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審決分類 審判 全部申し立て 4号2号請求項の限定的減縮  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1341942
異議申立番号 異議2017-700861  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-08 
確定日 2018-05-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6092966号発明「タイヤトレッド用ゴム組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6092966号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4、6-15〕について訂正することを認める。 特許第6092966号の請求項1-4、6-15に係る特許を維持する。 特許第6092966号の請求項5に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6092966号の請求項1-15に係る特許についての出願は、平成24年6月30日を出願日とする特許出願(特願2012-148065号)の一部を平成27年8月10日に新たな特許出願(特願2015-158477号)としたものであって、平成29年2月17日にその特許権の設定登録がなされ、同年3月8日に特許公報への掲載がなされ、その後、平成29年9月8日に特許異議申立人 竹口美穂から特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。

平成29年11月20日付け:取消理由の通知
平成30年 1月23日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)
同年 3月 2日 :意見書の提出(申立人)

第2 訂正の可否
1 訂正の内容
平成30年1月23日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、訂正前の請求項1-15は一群の請求項である。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載の「結合スチレン含量が25?35質量%の該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを60?100質量%含み、」の後に「該充填材中のシリカとカーボンブラックの含有比は、質量比(シリカ:カーボンブラック)で(100:0)?(50:50)であり、」を挿入する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6、8-13、15中の請求項の引用を下記のとおり訂正する。
【請求項6】
「請求項1?5」を「請求項1?4」に訂正する。
【請求項8】
「請求項1?7」を「請求項1?4、6?7」に訂正する。
【請求項9】
「請求項1?8」を「請求項1?4、6?8」に訂正する。
【請求項10】
「請求項1?9」を「請求項1?4、6?9」に訂正する。
【請求項11】
「請求項1?10」を「請求項1?4、6?10」に訂正する。
【請求項12】
「請求項1?11」を「請求項1?4、6?11」に訂正する。
【請求項13】
「請求項1?12」を「請求項1?4、6?12」に訂正する。
【請求項15】
「請求項1?14」を「請求項1?4、6?14」に訂正する。

2 訂正の可否について
(1)訂正事項1
この訂正は、本件訂正前の請求項5の規定「前記充填材中のシリカとカーボンブラックの含有比は、質量比(シリカ:カーボンブラック)で(100:0)?(30:70)である」、及び、「質量比(シリカ:カーボンブラック)」について、本件明細書【0035】の「シリカとカーボンブラックとの含有比(シリカ:カーボンブラック)が、質量比で(100:0)?(30:70)であることが好ましく、(100:0)?(50:50)であることがより好ましい。」との記載に基づいて、該質量比の要件を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえ、また、この訂正は新規事項の追加に該当しない。そして、この訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
この訂正は、請求項の記載を削除する訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。また、この訂正が新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(3)訂正事項3
この訂正は、訂正事項2により削除された請求項の引用を解消するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。また、この訂正が新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件発明
上記第2で述べたように、本件訂正は認められるので、本件の請求項1-4、6-15に係る発明(以下、本件特許の請求項1等に係る発明を「本件発明1」等という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、平成30年1月23日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1-4、6-15に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。

【請求項1】
結合スチレン含量の高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)と結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを含むゴム成分と充填材とを含有し、該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)の結合スチレン含量と該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)の結合スチレン含量との差が11質量%以上であるゴム組成物であって、該ゴム成分は、結合スチレン含量が37?60質量%の該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)と結合スチレン含量が25?35質量%の該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを60?100質量%含み、該充填材中のシリカとカーボンブラックの含有比は、質量比(シリカ:カーボンブラック)で(100:0)?(50:50)であり、tanδの温度曲線のピーク位置の温度が-16.0℃以上-6.0℃以下にあって、ピーク位置のtanδが1.13よりも大きく、0℃におけるtanδが0.95以上であり、かつ-5℃におけるtanδと5℃におけるtanδとの差の絶対値を-5℃と5℃との温度差で除した値{|(-5℃におけるtanδ)-(5℃におけるtanδ)|/10}(/℃)が0.045/℃より小さいことを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。
[結合スチレン含量(質量%)の測定方法: ^(1)H-NMRスペクトルの積分比から算出する。]
[tanδの測定方法: 動的引張粘弾性測定試験機を用いて、周波数52Hz、初期歪2%、動歪1%、3℃/分の昇温速度で-25℃から80℃におけるtanδの値を測定する。]
【請求項2】
60℃におけるtanδが0.135以下である請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記{|(-5℃におけるtanδ)-(5℃におけるtanδ)|/10}(/℃)が0.025/℃より大きい請求項1又は2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
前記tanδの温度曲線のピーク位置の温度が-12.0℃以上である請求項1?3のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記充填材中のシリカは、前記ゴム成分100質量部に対して、10?100質量部である請求項1?4のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項7】
前記充填材中のシリカは、前記ゴム成分100質量部に対して、30?80質量部である請求項6に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項8】
前記ゴム成分100質量部に対して、前記充填材30?55質量部を含有する請求項1?4、6?7のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項9】
前記充填材中のシリカのBET比表面積は150m^(2)/g以上である請求項1?4、6?8のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項10】
前記充填材が、前記結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)に偏在している請求項1?4、6?9のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項11】
前記ゴム成分は、前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)と前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを60?100質量%、並びにスチレン-ブタジエン共重合体ゴム以外のジエン系ゴムを40?0質量%を含有する請求項1?4、6?10のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項12】
前記ゴム成分は、前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)と前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを80?100質量%、並びにスチレン-ブタジエン共重合体ゴム以外のジエン系ゴムを20?0質量%を含有する請求項1?4、6?11のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項13】
前記結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)が、窒素含有化合物、ケイ素含有化合物、並びに窒素及びケイ素含有化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物により変性されてなるものである請求項1?4、6?12のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項14】
前記窒素含有化合物、ケイ素含有化合物、並びに窒素及びケイ素含有化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が、ヒドロカルビルオキシシラン化合物である請求項13に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項15】
前記スチレン含量が高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)の結合スチレン含量St(A)が40質量%以上である請求項1?4、6?14のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。

第4 異議申立ての理由及び取消理由についての検討
1 異議申立ての理由の概要
申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
・申立ての理由1
訂正前の請求項1-7、10、11、13、14に係る発明は甲第1号証に記載された発明であり、訂正前の請求項1-7、9-11、13、15に係る発明は甲第2号証に記載された発明であり、訂正前の請求項1-9、11、12、15に係る発明は甲第3号証に記載された発明であり、訂正前の請求項1-7、10、11、12、15に係る発明は甲第4号証に記載された発明であるから、それぞれ特許法第29条第1項第3号に該当し、訂正前の請求項1-15に係る特許は同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
・申立ての理由2
訂正前の請求項1-15に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基づいて、訂正前の請求項1-15に係る発明は甲第2号証に記載された発明に基づいて、訂正前の請求項1-9、11-15に係る発明は甲第3号証に記載された発明に基づいて、訂正前の請求項1-9、11-15に係る発明は甲第4号証に記載された発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1-15に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
・申立ての理由3
訂正前の請求項1-15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
・申立ての理由4
訂正前の請求項1-15に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。

甲第1号証:特開2005-325206号公報(以下、「甲1」という。)
甲第2号証:国際公開第01/23467号(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:国際公開第2012/073838号(以下、「甲3」という。)
甲第4号証:特許第4518858号公報(以下、「甲4」という。)

2 申立ての理由1、2について
(1)甲1に記載された事項
ア 「【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関する。」
イ 「【0039】
以下に、実施例および比較例において用いた各種薬品について説明する。
カーボン用末端変性SBR:JSR(株)製のSL574(溶液重合、スチレン単位量:15重量%、ビニル含量:57重量%)
シリカ用末端変性SBR1:旭化成(株)製のE10(溶液重合、スチレン単位量:39%、ビニル含量:31%)
シリカ用末端変性SBR2:JSR(株)製のHRR260(試作SBR)(溶液重合、スチレン単位量:26%、ビニル含量:72%)
NR:RSS♯3
カーボンブラック1:三菱化学(株)製の試作カーボンブラック(CTAB吸着比表面積:180m^(2)/g、ヨウ素吸着量:188mg/g)
カーボンブラック2:昭和キャボット(株)製のカーボンブラックISAF(CTAB吸着比表面積:107m^(2)/g、ヨウ素吸着量:120mg/g)
シリカ1:ローディア社製のシリカ115Gr(BET比表面積:112m^(2)/g、DBP吸油量:250ml/100g、DBP吸油量/BET比表面積:2.23)
シリカ2:デグサ社製のEP7012(マイクロパール)(BET比表面積:144m^(2)/g、DBP吸油量:273ml/100g、DBP吸油量/BET比表面積:1.90)
シリカ3:デグサ社製のシリカVN3(BET比表面積:175m^(2)/g、DBP吸油量:162ml/100g、DBP吸油量/BET比表面積:0.93)
シランカップリング剤:デグサ社製のSi-75
プロセスオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスPS24
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
老化防止剤:フレキシス社製のサントフレックス13
ステアリン酸:日本油脂(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2号
硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミサルファー
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のDPG
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
【0040】
実施例1?2および比較例1?5
(株)神戸製鋼所製1.7Lバンバリーを用いて、表1に示す配合内容を混練りした後、オープンロール上で得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤を加えて練り込んだ混合物を、150℃において30分間加硫することでゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を用いて、以下に示す特性試験をおこなった。

【0045】
<操縦安定性>
トレッドに、本発明のゴム組成物を使用し製造した195/60R15サイズのタイヤを常法で作製し、当該タイヤを装着した普通乗用車にてテストコースにおいて官能試験を実施し、操縦安定性が優れる場合を「○」、そうでない場合を「×」と評価した。

【0048】
試験結果を表1に示す。
【0049】
【表1】



(2)甲2に記載された事項
ア 「このような状況下で、本発明は、シリカ配合において、カーボンブラックの配合量が少ない場合にあっても加工性に優れ、また、更に低転がり抵抗性と耐ウエットスキッド性のバランス、強度特性等を改善したジエン系ゴム組成物を提供する事を目的とする。」(3頁18-21行)
イ 「本発明のゴム状重合体は、ジエン系重合体ゴム加硫物の形態で、高性能タイヤ、オールシーズンタイヤを代表的なものとするタイヤトレッド配合物に好適に使用されるが、他のタイヤ用途や防振ゴム、ベルト、工業用品、はきものなどにもその特徴を生かして適用できる。」(19頁13-16行)
ウ 「実施例
表1?表4に示す試料を原料ゴムとして、表5に示す配合を用い下記の混練方法でゴム配合物を得た。

実施例11-1?11-5、比較例11-1
本発明の限定の範囲内にあるスチレン-ブタジエンゴムの試料U、V、ブタジエンゴム(試料RD)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(試料RA)、天然ゴム(試料RE)を用いて表17記載の加硫ゴム組成物を調整した。シリカは吸着水量が5.4%のものを使用した。性能評価結果を表17に示した。
スチレン-ブタジエンゴムをブレンドして用いた場合でも、本発明の限定の範囲内にある試料U及び試料Vを用いた組成物は、乳化重合スチレン-ブタジエンゴムの組成物(比較例11-1)に比較して良好な省燃費性能とウエットスキッド性能のバランスを示す。

(表2)


(表4)

(表5)


(表17)


産業上の利用可能性
本発明の特定構造のスチレン-ブタジエンゴムを補強性シリカ充填材を含む特定の配合で用いることにより、強度特性、加工性、省燃費性能、グリップ性能の良好なタイヤトレッド用加硫ゴム組成物が提供される。またシリカ配合組成物を得るのに必要なシランカップリング剤の減量が可能となる。このタイヤ用加硫ゴム組成物は、省燃費抵能を必要とする自動車タイヤの材料として有用である。」(23頁1行-52頁6行)

(3)甲3に記載された事項
ア 「[0075]
表1?3に示す配合からなる24種類のタイヤトレッド用ゴム組成物(実施例1?7、比較例1?17)を、硫黄、加硫促進剤を除く成分を表4に示す共通配合成分と共に、1.8Lの密閉型ミキサーで160℃、5分間混練し放出したマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤を加えてオープンロールで混練することにより調製した。なお表1?3において、SBRが油展オイルを含むとき、油展オイルを含むSBRの配合量を記載すると共に、括弧内にオイルを除いた正味のSBRの配合量を記載した。また表4に示した共通配合成分の量は、表1?3に記載されたジエン系ゴム100重量部(正味のゴム量)に対する重量部で配合したことを意味する。

[0081][表1]

[0082][表2]

[0083][表3]

[0084]
なお、表1?3において使用した原材料の種類を下記に示す。
[0085]
・変性S-SBR1:変性共役ジエン系重合体ゴム、芳香族ビニル単位含有量が42重量%、ビニル単位含有量が32%、重量平均分子量(Mw)が75万、Tgが-25℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分25重量部を含む油展品、以下の製造方法により調製した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム。
[0086]
〔変性S-SBR1の製造方法〕
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4533g、スチレン338.9g(3.254mol)、ブタジエン468.0g(8.652mol)、イソプレン20.0g(0.294mol)およびN,N,N′,N′-テトラメチルエチレンジアミン0.189mL(1.271mmol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n-ブチルリチウム5.061mL(7.945mmol)を添加した。重合転化率がほぼ100%に到達した後、さらにイソプレン12.0gを添加して5分間反応させた後、1,6-ビス(トリクロロシリル)ヘキサンの40wt%トルエン溶液0.281g(0.318mmol)を添加し、30分間反応させた。さらに、下記に示すポリオルガノシロキサンAの40wt%キシレン溶液18.3g(0.318mmol)を添加し、30分間反応させた。メタノール0.5mLを添加して30分間攪拌した。得られたポリマー溶液に老化防止剤(イルガノックス1520、BASF社製)を少量添加し、伸展油としてフッコールエラミック30(新日本石油(株)製)を25部添加した後、スチームストリッピング法により固体状のゴムを回収した。得られた固体ゴムをロールにより脱水し、乾燥機中で乾燥を行い、変性S-SBR1を得た。
[0087]
ポリオルガノシロキサンA; 前記一般式(I)の構造を有するポリオルガノシロキサンであって、m=80、n=0、k=120、X^(1),X^(4),R^(1)?R^(3),R^(5)?R^(8)がそれぞれメチル基(-CH_(3))、X^(2)が下記式(VIII)で表される炭化水素基であるポリオルガノシロキサン
[化10]

[0088]

・変性S-SBR5:末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、芳香族ビニル単位含有量が42重量%、ビニル単位含有量が35%、重量平均分子量(Mw)が44万、Tgが-24℃、旭化成社製アサプレンE10、非油展品
[0089]
・変性S-SBR6: 前記一般式(II)の構造を有するポリオルガノシロキサンからなる変性共役ジエン系重合体ゴム、芳香族ビニル単位含有量が42重量%、ビニル単位含有量が32%、重量平均分子量(Mw)が75万、Tgが-25℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分25重量部を含む油展品、以下の製造方法により調製した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム。

[0090]
・変性S-SBR7: 前記一般式(III)の構造を有するポリオルガノシロキサンからなる変性共役ジエン系重合体ゴム、芳香族ビニル単位含有量が41重量%、ビニル単位含有量が32%、重量平均分子量(Mw)が75万、Tgが-25℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分25重量部を含む油展品、以下の製造方法により調製した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム。

[0094]
・変性S-SBR9: 前記一般式(I)の構造を有するポリオルガノシロキサンからなる変性共役ジエン系重合体ゴム、芳香族ビニル単位含有量が49重量%、ビニル単位含有量が28%、重量平均分子量(Mw)が71万、Tgが-17℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分25重量部を含む油展品、以下の製造方法により調製した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム。

[0096]
・変性S-SBR10: 前記一般式(I)の構造を有するポリオルガノシロキサンからなる変性共役ジエン系重合体ゴム、芳香族ビニル単位含有量が41重量%、ビニル単位含有量が17%、重量平均分子量(Mw)が74万、Tgが-37℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分25重量部を含む油展品、以下の製造方法により調製した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム。

[0098]
・変性S-SBR11: 前記一般式(I)の構造を有するポリオルガノシロキサンからなる変性共役ジエン系重合体ゴム、芳香族ビニル単位含有量が39重量%、ビニル単位含有量が40%、重量平均分子量(Mw)が75万、Tgが-21℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分25重量部を含む油展品、以下の製造方法により調製した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム。

[0100]

・E-SBR:乳化重合スチレンブタジエンゴム、芳香族ビニル単位含有量が25重量%、ビニル単位含有量が15重量%、重量平均分子量(Mw)が60万、Tgが-52℃、日本ゼオン社製Nipol 1723、ゴム成分100重量部に対しオイル分37.5重量部を含む油展品」

(4)甲4に記載された事項
ア 「【0019】
以下、実施例および比較例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明の技術的範囲をこれらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。
【0020】
湿式プリブレンドゴム(SBR-1)の調製
スチレン単量体単位を25重量%含み、ブタジエン部分のビニル結合量63%、重量平均分子量90万の高分子量スチレンブタジエンゴム(SBR)のシクロヘキサン溶液を製造し、別途製造したスチレン単量体単位を45重量%含み、ブタジエン部分のビニル結合量55%、重量平均分子量3万の低分子量SBRのシクロヘキサン溶液とブレンドして、均一化した。次いで、溶剤を除いて固形の湿式プリプレンドゴムSBR-1を得た。
【0021】
乾式プリブレンドゴム(SBR-2)の調製
スチレン単量体単位を25重量%含み、ブタジエン部分のビニル結合量63%、重量平均分子量90万の高分子量SBRを製造し、別途製造したスチレン単量体単位を45重量%含み、ブタジエン部分のビニル結合量55%、重量平均分子量3万の低分子量SBRを密閉型ミキサーで混練して、乾式プリプレンドゴムSBR-2を得た。
【0022】
試験サンプルの作製
以下の表1に示す配合における加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで5分間混練し、160℃に達したときに放出したマスターバッチに加硫促進剤と硫黄を8インチのオープンロールで混練してゴム組成物を得た。次いで、このゴム組成物を15cm×15cm×0.2cmの金型中で160℃、20分間プレス加硫して目的とする試験片(ゴムシート)を作製し、以下の物性試験に供した。
【0023】
試験方法
1) JIS硬度(20℃): JIS K6253のスプリング式硬さ試験A型に基づいて20℃のJIS硬度を測定した。
2) 300%モジュラス: JIS K6251に準拠して測定した。
3) 引張強度: JIS K6251に準拠して測定した。
4) 引張伸び: JIS K6251に準拠して測定した。
【0024】
試験タイヤの作製
本件実施例および比較例におけるゴム組成物は、キャップトレッドとして押出し、225/55R16サイズの試験タイヤを作製して、タイヤ性能試験に供した。
【0025】
タイヤ性能試験法
所定のタイヤを装着した試験車を用いて、ドライ操縦安定性およびウェット操縦安定性についてテストドライバーによる感応評価を行った。評価結果は、基準のタイヤよりも優れるタイヤを○、同等のものを△、劣るものを×とした。
【0026】
実施例1?3および比較例1?3
結果を表1に示す。
【表1】

【0027】
以上の結果によると、本発明のタイヤ用ゴム組成物では、ドライおよびウェットのグリップ性能に優れていることが判る。」

(5)対比・判断
ア 甲1に記載された発明(甲1発明)
上記(1)ア及び上記(1)イの【0045】、更に上記(1)イの比較例3に鑑みると、甲1には以下の甲1発明が記載されているといえる。
「スチレン単位量39%のシリカ用末端変性SBR1を30重量部、スチレン単位量26%のシリカ用末端変性SBR2を40重量部、NRを30重量部、カーボンブラック1を2重量部、シリカ2を68重量部、シランカップリング剤を5.4重量部、プロセスオイルを25重量部、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛をそれぞれ2重量部、硫黄を1.75重量部、加硫促進剤1を1.5重量部、加硫促進剤2を1.2重量部を配合した、タイヤトレッド用ゴム組成物。」

イ 甲2に記載された発明(甲2発明)
上記(2)ア及びイ、更に上記(2)ウの実施例11-2に鑑みると、甲2には以下の甲2発明が記載されているといえる。
「TGAMH(テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン)で変性された、結合スチレン量が25%のSBRである試料Vを35重量%、高シスBRである試料RDを30重量%、結合スチレン量40wt%のSBRである試料RAを35重量%に加え、配合S-3、すなわち、アロマチック油37.5重量部、シリカ65重量部、カーボンブラックN339 5重量部、シランカップリング剤6重量部、亜鉛華2.5重量部、ステアリン酸1重量部、老化防止剤2重量部、ワックス1.5重量部、硫黄1.4重量部、促進剤CZ1.7重量部、促進剤D2重量部を配合した、タイヤトレッド用ゴム組成物。」

ウ 甲3に記載された発明(甲3発明)
上記(3)アの[0075] 、更に上記(3)アの実施例1-7及び比較例3、4、7、9、10、12、13、15-17に鑑みると、甲3には以下の甲3発明が記載されているといえる。
「芳香族ビニル単位含有量が39?49重量%である変性S-SBRを20?50重量部、芳香族ビニル単位含有量が25重量%であるE-SBRを50?80重量部、SBR中に油展ゴムとして含まれるオイル分18.75?35.0重量部、シリカ15?80重量部、CB(カーボンブラック)0?5重量部、カップリング剤1.2?5.6重量部、粘着性付与樹脂0?50重量部、オイル0?5.0重量部を配合した、タイヤトレッド用ゴム組成物。」

エ 甲4に記載された発明(甲4発明)
上記(4)アの【0024】、更に上記(4)アの実施例2に鑑みると、甲4には以下の甲4発明が記載されているといえる。
「(スチレン単量体単位25重量%、ビニル結合量63%である高分子量SBR66.7重量%とスチレン単量体単位45重量%、ビニル結合量55%である低分子量SBR23.3重量%とアロマオイル10重量%との湿式プリブレンドゴムである)SBR-1を70部(うちゴム分63部、オイル分7部)、スチレン単量体単位45重量%であるSBR-5を65部(うちゴム分43.3部、オイル分21.7重量%)、NR10部、カーボンブラック50部、シリカ42部、シランカップリング剤、ポリシロキサン、ステアリン酸をそれぞれ2部、亜鉛華、老化防止剤をそれぞれ3部、硫黄と加硫促進剤-1をそれぞれ1.6部、加硫促進剤-2を2部配合した、タイヤトレッド用ゴム組成物。」

オ 本件発明1と甲1発明との対比・判断
(ア)甲1発明の「スチレン単位量39%のシリカ用末端変性SBR1」、「スチレン単位量26%のシリカ用末端変性SBR2」は、それぞれ、本件発明1の「結合スチレン含量の高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)」、「結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは以下の点で一致する。
「結合スチレン含量の高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)と結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを含むゴム成分と充填材とを含有し、該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)の結合スチレン含量と該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)の結合スチレン含量との差が11質量%以上であるゴム組成物であって、該ゴム成分は、結合スチレン含量が37?60質量%の該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)と結合スチレン含量が25?35質量%の該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを60?100質量%含み、該充填材中のシリカとカーボンブラックの含有比は、質量比(シリカ:カーボンブラック)で(100:0)?(50:50)である、タイヤトレッド用ゴム組成物。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点1a>
本件発明1は、「tanδの温度曲線のピーク位置の温度が-16.0℃以上-6.0℃以下にあって、ピーク位置のtanδが1.13よりも大きく、0℃におけるtanδが0.95以上であり、かつ-5℃におけるtanδと5℃におけるtanδとの差の絶対値を-5℃と5℃との温度差で除した値{|(-5℃におけるtanδ)-(5℃におけるtanδ)|/10}(/℃)が0.045/℃より小さい」と、四つの物性値で特定されるのに対し、甲1発明は、これらの物性値によって特定されていない点。

相違点1aについて検討する。

(イ)甲1発明は、ゴム成分として、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの他にNR(天然ゴム)も併せて配合されたものである。このスチレン-ブタジエン共重合体ゴムにNRが併せて配合された時のtanδの挙動が本件発明1と同等のものとなると解される根拠を、甲1から見いだすことができず、またそれが本件特許出願の原出願前において技術常識であったともいえない。

(ウ)申立人は、平成30年3月2日提出の意見書(以下、「申立人意見書」という。)において、参考資料1(國澤鉄也他、「NR/SBRブレンド系ゴム組成物の力学的特性とカーボンブラックの分配挙動」、日本複合材料学会誌、35(4),2009,157-164)を示しつつ、「参考資料1のFig.1下段のグラフによれば、NR/SBR=60/40?20/80の範囲では、NR配合比が増加してもtanδのピーク温度や値はほとんど変動していない。このように、複数のポリマーをブレンドした場合のtanδのピーク温度や値の変化の仕方は、ブレンド比の領域によって異なり、ブレンド比のある領域では緩やかであったり、ブレンド比のある領域では急であったりする。特許権者は、甲1発明では、SBRの合計で70重量部に対して低TgのNRを30重量部配合したことにより、低温側にピークないしは大きな肩部ができ、物性(b)(決定注:本件発明1における「ピーク位置のtanδが1.13よりも大き(い)」)や物性(c)(決定注:本件発明1における「0℃におけるtanδが0.95以上」)を満たすことがないと主張するが、NR/SBR=30/70の領域ではtanδのピーク温度や値の変化の仕方は穏やかであり、ほとんど変動しないことは参考資料1のFig.1からも明らかである。少なくとも、特許権者が主張するように、「(b)のピークのtanδ値、及び(c)の0℃のtanδ値を満たすことがないことは明らか」とは言えない。」(申立人意見書4頁1行-5頁2行)と主張する。
しかし、参考資料1のFig.1(159頁)に係る組成物(以下、「対照組成物」という。)には、本件発明1の必須成分であるシリカが含まれていない。シリカが含まれていない対照組成物のtanδ値の挙動が、「充填材中のシリカとカーボンブラックの含有比は、質量比(シリカ:カーボンブラック)で(100:0)?(50:50)」であるような、シリカがカーボンブラックと同量あるいはそれ以上に含まれる本件発明1に係る組成物と同等なものとなることは確認できず、また、上記(イ)と同様、同等なものと解される根拠を、甲1から見いだすことができず、それが本件特許出願の原出願前において技術常識であったともいえない。

(エ)このため、甲1発明が相違点1aの物性を満たしうるものと解することはできず、相違点1aは実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明と同一であるとはいえない。

(オ)そして、甲1の記載からは、相違点1aである四つの物性につき、これらを調整しようとする意図は見いだせず、これらを調整したことにより奏される「低発熱性とウェット制動性能とをより高度に両立させる」ことを想起することはできない。
このため、本件発明1は、甲1発明から当業者が容易になし得たものとはいえない。

(カ)よって、本件発明1は、甲1発明と同一であるとも、甲1発明から当業者が容易になし得たものともいえない。

カ 本件発明1と甲2発明との対比・判断
(ア)甲2発明の「結合スチレン量40wt%のSBRである試料RA」、「TGAMHで変性された結合スチレン量が25%のSBRである試料V」は、それぞれ、本件特許発明1の「結合スチレン含量の高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)」、「結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明との間には、上記オ(ア)に示したことと同様の一致点及び相違点(「相違点1b」という。)が存在する。

相違点1bについて検討する。

(イ)甲2発明は、ゴム成分として、SBR(スチレン-ブタジエン共重合体ゴム)の他に高シスBR(ブタジエンゴム)も併せて配合されたものである。この高シスBRは、ガラス転移温度が-108℃とかなり低く、SBRに高シスBRが併せて配合された時のtanδの挙動が本件発明1と同等のものとなると解される根拠を、甲2から見いだすことができず、またそれが本件特許出願の原出願前において技術常識であったともいえない。

(ウ)申立人は、申立人意見書において、「特許権者は、甲2発明では、SBRの合計で70重量%に対して低Tgの高シスBRを30重量%配合したことにより、低温側にピークないしは大きな肩部ができ、物性(b)や物性(c)を満たすことがないと主張するが、高シスBR/SBR=30/70の領域ではtanδのピーク温度や値の変化の仕方は穏やかであり、ほとんど変動しないことは明らかである。少なくとも、特許権者が主張するように、「(b)のピークのtanδ値、及び(c)の0℃のtanδ値を満たすことがないことは明らか」とは言えない。」(申立人意見書7頁2-8行)と主張する。
しかし、「高シスBR/SBR=30/70の領域ではtanδのピーク温度や値の変化の仕方は穏やかであり、ほとんど変動しないことは明らかである」と解される根拠を、甲2から見いだすことができず、それが本件特許出願の原出願前において技術常識であったともいえない。

(エ)このため、甲2発明が相違点1bの物性を満たしうるものと解することはできず、相違点1bは実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2発明と同一であるとはいえない。

(オ)そして、甲2の記載からは、相違点1bである四つの物性につき、これらを調整しようとする意図は見いだせず、これらを調整したことにより奏される「低発熱性とウェット制動性能とをより高度に両立させる」ことを想起することはできない。
このため、本件発明1は、甲2発明から当業者が容易になし得たものとはいえない。

(カ)よって、本件発明1は、甲2発明と同一であるとも、甲2発明から当業者が容易になし得たものともいえない。

キ 本件発明1と甲3発明との対比・判断
(ア)甲3発明の「芳香族ビニル単位含有量が39?49重量%である変性S-SBR」、「芳香族ビニル単位含有量が25重量%であるE-SBR」は、それぞれ、本件特許発明1の「結合スチレン含量の高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)」、「結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明との間には、上記オ(ア)に示したことと同様の一致点及び相違点(「相違点1c」という。)が存在する。

相違点1cについて検討する。

(イ)甲3発明は、ゴム成分として、ポリオルガノシロキサン変性のS-SBR(溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体ゴム)を用いたものである。そして、申立人は、申立人意見書において、「変性したS-SBRはオルガノシロキサン変性のSBRに起因するtanδ値が高ければ、物性(b)、物性(c)を満たすこともあるためである。」と主張する。
しかし、この変性SBRを用いた時のtanδの挙動が本件発明1と同等のものとなると解される根拠を、甲3から見いだすことができず、またそれが本件特許出願の原出願前において技術常識であったともいえない。

(ウ)このため、甲3発明が相違点1cの物性を満たしうるものと解することはできず、相違点1bは実質的な相違点であるから、本件発明1は甲3発明と同一であるとはいえない。

(エ)そして、甲3の記載からは、相違点1cである四つの物性につき、これらを調整しようとする意図は見いだせず、これらを調整したことにより奏される「低発熱性とウェット制動性能とをより高度に両立させる」ことを想起することはできない。
このため、本件発明1は、甲3発明から当業者が容易になし得たものとはいえない。

(オ)よって、本件発明1は、甲3発明と同一であるとも、甲3発明から当業者が容易になし得たものともいえない。

ク 本件発明1と甲4発明との対比・判断
(ア)2種のSBRの混合物であるSBR-1のスチレン単量体含量の平均値は、(25×0.667+45×0.233)/0.900=)30重量部であると算出される。
したがって、甲4発明の「スチレン単量体単位45重量%であるSBR-5」、「スチレン単量体単位30重量%であるSBR-1」は、それぞれ、本件発明1の「結合スチレン含量の高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)」、「結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4発明とは以下の点で一致する。
「結合スチレン含量の高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)と結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを含むゴム成分と充填材とを含有し、該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)の結合スチレン含量と該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)の結合スチレン含量との差が11質量%以上であるゴム組成物であって、該ゴム成分は、結合スチレン含量が37?60質量%の該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)と結合スチレン含量が25?35質量%の該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを60?100質量%含む、タイヤトレッド用ゴム組成物。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点1d>
本件発明1は、「tanδの温度曲線のピーク位置の温度が-16.0℃以上-6.0℃以下にあって、ピーク位置のtanδが1.13よりも大きく、0℃におけるtanδが0.95以上であり、かつ-5℃におけるtanδと5℃におけるtanδとの差の絶対値を-5℃と5℃との温度差で除した値{|(-5℃におけるtanδ)-(5℃におけるtanδ)|/10}(/℃)が0.045/℃より小さい」と、四つの物性値で特定されるのに対し、甲4発明は、これらの物性値によって特定されていない点。
<相違点2>
本件発明1は、「充填材中のシリカとカーボンブラックの含有比は、質量比(シリカ:カーボンブラック)で(100:0)?(50:50)であ(る)」のに対し、甲4発明は、「カーボンブラック50部、シリカ42部」である点。

相違点1d及び2について検討する。

(イ)本件発明1は、シリカがカーボンブラックと同量あるいはそれ以上に含まれるものである。甲4からは、甲4発明がシリカとカーボンブラックの量比をこのようにすることを想起しうる点を見いだすことができない。そうすると、本件発明1と甲4発明とは、明らかに異なる組成物であるといえる。
この点に鑑みると、甲4発明のtanδの挙動が本件発明1と同等のものとなると解することはできない。

(ウ)このため、本件発明1と甲4発明とは、相違点2において明らかに異なり、甲4発明が相違点1dの物性を満たしうるものとはいえないから、本件発明1は甲4発明と同一であるとはいえない。

(エ)そして、甲4発明における「充填材中のシリカとカーボンブラックの含有比」を「質量比(シリカ:カーボンブラック)で(100:0)?(50:50)にしようとすることや、相違点1dで挙げられる四つの物性を調整しようとする根拠はなく、これらを調整したことにより奏される「低発熱性とウェット制動性能とをより高度に両立させる」ことを想起することはできない。
このため、本件発明1は、甲4発明から当業者が容易になし得たものとはいえない。

(オ)よって、本件発明1は、甲4発明と同一であるとも、甲4発明から当業者が容易になし得たものともいえない。

ケ 本件発明2-4、6-15についての検討
本件発明2-4、6-15は、本件発明1を更に限定するものである。
そして、上記オ-クで検討したことと同様の理由で、本件発明2-4、6-15は、甲1-4発明のいずれかと同一であるとも、甲1-4発明のいずれから当業者が容易になし得たものともいえない。

(6)まとめ
以上のとおりであるから、本件の請求項1-4、6-15に係る特許は、いずれも特許法第29条に違反してされたものではなく、上記申立ての理由1、2には理由がない。

3 申立ての理由3、4について
(1)本件明細書及び図面の記載
本件の明細書及び図面には、以下の事項が記載されている。
ア 「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、まず、充填材の分散性を改良し、ゴム組成物のtanδの温度曲線において、tanδのピークをより高温にシフト(移動)させ、かつtanδのピーク値をより大きくすることを試みた。そして、本発明者は、さらなるゴム組成物の性能向上を目指して、ウェット制動性能の季節間差、すなわち夏と冬との路面温度の差に起因するウェット制動性能の変動に着目した。このウェット制動性能の季節間差は、上記のtanδのピークをより高温にシフト(移動)させ、かつtanδのピーク値をより大きくする手法では、かえって大きくなることを見出した。更に、このウェット制動性能の季節間差の原因を突き詰めると、ゴム組成物の0℃付近の温度依存性が著しく、それが季節間差を生む原因であること見出した。
【0007】
そこで、tanδの温度曲線のピーク位置の温度範囲を適切にして、0℃付近のtanδを高くすること及び0℃付近のtanδの温度依存性を小さくすること、すなわち-5℃におけるtanδと5℃におけるtanδとの差の絶対値を-5℃と5℃との温度差で除した値を小さくすることにより、どのような路面温度でも高いウェット制動性能が得られることを知見するに至った。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低発熱性とウエット制動性能とをより高度に両立させると共に、ウエット制動性能の季節間差をも低減し得るタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することができる。」

イ 「【0011】
[ゴム組成物]
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、tanδの温度曲線のピーク位置の温度が-16.0℃以上-6.0℃以下にあって、ピーク位置のtanδが1.13よりも大きく、0℃におけるtanδが0.95以上であり、かつ-5℃におけるtanδと5℃におけるtanδとの差の絶対値を-5℃と5℃との温度差で除した値{|(-5℃におけるtanδ)-(5℃におけるtanδ)|/10}(/℃)が0.045/℃より小さいことを特徴とする。
ここで、tanδは、動的引張粘弾性測定試験機を用いて、周波数52Hz、初期歪2%、動歪1%、3℃/分の昇温速度で、-25℃から80℃におけるtanδの値を動的引張貯蔵弾性率E’に対する動的引張損失弾性率E”の比(E”/E’)から測定する。
【0012】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物のtanδの温度曲線のピーク位置の温度は-16.0℃未満ではウエット制動性能が低下してしまい、-6.0℃より高いとゴム組成物の低温脆化性が悪化してしまう。ウエット制動性能を向上する観点から本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物のtanδの温度曲線のピーク位置の温度は-12.0℃以上-6.0℃以下であることが好ましい。tanδの温度曲線のピーク位置のtanδは1.13以下であるとウエット制動性能が低下するが、1.20より大きいとウエット制動性能がより向上するので好ましい。
また、-5℃におけるtanδと5℃におけるtanδとの差の絶対値を-5℃と5℃との温度差で除した値{|(-5℃におけるtanδ)-(5℃におけるtanδ)|/10}(/℃)(以下、「α(/℃)」と略称することがある。)を0.045/℃より小さくすること、及び0℃におけるtanδを0.95以上とすることの双方により、低発熱性とウエット制動性能とをより高度に両立させると共に、ウエット制動性能の季節間差をも低減することができる。ゴム組成物の0℃におけるtanδが0.95未満であるとウエット制動性能が低下することとなる。
【0013】
上記α(/℃)を図面に基づき説明する。図1は、本発明のゴム組成物及び比較例となるゴム組成物のtanδの温度曲線とそれぞれのゴム組成物のα(/℃)を図示した説明図である。図1において、本発明のゴム組成物の1例のtanδの温度曲線は実線で示されている。L1は、本発明のゴム組成物のα(/℃)を図示したものである。一方、比較例となるゴム組成物のtanδの温度曲線は破線で示されている。L2は、比較例となるゴム組成物のα(/℃)を図示したものである。図1より明らかなように、本発明のゴム組成物の0℃におけるtanδ値は、比較例となるゴム組成物の0℃におけるtanδ値より大きく、1.08である。また、本発明のゴム組成物のα(/℃)は、比較例となるゴム組成物のα(/℃)より小さい値となっており、0.035である。
【0014】
本発明のゴム組成物は、{|(-5℃におけるtanδ)-(5℃におけるtanδ)|/10}(/℃)、すなわちαが0.025/℃より大きく、かつ60℃におけるtanδが0.135以下であることが好ましい。αが0.025/℃より大きければ、ウエット制動性能が更に向上し、60℃におけるtanδが0.135以下であれば、低発熱性が更に向上するからである。
【0015】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、低発熱性とウエット制動性能とをより高度に両立させる観点から、結合スチレン含量の高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)と結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを含むゴム成分と充填材とを含有することが好ましい。本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物のゴム成分が、少なくとも2種類の結合スチレン含量(質量%)の異なるスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むことにより、ゴム成分内の複数のスチレン-ブタジエン共重合体ゴムに、それぞれ異なる機能分担を与えることが可能になるからである。
ここで、結合スチレン含量(質量%)は、^(1)H-NMRスペクトルの積分比から算出する。
【0016】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、αを0.045/℃より小さくする観点から、充填材が、前記結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)に偏在していることが好ましい。結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)に偏在させる方法として、例えば、以下の方法が好適に挙げられる。
(1)混練の第一段階で、結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)と充填材を混練した後、混練の第二段階で、結合スチレン含量の高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)を混練する。
(2)結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)として、充填材との親和性が高い変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを用いる。
本発明において、以下、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを「SBR」と略称することがある。

【0018】
本発明に係るスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)及び(B)は、乳化重合SBRであってもよいし、溶液重合SBRであってもよい。
本発明のゴム組成物の0℃におけるtanδを高くする観点から、スチレン含量が高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)の結合スチレン含量St(A)が40質量%以上であることが好ましく、40?60質量%であることがより好ましく、40?55質量%であることが更に好ましく、40?50質量%であることが特に好ましい。
上記の(2)の方法においては、結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)が、窒素含有化合物又はケイ素含有化合物により変性されてなる変性SBRであることが、充填材との親和性を高くする観点から好ましい。

【0035】
[充填材]
本発明のゴム組成物は、充填材として、ゴム成分100質量部に対して、充填材30?150質量部を含有することが好ましく、40?120質量部を含有することがより好ましい。30質量部以上であれば、耐摩耗性が向上し、150質量部以下であれば、低燃費性が向上する。
この充填材は、シリカ及び/又はカーボンブラックであることが好ましい。特に、充填材が、シリカ単独、又はシリカ及びカーボンブラックであることが好ましく、シリカとカーボンブラックとの含有比(シリカ:カーボンブラック)が、質量比で(100:0)?(30:70)であることが好ましく、(100:0)?(50:50)であることがより好ましい。シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、10?100質量部であることが好ましく、30?80質量部であることがより好ましい。この範囲であれば、低燃費性、氷雪性能及び耐摩耗性がより良好となり、かつウエット制動性能をより向上することができる。」

ウ 「【実施例】
【0045】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。なお、実施例中の各種の測定は下記の方法によっておこなった。
<結合スチレン含量(質量%)の測定方法>
^(1)H-NMRスペクトルの積分比から算出した。
<tanδの測定方法>
上島製作所(株)製スペクトロメーター(動的引張粘弾性測定試験機)を用いて、周波数52Hz、初期歪2%、動歪1%、3℃/分の昇温速度で、-25℃から80℃におけるtanδの値を動的引張貯蔵弾性率E’に対する動的引張損失弾性率E”の比(E”/E’)から測定した。
【0046】
[タイヤ性能評価]
<ウエット制動性能>
タイヤサイズ195/65R15の試験タイヤ4本を排気量2000ccの乗用車に装着し、その乗用車をテストコースの路面温度を10℃および30℃に設定したウェット評価路で走行させ、時速80km/hrの時点でブレーキを踏んでタイヤをロックさせ、停止するまでの距離を測定した。結果は、路面温度10℃における制動距離の逆数を比較例1のタイヤを100として指数表示し、路面温度30℃における制動距離の逆数を実施例4のタイヤを100として指数表示した。指数値が大きいほど、ウエット制動性能が良好である。
ウエット制動性能指数={(比較例1又は実施例4のタイヤの停止するまでの距離)/(供試タイヤの停止するまでの距離)}×100
<低発熱性>
タイヤサイズ195/65R15のタイヤにつき、回転ドラムにより80km/hの速度で回転させ、荷重を4.41kNとして、転がり抵抗を測定した。対照タイヤ(比較例1)の転がり抵抗の逆数を100として指数表示した。指数値が大きいほど、転がり抵抗が低く、低発熱性が優れることを示す。
低発熱性指数={(比較例1のタイヤの転がり抵抗)/(供試タイヤの転がり抵抗)}×100
【0047】
合成例1: N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランの合成
窒素雰囲気下、撹拌機を備えたガラスフラスコ中のジクロロメタン溶媒400mL中にアミノシラン部位として36gの3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン(Gelest社製)を加えた後、更に保護部位として塩化トリメチルシラン(Aldrich社製)48mL、トリエチルアミン53mLを溶液中に加え、17時間室温下で撹拌し、その後反応溶液をエバポレーターにかけることにより溶媒を取り除き、反応混合物を得、更に得られた反応混合物を圧力665Pa条件下で減圧蒸留することにより、130?135℃留分としてN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを40g得た。
【0048】
製造例1 無変性SBR(B-1)の製造
窒素置換された内容積5L(リットル)のオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2,750g、テトラヒドロフラン16.8mmol、スチレン125g、1,3-ブタジエン365gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、n-ブチルリチウム1.2mmolを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達した時点で、ブタジエン10gを追加し、更に5分重合させた。次に、重合反応系に、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液を加えて重合反応を停止させた。その後、真空乾燥して無変性SBR(B-1)を得た。結合スチレン含量は25質量%であり重量平均分子量は158,000、分子量分布は1.05であった。
【0049】
製造例2 変性SBR(B-2)の製造
無変性SBR(B-1)と同じように重合し、重合転化率が99%に達した時点で、ブタジエン10gを追加し、更に5分重合させた。次に、リアクターからポリマー溶液を、メタノール1gを添加したシクロヘキサン溶液30g中に少量サンプリングした後、合成例1で得られたN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1.1mmolを加えて、変性反応を15分間行った。この後、テトラキス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)チタン0.6mmolを加え、更に15分間撹拌した。最後に反応後の重合体溶液に、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒及び保護された第一アミノ基の脱保護を行い、110℃に調温された熟ロールによりゴムを乾燥し、変性SBR(B-2)を得た。得られた変性SBR(B-2)の結合スチレン量は25質量%、共役ジエン部のビニル含有量は56モル%、ムーニー粘度は32、変性前の重量平均分子量は158,000、変性前の分子量分布は1.05であった。
【0050】
製造例3 変性SBR(B-3)の製造
乾燥し、窒素置換された800mLの耐圧ガラス容器に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16モル%)、スチレンのシクロヘキサン溶液(21モル%)をブタジエン32.5g、スチレン17.5gとなるように注入し、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.44mmolを注入し、これにn-ブチルリチウム(BuLi)0.48mmolを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。
この重合系にテトラエトキシシラン0.43mmolを加えた後、更に50℃で30分間変性反応を行った。この後、重合系に、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン1.26mmol及び水1.26mmolを加えた後、50℃で30分間縮合反応を行った。この後、重合系に更に2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5重量%溶液0.5mLを添加し、反応を停止させた。その後、常法に従い乾燥することにより、テトラエトキシシラン変性である変性SBR(B-3)を得た。得られた変性SBRの結合スチレン量は35質量%、共役ジエン部のビニル含有量は52モル%、ムーニー粘度は64、変性前の重量平均分子量は186,000、変性前の分子量分布は1.07であった。
【0051】
実施例1?6及び比較例1?2
第1表に示す配合組成を有する8種のゴム組成物を調製し、タイヤサイズ195/65R15の乗用車用空気入りラジアルタイヤのトレッド接地部に実施例1?6及び比較例1?2のゴム組成物を配設して、8種類の乗用車用空気入りラジアルタイヤを作製して、加硫ゴム物性tanδ、ウエット制動性能及び低発熱性を評価した。評価結果を第1表に示す。なお、tanδは、タイヤから加硫ゴム試験片を切り出して評価した。
【0052】
【表1】

[注]
*1: 乳化重合SBR:JSR株式会社製、商品名「JSR 0202」、結合スチレン含量=46質量%、非油展
*2: 乳化重合SBR:日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol 1739」、結合スチレン含量=40質量%、ゴム100質量部に対して37.5質量部油展
*3: 乳化重合SBR:JSR株式会社製、商品名「JSR 0122」、結合スチレン含量=37質量%、ゴム100質量部に対して37.5質量部油展
*4: 溶液重合SBR:製造例1で得られた無変性SBR(B-1)、結合スチレン含量=25質量%
*5: 溶液重合SBR:製造例2で得られた、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン変性である変性SBR(B-2)、結合スチレン含量=25質量%
*6: 溶液重合SBR:製造例3で得られた、テトラエトキシシラン変性である変性SBR(B-3)、結合スチレン含量=35質量%
*7: カーボンブラック:N234、東海カーボン社製、商品名「シースト7HM」
*8: シリカ:東ソー・シリカ株式会社製、商品名「ニップシールAQ」
*9: シランカップリング剤:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、Evonik社製、商品名「Si69」(登録商標)
*10: プロセスオイル: 処理留出物芳香族系抽出物(TDAE)、JX日鉱日石エネルギー株式会社製、商品名「TDAE」
*11: 加硫促進剤DPG:大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーD」
*12: 老化防止剤6PPD:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック6C」
*13: 加硫促進剤DM:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーDM」
*14: 加硫促進剤NS:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーNS」
【0053】
第1表から明らかなように、実施例1?6のゴム組成物は、比較例1及び2のゴム組成物と比較して、いずれのゴム組成物も路面温度10℃におけるウエット制動性能、路面温度30℃におけるウエット制動性能、及び低発熱性がバランスよく良好であった。」

エ 「【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、低発熱性とウエット制動性能とをより高度に両立させると共に、ウエット制動性能の季節間差をも低減し得るので、オールシーズン用空気入りタイヤ、冬用空気入りタイヤ、夏用空気入りタイヤ等の乗用車用空気入りタイヤ、軽自動車用空気入りタイヤ、軽トラック用空気入りタイヤ、トラック・バス車用空気入りタイヤ等のトレッド部材、特にトレッド接地部材に好適に用いられる。」

オ「【図1】



(2)申立ての理由3(実施可能要件)
ア 本件明細書について
(ア)申立人は、「本件請求項1は、構成要件(C)「tanδの温度曲線のピーク位置の温度が-16.0℃以上-6.0℃以下にあって、」(D)「ピーク位置のtanδが1.13よりも大きく、」、(E)「0℃におけるtanδが0.95以上であり、かつ」、(F)「-5℃におけるtanδと5℃におけるtanδとの差の絶対値を-5℃と5℃との温度差で除した値{|(-5℃におけるtanδ)-(5℃におけるtanδ)|/10}(/℃)が0.045/℃より小さいことを特徴とする」、の各パラメータを満たすものであるが、本件明細書には、実施例として、本件発明の具体的な製造方法が記載されているものの、これ以外の物について製造指針等の記載がない。よって、当該技術分野の当業者であっても、実施例以外の物を製造するのに、期待し得る程度を超える試行錯誤等が必要になることは明らかである。」(特許異議申立書(以下、「申立書」という。)71頁21行-72頁3行)と主張する。
上記主張について検討する。

(イ)上記(E)及び(F)について
本件明細書には、「本発明のゴム組成物の0℃におけるtanδを高くする観点から、スチレン含量が高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)の結合スチレン含量St(A)が40質量%以上であることが好ましく、40?60質量%であることがより好ましく、40?55質量%であることが更に好ましく、40?50質量%であることが特に好ましい。」(上記(1)イ【0018】)、及び、「αを0.045/℃より小さくする観点から、充填材が、前記結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)に偏在していることが好ましい。結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)に偏在させる方法として、例えば、以下の方法が好適に挙げられる。…」(上記(1)イ【0016】)とあるように、その物性値の操作手法が具体的に記載されている。

(ウ)上記(D)について
本件実施例(上記(1)ウ【表1】)からみて、本件発明1において規定される「スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)の結合スチレン含量と…スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)の結合スチレン含量との差が11質量%以上」との条件を満たすことにより達成しうることが理解できる。

(エ)上記(C)について
特許権者が平成30年1月23日に提出した意見書(以下、「特許権者意見書」という。)に添付された乙第1号証(石川泰弘他、「ゴムの材料設計技術」、日本ゴム協会誌、69(11),1996,716-722)において、以下の記載がある。
「任意のポリマーをブレンドした時のブレンド物の粘弾性をシミュレートするために,まず各ポリマーの粘弾性データとそれらをブレンドした時の粘弾性データの比較を行った.2種のポリマーをブレンドした場合に図3のようにブレンド品のtanδカーブは大きく3つの異なる形状を示すことがわかる.ポリマー同士が混ざらない非相溶系では2つのtanδピークを,ある程度混ざる系(部分相溶系と呼ぶことにする)ではブロードなピークを,完全に混ざる相溶系ではひとつのtanδピーク,というようにポリマーのブレンド状態が粘弾性特性に影響を及ぼしている.

2.3 シミュレーションへの展開
実際のポリマーブレンド系におけるシミュレーションの例を次に示す.表1に示すミクロ構造の異なるポリマーの中から2つのポリマーをブレンドした.ミクロ構造の異なるSBRとハイシスBRのブレンドにおいてA,B,CとBRのブレンド系かSBRのミクロ構造の違いによって相溶系から部分相溶系,非相溶系へと変化する.一般的にはSBRのスチレン量が少なくビニル量が多いほどBRとの相溶性は高くなる.
このようなポリマー同士の相溶性の違いによるtanδ形状の変化を両ポリマーのピーク位置の接近の程度の違いとして捕らえ,この両ピークの接近の程度をピークシフト率Rs=ΔTps/ΔTpとして表す.図4のようにこの場合2つのポリマーのピークの温度差をΔTpとし,ブレンド系のピークと高温側のピークとの差をΔTpsとすると,Rsはどの程度ブレンドによってピークシフトしたかを示している.このRsとχ_(eff)-χ_(s)の関係を調べたところ図5に示すような関係が得られた.すなわち,χ_(eff)-χ_(s)が小さくなるとブレンド系のtanδはポリマー間の中央へ移動していく.…このようなχ_(eff)-χ_(s)とRsの関係からピークのシフト量を求め,この値を考慮してコンピュータ上でtanδ曲線を合成する.図6はこのようにしてシミュレートした結果(破線)を実測結果(◇プロット)とともに示したものである.」(717頁左欄4行-719頁右欄10行)

この記載に鑑みると、tanδのピークが異なる二種類のゴムの配合比を操作することによって、tanδのピーク温度は調整可能であるとの知見が、本件特許出願の原出願前において公知であったと理解できる。

(オ)以上の点からみて、当該技術分野の当業者であれば、本件明細書の記載及び本件特許出願の原出願前の知見から、過度の試行錯誤等を必要とせずに、実施例以外の物を製造しうるものと認められる。
このため、上記主張には理由がない。

イ tanδについて
申立人は申立書(72頁7行-73頁5行)において、要するに、上記ア(ア)に示した本件発明の(C)-(F)の各パラメータを充足するゴム組成物の調整には過度の試行錯誤を要し、本件は実施可能要件を満たさないものである旨主張する。
しかし、上記ア(イ)-(オ)で検討したとおりであるから、本件発明の(C)-(F)の各パラメータについては、当該技術分野の当業者であれば、本件明細書の記載及び本件特許出願の原出願前の知見から、過度の試行錯誤等を必要とせずに調整でき、このようなパラメータを充足した実施例以外の物を製造しうるものと認められる。
このため、上記主張には理由がない。

(3)申立ての理由4(サポート要件)
申立人は、「本件請求項1は、構成要件(C)ないし(F)の各パラメータを満たすものであり、実施例として、そのようなパラメータを満たす配合が記載されている。しかしながら、実施例以外の物について、本件出願時の技術常識に照らしてもその数式又は数値の範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されているとはいえない。」(73頁6-22行)と主張する。
しかし、「構成要件(C)ないし(F)の各パラメータを満たす」配合である本件実施例(上記(1)ウ【表1】)を基に、上記(2)ア(イ)-(エ)で検討したとおりの調整手法をもってすれば、本件発明の解決課題である「低発熱性とウエット制動性能とをより高度に両立させると共に、ウエット制動性能の季節間差をも低減し得る」(上記(1)ア、エ)ような「構成要件(C)ないし(F)の各パラメータを満たす」実施例以外のゴム組成物を得ることができると、当業者が認識しうるものと認められる。
このため、上記主張には理由がない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件の請求項1-4、6-15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号、又は、同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、上記申立ての理由3、4には理由がない。

4 取消理由について
(1)取消理由通知の概要
当審は平成29年11月20日付け取消理由通知において、概要以下のとおりの取消理由を通知した。

「(理由1)本件特許発明1ないし15は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第113条第2号に該当し、その特許は取り消されるべきものである。
(理由2)本件特許発明1ないし15は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、その特許は取り消されるべきものである。
(理由3)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(決定注:刊行物は、上記1に示したものと同一である。)」

(2)取消理由1、2について
上記2で検討したことと同様の理由で、本件の請求項1-4、6-15に係る特許は、いずれも特許法第29条に違反してされたものではない。
したがって、上記取消理由1、2には理由がない。

(3)取消理由3について
当審は、上記取消理由通知において、以下のとおり説示した。
「本件特許発明の実施にあたっては、本件特許発明1で特定される、物性(a)?(d)の4つの物性を、どのようにして、全て所定範囲内に調整するかが重要となる。
しかしながら、本件特許明細書には、4つの物性のうちの物性(d)のみについて、段落【0016】に、充填材を結合スチレン含量の低いSBR(B)成分に偏在させることが好ましい旨の指摘がされ、そのための好ましい方法として(1)、(2)の方法が例示されているのみである。
そして、その他の物性(a)ないし(c)について、実施例の記載以外に、それぞれを特定の範囲とするためにどのようにしたら良いのかについて具体的な教示はなく、さらに、物性(a)ないし(d)の全てを特定の範囲にするための手法の記載もない。また、これらの物性を本件特許発明で特定される範囲に設定する製造条件が、本件出願時に技術常識であったとする事情も見当たらない。
そうすると、物性(a)ないし(d)は、tanδという同一の変数を用いて、温度曲線のピーク位置であったり、ピーク位置のtanδの値や、0℃におけるtanδの値、さらには、-5℃?5℃におけるtanδの差の絶対値を温度差で割ったものであるが、これらは相互に独立の変数ではなく、4つのうちのある1つの物性が変化すれば、他の3つの物性も必然的に変化する性質のものであると解されるから、実施例以外の条件において、当業者が物性(a)?(d)の4つの物性を全て満たすゴム組成物を得るためには、過度の試行錯誤を要するものといえる。
また、本件特許発明1には、充填材とのみ特定されており、その種類について特定されていないものの、タイヤのトレッド用ゴム組成物の技術分野において、シリカやカーボンブラックの等の充填材の種類やその配合量は、tanδの数値に大きな影響を与えることが技術常識であるところ、本件特許明細書の実施例1?6の記載からは、カーボンブラック及びシリカのそれぞれの配合量を実施例近傍付近の数値範囲とし、かつゴムの成分を実施例近傍の配合量で配合したゴム組成物については、物性(a)ないし(d)を満たすゴム組成物を製造することが可能であったといえなくもないが、少なくとも、本件特許発明1で特定される範囲のうち、実施例の近傍、すなわち、実施例1?6に非常に近い条件でゴム成分・充填材の配合量以外の配合を行った場合について、上記で検討したように、当業者が物性(a)ないし(d)を満たすゴム組成物を得るためには、過度の試行錯誤を要するものである。
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2-7についても同様である。」
ここで、物性(a)ないし(d)は、それぞれ、上記3(2)ア(ア)の(C)ないし(F)に相当する。

この点に関し、上記3(2)ア(イ)-(オ)で検討したとおり、上記3(2)ア(ア)の(C)ないし(F)に相当する「物性(a)ないし(d)」の各パラメータについては、当該技術分野の当業者であれば、本件明細書の記載及び本件特許出願の原出願前の知見から、過度の試行錯誤等を必要とせずに調整でき、実施例以外の物を製造しうるものと認められる。
したがって、上記取消理由3には理由がない。

5 まとめ
以上のことから、本件発明1-4、6-15に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、また、同法第36条第4項第1号、又は、同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものともいえず、本件発明1-4、6-15に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、請求項1-4、6-15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-4、6-15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項5に係る特許については、上述のとおり、当該請求項を削除する訂正を含む本件訂正が認容されるため、特許異議申立ての対象となる特許が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合スチレン含量の高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)と結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを含むゴム成分と充填材とを含有し、該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)の結合スチレン含量と該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)の結合スチレン含量との差が11質量%以上であるゴム組成物であって、該ゴム成分は、結合スチレン含量が37?60質量%の該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)と結合スチレン含量が25?35質量%の該スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを60?100質量%含み、該充填材中のシリカとカーボンブラックの含有比は、質量比(シリカ:カーボンブラック)で(100:0)?(50:50)であり、tanδの温度曲線のピーク位置の温度が-16.0℃以上-6.0℃以下にあって、ピーク位置のtanδが1.13よりも大きく、0℃におけるtanδが0.95以上であり、かつ-5℃におけるtanδと5℃におけるtanδとの差の絶対値を-5℃と5℃との温度差で除した値{|(-5℃におけるtanδ)-(5℃におけるtanδ)|/10}(/℃)が0.045/℃より小さいことを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。
[結合スチレン含量(質量%)の測定方法: ^(1)H-NMRスペクトルの積分比から算出する。]
[tanδの測定方法: 動的引張粘弾性測定試験機を用いて、周波数52Hz、初期歪2%、動歪1%、3℃/分の昇温速度で-25℃から80℃におけるtanδの値を測定する。]
【請求項2】
60℃におけるtanδが0.135以下である請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記{|(-5℃におけるtanδ)-(5℃におけるtanδ)|/10}(/℃)が0.025/℃より大きい請求項1又は2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
前記tanδの温度曲線のピーク位置の温度が-12.0℃以上である請求項1?3のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記充填材中のシリカは、前記ゴム成分100質量部に対して、10?100質量部である請求項1?4のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項7】
前記充填材中のシリカは、前記ゴム成分100質量部に対して、30?80質量部である請求項6に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項8】
前記ゴム成分100質量部に対して、前記充填材30?55質量部を含有する請求項1?4、6?7のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項9】
前記充填材中のシリカのBET比表面積は150m^(2)/g以上である請求項1?4、6?8のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項10】
前記充填材が、前記結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)に偏在している請求項1?4、6?9のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項11】
前記ゴム成分は、前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)と前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを60?100質量%、並びにスチレン-ブタジエン共重合体ゴム以外のジエン系ゴムを40?0質量%を含有する請求項1?4、6?10のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項12】
前記ゴム成分は、前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)と前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)とを80?100質量%、並びにスチレン-ブタジエン共重合体ゴム以外のジエン系ゴムを20?0質量%を含有する請求項1?4、6?11のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項13】
前記結合スチレン含量の低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)が、窒素含有化合物、ケイ素含有化合物、並びに窒素及びケイ素含有化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物により変性されてなるものである請求項1?4、6?12のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項14】
前記窒素含有化合物、ケイ素含有化合物、並びに窒素及びケイ素含有化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が、ヒドロカルビルオキシシラン化合物である請求項13に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項15】
前記スチレン含量が高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)の結合スチレン含量St(A)が40質量%以上である請求項1?4、6?14のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-05-07 
出願番号 特願2015-158477(P2015-158477)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L)
P 1 651・ 572- YAA (C08L)
P 1 651・ 536- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 水野 明梨  
特許庁審判長 岡崎 美穂
特許庁審判官 渕野 留香
大熊 幸治
登録日 2017-02-17 
登録番号 特許第6092966号(P6092966)
権利者 株式会社ブリヂストン
発明の名称 タイヤトレッド用ゴム組成物  
代理人 大谷 保  
代理人 大谷 保  

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