• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1341613
審判番号 不服2017-15261  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-13 
確定日 2018-07-17 
事件の表示 特願2014-529751「デュアルチャンバ構成のパルスプラズマチャンバ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月14日国際公開、WO2013/036371、平成26年11月27日国内公表、特表2014-531753、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年(2012年)8月17日を国際出願日(パリ優先権主張 外国庁受理 2011年9月7日(以下,左の日を「本願優先日」という。) 米国)とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年 4月25日 翻訳文提出
平成27年 8月14日 審査請求・手続補正
平成28年 8月 5日 拒絶理由通知
平成29年 2月 6日 意見書・手続補正
平成29年 6月 6日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年10月13日 審判請求

第2 本願発明
本願の請求項1ないし20に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明20」という。)は,本願の特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。
「【請求項1】
上側チャンバを下側チャンバに流体連通させるプレートによって隔てられた前記上側チャンバおよび前記下側チャンバを備えたウエハ処理装置であって,
前記上側チャンバ内の上側電極に接続された第1の高周波(RF)電源の電圧および周波数を設定するよう動作可能な連続波(CW)コントローラと,
前記下側チャンバ内の下側電極に接続された第2のRF電源によって生成されるパルスRF信号の電圧,周波数,オン期間の持続時間,および,オフ期間の持続時間を設定するよう動作可能なパルスコントローラと,
前記両チャンバの動作中に前記プレートを通して前記上側チャンバから前記下側チャンバに流れる種の流れを制御するために,前記CWコントローラおよび前記パルスコントローラのパラメータを設定するよう動作可能なシステムコントローラと,
を備え,
前記種の流れは,陰イオンエッチングと,前記オフ期間のアフターグロー中のウエハの表面における過剰な正荷電の中和と,前記オン期間中の前記下側チャンバにおけるプラズマの再点火とを支援し,
前記第1のRF電源は,前記CWコントローラに制御されつつ,前記上側電極に連続波RF電力を供給し,
前記第2のRF電源は,前記パルスコントローラに制御されつつ,前記下側電極にパルスRF電力を供給する,ウエハ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウエハ処理装置であって,前記システムコントローラは,さらに,前記上側チャンバ内の第1の圧力および前記下側チャンバ内の第2の圧力を設定するよう動作可能であり,前記第1の圧力は前記第2の圧力よりも高い,ウエハ処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のウエハ処理装置であって,前記オン期間の持続時間は,前記オフ期間の持続時間と異なる,ウエハ処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載のウエハ処理装置であって,前記オン期間の持続時間は,前記オフ期間の持続時間と等しい,ウエハ処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載のウエハ処理装置であって,前記第1のRF電源の周波数は,27MHzから100MHzの間の値を有する,ウエハ処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載のウエハ処理装置であって,前記第2のRF電源の周波数は,0.4MHzから25MHzの間の値を有する,ウエハ処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載のウエハ処理装置であって,前記第1のRF電源の電圧は,100Vから600Vの間の値を有する,ウエハ処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載のウエハ処理装置であって,前記第2のRF電源の電圧は,1000Vから6000Vの間の値を有する,ウエハ処理装置。
【請求項9】
請求項1に記載のウエハ処理装置であって,前記上側チャンバは,前記ウエハの処理中に前記上側チャンバ内で上側プラズマを形成するよう動作可能である,ウエハ処理装置。
【請求項10】
請求項1に記載のウエハ処理装置であって,前記上側チャンバは,処理中に20mTorrから60mTorrの間の第1の圧力を有するよう動作可能であり,前記下側チャンバは,処理中に10mTorrから19mTorrの間の第2の圧力を有するよう動作可能である,ウエハ処理装置。
【請求項11】
上側チャンバを下側チャンバに流体連通させるプレートによって隔てられた前記上側チャンバおよび前記下側チャンバを備えたウエハ処理装置でウエハを処理するための方法であって,
前記上側チャンバ内の上側電極に接続された第1のRF電源によって生成される連続高周波(RF)信号のための第1のパラメータを設定する工程であって,前記第1のパラメータは,第1の電圧および第1の周波数を含む,工程と,
前記下側チャンバ内の下側電極に接続された第2のRF電源によって生成されるパルスRF信号のための第2のパラメータを設定する工程であって,前記第2のパラメータは,第2の電圧,第2の周波数,オン期間の持続時間,および,オフ期間の持続時間を含む,工程と,
前記連続RF信号を前記上側電極に印加する工程と,
前記パルスRF信号を前記下側電極に印加する工程と,
を備え,
前記第1のパラメータおよび前記第2のパラメータを設定することにより,前記両チャンバの動作中に前記上側チャンバから前記下側チャンバへの種の流れを制御し,前記種の流れは,陰イオンエッチングと,前記オフ期間のアフターグロー中のウエハの表面における過剰な正荷電の中和と,前記オン期間中の前記下側チャンバにおけるプラズマの再点火とを支援し,
前記第1のRF電源は,連続波(CW)コントローラに制御されつつ,前記上側電極に連続波RF電力を供給し,
前記第2のRF電源は,パルスコントローラに制御されつつ,前記下側電極にパルスRF電力を供給する,方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって,さらに,
前記上側チャンバ内の第1の圧力を設定する工程と,
前記下側チャンバ内の第2の圧力を設定する工程と,
を備える,方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって,さらに,
前記第1の圧力を増大させて,前記上側チャンバから前記下側チャンバへの前記種の流れを増大させる工程を備える,方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって,さらに,
前記上側チャンバおよび前記下側チャンバを隔てる前記プレートの貫通孔の長さを調節する工程を備え,前記貫通孔の前記長さを短くすることにより,前記上側チャンバから前記下側チャンバへの前記種の流れを増大させる,方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって,さらに,
前記プレートの前記貫通孔の数を減らして,前記上側チャンバおよび前記下側チャンバの間の前記種の流れを減少させる工程を備える,方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法であって,前記第1のパラメータを設定する工程は,
前記第1の電圧を上げて,前記種の流れを増大させる工程を含む,方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法であって,前記方法の工程は,1または複数のプロセッサによって実施される場合にコンピュータプログラムによって実行され,前記コンピュータプログラムは,非一時的なコンピュータ読み取り可能記憶媒体に格納される,方法。
【請求項18】
上側チャンバを下側チャンバに流体連通させるプレートによって隔てられた前記上側チャンバおよび前記下側チャンバを備えたウエハ処理装置であって,
前記上側チャンバ内の上側電極に接続された第1の高周波(RF)電源のための第1のパラメータを設定するよう動作可能な連続波(CW)コントローラと,
前記下側チャンバ内の下側電極に接続された第2のRF電源によって生成される第2のパルスRF信号のための第2のパラメータを設定すると共に,前記下側電極に接続された第3のRF電源によって生成される第3のパルスRF信号のための第3のパラメータを設定するよう動作可能なパルスコントローラと,
前記両チャンバの動作中に前記プレートを通して前記上側チャンバから前記下側チャンバに流れる種の流れを制御するために,前記第1,第2,および,第3のパラメータを転送するよう動作可能なシステムコントローラと,
を備え,
前記種の流れは,陰イオンエッチングと,オフ期間のアフターグロー中のウエハの表面における過剰な正荷電の中和と,オン期間中の前記下側チャンバにおけるプラズマの再点火とを支援し,
前記第1のRF電源は,前記CWコントローラに制御されつつ,前記上側電極に連続波RF電力を供給し,
前記第2のRF電源は,前記パルスコントローラに制御されつつ,前記下側電極にパルスRF電力を供給する,ウエハ処理装置。
【請求項19】
請求項18に記載のウエハ処理装置であって,前記第1のRF電源は,30MHzから100MHzまでの間の周波数を有し,前記第2のRF電源は,0.4MHzから4MHzまでの間の周波数を有し,前記第3のRF電源は,20MHzから100MHzまでの間の周波数を有する,ウエハ処理装置。
【請求項20】
請求項18に記載のウエハ処理装置であって,前記上側チャンバは,処理中に20mTorrから60mTorrの間の第1の圧力を有するよう動作可能であり,前記下側チャンバは,処理中に10mTorrから19mTorrの間の第2の圧力を有するよう動作可能である,ウエハ処理装置。」

第3 原査定の概要
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,本願優先日前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1
・引用文献等 1,2
・備考
(中略)
引用文献2には,プラズマエッチング装置における下部電極に接続される高周波電源として,パルス発生器に接続され,パルス変調されたバイアス電圧が印加されるものが記載されており,更に,そのパルス変調のパラメータとして,投入パワー(「電圧」に対応),変調周期(「周波数」に対応),ON時間及びOFF時間(「オン期間の持続時間及びオフ期間の持続時間」に対応)が制御されることが記載されており,これは,上記相違点2に係る技術事項に相当するものである(段落[0013],[0014]参照)。
ここで,引用文献1及び2に記載された各発明が共に,プラズマ処理装置に係るものであり,かつ,引用文献1に記載された発明におけるバイアス電力ジェネレータ132,134と,引用文献2に記載された発明における高周波電源が,共に,下部電極に接続され,バイアス電圧を供給するという共通の機能を有するものであることからすれば,引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された発明を適用して,上記相違点1に係る技術事項を導き出すようにすることは,当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
(中略)
・請求項 2-13,16-20
・引用文献等 1,2
<引用文献等一覧>
1.特表2010-512031号公報
2.特開平11-219938号公報

第4 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
ア 「【背景】
【0001】
[001]半導体ウェハのようなワークピースにわたるプラズマプロセスの均一性は,プラズマイオン分布及びプロセスガス流分布が非均一であることによって制限される。ウェハにわたるプロセス均一性を改善するための努力は,プラズマソース電力の半径方向分布を変化させ及び(又は)チャンバ内のガス流の半径方向分布を変化させることを必然的に伴う。このような変化は,典型的に,チャンバの天井又はそれより上で行われる。というのは,プラズマソース電力印加装置が一般的に天井又はその上にあり,且つプロセスガス噴射装置が典型的に天井におけるガス分配プレートだからである。1つの問題として,天井からウェハまでの距離は,典型的に,プラズマイオン及び(又は)プロセスガス流の望ましい分布を,天井で実現される理想的な状態と,ウェハ表面での実際の状態との間で拡散作用によって歪めてしまうに充分なものである。それ故,プラズマプロセスの均一性を改善できる程度が,ウェハから天井までのギャップのために著しく制限される。
【0002】
[002]プラズマプロセスの制御は,プラズマ内の化学種の解離によって影響を受ける。解離の程度は,例えば,(とりわけ)RFプラズマソース電力レベルの選択により決定される。典型的に,解離の程度は,チャンバ内の全てのガス化学種に影響を及ぼし,一般的には,チャンバ内の全ての種が同程度の解離を経験するが,より重い又はより複雑な分子の種ほど,より簡単な種よりも,解離の程度が若干僅かとなり得る。その結果,リアクタチャンバ内で異なる化学種の解離を別々に制御することは,一般的に,不可能である。例えば,1つの化学種に対して高度の解離が望まれる場合には,チャンバ内に存在する全ての種が著しい程度の解離を経験する。このようなケースでは,例えば,より複雑な種でも,チャンバ内に存在する全ての種を少なくとも一部分は解離しなければ,チャンバ内の1つの化学種を高度に解離することが可能にはならない。それ故,エッチングプロセスを制御する能力は,解離に対して独立した制御が欠如していることによって制限される。
【0003】
[003]また,プラズマプロセスの制御は,ウェハ表面におけるRF電界によっても影響を受ける。典型的に,ウェハ表面におけるRF電界は,チャンバの導電性表面,例えば,側壁又は天井に対するウェハの電位により制御される。このような制御は,側壁がウェハの縁に最も近く且つウェハの中心から最も遠く配置され,ひいては,非均一性を生み出すために,制限される。ウェハ全体に対して均一な導電性平面を呈する天井は,ウェハから天井までのギャップによりウェハから変位されており,このギャップは,ウェハ上で均一でなければならない電界に望ましくない歪を生じさせる。
【概要】
【0004】
[004]半導体ウェハ又は誘電体マスクのようなワークピースを処理するためのプラズマリアクタが提供される。1つの態様において,リアクタチャンバは,天井と,側壁と,チャンバ内にあるワークピース支持ペデスタルであって,対称軸に沿って天井を向き,該ペデスタルと天井との間のチャンバ容積を画成するワークピース支持ペデスタルとを有している。RFプラズマソース電力印加装置が天井に設けられる。チャンバ内には,その場の(in-situ)電極本体が横たわり,チャンバを上部チャンバ領域及び下部チャンバ領域に分割する。その場の電極は,軸に平行に延び且つ異なる開口サイズをもつ複数のフロースルー(flow-through)通路を有する。これら通路は,その場の電極本体を通してのガス流抵抗の望ましい半径方向分布に基づいて開口サイズにより半径方向に分布される。その場の電極は,更に,本体内部にあって複数のフロースルー通路により浸透される導電性電極要素を有している。この導電性電極要素には,電気端子が結合される。」
イ 「【詳細な説明】
【0010】
[0019]図1は,ワークピース支持ペデスタル25に支持されたワークピース20を処理するためのプラズマリアクタチャンバ15内のその場の(in-situ)電極/ガス分配プレート10の概念図である。RFプラズマソース電力印加装置が設けられ,これは,チャンバ天井30(電極として働く)でもよいし,又は天井30の上に横たわるコイルアンテナ35でもよい。電極/プレート10より上のチャンバ15の上部領域15aにプラズマ37が形成される。その場の電極/ガス分配プレート10は,図3A,3B,3C又は3Dに示すパターンの1つに基づく通路72を有し,これは,チャンバ15の上部チャンバ領域15aから下部領域15bへプラズマが通過できるようにする。これは,下部領域15bに,より少ないプラズマ(低密度プラズマ)40を形成できるようにする。その場の電極/ガス分配プレート10は,誘電体材料で形成され,導電層44(図1の破線)を内部に形成することができる。この導電層44は,RF電源80のような電位に(インピーダンス整合部82を経て)接続されてもよいし,又は接地されてもよい。接地される場合に,その場の電極10(特に,導電層44)は,ペデスタル25に印加されるRFバイアス電力のための接地基準を与えることができる。それとは別に(又はそれに加えて),導電層44に印加されるVHF電力は,下部チャンバ領域15bにおけるプラズマイオン発生を促進することができる。
【0011】
[0020]図2は,図1のその場の電極10を使用できるプラズマリアクタの一形式を示す一実施例である。図2のリアクタは,(任意であるが)リフトサーバ105によって上昇及び下降できるワークピース支持体103に保持された半導体ウェハでよいワークピース102を処理するためのものである。このリアクタは,チャンバ側壁106及び天井108によって境界定めされたチャンバ104で構成される。天井108は,小さなガス噴射オリフィス110をその内面に有するガス分配シャワーヘッド109を備えることができ,このシャワーヘッド109は,プロセスガス供給源112からプロセスガスを受け取る。更に,プロセスガスは,ガス噴射ノズル113を通して導入されてもよい。リアクタは,誘導性結合のRFプラズマソース電力印加装置114と,容量性結合のRFプラズマソース電力印加装置116の両方を備えている。誘導性結合のRFプラズマソース電力印加装置114は,天井108の上に横たわる誘導性アンテナ又はコイルでよい。チャンバ104への誘導性結合を許すために,ガス分配シャワーヘッド109は,セラミックのような誘電体材料で形成することができる。VHF容量性結合のソース電力印加装置116は,天井108内又はワークピース支持体103内に配置できる電極である。別の実施形態では,容量性結合のソース電力印加装置116が,天井108内の電極及びワークピース支持体103内の電極で構成され,RFソース電力を天井108及びワークピース支持体103の両方から容量性結合するようにしてもよい。(電極が天井108内にある場合には,オーバーヘッドコイルアンテナからチャンバ104への誘導性結合を許すように複数のスロットをもつことができる。)RF電力ジェネレータ118は,任意のインピーダンス整合要素120を経て誘導性結合のソース電力印加装置114へ(例えば,約10MHzから27MHzの範囲内の)高周波(HF)電力を与える。別のRF電力ジェネレータ122は,任意のインピーダンス整合要素124を経て容量性結合のソース電力印加装置116へ(例えば,約27MHzから200MHzの範囲内の)超高周波(VHF)電力を与える。
【0012】
[0021]プラズマイオンを発生する際の容量性結合のソース電力印加装置116の効率は,VHF周波数の上昇と共に高くなり,また,周波数範囲は,かなりの容量性結合を生じさせるためにはVHF領域にあるのが好ましい。図2に象徴的に示されたように,RF電力印加装置114,116の両方からの電力は,ワークピース支持体103上に形成されたチャンバ104内のバルクプラズマ126に結合される。(例えば)ウェハ102の下に横たわるワークピース支持体103内の電極130に結合されたRFバイアス電源からワークピース102へRFプラズマバイアス電力が容量性結合される。RFバイアス電源は,低周波数(LF)RF電力ジェネレータ132及び別のRF電力ジェネレータ134を含んでもよく,これは,中間周波(MF)又は高周波(HF)RF電力ジェネレータでよい。バイアス電力ジェネレータ132,134とワークピース支持電極130との間には,インピーダンス整合要素136が結合される。真空ポンプ160は,チャンバ104からバルブ162を通してプロセスガスを排気し,バルブ162は,排気率を調整するのに使用できる。バルブ162を通る排気率及びガス分配シャワーヘッド109を通る到来ガス流量は,チャンバ圧力及びチャンバ内のプロセスガス滞在時間を決定する。
【0013】
[0022]プラズマイオン密度は,誘導性結合の電力印加装置114又はVHF容量性結合の電力印加装置116のいずれかにより印加される電力が増加されるにつれて高くなる。しかしながら,それらは,誘導性結合の電力が,バルクプラズマにおけるイオン及び基のより多くの解離,並びに中心低の半径方向イオン密度分布を促進するという点で,異なる振舞いをする。対照的に,VHF容量性結合の電力は,より少ない解離,及び中心高の半径方向イオン分布を促進し,更に,そのVHF周波数が高くなるにつれてより高いイオン密度を与える。
【0014】
[0023]誘導性及び容量性結合の電力印加装置は,プロセスの要件に基づいて組み合せて又は個別に使用することができる。一般に,組み合せて使用するときには,誘導性結合のRF電力印加装置114及び容量性結合のVHF電力印加装置116は,電力をプラズマへ同時に結合し,一方,LF及びHFバイアス電力ジェネレータは,バイアス電力をウェハ支持電極130に同時に与える。これら電力源の同時の動作は,プラズマイオン密度,プラズマイオン半径方向分布(均一性),プラズマの解離又は化学種含有量,シースイオンエネルギー及びイオンエネルギー分布(巾)のような最も重要なプラズマ処理パラメータを独立して調整できるようにする。この目的のため,ソース電力コントローラ140は,バルクプラズマイオン密度,プラズマイオン密度の半径方向分布,並びにプラズマにおける基及びイオンの解離を制御するために,ソース電力ジェネレータ118,122を互いに独立して調整する(例えば,それらの電力比を制御する)。コントローラ140は,各RFジェネレータ118,122の出力電力レベルを独立して制御することができる。それに加えて又はそれとは別に,コントローラ140は,RFジェネレータ118,122の一方又は両方のRF出力をパルス化することができ,且つVHFジェネレータ122及び任意であるがHFジェネレータ118の各々のデューティサイクルを独立して制御するか又はそれらの周波数を制御することができる。それに加えて,バイアス電力コントローラ142は,イオンエネルギーレベル及びイオンエネルギー分布巾の両方を制御するためにバイアス電力ジェネレータ132,134の各々の出力電力レベルを制御する。
【0015】
[0024]図2のリアクタにおけるその場の電極10は,ワークピース支持ペデスタル103と天井108との間の平面内に設置される。1つの態様において,その場の電極10は,セラミックのような絶縁材料(例えば,窒化アルミニウム)で形成される。
【0016】
[0025]図3Aから図3Dを参照すれば,その場の電極の通路72は,丸又は円形で,均一直径のもの(図3A及び図3D)でもよいし,又は半径方向位置と共に直径が増大するパターン(図3B)でもよいし,又は半径方向位置と共に直径が減少するパターン(図3C)でもよいし,或いは通路72間の距離が非均一で,例えば,中央において密度が高く且つ外側半径において密度が最小(図3D)であってもよい。
【0017】
[0026]図4を参照すれば,図4のその場の電極10の内部特徴は,更に,内側及び外側ガスマニホールド62,64と,その場の電極10の底面70におけるガス噴射オリフィス69の内側及び外側グループ66,68と,その場の電極10を貫通して形成された軸方向通路72とを含み,この軸方向通路は,図1の上部チャンバ領域15aからその場の電極10を貫通して下部チャンバ領域15bへプラズマを流すことができる。図3B及び3Cに示されたように,その場の電極10を通しての流量分布に非均一性を導入するために,通路72のサイズ又は面積を,その場の電極10上の半径方向位置の関数として変化させることができる。この流量分布の非均一性は,リアクタに本来あるプラズマイオン密度の非均一性を相殺し又は正確に補償するように選択することができる。ここに示す実施例では,通路サイズの半径方向分布は,最も小さい通路72が中心に最も近いところにある一方,最も大きい通路が周囲に最も近いところにあるというものである。これは,中心が高いプラズマイオン密度の半径方向分布を補償する。もちろん,望ましい効果及びリアクタの特性に基づいて,通路サイズの別の分布が選択されてもよい。
【0018】
[0027]図2のリアクタは,更に,その場の電極10の内側及び外側ガスマニホールド62,64の各々に結合された図4に示す内側及び外側プロセスガス供給源76,78も備えている。図1に示すように,RF電力ジェネレータ80は,インピーダンス整合部82を通してその場の電極10の導電層44に結合される。或いは又,導電層44が接地されてもよい。又は,導電層44がDC電圧源に結合されてもよい。
【0019】
[0028]その場の電極10が存在することで,その場の電極10の上下の2つの領域15a,15bに異なるプロセス条件が各々生じる。上部チャンバ領域15aは,その場の電極の通路72を通るガス流抵抗のために,高いチャンバ圧力を有し,これは,誘導性結合のプラズマソースに対して有利である。プラズマ密度及び電子の温度は,上部チャンバ領域15aにおいて高く,これは,上部チャンバ15aにおいて化学種のより多くの解離を招く。下部チャンバにおける解離は,電子の温度が低く,プラズマイオン密度が低く且つ圧力が低いので,かなり少ない。更に,下部チャンバ領域15bの圧力が低いために,衝突があまりなく,従って,イオンの軌道は,ウェハ表面付近で垂直方向に関してより狭く分布され,顕著な効果が得られる。
【0020】
[0029]1つの態様によれば,図2のリアクタは,ある選択された化学種が高度に解離されるが,他の種はそうでないような独特のプロセスを実行するように使用することができる。これは,高度な解離が望まれる化学種を,天井のガス分配プレート108bを通して導入する一方,解離がほとんど又は全く望まれない他の化学種を,内側及び外側のガス供給源76,78の一方又は両方からその場の電極/ガス分配プレート10へ導入することにより,達成される。例えば,高反応性のエッチング種は,より単純なフッ化炭素ガスを天井のガス分配プレート108bを経て導入して,上部領域15aの高密度プラズマ中で解離させることにより,発生することができる。非常に複雑な,炭素に富んだ種は,複雑なフッ化炭素種をガス供給源76,78からその場の電極10へ導入して,ほとんど又は全く解離せずにワークピースの表面に到達できるようにすることにより,発生することができる。これは,実質上解離なし(その場の電極10を通して導入される種の場合)及び完全に又は高度に解離された種(天井のガス分配プレート108bを通して導入される種の場合)を包含するように,ワークピースに到達する種の解離の範囲を相当に広げる。また,2組の種の解離の制御を,独立したものにする。このような独立した制御は,上部及び下部チャンバ領域15a,15bに異なるプロセス条件を生じさせることにより達成される。上部領域15aにおける解離は,例えば,コイルアンテナ(1つ又は複数)114又は天井電極116に印加されるRFソース電力を変化させることで制御できる。一般的に,2つの領域15a,15bの各々における解離は,RFプラズマソース電力レベル(例えば,RFジェネレータ118,124),及びチャンバ圧力(真空ポンプ160の制御による),並びに異なる領域15a,15bへのガス流量を制御することによって,制御される。」
ウ 図2には,「システムコントローラ140」から「ソース電力ジェネレータ122」及び「バイアス電力コントローラ142」に向けて「制御」すること,が記載されていると認められる。
(2)引用装置発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用装置発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体ウェハを処理するためのプラズマリアクタであって,そのチャンバ内には,その場の電極/ガス分配プレートが横たわり,チャンバを上部チャンバ領域及び下部チャンバ領域に分割し,その場の電極/ガス分配プレートは通路を有し,上部チャンバ領域から下部チャンバ領域へプラズマが通過できるようにし,
プラズマリアクタは容量性結合のRFプラズマソース電力印加装置を備え,容量性結合のソース電力印加装置は天井内に配置できる電極であり,ソース電力ジェネレータは容量性結合のソース電力印加装置へ電力を与え,
ウェハの下に横たわるワークピース支持体内の電極に結合されたRFバイアス電源からワークピースへRFプラズマバイアス電力が容量性結合され,RFバイアス電源は,低周波数RF電力ジェネレータ及び別のRF電力ジェネレータを含んでもよく,
ソース電力コントローラは,ソース電力ジェネレータの出力電力レベル及び周波数を制御することができ,ソース電力ジェネレータのRF出力をパルス化することができ,
バイアス電力コントローラはバイアス電力ジェネレータの出力電力レベルを制御し,
システムコントローラからソース電力ジェネレータ及びバイアス電力コントローラに向けて制御すること。」
(3)引用方法発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用方法発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体ウェハを処理するためのプラズマリアクタであって,そのチャンバ内には,その場の電極/ガス分配プレートが横たわり,チャンバを上部チャンバ領域及び下部チャンバ領域に分割し,その場の電極/ガス分配プレートは通路を有し,上部チャンバ領域から下部チャンバ領域へプラズマが通過できるようにしたプラズマリアクタ,で行うエッチングプロセスであって,
プラズマリアクタは容量性結合のRFプラズマソース電力印加装置を備え,容量性結合のソース電力印加装置は天井内に配置できる電極であり,ソース電力ジェネレータは容量性結合のソース電力印加装置へ電力を与え,
ウェハの下に横たわるワークピース支持体内の電極に結合されたRFバイアス電源からワークピースへRFプラズマバイアス電力が容量性結合され,
ソース電力コントローラは,ソース電力ジェネレータの出力電力レベル及び周波数を制御することができ,ソース電力ジェネレータのRF出力をパルス化することができ,
バイアス電力コントローラはバイアス電力ジェネレータの出力電力レベルを制御し,
システムコントローラからソース電力ジェネレータ及びバイアス電力コントローラに向けて制御すること。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,高周波放電を用いたプラズマエッチング方法に関するものである。」
イ 「【0013】
【発明の実施の形態】第1の実施の形態
この発明の第1の実施の形態について,図1および図2を参照しながら説明する。図1はプラズマエッチング装置の構造を示す模式図である。プラズマエッチング装置は,誘導結合方式による真空室となるプラズマ生成室1により構成されており,チャンバーは接地されている。ガス導入口2からは,反応性ガス,例えば酸化膜エッチングの場合,CHF_(3) (50%)/C_(4) F_(8) (50%)の混合ガスを,50sccm,5Pa程度に導入する。プラズマ生成室に石英板を隔てて上部に取り付けられたマルチスパイラルコイル3に,マッチング回路4を介して高周波電源5より高周波電力を印加することによりプラズマ6を生成することができる。被エッチング試料となるウエハ7は,マルチスパイラルコイル3に対向する形で下部電極8上に置かれ,マッチング回路9を介して高周波電源10よりバイアス用高周波電力が供給される。パルス発生器11からは,プラズマ生成用高周波電源5とバイアス用高周波電源10に任意のパルス変調用信号が送られる構成になっている。なお,12,13はガス供給系,14はパルス発生器である。
【0014】図2は,バイアス投入電力をパルス変調(ON/OFF変調)する際の各種パラメータの時間変化の説明図である。(a)はプラズマに供給する高周波電力(例えば,13.56MHz)であってCWであるのに対し,バイアス電力は変調用パルス(b)によって(c)に示すようにON/OFF変調することとする。変調パラメータとしては,瞬時の投入パワーのほか,ON時間,OFF時間および変調周期であり,変調周期中のON時間の割合をデューティ比とする。このバイアス電力に応じて,イオンに負のバイアス電圧が発生するため,このとき被エッチング試料表面には,(d)に示すようなイオン電流が流入することになる。一方,変調周期を10μ秒?10m秒とした場合,プラズマ中のラジカルの寿命は10msec以上と,変調周期よりはるかに長く,ラジカル密度は(e)に示すように変調周期を通じては一定である。そのため,バイアス電力OFF時には,副反応生成物が排出され,等方性のラジカル・原子が十分供給されて堆積保護膜が形成される一方,ON時にはイオン主体の異方性エッチングが進行する。
【0015】このように構成されたプラズマエッチング方法によると,バイアスへの供給電力をパルス変調することにより,被エッチング試料面へ供給されるのイオンのエネルギー,フラックスを時間的に制御し,等方性のラジカル・原子の供給,副反応生成物の排出が主体となる時間帯を別々にすることで,指向性のイオン主体の異方性エッチングが効果的に進行し,選択比および異方性を向上させることができる。すなわち,ラジカルあるいは副反応生成物の輸送過程を制御し,連続放電のCWプロセスやこれまでのプラズマエッチングプロセスでは実現できない高精度なエッチングを実現できる。」
ウ 「【0018】(中略)
第3の実施の形態
この発明の第3の実施の形態について,図1および図4を参照しながら説明する。
【0019】この実施の形態は,エッチング形状の異常,特にゲートエッチングにおけるノッチのおもな原因と考えられるチャージアップに起因した問題を解決しうるエッチング手法を提供するものである。この形状異常は,被エッチング試料面に供給されるイオンの電荷の局所的なアンバランスに起因するとされており,ここではその電荷のアンバランスがオーバーエッチ時の下地(Si)の露出によって固定されることに着目し,このオーバーエッチ時に高周波電力の供給をパルス変調することを特徴としている。
【0020】図1において,パルス発生器11により高周波電源5を変調する構成を用いる。すなわち,図4(a)に示すように,CW時にプラズマに供給する高周波電力(例えば,13.56MHz)に対し,(b)に示すような変調用パルスを重畳させることにより,(c)に示すようにメインエッチに続くオーバーエッチ時の高周波電力をON/OFF変調することとする。高周波電力ON時に,被エッチング試料表面に入射するイオン種は主に正イオンであるのに対し,高周波電力OFF時には,アフターグロー中での電子温度の低下によって負イオンが生成され主体となる。メインエッチ時には正イオンと電子が主な種であり,それらの指向性の違いによって電荷の局所的なアンバランスを引き起こすが,被エッチング試料表面の導電性によってバランスしていると考えられる。ところが,このままオーバーエッチ行程に入ると,下地(Si)の露出によって電気的に孤立するため電荷が中和されなくなり,局所的な電界によって,イオンが曲げられサイドエッチすなわち形状異常を引き起こすと考えられる。そこで,このオーバーエッチ時にパルス変調を行うことで,主な種に高周波電力OFF時の負イオンを導入し時間的にバランスさせることができる。
【0021】このように構成されたプラズマエッチング方法によると,被エッチング試料のオーバーエッチ時に,高周波電力の供給をパルス変調することで,主な種に高周波電力OFF時の負イオンを導入することで時間的にバランスさせることができる。すなわち,チャージバランスに起因した形状を制御し,連続放電のCWプロセスやこれまでのプラズマエッチングプロセスでは実現できない高精度なエッチングを実現できる。」
(2)引用技術的事項2
前記(1)ア及びイより,引用文献2には次の技術的事項(以下,「引用技術的事項2」という。)が記載されていると認められる。
「プラズマエッチング装置において,反応性ガスとしてCHF_(3) (50%)/C_(4) F_(8) (50%)の混合ガスを導入し,ウエハが置かれる下部電極にバイアス用高周波電力が供給され,プラズマに供給する高周波電力はCWであるのに対し,バイアス電力は変調用パルスによってON/OFF変調し,バイアス電力OFF時には,等方性のラジカル・原子が十分供給されて堆積保護膜が形成される一方,ON時にはイオンに負のバイアス電圧が発生し,イオン主体の異方性エッチングが進行すること。」

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用装置発明との対比
ア 引用装置発明の「半導体ウェハを処理するためのプラズマリアクタ」は,「そのチャンバ内には,その場の電極/ガス分配プレートが横たわり,チャンバを上部チャンバ領域及び下部チャンバ領域に分割し,その場の電極/ガス分配プレートは通路を有し,上部チャンバ領域から下部チャンバ領域へプラズマが通過できるようにし」てあるから,引用装置発明の「その場の電極/ガス分配プレート」,「上部チャンバ領域」及び「下部チャンバ領域」は,それぞれ本願発明1の「プレート」,「上側チャンバ」及び「下側チャンバ」に相当し,すると,引用装置発明の「半導体ウェハを処理するためのプラズマリアクタ」は,本願発明1の「上側チャンバを下側チャンバに流体連通させるプレートによって隔てられた前記上側チャンバおよび前記下側チャンバを備えたウエハ処理装置」に相当する。
イ 引用装置発明における「容量性結合のソース電力印加装置は天井内に配置できる電極であり」の「電極」は,本願発明1の「前記上側チャンバ内の上側電極」に相当し,引用装置発明において「ソース電力ジェネレータは容量性結合のソース電力印加装置へ電力を与え」及び「ソース電力コントローラは,ソース電力ジェネレータの出力電力レベル及び周波数を制御することができ,ソース電力ジェネレータのRF出力をパルス化することができ」ることから,パルス化しないこともできると解され,してみると,引用装置発明の「ソース電力コントローラ」はパルス化しないときは,本願発明1の「前記上側チャンバ内の上側電極に接続された第1の高周波(RF)電源の電圧および周波数を設定するよう動作可能な連続波(CW)コントローラ」に相当し,同「前記第1のRF電源は,前記CWコントローラに制御されつつ,前記上側電極に連続波RF電力を供給し」を満たす。
ウ 引用装置発明における「ウェハの下に横たわるワークピース支持体内の電極」は,本願発明1の「前記下側チャンバ内の下側電極」に相当し,引用装置発明において「ウェハの下に横たわるワークピース支持体内の電極に結合されたRFバイアス電源からワークピースへRFプラズマバイアス電力が容量性結合され」及び「バイアス電力コントローラはバイアス電力ジェネレータの出力電力レベルを制御」することから,引用装置発明の「バイアス電力コントローラ」は,下記相違点1を除いて,本願発明1の「パルスコントローラ」と,「前記下側チャンバ内の下側電極に接続された第2のRF電源によって生成されるRF信号の電圧を設定するよう動作可能なコントローラ」である点で共通する。
エ 引用装置発明の「システムコントローラ」は,「システム」全体を制御するものであること,したがって「上部チャンバ領域から下部チャンバ領域へプラズマが通過できるように」全体を制御することは自明であり,してみると本願発明1の「前記両チャンバの動作中に前記プレートを通して前記上側チャンバから前記下側チャンバに流れる種の流れを制御するために,前記CWコントローラおよび前記パルスコントローラのパラメータを設定するよう動作可能なシステムコントローラ」に相当する。
オ すると,本願発明1と引用装置発明とは,下記カの点で一致し,下記キの点で相違する。
カ 一致点
「上側チャンバを下側チャンバに流体連通させるプレートによって隔てられた前記上側チャンバおよび前記下側チャンバを備えたウエハ処理装置であって,
前記上側チャンバ内の上側電極に接続された第1の高周波(RF)電源の電圧および周波数を設定するよう動作可能な連続波(CW)コントローラと,
前記下側チャンバ内の下側電極に接続された第2のRF電源によって生成されるRF信号の電圧を設定するよう動作可能なコントローラと,
前記両チャンバの動作中に前記プレートを通して前記上側チャンバから前記下側チャンバに流れる種の流れを制御するために,前記CWコントローラおよび前記コントローラのパラメータを設定するよう動作可能なシステムコントローラと,
を備え,
前記第1のRF電源は,前記CWコントローラに制御されつつ,前記上側電極に連続波RF電力を供給する,ウエハ処理装置。」
キ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1の「コントローラ」は,「パルスコントローラ」であり「パルスRF信号の周波数,オン期間の持続時間,および,オフ期間の持続時間を設定するよう動作可能」であって,「前記第2のRF電源は,前記パルスコントローラに制御されつつ,前記下側電極にパルスRF電力を供給する」のに対し,引用装置発明の「コントローラ」は「バイアス電力コントローラ」であり,「パルスRF信号」の周波数,オン期間の持続時間,および,オフ期間の持続時間を設定するよう動作可能であることの特定がない点。
(イ)相違点2
本願発明1では「前記種の流れは,陰イオンエッチングと,前記オフ期間のアフターグロー中のウエハの表面における過剰な正荷電の中和と,前記オン期間中の前記下側チャンバにおけるプラズマの再点火とを支援」するのに対し,引用装置発明ではこの旨の特定がない点。
(2)相違点についての判断
ア 相違点1及び2について,まとめて判断する。
イ 引用装置発明は乖離に対して独立した制御(前記第4の1(1)ア【0002】)を実現するもので,具体的に,より単純なフッ化炭素ガスと非常に複雑な炭素に富んだ種について2組の種の乖離の制御を独立したものにするもの(同イ【0020】)であるから,反応性ガスとしてCHF_(3) (50%)/C_(4) F_(8) (50%)の混合ガスを導入してエッチングを行う引用技術的事項2に適用することが示唆されており,当業者はこの適用を動機づけられているといえる。
すると,引用技術的事項2においてバイアス電力はパルス変調するところ,引用装置発明を適用する際に,そのバイアス電力コントローラをパルスコントローラとすることでワークピース支持体内の電極にパルスRFバイアス電力を供給することは,当業者が容易になし得るといえる。
ウ しかし,バイアス電力をパルス変調しても,ソース電力が印加されている限りアフターグロー状態とはならず(したがって,プラズマの再点火もない。),陰イオンエッチングはできないし,そもそも,引用技術的事項2はバイアス電力OFF時にラジカル・原子による堆積保護膜を形成し,ON時にはイオンに負のバイアス電圧が発生し,すなわち正イオンによる異方性エッチングを行うものであり,陰イオンエッチングを行うものではない。引用文献1をみても,2つの領域の乖離は,ソース電力レベル及びチャンバ圧力,並びにガス流量を制御することによって制御される(前記第4の1(1)イ【0020】)ことが開示されているのみでバイアス電力により乖離を制御することは開示されていない(かえって,その場の電極/ガス分配プレートの内部の導電層にVHF電力を印加して下部チャンバ領域におけるプラズマイオン発生を促進することが記載されている。前記第4の1(1)イ【0010】)し,引用文献1に記載された引用装置発明と引用技術的事項2を組み合わせても,陰イオンエッチングを行うことは,当業者が容易に導けることではないから,相違点2に係る構成は当業者が容易に得られるものではない。
なお,引用文献2には引用技術的事項2とは別の実施形態として負イオンによるプラズマエッチングを行うものが記載されている(前記第4の2(1)ウ)が,前記実施形態はプラズマを生成するためのマルチスパイラルコイルに印加される高周波電力をパルス変調するものであるから,仮に前記実施形態を採用しても,相違点1に係る構成は得られない。
エ そして,本願発明1は,RFのオン期間中の下側プラズマの再点火が容易となり,下側チャンバ内のプラズマアフターグローの制御が可能となる(本願明細書段落0004-0006,0042-0044)という格別に有利な効果を有する。
(3)まとめ
したがって,本願発明1は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本願発明2ないし10について
本願発明2ないし10は,本願発明1を引用するものであるから,前記1と同様の理由により,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本願発明11について
(1)本願発明11と引用方法発明との対比
引用方法発明の「エッチングプロセス」は下記相違点3及び4を除いて本願発明11の「ウエハを処理するための方法」に相当するほか,前記1(1)アないしエと同様であるから,本願発明11と引用方法発明とは,下記アの点で一致し,下記イの点で相違する。
ア 一致点
「上側チャンバを下側チャンバに流体連通させるプレートによって隔てられた前記上側チャンバおよび前記下側チャンバを備えたウエハ処理装置でウエハを処理するための方法であって,
前記上側チャンバ内の上側電極に接続された第1のRF電源によって生成される連続高周波(RF)信号のための第1のパラメータを設定する工程であって,前記第1のパラメータは,第1の電圧および第1の周波数を含む,工程と,
前記下側チャンバ内の下側電極に接続された第2のRF電源によって生成されるRF信号のための第2のパラメータを設定する工程であって,前記第2のパラメータは,第2の電圧を含む,工程と,
前記連続RF信号を前記上側電極に印加する工程と,
前記RF信号を前記下側電極に印加する工程と,
を備え,
前記第1のパラメータおよび前記第2のパラメータを設定することにより,前記両チャンバの動作中に前記上側チャンバから前記下側チャンバへの種の流れを制御し,
前記第1のRF電源は,連続波(CW)コントローラに制御されつつ,前記上側電極に連続波RF電力を供給する,方法。」
イ 相違点
(ア)相違点3
本願発明11では,「第2のパラメータを設定する工程」は,「パルスRF信号のための」ものであり「前記第2のパラメータ」は,「第2の周波数,オン期間の持続時間,および,オフ期間の持続時間」を含み,「前記パルスRF信号」を前記下側電極に印加する工程を備え,「前記第2のRF電源は,パルスコントローラに制御されつつ,前記下側電極にパルスRF電力を供給する」のに対し,引用方法発明では「ウェハの下に横たわるワークピース支持体内の電極に結合されたRFバイアス電源からワークピースへRFプラズマバイアス電力が容量性結合」され,「バイアス電力コントローラ」が,「第2の周波数,オン期間の持続時間,および,オフ期間の持続時間」を含むパラメータを設定することの特定がない点。
(イ)相違点4
本願発明11では「前記種の流れは,陰イオンエッチングと,前記オフ期間のアフターグロー中のウエハの表面における過剰な正荷電の中和と,前記オン期間中の前記下側チャンバにおけるプラズマの再点火とを支援」するのに対し,引用方法発明ではこの旨の特定がない点。
(2)相違点についての判断
相違点3及び4は,それぞれ相違点1及び2に対応するものであるから,前記1(2)と同様である。
(3)まとめ
したがって,本願発明11は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本願発明12ないし17について
本願発明12ないし17は,本願発明11を引用するものであるから,前記3と同様の理由により,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 本願発明18について
(1)本願発明18と引用装置発明との対比
引用装置発明の「低周波数RF電力ジェネレータ」及び「別のRF電力ジェネレータ」は,それぞれ本願発明18の「第2のRF電源」及び「第3のRF電源」に相当するほか,前記1(1)と同様であるから,本願発明18と引用装置発明とは,下記アの点で一致し,下記イの点で相違する。
ア 一致点
「上側チャンバを下側チャンバに流体連通させるプレートによって隔てられた前記上側チャンバおよび前記下側チャンバを備えたウエハ処理装置であって,
前記上側チャンバ内の上側電極に接続された第1の高周波(RF)電源のための第1のパラメータを設定するよう動作可能な連続波(CW)コントローラと,
前記下側チャンバ内の下側電極に接続された第2のRF電源によって生成される第2のRF信号のための第2のパラメータを設定すると共に,前記下側電極に接続された第3のRF電源によって生成される第3のパルスRF信号のための第3のパラメータを設定するよう動作可能なコントローラと,
前記両チャンバの動作中に前記プレートを通して前記上側チャンバから前記下側チャンバに流れる種の流れを制御するために,前記第1,第2,および,第3のパラメータを転送するよう動作可能なシステムコントローラと,
を備え,
前記第1のRF電源は,前記CWコントローラに制御されつつ,前記上側電極に連続波RF電力を供給する,ウエハ処理装置。」
イ 相違点
(ア)相違点5
本願発明18の「コントローラ」は,「パルスコントローラ」であり「第2のパルスRF信号のための第2のパラメータを設定すると共に」,「第3のパルスRF信号のための第3のパラメータを設定するよう動作可能」であって,「前記第2のRF電源は,前記パルスコントローラに制御されつつ,前記下側電極にパルスRF電力を供給する」のに対し,引用装置発明の「コントローラ」は「バイアス電力コントローラ」であり「パルスRF信号」のためのパラメータを設定するよう動作可能であることの特定がない点。
(イ)相違点6
本願発明18では「前記種の流れは,陰イオンエッチングと,オフ期間のアフターグロー中のウエハの表面における過剰な正荷電の中和と,オン期間中の前記下側チャンバにおけるプラズマの再点火とを支援」するのに対し,引用装置発明ではこの旨の特定がない点。
(2)相違点についての判断
相違点5及び6は,それぞれ相違点1及び2に対応するものであるから,前記1(2)と同様である。
(3)まとめ
したがって,本願発明18は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 本願発明19及び20について
本願発明19及び20は,本願発明18を引用するものであるから,前記5と同様の理由により,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 原査定について
前記第5のとおり,本願発明1ないし20は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。
よって,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。

第7 結言
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-07-02 
出願番号 特願2014-529751(P2014-529751)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 聡一郎  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 深沢 正志
小田 浩
発明の名称 デュアルチャンバ構成のパルスプラズマチャンバ  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ