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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C30B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C30B
管理番号 1341704
審判番号 不服2016-9365  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-23 
確定日 2018-06-20 
事件の表示 特願2014- 88956「フロートゾーン法により製造したシリコン単結晶及びシリコン基板」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月24日出願公開、特開2014-133702〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2002年(平成14年)7月30日(パリ条約による優先権主張 2001年8月2日、ドイツ)に出願した特願2002-221342号の一部を平成21年6月5日に新たな特許出願とした特願2009-136116号の一部を、さらに、平成26年4月23日に新たな特許出願としたものであって、平成27年3月30日付けで拒絶理由が通知され、同年9月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年2月17日付けで拒絶査定されたのに対し、平成28年6月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、そして、当審において平成29年4月17日付けで拒絶理由を通知し、同年8月17日付けで意見書のみが提出され、その後、同年9月5日付けで審尋をし、それに対して同年12月11日付けで回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成27年9月7日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されたとおりのものであり、そのうち独立項である請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
単結晶が少なくとも200mmの長さにわたり少なくとも200mmの直径を有し、この長さの範囲内で無転位であることを特徴とする、多結晶シリコンの原料棒から、坩堝を用いないフロートゾーン法により製造したシリコンからなる単結晶。」

第3 当審の拒絶理由
当審において平成29年4月17日付けで通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
理由1 特許法第36条第6項第2号について
請求項1は、「単結晶」という物の発明であるが、「多結晶シリコンの原料棒から、坩堝を用いないフロートゾーン法により製造した」との記載は、製造に関して経時的な要素の記載がある場合及び製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。
ここで、物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号)。
しかしながら、本願明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとも言えない。
したがって、請求項1に係る発明及びそれを引用する請求項2に係る発明は明確でない。よって、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

理由2 特許法第29条第1項第3号について
単結晶が少なくとも200mmの長さにわたり少なくとも200mmの直径を有し、この長さの範囲内で無転位であるシリコンからなる単結晶は、本願の優先日前に既に周知な単結晶(例えば、特開平9-183686号公報(以下「引用文献1」という。)、特開平10-95689号公報(以下「引用文献2」という。)、特開2001-106591号公報(以下「引用文献3」という。)、特開2001-199789号公報(以下「引用文献4」という。)の各々の実施例等参照)であり、本願発明の単結晶は、「単結晶(物)」として、この周知の単結晶と同じ物といえる。また、単結晶からスライシングされたシリコンからなる基板も本願の優先日前に既に周知である。
してみれば、請求項1に係る発明及びそれを引用する請求項2に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
なお、拒絶理由通知書には、上記周知な単結晶はいずれもチョクラルスキー法によって製造された単結晶であり、チョクラルスキー法の場合には坩堝からの不純物(汚染物質)が混入する場合があり、本願発明のフロートゾーン法により製造した単結晶とは、その不純物の点で異なっている可能性もあるが、本願の現在の請求項の記載、明細書及び図面の記載から、両者に不純物の点においての相違点を認めるには至らないことも追記されている。

理由3 特許法第36条第4項第1号について
(略)

第4 意見書、審尋及び回答書の概要
1 平成29年8月17日付け意見書の概要
(1)理由1について
理由1に対して、請求人は、平成29年8月17日付け意見書(以下「意見書」という。)で、
「少なくとも200mmの長さのFZシリコン単結晶を同じ長さのCZシリコン単結晶から区別する合理的アプローチは、酸素量を特定することであるといえます。・・・FZシリコン単結晶は、CZシリコン単結晶よりも格段に少ない酸素量を有するといえます。・・・。
本願の出願時には、FZシリコン単結晶に意図的に酸素がドープされ得ることも知られていました。ところが、FZシリコン単結晶に酸素を意図的にドープする既知の手法は、少なくとも200mmの直径を有するシリコン単結晶に対し機能しないことが判明しました。・・・。したがって、FZシリコン単結晶に酸素を意図的にドープすることは望ましいとはいえませんが、本願の出願時点では、現請求項1に記載のような、少なくとも200mmの直径を有し、かつ少なくとも200mmの長さを有する大型のFZシリコン単結晶において、CZシリコン単結晶と区別できるようにその含有酸素量を調整するという技術思想も存在していませんでした。このような状況であったことから、上記のような大型のFZシリコン単結晶において、CZシリコン単結晶と区別できる程度の含有酸素量を測定するための標準的といえる手法も存在していませんでした。よって、本願の出願時点において、本願発明に係るシリコン単結晶を酸素量で直接特定することは非実際的であるといえます。」(下線は当審において付与したものである。以下同様。)と記載し、
大型のFZシリコン単結晶とCZシリコン単結晶を区別する合理的アプローチは酸素量を特定することであるとした上で、大型のFZシリコン単結晶において、CZシリコン単結晶と区別できる程度の含有酸素量を測定するための標準的といえる手法が存在しなかったことをもってして、本願請求項1に係る単結晶(物)の発明を製造方法で記載することには、不可能・非実際的事情があることを主張している。

(2)理由2について
理由2に対して、請求人は、意見書で、引用文献1?4に記載の単結晶は、いずれも坩堝を用いて作製されたものであり、本願発明に係るシリコン単結晶とは、明らかに酸素量が異なるものであるといえることから、請求項1及び2に係る発明は、上述の周知な単結晶とは異なるものであり、特許法第29条第1項第3号に該当しないことを主張している。

2 審尋及び回答書の概要
(1)審尋の概要
当審からの審尋では、
「シリコン単結晶の含有酸素量は赤外吸収法により本願優先日前より測定されてきているもの(例えば、井上直久、他「シリコン結晶中の酸素の挙動」、鉄と鋼第73(1987)第8号、p32左欄7?8行、参照)であり、本願優先日前にその測定方法は、JEIDA(日本電子工業振興会)により、JEIDA規格「赤外吸収によるシリコン中の格子間酸素原子濃度の標準測定方法」JEIDA-61-2000(平成12年8月、社団法人日本電子工業振興会発行)(以下「規格書」という。)として規格化されている。上記規格書の1頁12?13行には『この測定法は、シリコン単結晶薄片中のあるいは商用シリコンウェーハ中の格子間酸素の濃度を、赤外分光法を用いた吸収係数測定から求める方法である。』と記載され、8頁26行には『直径100?300mmで、ウェーハ厚さ500?800μmを有すること』と記載されており、少なくとも200mmの大型のシリコン単結晶をも測定対象とすることが記載されている。
してみれば、シリコン単結晶がFZ法であれ、CZ法であれ、あるいはさらに別の方法で作成されたものであるにしろ、本願優先日前に、少なくとも200mmの大型のシリコン単結晶における含有酸素量を測定する標準的な方法は既に存在していることは明かである。」と記載し、請求人の主張する不可能・非実際的事情があるとは判断できないことを伝えた上で、更なる主張を求めたものである。

(2)回答書の概要
上記審尋に対して、請求人は、
「出願人は、JEIDA規格の存在自体を争うものではありませんが、本願の優先日当時の技術水準として、現請求項1に記載のような大型で無転位のFZ法によるシリコン単結晶(以下「FZシリコン単結晶」と称する)は存在していませんでした。
平成29年8月17日付の意見書において主張した、含有酸素量の特定は、CZ法によるシリコン単結晶(以下「CZシリコン単結晶」と称する)と、FZシリコン単結晶とを区別する合理的な方法として考えられる手法を例示したものです。なお、『含有酸素量』については現請求項1において規定されていません。
上記意見書において主張しましたように、『FZシリコン単結晶に意図的に酸素をドープする手法は、200mm以上の直径を有するシリコン単結晶に対し機能しない』ことを本願出願人は知得していましたが、本願の出願人以外の当業者は知り得ていなかったと出願人は認識しています。
したがって、たとえ上記のようなJEIDA規格に基づく測定方法が存在していたとしても、本願の優先日当時の技術水準として『200mm以上のFZシリコン単結晶に意図的に酸素をドープする手法が機能しない』ことが本願出願人以外には知られていなかった以上、本願出願人以外の当業者にとっては、200mm以上のFZシリコン単結晶でも、意図的に酸素をドープすることができるということが当時の技術水準であったといえます。
200mm以上のFZシリコン単結晶に意図的に酸素をドープすることができ、かつ含有酸素量が同一であると仮定すると、含有酸素量の特定だけでは、CZシリコン単結晶と、FZ法シリコン単結晶とを区別することができないことになります。そうすると、本願の優先日当時の技術水準では、CZシリコン単結晶と、FZシリコン単結晶とを、含有酸素量の特定のみで区別することは不可能であると当業者は認識していたはずです。 上記のような当時の技術水準に鑑み、たとえご指摘のような手法が本願の優先日当時に存在していたとしても、含有酸素量の特定により、CZシリコン単結晶と、FZシリコン単結晶とを区別することは、本願の優先日当時の一般的な当業者にとっては不可能・非実際的な手法であったといえます。」(下線は当審において付与した。)と主張してきた。

第5 判断
1 理由1について
物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されていることから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとする理由1に対し、請求人は、上記意見書及び回答書で不可能・非実際的事情について主張してきたので、以下、その内容について検討する。

(1)シリコン単結晶の含有酸素量の測定について
上記審尋において説示したとおり、シリコン単結晶の含有酸素量は赤外吸収法により本願優先日前より通常に測定されてきており、その測定方法は対象とするシリコン単結晶の製造方法、大きさによらず適用されるもので本願優先日前に既に規格化(JEIDA-61-2000 平成12年8月、社団法人日本電子工業振興会発行)されているもの(以下「標準測定方法」という。)である。このシリコン単結晶の含有酸素量を赤外吸収法により測定する標準測定方法の存在についていは、請求人も認めているところである(上記回答書の下線部参照)。
そして、請求人は、上記意見書で、FZシリコン単結晶はCZシリコン単結晶よりも格段に少ない酸素量を有することから、酸素量を特定することが、少なくとも200mmの長さのFZシリコン単結晶と同じ長さのCZシリコン単結晶を区別する合理的アプローチであることを述べている。
上記請求人の主張を踏まえれば、本願発明の「シリコンからなる単結晶」を含有酸素量で特定することにより、FZシリコン単結晶とCZシリコン単結晶を区別できることは明かであり、その含有酸素量は上記標準的測定方法で測定できるものである。そして、請求人の主張するとおり、仮に少なくとも200mmの長さにわたり少なくとも200mmの直径を有しこの長さの範囲内で無転位であるシリコンからなる単結晶が「フロートゾーン法によって製造」されることはなかったにせよ、少なくとも200mmの長さにわたり少なくとも200mmの直径を有しこの長さの範囲内で無転位であるシリコンからなる単結晶の含有酸素量を上記標準測定方法では測定できないとする技術的理由はなく、請求人も上記標準測定方法では測定できない技術的理由について何ら主張していない。
してみれば、含有酸素量によって、少なくとも200mmの長さにわたり少なくとも200mmの直径を有しこの長さの範囲内で無転位であるシリコンからなる単結晶を特定でき、それによりその余の製造方法(例えばCZ法)で製造したシリコンからなる単結晶と区別できるところ、これをあえて「多結晶シリコンの原料棒から、坩堝を用いないフロートゾーン法により製造した」という製造方法で特定することの不可能・非実際的事情があるとはいえない。

(2)FZシリコン単結晶への酸素ドープについて
ア 請求人の意見書及び回答書での酸素ドープについての主張をまとめると、おおよそ次のとおりであるといえる。
FZシリコン単結晶に酸素を意図的にドープする既知の手法では少なくとも200mmの直径を有するシリコン単結晶に対し機能しないことを請求人は知得していたが、他の当業者は知り得ていなかった。そこで、少なくとも200mmの直径を有するFZシリコン単結晶が存在すると仮定すると、当業者はそのFZシリコン単結晶に対しても意図的に酸素をドープすることがあり得ることになり、酸素をドープすると含有酸素量は、その他の製造方法(CZ法)によって製造されたシリコン単結晶と同一であると当業者は認識するものとも仮定され、含有酸素量の特定では、CZシリコン単結晶と、FZシリコン単結晶とを区別することができないと当業者は認識するものといえるから、そのような特定を行おうとしないことになる。したがって、含有酸素量で特定することは、不可能・非実際的事情に相当するという主張である。

イ 上記の主張は、含有酸素量の特定では、CZシリコン単結晶と「酸素をドープした」FZシリコン単結晶とを当業者は区別できると認識しないため、不可能・非実際的事情に相当するという主張であり、FZシリコン単結晶をドープすることを前提とするものと認められる。しかしながら、本願発明は、「酸素をドープした」シリコンからなる単結晶であるとは特定されておらず、かつ、本願明細書に酸素をドープすることについて何ら記載されていないことから、本願明細書に鑑みても、本願発明のシリコンからなる単結晶が酸素をドープしたものとは解されない。
また、請求人が意見書で提示した特開昭60-90899号公報に記載されているように、FZ法でシリコンからなる単結晶を製造する際に、酸素をドーピングする技術が周知であったにしろ、本願明細書の実施例は、
「【実施例】
【0023】
204mmの直径を有するシリコン単結晶を引き上げる場合、200mmより長い長さで無転位であった。準備期間において115mmの直径を有する多結晶の原料棒を容器中に取り付けた。同様に容器中に種結晶、平板コイルとして構成された高周波コイル(パンケーキコイル)及び単結晶用のリフレクタを準備した。ポンプ期間において、容器をまず排気し、次いでアルゴン(1.65bar)及び窒素(0.3体積%)で満たした。引き続き、アルゴン及び窒素からなる混合物を容器に通した。この流量は4200Nl/h(アルゴン)及び13Nl/h(窒素)であった。予備加熱期間の間に、原料棒の下方端面側をまず予備加熱リングを用いて、引き続き高周波コイルを用いて加熱した。種結晶に溶融液滴部が形成された後に、この種結晶を原料棒に当て付け、単結晶の引下を開始し、その際、単結晶の直径はまず恒常的に拡大した。このコーン部分形成期間の開始のために単結晶を一方向に回転させた。単結晶の円柱形部分を引き上げる前になお本発明による反転回転に切り替えた。単結晶の円柱部分の引下の場合の引下速度は1.8mm/minであった。引下工程の最終期間において、単結晶の直径を減少させテイルコーンにし、単結晶を冷却後に容器から取り出した。」と、酸素をドープしないものを実施例として記載していることからも、上記周知技術を踏まえても、酸素をドープしていないことは明かである。
してみれば、本願発明に係るシリコンからなる単結晶は意図的に酸素がドープされたものとは解されないことから、本願発明に係るシリコンからなる単結晶に対して、「酸素をドープする」ことを前提にした請求人の主張は誤りといわざるを得ないことから、上記請求人の主張に基づいて不可能・非実際的事情があるとは認められない。

(3)まとめ
請求人は、シリコンからなる単結晶の物の発明である本願発明が、「多結晶シリコンの原料棒から、坩堝を用いないフロートゾーン法により製造した」との製造方法で特定されていること対して、含有酸素量では特定することができない不可能・非実際的事情が存在することから上記製造方法で特定したことを主張しているが、上記(1)及び(2)で説示したおり、請求人の主張する事項はいずれも不可能・非実際的事情といえるものではない。
よって、本願特許請求の範囲にはその物の製造方法が記載されているが、出願時(本願の優先日)において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能・非実際的事情が存在するとは認められないことから、最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号の判決に則り、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するとはいえない。
したがって、本願発明は明確でないことから、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 理由2について
上記1の(2)「FZシリコン単結晶への酸素ドープについて」で説示したように、「酸素をドープする」ことを前提にした請求人の主張は、本願発明及び本願明細書の記載に基づかない正当な主張ではないものの、ここで請求人の当該主張を受け入れ、仮に、本願発明の単結晶に「酸素をドープ」した単結晶が含まれるものとして、以下検討する。

(1)周知発明について
ア 引用文献の記載事項
上記引用文献1?4には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。
(ア)引用文献1
(1ア)「【実施例】・・・
【0038】
具体的な引き上げ工程は以下の通りである。まず、石英るつぼ5内にシリコン多結晶原料210kgを投入し、ヒーター7によって加熱して溶融させ、石英るつぼ5内にシリコン融液15を得た。このシリコン融液15に、上方から吊り下げられた種結晶16を浸漬し、種結晶16を回転させながらこれを所定の速度で引き上げ、種結晶16の先に直径300mmの単結晶棒18を成長させた。単結晶棒18の引き上げ重量が増すにつれシリコン融液15の体積が減少ててシリコン融液15の表面位置がヒーター7に対して相対的に変るので、単結晶棒18とシリコン融液15との界面の位置における温度を固化温度に保つために、単結晶重量に連動した計算により、所望の距離だけ石英るつぼ5及び黒鉛るつぼ6を上昇させた。」
(1イ)「【0042】
【発明の効果】
以上の説明で明らかな如く、本発明によれば、石英るつぼ上端に酸化珪素が析出付着するのを防止することができるので、高歩留まりの単結晶工程により無転位の単結晶を得ることができる。」

(イ)引用文献2
(2ア)「【実施例】以下に、単結晶成長方法の実施例について説明する。
【0047】
引き上げ結晶 :直径300mmのシリコン単結晶
原料仕込み量 :高純度多結晶シリコン 150kg
溶解方法 :抵抗加熱式
炉内雰囲気 :10Torr
Ar(アルゴン)50リットル/min
石英坩堝のサイズ :直径 650mm、高さ 400mm
ヒーターのサイズ :内径 700mm、外径 740mm
高さ 500mm
保温筒のサイズ :内径 800mm、外径 950mm
メインチャンバ5aの寸法 :直径 1000mm、高さ 1200mm
引き上げ軸3の回転数 :10rpm
坩堝1の回転数 :8rpm
結晶直胴部8aの長さ :650mm」
(2イ)「【0049】
この図から明らかなように、結晶径の変動の少ない滑らかな形状の尾部8bを有する結晶8を全域無転位で得ることができた。」

(ウ)引用文献3
(3ア)「【実施例】・・・
【0048】
るつぼ1a内の、ヒーター4によって加熱溶融されてたシリコン融液3に、引き上げ軸5の先端のシードチャック6に取り付けられた種結晶を接触させ、種結晶先端に融液を凝固成長させながら引き上げて、単結晶7を成長させる。るつぼ1aおよび1bは支持軸2により回転でき、単結晶も引き上げ軸5により回転される。単結晶はまず結晶を無転位化するために、種結晶に付着した初期径よりも細くして成長させるシード絞りをおこない、次いでショルダー部を形成させ、肩変えして一定ボディ径とする。
【0049】
単結晶は、目標径を210mm、ボディ長さを1000mmとした。この場合、引き上げ速度を、ボディ長さが300mmに達した時点で0.6mm/minとし、その後引き上げ長さに応じてほぼ直線的に徐々に低下させ、ボディ長が600mmに達したときに、0.3mm/minとなるようにした。引き上げ中の単結晶の中心部の温度Tと、垂直方向温度勾配の比Gc/Gpとを計測した結果を図7に示すが、破線で示した(1)式および(2)式の関係を十分満足する結果となっていた。」(原文では(1)及び(2)は○数字である)

(エ)引用文献4
(4ア)「【発明の実施の形態】・・・
【0013】
ここで、上述したシリコン単結晶の製造方法により、直径5mm、10mm及び15mmのシードを用い、直胴部の直径200mm、重量150kgのシリコン単結晶を製造したところ、いずれも無転位のシリコン単結晶が得られた。
しかし、シード直径が大きくなるほどシード直下のパラレル成長が難しくなる傾向がある(結果的にシード直径が絞られても無転位成長には影響がない)が、15mm程度の直径のシードを用いることにより、直径400mm、重量450kg程度の大口径、大重量のシリコン単結晶を無転位で製造できた。」

イ 周知発明
上記引用文献1?4の記載事項から、引用文献1?4の各々には以下の発明が記載されているといえることから、引用文献1?4の各々に記載された発明を、以下まとめて「周知発明」という。
「単結晶が少なくとも200mmの長さにわたり少なくとも200mmの直径を有し、この長さの範囲内で無転位であるシリコンからなる単結晶。」

(2)対比
本願発明と周知発明とを対比すると、
(一致点)
「単結晶が少なくとも200mmの長さにわたり少なくとも200mmの直径を有し、この長さの範囲内で無転位であるシリコンからなる単結晶。」
の点で一致し、以下の点で一応相違する。
(相違点)
本願発明は、「多結晶シリコンの原料棒から、坩堝を用いないフロートゾーン法により製造した」との製造方法で特定されているのに対し、周知発明は、その製造方法で特定された性状を有するか明らかでない点で相違する。

(3)相違点の判断
ア 酸素ドープしない単結晶
まず、本願発明の単結晶のうち、酸素をドープしない単結晶について検討する。請求人は、上記意見書でFZシリコン単結晶はCZシリコン単結晶よりも格段に少ない酸素量を有することを主張しており、引用文献1?4に記載されている製造方法がいずれも具体的にはチョクラルスキー法に該当するものであることに鑑みると、本願発明の単結晶のうち、酸素をドープしない場合の単結晶については、含有酸素量が異なる点で、本願発明の単結晶と周知発明の単結晶とは実質的に相違するものと判断できる。

イ 酸素ドープした単結晶
次に、本願発明の単結晶のうち、「酸素をドープ」した単結晶について検討する。上記1の(2)「FZシリコン単結晶への酸素ドープについて」で記載したように、請求人は、FZシリコン単結晶に酸素を意図的にドープする既知の手法では少なくとも200mmの直径を有するシリコン単結晶に対し機能しないことを請求人のみが知得していた(他の当業者は知り得ていなかった)ことを主張しているが、請求人は、少なくとも200mmの直径を有するシリコン単結晶において既知の手法ではドープできないことについて何ら具体的な証拠も提示していないことから、当該主張は技術的に根拠のあることとして受け入れられない。
してみれば、請求人が意見書で提示した特開昭60-90899号公報に開示された手法等、酸素をドープする既知の手法が200mm以上の直径を有するシリコン単結晶に対して機能しないとはいえないことから、請求人が回答書で述べているように、当業者が認識するとおりCZシリコン単結晶と酸素をドープされたFZシリコン単結晶とは区別することができないということになる。加えて、請求人は、酸素をドープされた少なくとも200mmの直径を有するFZシリコン単結晶と上記周知発明の単結晶とが、含有酸素量の点で有意に異なることの具体的な証拠も示していない。
よって、本願発明の単結晶のうち「酸素をドープ」した単結晶と周知発明の単結晶とは含有酸素量では区別できないことになり、上記製造方法の特定に係る相違点が単結晶にもたらす実質的な相違点とはならないことになる。

(4)まとめ
したがって、上記イの点において、上記相違点は実質的な相違点とはならないことから、本願発明は、引用文献1?4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、あるいは、本願発明は特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないことから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-18 
結審通知日 2018-01-23 
審決日 2018-02-06 
出願番号 特願2014-88956(P2014-88956)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C30B)
P 1 8・ 113- WZ (C30B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 園子  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 三崎 仁
瀧口 博史
発明の名称 フロートゾーン法により製造したシリコン単結晶及びシリコン基板  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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