ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F04D 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 F04D |
---|---|
管理番号 | 1341817 |
審判番号 | 不服2017-5476 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-17 |
確定日 | 2018-07-05 |
事件の表示 | 特願2014- 14867「立軸ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月 3日出願公開,特開2015-140750〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成26年1月29日の出願であって,平成27年11月25日付けで拒絶理由が通知され,平成28年1月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,平成28年7月11日付けで最後の拒絶理由が通知され,平成28年9月8日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,平成29年1月12日付けでこの手続補正についての補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定され,この査定に対し,平成29年4月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成29年4月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 平成29年4月17日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 1.補正の内容 1-1.本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の,平成28年1月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は,次のとおりである。 「【請求項1】 鉛直方向に沿って配置されて上端部が取付台に設置されると共に下端側に吸込口が設けられて側部に吐出口が設けられるケーシングと, 前記ケーシング内に鉛直方向に沿って配置される回転軸と, 前記回転軸の下端部に固定される羽根車と, 前記取付台の下方で支持台から延設して前記ケーシングの外周面を支持する支持部材と, を有し, 前記支持部材は,前記支持台に固定される支持ブラケットと,前記支持ブラケットに螺合して先端部が前記ケーシングの外周面に当接する支持ボルトとを有し, 前記ケーシングにおける前記支ボルトが当接する支持位置に肉厚部が設けられる, ことを特徴とする立軸ポンプ。 【請求項2】 前記支持部材は,前記ケーシングの周方向に均等間隔で複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。 【請求項3】 前記支持ボルトは,水平方向及び前記ケーシングの径方向に沿って設けられることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の立軸ポンプ。 【請求項4】 前記支持台は,前記ケーシングの外周面から所定距離だけ離間して配置されたリング形状をなし,前記支持ブラケットは,前記支持台の上面または下面または内周面に固定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の立軸ポンプ。 【請求項5】 前記ケーシングは,鉛直方向における複数の位置で前記支持部材により支持されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の立軸ポンプ。」 1-2.本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の記載は,次のとおり補正された(下線は補正箇所である。)。 「【請求項1】 鉛直方向に沿って配置されて上端部が取付台に設置されると共に下端側に吸込口が設けられて側部に吐出口が設けられるケーシングと, 前記ケーシング内に鉛直方向に沿って配置される回転軸と, 前記回転軸の下端部に固定される羽根車と, 前記取付台の下方で支持台に設けられた基礎から延設して前記ケーシングの外周面を支持する支持部材と, を有し, 前記基礎は,前記支持台を補強するためのものであり,前記支持部材は,前記基礎に固定される支持ブラケットと,前記支持ブラケットに螺合して先端部が前記ケーシングの外周面に当接する支持ボルトとを有し, 前記ケーシングにおける前記支持ボルトが当接する支持位置に肉厚部が設けられる, ことを特徴とする立軸ポンプ。 【請求項2】 前記支持部材は,前記ケーシングの周方向に均等間隔で複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。 【請求項3】 前記支持ボルトは,水平方向及び前記ケーシングの径方向に沿って設けられることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の立軸ポンプ。 【請求項4】 前記支持台は,前記ケーシングの外周面から所定距離だけ離間して配置されたリング形状をなし,リング形状をなして前記基礎が設けられ,前記支持ブラケットは,前記基礎の上面に固定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の立軸ポンプ。 【請求項5】 前記ケーシングは,鉛直方向における複数の位置で前記支持部材により支持されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の立軸ポンプ。」 2.補正の適否 2-1.目的要件について 本件補正が,特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。 (1)特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」は,特許法第36条第6項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。 そして,補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって,かつ,補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され,補正前の請求項と補正後の請求項とは,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。 (2)本件補正前の請求項1?5に記載された発明も,本件補正後の請求項1?5に記載された発明も,「立軸ポンプ」に係るものであり,本件補正前の請求項2?5において本件補正前の請求項1を直接的あるいは間接的に限定する請求項も,本件補正後の請求項2?5において本件補正後の請求項1を直接的あるいは間接的に限定する請求項も,引用関係が同じであるから,本件補正前の請求項1?5が本件補正後の請求項1?5にそれぞれ対応するものとして検討する。 (3)本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するための必要な事項である「支持台」を「支持台に設けられた基礎」と,「前記支持部材は,前記支持台に固定される支持ブラケット」を「前記基礎は,前記支持台を補強するためのものであり,前記支持部材は,前記基礎に固定される支持ブラケット」とする補正(以下,「当該補正」という。)を含むものである。 当該補正において,「基礎」は,本件補正前の請求項1には何ら記載されておらず,本件補正前の請求項1の発明特定事項から導き出されるものでもないから,当該補正は,請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく,さらに,当該補正により,基礎は,支持台を補強し,基礎は上部に支持部材が固定されることで,支持部材によりケーシングの外周面を強固に支持するという発明の新たな課題を解決するものである。 そうであれば,当該補正は,請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の解決しようとする課題が同一である「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものには該当しない。 (4)また,本件補正前の請求項1における当該補正のされた箇所の記載は,明りょうであって,拒絶理由において記載不備を指摘されたものでもないから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものではない。 そして,当該補正は,請求項の削除,誤記の訂正を目的としたものではないことも明らかである。 (5)したがって,当該補正を含む本件補正は,特許法第17条の2第5項各号に規定する「請求項の削除」,「特許請求の範囲の減縮」,「誤記の訂正」,「明りようでない記載の釈明」にいずれを目的としたものにも該当しないから,特許法第17条の2第5項の規定を満たしていない。 よって,本件補正は,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。 2-2.独立特許要件について 本件補正のうち請求項1に係る補正が,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると仮定した場合に,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について,以下に検討する。 (1)引用例の記載事項 (1-1)引用例1 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭53-80393号(実開昭54-181305号)のマイクロフィルム(以下,「引用例1」という。)には,図面と共に,次の記載がある。 (ア)「立軸型ポンプの揚水管が地震またはポンプ回転による共振により揺れて破損するのを防止するために,従来では第1図ないし第3図に図示するように,ポンプ吸水槽内にコンクリートまたは鉄構造物で振止め支持部(a)を形成し,同支持部(a)に振止め金具(b)をボルト(c)で固定し,周方向に亘り等間隔に複数個のジヤツキボルト(d)を中心に向かつて振止め金具(b)に螺合し,同ジヤツキボルト(d)の先端を揚水管(e)の外周面に押付け,ロツクナツト(f)でロツクするようにしていた。」(明細書1ページ13行?2頁7行) (イ)「以下本案を第4図ないし第8図に図示の実施例について説明すると,(1)は立軸型ポンプの揚水管で,同揚水管(1)は,据付床(2)の吐出エルボ(3)から下方へ吊下げられている。」(明細書5ページ5?8行) (ウ)第1図からみて,揚水管(e)が鉛直方向に沿って配置されており,下端側に吸込口が設けられ,上端の側部に吐出口が設けられていることが理解できる。また,前記(イ)及び第1図,第4図を参照すると,第1図の上方において斜線が付されて断面として描かれた部位は,「据付床」であり,第1図の揚水管(e)は,その上端部が,「据付床」に据付けられた「吐出エルボ」から下方へ吊下げられていることが理解できる。 (エ)第1図及び第2図からみて,「振止め支持部(a)」の「振止め金具(b)」を固定する部分は,他の部分より厚くされた振止め金具の支持部が設けられていること,及び,第1図からみて,「振止め支持部(a)」が「据付床」の下方にあることが理解できる。 (オ)第2図,第3図からみて,「振止め金具(b)に螺合されたジヤツキボルト(d)」が,振止め支持部(a)に設けられた他の部分より厚くされた振止め金具の支持部から延設されて,ジヤツキボルト(d)の先端部が「揚水管(e)」の外周面に押付けられることが理解できる。 (1-2)これらの記載事項からみて,引用例1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「鉛直方向に沿って配置されて,上端部が,据付床に据付けられた吐出エルボから下方へ吊下げられていると共に,下端側に吸込口が設けられて上端の側部に吐出口が設けられる揚水管(e)と, 前記据付床の下方で,振止め支持部(a)に設けられた他の部分より厚くされた振止め金具の支持部から延設されて,揚水管(e)の外周面に押付けられる,振止め金具(b)に螺合されたジヤツキボルト(d)と, を有し, 前記振止め金具(b)とジヤツキボルト(d)とは,振止め支持部(a)に設けられた他の部分より厚くされた前記振止め金具の支持部に固定される振止め金具(b)と,前記振止め金具(b)に螺合して先端部が前記揚水管(e)の外周面に押付けられるジヤツキボルト(d)とを有する, 立軸型ポンプ。」 (3)対比・判断 (3-1)対比 本件補正発明と引用発明とを対比すると,後者の「据付床」は前者の「取付台」に相当し,以下同様に,「揚水管(e)」は「ケーシング」に,「振止め支持部(a)」は「支持台」に,「振止め金具(b)に螺合されたジヤツキボルト(d)」及び「振止め金具(b)」は両方で「支持部材」に,「振止め金具(b)」は「支持ブラケット」に,「ジヤツキボルト(d)」は「支持ボルト」に,「立軸型ポンプ」は「立軸ポンプ」に,それぞれ相当する。 後者の「鉛直方向に沿って配置されて,上端部が,据付床に据付けられた吐出エルボから下方へ吊下げられていると共に,下端側に吸込口が設けられて上端の側部に吐出口が設けられる揚水管(e)」は前者の「鉛直方向に沿って配置されて上端部が取付台に設置されると共に下端側に吸込口が設けられて側部に吐出口が設けられるケーシング」に相当する。 後者の「前記据付床の下方で,振止め支持部(a)に設けられた他の部分より厚くされた振止め金具の支持部から延設されて,揚水管(e)の外周面に押付けられる,振止め金具(b)に螺合されたジヤツキボルト(d)」と前者の「前記取付台の下方で支持台に設けられた基礎から延設して前記ケーシングの外周面を支持する支持部材」とは,「前記取付台の下方で支持台に設けられた支持ブラケットの支持部から延設して前記ケーシングの外周面を支持する支持部材」の点で共通する。 後者の「前記振止め金具(b)とジヤツキボルト(d)とは,振止め支持部(a)に設けられた他の部分より厚くされた前記振止め金具の支持部に固定される振止め金具(b)と,前記振止め金具(b)に螺合して先端部が前記揚水管(e)の外周面に押付けられるジヤツキボルト(d)とを有」することと,前者の「前記支持部材は,前記基礎に固定される支持ブラケットと,前記支持ブラケットに螺合して先端部が前記ケーシングの外周面に当接する支持ボルトとを有」することとは,「前記支持部材は,支持台の支持ブラケットの支持部に固定される支持ブラケットと,前記支持ブラケットに螺合して先端部が前記ケーシングの外周面に当接する支持ボルトとを有」することにおいて共通する。 以上のことから,両者の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 <一致点> 鉛直方向に沿って配置されて上端部が取付台に設置されると共に下端側に吸込口が設けられて側部に吐出口が設けられるケーシングと, 前記取付台の下方で支持台に設けられた支持ブラケットの支持部から延設して前記ケーシングの外周面を支持する支持部材と, を有し, 前記支持部材は,前記支持台の支持ブラケットの支持部に固定される支持ブラケットと,前記支持ブラケットに螺合して先端部が前記ケーシングの外周面に当接する支持ボルトとを有する, 立軸ポンプ。 <相違点1> 立軸ポンプが,本件補正発明では,「ケーシング内に鉛直方向に沿って配置される回転軸」と「回転軸の下端部に固定される羽根車」とを有しているのに対し,引用発明では,「回転軸」や「羽根車」について特定していない点。 <相違点2> 支持台に設けられた支持ブラケットの支持部が,本件補正発明では,「基礎」であり,「支持台を補強するためのもの」であり,当該「基礎に」支持ブラケットが固定されるのに対し,引用発明では,振止め支持部(a)(本件補正発明の「支持台」に相当。)に設けられた他の部分より厚くされた振止め金具の支持部(本件補正発明の「基礎」と「支持ブラケットの支持部」である点で共通するもの。)である点。 <相違点3> 本件補正発明では,「ケーシングにおける支持ボルトが当接する支持位置に肉厚部が設けられる」のに対し,引用発明では,揚水管(e)(本件補正発明の「ケーシング」に相当。)におけるジヤツキボルト(d)(本件補正発明の「支持ボルト」に相当。)が押付けられる箇所(本件補正発明の「支持位置」に相当。)に肉厚部が設けられているとはいえない点。 (3-2)判断 <相違点1について> 引用発明における立軸型ポンプにおいても,明記はされてはいないが,回転軸や羽根車が設けられていることは自明である。 また,例えば,原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-120597号公報の段落【0002】に「図10に示す立軸ポンプPは,羽根車1を回転自在に収容したポンプケーシング2と,このポンプケーシング2の下側(上流側)に連通して水密に接続した吸込ベルマウス(吸込管)3と,ポンプケーシング2の上側(下流側)に連通して水密に接続した揚水管4と,揚水管4の上側に連通して水密に接続した吐出曲管5と,下端部に羽根車1{本件補正発明の「羽根車」に相当。}を固着して複数個の軸受(図示省略)により揚水管4{本件補正発明の「ケーシング」に相当。}の内部に回転自在に支持されるとともに,吐出曲管5を水密かつ回転自在に貫通して上方に延出したポンプ主軸7{本件補正発明の「回転軸」に相当。}とを備え,上側床部8と下側床部9を有する二床式排水ポンプ機場10のポンプ井11に設置される。」({}は当審で付与した。以下同様。)と記載され,他にも,特開平11-159491号公報の段落【0012】の記載事項と図1,5の図示内容からみて,立軸ポンプが吐出ケーシング7(本件補正発明の「ケーシング」に相当。)内に鉛直方向に沿って配置されるポンプ軸9(本件補正発明の「回転軸」に相当。)とポンプ軸9(本件補正発明の「回転軸」に相当。)の下端部に固定される羽根車1(本件補正発明の「羽根車」に相当。)とを有することが理解でき,立軸ポンプにおいて「ケーシング内に鉛直方向に沿って配置される回転軸」と「回転軸の下端部に固定される羽根車」とを有することは,周知技術(慣用構成)である。 そして,引用発明の立軸型ポンプ(立軸ポンプ)の回転軸や羽根車の構成として,立軸ポンプにおける当該周知技術(慣用構成)を採用することは,当業者が適宜なし得たことである。 <相違点2について> 請求人が審判請求書で補正の根拠として説明している本願明細書の段落【0045】の「上部支持部材123において,図2から図4に示すように,上部支持台121は,上面にグラウトによりリング形状をなして基礎131が設けられている。このグラウトは,上部支持台121を補強するための材料であって,セメントミルク,モルタル,合成樹脂などが用いられる。基礎131は,上部にリング形状をなす支持ブラケット132が固定されている。」という記載事項や図3,4の記載などからみて,本件補正発明は,基礎の上部に支持ブラケットが固定されるものにおいて,上部支持台を補強するための材料であるグラウトを用いて基礎を設けているものを実施例とするものである。 そして,立軸ポンプ等の機器を支持台に支持する際に、グラウト材を用いて基礎を設けるとともに,支持台を補強させるためのものとすることは,下記に示すように周知技術にすぎない。 (例えば,特開平9-158215号公報には,以下の記載がある。 「【0002】 【従来の技術】例えば,発電所などにおける蒸気タービン,ガスタービン,発電機等の回転機械などの大型機械は,一般にコンクリート製の強固な基礎台{本件補正発明の「支持台」に相当。}上に充分な強度と高い水平度の上面を持った基礎部{本件補正発明の「基礎」に相当。}を設置してその上に据え付けられる。基礎部は無収縮性のグラウト材を用いて基礎台上に形成される複数のパッドからなり,大型機械はそのパッド上の機械基板に載置され,アンカーボルト等により基礎台に固定して据え付けられる。」 特開平6-185075号公報には,以下の記載がある。 「【請求項1】 コンクリート基盤{本件補正発明の「支持台」に相当。}上1にパッド型枠2を配置すると共に,その上に機器据付用の基板3を配置した後,前記型枠2内に無収縮性グラウト材を充填し,前記基板3の基礎を形成する基礎工法において,・・・」 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は発電プラント等における機器据付用基板の下に配置した型枠内に無収縮性グラウト材を充填して基礎を形成する基礎工法に関する。 【0002】 【従来の技術】発電プラント等における機器,例えばタービンや発電機等の機器は,図1に例示する如く矩形に開口した強固なコンクリート基盤1上に基板3を介して据付けてられるが,その据付けに際しては十分な強度と安定性が要求されると共に,高い水平精度で据え付けなければならない。そのため基礎となる基板3も高い水平精度でコンクリート基盤に基礎打ちする必要がある。そこで従来から型枠と無収縮性グラウト材を使用してパッド7を成形し,高い水平精度で基板3をコンクリート基盤1に設置する方法が知られている。」 そして,引用発明の振止め金具の支持部は,振止め金具を確実に固着するために十分な強度のものとする必要性があるものと認識されるから,引用発明における立軸型ポンプ(立軸ポンプ)を支持するための振止め金具(支持ブラケット)の支持部に上記周知技術を適用して,グラウト材を用いた基礎を構成し,振止め支持部を補強したものとして,上記相違点2における本件補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 <相違点3について> 引用発明においても,揚水管(e)におけるジヤツキボルト(d)が押付けられる箇所は,押付力を受ける箇所であるから,十分な強度を備える箇所とすべきことは,当業者が当然考慮すべきことである。 そして,引用例1の第1図を参照すると,揚水管(e)におけるジヤツキボルト(d)が押付けられる箇所が大径部として記載されているので押し付けられる箇所を大径とすることの示唆があるといえ,さらに,大径部を肉厚部とすることを妨げる特段の事情も存在するものでもない。 また,引用例1の第6図,第7図には,勾配リング13からの押付け力を受ける部分を肉厚部とすることが記載されているから,引用発明において,揚水管(ケーシング)におけるジヤツキボルト(支持ボルト)が押付けられる箇所を強度の高い箇所とするために肉厚部として,上記相違点3における本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本件補正発明が奏する効果も,引用発明,引用例1に記載された事項及び上記周知技術から当業者が予測できたものであって,格別顕著なものとはいえない。 したがって,本件補正発明は,引用発明,引用例1に記載された事項及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)独立特許要件についてのむすび 以上のとおり,本件補正発明は,引用発明,引用例1に記載された事項及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成29年4月17日にされた手続補正は,前記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成28年1月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみてその請求項1に記載された事項により特定される,前記「第2〔理由〕1.1-1.【請求項1】」に記載のとおりのものである(なお,本願発明の「前記支ボルト」は「前記支持ボルト」の誤記と認める。)。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1?4に係る発明は,その出願前に,頒布された下記の刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 引用文献1:実願昭53-80393号(実開昭54-181305号)のマイクロフィルム 引用文献2:特開2000-120597号公報 3.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は,前記「第2〔理由〕2.2-2.(1)」に記載のとおりのものである。 4.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「据付床」は前者の「取付台」に相当し,以下同様に,「揚水管(e)」は「ケーシング」に,「振止め支持部(a)」は「支持台」に,「振止め金具(b)に螺合されたジャツキボルト(d)」及び「振止め金具(b)」は両方で「支持部材」に,「振止め金具(b)」は「支持ブラケット」に,「ジヤツキボルト(d)」は「支持ボルト」に,「立軸型ポンプ」は「立軸ポンプ」に,それぞれ相当する。 後者の「鉛直方向に沿って配置されて,上端部が,据付床に据付けられた吐出エルボから下方へ吊下げられていると共に,下端側に吸込口が設けられて上端の側部に吐出口が設けられる揚水管(e)」は前者の「鉛直方向に沿って配置されて上端部が取付台に設置されると共に下端側に吸込口が設けられて側部に吐出口が設けられるケーシング」に相当する。 後者の「前記据付床の下方で,振止め支持部(a)に設けられた他の部分より厚くされた振止め金具の支持部から延設されて,揚水管(e)の外周面に押付けられる,振止め金具(b)に螺合されたジヤツキボルト(d)」は前者の「前記取付台の下方で支持台から延設して前記ケーシングの外周面を支持する支持部材」に相当し,後者の「前記振止め金具(b)とジヤツキボルト(d)は,振止め支持部(a)に設けられた他の部分より厚くされた振止め金具の支持部に固定される振止め金具(b)と,前記振止め金具(b)に螺合して先端部が前記揚水管(e)の外周面に押付けられるジヤツキボルト(d)とを有」することは,前者の「前記支持部材は,前記支持台に固定される支持ブラケットと,前記支持ブラケットに螺合して先端部が前記ケーシングの外周面に当接する支持ボルトとを有」することに相当する。 そうすると,両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 鉛直方向に沿って配置されて上端部が取付台に設置されると共に下端側に吸込口が設けられて側部に吐出口が設けられるケーシングと, 前記取付台の下方で支持台から延設して前記ケーシングの外周面を支持する支持部材と, を有し, 前記支持部材は,前記支持台に固定される支持ブラケットと,前記支持ブラケットに螺合して先端部が前記ケーシングの外周面に当接する支持ボルトとを有する, 立軸ポンプ。 <相違点1’> 立軸ポンプが,本願発明では,「ケーシング内に鉛直方向に沿って配置される回転軸」と「回転軸の下端部に固定される羽根車」とを有しているのに対し,引用発明では,「回転軸」や「羽根車」について特定していない点。 <相違点3’> 本願発明では,「ケーシングにおける支持ボルトが当接する支持位置に肉厚部が設けられる」のに対し,引用発明では,揚水管(e)(本件補正発明の「ケーシング」に相当。)におけるジヤツキボルト(d)(本件補正発明の「支持ボルト」に相当。)が押付けられる箇所(本件補正発明の「支持位置」に相当。)に肉厚部が設けられているとはいえない点。 そして,上記<相違点1’>,<相違点3’>は,前記「第2〔理由〕2.2-2(3)(3-1)」に記載した相違点1及び相違点3と同じであるから,上記<相違点1’>,<相違点3’>については,前記「第2〔理由〕2.2-2(3)(3-2)」に記載したとおり,引用発明,引用例1に記載された事項及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 したがって,本願発明は,引用発明,引用例1に記載された事項及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-04-24 |
結審通知日 | 2018-05-08 |
審決日 | 2018-05-21 |
出願番号 | 特願2014-14867(P2014-14867) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F04D)
P 1 8・ 57- Z (F04D) P 1 8・ 121- Z (F04D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 冨永 達朗、佐藤 秀之、原田 愛子 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
堀川 一郎 藤井 昇 |
発明の名称 | 立軸ポンプ |
代理人 | 特許業務法人酒井国際特許事務所 |