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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03F
管理番号 1341752
審判番号 不服2016-17574  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-25 
確定日 2018-06-27 
事件の表示 特願2014-549555「帯域幅が拡張されたドハティ電力増幅器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 4日国際公開、WO2013/098639、平成27年 3月 2日国内公表、特表2015-506615〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2012年12月12日(パリ条約による優先権 国際事務局受理 2011年12月29日 中国(CN))を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成27年 8月 7日(起案日)
意見書 :平成28年 2月12日
手続補正 :平成28年 2月12日
拒絶査定 :平成28年 7月21日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成28年11月25日
手続補正 :平成28年11月25日
補正却下の決定 :平成29年 9月25日(起案日)
拒絶理由通知(最後) :平成29年 9月25日(起案日)
意見書 :平成29年12月25日
手続補正 :平成29年12月25日

第2 平成29年12月25日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成29年12月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正

平成29年12月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、請求項1については、本件補正前に、
「 【請求項1】
ドハティ電力増幅器であって、前記ドハティ電力増幅器の入力信号が入力される入力電力分配器を備え、前記入力電力分配器の一方の出力がキャリア増幅器に接続され、前記分配器の他方の出力が、第1の1/4波長線路に接続され、前記第1の1/4波長線路の他方端がピーキング増幅器に接続され、前記キャリア増幅器の一方端が第2の1/4波長線路に接続され、前記第2の1/4波長線路の他方端が前記ピーキング増幅器に接続され、前記第2の1/4波長線路と前記ピーキング増幅器との間の接合点にミキサが設けられ、該接合点が前記ドハティ電力増幅器の信号出力点であり、
前記ミキサのインピーダンスが一定値に維持されるように、前記ピーキング増幅器の特性インピーダンス及び前記第2の1/4波長線路の特性インピーダンスを変更するように構成された、
ドハティ電力増幅器。」
とあったところを、

本件補正後、
「 【請求項1】
ドハティ電力増幅器であって、
前記ドハティ電力増幅器の入力信号が入力される入力電力分配器を備え、
前記入力電力分配器の一方の出力がキャリア増幅器に接続され、
前記分配器の他方の出力が、第1の1/4波長線路に接続され、
前記第1の1/4波長線路の他方端がピーキング増幅器に接続され、
前記キャリア増幅器の一方端が第2の1/4波長線路に接続され、
前記第2の1/4波長線路の他方端が前記ピーキング増幅器に接続され、
前記第2の1/4波長線路と前記ピーキング増幅器との間の接合点にミキサが設けられ、該接合点が前記ドハティ電力増幅器の信号出力点であり、該ミキサの回路部は、1つのみの該第2の1/4波長線路と接続され、
前記ミキサのインピーダンスが一定値に維持されるように、前記ピーキング増幅器の特性インピーダンス及び前記第2の1/4波長線路の特性インピーダンスを変更するように構成された、
ドハティ電力増幅器。」
とするものである。

上記本件補正の内容は、請求項1について、発明特定事項である「ミキサ」について「該ミキサの回路部は、1つのみの該第2の1/4波長線路と接続され、」と限定したものである。
本件補正は、発明特定事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。

2.引用例

当審の拒絶理由通知に引用した国際公開第2008/035396号(2008年3月27日国際公開、以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【0001】
本発明は、携帯端末などの移動通信端末に適用できる電力増幅装置に関し、特に、マルチキャリア信号を送受信するマルチキャリア方式の携帯端末に適用できるドハティ増幅器からなる電力増幅装置に関する。」

(2)「【0010】
本発明の目的は、このような事情に鑑みてなされたもので、ドハティ増幅器を構成するλ/4伝送線路の個数を削減して小型化を図った電力増幅装置を提供することである。」

(3)「【0015】
〈発明の概要〉
本発明の電力増幅装置においては、従来のドハティ増幅器においては必要であった負荷に直列の35Ωの第三のλ/4伝送線路を削除し、キャリア増幅器の出力側にある第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスを、例えば50Ωから、(50×2^(1/2)=)71Ωに大きくする。さらに、ピーク増幅器の出力側にあるピーク増幅器出力整合回路を100Ωに整合するように最適化する。これによって、ドハティ増幅器の高効率特性と安定動作を維持しながら、λ/4伝送線路を1個削減して小型化を図った電力増幅装置を実現することが可能となる。」

(4)「【0017】
〈実施の形態1〉
図2は、本発明の実施の形態1に係る電力増幅装置の構成を示すブロック図である。図2に示す電力増幅装置100は、分配器101、キャリア増幅器入力整合回路102、キャリア増幅器103、キャリア増幅器出力整合回路104、第一のλ/4伝送線路105、第二のλ/4伝送線路106、ピーク増幅器入力整合回路107、ピーク増幅器108、及びピーク増幅器出力整合回路109によって構成され、負荷111に接続されている。」

(5)「【0018】
分配器101は、RF信号の入力電力を二系統に分配する機能を有し、キャリア増幅器入力整合回路102はキャリア増幅器103の入力側インピーダンスを整合させる機能を有している。第一の増幅器であるキャリア増幅器103は、通常はAB級増幅器で構成され、分配器101によって分配された第一系統の出力電力を増幅する機能を有している。キャリア増幅器出力整合回路104は、キャリア増幅器103の出力側インピーダンスを整合させる機能を有している。第一のλ/4伝送線路105は、キャリア増幅器103の出力電力の位相を90度シフトしてピーク増幅器108の出力電力と合成する機能を有している。」

(6)「【0019】
第二のλ/4伝送線路106は、分配器101によって分配された第二系統の出力電力の位相を90度シフトする機能を有し、ピーク増幅器入力整合回路107は、ピーク増幅器108の入力側インピーダンスを整合させる機能を有している。第二の増幅器であるピーク増幅器108は、通常は負荷特性に強いC級増幅器で構成され、位相が90度シフトされた第二のλ/4伝送線路106の出力電力があらかじめ規定されたレベル以上のときに増幅をする機能を有している。ピーク増幅器出力整合回路109は、ピーク増幅器108の出力側インピーダンスを整合させる機能を有している。なお、キャリア増幅器103とピーク増幅器108の電力容量は同じ(つまり、両者の電力容量は1対1)である。」

上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。

(a)引用例には、「ドハティ増幅器からなる電力増幅装置」が記載されている(摘示事項(1))。

(b)電力増幅装置100の入力電力が入力される分配器101を備える(摘示事項(4)、図2)。

(c)分配器101によって分配された第一系統の出力電力がキャリア増幅器入力整合回路102を介してキャリア増幅器103に接続される(摘示事項(4)、図2)。

(d)キャリア増幅器103の出力電力がキャリア増幅器出力整合回路104を介して第一のλ/4伝送線路105に接続される(摘示事項(4)、図2)。

(e)分配器101によって分配された第二系統の出力電力が第二のλ/4伝送線路106に接続される(摘示事項(4)、図2)。

(f)第二のλ/4伝送線路106の出力電力がピーク増幅器入力整合回路107を介してピーク増幅器108に接続される(摘示事項(4)、図2)。

(g)第一のλ/4伝送線路105の出力電力とピーク増幅器出力整合回路109を介したピーク増幅器108の出力電力とがC点において合成されて負荷111に接続される(摘示事項(4)、図2)。

(h)従来のドハティ増幅器においては必要であった負荷に直列の35Ωの第三のλ/4伝送線路を削除し、キャリア増幅器の出力側にある第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスを、例えば50Ωから、(50×2^(1/2)=)71Ωに大きくする。さらに、ピーク増幅器の出力側にあるピーク増幅器出力整合回路を100Ωに整合するように最適化する(摘示事項(3))。

以上を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「ドハティ増幅器からなる電力増幅装置であって、
電力増幅装置100の入力電力が入力される分配器101を備え、
分配器101によって分配された第一系統の出力電力がキャリア増幅器入力整合回路102を介してキャリア増幅器103に接続され、
キャリア増幅器103の出力電力がキャリア増幅器出力整合回路104を介して第一のλ/4伝送線路105に接続され、
分配器101によって分配された第二系統の出力電力が第二のλ/4伝送線路106に接続され、
第二のλ/4伝送線路106の出力電力がピーク増幅器入力整合回路107を介してピーク増幅器108に接続され、
第一のλ/4伝送線路105の出力電力とピーク増幅器出力整合回路109を介したピーク増幅器108の出力電力とがC点において合成されて負荷111に接続され、
従来のドハティ増幅器においては必要であった負荷に直列の35Ωの第三のλ/4伝送線路を削除し、キャリア増幅器の出力側にある第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスを、例えば50Ωから、(50×2^(1/2)=)71Ωに大きくし、さらに、ピーク増幅器の出力側にあるピーク増幅器出力整合回路を100Ωに整合するように最適化した、
ドハティ増幅器からなる電力増幅装置。」

3.対比・判断

そこで、本件補正発明と引用発明とを対比する。

(1)ドハティ電力増幅器
引用発明は、「ドハティ増幅器からなる電力増幅装置」であるから、本件補正発明と引用発明とは、「ドハティ電力増幅器であ」る点で一致する。

(2)入力電力分配器
引用発明は、電力増幅装置100の入力電力が入力される分配器101を備えるから、本件補正発明と引用発明とは、「前記ドハティ電力増幅器の入力信号が入力される入力電力分配器を備え」る点で一致する。

(3)キャリア増幅器
引用発明のキャリア増幅器入力整合回路102はキャリア増幅器103の入力側インピーダンスを整合させる機能を有しており、キャリア増幅器出力整合回路104は、キャリア増幅器103の出力側インピーダンスを整合させる機能を有している(摘示事項(5))。一方、本件補正発明のキャリア増幅器も入力整合回路及び出力整合回路を有することは明らかである。
したがって、引用発明の「キャリア増幅器入力整合回路102、キャリア増幅器103及びキャリア増幅器出力整合回路104」は、本件補正発明の「キャリア増幅器」といえる。
そして、引用発明は、分配器101によって分配された第一系統の出力電力がキャリア増幅器入力整合回路102を介してキャリア増幅器103に接続されるから、本件補正発明と引用発明とは、「前記入力電力分配器の一方の出力がキャリア増幅器に接続され」る点で一致する。

(4)第1の1/4波長線路
引用発明は、分配器101によって分配された第二系統の出力電力が第二のλ/4伝送線路106に接続される。一方、本件補正発明は、分配器の他方の出力が、第1の1/4波長線路に接続される。
したがって、引用発明の「第二のλ/4伝送線路106」は、本件補正発明の「第1の1/4波長線路」といえる。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記分配器の他方の出力が、第1の1/4波長線路に接続され」る点で一致する。

(5)ピーキング増幅器
引用発明のピーキング増幅器入力整合回路107はピーキング増幅器108の入力側インピーダンスを整合させる機能を有しており、ピーキング増幅器出力整合回路109は、ピーキング増幅器108の出力側インピーダンスを整合させる機能を有している(摘示事項(6))。一方、本件補正発明のピーキング増幅器も入力整合回路及び出力整合回路を有することは明らかである。
したがって、引用発明の「ピーキング増幅器入力整合回路107、ピーキング増幅器108及びピーキング増幅器出力整合回路109」は、本件補正発明の「ピーキング増幅器」といえる。
そして、引用発明は、第二のλ/4伝送線路106の出力電力がピーク増幅器入力整合回路107を介してピーク増幅器108に接続されるから、本件補正発明と引用発明とは、「前記第1の1/4波長線路の他方端がピーキング増幅器に接続され」る点で一致する。

(6)第2の1/4波長線路
引用発明は、キャリア増幅器103の出力電力がキャリア増幅器出力整合回路104を介して第一のλ/4伝送線路105に接続される。一方、本件補正発明は、キャリア増幅器の一方端が第2の1/4波長線路に接続される。
したがって、引用発明の「第一のλ/4伝送線路105」は、本件補正発明の「第2の1/4波長線路」といえる。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記キャリア増幅器の一方端が第2の1/4波長線路に接続され」る点で一致する。

(7)ミキサ
引用発明は、第一のλ/4伝送線路105の出力電力とピーク増幅器出力整合回路109を介したピーク増幅器108の出力電力とがC点において合成されて負荷111に接続されるから、C点がミキサとしての機能を有することは明らかであって、C点は、「ミキサの回路部」ともいえる。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記第2の1/4波長線路の他方端が前記ピーキング増幅器に接続され、前記第2の1/4波長線路と前記ピーキング増幅器との間の接合点にミキサが設けられ、該接合点が前記ドハティ電力増幅器の信号出力点であ」る点で一致する。
そして、C点に接続されるλ/4伝送線路は第一のλ/4伝送線路105のみであるから、本件補正発明と引用発明とは、「該ミキサの回路部は、1つのみの該第2の1/4波長線路と接続され」る点でも一致する。

(8)ピーキング増幅器の特性インピーダンスと第2の1/4波長線路の特性インピーダンス
引用発明は、従来のドハティ増幅器においては必要であった負荷に直列の35Ωの第三のλ/4伝送線路を削除するから、負荷111のインピーダンスは変換されない。そして、この構成に適するように、キャリア増幅器の出力側にある第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスを、例えば50Ωから、(50×2^(1/2)=)71Ωに大きくし、さらに、ピーク増幅器の出力側にあるピーク増幅器出力整合回路を100Ωに整合するように最適化する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記ミキサのインピーダンスが一定値に維持されるように、前記ピーキング増幅器の特性インピーダンス及び前記第2の1/4波長線路の特性インピーダンスを変更するように構成された」点で一致する。

そうすると、本件補正発明と引用発明とは、すべての点で一致し、相違点を有しない。

したがって、本件補正発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

平成29年12月25日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成28年2月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.引用例

当審の拒絶理由通知に引用した引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、上記「第2[理由]3.」で検討した本件補正発明から、発明特定事項である「ミキサ」について「該ミキサの回路部は、1つのみの該第2の1/4波長線路と接続され、」との構成を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]3.」に記載したとおり、引用例に記載された発明であるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明である。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-26 
結審通知日 2018-01-30 
審決日 2018-02-13 
出願番号 特願2014-549555(P2014-549555)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (H03F)
P 1 8・ 113- WZ (H03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 緒方 寿彦  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 國分 直樹
関谷 隆一
発明の名称 帯域幅が拡張されたドハティ電力増幅器  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  

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