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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F |
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管理番号 | 1341818 |
審判番号 | 不服2017-6844 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-12 |
確定日 | 2018-07-05 |
事件の表示 | 特願2012- 17886「ボンド磁石の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月15日出願公開、特開2013-157505〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成24年1月31日に出願したものであって、手続の概要は以下のとおりである。 拒絶理由通知 :平成27年11月12日(起案日) 面接 :平成28年 1月 8日 意見書 :平成28年 1月15日 手続補正 :平成28年 1月15日 拒絶理由通知 :平成28年 7月28日(起案日) 拒絶査定 :平成29年 2月 9日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成29年 5月12日 面接(当審) :平成30年 4月24日 2.本願発明 本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成28年1月15日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 ボンド磁石の近傍に着磁用磁界印加手段を配置し、前記ボンド磁石を、そのキュリー点以上の温度に上昇させる加熱工程と、 キュリー点以上の温度に達した前記ボンド磁石を、キュリー点未満の温度まで降温させつつ、その間、前記着磁用磁界印加手段により前記ボンド磁石に着磁磁界を印加し続ける着磁工程と、を含むボンド磁石の製造方法であって、 前記ボンド磁石に希土類元素としてNdとPrが含まれる磁石粉体を用い、前記ボンド磁石の着磁特性の調整を行うにあたって冷却時の取り出し温度である温調温度が調整されることを特徴とするボンド磁石の製造方法。」 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された「幸村治洋,北岡幹雄,清宮照夫,松尾良夫,”超小型モータ用Nd-Fe-Bボンド磁石に対する新着磁システムの開発”,粉体および粉末冶金,一般社団法人粉体粉末冶金協会,2010年1月,第57巻,第1号,p.19-26」(以下「引用例」という。)には、図表と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「十分な多極着磁ができないとなれば着磁極数を減らせば済むことである。しかし、それをするとモータ性能のうち分解能が犠牲となるため、超小型ステッパモータなど電磁デバイスとしての魅力に乏しくなる。したがって、新たな着磁技術に対するモータ開発者の要望は強く、市場の大きさや将来性においても必須の検討課題と思われた。そこで、Fig.3に示した開発ターゲットである外径2.6mm-16極(極ピッチ:0.5mm)について、新しい着磁方法の検討を行った。」(21頁左欄3?10行) (2)「パルス着磁では困難と判断したことで従来技術とは異なる手法になるのは必然であり、界磁源にパルス電流を用いない方法としたい。そして最終的に、高着磁特性や生産性をクリアできる可能性が高い手法として、Nd-Fe-B磁石の着磁性が良好な高温状態から耐熱性が高い永久磁石を界磁源とした磁界中で冷却する方法に絞り検討することとした。その際、Nd-Fe-B磁石材料やエポキシ樹脂のダメージを最小限にするため超高温状態を極力短時間とする必要がある。」(21頁左欄11?18行) (3)「実験装置の模式図をFig.5に示す。SmCo焼結磁石を所望の極数分配置して界磁空間を成し、被着磁物であるNd-Fe-Bボンド磁石を急速加熱後、界磁空間内で急速冷却する。ここで、本実験装置でSmCo焼結磁石は300℃以上の環境に暴露されるが、パーミアンス係数が高く保持力がこのような高温でも実用的な値を有しているため熱減磁は起きていない。Fig.5に示した装置にて、外径2.6mm、内径1.0mm、長さ3mmの円筒型磁石に対して16極の外周着磁(極間距離:0.5mm)を試みた。なお、加熱時の劣化を極力抑制するため不活性ガス雰囲気とした。そして、界磁空間からの取り出し温度を90℃とし加熱温度依存性を確認した。」(21頁右欄16?26行) (4)「実験装置の模式図をFig.8に、その動作を示す模式図をFig.9に示す。実験(1)と異なる点は、加熱空間にて被着磁物であるNd-Fe-Bボンド磁石を、そのキュリー点を上回る温度まで急速加熱後、界磁空間内に素早く移動し冷却することである。高保持力磁石材料を含めた複数のNd-Fe-B磁石についてUHMprocessを適用し評価した。磁石仕様は従来技術との比較のため、従来着磁技術の実績がある外径2.6mm-10極着磁(極ピッチ:0.8mm)とした。また、界磁部にも加熱機構を設置し界磁空間から温度制御した状態で取り出せるようにして、熱減磁による特性調整手段の検討を行った。ちなみにこれは、モータ性能の微調整のため着磁特性もある程度の範囲で調整したいというモータ事業部門の要望に応える検討内容である。その他、熱的安定性を確認するため初期減磁特性を評価した。」(22頁左欄14行?右欄9行) (5)「Fig.10に示すMagnequench社製磁石粉体3種を用いたボンド磁石を作製し、それぞれの着磁特性の評価を行った。また、界磁部の温度を種々変化させて、熱減磁による特性調整の有効性を確認した。なお、着磁条件に相当する界磁部の温度は50℃?240℃に設定した。比較のため、従来技術の着磁特性(着磁電流密度:?17kA/mm^(2))も併せて評価した。」(23頁左欄1?6行) 上記摘示事項及び図表の記載から以下のことがいえる。 (a)引用例には、「着磁方法」が記載されている(摘示事項(1))。 (b)該「着磁方法」は、Nd-Fe-B磁石の着磁性が良好な高温状態から耐熱性が高い永久磁石を界磁源とした磁界中で冷却する方法である(摘示事項(2))。 (c)SmCo焼結磁石を所望の極数分配置して界磁空間を成し、被着磁物であるNd-Fe-Bボンド磁石を急速加熱後、界磁空間内で急速冷却する(摘示事項(3))。 (d)加熱空間にて被着磁物であるNd-Fe-Bボンド磁石を、そのキュリー点を上回る温度まで急速加熱後、界磁空間内に素早く移動し冷却する。界磁部にも加熱機構を設置し界磁空間から温度制御した状態で取り出せるようにして、熱減磁による特性調整を行う(摘示事項(4))。 (e)Ndが含まれる磁石粉体を用いてボンド磁石を作製する(摘示事項(5)、Fig.10の「Nd-Fe-B bonded magnets」)。ボンド磁石を、キュリー点未満の温度まで冷却する(摘示事項(5)、Fig.10に記載されたキュリー点)。 以上を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「SmCo焼結磁石を所望の極数分配置して界磁空間を成し、 被着磁物であるNd-Fe-Bボンド磁石を、そのキュリー点を上回る温度まで急速加熱後、 キュリー点未満の温度まで界磁空間内で急速冷却するNd-Fe-Bボンド磁石の着磁方法であって、 Nd-Fe-Bボンド磁石にNdが含まれる磁石粉体を用い、 界磁空間から温度制御した状態で取り出せるようにして、熱減磁による特性調整を行うNd-Fe-Bボンド磁石の着磁方法。」 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比する。 (1)ボンド磁石の製造方法 「Nd-Fe-Bボンド磁石」は、「ボンド磁石」に含まれる。また、「着磁方法」は、「製造方法」に含まれる。 したがって、本願発明と引用発明とは、「ボンド磁石の製造方法」である点で一致する。 (2)着磁用磁界印加手段の配置 引用発明は、「SmCo焼結磁石を所望の極数分配置して界磁空間を成」す。 したがって、本願発明と引用発明とは、「ボンド磁石の近傍に着磁用磁界印加手段を配置」する点で一致する。 (3)加熱工程 引用発明は、「被着磁物であるNd-Fe-Bボンド磁石を、そのキュリー点を上回る温度まで急速加熱」する。 したがって、本願発明と引用発明とは、「前記ボンド磁石を、そのキュリー点以上の温度に上昇させる加熱工程」を含む点で一致する。 (4)着磁工程 引用発明は、「被着磁物であるNd-Fe-Bボンド磁石を、そのキュリー点を上回る温度まで急速加熱後、キュリー点未満の温度まで界磁空間内で急速冷却する」。 したがって、本願発明と引用発明とは、「キュリー点以上の温度に達した前記ボンド磁石を、キュリー点未満の温度まで降温させつつ、その間、前記着磁用磁界印加手段により前記ボンド磁石に着磁磁界を印加し続ける着磁工程」を含む点で一致する。 (5)磁石粉体の使用 引用発明は、「Nd-Fe-Bボンド磁石にNdが含まれる磁石粉体を用い」る。 したがって、本願発明と引用発明とは、「前記ボンド磁石に希土類元素としてNdが含まれる磁石粉体を用い」る点で一致する。 もっとも、「磁石粉体」について、本願発明は、NdとPrが含まれるのに対し、引用発明は、Ndが含まれる点で相違する。 (6)着磁特性の調整 引用発明は、「界磁空間から温度制御した状態で取り出せるようにして、熱減磁による特性調整を行う」。 したがって、本願発明と引用発明とは、「前記ボンド磁石の着磁特性の調整を行うにあたって冷却時の取り出し温度である温調温度が調整される」点で一致する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「ボンド磁石の近傍に着磁用磁界印加手段を配置し、前記ボンド磁石を、そのキュリー点以上の温度に上昇させる加熱工程と、 キュリー点以上の温度に達した前記ボンド磁石を、キュリー点未満の温度まで降温させつつ、その間、前記着磁用磁界印加手段により前記ボンド磁石に着磁磁界を印加し続ける着磁工程と、を含むボンド磁石の製造方法であって、 前記ボンド磁石に希土類元素としてNdが含まれる磁石粉体を用い、前記ボンド磁石の着磁特性の調整を行うにあたって冷却時の取り出し温度である温調温度が調整されるボンド磁石の製造方法。」の点。 そして、次の点で相違する。 <相違点> 「磁石粉体」について、本願発明は、NdとPrが含まれるのに対し、引用発明は、Ndが含まれる点。 5.判断 そこで、上記相違点について検討する。 例えば、特開昭63-234503号公報(2頁右下欄2行?3頁左上欄12行)、国際公開第2011/070847号([0108]?[0109])、特開2005-325450号公報(【0037】?【0039】)に記載されているように、希土類系磁石の材料としてNdとPrの混合物(ジジム)を用いることは周知である。 したがって、引用発明において、安価なNdとPrの混合物(ジジム)を用いるため、Ndの一部をPrで置き換えて、「磁石粉体」について、NdとPrが含まれるようにすることは、当業者が容易に想到し得る。 なお、請求人は、審判請求書において、「Prを含有させたことにより、固有保持力が高くとも温調温度による着磁特性の調整が十分に行えるようになる」という効果を主張している。 しかしながら、明細書及び図面には、例えば、NdをPrで置き換える量にかかわらず、該効果を奏する根拠が記載されていないから、該効果は、NdをPrで置き換える量について特定がない本願発明(請求項1に係る発明)に必ずしも対応するものではない。 したがって、請求人の該主張には理由がない。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-05-01 |
結審通知日 | 2018-05-08 |
審決日 | 2018-05-21 |
出願番号 | 特願2012-17886(P2012-17886) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久保田 昌晴 |
特許庁審判長 |
井上 信一 |
特許庁審判官 |
國分 直樹 関谷 隆一 |
発明の名称 | ボンド磁石の製造方法 |
代理人 | 大石 敏弘 |
代理人 | 坂本 智弘 |