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審決分類 |
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 G03G 審判 全部申し立て 2項進歩性 G03G 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 G03G |
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管理番号 | 1341934 |
異議申立番号 | 異議2017-700364 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-04-12 |
確定日 | 2018-05-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6007844号発明「定着装置及び画像形成装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6007844号の明細書、及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について、訂正することを認める。 特許第6007844号の請求項1?4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特許第6007844号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成25年3月27日に特許出願され、平成28年9月23日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人キヤノン株式会社により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年6月26日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である同年8月22日付けで意見書の提出及び訂正の請求がなされ、当審において同年8月28日付けで特許異議申立人に対して通知書を通知し、その指定期間内である同年9月28日付けで意見書の提出がなされ、さらに、当審において同年12月13日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成30年2月5日付けで意見書の提出及び訂正の請求がなされ、当審において同年2月14日付けで特許異議申立人に対して通知書を通知し、その指定期間内である同年3月23日付けで意見書の提出がなされたものである。 第2.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 平成30年2月5日付け訂正請求書による本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の 「とを有し、 前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さいことを特徴とする定着装置。」を、 「とを有し、 前記接触形成部における用紙搬送方向下流側の端部と、前記加圧部における用紙搬送方向上流側の端部とが、前記加圧部の長手方向の全域で前記無端ベルトと前記加圧部材との間に隙間が形成されるよう離れており、 前記隙間は、前記回転体に向けて前記加圧部材が加圧された状態において、前記用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い前記無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さくなり、 前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さいことを特徴とする定着装置。」(下線は審決で付した。以下同じ。)と訂正する。 (2)訂正事項2 願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0005】の 「とを有し、前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さいことを特徴とする定着装置である。」を、 「とを有し、前記接触形成部における用紙搬送方向下流側の端部と、前記加圧部における用紙搬送方向上流側の端部とが、前記加圧部の長手方向の全域で前記無端ベルトと前記加圧部材との間に隙間が形成されるよう離れており、前記隙間は、前記回転体に向けて前記加圧部材が加圧された状態において、前記用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い前記無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さくなり、前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さいことを特徴とする定着装置である。」と訂正する。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、加圧部材に関して、具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1は、願書に添付した明細書(段落【0060】)、及び図3?5、7に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正事項1により訂正する特許請求の範囲の記載と、願書に添付した明細書の記載とを整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項2は、上記(1)のとおりであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)一群の請求項について これらの訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。 また、訂正後の請求項1?4は、一群の請求項である。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正を認める。 第3.特許異議の申立てについて 1.本件訂正発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?4に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、それぞれ「本件訂正発明1」?「本件訂正発明4」という。)。 「【請求項1】 回転体と、 前記回転体との間に記録媒体を挟んで周回する無端ベルトと、 前記無端ベルトの内周側に前記回転体の回転軸方向に沿って配置され、前記無端ベルトを前記回転体に向けて加圧する加圧部材とを備え、 前記加圧部材が、前記記録媒体を前記回転体へ向けて接触させる接触形成部と、前記接触形成部よりも回転方向の下流側で前記無端ベルトを前記回転体に向けて加圧する加圧部とを有し、 前記接触形成部における用紙搬送方向下流側の端部と、前記加圧部における用紙搬送方向上流側の端部とが、前記加圧部の長手方向の全域で前記無端ベルトと前記加圧部材との間に隙間が形成されるよう離れており、 前記隙間は、前記回転体に向けて前記加圧部材が加圧された状態において、前記用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い前記無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さくなり、 前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さいことを特徴とする定着装置。 【請求項2】 前記加圧部の用紙搬送方向上流側の端部が、前記回転体の回転軸方向において、両端部から中央にかけて用紙搬送方向上流側に向かって膨らんだ形状を有している ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。 【請求項3】 前記回転体及び前記無端ベルトの少なくとも一方を加熱する加熱源を有し、 前記無端ベルトが前記回転体に対して加圧される領域において、未定着のトナー像が加熱されて前記記録媒体に定着される ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。 【請求項4】 記録媒体に未定着のトナー像を転写する画像形成部と、 前記未定着のトナー像を前記記録媒体に定着させる請求項1?請求項3のいずれか一項に記載の定着装置とを備えた ことを特徴とする画像形成装置。」 2.取消理由の概要 当審において、訂正前の請求項1?4に係る特許に対して平成29年12月13日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 平成29年8月22日付け訂正請求書によって訂正された請求項1?4に係る発明は、甲1、2号証、及び参考資料1に記載された発明に基づき、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同項に係る特許は、取り消されるべきものである。 3.甲各号証の記載 (1)甲1号証 甲1号証(特開2005-181989号公報)には、次の事項が記載されている。 ア.「可撓性の回転部材と、前記回転部材の内面に接触する摺動部材と、前記摺動部材を保持するホルダと、前記回転部材を介して前記摺動部材とニップ部を形成する加圧ローラと、を有し、前記ホルダの前記摺動部材を保持する保持面は、前記ホルダの長手方向中央部が両端部より前記ニップ部側に突出したクラウン形状の第1保持領域と、前記第1保持領域より前記回転部材の移動方向下流側に設けられており前記ホルダの長手方向中央部が両端部より前記ニップ部側に突出したクラウン形状の第2保持領域と、を有し、前記第2保持領域のクラウン量は前記第1保持領域のクラウン量より大きいことを特徴とする像加熱装置。」(【請求項1】) イ.「前記ホルダを前記加圧ローラ側に押さえつける高剛性のステーを有し、第1の前記付勢手段は前記ステーの一端側を前記加圧ローラに向かって付勢しており、第2の前記付勢手段は前記ステーの他端側を前記加圧ローラに向かって付勢していることを特徴とする請求項2に記載の像加熱装置。」(【請求項3】) ウ.「前記摺動部材は板状の部材であり、前記付勢手段による圧力の作用により前記ホルダの前記保持面の形状に倣って撓んでいることを特徴とする請求項2に記載の像加熱装置。」(【請求項6】) これらの記載を総合すると、甲1号証には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「可撓性の回転部材と、前記回転部材の内面に接触する摺動部材と、前記摺動部材を保持するホルダと、前記回転部材を介して前記摺動部材とニップ部を形成する加圧ローラと、前記ホルダを前記加圧ローラ側に押さえつける高剛性のステーと、を有し、前記ホルダの前記摺動部材を保持する保持面は、前記ホルダの長手方向中央部が両端部より前記ニップ部側に突出したクラウン形状の第1保持領域と、前記第1保持領域より前記回転部材の移動方向下流側に設けられており前記ホルダの長手方向中央部が両端部より前記ニップ部側に突出したクラウン形状の第2保持領域と、を有し、前記第2保持領域のクラウン量は前記第1保持領域のクラウン量より大きく、前記摺動部材は板状の部材であり、付勢手段による圧力の作用により前記ホルダの前記保持面の形状に倣って撓んでいる像加熱装置。」 (2)甲2号証 甲2号証(特開2006-58527号公報)には、次の事項が記載されている。 ア.「1対の回転体のニップ部に未定着のトナー像を保持した記録媒体を通過させることよって、前記記録媒体に前記トナー像を定着させる定着装置であって、 前記1対の回転体の少なくとも一方の回転体は、無端ベルトからなり、 前記無端ベルトの内面を圧接し、前記ニップ部に圧力を与える加圧部材を備え、 前記加圧部材が前記無端ベルトの内面を圧接する面は、前記記録媒体が前記ニップ部を通過する通過方向に対する位置と面積とのどちらか一方、又は両方が、前記回転体の回転軸方向で異なっていることを特徴とする定着装置。」(【請求項1】) イ.「加圧部材712のニップヘッド部材709は、例えば、LCP、PET、PPS、PBT、PES等の耐熱性を有する合成樹脂で形成されている。図6に示すように、ニップヘッド部材709は、断面がL字形状の細長い角柱形状に形成されているとともに、その上面には、パッド部材710を、例えば、接着剤などで固定するための固定部720が長手方向(定着ベルト703の回転軸方向)に沿って設けられている。また、上記ニップヘッド部材709は、その幅方向(長手方向と直交する方向)の一端部に、加熱ロール702方向に突設した圧接部721が形成されている。そして、圧接部721の圧接面721Bが定着ベルト703を圧接する また、パッド部材710は細長い直方体状(四角柱状)をしており、例えば、シリコンゴム等のゴム材料で構成されている。なお、パッド部材710のゴム硬度は10?30度(アスカーC硬度)が望ましい。また、パッド部材710より圧接部721の方が高硬度である。」(段落【0054】) ウ.「上記の如く構成されるニップヘッド部材709とパッド部材710とからなる加圧部材712は、図3に示すように、定着ベルト703を圧接し、加熱ロール702と定着ベルト703のニップ部に圧力をかけている。」(段落【0056】) エ.「また、圧接ユニット705の両端部がアーム部材717で押圧されているので、中央部は撓み等により、両端部より圧力がかかりにくい。しかし、図7と図12(A)に示すように、圧接部721のパッド部材710側の側面721Aは、長手方向(定着ベルト703の回転軸方向)に、上端部がパッド部材710側(記録用紙Pの通過方向の下流側)に凸形状となったR形状をしている。よって、圧接部721の両端部は、中央部より圧接面721Bの面積が小さくなっている。」(段落【0063】、審決注:上記の「記録用紙Pの通過方向の下流側」は、「記録用紙Pの通過方向の上流側」の誤記である。) これらの記載を総合すると、甲2号証には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「1対の回転体のニップ部に未定着のトナー像を保持した記録媒体を通過させることよって、前記記録媒体に前記トナー像を定着させる定着装置であって、 前記1対の回転体の少なくとも一方の回転体は、無端ベルトからなり、 前記無端ベルトの内面を圧接し、前記ニップ部に圧力を与える加圧部材を備え、 加圧部材は、ニップヘッド部材とパッド部材とからなり、 上記ニップヘッド部材は、加熱ロール方向に突設した圧接部が形成され、 圧接部のパッド部材側の側面は、長手方向(定着ベルトの回転軸方向)に、上端部がパッド部材側(記録用紙Pの通過方向の上流側)に凸形状となったR形状をしている定着装置。」 (3)参考資料1 参考資料1(特開2010-231008号公報)には、次の事項が記載されている。 ア.「弾性層が形成された外周面を有するともに加熱手段により加熱されて回転する加熱ロールと、 前記加熱ロールの回転軸方向に沿う外周面部分に接触して回転する無端ベルトと、 前記無端ベルトをその内周面側から前記加熱ロールの当該外周面部分に押し付けて当該加熱ロールの間に未定着の像を保持する記録媒体を通過させる圧接部を形成する加圧体とを有し、 前記加圧体は、前記記録媒体の前記圧接部における通過方向の下流側の位置に配置され前記加熱ロールの弾性層よりも高い硬度を有する硬質加圧部材と、前記硬質加圧部材よりも前記通過方向の上流側の位置に配置され前記加熱ロールの弾性層よりも低い硬度を有して弾性変形する軟質加圧部材とを備え、 前記硬質加圧部材と前記軟質加圧部材は、前記圧接部の前記加熱ロールの回転軸方向における定着領域のうち少なくとも特定の記録媒体を通過させる特定の領域部分においてその両者間に隙間が存在する状態で設置されていることを特徴とする定着装置。」(【請求項1】) イ.「前記硬質加圧部材は、前記記録媒体の通過方向の上流側となる角部が、当該通過方向の下流側にずれるにつれて前記加熱ロールに近づく斜面で形成されている請求項1又は2に記載の定着装置。」(【請求項5】) ウ.「すなわち、ヘッド部材64(の突出部64a)とパッド部材65については、圧接部NPの加熱ロール51の回転軸方向Aにおける定着設定領域Eのうち少なくとも封筒等の特定の記録媒体9Aを通過させる特定の領域部分(特定の定着領域)E1において、その両者(64a,65)間に隙間Sが存在する状態で設置している。」(段落【0066】) エ.「特定の定着領域E1は、封筒等の特定の記録媒体9Aが、その定着時に通過することを予め設定した圧接部NPにおける通過領域(の幅)に相当するものである。また、特定の定着領域E1は、定着装置4において圧接部NPの定着設定領域Eの中央位置を搬送時の基準位置にして記録媒体9の搬送位置に関する規制を行う搬送方式、いわゆるセンターレジストレーション方式を採用する場合には、特定の記録媒体9Aの送り幅が適用可能な記録媒体9における最大のサイズでない限り、その特定の定着領域E1の両脇に、平常の定着領域E2,E3が存在することとなる(図7参照)。この平常の定着領域E2、E3においては、ヘッド部材64(の突出部64a)とパッド部材65を、その両者間に隙間Sが存在しない状態で設置してもよいが、その隙間Sが存在する状態で設置してもよい。」(段落【0067】) オ. 上記「ウ.」、「エ.」、及び図7の記載から、「硬質加圧部材と軟質加圧部材は、圧接部の加熱ロールの回転軸方向における全域において隙間が存在する状態で設置されている」ことが示されているといえる。 これらの記載を総合すると、参考資料1には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「弾性層が形成された外周面を有するともに加熱手段により加熱されて回転する加熱ロールと、 前記加熱ロールの回転軸方向に沿う外周面部分に接触して回転する無端ベルトと、 前記無端ベルトをその内周面側から前記加熱ロールの当該外周面部分に押し付けて当該加熱ロールの間に未定着の像を保持する記録媒体を通過させる圧接部を形成する加圧体とを有し、 前記加圧体は、前記記録媒体の前記圧接部における通過方向の下流側の位置に配置され前記加熱ロールの弾性層よりも高い硬度を有する硬質加圧部材と、前記硬質加圧部材よりも前記通過方向の上流側の位置に配置され前記加熱ロールの弾性層よりも低い硬度を有して弾性変形する軟質加圧部材とを備え、 前記硬質加圧部材と前記軟質加圧部材は、前記圧接部の前記加熱ロールの回転軸方向における全域において隙間が存在する状態で設置され、 前記硬質加圧部材は、前記記録媒体の通過方向の上流側となる角部が、当該通過方向の下流側にずれるにつれて前記加熱ロールに近づく斜面で形成されている定着装置。」 4.判断 (1)平成29年12月13日付け取消理由通知に記載した取消理由について ア.本件訂正発明1について (ア)対比 本件訂正発明1と引用発明1とを対比すると、 後者における「加圧ローラ」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「回転体」に相当し、以下同様に、「可撓性の回転部材」は「無端ベルト」に、「『ホルダ』、及び『摺動部材』」は「加圧部材」に、「像加熱装置」は「定着装置」に、それぞれ相当する。 また、後者は、像加熱装置であって、回転部材を介して摺動部材と加圧ローラとによりニップ部を形成しているから、「回転部材(無端ベルト)は、加圧ローラ(回転体)との間に記録媒体を挟んで周回すること」は、明らかである。 また、後者において、摺動部材を保持するホルダは、加圧ローラ側に押さえつけられて、回転部材を介して前記摺動部材と加圧ローラとによりニップ部を形成しているから、「回転部材(無端ベルト)の内周側に加圧ローラ(回転体)の回転軸方向に沿って配置され、前記回転部材(無端ベルト)に向けて加圧するホルダ、及び摺動部材(加圧部材)とを備えている」ことは、明らかである。 また、後者において、ホルダの摺動部材を保持する保持面は、前記ホルダの長手方向中央部が両端部よりニップ部側に突出したクラウン形状の第1保持領域と、前記第1保持領域より回転部材の移動方向下流側に設けられており前記ホルダの長手方向中央部が両端部より前記ニップ部側に突出したクラウン形状の第2保持領域と、を有し、前記第2保持領域のクラウン量は前記第1保持領域のクラウン量より大きく、前記摺動部材は板状の部材であり、付勢手段による圧力の作用により前記ホルダの前記保持面の形状に倣って撓んでいるから、「摺動部材(加圧部材)が、記録媒体を加圧ローラ(回転体)へ向けて接触させるホルダの第1保持領域接触形成部に保持された摺動部材の部位(接触形成部)と、当該ホルダの第1保持領域に保持された摺動部材の部位(接触形成部)よりも回転方向の下流側で回転部材(無端ベルト)を前記加圧ローラ(回転体)に向けて加圧するホルダの第2保持領域に保持された摺動部材の部位(加圧部)とを有している」といえ、また、「ホルダの第1保持領域に保持された摺動部材の部位(接触形成部)及び前記ホルダの第2保持領域に保持された摺動部材の部位(加圧部)が、加圧ローラ(回転体)の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記加圧ローラ(回転体)の方向に膨らんだ(クラウン形状)形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さい」といえる。 したがって、両者は、 「回転体と、 前記回転体との間に記録媒体を挟んで周回する無端ベルトと、 前記無端ベルトの内周側に前記回転体の回転軸方向に沿って配置され、前記無端ベルトを前記回転体に向けて加圧する加圧部材とを備え、 前記加圧部材が、前記記録媒体を前記回転体へ向けて接触させる接触形成部と、前記接触形成部よりも回転方向の下流側で前記無端ベルトを前記回転体に向けて加圧する加圧部とを有し、 前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さい定着装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本件訂正発明1においては、「接触形成部における用紙搬送方向下流側の端部と、加圧部における用紙搬送方向上流側の端部とが、前記加圧部の長手方向の全域で無端ベルトと前記加圧部材との間に隙間が形成されるよう離れて」いるのに対して、引用発明1は、そのようなものではない点。 [相違点2] 本件訂正発明1においては、「隙間は、回転体に向けて加圧部材が加圧された状態において、用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さく」なるのに対して、引用発明1は、そのようなものではない点。 (イ)判断 まず、上記相違点2について以下検討する。 引用発明3は、上記「3.(3)」のとおりであって、引用発明3における「加熱ロール」は、その構造、機能、作用等からみて、本件訂正発明1における「回転体」に相当し、以下同様に、「無端ベルト」は「無端ベルト」に、「加圧体」は「加圧部材」に、「軟質加圧部材」は「接触形成部」に、「硬質加圧部材」は「加圧部」に、「隙間」は「隙間」に、「定着装置」は「定着装置」に、それぞれ相当する。 しかしながら、引用発明3における加圧体を構成する硬質加圧部材の記録媒体の通過方向の上流側となる角部が、当該通過方向の下流側にずれるにつれて加熱ロールに近づく斜面で形成されており、前記傾斜部により、角部は、用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い無端ベルトと加圧体(加圧部材)との間の距離が小さくなっているとはいえるが、上記相違点2に係る本件訂正発明1の「隙間は、用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さく」なっているとまでいえないし、また、引用発明3における軟質加圧部材は、加熱ロールの弾性層よりも低い硬度を有して弾性変形するものであって、参考資料1に示されているように、軟質加圧部材は、大きく潰れて、隙間の空間に入り込んだり(段落【0077】)、軟質加圧部材の一部が、硬質加圧部材に接触したり(段落【0078】)するものであるから、引用発明3において、「加熱ロール(回転体)に向けて加圧体(加圧部材)が加圧された状態」において、上記相違点2に係る本件特許発明1の「隙間は、用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さく」なるか、明らかではない。 また、上記相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項とする根拠もない。 したがって、引用発明1において、上記相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えるものとすることについて、当業者が容易に想到し得るものではない。 よって、上記相違点1を検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明1、及び3、に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 なお、引用発明2にも、上記相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えたり、示唆されるものではない。 イ.本件訂正発明2?4について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本件訂正発明3は、本件訂正発明1、又は2の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本件訂正発明4は、請求項1?請求項3のいずれか一項の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本件訂正発明2?4は、上記「ア.」と同様の理由により、引用発明1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2)上記取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について ア.特許法第29条第1項第3号違反について 上記「(1)」のとおり、本件訂正発明1、3、及び4と引用発明1とは、上記相違点1、及び2が存在するから、同一とすることはできない。 イ.特許法第29条第2項違反について 上記「(1)」のとおりであるから、本件訂正発明2?4は、引用発明1、及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 ウ.特許法第36条第6項第2号違反について 特許異議申立人キヤノン株式会社は、本件訂正発明1?4には、特許権者が平成30年2月5日付け意見書で主張する効果1及び2を奏するために必要な発明特定事項が不足していることが明らかであり、本件訂正発明1?4の技術的意味を理解することができない旨主張している(平成30年3月23日付け意見書6頁1?13行)。 しかしながら、特許権者が平成30年2月5日付け意見書で主張する「記録媒体(用紙)の搬送方向上流側から下流側に向かい、加圧部における圧力が徐々に上がる構成とすることが可能となる。」(2枚目13?14行)との効果(効果1)は、本件訂正明細書、及び本件訂正特許請求の範囲には何ら記載されていないから、本件訂正明細書、及び本件訂正特許請求の範囲に基づかない主張である。 また、特許権者が上記意見書で主張する「これにより、例えば、「記録媒体Pは、搬送方向Hと直交する幅方向の中央から幅方向両端部に向けて、徐々に、加圧部82Bによって加圧される。これにより、記録媒体Pの幅方向両端部を外側へ押し出そうとする力が作用し、加圧部82Bにおける記録媒体Pのしわが抑制される」(段落0061)という効果が高められる。」(2枚目14?18行)との効果(効果2)は、本件訂正明細書によれば、「加圧部82Bの上流側の端部Qが、回転ロール64の回転軸AR方向において、両端部から中央にかけて上流側に向かって膨らんだ形状を有している」ことによって奏される効果(段落【0060】、【0061】)であって、本件訂正発明1?4における「隙間は、回転体に向けて加圧部材が加圧された状態において、用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さく」なるとの発明特定事項によって奏される効果ではない。 してみると、特許権者の上記の主張に理由はないから、特許異議申立人の上記の主張は、特許権者の誤った主張に基づくものであって、その前提に誤りがある。 したがって、特許異議申立人の上記の主張は理由がない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 定着装置及び画像形成装置 【技術分野】 【0001】 本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。 【背景技術】 【0002】 複写機、プリンタなどの画像形成装置においては、例えば、トナー像を記録媒体に転写し、転写されたトナー像を、定着装置によって加熱、加圧することで定着して画像形成している。 加熱ローラと、加熱ローラに当接しながら移動するベルト部材を備えた定着装置で、入口ニップ部材と押圧ローラの2部品で加圧することで定着性を向上した定着装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2010-230764号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明は、記録媒体のしわを抑制し、定着むらの少ない定着装置及び画像形成装置の提供を目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0005】 請求項1に記載の発明は、回転体と、前記回転体との間に記録媒体を挟んで周回する無端ベルトと、前記無端ベルトの内周側に前記回転体の回転軸方向に沿って配置され、前記無端ベルトを前記回転体に向けて加圧する加圧部材とを備え、前記加圧部材が、前記記録媒体を前記回転体へ向けて接触させる接触形成部と、前記接触形成部よりも回転方向の下流側で前記無端ベルトを前記回転体に向けて加圧する加圧部とを有し、前記接触形成部における用紙搬送方向下流側の端部と、前記加圧部における用紙搬送方向上流側の端部とが、前記加圧部材の長手方向の全域で前記無端ベルトと前記加圧部材との間に隙間が形成されるよう離れており、前記隙間は、前記回転体に向けて前記加圧部材が加圧された状態において、前記用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い前記無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さくなり、前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さいことを特徴とする定着装置である。 【0006】 請求項2に記載の発明は、前記加圧部の用紙搬送方向上流側の端部が、前記回転体の回転軸方向において、両端部から中央にかけて用紙搬送方向上流側に向かって膨らんだ形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の定着装置である。 【0007】 請求項3に記載の発明は、前記回転体及び前記無端ベルトの少なくとも一方を加熱する加熱源を有し、前記無端ベルトが前記回転体に対して加圧される領域において、未定着のトナー像が加熱されて前記記録媒体に定着されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置である。 【0008】 請求項4に記載の発明は、記録媒体に未定着のトナー像を転写する画像形成部と、前記未定着のトナー像を前記記録媒体に定着させる請求項1?請求項3のいずれか一項に記載の定着装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置である。 【発明の効果】 【0009】 請求項1に記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、記媒体のしわを抑制する定着装置が得られる。 【0010】 請求項2に記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、記録媒体のしわをより抑制する定着装置が得られる。 【0011】 請求項3に記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、定着むらの少ない定着装置が得られる。 【0012】 請求項4に記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、画質の低下を抑えた画像形成装置が得られる。 【図面の簡単な説明】 【0013】 【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図。 【図2】実施形態に係る定着装置の定着装置本体内に収容された加熱ロール及び加圧ベルトの斜視図。 【図3】実施形態に係る定着装置を示す概略側面図。 【図4】加圧ベルトと加熱ロールとの加圧領域付近の概略拡大断面図。 【図5】加圧体の概略斜視図。 【図6】加圧体を下流側から見た概略概念図。 【図7】加圧体を加熱ロール側から見た概略概念図。 【発明を実施するための形態】 【0014】 以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。 【0015】 (画像形成装置10の構成) まず、画像形成装置の構成を説明する。図1は、実施形態に係る画像形成装置10の構成を示す概略構成図である。なお、図中に示す矢印UPは、鉛直方向上方を示している。 【0016】 図1において、画像形成装置10は、各構成部品が内部に収容される画像形成装置本体11を備えている。画像形成装置本体11の内部には、用紙等の記録媒体Pが収容される収容部12と、記録媒体Pに未定着のトナー像の一例であるトナー画像を形成する画像形成部14と、未定着のトナー画像を記録媒体Pに定着させる定着装置60とが設けられている。 【0017】 また、収容部12から画像形成部14へ記録媒体Pを搬送する搬送部16と、画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20とが設けられている。さらに、画像形成装置本体11の上部には、画像形成部14によって画像が形成された記録媒体Pが排出される排出部18が設けられている。 【0018】 画像形成部14は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成する画像形成ユニット22Y、22M、22C、22K(以下、22Y?22Kと示す)と、画像形成ユニット22Y?22Kで形成されたトナー画像が転写される中間転写ベルト24と、画像形成ユニット22Y?22Kで形成されたトナー画像を中間転写ベルト24に転写する第1転写ロール26と、第1転写ロール26によって中間転写ベルト24に転写されたトナー画像を中間転写ベルト24から記録媒体Pへ転写する第2転写ロール28とを備えている。なお、画像形成部14は、上記の構成に限られず、他の構成であっても良く、記録媒体Pに画像を形成するものであればよい。 【0019】 画像形成ユニット22Y?22Kは、水平方向に対して傾斜した状態で、画像形成装置10の上下方向中央部に並んで配置されている。また、画像形成ユニット22Y?22Kは、一方向(例えば、図1における時計回り方向)へ回転する感光体32をそれぞれ有している。なお、画像形成ユニット22Y?22Kは、同様に構成されているので、図1において、画像形成ユニット22M、22C、22Kの各部の符号を省略している。 【0020】 各感光体32の周囲には、感光体32の回転方向上流側から順に、感光体32を帯電させる帯電ロール23と、帯電ロール23によって帯電した感光体32を露光して感光体32に静電潜像を形成する露光装置36と、露光装置36によって感光体32に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像装置38と、感光体32に接触して感光体32に残留しているトナーを除去する除去部材40とが設けられている。 【0021】 露光装置36は、制御部20から送られた画像信号に基づき静電潜像を形成するようになっている。制御部20から送られる画像信号としては、例えば、制御部20が外部装置から取得した画像信号がある。 【0022】 現像装置38は、感光体32へ現像剤を供給する現像剤供給体38Aと、現像剤供給体38Aへ付与される現像剤を攪拌しながら搬送する複数の搬送部材38Bと、を備えている。 【0023】 中間転写ベルト24は、環状に形成されると共に、画像形成ユニット22Y?22Kの上側に配置されている。中間転写ベルト24の内周側には、中間転写ベルト24が巻き掛けられる巻掛ロール42、44が設けられている。中間転写ベルト24は、巻掛ロール42、44のいずれかが回転駆動することによって、感光体32と接触しながら一方向(例えば、図1における反時計回り方向)へ循環移動するようになっている。なお、巻掛ロール42は、第2転写ロール28に対向する対向ロールとされている。 【0024】 第1転写ロール26は、中間転写ベルト24を挟んで感光体32に対向している。第1転写ロール26と感光体32との間が、感光体32に形成されたトナー画像が中間転写ベルト24に転写される第1転写位置とされる。 【0025】 第2転写ロール28は、中間転写ベルト24を挟んで巻掛ロール42に対向している。第2転写ロール28と巻掛ロール42との間が、中間転写ベルト24に転写されたトナー画像が記録媒体Pに転写される第2転写位置とされる。 【0026】 搬送部16は、収容部12に収容された記録媒体Pを送り出す送出ロール46と、送出ロール46に送り出された記録媒体Pが搬送される搬送路48と、搬送路48に沿って配置され送出ロール46によって送り出された記録媒体Pを第2転写位置へ搬送する複数の搬送ロール50とが設けられている。 【0027】 第2転写位置より搬送方向下流側には、第2転写ロール28によって記録媒体Pに転写されたトナー画像を記録媒体Pに定着させる定着装置60が設けられている。また、定着装置60には、トナー画像が定着された記録媒体Pを排出部18へ排出する排出ロール52が設けられている。なお、定着装置60の具体的な構成については後述する。 【0028】 次に、本実施形態に係る画像形成装置10における、記録媒体Pへ画像を形成する画像形成動作について説明する。 【0029】 実施形態に係る画像形成装置10では、収容部12から送出ロール46によって送り出された記録媒体Pが、複数の搬送ロール50によって第2転写位置へ送り込まれる。 【0030】 一方、画像形成ユニット22Y?22Kでは、帯電ロール23によって帯電した感光体32が、露光装置36によって露光されて感光体32に静電潜像が形成される。その静電潜像が現像装置38によって現像されて感光体32にトナー画像が形成される。画像形成ユニット22Y?22Kで形成された各色のトナー画像は、第1転写位置にて中間転写ベルト24に重ねられて、カラー画像が形成される。そして、中間転写ベルト24に形成されたカラー画像が、第2転写位置にて記録媒体Pへ転写される。 【0031】 トナー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置60へ搬送され、転写されたトナー画像が定着装置60により定着される。トナー画像が定着された記録媒体Pは、排出ロール52によって排出部18に排出される。以上のように、一連の画像形成動作が行われる。 【0032】 (定着装置60の構成) 図1において、実施形態に係る定着装置60は、各構成部品が設けられる定着装置本体62を備えている。図2に、定着装置60の定着装置本体62内に収容された回転ロールの一例である加熱ロール64及び無端ベルトの一例である加圧ベルト66の斜視図を、図3に、定着装置60の概略側面図を示した。図3において、加熱ロール64及び加圧ベルト66によって、記録媒体Pが搬送される搬送経路を二点鎖線で示した。 【0033】 また、図4に加圧ベルト66と加熱ロール64との加圧領域付近の概略拡大断面図を、図5に加圧体82の概略斜視図を示した。それぞれ、図中には、必要に応じて記録媒体Pの搬送方向Hを一点鎖線の矢印で示している。加熱ロール64は、回転軸ARの周りに回転方向Rに回転する。回転軸ARは、実線両矢印で、回転方向Rは白抜き矢印で示した。 【0034】 図2及び図3において、定着装置60は、加熱ロール64と、加熱ロール64との間に記録媒体Pを挟んで周回する加圧ベルト66と、加圧ベルト66の内周側に加熱ロール64の回転軸AR方向に沿って配置され、加圧ベルト66を加熱ロール64に向けて加圧する加圧部材80とを備えている。 【0035】 また、図4及び図5において、加圧部材80が、記録媒体Pを加熱ロール64へ向けて接触させる接触形成部82Aと、接触形成部82Aよりも回転方向の下流側で加圧ベルト66を加熱ロール64に向けて加圧する加圧部82Bとを有している。 【0036】 図3及び図4において、定着装置60は、加熱ロール64及び加圧ベルト66の少なくとも一方を加熱する加熱源64Bを有し、加圧ベルト66が加熱ロール64へ向けて加圧される領域において、未定着のトナー像が加熱されて記録媒体Pに定着される。実施形態では、加圧される領域は、接触形成部82A及び加圧部82Bで加圧ベルト66が加熱ロール64へ向けて加圧される領域である。 【0037】 加熱ロール64及び加圧ベルト66によって挟まれて搬送される記録媒体Pは、加熱ロール64によってトナー画像が加熱されると共に加圧ベルト66によってトナー画像が加圧されて、加熱ロール64と加圧ベルト66との加圧領域において画像が定着されるようになっている。 【0038】 次に、加熱ロール64及び加圧ベルト66の具体的構成並びに加熱ロール64及び加圧ベルト66の支持構造について詳しく説明する。 【0039】 図2及び図3において、加熱ロール64は、円筒状の円筒部材64Aと、円筒部材64Aの内部空間に設けられたハロゲンランプ等の加熱源64Bとを備えている。円筒部材64Aは、アルミニウム、ステンレス等の金属材料により形成されている。円筒部材64Aの軸方向一端部には、図示しない駆動モータからの回転力を円筒部材64Aに伝達するためのギヤ64Cが取り付けられている。 【0040】 また、円筒部材64Aは、軸方向両端部が、すべり軸受68に支持される被支持部分64Dとなっている。円筒部材64Aの軸方向両端側の被支持部分64Dの間には、円筒部材64Aの外周面を被覆する被覆部材64Eが設けられている。被覆部材64Eは、ゴム等の弾性材料により形成されている。 【0041】 図1に示した定着装置本体62には、加熱ロール64及び加圧ベルト66を支持する支持体70が設けられている。支持体70は、加熱ロール64を支持するロール支持部材74と、加圧ベルト66をベルト支持部材76とを備えている。 【0042】 ロール支持部材74は、加熱ロール64の軸方向両端側に配置され、加熱ロール64を支持する一対の側板74Aと、一対の側板74Aの間に配置され一対の側板74Aを連結する連結板74Bとを備えている。 【0043】 一対の側板74Aには、すべり軸受68がそれぞれ取り付けられている。すべり軸受68は、円筒部材64Aの被支持部分64Dを回転可能に支持している。 【0044】 一対の側板74Aの一端部には、ベルト支持部材76を回転可能に支持する軸部74Jが設けられている。また、一対の側板74Aの他端部には、引っ張りバネ90の一端部が取り付けられる取付部74Eがそれぞれ設けられている。取付部74Eは、具体的には、一対の側板74Aに形成された凹部で構成されている。凹部で構成された取付部74Eに引っ張りバネ90の一端部に形成されたフック90Aが引っ掛けられるようになっている。 【0045】 ベルト支持部材76は、加圧ベルト66の軸方向両端側に配置された一対の側板76Aを備えている。加圧ベルト66は、ベルト支持部材76によって加熱ロール64に対向する位置で、図1に示した定着装置本体62に周回可能に支持されている。加熱ロール64及び加圧ベルト66では、加熱ロール64が回転駆動されると共に加圧ベルト66が加熱ロール64に従動して回転することにより、トナー画像が転写された記録媒体Pを挟んで搬送する構成となっている。 【0046】 一対の側板76Aの他端部には、引っ張りバネ90の他端部が取り付けられる取付部76Cがそれぞれ設けられている。取付部76Cは、具体的には、一対の側板76Aを貫通する貫通孔で構成されている。貫通孔で構成された取付部76Cに引っ張りバネ90の他端部に形成されたフック90Bが引っ掛けられるようになっている。また、一対の側板76Aには、図3に示した板体84が、差し込み可能な差込溝76Bがそれぞれ形成されている。 【0047】 (加圧部材80の構成) 図3及び図4において、加圧部材80は、加熱ロール64側に配置された加圧体82と、加圧体82に設けられた側面視L字状の板体84とを備えている。 【0048】 図5において、加圧体82は、図2に示した加熱ロール64の回転軸AR方向に沿って長さを有すると共に、側面視にて概略四角形状(ブロック形状)に形成されている。加圧体82の加熱ロール64側には、接触形成部82Aと加圧部82Bとが形成されている。ここで、詳細には図示しないが、接触形成部82Aと加圧部82Bとは、接触面として形成されている。また、加圧体82の加熱ロール64から離れた側には、板体84が差し込まれる差込溝82Cが、加圧体82の長手方向に沿って形成されている。差込溝82Cは、加圧体82における加圧ベルト66の回転方向下流側に配置されている。また、板体84は、加熱ロール64の回転軸AR方向に沿って長さを有している。 【0049】 図2及び図3に示したベルト支持部材76の一対の側板76Aとロール支持部材74の一対の側板74Aとが引っ張りバネ90によって引っ張られることにより、加圧部材80が加圧ベルト66の回転軸AR方向の両端側で荷重(加圧力)をかけて加圧ベルト66を加熱ロール64へ加圧する。 【0050】 図3?図5において、加圧体82は、差込溝82Cに差し込まれた板体84から加圧力Fが付与されるため、差込溝82Cが配置された部分において、加圧部82Bは加圧ベルト66を第2の圧力で加圧し、加圧力Fが最大となる。これにより、図3に示すように、加圧ベルト66の回転軸方向に沿った側面視にて、加圧ベルト66の加熱ロール64への加圧力Fが加圧部82Bで最大となる。 【0051】 接触形成部82Aは、加圧部82Bに対して搬送方向の上流側に配置され、加圧ベルト66を、記録媒体Pを加熱ロール64へ接触させるように、加圧ベルト66を加熱ロール64へ第2の圧力より小さい第1の圧力で加圧する。接触形成部82Aが配置された位置では、記録媒体Pが存在しない場合、加熱ロール64と加圧ベルト66との間には、隙間があるか、加熱ロール64と加圧ベルト66とが接触するかしないかの状態となっている。 【0052】 図6に、加圧体82を下流側から見た概略概念図を示した。図6では曲率を誇張して描いている。曲率を有さない場合と比較した曲率を有することによる両端部のずれは、数十μm程度である。 【0053】 図6において、接触形成部82A及び加圧部82Bが、加熱ロール64の回転軸AR方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって加圧する方向に膨らんだ形状を有している。そして、接触形成部82Aの第1の曲率が加圧部82B第2の曲率よりも小さく形成されている。 【0054】 加圧部82Bによる加圧で、加熱ロール64は撓む。この加熱ロール64の撓みに合わせて、加圧部82Bの形状は、加熱ロール64の回転軸AR方向において、両端部から中央にかけて第2の曲率をもって加圧する方向に膨らんだ形状になっている。したがって、加圧部82Bの加圧によって、加圧ベルト66は回転軸AR方向に加熱ロール64に略均等に当たっている。この略均等に当たっている部分が加圧領域を構成する。 【0055】 一方、接触形成部82Aは、加圧部82Bに対して搬送方向の上流側に配置され、加圧ベルト66を、記録媒体Pを加熱ロール64へ接触させるように、加圧ベルト66を加熱ロール64へ第2の圧力より小さい第1の圧力で加圧する。接触形成部82Aが配置された位置では、記録媒体Pが存在しない場合、加熱ロール64と加圧ベルト66との間には、隙間があるか、加熱ロール64と加圧ベルト66とが接触するかしないかの状態となっている。 【0056】 より詳しくは、接触形成部82Aは、最も加圧力Fの加わる加圧部82Bに対して円周方向にずれて配置されているため、接触形成部82Aに対向する加熱ロール64の領域は、加圧部82Bによる加圧で撓む加熱ロール64の領域ほど撓まない。ここで、接触形成部82Aに対向する加熱ロール64の撓みより第1の曲率を小さく設定するのがよい。 【0057】 したがって、第1の曲率が第2の曲率と同じである場合、接触形成部82Aに対向する加熱ロール64の領域の撓みに対して、接触形成部82Aの両端部が中央と比較して加熱ロール64から離れる。ここで、記録媒体Pが搬送されてくると、記録媒体Pは、加熱ロール64と加圧ベルト66との間の回転軸AR方向の中央において、両端部と比較して、記録媒体Pが加熱ロール64と加圧ベルトとに先に挟まれて加圧される。これにより、記録媒体Pは、接触形成部82Aが配置された位置で、中央において搬送方向に引っ張られ、両端部の搬送が遅れることにより記録媒体Pにしわが発生する。 【0058】 一方、第1の曲率が第2の曲率より小さい場合、記録媒体Pが搬送されてくると、記録媒体Pは、加熱ロール64と加圧ベルト66との間の回転軸AR方向の両端部において、加熱ロール64と加圧ベルトとに先に挟まれて加圧される。このような曲率にすることで、接触形成部82Aが配置された位置で、記録媒体Pが両端部の2ヵ所において搬送方向に引っ張られ、中央の1か所において引っ張られるときと比較して、しわの発生が抑えられる。したがって、記録媒体Pを加熱ロール64と加圧ベルトとで先に挟んで加圧してしわの発生を抑えるためには、接触形成部82Aが曲率を有さないで、加圧する方向に平らな形状であってもよい。 【0059】 また、加熱ロール64の両端部は、加熱源64Bの配置等により温度が上がりにくいので定着性が悪い。ここで、接触形成部82Aに対向する加熱ロール64の撓みより第1の曲率が小さいと、両端部から記録媒体Pが加熱ロール64と加圧ベルトとに先に挟まれて加圧及び加熱される。したがって、加熱ロール64の回転軸AR方向に均一な定着が行われる。接触形成部82Aは、記録媒体Pを加熱ロール64に接触させられればよく、特に加圧しているものに限られるものではない。 【0060】 図7に、加圧体82を加熱ロール64側から見た概略概念図を示した。図には記録媒体Pの搬送方向Hを示した。図4、図5及び図7において、加圧部82Bは平面として形成され、加圧部82Bの上流側には窪み82Dが形成されている。そして、加圧部82Bの上流側の端部Qが、回転ロール64の回転軸AR方向において、両端部から中央にかけて上流側に向かって膨らんだ形状を有している。 【0061】 加熱ロール64と加圧ベルト66との間に送り込まれた記録媒体Pは、加熱ロール64の回転軸AR方向中央において、最初に加圧部82Bの端部Qに到達して、加圧部82Bによって加圧され、加熱ロール64の回転軸AR方向両端部において、最後に加圧部82Bの端部Qに到達して、加圧部82Bによって加圧される。したがって、この記録媒体Pは、搬送方向Hと直交する幅方向の中央から幅方向両端部に向けて、徐々に、加圧部82Bによって加圧される。これにより、記録媒体Pの幅方向両端部を外側へ押し出そうとする力が作用し、加圧部82Bにおける記録媒体Pのしわが抑制される。 【0062】 図7に示したように、加圧部82Bの加圧領域の搬送方向Hの長さが、中央部より両端部が短いので、両端部の定着性が悪くなるが、上述したように、両端部から記録媒体Pを加熱ロール64に早く当てることで、加熱ロール64の回転軸AR方向に均一な定着が行える。 【0063】 また、本実施形態では、端部Qが、記録媒体Pが進入する側に湾曲されている構成であったが、端部Qが、記録媒体Pが進入する側に屈曲する構成、すなわち、V字状に形成される構成であってもよい。また、端部Qが、直線状に形成される構成であってもよい。 【0064】 本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、加圧ベルト66の内部に加熱源を配置して、加圧ベルト66を加熱ベルトとして用いる構成であってもよい。この構成では、加熱ロール64を加圧ロールとして用いてもよい。また、加圧ベルト66を加熱ベルトとして用いる構成では、加圧ベルト66と加熱ロール64との配置位置を入れ替えてもよい。 【符号の説明】 【0065】 10…画像形成装置、14…画像形成部、60…定着装置、64…回転ロールの一例である加熱ロール、64B…加熱源、66…無端ベルトの一例である加圧ベルト、80…加圧部材、82A…接触形成部、82B…加圧部、AR…回転軸、H…搬送方向、P…記録媒体、Q…端部、R…回転方向。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 回転体と、 前記回転体との間に記録媒体を挟んで周回する無端ベルトと、 前記無端ベルトの内周側に前記回転体の回転軸方向に沿って配置され、前記無端ベルトを前記回転体に向けて加圧する加圧部材とを備え、 前記加圧部材が、前記記録媒体を前記回転体へ向けて接触させる接触形成部と、前記接触形成部よりも回転方向の下流側で前記無端ベルトを前記回転体に向けて加圧する加圧部とを有し、 前記接触形成部における用紙搬送方向下流側の端部と、前記加圧部における用紙搬送方向上流側の端部とが、前記加圧部材の長手方向の全域で前記無端ベルトと前記加圧部材との間に隙間が形成されるよう離れており、 前記隙間は、前記回転体に向けて前記加圧部材が加圧された状態において、前記用紙搬送方向上流側から下流側に向かうに従い前記無端ベルトと前記加圧部材との間の距離が小さくなり、 前記接触形成部及び前記加圧部が、前記回転体の回転軸方向において、それぞれ、両端部から中央にかけて第1及び第2の曲率をもって前記回転体の方向に膨らんだ形状を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率よりも小さいことを特徴とする定着装置。 【請求項2】 前記加圧部の用紙搬送方向上流側の端部が、前記回転体の回転軸方向において、両端部から中央にかけて用紙搬送方向上流側に向かって膨らんだ形状を有している ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。 【請求項3】 前記回転体及び前記無端ベルトの少なくとも一方を加熱する加熱源を有し、 前記無端ベルトが前記回転体に対して加圧される領域において、未定着のトナー像が加熱されて前記記録媒体に定着される ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。 【請求項4】 記録媒体に未定着のトナー像を転写する画像形成部と、 前記未定着のトナー像を前記記録媒体に定着させる請求項1?請求項3のいずれか一項に記載の定着装置とを備えた ことを特徴とする画像形成装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-05-02 |
出願番号 | 特願2013-65299(P2013-65299) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(G03G)
P 1 651・ 851- YAA (G03G) P 1 651・ 853- YAA (G03G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 飯野 修司、中澤 俊彦 |
特許庁審判長 |
森次 顕 |
特許庁審判官 |
黒瀬 雅一 藤本 義仁 |
登録日 | 2016-09-23 |
登録番号 | 特許第6007844号(P6007844) |
権利者 | 富士ゼロックス株式会社 |
発明の名称 | 定着装置及び画像形成装置 |
代理人 | 黒岩 創吾 |
代理人 | 阿部 琢磨 |