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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1341644
審判番号 不服2017-18014  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-05 
確定日 2018-06-21 
事件の表示 特願2013-207556「プリンタ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月16日出願公開、特開2015- 71476〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件出願は,平成25年10月2日の出願であって,平成29年5月23日付けの拒絶理由の通知に対して同年7月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され,同年8月24日付けで拒絶の査定がなされた。
これに対し,平成29年12月5日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正がなされたものである。

2 平成29年12月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年12月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1) 補正の内容
平成29年12月5日付けの手続補正(以下「本願補正」という。)により,特許請求の範囲は以下のとおり補正された。(以下,本願補正により補正された請求項1に係る発明を「本願補正発明1」という。)
「【請求項1】
記録紙としてライナーレスラベルが使用可能であり,プリントヘッドと,プラテンローラとを有し,前記プリントヘッドと前記プラテンローラとの間に挟まれた記録紙に,前記プリントヘッドにより印字を行なうプリンタ装置において,
前記記録紙に対しプラテンローラが設けられている側に,記録紙ガイドが設けられており,
前記記録紙ガイドは,前記記録紙の搬送方向において,前記プリントヘッド及び前記プラテンローラの後段に設けられているガイドと,前記記録紙の搬送方向において,前記プリントヘッド及び前記プラテンローラの前段に設けられているガイドとを有し,
前記記録紙ガイドの表面には,複数の突起部が設けられており,
前記突起部の長手方向は,前記記録紙の搬送方向と略同じ方向であって,
前記突起部の形状は台形であることを特徴とするプリンタ装置。
【請求項2】
前記記録紙の搬送方向に対し垂直方向における前記突起部のピッチは,1mm以上,10mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ装置。
【請求項3】
前記記録紙の搬送方向に対し垂直方向における前記突起部の先端部分の幅は,0.1mm以上,5mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ装置。
【請求項4】
前記記録紙の搬送方向に対し垂直方向において,前記突起部のピッチに対する前記突起部の先端部分の幅の比率は,3以上,20以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプリンタ装置。」と補正された。(下線は審決で付した。以下同じ。)

請求項1に係る補正
補正前(平成29年7月27日付け手続補正による補正)の請求項1に係る発明を特定するための必要な事項である「記録紙」に関し,「ライナーレスラベルが使用可能」であることと,「記録紙ガイド」に関し,「記録紙の搬送方向において,プリントヘッド及びプラテンローラの後段に設けられているガイドと,記録紙の搬送方向において,プリントヘッド及びプラテンローラの前段に設けられているガイドとを有」することを限定するものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

したがって,請求項1に係る本願補正は,特許法第17条の2第5項第2号を目的とするものであって,特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とする本願補正発明1が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について,以下検討する。

(2) 引用文献に記載された事項
平成29年5月23日付け拒絶の理由に引用し,本願の出願日前である平成25年3月21日に頒布された特開2013-52605号公報(以下「引用文献1」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【0010】
サーマルプリンタ10は,サーマル用紙11の収納部13(第1の収納部),シール用紙12の収納部14(第2の収納部),及びこれらのサーマル用紙11及びシール用紙12の排出口15を有する筐体16と,サーマル用紙11を通過させる給紙路17(第1の給紙路)及びシール用紙12を通過させる給紙路18(第2の給紙路)を有する給紙部19と,給紙部19に形成されこれらの給紙路17,18の合流位置から用紙搬送方向下流側へサーマル用紙11又はシール用紙12を送り出す合流部20とを備えている。更にサーマルプリンタ10は,合流部20から排出口15へ用紙搬送方向にサーマル用紙11又はシール用紙12を搬送し及びその逆方向の搬送を行う搬送機構21と,搬送機構21が搬送するサーマル用紙11に印字を行う印字部22と,シール用紙12に印字を行う印字部23と,合流部20及び印字部23間に設けられサーマル用紙11及びシール用紙12間で共通の用紙搬送路24とを備えている。この用紙搬送路24及び給紙部19内の給紙路18には,テフロン(登録商標)コーティング(PTFE[ポリテトラフルオロエチレン]コーティング)によって粘着剤の粘着量を低減させる粘着量低減処理が施されている。」

イ 「【0013】
図5は第2の給紙路18の分解斜視図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。シール用紙12用の給紙路18は,互いに平行な一対の上板18a,18aと,これらの上板18aの下方に対向する下板18bと,この下板18bの上面上に施されたPTFEコーティング層27とを有する。一対の上板18a,18aは上側ペーパガイドである。下板18bは下側ペーパガイドである。2枚の上板18a及び1枚の下板18bは折り曲げ加工された板金であり,用紙傾斜面を形成している。上板18a,下板18bには屈曲形成された合成樹脂を用いてもよい。PTFEコーティング層27は,PTFE材を板金に付着させてから板金ごと焼成し,あるいはPTFEフイルムやPTFEシートを板金に貼ること等によって生成される。このPTFEコーティング層27を形成しておく処理が粘着量低減処理である。給紙路18はこのPTFEコーティング層27の上面と,2枚の上板18aの各下面との間の空隙をシール用紙12に通過させる。」

ウ 「【0019】
印字部23は,シール用紙12の感熱層に接するよう上方に向いて配置された第2のサーマルヘッド50と,このサーマルヘッド50にシール用紙12を挟んで対向するプラテンローラ51と,サーマルヘッド50をこのプラテンローラ51に向けて押圧する付勢手段52と,付勢手段52の一端に固定された台座53とを備えている。サーマルヘッド50は,それぞれ主走査方向に配列された複数の発熱素子を有する。サーマルヘッド50は,印刷に必要な情報に応じてこれらの発熱素子から選択的に発熱素子を加熱してシール用紙12に印字を行う。プラテンローラ51は,ギア54等を介して他のモータによって回転駆動される。プラテンローラ51は搬送機構21の要素としても機能する。印字部22,23はヒートシンク55を設けてもよい。
【0020】
用紙搬送路24は,上段用紙搬送路34,中段用紙搬送路56,下段用紙搬送路57及び終段用紙搬送路66を有する。上段用紙搬送路34は,上板58,59及び下板60から成る。この下板60の上面がPTFEコーティングされている。中段用紙搬送路56は上板61,下板62から成り,この下板62の上面がPTFEコーティングされている。下段用紙搬送路57は上板63,下板64から成り,この下板64の上面がPTFEコーティングされている。つまり粘着量低減処理は用紙搬送路24の搬送面のうちの少なくともシール用紙12の通過側に施されている。
【0021】
また,給紙路17,18はデュアルフィーダユニット80と一体化されており筐体16に対して可動である。ギア47,48の各軸部,プラテンローラ44,上段用紙搬送路34の下板60,印字部23のサーマルヘッド50よりも下方の部材は筐体16内に保持され固定的である。ギア54,プラテンローラ51,印字部22のサーマルヘッド43よりも上方の部材,上段用紙搬送路34の上板58,59,中段用紙搬送路56,下段用紙搬送路57及び終段用紙搬送路66は筐体16に対して可動である。これらのギア54,プラテンローラ51,サーマルヘッド43よりも上方の印字部22,上板58,59,中段用紙搬送路56,下段用紙搬送路57及び終段用紙搬送路66はフレーム76に一体化され,シール用紙印字ユニット81を構成している。シール用紙印字ユニット81はシャフト32の軸芯を回動支点として,このシール用紙印字ユニット81が筐体16に装着される位置と,筐体16から例えば45度の傾斜角をもって上方に引き起こされる位置とを取るようになっている。
【0022】
サーマルプリンタ10(図2,図3)は更に,排出口15の排出側に設けられたカッタ65と,このカッタ65よりも搬送方向下流側に設けられた終段用紙搬送路66と,この終段用紙搬送路66に連続しカットされたサーマル用紙11又はシール用紙12を発行する橇状のトランスポート部67と,用紙搬送制御を行うコントローラ82とを備えている。カッタ65は終段用紙搬送路66とともにフレーム76内に設けられている。終段用紙搬送路66は上板66a,下板66bから成り,この下板66bの上面がPTFEコーティングされている。」

エ 「【0041】
(第2の変形例)
上記実施形態及び第1の変形例では,給紙路17,18,用紙搬送路24,及びプレート68の各搬送面にコーティング層27によりコーティングしていたが,これらの搬送面のシール用紙12と接する部位に表面仕上げ処理を施しても良い。
【0042】
図11(a)はシボパターンの一例を示す図である。実施の形態に係るサーマルプリンタは,例えば梨(ナシ)地模様のシボパターン84により給紙面,搬送面をシボ処理してもよい。このシボ処理によって搬送面,給紙路面と,シール用紙12の粘着面との間の接触抵抗が低減される。シボ加工は用紙搬送路24の搬送路幅方向の両端部に設けられたガイド壁面及び給紙路18の幅方向の両端部に設けられたガイド壁面に形成されてもよい。ガイド壁面はシート用紙12からはみ出た粘着剤による粘着量を低減させる。
【0043】
図11(b)はリブのパターンの一例を示す図である。実施の形態に係るサーマルプリンタは,リブ凸条を縦長に細くし,それ以外を平坦にしたリブパターン85を搬送面,給紙路面に形成してもよい。シボパターンやリブパターンは種々変更可能である。」

オ 「【0047】
また,実施の形態に係るサーマルプリンタは,例えば剥離紙無しのライナレスラベルのように,裏面(原文では「両面」と記載されているが,ライナレスラベルの技術常識を踏まえて当審で上記のように認定した。)に粘着剤が付着し粘着領域が露出しているシール用紙を使うこともできる。この場合,給紙路18の上板18aの下面にも,PTFEコーティング,シボ加工あるいはリブ付きなどの粘着量低減処理を施すようにする。ライナレスラベルの薄厚の用紙側面からはみ出した粘着剤によりラベルが張り付かないように搬送路方向両側のガイド壁面に上記粘着量低減処理を施しても良い。」

カ 【図4】より,給紙路18,上段用紙搬送路34,及び中段用紙搬送路56は,記録紙の搬送方向において,第2のサーマルヘッド50及びプラテンローラ51の前段に設けられ,下段用紙搬送路57及び終段用紙搬送路66は,記録紙の搬送方向において,第2のサーマルヘッド50及びプラテンローラ51の後段に設けられていることが看て取れる。

キ 【図11】(b)から,「リブ凸条」は,縦長に細いものであって,複数設けられていることが看て取れる。
また,【図11】(b)から,用紙搬送の技術常識,及びリブ凸条が粘着量低減処理であることを踏まえると、「リブ凸条」の長手方向は,シール用紙12の搬送方向と略同じ方向であることが看て取れる。

引用文献1の上記記載事項を含め,引用文献1の全記載を総合すると,引用文献1には以下の発明(以下,「引用文献1発明」という。)が記載されていると認められる。
「サーマル用紙11の収納部13,シール用紙12の収納部14,及びこれらのサーマル用紙11及びシール用紙12の排出口15を有する筐体16と,サーマル用紙11を通過させる給紙路17及びシール用紙12を通過させる給紙路18を有する給紙部19と,給紙部19に形成されこれらの給紙路17,18の合流位置から用紙搬送方向下流側へサーマル用紙11又はシール用紙12を送り出す合流部20とを備え,
合流部20から排出口15へ用紙搬送方向にサーマル用紙11又はシール用紙12を搬送し及びその逆方向の搬送を行う搬送機構21と,搬送機構21が搬送するサーマル用紙11に印字を行う印字部22と,シール用紙12に印字を行う印字部23と,合流部20及び印字部23間に設けられサーマル用紙11及びシール用紙12間で共通の用紙搬送路24とを備え,
前記印字部23は,シール用紙12の感熱層に接するよう上方に向いて配置された第2のサーマルヘッド50と,このサーマルヘッド50にシール用紙12を挟んで対向するプラテンローラ51と,サーマルヘッド50をこのプラテンローラ51に向けて押圧する付勢手段52とを備え,
前記給紙路18は,互いに平行な一対の上板18a,18aと,これらの上板18aの下方に対向する下板18bと,この下板18bの上面上に施されたPTFEコーティング層27とを有し,
前記用紙搬送路24は,上段用紙搬送路34,中段用紙搬送路56,下段用紙搬送路57及び終段用紙搬送路66を有し,給紙路18,上段用紙搬送路34,及び中段用紙搬送路56は,記録紙の搬送方向において,第2のサーマルヘッド50及びプラテンローラ51の前段に設けられ,下段用紙搬送路57及び終段用紙搬送路66は記録紙の搬送方向において,第2のサーマルヘッド50及びプラテンローラ51の後段に設けられ,
上段用紙搬送路34は,上板58,59及び上面がPTFEコーティングされている下板60から成るものであって,中段用紙搬送路56は上板61,上面がPTFEコーティングされている下板62から成るものであって,下段用紙搬送路57は上板63の上面がPTFEコーティングされている下板64から成り,終段用紙搬送路66は上板66a,上面がPTFEコーティングされている下板66bから成り,この粘着量低減処理は用紙搬送路24の搬送面のうちの少なくともシール用紙12の通過側に施され,
コーティング層27によるコーティングは,これらの搬送面のシール用紙12と接する部位に表面仕上げ処理を施しても良く,
また,サーマルプリンタは,例えば剥離紙無しのライナレスラベルのように,裏面に粘着剤が付着し粘着領域が露出しているシール用紙を使うこともでき,
該ライナレスラベルを用いた場合,給紙路18の上板18aの下面にも,PTFEコーティング,シボ加工あるいはリブ付きなどの粘着量低減処理を施すようにし,リブ凸条の場合,リブ凸条は複数設けられ,その長手方向は前記記録紙の搬送方向と略同じ方向であって,リブ凸条を縦長に細くし,それ以外を平坦にした,リブパターン85を搬送面,給紙路面に形成してもよいサーマルプリンタ。」

(3) 対比
本願補正発明1と引用文献1発明とを対比する。
後者の「シール用紙12」は,前者の「記録紙」に相当する。
以下同様に,「ライナレスラベル」は,「ライナーレスラベル」に,
「サーマルヘッド50」は,「プリントヘッド」に,
「プラテンローラ51」は,「プラテンローラ」に,
「サーマルプリンタ」は,「プリンタ装置」それぞれ相当する。
後者の「上段用紙搬送路34,中段用紙搬送路56,下段用紙搬送路57及び終段用紙搬送路66」は,シール用紙12の用紙搬送路24を構成し,ガイド機能を有していることは自明であり,後者の「上段用紙搬送路34,中段用紙搬送路56,下段用紙搬送路57及び終段用紙搬送路66」の,それぞれ対応する「上板58,上板61,上板63,上板66a」は,前者の「プラテンローラが設けられている側」に設けられた「記録紙ガイド」に相当する。
後者の「給紙路18の上板18a,上段用紙搬送路34の上板58,及び中段用紙搬送路56の上板61」は,前者の「記録紙の搬送方向において,プリントヘッド及びプラテンローラの前段に設けられているガイド」に相当する。
後者の「下段用紙搬送路57の上板63,終段用紙搬送路66の上板66a」は,前者の「記録紙の搬送方向において,プリントヘッド及びプラテンローラの後段に設けられているガイド」に相当する。
後者において,ライナレスラベルを用いた場合,露出した粘着領域側となる,給紙路18の上板18aの下面にもリブ付きなどの粘着量低減処理を施すものであって,該粘着量低減処理であるリブパターンを搬送面,給紙路面に形成してもよいことが記載されている。
そして、「搬送面」とは「上段用紙搬送路34,中段用紙搬送路56,下段用紙搬送路57及び終段用紙搬送路66」から構成される用紙搬送路24のシール用紙を搬送する面のことであり、「給紙路面」とは給紙路18のシール用紙を搬送する面のことである。
とすれば、ライナレスラベルを用いた場合、上板18aの下面と同様に,露出した粘着領域側となる,「上板58,上板61,上板63,上板66a」の下面にも,リブパターンによる粘着量低減処理を施してもよいことは自明であるから、後者は、前者の記録紙ガイドの表面に設けられた「複数の突起部」に相当する構成を有していることは自明である。
以上のことから,両者は,
〈一致点〉
「記録紙としてライナーレスラベルが使用可能であり,プリントヘッドと,プラテンローラとを有し,前記プリントヘッドと前記プラテンローラとの間に挟まれた記録紙に,前記プリントヘッドにより印字を行なうプリンタ装置において,
前記記録紙に対しプラテンローラが設けられている側に,記録紙ガイドが設けられており,
前記記録紙ガイドは,前記記録紙の搬送方向において,前記プリントヘッド及び前記プラテンローラの後段に設けられているガイドと,前記記録紙の搬送方向において,前記プリントヘッド及び前記プラテンローラの前段に設けられているガイドとを有し,
前記記録紙ガイドの表面には,複数の突起部が設けられており,
前記突起部の長手方向は,前記記録紙の搬送方向と略同じ方向であるプリンタ装置。」
である点で一致し,以下の点で相違している。
〈相違点〉
相違点1
本願補正発明1において,「突起部の形状は台形」であるが,本願補正発明1の「突起部」に相当する構成が備えられているといえるが,引用文献1発明において,「リブ凸条」の形状は不明である点。

(4) 判断
相違点1について
記録紙ガイドの表面に設けられ,長手方向が記録紙の搬送方向と略同じ方向となる複数の突起部の形状は台形とすることは,プリンタ装置の技術分野において,周知技術である。
そして,本願補正発明1において,「台形」としたことによる格別の作用効果は,何ら認めることができないし,引用文献1発明の「リブ凸条」の形状を,該周知技術を適用して「台形」とし,相違点2に係る本願補正発明1の発明特定事項とすることに何ら技術的困難性はない。
したがって,相違点1に係る本願補正発明1の発明特定事項は,引用文献1発明と周知技術から,当業者が容易に想到し得たものである。
なお,周知技術について必要であれば以下の文献を参照されたい。
引用文献2 特開2004-177604号公報(段落【0026】,【図2】)
引用文献3 実用新案登録第3073054号公報(段落【0011】,【図5】)
引用文献4 特開平1-294162号公報(第12図)

以上のように,本願補正発明1は,引用文献1発明と周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって,本願補正発明1は,平成29年12月5日付けの手続補正による補正が,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても,特許法第29条第2項の規定により,その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5) 本願補正についてのまとめ
したがって,本願補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
(1) 本願発明及び引用文献1に記載された発明
平成29年12月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,請求項に係る発明は,平成29年7月27日付け手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。
そして,その請求項1により特定される発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
プリントヘッドと,プラテンローラとを有し,前記プリントヘッドと前記プラテンローラとの間に挟まれた記録紙に,前記プリントヘッドにより印字を行なうプリンタ装置において,
前記記録紙に対しプラテンローラが設けられている側に,記録紙ガイドが設けられており,
前記記録紙ガイドの表面には,複数の突起部が設けられており,
前記突起部の長手方向は,前記記録紙の搬送方向と略同じ方向であって,
前記突起部の形状は台形であることを特徴とするプリンタ装置。」

(2) 対比・判断
本願発明は,前記2.で検討した本願補正発明1から「記録紙」に関し,「ライナーレスラベルが使用可能」であることと,「記録紙ガイド」に関し,「記録紙の搬送方向において,プリントヘッド及びプラテンローラの後段に設けられているガイドと,記録紙の搬送方向において,プリントヘッド及びプラテンローラの前段に設けられているガイドとを有」するという発明特定事項を除いたものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が,前記2.(4)に記載したとおり,引用文献1発明,引用文献1に記載された技術事項,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) むすび
以上のとおり,本願発明は,引用文献1発明,引用文献1に記載された技術事項,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-12 
結審通知日 2018-04-17 
審決日 2018-05-07 
出願番号 特願2013-207556(P2013-207556)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀之  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
藤本 義仁
発明の名称 プリンタ装置  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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