正がなされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成30年2月6日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
ダイパッドとリード部とを有するリードフレームと、
リードフレームのダイパッド上に載置された半導体素子と、
リードフレームのリード部と半導体素子とを電気的に接続する導電部と、
リードフレーム、半導体素子、および導電部を封止する封止樹脂部と、
半導体素子を取り囲むとともに樹脂凹部を有する外側樹脂部とを備え、
封止樹脂部は、この外側樹脂部の樹脂凹部内に充填され、
リードフレームのダイパッドおよびリード部は、半導体装置の底面および側面にそれぞれ露出する面を有し、ダイパッドまたはリード部の前記露出する面には、凹部が設けられ、
前記凹部は、前記底面から前記側面に向けて連続的に開口しており、
ダイパッドおよびリード部のうち前記半導体装置の側面から露出する面は、コの字形状を有するとともに外側樹脂部の側面と同一平面上に位置し、当該露出する面には、複数の縦溝または傾斜溝が形成され、前記複数の縦溝または傾斜溝は、前記露出する面の下端から上端まで延び、一部の縦溝または傾斜溝は前記凹部につながっていることを特徴とする半導体装置。」


第3 引用文献
平成29年12月20日付け当審の拒絶理由通知で引用された特開2010-62272号公報(平成22年3月18日公開。以下、「引用文献」という。)には、「発光装置、樹脂パッケージ、樹脂成形体並びにこれらの製造方法」に関し、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。

ア.「【背景技術】
【0002】
発光素子を用いた発光装置は、小型で電力効率が良く鮮やかな色の発光をする。また、この発光素子は半導体素子であるため球切れなどの心配がない。さらに初期駆動特性が優れ、振動やオン・オフ点灯の繰り返しに強いという特徴を有する。このような優れた特性を有するため、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いる発光装置は、各種の光源として利用されている。」

イ.「【0032】
<第1の実施の形態>
(発光装置)
第1の実施の形態に係る発光装置を説明する。図1は、第1の実施の形態に係る発光装置を示す斜視図である。図2は、第1の実施の形態に係る発光装置を示す断面図である。図2は図1に示すII-IIの断面図である。図3は、第1の実施の形態に用いられるリードフレームを示す平面図である。
【0033】
第1の実施の形態に係る発光装置100は、熱硬化後の、波長350nm?800nmにおける光反射率が70%以上であり、外側面20bにおいて樹脂部25とリード22とを略同一面に形成する樹脂パッケージ20を有する。リード22は底面(樹脂パッケージ20の外底面20a)及び上面(凹部27の内底面27a)の少なくともいずれか一面にメッキ処理を施している。一方、リード22の側面(樹脂パッケージ20の外側面20b)はメッキ処理が施されていない。樹脂パッケージ20の外側面20bは、樹脂部25が大面積を占めており、リード22が隅部から露出している。
【0034】
樹脂パッケージ20は、主に光反射性物質26を含有する樹脂部25と、リード22と、から構成されている。樹脂パッケージ20はリード22を配置している外底面20aと、リード22の一部が露出している外側面20bと、開口する凹部27を形成する外上面20cと、を有する。樹脂パッケージ20には内底面27aと内側面27bとを有する凹部27が形成されている。樹脂パッケージ20の内底面27aにはリード22が露出しており、リード22に発光素子10が載置されている。樹脂パッケージ20の凹部27内には発光素子10を被覆する封止部材30を配置する。封止部材30は蛍光物質40を含有している。発光素子10は、ワイヤ50を介してリード20と電気的に接続している。樹脂パッケージ20の外上面20cはリード20が配置されていない。」

ウ.「【0095】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態に係る発光装置について説明する。図11は、第4の実施の形態に係る発光装置を示す斜視図である。第1の実施の形態に係る発光装置とほぼ同様の構成を採るところは説明を省略することもある。
【0096】
第4の実施の形態に係る発光装置は、樹脂パッケージ320の外側面320bのリード322において、一部のみ外側面320bから凹んだ段差を有している。段差は、樹脂パッケージ320から露出されたリード322において、樹脂パッケージ320の外底面320aに設けられた第一面と、外底面320aから上方方向に略直角に形成された第二面と、第二面から樹脂パッケージ320の外側面方向に略直角に形成された第三面と、樹脂パッケージ320の外側面の第四面とからなる。樹脂パッケージ320の外上面320cは樹脂部325からなる略長方形に形成されている。外底面320a、第一面、段差を設けた第二面、第三面及び凹部の内底面はメッキ処理を施している。一方、段差を設けていない外側面320bは、メッキ処理を施していない。
【0097】
リード322はエッチング加工されたリードフレームを用いる。樹脂成形体の切断面において、エッチング加工されたリード322は凹凸を有している。この凹凸が樹脂部とリードとの密着性の向上を図っている。
【0098】
リード322の一部に段差を設けることによって実装時における導電性部材との接合面積を広くすることができ、接合強度を高くすることができる。また、リードフレームに凹みを設けているため、切断し易くなり、切断に要する時間も短縮することができる。」


上記ア及びウから、引用文献1の「発光装置」には以下の事項が記載されている。
上記イ、図1及び図2によれば、発光装置100は、外側面20bにおいて樹脂部25とリード22とを略同一面に形成する樹脂パッケージ20を有するものである。
また、上記イ、図1及び図2によれば、樹脂パッケージ20には内底面27aと内側面27bとを有する凹部27が形成されているものである。そして、内底面27aには、リード22、リード22に載置されている発光素子10、発光素子10とリード22を電気的に接続するワイヤ50が配置されているものである。ここで、上記アによれば、発光素子は半導体素子である。更に、凹部27内には発光素子10を被覆する封止部材30が配置されているものである。
上記ウ、図11によれば、外側面320bのリード322は、実装時における導電性部材との接合面積を広くするため、一部のみ外側面320bから凹んだ段差を有しているものである。

そうすると、図11の第4の実施例(なお、リードが外側面から凹んだ段差を有したこと以外は、第1の実施例、図1及び図2のものと同一構成である。)によれば、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「外側面において樹脂部とリードとを略同一面に形成する樹脂パッケージを有し、
樹脂パッケージには内底面と内側面とを有する凹部が形成され、
内底面には、リード、リードに載置されている半導体素子である発光素子、リードと発光素子を電気的に接続するワイヤが配置され、
凹部内には発光素子を被覆する封止部材が配置されており、
外側面のリードは、実装時における導電性部材との接合面積を広くするため、一部のみ外側面から凹んだ段差を有している、発光装置。」


第4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「半導体素子である発光素子」は、本願発明の「半導体素子」に相当する。
そして、引用発明の「リード」は、発光素子を載置する部分が本願発明の「ダイパット」に相当する構成であり、発光素子とワイヤで接続される部分が本願発明の「リード部」に相当する構成であるから、本願発明の「リードフレーム」に相当するものである。
また、引用発明の「ワイヤ」は、リードと発光素子を電気的に接続するものであるから、本願発明の「導電部」に相当する。
よって、引用発明の「リード、リードに載置されている半導体素子である発光素子、リードと発光素子を電気的に接続するワイヤ」は、本願発明の「ダイパッドとリード部とを有するリードフレームと、リードフレームのダイパッド上に載置された半導体素子と、リードフレームのリード部と半導体素子とを電気的に接続する導電部」に相当する。

(2)引用発明の「樹脂パッケージ」は、凹部が形成されており、当該凹部の内底面には半導体素子である発光素子が配置されているから、本願発明の「半導体素子を取り囲むとともに樹脂凹部を有する外側樹脂部」に相当する。
また、引用発明の「封止部材」は、凹部内の発光素子を被覆するところ、凹部内にはリードとワイヤも配置されているから、本願発明の「リードフレーム、半導体素子、および導電部を封止する封止樹脂部」に相当する。
よって、引用発明の「樹脂パッケージには内底面と内側面とを有する凹部が形成され、内底面には、リード、リードに載置されている半導体素子である発光素子、リードと発光素子を電気的に接続するワイヤが配置され、凹部内には発光素子を被覆する封止部材が配置されて」いることは、本願発明の「リードフレーム、半導体素子、および導電部を封止する封止樹脂部と、半導体素子を取り囲むとともに樹脂凹部を有する外側樹脂部とを備え、封止樹脂部は、この外側樹脂部の樹脂凹部内に充填され」る構成に相当する。

(3)引用発明の「発光装置」は、半導体素子を有しており、上記(1)及び(2)に記載したとおり、本願発明の主要な構成を備えているから、本願発明の「半導体装置」に相当する。

(4)また、引用文献の「リード」は、樹脂パッケージの隅部から露出され(上記「第3 イ.」の段落【0033】を参照。)、樹脂パッケージの底部から露出されている(引用文献の図2を参照。)から、本願発明の「リードフレームのダイパッドおよびリード部は、半導体装置の底面および側面にそれぞれ露出する面を有」する構成に相当する。

(5)引用発明の「外側面のリードは、実装時における導電性部材との接合面積を広くするため、一部のみ外側面から凹んだ段差を有している」ことは、本願発明の「リード部の前記露出する面には、凹部が設けられ、前記凹部は、前記底面から前記側面に向けて連続的に開口して」いる構成に相当する。
そして、上記引用発明の構成に、引用発明の「外側面において樹脂部とリードとを略同一面に形成する樹脂パッケージ」の構成を合わせると、本願発明の「ダイパッドおよびリード部のうち前記半導体装置の側面から露出する面は、コの字形状を有するとともに外側樹脂部の側面と同一平面上に位置」する構成に相当する。

(6)但し、リード部の半導体装置の側面から露出する面において、本願発明は「複数の縦溝または傾斜溝が形成され、前記複数の縦溝または傾斜溝は、前記露出する面の下端から上端まで延び、一部の縦溝または傾斜溝は前記凹部につながっている」のに対し、引用発明にはその旨の特定がされていない点で相違する。

よって、本願発明と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「ダイパッドとリード部とを有するリードフレームと、
リードフレームのダイパッド上に載置された半導体素子と、
リードフレームのリード部と半導体素子とを電気的に接続する導電部と、
リードフレーム、半導体素子、および導電部を封止する封止樹脂部と、
半導体素子を取り囲むとともに樹脂凹部を有する外側樹脂部とを備え、
封止樹脂部は、この外側樹脂部の樹脂凹部内に充填され、
リードフレームのダイパッドおよびリード部は、半導体装置の底面および側面にそれぞれ露出する面を有し、ダイパッドまたはリード部の前記露出する面には、凹部が設けられ、
前記凹部は、前記底面から前記側面に向けて連続的に開口しており、
ダイパッドおよびリード部のうち前記半導体装置の側面から露出する面は、コの字形状を有するとともに外側樹脂部の側面と同一平面上に位置する、半導体装置。」

<相違点>
リード部の半導体装置の側面から露出する面において、本願発明は「複数の縦溝または傾斜溝が形成され、前記複数の縦溝または傾斜溝は、前記露出する面の下端から上端まで延び、一部の縦溝または傾斜溝は前記凹部につながっている」のに対し、引用発明にはその旨の特定がされていない。

そこで、相違点について検討する。
引用発明は、段差を設けた面はメッキ処理を施している(上記「第3 ウ.」の段落【0096】を参照。)から、凹部が設けられたリード部を導電性部材(はんだ等)で濡らすことを行うものと認められるところ、はんだの濡れ性向上のためにはんだを塗布するリードの部位(端面、側面)に縦溝を形成することは、例えば平成29年12月20日付け当審の拒絶理由通知で引用された特開平9-45817号公報(段落【0008】ないし【0016】、図3を参照。以下、「周知文献1」という。)、実願平4-70823号(実開平6-29152号)のマイクロフィルム(段落【0005】ないし【0007】、図1を参照。以下、「周知文献2」という。)に記載されているように周知の技術事項である。
なお、審判請求人は、上記周知文献1について、条痕(溝)が上半分には生じていない旨を主張している。しかしながら、上記周知文献2はスリット(溝)を下から上まで形成しているところ、はんだを塗布する面の下から上まで溝を形成することは、例えば特開平8-88144号公報(図1の細溝8を参照。)、特開平10-177933号公報(図1及び図3の峰44と谷46を参照。)、特開昭64-77916号公報(図1の表面6を参照。)に記載されているように周知の技術事項である。よって、溝の形成の程度について格別の発明性は認められないから、審判請求人の主張を採用することはできない。
そうすると、引用発明の段差を設けた面(本願発明の「凹部を設けた面」に相当。)に、周知技術事項を採用することは当業者が容易になし得たことであり、その場合、本願発明の「前記露出する面の下端から上端まで延び、一部の縦溝または傾斜溝は前記凹部につながっている」という構成を満たすものである。つまり、引用発明の段差を設けた面に周知の技術事項を採用し相違点の構成にすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知の技術事項から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項により当業者が容易になし得たものである。


第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-26 
結審通知日 2018-04-27 
審決日 2018-05-08 
出願番号 特願2015-121925(P2015-121925)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼澤 雅博麻川 倫広鈴木 駿平  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 酒井 朋広
井上 信一
発明の名称 半導体装置およびその製造方法  
代理人 永井 浩之  
代理人 朝倉 悟  
代理人 村田 卓久  
代理人 中村 行孝  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 佐藤 泰和  

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