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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J |
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管理番号 | 1341699 |
審判番号 | 不服2014-25988 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-12-19 |
確定日 | 2018-06-20 |
事件の表示 | 特願2011-501981号「全負荷範囲にわたって効率的に動作する電力変換システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月1日国際公開、WO2009/120695、平成23年7月28日国内公表、特表2011-522503号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2009年3月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年3月25日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年8月18日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成26年12月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けの手続補正書が提出され、当審において平成28年10月11日付けで平成26年12月19日付けの手続補正書の補正の却下の決定がされるとともに拒絶理由が通知がされ、平成29年4月18日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年4月28日付けで最後の拒絶理由が通知がされ、平成29年8月9日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 平成29年8月9日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成29年8月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.新規事項に関して (1)請求人は、本件補正で補正前の 「【請求項1】 少なくとも1つの負荷に電力を供給するために入力供給電圧を受ける電力変換システムであって、 負荷状態において効率閾値で動作し、前記電力変換器の前記効率が前記効率閾値未満であるとき、前記電力変換器は連続的に第1の時間にはオンされ且つ第2の時間にはオフされるパルスモードで動作する電力変換器と、 前記電力変換器から供給された電力を受けるために前記電力変換器と接続された電力蓄積システムと、を備え、 前記第1の時間において、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記効率閾値で動作し、 前記第2の時間において、前記電力変換器がオフされたときに、前記電力蓄積システムは、前記電力変換器を補助として動作して電力を供給し、 前記電力変換器は、連続電力供給によって前記効率閾値で前記負荷に電力を供給するとき、連続モードで動作し、 前記電力変換器の前記連続モード及び前記パルスモードの間の境界負荷電力は、効率閾値レベルに設定され、 前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される、電力変換システム。」を、 「【請求項1】 少なくとも1つの負荷に電力を供給するために入力供給電圧を受ける電力変換システムであって、 電力変換器と、 前記電力変換器と接続された電力蓄積システムと、を備え、 前記電力変換器は、前記電力変換器の出力電力に応じて変動する効率で動作し、前記少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する前記電力変換器の前記効率が所定の閾値以上である場合、前記電力変換器は、前記電力変換器が前記少なくとも1つの負荷に1つの電力を供給する連続モードで動作し、前記少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する前記電力変換器の前記効率が前記所定の閾値未満である場合、前記電力変換器は、前記電力変換器が交互に第1の時間区間でオンされ、第2の時間区間でオフされるパルスモードで動作し、 前記電力蓄積システムは、前記パルスモードの動作の間、前記電力変換器から供給される電力を受け、 前記第1の時間区間において、前記電力変換器は、前記電力変換器の前記効率が所定の最大値となる前記電力変換器の出力電力を前記少なくとも1つの負荷と前記電力蓄積システムに供給するように動作し、前記第2の時間区間において、前記電力変換器はオフされ、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するために前記電力変換器の補助として動作し、 前記第1の時間区間と前記第2の時間区間との合計に対する前記第1の時間区間の割合は、前記電力変換器の前記効率が前記所定の最大値となる前記電力変換器の出力電力により割られた前記少なくとも1つの負荷の電力値である、電力変換システム。」と補正している。(下線は、当審で付与。以下同様。) すなわち、(a)電力変換器について、補正前の「負荷状態において効率閾値で動作し、前記電力変換器の前記効率が前記効率閾値未満であるとき、前記電力変換器は連続的に第1の時間にはオンされ且つ第2の時間にはオフされるパルスモードで動作する電力変換器」「前記電力変換器は、連続電力供給によって前記効率閾値で前記負荷に電力を供給するとき、連続モードで動作し、 前記電力変換器の前記連続モード及び前記パルスモードの間の境界負荷電力は、効率閾値レベルに設定され」を、 「電力変換器」「前記電力変換器は、前記電力変換器の出力電力に応じて変動する効率で動作し、前記少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する前記電力変換器の前記効率が所定の閾値以上である場合、前記電力変換器は、前記電力変換器が前記少なくとも1つの負荷に1つの電力を供給する連続モードで動作し、前記少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する前記電力変換器の前記効率が前記所定の閾値未満である場合、前記電力変換器は、前記電力変換器が交互に第1の時間区間でオンされ、第2の時間区間でオフされるパルスモードで動作し」に、 (b)電力蓄積システムについて、補正前の「前記電力変換器から供給された電力を受けるために前記電力変換器と接続された電力蓄積システム」を、 「前記電力変換器と接続された電力蓄積システム」「前記電力蓄積システムは、前記パルスモードの動作の間、前記電力変換器から供給される電力を受け」に、 (c)第1の時間の動作について、補正前の「前記第1の時間において、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記効率閾値で動作し」を、 「前記第1の時間区間において、前記電力変換器は、前記電力変換器の前記効率が所定の最大値となる前記電力変換器の出力電力を前記少なくとも1つの負荷と前記電力蓄積システムに供給するように動作し」に、 (d)第2の時間の動作について、補正前の「前記第2の時間において、前記電力変換器がオフされたときに、前記電力蓄積システムは、前記電力変換器を補助として動作して電力を供給し」を、 「前記第2の時間区間において、前記電力変換器はオフされ、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するために前記電力変換器の補助として動作し」に、 (e)第1の時間と前記第2の時間との割合について、補正前の「前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」を、 「前記第1の時間区間と前記第2の時間区間との合計に対する前記第1の時間区間の割合は、前記電力変換器の前記効率が前記所定の最大値となる前記電力変換器の出力電力により割られた前記少なくとも1つの負荷の電力値である」にする補正を行っている。 (2)上記(a)の補正によると電力変換器は、「少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する前記電力変換器の前記効率が所定の閾値以上である場合、前記電力変換器は、前記電力変換器が前記少なくとも1つの負荷に1つの電力を供給する連続モードで動作し、前記少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する前記電力変換器の前記効率が前記所定の閾値未満である場合、前記電力変換器は、前記電力変換器が交互に第1の時間区間でオンされ、第2の時間区間でオフされるパルスモードで動作」するので、負荷の数にかかわらず、少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する電力変換器の効率が所定の閾値以上である場合に連続モードで動作し、所定の閾値未満である場合はパルスモードで動作する(例えば、電力変換器が3台の負荷A(1w)、B(2w)、C(3w)に電力を供給する場合であっても、負荷Aの電力1wと等しい電力を供給する電力変換器の効率が所定の閾値90%以上である場合に連続モードで動作し、閾値90%未満である場合はパルスモードで動作する)こととなる。 (3)国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、「翻訳文等」という。)には、連続モード及びパルスモードで動作する条件について以下の記載が存在する。 ・【請求項2】「前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、第1の時間オンされ、第2の時間オフされ、 前記第1の時間において、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記所望の効率で動作し、 前記第2の時間において、前記少なくとも1つの電力変換器がオフされたときに、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。」 ・【請求項23】「前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率未満の低効率で動作したとき、前記少なくとも1つの電力変換器から前記少なくとも1つの負荷に対する電力の供給は、前記少なくとも1つの電力変換器が、第1の時間オンされ、第2の時間オフされるように部分的に中断され、 前記第1の時間において、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記所望の効率で動作し、 前記第2の時間において、前記少なくとも1つの電力変換器がオフされたときに、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給することを特徴とする請求項22に記載の電力変換システム。」 ・【請求項43】「前記少なくとも1つの電力変換器は、前記高負荷状態にあるときに所望の効率で電力を途切れなく供給し、前記低負荷状態にあるときに間欠的な電力を供給し、 前記間欠的な電力は、周期的に前記少なくとも1つの電力変換器を前記第1の時間オンし、前記第2の時間オフするように供給されることを特徴とする請求項42に記載の電力変換システム。」 ・【0016】「本発明のより詳細な機能によれば、電力変換システムは、1以上の負荷に電力を供給する。電力変換システムは、1以上の電力変換器を備えている。各電力変換器は、負荷がかけられた状態で所望の効率で動作する。電力変換器の効率が所望の効率または効率閾値未満であるとき、電力変換器は、連続して、第1の時間オンされ、第2の時間オフされる。」 ・【0017】「本発明のより詳細な機能によれば、電力変換システムは、1以上の負荷に電力を供給する。電力変換システムは、所望の効率で動作しているときであれば、負荷に電力を途切れなく供給する少なくとも1つの電力変換器を備えている。少なくとも1つの電力変換器から負荷に対する電力の供給は、電力変換器が所望の効率未満の低効率で動作したとき、少なくとも1つの電力変換器が、第1の時間オンされ、第2の時間オフされるように、部分的に中断される。」 ・【0018】「本発明のより詳細な機能によれば、電力変換システムは、高負荷状態から低負荷状態までの間の負荷状態で電力を供給する。少なくとも1つの電力変換器は、高負荷状態にあるときに所望の効率で電力を途切れなく供給し、低負荷状態にあるときに部分的に中断された電力を供給する。」 ・【0042】「本発明の一形態によれば、電力変換システムは、1以上の負荷に電力を供給する。電力変換システムは、1以上の電力変換器を備えている。各電力変換器は、負荷がかけられた状態で所望の効率で動作する。電力変換器の効率が所望の効率または効率閾値未満であるとき、電力変換器は、連続して、第1の時間オンされ、第2の時間オフされる。」 ・【0051】「軽負荷において、電力変換器は、連続または周期的に第1の時間オンされ、第2の時間オフされ、スイッチング損失を低減させて軽負荷効率を向上させる。」 ・【0052】「本発明の電力変換器は、連続電力供給で所望の効率で負荷に電力を供給する連続モードで動作する。効率が効率閾値未満になると、電力変換器は、上述したように連続してオンオフされるパルスモードで動作する。ここで、電力変換器の動作の連続モードとパルスモードとの間の境界負荷電力P_(BOUND)は、適切な効率閾値のレベルで設定される。・(中略)・電力変換器によって供給される瞬時電力Pを最大効率点となる所望の効率で選択することができるように、電力変換器の制御は、設計されている。図4に示すように、出力電力に効率が依存する典型的な電力変換器は、中間域の電力レベルでピークとなる。」 (4)しかし、翻訳文等には「少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、第1の時間オンされ、第2の時間オフされ」ること(【請求項2】)や、「各電力変換器は、負荷がかけられた状態で所望の効率で動作する。電力変換器の効率が所望の効率または効率閾値未満であるとき、電力変換器は、連続して、第1の時間オンされ、第2の時間オフされる。」(【0042】)や、「連続電力供給で所望の効率で負荷に電力を供給する連続モードで動作する」電力変換器の「効率が効率閾値未満になると、電力変換器は、上述したように連続してオンオフされるパルスモードで動作する。」(【0052】)ことの記載はあっても、第1の時間オンされ、第2の時間オフされるのは、負荷(上記(2)の例示では、負荷A(1w)+B(2w)+C(3w)の合計(6w))がかけられた状態で所望の効率で動作する電力変換器の効率が所望の効率未満であるときパルスモードで動作することの記載であって、「少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する前記電力変換器の前記効率」(上記(2)の例示では、負荷Aの電力と等しい電力を供給する電力変換器の効率)が所定の閾値以上である場合連続モードで動作し、所定の閾値未満である場合パルスモードで動作することを示唆する記載ではなく、しかも、上記補正(a)は翻訳文等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものと認めることができない。 (5)請求人は、平成29年8月9日付けで意見書「1.(2)(a)」で、 「『前記少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する前記電力変換器の前記効率が所定の閾値以上である場合、前記電力変換器は、前記電力変換器が前記少なくとも1つの負荷に1つの電力を供給する連続モードで動作』することは、図2に示されております。また、段落〔0050〕には、『全ての負荷電力が途切れずに電力変換器の出力から連続して供給される』ことが記載されております。また、段落〔0052〕には、『電力変換器の動作の連続モードとパルスモードとの間の境界負荷電力P_(BOUND)は、適切な効率閾値のレベルで設定される』ことが記載されており、境界負荷電力P_(BOUND)における効率が所定の閾値となり、電力変換器の効率が所定の閾値以上の場合に連続モードになることが示されています。 『前記少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する前記電力変換器の前記効率が前記所定の閾値未満である場合、前記電力変換器は、前記電力変換器が交互に第1の時間区間でオンされ、第2の時間区間でオフされるパルスモードで動作』することは、図3に示されております。また、上記のように、段落〔0052〕には、電力変換器の効率が所定の閾値未満の場合にパルスモードになることが示されています。」旨主張している。 しかし、図2は「図1に示す本発明の実施の形態の高負荷状態における電力潮流タイミグ図」、図3は「図1に示す本発明の実施の形態の低負荷状態における電力潮流タイミング図」であって、図1においては負荷は1台だけであり、図2、3の何れにも「少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する前記電力変換器の前記効率が所定の閾値以上である場合」、「少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する前記電力変換器の前記効率が前記所定の閾値未満である場合」であることを示唆する記載は認められない。 また、【0052】では、「電力変換器によって供給される瞬時電力Pを最大効率点となる所望の効率で選択することができるように、電力変換器の制御は、設計されている。図4に示すように、出力電力に効率が依存する典型的な電力変換器は、中間域の電力レベルでピークとなる。」と記載されており、図4に記載されている「境界負荷電力P_(BOUND)」も、電力変換器の出力電力の値(総量。上記(2)の例示では、3台の負荷A?C全体に電力を供給する電力変換器の出力電力の値)と解すべきものであって、「少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力」(1つの負荷の電力。上記(2)の例示では、負荷Aの電力と等しい電力1w)に対応する様なものではないので、当該請求人の主張は採用できない。 (6)したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定(同法第184条の12第2項参照)に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 2.補正の目的に関して (1)上記「1.(1)(a)」の補正前の「負荷状態において効率閾値で動作し、前記電力変換器の前記効率が前記効率閾値未満であるとき、前記電力変換器は連続的に第1の時間にはオンされ且つ第2の時間にはオフされるパルスモードで動作する電力変換器」「前記電力変換器は、連続電力供給によって前記効率閾値で前記負荷に電力を供給するとき、連続モードで動作し、」「前記電力変換器の前記連続モード及び前記パルスモードの間の境界負荷電力は、効率閾値レベルに設定され」を、 「前記電力変換器は、前記電力変換器の出力電力に応じて変動する効率で動作し、前記少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する前記電力変換器の前記効率が所定の閾値以上である場合、前記電力変換器は、前記電力変換器が前記少なくとも1つの負荷に1つの電力を供給する連続モードで動作し、前記少なくとも1つの負荷の電力と等しい電力を供給する前記電力変換器の前記効率が前記所定の閾値未満である場合、前記電力変換器は、前記電力変換器が交互に第1の時間区間でオンされ、第2の時間区間でオフされるパルスモードで動作し」とする補正は、 (a)電力変換器が「負荷状態」で「効率閾値」で動作するという条件を削除して、別の「前記電力変換器は、前記電力変換器の出力電力に応じて変動する効率で動作し」に変更した点、及び、 (b)電力変換器が「連続電力供給」時に「効率閾値」で動作するという条件を削除して、別の「前記電力変換器の前記効率が所定の閾値以上である場合、前記電力変換器は、前記電力変換器が前記少なくとも1つの負荷に1つの電力を供給する連続モードで動作し」に変更した点、 (c)連続モード及びパルスモードの間の境界負荷電力は「効率閾値レベル」に設定されていたものを、「電力変換器の前記効率が所定の閾値以上である場合・・連続モードで動作し、・・所定の閾値未満である場合・・パルスモードで動作」に変更して、連続モードとパルスモードの切り換えを「効率閾値レベル」から「所定の閾値」に変更した点 において、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものでない。 また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものとも認められない。 請求人は、平成29年8月9日付けで意見書「1.(2)(g)」で「これらの補正は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものです。」旨主張している。 しかし、上記補正は、(a)電力変換器が「負荷状態」で「効率閾値」で動作するという条件を削除して別のものに変更するものであって、補正前の「負荷状態において効率閾値で動作し」を明りょうにしたものではなく、(b)電力変換器が「連続電力供給」時に「効率閾値」で動作するという条件を削除して、別のものに変更するものであって、補正前の「連続電力供給によって前記効率閾値で前記負荷に電力を供給する」を明りょうにしたものではなく、(c)連続モードとパルスモードの切り換えを「効率閾値レベル」から別の「所定の閾値」に変更するものであって、補正前の「境界負荷電力は、効率閾値レベルに設定され」を明りょうにしたものではないので、当該請求人の主張は採用できない。 (2)上記「1.(1)(c)」の補正前の「前記第1の時間において、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記効率閾値で動作し」を、 「前記第1の時間区間において、前記電力変換器は、前記電力変換器の前記効率が所定の最大値となる前記電力変換器の出力電力を前記少なくとも1つの負荷と前記電力蓄積システムに供給するように動作し」とする補正は、第1の時間において、前記電力変換器は、「効率閾値で動作」するとしていた条件を削除して、別の「前記効率が所定の最大値となる前記電力変換器の出力電力を前記少なくとも1つの負荷と前記電力蓄積システムに供給するように動作」に変更した点において、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものでない。 また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものとも認められない。 請求人は、平成29年8月9日付けで意見書「1.(2)(g)」で「これらの補正は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものです。」旨主張している。 しかし、上記補正前の記載の「第1の時間において・・前記効率閾値で動作し」という条件を削除して別のものに変更するものであって、補正前の「第1の時間において・・前記効率閾値で動作し」を明りょうにしたものではないので、当該請求人の主張は採用できない。 (3)上記「1.(1)(e)」の補正前の「前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」を、 「前記第1の時間区間と前記第2の時間区間との合計に対する前記第1の時間区間の割合は、前記電力変換器の前記効率が前記所定の最大値となる前記電力変換器の出力電力により割られた前記少なくとも1つの負荷の電力値である」とする補正は、第1の時間と前記第2の時間との割合について補正前の「効率閾値で動作させるように制御される」としていた条件を削除して別の「前記電力変換器の前記効率が前記所定の最大値となる前記電力変換器の出力電力により割られた前記少なくとも1つの負荷の電力値」に変更した点において、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものでない。 また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものとも認められない。 請求人は、平成29年8月9日付けで意見書「1.(2)(g)」で「これらの補正は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものです。」旨主張している。 しかし、上記補正前の記載の「割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」という条件を削除して別のものに変更するものであって、補正前の「割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」事項を明りょうにしたものではないので、当該請求人の主張は採用できない。 (4)したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願の請求項1?19に係る発明 平成29年8月9日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?19に係る発明(以下「本願発明1」等という。)は、平成29年4月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 少なくとも1つの負荷に電力を供給するために入力供給電圧を受ける電力変換システムであって、 負荷状態において効率閾値で動作し、前記電力変換器の前記効率が前記効率閾値未満であるとき、前記電力変換器は連続的に第1の時間にはオンされ且つ第2の時間にはオフされるパルスモードで動作する電力変換器と、 前記電力変換器から供給された電力を受けるために前記電力変換器と接続された電力蓄積システムと、を備え、 前記第1の時間において、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記効率閾値で動作し、 前記第2の時間において、前記電力変換器がオフされたときに、前記電力蓄積システムは、前記電力変換器を補助として動作して電力を供給し、 前記電力変換器は、連続電力供給によって前記効率閾値で前記負荷に電力を供給するとき、連続モードで動作し、 前記電力変換器の前記連続モード及び前記パルスモードの間の境界負荷電力は、効率閾値レベルに設定され、 前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される、電力変換システム。 【請求項2】 前記少なくとも1つの電力変換器は、前記第1の時間に前記電力蓄積システムに電力を供給するための第1の出力と、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するための第2の出力と、を有することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項3】 前記少なくとも1つの電力変換器は、前記第1の時間に前記電力蓄積システムに電力を供給すると共に、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するための1つの出力を有することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項4】 前記電力蓄積システムは、前記第1の時間に前記少なくとも1つの電力変換器から供給された電力を受けると共に、前記第2の時間に前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するための1つのポートを有することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項5】 前記電力蓄積システムは、前記第1の時間に前記少なくとも1つの電力変換器から供給された電力を受けるための第1のポートと、前記第2の時間に前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するための第2のポートと、を有することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項6】 前記少なくとも1つの電力変換器は、電力段と、出力フィルタとを備え、 前記電力蓄積システムは、前記出力フィルタを介して前記少なくとも1つの負荷に電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項7】 前記少なくとも1つの電力変換器は、出力フィルタを介して前記電力蓄積システムに電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項8】 前記電力変換器、前記電力蓄積システムおよび前記負荷は、直列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項9】 前記電力変換器は、絶縁型、非絶縁型、単一ステージ、マルチステージ、AC/DC、DC/DC、DC/ACおよびAC/AC電力変換器の少なくとも1つを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項10】 前記DC/DC電力変換器は、2重スイッチフォワードDC/DC電力変換器、フルブリッジDC/DC電力変換器、ハーフブリッジDC/DC電力変換器、LLC共振DC/DC電力変換器、ハーフブリッジLLC共振DC/DC電力変換器、フォワードDC/DC電力変換器およびフライバックDC/DC電力変換器の少なくとも1つを備えたことを特徴とする請求項9に記載の電力変換システム。 【請求項11】 前記AC/DC電力変換器は、3段AC/DC変換器を備えたことを特徴とする請求項9に記載の電力変換システム。 【請求項12】 前記電力蓄積システムは、電池、燃料電池、キャパシタ、スーパーキャパシタ、蓄熱器およびフライホイールの少なくとも1つを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項13】 前記電力蓄積システムは、絶縁型、非絶縁型、単一ステージ、マルチステージ、AC/DC、DC/DC、DC/ACおよびAC/AC電力変換器の少なくとも1つを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項14】 前記電力蓄積システムは、一時的エネルギー蓄積器と、電力調節回路とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項15】 前記一時的エネルギー蓄積器および前記電力調節回路は、双方向昇降圧変換器、昇圧型変換器、降圧型変換器および降圧放電型変換器の少なくとも1つを備えたことを特徴とする請求項14に記載の電力変換システム。 【請求項16】 前記少なくとも1つの電力変換器および前記電力蓄積システムの動作を制御するために、前記少なくとも1つの電力変換器および前記電力蓄積システムに接続されたコントローラをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項17】 前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記所望の効率で動作し、同時に、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項18】 前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムおよび前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するために前記所望の効率で動作し、同時に、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。 【請求項19】 発光ダイオード用の電力変換システム、太陽電池用の電力変換システム、燃料電池用の電力変換システム、風カエネルギー用の電力変換システム、振動エネルギー用の電力変換システム、運動エネルギー用の電力変換システム、熱エネルギー用の電力変換システム、発電所、電力管理変換システム、建築用の電力変換システム、データセンター用の電力管理変換システム、UPS、車両用の電力変換システム、コンピュータまたはノートブック用の電力変換システム、通信機器または通信装置用の電力変換システム、家庭用電化製品用の電力変換システム、および、家庭用電気器具用の電力変換システムを含むことを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。」 2.平成29年4月28日付け拒絶理由 平成29年4月28日付け拒絶理由は、次のとおりである。 「1.平成29年4月18日付け手続補正書でした補正は、下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。 記 (1)請求人は、本件補正で補正前の 「【請求項1】 少なくとも1つの負荷に電力を供給するために入力供給電圧を受ける電力変換システムであって、 所望の効率で動作する少なくとも1つの電力変換器と、 前記少なくとも1つの電力変換器から供給された電力を受けて、蓄積するために前記少なくとも1つの電力変換器と接続された電力蓄積システムと、 前記電力変換器が前記入力供給電圧を受ける一方で、第1の時間には、前記電力変換器をオンし、第2の時間には、前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率未満の効率で動作したとき、前記電力変換器をオフするコントローラと、を備え、 前記第1の時間において、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムと前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するために前記所望の効率で動作し、 前記第2の時間において、前記少なくとも1つの電力変換器がオフされたときに、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給し、 前記第1の時間と前記第2の時間は、連続または周期的に切り替えられ、 前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記所望の効率で動作させるように制御される電力変換システム。」を、 「【請求項1】 少なくとも1つの負荷に電力を供給するために入力供給電圧を受ける電力変換システムであって、 負荷状態において効率閾値で動作し、前記電力変換器の前記効率が前記効率閾値未満であるとき、前記電力変換器は連続的に第1の時間にはオンされ且つ第2の時間にはオフされるパルスモードで動作する電力変換器と、 前記電力変換器から供給された電力を受けるために前記電力変換器と接続された電力蓄積システムと、を備え、 前記第1の時間において、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記効率閾値で動作し、 前記第2の時間において、前記電力変換器がオフされたときに、前記電力蓄積システムは、前記電力変換器を補助として動作して電力を供給し、 前記電力変換器は、連続電力供給によって前記効率閾値で前記負荷に電力を供給するとき、連続モードで動作し、 前記電力変換器の前記連続モード及び前記パルスモードの間の境界負荷電力は、効率閾値レベルに設定され、 前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される、電力変換システム。」に補正している。 すなわち、(a)電力変換器について補正前の「所望の効率で動作する少なくとも1つの電力変換器」を「負荷状態において効率閾値で動作し、前記電力変換器の前記効率が前記効率閾値未満であるとき、前記電力変換器は連続的に第1の時間にはオンされ且つ第2の時間にはオフされるパルスモードで動作する電力変換器」に、 (b)電力蓄積システムについて補正前の「電力変換器から供給された電力を受けて、蓄積するために前記少なくとも1つの電力変換器と接続された電力蓄積システム」、「第2の時間において・・電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給」を「電力変換器から供給された電力を受けるために前記電力変換器と接続された電力蓄積システム」、「第2の時間において・・電力蓄積システムは、前記電力変換器を補助として動作して電力を供給」に、 (c)電力変換システムの制御について補正前の「前記第1の時間において・・(中略)・・電力蓄積システムと前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するために前記所望の効率で動作し、・・(中略)・・前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記所望の効率で動作させるように制御される」を「前記第1の時間において・・(中略)・・電力蓄積システムに電力を供給するために前記効率閾値で動作し、・・(中略)・・前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」にする補正を行っている。 (2)上記補正は、(a)電力変換器の動作について補正前の「所望の効率で動作する」を「負荷状態において効率閾値で動作し」、「電力変換器の前記効率が前記効率閾値未満であるとき・・連続的に第1の時間にはオンされ且つ第2の時間にはオフされるパルスモードで動作する」、「連続電力供給によって前記効率閾値で前記負荷に電力を供給するとき、連続モードで動作し」に変更し、 (b)電力変換システムの制御の内容について補正前の「前記第1の時間において・・(中略)・・電力蓄積システムと前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するために前記所望の効率で動作し、・・(中略)・・前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記所望の効率で動作させる」ものであることを「前記第1の時間において・・(中略)・・電力蓄積システムに電力を供給するために前記効率閾値で動作し、・・(中略)・・前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させる」ものであると変更する補正を含むものである。(なお、下線は当審で付与。) (3)翻訳文等には、「効率閾値」に関して以下の記載が存在する。 ・【請求項2】「前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、第1の時間オンされ、第2の時間オフされ、 前記第1の時間において、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記所望の効率で動作し、 前記第2の時間において、前記少なくとも1つの電力変換器がオフされたときに、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。」 ・【請求項19】「前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記所望の効率で動作し、同時に、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。」 ・【請求項20】「前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムおよび前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するために前記所望の効率で動作し、同時に、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。」 ・【0016】「また、本発明のより詳細な機能によれば、電力変換システムは、1以上の負荷に電力を供給する。電力変換システムは、1以上の電力変換器を備えている。各電力変換器は、負荷がかけられた状態で所望の効率で動作する。電力変換器の効率が所望の効率または効率閾値未満であるとき、電力変換器は、連続して、第1の時間オンされ、第2の時間オフされる。第1の時間において、電力変換器は、電力蓄積システムに電力を供給するために所望の効率で動作する。第2の時間において、電力変換器がオフされたときに、電力蓄積システムは、負荷に電力を供給するように電力変換器を補助的に動作させる。」 ・【0042】「本発明の一形態によれば、電力変換システムは、1以上の負荷に電力を供給する。電力変換システムは、1以上の電力変換器を備えている。各電力変換器は、負荷がかけられた状態で所望の効率で動作する。電力変換器の効率が所望の効率または効率閾値未満であるとき、電力変換器は、連続して、第1の時間オンされ、第2の時間オフされる。第1の時間において、電力変換器は、電力蓄積システムに電力を供給するために所望の効率で動作する。好ましくは、電力変換器は、独立系統電力蓄積システムに電力を供給するために所望の効率で動作する。第2の時間において、電力変換器がオフされたときに、独立系統電力蓄積システムは、負荷に電力を供給するように電力変換器を補助的に動作させる。電力変換システムは、少なくとも1つの電力変換器および電力蓄積システムの動作を制御するために、少なくとも1つの電力変換器および電力蓄積システムに接続されたコントローラをさらに備えている。」 ・【0052】「このように、本発明の電力変換器は、連続電力供給で所望の効率で負荷に電力を供給する連続モードで動作する。効率が効率閾値未満になると、電力変換器は、上述したように連続してオンオフされるパルスモードで動作する。ここで、電力変換器の動作の連続モードとパルスモードとの間の境界負荷電力P_(BOUND)は、適切な効率閾値のレベルで設定される。なお、効率閾値のレベルは、任意のレベルに設定できる。しかしながら、性能を最適にするために、第1の時間すなわちオンになっている間、電力変換器によって供給される瞬時電力Pを最大効率点となる所望の効率で選択することができるように、電力変換器の制御は、設計されている。図4に示すように、出力電力に効率が依存する典型的な電力変換器は、中間域の電力レベルでピークとなる。P=P_(OPT)を選択、すなわち、常に最大効率η_(MAX)となる電力レベルの変換器の動作によって、P_(BOUND)(<P_(OPT))のレベル未満の軽負荷効率は、最大になる。この制御により、デューティサイクルDは、以下のように定義される。」 (4)上記記載によると「効率閾値」は、【0052】の「効率が効率閾値未満になると、電力変換器は、上述したように連続してオンオフされるパルスモードで動作する。」値であり、「ここで、電力変換器の動作の連続モードとパルスモードとの間の境界負荷電力P_(BOUND)は、適切な効率閾値のレベルで設定される。」とされ、さらに、請求人も平成29年4月18日付け意見書「3.(3)」で「『効率閾値』とは、図4に示す境界負荷電力P_(BOUND)に対応する電力変換器の効率ηを表します。」と主張しているので、請求項1の「効率閾値」は、具体的には図4に「供給電力に対する電力変換器の典型的な効率特性を示す。」ものとして図示された、3本の曲線のうち、η_(ES)ではないものの、境界負荷電力P_(BOUND)に対応する個所の効率ηということになる。 ところで、図4に電力変換器の効率ηを示すものとして図示された3本の曲線は、何れも軽負荷時(「第1の時間」の「電力変換器をオン」と、「第2の時間」の「電力変換器をオフ」が交互になされているP値の領域)のほとんどにおいて、「効率閾値」である境界負荷電力P_(BOUND)に対応する個所の効率ηと異なる値となっている。 そうすると、図4に電力変換器の効率ηを示すものとして記載された、電力変換器の効率ηは、いずれも、「第1の時間」の「電力変換器をオン」と、「第2の時間」の「電力変換器をオフ」が交互になされているP値の領域において、効率閾値となっていないので、それらは、上記(2)(b)の「電力変換器を前記効率閾値で動作させる」ように制御された電力変換器の効率ηを示すものではない、換言すると、補正により付加された上記(2)(b)の制御内容は、図4に図示された3つの電力変換器の動作の何れとも異なるものであって、少なくとも、翻訳文等において図4を用いて説明された制御内容とは異なるものであると言わざる得ない。 (5)さらに、翻訳文等に「第1の時間と第2の時間との割合は、電力変換器を効率閾値で動作させるように制御される」との記載は存在せず、また、上記(3)及びそれ以外の記載を参酌しても、第1の時間と第2の時間との割合を、電力変換器を効率閾値で動作させるように制御することを示唆する記載はなく、かつ、この構成は翻訳文等の記載から自明な事項でもない。 このことは、請求項1の「前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」場合、効率ηが図4の軽負荷時全域で「効率閾値」(すなわち、境界負荷電力P_(BOUND)に対応する効率η(η_(ES)ではないもの))の水平線で記載されるべきものであるのに対して、図4に図示されている電力変換器の効率ηが、軽負荷時において、「効率閾値」(すなわち、境界負荷電力P_(BOUND)に対応する効率η(η_(ES)ではないもの))となっていないことからも明らかである。別添図面参照。 さらに、効率ηを求めた【0053】の【数4】η=η_(MAX)/{D+(1-D/η_(CHR)・η_(DIS))}=η_(MAX)/{D+(1-D/η_(ES))}も、仮に、エネルギー蓄積および電力調整ブロックによる総電力処理の効率をη_(ES)を1としたときにηがη_(MAX)となり、当該数式も、図4のη_(ES)=1、η_(ES)<1の線に対応するη値となるものであって、「効率閾値」(すなわち、境界負荷電力P_(BOUND)に対応する効率η(η_(ES)ではないもの)値)とはなっていない。 (6)(a)請求人は、平成29年4月18日付け意見書「(III)補正の根拠の明示」において「補正事項1?4についての補正は、例えば、本願の明細書の段落〔0049〕?〔0055〕、図1?4の記載等に基づく」旨主張している。 (b)しかし、当初明細書の段落〔0049〕?〔0055〕等の記載を参照しても、効率閾値に関して「効率閾値未満になると、電力変換器は、上述したように連続してオンオフされるパルスモードで動作する。」ことが記載されているものの、電力変換器を効率閾値(すなわち、境界負荷電力「P_(BOUND)」の時の効率)で動作させるように制御することは記載されていない。 なお、段落〔0050〕?〔0055〕でも図4が引用されており、そこに図示された電力変換器の効率ηは、軽負荷時(「第1の時間」の「電力変換器をオン」と、「第2の時間」の「電力変換器をオフ」が交互になされている期間)において、三本の実線で記載されているが、何れもほとんどの供給電力値で境界負荷電力P_(BOUND)に対応する効率η(η_(ES)ではないもの)と異なる値となっており、「電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御」されているといえるようなものではない。 (c)そうすると、上記(a)の主張は採用できるものではない。 (7)そうすると、上記(2)(b)の電力変換システムの制御の内容について「前記第1の時間において・・(中略)・・電力蓄積システムに電力を供給するために前記効率閾値で動作し、・・(中略)・・前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させる」ものであるとする補正は、新たな技術的事項を導入するものであるから、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてした補正とは認められない。 (8)また、上記(2)(a)の補正も、「負荷状態において効率閾値で動作」する電力変換器とするものであるので、上記(7)と同様に新たな技術的事項を導入するものであるから、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてした補正とは、認められない。 2.本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法36条4項及び6項に規定する要件を満たしていない。 記 (1)特許請求の範囲の請求項1に「負荷状態において効率閾値で動作・・する電力変換器」、「第1の時間において、前記電力変換器は・・効率閾値で動作し」、「前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」と記載されているが、上記記載で特定される構成は明確でなく、発明の詳細な説明に記載されておらず、発明の詳細な説明の記載によってもその実施をすることができない。 例えば、 (a)請求項1における「効率閾値」の意味・定義が不明確。(また、他の請求項記載の「効率閾値」についても同様。) 請求人は平成29年4月18日付け意見書「3.(3)」で「『効率閾値』とは、図4に示す境界負荷電力P_(BOUND)に対応する電力変換器の効率ηを表します。」と主張しているが、請求項1の記載において、そのような定義がなされているとは認めがたい。 (b)「負荷状態において効率閾値で動作」が、図4の軽負荷から重負荷まで常に「効率閾値で動作」であるのか、一時的でも「効率閾値で動作」であれば良いのか記載が不明確。 文言的には、前者の意味になるが、それではηが軽負荷から重負荷の間に変動する図4の動作と整合しない。 (c)図4の軽負荷時には、様々な効率の値ηが記載されているのに対して、請求項1では、「前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」(すなわち、常に電力変換器を効率閾値で動作させる)となっており、上記請求項1の記載は、発明の詳細な説明の記載と整合しない。 (2)特許請求の範囲の請求項1に「前記電力変換器」「前記効率」「前記電力変換器」と記載されているが、前方に同じ記載が存在せず「前記」で特定する事項が不明確である。 (3)特許請求の範囲の請求項1に「第1の時間において、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記効率閾値で動作」と記載されているが、第1の時間において、負荷への電力供給のみがなされるのか、他のものに電力供給されるのか、不明確であり、前者の場合、発明の詳細な説明【0051】「第1の時間において、電力変換器がオンになったときには、電力変換器は、負荷電力P_(LOAD)と同時に独立系統電力蓄積システムの充電電力P_(CHR)を供給するように所望の効率で動作させられる。」とも整合せず、後者の場合、何に対して電力供給されるのか構成が不明確である。 また、発明の詳細な説明には、「第1の時間において、前記電力変換器は・・効率閾値で動作」することも記載されていない。(なお、文意自体は明確であるので、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする補正は困難と予想される。) (4)特許請求の範囲の請求項1に「第2の時間において、前記電力変換器がオフされたときに、前記電力蓄積システムは、前記電力変換器を(「の」の誤記か。)補助として動作して電力を供給」と記載されているが、文意が不明瞭である。 発明の詳細な説明の同様の記載についても同様に文意が不明瞭である。 (5)特許請求の範囲の請求項1に「前記電力変換器の前記連続モード及び前記パルスモードの間の境界負荷電力は、効率閾値レベルに設定され」と記載されているが、当該記載によると、負荷電力(w)が効率閾値レベル(%)に設定されることとなって、当該記載により特定される構成が不明確である。 また、発明の詳細な説明【0052】の「境界負荷電力P_(BOUND)は、適切な効率閾値のレベルで設定される。なお、効率閾値のレベルは、任意のレベルに設定できる。」とは意味の異なる文章となっている。 (6)特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」と記載されているが、発明の詳細な説明に記載されておらず、発明の詳細な説明の記載によってもその実施をすることができない。(前記1.(4)?(6)参照。なお、文意自体は明確であるので、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする補正は困難と予想される。) (7)特許請求の範囲の請求項17に「少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記所望の効率で動作し、同時に、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給する」と、特許請求の範囲の請求項18に「前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムおよび前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するために前記所望の効率で動作し、同時に、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給する」と記載されているが、上記記載で特定される構成が不明確。 例えば、 (a)「所望の効率」と記載されているが、定義が不明確である。 (b)「前記所望の効率」と記載されているが、前方に同じ記載が存在せず「前記」で特定する事項が不明確である。 (c)「所望の効率で動作」と記載されているが、請求項1記載の「効率閾値で動作」との相互関係が不明確。 また、「所望の効率で動作」及び「効率閾値で動作」(請求項17、18で引用している請求項1)の発明の詳細な説明(特に、実施例)との対応関係も不明確。 (d)仮に、所望の効率と効率閾値とが同じであるとすると、「所望の効率または効率閾値未満の効率」と「または」で分ける意図が不明であり、「電力変換器が・・効率閾値未満の効率で動作したとき、・・所望の効率で動作」となっており、相反する「効率閾値未満の効率で動作」と「所望の効率で動作」が一連の動作として記載されており、意味が不明確。 (f)また、「電力変換器が・・所望の効率・・で動作したとき・・所望の効率で動作」と、同じ意味のことが繰り返されており、技術的意味が不明確。 なお、上記の如く、本願請求項1?19に記載された発明は、発明の構成が不明確であるので、平成25年12月18日付け拒絶理由通知書の理由についての判断は留保する。 手続補正を行うときは、最後の拒絶理由通知に係る補正の制限や、所謂新規事項が追加されないよう注意すると共に、意見書等で、補正の目的や、補正により追加した事項が、出願当初明細書の何処に記載されていた事項であって、新たな技術的事項を追加するものでないことを、他の構成との相互関係も含めて具体的にわかりやすく説明されたい。 別添図面 」 3 当審の判断 3-1.理由1:特許法第17条の2第3項の規定違反について (1)請求人は、平成29年4月18日付け手続補正(以下「本願補正」という。)で補正前の 「【請求項1】 少なくとも1つの負荷に電力を供給するために入力供給電圧を受ける電力変換システムであって、 所望の効率で動作する少なくとも1つの電力変換器と、 前記少なくとも1つの電力変換器から供給された電力を受けて、蓄積するために前記少なくとも1つの電力変換器と接続された電力蓄積システムと、 前記電力変換器が前記入力供給電圧を受ける一方で、第1の時間には、前記電力変換器をオンし、第2の時間には、前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率未満の効率で動作したとき、前記電力変換器をオフするコントローラと、を備え、 前記第1の時間において、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムと前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するために前記所望の効率で動作し、 前記第2の時間において、前記少なくとも1つの電力変換器がオフされたときに、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給し、 前記第1の時間と前記第2の時間は、連続または周期的に切り替えられ、 前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記所望の効率で動作させるように制御される電力変換システム。」を、 「【請求項1】 少なくとも1つの負荷に電力を供給するために入力供給電圧を受ける電力変換システムであって、 負荷状態において効率閾値で動作し、前記電力変換器の前記効率が前記効率閾値未満であるとき、前記電力変換器は連続的に第1の時間にはオンされ且つ第2の時間にはオフされるパルスモードで動作する電力変換器と、 前記電力変換器から供給された電力を受けるために前記電力変換器と接続された電力蓄積システムと、を備え、 前記第1の時間において、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記効率閾値で動作し、 前記第2の時間において、前記電力変換器がオフされたときに、前記電力蓄積システムは、前記電力変換器を補助として動作して電力を供給し、 前記電力変換器は、連続電力供給によって前記効率閾値で前記負荷に電力を供給するとき、連続モードで動作し、 前記電力変換器の前記連続モード及び前記パルスモードの間の境界負荷電力は、効率閾値レベルに設定され、 前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される、電力変換システム。」に補正している。 すなわち、(a)電力変換器について補正前の「所望の効率で動作する少なくとも1つの電力変換器」を「負荷状態において効率閾値で動作し、前記電力変換器の前記効率が前記効率閾値未満であるとき、前記電力変換器は連続的に第1の時間にはオンされ且つ第2の時間にはオフされるパルスモードで動作する電力変換器」「前記電力変換器は、連続電力供給によって前記効率閾値で前記負荷に電力を供給するとき、連続モードで動作し」に、 (b)電力蓄積システムについて補正前の「電力変換器から供給された電力を受けて、蓄積するために前記少なくとも1つの電力変換器と接続された電力蓄積システム」、「第2の時間において・・電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給」を「電力変換器から供給された電力を受けるために前記電力変換器と接続された電力蓄積システム」、「第2の時間において・・電力蓄積システムは、前記電力変換器を補助として動作して電力を供給」に、 (c)電力変換システムの制御について補正前の「前記第1の時間において・・(中略)・・電力蓄積システムと前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するために前記所望の効率で動作し、・・(中略)・・前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記所望の効率で動作させるように制御される」を「前記第1の時間において・・(中略)・・電力蓄積システムに電力を供給するために前記効率閾値で動作し、・・(中略)・・前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」にする補正を行っている。 (2)上記補正は、(a)電力変換器の動作について補正前の「所望の効率で動作する」を「負荷状態において効率閾値で動作し」、「電力変換器の前記効率が前記効率閾値未満であるとき・・連続的に第1の時間にはオンされ且つ第2の時間にはオフされるパルスモードで動作する」、「連続電力供給によって前記効率閾値で前記負荷に電力を供給するとき、連続モードで動作し」とし、 (b)電力変換システムの制御の内容について補正前の「前記第1の時間において・・(中略)・・電力蓄積システムと前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するために前記所望の効率で動作し、・・(中略)・・前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記所望の効率で動作させる」ものであることを「前記第1の時間において・・(中略)・・電力蓄積システムに電力を供給するために前記効率閾値で動作し、・・(中略)・・前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させる」とする補正を含むものである。 (3)翻訳文等には、「効率閾値」に関して以下の記載が存在する。 ・【請求項2】「前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、第1の時間オンされ、第2の時間オフされ、 前記第1の時間において、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記所望の効率で動作し、 前記第2の時間において、前記少なくとも1つの電力変換器がオフされたときに、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。」 ・【請求項19】「前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記所望の効率で動作し、同時に、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。」 ・【請求項20】「前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムおよび前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するために前記所望の効率で動作し、同時に、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。」 ・【0016】「また、本発明のより詳細な機能によれば、電力変換システムは、1以上の負荷に電力を供給する。電力変換システムは、1以上の電力変換器を備えている。各電力変換器は、負荷がかけられた状態で所望の効率で動作する。電力変換器の効率が所望の効率または効率閾値未満であるとき、電力変換器は、連続して、第1の時間オンされ、第2の時間オフされる。第1の時間において、電力変換器は、電力蓄積システムに電力を供給するために所望の効率で動作する。第2の時間において、電力変換器がオフされたときに、電力蓄積システムは、負荷に電力を供給するように電力変換器を補助的に動作させる。」 ・【0042】「本発明の一形態によれば、電力変換システムは、1以上の負荷に電力を供給する。電力変換システムは、1以上の電力変換器を備えている。各電力変換器は、負荷がかけられた状態で所望の効率で動作する。電力変換器の効率が所望の効率または効率閾値未満であるとき、電力変換器は、連続して、第1の時間オンされ、第2の時間オフされる。第1の時間において、電力変換器は、電力蓄積システムに電力を供給するために所望の効率で動作する。好ましくは、電力変換器は、独立系統電力蓄積システムに電力を供給するために所望の効率で動作する。第2の時間において、電力変換器がオフされたときに、独立系統電力蓄積システムは、負荷に電力を供給するように電力変換器を補助的に動作させる。電力変換システムは、少なくとも1つの電力変換器および電力蓄積システムの動作を制御するために、少なくとも1つの電力変換器および電力蓄積システムに接続されたコントローラをさらに備えている。」 ・【0052】「このように、本発明の電力変換器は、連続電力供給で所望の効率で負荷に電力を供給する連続モードで動作する。効率が効率閾値未満になると、電力変換器は、上述したように連続してオンオフされるパルスモードで動作する。ここで、電力変換器の動作の連続モードとパルスモードとの間の境界負荷電力P_(BOUND)は、適切な効率閾値のレベルで設定される。なお、効率閾値のレベルは、任意のレベルに設定できる。しかしながら、性能を最適にするために、第1の時間すなわちオンになっている間、電力変換器によって供給される瞬時電力Pを最大効率点となる所望の効率で選択することができるように、電力変換器の制御は、設計されている。図4に示すように、出力電力に効率が依存する典型的な電力変換器は、中間域の電力レベルでピークとなる。P=P_(OPT)を選択、すなわち、常に最大効率η_(MAX)となる電力レベルの変換器の動作によって、P_(BOUND)(<P_(OPT))のレベル未満の軽負荷効率は、最大になる。この制御により、デューティサイクルDは、以下のように定義される。」 (4)上記記載によると「効率閾値」は、【0052】の「効率が効率閾値未満になると、電力変換器は、上述したように連続してオンオフされるパルスモードで動作する。」値であり、「ここで、電力変換器の動作の連続モードとパルスモードとの間の境界負荷電力P_(BOUND)は、適切な効率閾値のレベルで設定される。」とされ、さらに、請求人も平成29年4月18日付け意見書「3.(3)」で「『効率閾値』とは、図4に示す境界負荷電力P_(BOUND)に対応する電力変換器の効率ηを表します。」と主張しているので、請求項1の「効率閾値」は、具体的には図4に「供給電力に対する電力変換器の典型的な効率特性を示す。」ものとして図示された、3本の曲線の効率ηのうち、η_(ES)ではないものの、境界負荷電力P_(BOUND)に対応する個所の効率ηということになる。 ところで、図4に電力変換器の効率ηを示すものとして図示された3本の曲線の効率ηは、何れも軽負荷時(「第1の時間」の「電力変換器をオン」と、「第2の時間」の「電力変換器をオフ」が交互になされているP値の領域)のほとんどにおいて、「効率閾値」である境界負荷電力P_(BOUND)に対応する個所の効率ηと異なる値となっている。 そうすると、図4に電力変換器の効率ηを示すものとして記載された、電力変換器の効率ηは、いずれも、「第1の時間」の「電力変換器をオン」と、「第2の時間」の「電力変換器をオフ」が交互になされているP値の領域において、効率閾値となっていないので、それらは、上記(2)(b)の「電力変換器を前記効率閾値で動作させる」ように制御された電力変換器の効率ηを示すものではない、換言すると、補正により付加された上記(2)(b)の制御内容は、図4に図示された3つの電力変換器の動作の何れとも異なるものであって、少なくとも、翻訳文等において図4を用いて説明された制御内容とは異なるものであると言わざる得ない。 (5)さらに、翻訳文等に「第1の時間と第2の時間との割合は、電力変換器を効率閾値で動作させるように制御される」との記載は存在せず、また、上記(3)及びそれ以外の記載を参酌しても、第1の時間と第2の時間との割合を、電力変換器を効率閾値で動作させるように制御することを示唆する記載はなく、かつ、この構成は翻訳文等の記載から自明な事項でもない。 このことは、請求項1の「前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」場合、効率ηが図4の軽負荷時全域で「効率閾値」(すなわち、境界負荷電力P_(BOUND)に対応する効率η(η_(ES)ではないもの))の水平線で記載されるべきものであるのに対して、図4に図示されている電力変換器の効率ηが、軽負荷時において、「効率閾値」(すなわち、境界負荷電力P_(BOUND)に対応する効率η(η_(ES)ではないもの))となっていないことからも明らかである。(拒絶理由通知の図面参照。) さらに、効率ηを求めた【0053】の【数4】η=η_(MAX)/{D+(1-D/η_(CHR)・η_(DIS))}=η_(MAX)/{D+(1-D/η_(ES))}も、仮に、エネルギー蓄積および電力調整ブロックによる総電力処理の効率をη_(ES)を1としたときにηがη_(MAX)となり、当該数式も、図4のη_(ES)=1、η_(ES)<1の線に対応するη値となるものであって、「効率閾値」(すなわち、境界負荷電力P_(BOUND)に対応する効率η(η_(ES)ではないもの)値)とはなっていない。 (6)(a)請求人は、平成29年4月18日付け意見書「(III)補正の根拠の明示」において「補正事項1?4についての補正は、例えば、本願の明細書の段落〔0049〕?〔0055〕、図1?4の記載等に基づく」旨主張している。 (b)しかし、当初明細書の段落〔0049〕?〔0055〕等の記載を参照しても、効率閾値に関して「効率閾値未満になると、電力変換器は、上述したように連続してオンオフされるパルスモードで動作する。」ことが記載されているものの、電力変換器を効率閾値(すなわち、境界負荷電力「P_(BOUND)」の時の効率)で動作させるように制御することは記載されていない。 なお、段落〔0050〕?〔0055〕でも図4が引用されており、そこに図示された電力変換器の効率ηは、軽負荷時(「第1の時間」の「電力変換器をオン」と、「第2の時間」の「電力変換器をオフ」が交互になされている期間)において、三本の実線で記載されているが、何れもほとんどの供給電力値で境界負荷電力P_(BOUND)に対応する効率η(η_(ES)ではないもの)と異なる値となっており、「電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御」されているといえるようなものではない。 (c)そうすると、上記(a)の主張は採用できるものではない。 (7)そうすると、上記(2)(b)の電力変換システムの制御の内容について「前記第1の時間において・・(中略)・・電力蓄積システムに電力を供給するために前記効率閾値で動作し、・・(中略)・・前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させる」ものであるとする補正は、新たな技術的事項を導入するものであるから、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてした補正とは認められない。 (8)また、上記(2)(a)の補正も、「負荷状態において効率閾値で動作」する電力変換器とするものであるので、上記(7)と同様に新たな技術的事項を導入するものであるから、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてした補正とは、認められない。 3-2.理由2:特許法第36条第6項第1号の規定違反について (1)特許請求の範囲の請求項1に「負荷状態において効率閾値で動作・・する電力変換器」と記載されており、負荷状態において電力変換器は常に「効率閾値」で動作することになる。 しかし、下記の如く、負荷状態において常に、効率閾値で動作する電力変換器は、発明の詳細な説明の何処にも記載も示唆もされておらず、請求項1記載の発明が、発明の詳細な説明に記載した発明ということができない。 ア.発明の詳細な説明には、「効率閾値」に関して、以下の記載が存在する。 ・【0016】「各電力変換器は、負荷がかけられた状態で所望の効率で動作する。電力変換器の効率が所望の効率または効率閾値未満であるとき、電力変換器は、連続して、第1の時間オンされ、第2の時間オフされる。第1の時間において、電力変換器は、電力蓄積システムに電力を供給するために所望の効率で動作する。」 ・【0042】「各電力変換器は、負荷がかけられた状態で所望の効率で動作する。電力変換器の効率が所望の効率または効率閾値未満であるとき、電力変換器は、連続して、第1の時間オンされ、第2の時間オフされる。第1の時間において、電力変換器は、電力蓄積システムに電力を供給するために所望の効率で動作する。」 ・【0052】「本発明の電力変換器は、連続電力供給で所望の効率で負荷に電力を供給する連続モードで動作する。効率が効率閾値未満になると、電力変換器は、上述したように連続してオンオフされるパルスモードで動作する。ここで、電力変換器の動作の連続モードとパルスモードとの間の境界負荷電力P_(BOUND)は、適切な効率閾値のレベルで設定される。なお、効率閾値のレベルは、任意のレベルに設定できる。」 しかし、負荷状態において常に、効率閾値で動作する電力変換器は、発明の詳細な説明の何処にも記載も示唆もされていない。 イ.請求人は、平成29年4月18日付け意見書「3.(3)」で「『効率閾値』とは、図4に示す境界負荷電力P_(BOUND)に対応する電力変換器の効率ηを表します。」と主張しているので、請求項1の「負荷状態において効率閾値で動作・・する電力変換器」は、図4の軽負荷から重負荷まで、境界負荷電力P_(BOUND)に対応する電力変換器の効率ηである「効率閾値」で動作することになるが、図4では、ηが軽負荷から重負荷の間で変動しており、常に境界負荷電力P_(BOUND)に対応する電力変換器の効率ηで動作するものとなっていないので、図4の動作とも整合していない。(拒絶理由通知の図面参照。) (2)特許請求の範囲の請求項1に「第1の時間において、前記電力変換器は・・効率閾値で動作し」、「前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」と記載されており、第1の時間において電力変換器は常に効率閾値で動作することになる。 しかし、下記の如く、第1の時間において常に、効率閾値で動作する電力変換器は、発明の詳細な説明の何処にも記載も示唆もされておらず、請求項1記載の発明が、発明の詳細な説明に記載した発明ということができない。 ウ.発明の詳細な説明には、「効率閾値」に関して、上記(1)ア.の記載が存在するが、第1の時間において常に、効率閾値で動作する電力変換器は、発明の詳細な説明の何処にも記載も示唆もされていない。 エ.請求項1の「第1の時間において・・効率閾値で動作し」、「前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」電力変換器は、図4の軽負荷時に効率閾値で動作することになるが、図4では、軽負荷時に、様々な効率の値ηが記載されていているものの、何れも常に効率閾値(境界負荷電力P_(BOUND)に対応する電力変換器の効率η)で動作するものとはなっておらず、「第1の時間において、前記電力変換器は・・効率閾値で動作し」、「前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」と、図4の動作とは整合していない。(拒絶理由通知の図面参照。) 3-3.理由2:特許法第36条第6項第2号の規定違反について (1)請求項1及び他の請求項記載の「効率閾値」の意味・定義が不明確である。 発明の詳細な説明には、「効率閾値」に関して、上記3-2.(1)ア.の記載が存在し、請求人は平成29年4月18日付け意見書「3.(3)」で「『効率閾値』とは、図4に示す境界負荷電力P_(BOUND)に対応する電力変換器の効率ηを表します。」と主張しているが、請求項1及び他の請求項の記載において、そのような定義がなされているとは認めがたい。 (2)特許請求の範囲の請求項1に「前記電力変換器」「前記効率」「前記電力変換器」と記載されているが、その記載以前に同じ記載が存在せず「前記」で特定する事項が不明確である。 (3)特許請求の範囲の請求項1に「前記電力変換器の前記連続モード及び前記パルスモードの間の境界負荷電力は、効率閾値レベルに設定され」と記載されているが、当該記載によると、負荷電力(w)が効率閾値レベル(%)に設定されることとなって、当該記載により特定される構成が不明確である。 なお、上記請求項1の記載は、発明の詳細な説明【0052】の「境界負荷電力P_(BOUND)は、適切な効率閾値のレベルで設定される。なお、効率閾値のレベルは、任意のレベルに設定できる。」とは意味の異なる文章となっている。 (4)特許請求の範囲の請求項17に「少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムに電力を供給するために前記所望の効率で動作し、同時に、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給する」と、特許請求の範囲の請求項18に「前記少なくとも1つの電力変換器が前記所望の効率または効率閾値未満の効率で動作したとき、前記電力変換器は、前記電力蓄積システムおよび前記少なくとも1つの負荷に電力を供給するために前記所望の効率で動作し、同時に、前記電力蓄積システムは、前記少なくとも1つの負荷に電力を供給する」と記載されている。 そして、 (a)「所望の効率」と記載されているが、定義が不明確である。 (b)「前記所望の効率」と記載されているが、その記載以前に同じ記載が存在せず「前記」で特定する事項が不明確である。 (c)「所望の効率で動作」と記載されているが、請求項1記載の「効率閾値で動作」との相互関係が不明確である。 また、「所望の効率で動作」及び「効率閾値で動作」(請求項17、18で引用している請求項1)の発明の詳細な説明(特に、実施例)との対応関係も不明確である。 (d)仮に、所望の効率と効率閾値とが同じであるとすると、「所望の効率または効率閾値未満の効率」と「または」で分ける意図が不明であり、異なるとすると、「電力変換器が・・効率閾値未満の効率で動作したとき、・・所望の効率で動作」となっており、相反する「効率閾値未満の効率で動作」と「所望の効率で動作」が一連の動作として記載されており、意味が不明確である。 (f)また、「電力変換器が・・所望の効率・・で動作したとき・・所望の効率で動作」と、同じ意味のことが繰り返されており、技術的意味が不明確である。 3-3.理由2:特許法第36条第4項第1号の規定違反について (1)特許請求の範囲の請求項1の「負荷状態において効率閾値で動作・・する電力変換器」、「第1の時間において、前記電力変換器は・・効率閾値で動作し」、「前記第1の時間と前記第2の時間との割合は、前記電力変換器を前記効率閾値で動作させるように制御される」構成は、発明の詳細な説明に記載されておらず、発明の詳細な説明の記載は、当業者が特許請求の範囲の請求項1?19記載の発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。 4 むすび したがって,本願補正は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 また、本願は、特許法36条第4項第1号、第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-01-18 |
結審通知日 | 2018-01-23 |
審決日 | 2018-02-05 |
出願番号 | 特願2011-501981(P2011-501981) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(H02J)
P 1 8・ 55- WZ (H02J) P 1 8・ 57- WZ (H02J) P 1 8・ 537- WZ (H02J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石川 晃 |
特許庁審判長 |
藤井 昇 |
特許庁審判官 |
矢島 伸一 中川 真一 |
発明の名称 | 全負荷範囲にわたって効率的に動作する電力変換システム |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 河合 章 |
代理人 | 黒田 裕也 |
代理人 | 南山 知広 |
代理人 | 鶴田 準一 |