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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1341798
審判番号 不服2017-7031  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-16 
確定日 2018-07-03 
事件の表示 特願2015-112261「流体ジェット切断方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日出願公開、特開2015-206367〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2006年(平成18年)6月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年(平成17年)6月14日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2008-517015号(以下、「原々出願」という。)の一部を平成24年10月4日に新たな特許出願とした特願2012-222343号の一部を平成27年6月2日にさらに新たな特許出願としたものであって、平成27年6月2日に上申書が提出され、平成28年1月18日に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成28年3月2日付けで拒絶理由が通知され、平成28年8月5日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成29年1月10日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成29年5月16日に拒絶査定不服審判が請求され、平成29年6月30日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成28年8月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「ハウジングと、
前記ハウジング内に弾性的に取付けられた脆弱触媒支持構造と、
前記脆弱触媒支持構造を前記ハウジング内に弾性的に保持するために、前記ハウジングと前記脆弱触媒支持構造との間のギャップの中に配置された流体ジェット切断無機繊維取付けマットと、を含み、
前記流体ジェット切断無機繊維取付けマットは、アルミナ繊維、アルミノシリケート繊維、カルシア-マグネシア-シリカ繊維、マグネシア-シリカ繊維、カルシア-アルミナ繊維、ミネラルウール繊維、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つを含み、
前記流体ジェット切断無機繊維取付けマットの流体ジェット切断縁面の少なくとも一部分に有機ポリマー材料を含む密封コーティングが付着しており、前記密封コーティングは、均一なコーティングとして、前記流体ジェット切断無機繊維取付けマットの全流体ジェット切断縁面上に付着する、
ことを特徴とする排気ガス処理装置。」

3.引用文献
(1)引用文献1
ア.引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原々出願の優先日前に頒布された引用文献である特開2002-348740号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「アルミナ-シリカ系繊維及びその製造方法、触媒コンバータ用保持シール材」に関し、図面とともに次の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミナーシリカ系繊維及びその製造方法、触媒コンバータ用保持シール材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、車両用、特に自動車の動力源として、ガソリンや軽油を燃料とする内燃機関が百年以上にわたり用いられてきた。しかしながら、排気ガスが健康や環境に害を与えることが次第に問題となってきている。それゆえ、最近では排気ガス中に含まれているCO、NOx、HC等を除去する排気ガス浄化用触媒コンバータや、PM等を除去するDPFが各種提案されるに至っている。通常の排気ガス浄化用触媒コンバータは、触媒担持体と、前記触媒担持体の外周を覆う金属製シェルと、両者間のギャップに配置される保持シール材とを備えている。触媒担持体としてはハニカム状に成形したコージェライト担体が用いられており、それには白金等の触媒が担持されている。
【0003】また最近では、石油を動力源としない次期のクリーンな動力源の研究が進められており、そのうち特に有望なものとして例えば燃料電池がある。燃料電池とは、水素と酸素とが反応して水ができる際に得られる電気を、動力源として用いるものである。酸素は空気中からじかに取り出される反面、水素についてはメタノール、ガソリン等を改質して用いている。この場合、メタノール等の改質は触媒反応によって行われる。そして、このような燃料電池にも、触媒担持体と、触媒担持体の外周を覆う金属製シェルと、両者間のギャップに配置される保持シール材とを備える燃料電池用触媒コンバータが用いられている。触媒担持体としてはハニカム状に成形したコージェライト担体が用いられており、それには銅系の触媒が担持されている。
【0004】上記の触媒コンバータを製造する方法をここで簡単に説明しておく。まず、熔融法によりアルミナ-シリカ系繊維を紡糸した後、そのアルミナ-シリカ系繊維をマット状に集合させてなる材料を作製する。この材料を金型で打ち抜くことによって、帯状の保持シール材を作製する。次に、この保持シール材を触媒担持体の外周面に巻き付けた後、金属製シェル内に前記触媒担持体を収容する。その結果、所望の触媒コンバータが完成する。このような収容状態において保持シール材は厚さ方向に圧縮されるため、保持シール材にはその圧縮力に抗する反発力(面圧)が生じる。そして、この反発力が作用することにより、触媒担持体が金属製シェル内に保持されるようになっている。」(段落【0001】ないし【0004】)

(イ)「【0024】図3に示されるように、本実施形態の触媒コンバータ1は、基本的に、触媒担持体2と、触媒担持体2の外周を覆う金属製シェル3と、両者2,3間のギャップに配置される保持シール材4とによって構成されている。
【0025】前記触媒担持体2は、コージェライト等に代表されるセラミック材料を用いて作製されている。この触媒担持体2は断面円形状をした柱状部材となっている。また、触媒担持体2は、軸線方向に沿って延びる多数のセル5を有するハニカム構造体であることが好ましい。セル壁には排気ガス成分を浄化しうる白金やロジウム等の貴金属系触媒が担持されている。なお、触媒担持体2として、上記のコージェライト担体のほかにも、例えば炭化珪素、窒化珪素等のハニカム多孔質焼結体等を用いてもよい。
【0026】前記金属製シェル3としては、例えば組み付けに際して圧入方式を採用する場合には、断面O字状の金属製円筒部材が用いられる。なお、円筒部材を形成するための金属材料としては、耐熱性や耐衝撃性に優れた金属(例えばステンレス等のような鋼材等)が選択されることがよい。圧入方式に代えていわゆるキャニング方式を採用する場合には、前記断面O字状の金属製円筒部材を軸線方向に沿って複数片に分割したもの(即ちクラムシェル)が用いられる。
【0027】そのほか、組み付けに際して巻き締め方式を採用する場合には、例えば断面C字状ないしU字状の金属製円筒部材、言い換えるといわば軸線方向に沿って延びるスリット(開口部)を1箇所にのみ有する金属製円筒部材が用いられる。この場合、触媒担持体2の組み付けに際し、触媒担持体2に保持シール材4を固定したものを金属製シェル3内に収め、その状態で金属製シェル3を巻き締めた後に開口端が接合(溶接、接着、ボルト締め等)される。溶接、接着、ボルト締め等といった接合作業は、キャニング方式を採用したときにも同様に行われる。
【0028】図1に示されるように、この保持シール材4は長尺状のマット状物であって、その一端には凹状合わせ部11が設けられ、他端には凸状合わせ部12が設けられている。図2に示されるように、触媒担持体2への巻き付け時には、凸状合わせ部12が凹状合わせ部11にちょうど係合するようになっている。
【0029】本実施形態の保持シール材4は、マット状に集合したセラミック繊維(即ち繊維集合体)を主要な要素として構成されたものである。前記セラミック繊維として、本実施形態ではアルミナ-シリカ系繊維6が用いられている。この場合、ムライト結晶含有量が0重量%以上かつ10重量%以下のアルミナ-シリカ系繊維6を用いることがより好ましい。このような化学組成であると、非晶質成分が少なくなることから耐熱性に優れたものとなり、かつ圧縮荷重印加時の反発力が高いものとなるからである。従って、ギャップに配置された状態で高温に遭遇したときであっても、発生する面圧の低下が比較的起こりにくくなる。」(段落【0024】ないし【0029】)

(ウ)「【0043】続いて、上記の各工程を経て得られたアルミナ-シリカ系繊維6の長繊維を所定長さにチョップしてある程度短繊維化する。この後、短繊維を集綿、解繊及び積層することにより、あるいは、短繊維を水に分散させて得た繊維分散液を成形型内に流し込んで加圧・乾燥することにより、マット状の繊維集合体を得る。さらに、この繊維集合体を所定形状に打ち抜き、黒系色の保持シール材4とする。
【0044】この後、必要に応じて保持シール材4に対する有機バインダの含浸を行った後、さらに保持シール材4を厚さ方向に圧縮成形してもよい。この場合の有機バインダとしては、アクリルゴムやニトリルゴム等のようなラテックス等のほか、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂等が挙げられる。」(段落【0043】及び【0044】)

イ.引用発明
上記ア.及び図面の記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
<引用発明>
「金属製シェル3と、
前記金属製シェル3内に反発力が作用するように取付けられたハニカム状に成形したコージェライト担体である触媒担持体2と、
前記触媒担持体2を前記金属製シェル3内に反発力が作用するように保持するために、前記金属製シェル3と前記触媒担持体2との間のギャップの中に配置された金型打ち抜きで作製されたアルミナ-シリカ系繊維からなる保持シール材4と、を含む、
排気ガス浄化用触媒コンバータ。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原々出願の優先日前に頒布された引用文献である特開平6-287864号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「無機質繊維成形体」に関し、図面とともに次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は無機質繊維成形体の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、無機質繊維成形体は、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維、例えばムライト繊維、アルミナ繊維あるいはジルコニア繊維の多結晶繊維等から選んだ1種以上の繊維を含有して成形する成形体である。具体的には、例えば、ブランケット、フェルト、ボード、成型品、積層体、ペーパー、クロス、ロープが製造されている。
【0003】工業加熱炉の内張材として使用されている無機質繊維成形体としては、ブランケット、ブランケットを積層して作成した積層体、さらにこの積層体の端面に金属製の支持体に配設された成形体が提案されている(特開平3-13789)。
【0004】また、粉塵の発生を抑えるものとしては、セラミックファイバーに表面活性剤を吹き付けてニードルパンチ加工した無機質繊維ブランケットが提案されている(特開昭51-82306)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の無機質繊維成形体は、これを加工するとき、炉壁断熱材として施工するとき、または運搬等の取り扱いの際に、強い衝撃を受けると、無機質繊維成形体に含まれる微細な繊維および粒子が粉塵となって飛散して周囲の環境を悪化させる欠点があった。」(段落【0001】ないし【0005】)

(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原々出願の優先日前に頒布された引用文献である特開平6-294071号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「無機繊維の皮膚刺激及び飛散の防止方法」に関し、次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ガラス繊維、セラミック繊維、ロックウール、炭素繊維、炭化ケイ素繊維その他の無機繊維の製造、加工又は使用に際して起こる、繊維による皮膚刺激及び繊維の飛散の防止に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】無機繊維は今日多種多様のものが知られており、各種の複合材料を構成する補強材として、また、不燃材、耐熱材、断熱材、防音材等として広く使用されている。これら無機繊維は、それぞれの用途に応じて、製造、加工の工程において適当な長さに裁断され、例えば短い繊維、糸、クロス、マット等の種々の形態に作られている。またこれらの使用に際しては、例えば、クロス、マット等は使用部位の形状や大きさ等に合わせて適宜裁断する必要があるほか、マット等の端面を使用する場合等にはそれらの端面処理をも行う必要がある。
【0003】これら無機繊維は、裁断により各繊維の末端が鋭く尖った形状となる傾向が強く、このため各繊維末端が皮膚に触れた場合皮膚を刺して、痒みやちくちくする痛みを引き起こす。無機繊維の製造、加工及び使用の現場においては、繊維との直接接触や繊維の飛散による皮膚等への付着によって、このような痒みや痛み等の皮膚刺激が引き起こされることは日常的に認められているが、このような皮膚刺激は、無機繊維の製造、加工及び使用における作業環境を劣悪化する。」(段落【0001】ないし【0003】)

(4)引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原々出願の優先日前に頒布された引用文献である特開昭56-9472号公報(以下、「引用文献4」という。)には、「繊維質断熱材の切断方法」に関し、図面とともに次の記載がある。 なお、全角半角等の文字の大きさ、書体、句読点、促音、拗音等については、記載内容を損なわない限りで適宜表記した。
(ア)「本発明はグラスウールのような繊維質断熱材の切断方法に関するものであって、更に詳述すれば、長尺のグラスウールマット(1)をウォータージェット(2)で定尺に切断すると同時にウォータージェット(2)に吸引させた樹脂バインダー(3)をグラスウールマット(1)の切断面(4)に吹付けることを特徴とする繊維質断熱材の切断方法に係るものである。 従来、グラスウールマットのような繊維質断熱材を定尺に切断するには押切り刃や丸鋸等を用いていたが、切断時や施工時に切断面から多数の繊維が飛散して作業者の皮膚を刺激するので作業性が悪いという欠点があり、また施工後にも切断面から短い繊維などが抜け出しやすかった。一方、切断したグラスウールマットをポリエチレン製の袋で包んで繊維の飛散を防止する方法もあるが、グラスウールマットの内部で結露した水分が袋に阻まれて外部に蒸発しにくいので断熱性が低下しやすいという欠点があった。
本発明は上述した欠点を解消するものであり、その目的とするところは長尺のグラスウールマットをウォータージェットで定尺に切断すると同時にウォータージェットに吸引させた樹脂バインダーをグラスウールの切断面に吹付けることにより、グラスウールマットを切断すると同時に切断面を樹脂バインターで被覆して切断面のグラスウール繊維を固着することができ、切断時に切断面からグラスウール繊維が飛散するのを樹脂バインダーで防止できるから作業性が向上し、更に施工時や施工後においてもグラスウール繊維が飛散することがない繊維質断熱材の切断方法を提供するにある。」(第1ページ左下欄第11行ないし第2ページ左上欄第2行)

(イ)「更にグラスウールマット(1)だけでなくその他の繊維質断熱材の切断にも利用できるものである。」(第2ページ右下欄第9ないし11行)

(5)引用文献5
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原々出願の優先日前に頒布された引用文献である米国特許第6103049号明細書(以下、「引用文献5」という。)には、「METHOD AND APPARATUS FOR CUTTING, SEALING AND ENCAPSULATED FIBROUS PRODUCTS(和訳:繊維製品の切断、封止及び封入のための方法及び装置)」に関し、図面とともに次の記載がある。なお、当審にて和訳した。
(ア)「BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a method of and apparatus for cutting fibrous products and, in particular, to a method of and apparatus for cutting, sealing and encapsulating fibrous products so that dust and/or short lengths of fiber created by the cutting of the fibrous product will be retained in the fibrous product.
In the manufacture of fibrous products, such as,・・・ fiber glass mat products and other fibrous products, the product must be cut and/or trimmed at certain stages of the manufacturing operation. Examples of such products are ・・・fiber glass insulation, ・・・ fiber glass mat board and carpeting. ・・・
・・・
SUMMARY OF THE INVENTION
The method and apparatus of the present invention provide an effective and efficient way to cut and trim fibrous products which greatly reduces or minimizes the problems associated with the creation of dust and short length fibers during a cutting or trimming operation. The method and apparatus of the present invention cut and trim fibrous products with a high energy water jet containing a sealant that seals the edges of the kerf created by the cutting operation and encapsulates the dust and short length fibers within the fibrous product. 」(第1欄第5行ないし第53行)
(和訳)
発明の背景
本発明は、繊維製品の切断方法及び装置に係り、特に、繊維製品の切断により発生した繊維の粉塵ないし短繊維を、シールし、及び封じ込めて、繊維製品内に留まるようにする繊維製品の切断方法及び装置に係る。
ガラス繊維マット製品及び他の繊維製品等の製造においては、製品は所定の工程において切断ないしトリミングする必要がある。そのような製品の例は、・・・ガラス繊維断熱材、ガラス繊維マットボードとカーペット、・・・である。
・・・
発明の要旨
本発明の方法及び装置は、繊維製品を切断及びトリミングする効果的かつ能率的な手法を提供し、それにより、切断及びトリミング時に発生する粉塵及び短繊維に関する問題を格段に低減し最小化する。本発明の方法及び装置は、切断工程によって生じる切り口の縁をシールするシーラントを含む高エネルギのウォータージェットにより繊維製品を切断及びトリミングして繊維製品の内部に粉塵及び短繊維を封じ込める。

(イ)「The sealant (in powdered or liquid form) is drawn into and mixes with the water jet formed in the mixing chamber 36 and is further mixed with and dissolved in the water as the water and sealant pass through the mixing tube 38. The nozzle discharge orifice 40 is typically about 0.001 to about 0.050 inches in diameter and the water sealant solution is discharged from the nozzle discharge orifice as a high energy, focused liquid jet 71 which is directed at and cuts the fibrous work piece.」(第3欄第14行ないし第22行)
(和訳)
(粉末または液体の)シーラントは混合室36内のウォータージェットに吸引及び混合され、水及びシーラントが混合管38を通過する際に、さらに混合され、水に溶解する。ノズル吐出口40の直径は通常、約0.001ないし約0.050インチであり、水とシーラントの溶液は、高エネルギーの収束した液体ジェット71としてジェットノズル吐出口から吐出し、繊維状ワークピースに向けられて、これを切断する。

(ウ)「As the focused, high energy liquid jet 71 contacts the fibrous work piece, the jet erodes away portions of the fibers in its path and forms the cut or kerf 106 in the work piece. At the same time the work piece is being cut, sealant from the high energy liquid jet 71 is being deposited on the edges of the kerf 106 to seal the edges and encapsulate dust and short lengths of fibers created by the cutting operation. 」(第6欄第55行ないし61行)
(和訳)
収束した高エネルギー液体ジェット71が繊維状ワークピースに接触すると、ジェットがジェットの経路内にある繊維の一部を摩滅し、ワークピースに切れ目ないし切り口106を形成する。ワークピースが切断されると同時に、高エネルギ液体ジェット71のシーラントは、切り口106の縁をシールするために縁に付着し、切断作業により生じた粉塵や短繊維を封じ込める。

(エ)「In describing the invention certain embodiments have been used to illustrate the invention and the practice thereof. However, the invention is not limited to these specific embodiments as other embodiments and modifications within the spirit of the invention will readily occur to those skilled in the art on reading this specification. Thus, the invention is not intended to be limited to the specific embodiments disclosed, but is to be limited only by the claims appended hereto.」(第8欄第36行ないし第44行)
(和訳)
本発明の説明にあたって、本発明及びその実施の説明のために特定の実施形態が使用されている。しかし、本発明は、これらの具体的な実施形態に限られるものではなく、当業者であれば、本明細書に基づいて、本発明の技術思想の範囲内にある他の実施形態及び変形形態をたやすく想起できる。このように、本発明は開示された具体的な実施形態に限られるものではなく、クレームのみによって制約される。

(6)引用文献6
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原々出願の優先日前に頒布された引用文献である特開2000-96355号公報(以下、「引用文献6」という。)には、「短繊維の製造方法」に関し、次の記載がある。
(ア)「【0018】
【発明の実施の形態】本発明において用いられる繊維束を構成する繊維は特に制限は無く、公知の各種有機合成繊維、無機繊維等を用いることができる。
【0019】有機合成繊維としては、セルロース系繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド系繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリビニールアルコール繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリアリレート系繊維等の公知の合成繊維が挙げられる。
【0020】無機繊維材質としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、炭素繊維等が挙げられる。さらに、これらにニッケル、アルミニウム、銅等の金属をコーティングした金属被覆炭素繊維等が挙げられる。」(段落【0018】ないし【0020】)

(イ)「【0026】一本の繊維束を構成する繊維フィラメントの数が多くなればなるほど、束自体は太くなり、これに伴って切断する際の繊維束の厚みが厚くなるほど切断はしにくくなる。この様な場合には高圧水噴射ノズルの走査速度を遅くすることで切断可能となるため、適宜繊維束の厚みを調整するか、ノズル走査速度または繊維束の走査速度を調整すれば良い。繊維束の厚みは、繊維の材料にも依存するが、一般的には0.1?10mm程度であり、炭素繊維については0.3?5mm、好ましくは、0.4?3mmである。」(段落【0026】)

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、その構造、機能又は技術的意義からみて、引用発明における「金属製シェル3」は本願発明における「ハウジング」に相当し、以下同様に、「反発力が作用するよう」は「弾性的」に、「ハニカム状に成形したコージェライト担体である触媒担持体2」は「脆弱触媒支持構造」に、「排気ガス浄化用触媒コンバータ」は「排気ガス処理装置」にそれぞれ相当する。
また、引用発明における「金型打ち抜きで作製されたアルミナ-シリカ系繊維からなる保持シール材4」と本願発明における「流体ジェット切断無機繊維取付けマット」は、「無機繊維取付けマット」という限りにおいて一致する。
したがって、本願発明の記載に倣って整理すると、本願発明と引用発明とは、
「ハウジングと、
ハウジング内に弾性的に取付けられた脆弱触媒支持構造と、
脆弱触媒支持構造をハウジング内に弾性的に保持するために、ハウジングと脆弱触媒支持構造との間のギャップの中に配置された無機繊維取付けマットと、を含む、排気ガス処理装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
無機繊維取付けマットに関して、
本願発明においては、「流体ジェット切断無機繊維取付けマット」であって、「流体ジェット切断無機繊維取付けマットは、アルミナ繊維、アルミノシリケート繊維、カルシア-マグネシア-シリカ繊維、マグネシア-シリカ繊維、カルシア-アルミナ繊維、ミネラルウール繊維、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つを含み、流体ジェット切断無機繊維取付けマットの流体ジェット切断縁面の少なくとも一部分に有機ポリマー材料を含む密封コーティングが付着しており、密封コーティングは、均一なコーティングとして、流体ジェット切断無機繊維取付けマットの全流体ジェット切断縁面上に付着する」のに対し、
引用発明においては、「金型打ち抜きで作製されたアルミナ-シリカ系繊維からなる保持シール材4」である点(以下、「相違点」という。)。

上記相違点について検討する。
まず、引用発明における「アルミナ-シリカ系繊維」は本願発明における「アルミナ繊維」ないし「アルミノシリケート繊維」に実質的に相当する。なお、排ガス処理装置において、取付けマットとしてこのような繊維を用いることは、例えば、特表2002-506166号公報(特に、特許請求の範囲の【請求項3】、段落【0003】及び【0008】)、及び、国際公開第2004/031544号(訳文として、特表2006-501402号公報参照。)(特に、第2ページ第1ないし4行及び第3ページ第26ないし28行(訳文の段落【0004】及び【0009】))に示されているように、本願の原々出願の優先日前に広く知られており、特別なものではない。
また、引用発明における「アルミナ-シリカ系繊維からなる保持シール材4」は「金型打ち抜き」のものであるが、このような無機質繊維成形体にあっては、その金型打ち抜き等の加工等の場合に微細な繊維及び粒子等が飛散して作業環境が劣悪化する等の課題があることは、例えば、引用文献2(特に、上記3.(2))、引用文献3(特に、上記3.(3))、引用文献4(特に、上記3.(4)(ア))に示されているように本願の原々出願の優先日前に広く知られている(以下、「周知課題」という。)。
してみると、引用発明において、周知課題が内在していることは、当業者にとって明らかである。
ここで、無機質等の繊維成形体の切断加工の手段が金型打ち抜きに限られるものでないことはいうまでもない。例えば、引用文献4(特に、上記3.(4)(ア)及び(イ))及び引用文献5(特に、上記3.(5)(ア)ないし(エ))には、グラスウール、ガラス繊維等からなる断熱材等の繊維質製品の切断加工に関するが、樹脂バインダないしシーラントを含むウォータージェットにより切断加工し、切断面ないし切り口に樹脂バインダないしシーラントが付着して微細な繊維等の飛散を防止することが開示されており(以下、「引用文献4等技術」という。)、その際、特段の事情がない限り、樹脂バインダないしシーラントが、均一なコーティングとして切断面ないし切り口の全面に付着することは、当業者にとって自明のことである。なお、アルミナ繊維の繊維束をノズルから噴射する高圧水により切断できることは、例えば、引用文献6(特に、上記3.(6)(ア)及び(イ))に示されているように本願の原々出願の優先日前に知られており、特別な技術ではない。
そうすると、引用発明において内在する周知課題を考慮し、切断加工の際に発生し得る微細な繊維等の飛散を防止するために、引用発明において引用文献4等技術を適用して、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、周知課題及び引用文献4等技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献4等技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.結語
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献4等技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-30 
結審通知日 2018-02-05 
審決日 2018-02-19 
出願番号 特願2015-112261(P2015-112261)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻田 正紀山田 由希子首藤 崇聡  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 佐々木 芳枝
金澤 俊郎
発明の名称 流体ジェット切断方法  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 山本 泰史  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 松下 満  
代理人 弟子丸 健  
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