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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G07B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G07B
管理番号 1341954
異議申立番号 異議2017-700585  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-12 
確定日 2018-05-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6046435号発明「駐車場のロック装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6046435号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。 特許第6046435号の請求項1、3、6、7に係る特許を取り消す。 特許第6046435号の請求項4、5に係る特許を維持する。 特許第6046435号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6046435号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成28年11月25日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年6月12日に特許異議申立人山田秀樹(以下、申立人という。)より請求項1?7に対して特許異議の申立てがされ、平成29年8月9日付けで取消理由が通知され、平成29年10月12日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年12月8日に申立人から意見書が提出されたものである。
そして、平成30年1月4日付けで取消理由通知(決定の予告)をし、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。なお、訂正事項1及び3ないし6における下線は訂正部分を示す 。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の幅寸法と軽自動車の幅寸法との差に基づいて計算した位置に設けられていることを特徴とする」と記載されているのを、「前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、前記車室の幅寸法から前記軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有して設けられていることを特徴とする」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3、6、7にそれぞれ「請求項1または請求項2に記載の」と記載されているのを、「請求項1に記載の」に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0009】に、「前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の幅寸法と軽自動車の幅寸法との差に基づいて計算した位置に設けられていることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、前記車室の幅寸法から前記軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有していることを特徴とする。」と記載されているのを、「前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、前記車室の幅寸法から前記軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有して設けられていることを特徴とする」に訂正する。
(5)訂正事項5
明細書の段落【0010】?【0012】にそれぞれ「請求項1または請求項2において、」と記載されているのを、「請求項1において、」に訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の段落【0014】に、「また、干渉抑制部を車両の幅寸法と軽自動車の幅寸法との差に基づいて計算した位置に設けるようにしているので、車両の幅寸法が異なる場合でも、車両の幅方向一側に干渉抑制部を設けることができ、幅寸法が異なる車両のスライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。」と記載されているのを、「また、干渉抑制部を、車両の幅方向に関して、車室の一側から延びており、車室の幅寸法から軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有しているようにしているので、車両の幅寸法が異なる場合でも、車両の幅方向一側に干渉抑制部を設けることができ、幅寸法が異なる車両のスライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び一群の請求項
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の干渉抑制部について、「前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、前記車室の幅寸法から前記軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有して設けられている」との記載により、車室との位置関係及び寸法をより具体的に限定しようとするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項1の「前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、前記車室の幅寸法から前記軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有して」いるは、訂正前の請求項2に記載されていたものであり、また、特許明細書の段落【0023】【0024】には、干渉抑制部の実施形態の切欠き6について「車室2の右端に車両3が駐車した場合に、車両3の左側のスライドドアに対応する位置に切欠き6を形成するようにすればよい。
このとき、車両3の幅寸法は、・・・、軽自動車などの小型の車両3の幅寸法をWs、・・・とした場合に、小型の車両3の幅寸法Wsの位置に切欠き6の右端が位置するようにすればよく、これにより、切欠き6の右端位置が決定される。また、車両3が車室2の左端に駐車した場合は、車両3の大きさにかかわらず、車両3の左端が車室2の左端に位置することになるので、切欠き6の左端は、ロック板4の左端まで位置する必要がある。したがって、切欠き6の長さ寸法Lは、車室2の幅寸法W-小型の車両3の幅寸法Wsにより決定されるものである。」と記載されており、当該記載から導出される構成である。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下単に「本件特許明細書等」ということがある。)に記載した事項の範囲内においてされた訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項1が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

訂正事項2は、請求項2を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項2が、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

訂正事項3は、上記訂正事項2に係る請求項2の削除に対応して、請求項3、6、7において請求項の引用を改めるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項3が、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

訂正事項4?6は、上記訂正事項1?3に係る特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載内容と発明の詳細な説明の記載内容とを整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項4?6が、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

そして、本件訂正前の請求項2?7は請求項1を直接あるいは間接に引用する請求項であるから、請求項1?7は一群の請求項であるところ、これらの訂正は、一群の請求項1?7に対し請求されたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正を認める。

第3 当審の判断
1.本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1、3?7に係る発明(以下「本件発明1、3?7」という。)は、その訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1、3?7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

本件発明1「駐車場の車室に該車室に駐車した車両のロックを行うためのロック板を昇降自在に設置し、
前記ロック板の車両の幅方向一側に対応する位置には、前記ロック板と駐車した車両の扉動作との干渉を抑制する干渉抑制部が設けられており、
前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、前記車室の幅寸法から前記軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有して設けられていることを特徴とする駐車場のロック装置。」

本件発明3「前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた切欠きであることを特徴とする請求項1に記載の駐車場のロック装置。」

本件発明4「前記切欠きは、凹んだ弧状の部分を一部に有することを特徴とする請求項3に記載の駐車場のロック装置。」

本件発明5「前記切欠きは、前記車両の幅方向に関する両端のうち前記車室の一側から遠い側の端において前記凹んだ弧状の部分を一部に有することを特徴とする請求項4に記載の駐車場のロック装置。」

本件発明6「前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた回転体であることを特徴とする請求項1に記載の駐車場のロック装置。」

本件発明7「前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた弾性体であることを特徴とする請求項1に記載の駐車場のロック装置。」

2.取消理由の概要
本件訂正前の請求項1?7に係る特許に対して、上記平成29年8月9日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。なお、当該取消理由は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由を全て含んでいる。

(1)取消理由1
請求項1の「前記車室の幅寸法と軽自動車の幅寸法との差に基づいて計算した位置」及び「軽自動車の幅寸法」との記載は不明確であるから、請求項1、3?7に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。また「軽自動車の幅寸法」について、明細書及び図面にもその定義が記載されていないから、本件特許の発明の詳細な説明は請求項1?7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。したがって、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2)取消理由2
請求項1?7に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である甲第6?10号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

3.甲号証の記載
甲第6号証:特開2001-148097号公報
甲第7号証:特開2005-98061号公報
甲第8号証:特開2004-197433号公報
甲第9号証:特開2000-339368号公報
甲第10号証:特許4185554号公報

(1)甲第6号証
甲第6号証には、次のとおり記載されている。
ア 「【請求項1】 駐車スペースへの車両乗り入れを検知することによって傾斜起立して車両の退出を阻止し,駐車料金精算機への駐車料金領収を検知することによって転倒復帰して車両の退出を可能とする起倒自在のロックプレートを備えた車両無賃退出防止装置であって,上記ロックプレートを駐車車両のタイヤ通過位置より駐車スペース内側のタイヤに無係合の位置にしてボディ下面において起立する起倒自在にして単独中間のロックプレートとしてなることを特徴とする無人駐車場の車両無賃退出防止装置。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は無人駐車場の無賃退出防止装置に関する。」
ウ 「【0011】無賃退出防止装置Bは,駐車スペース1への車両乗り入れを検知することによって傾斜起立して車両の退出を阻止し,駐車料金精算機5への駐車料金領収を検知することによって転倒復帰して車両の退出を可能とする起倒自在のロックプレート25を備えたものとしてあり,上記ロックプレート25は,これを駐車車両のタイヤ通過位置より駐車スペース1内側のタイヤに無係合の位置にしてボディ下面において起立する起倒自在にして単独中間のロックプレートとしたものとしてある。」
エ 「【0013】本例の車両無賃退出防止装置Bは,その上記ロックプレート25を,駐車スペース1側端に配置した駆動ボックス11に内蔵の駆動部12から駐車スペース1内側に向けて突出し該駆動ボックス11に隣接するタイヤ通過位置の隆起カバー21で被覆した駆動軸18に連結し,ロックプレート25を上記駆動部12によって起立方向及び転倒復帰方向に回動自在としたものとしてある。」
オ 図2から、隆起カバー21が駆動部12からロックプレート25まで延びていること、及び隆起カバーが駆動部12からロックプレートの位置までの幅寸法を有することが看取できる。

カ 上記摘記事項エの「駐車スペース1側端に配置した駆動ボックス11」「該駆動ボックス11に隣接するタイヤ通過位置の隆起カバー21」及び図示事項オから隆起カバーは駐車スペースの一側から延びており、ロックプレートの位置までの幅寸法を有するということができる。

上記摘記事項アないしエ、及び認定事項カを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえ本件発明1に照らして整理すると、甲第6号証には次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。

「駐車場の駐車スペースに駐車した車両の退出を阻止するためのロックプレートを起倒自在に設置し、タイヤ通過位置には隆起カバーが設けられており、隆起カバーは駐車スペースの一側から延びており、ロックプレートの位置までの幅寸法を有し、ロックプレートは、駐車車両のタイヤ通過位置より駐車スペース内側のタイヤに無係合の位置に設けられている駐車場の車両無償退出防止装置。」

(2)甲第7号証
甲第7号証には、次のとおり記載されている。
ア 「【請求項1】
回動軸が設けられた軸辺、及び、前記軸辺に対向する辺である回動辺を有し、駐車領域の中央付近の路面上に前記回動軸を軸支して設置されたフラップと、車両が前記駐車領域に入庫した際に前記フラップを回動して、車両の前後輪の間で前記フラップを起立させることにより車両を拘束するフラップ駆動機構と、を備えた車両拘束装置において用いられるフラップであって、
前記回動辺は、
前記駐車領域の中央側に位置し前記軸辺との距離が最大である第1の領域と、
前記駐車領域の側方側に位置し前記第1の領域よりも前記軸辺との距離が短く形成された第2の領域と、
を有することを特徴とするフラップ。」
イ 「【請求項2】
前記回動辺の第2の領域は、前記軸辺との距離が前記駐車領域の中央側から側方側にかけて漸次短くなるように、前記軸辺に対して傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1記載のフラップ。」
ウ 「【0001】
本発明は、無人駐車場等に使用される駐車中の車両を拘束するために用いられる車両拘束技術に関する。」
エ 「【0055】
図1は本発明の実施例1に係る車両拘束装置の平面図である。図1において、実施例1に係る車両拘束装置1は、傾斜板2、フラップ3、補助傾斜板4、水平回動軸5、フラップ回動機構6、及びピローブロック軸受箱7を備えている。尚、本実施例の車両拘束装置1は、図18に示したものと同様に、駐車領域中央付近の路面に設置されるものとする。
【0056】
傾斜板2は、矩形状の縞鋼板により構成されている。傾斜板2は、その長辺が駐車領域の路面に水平になるように、緩勾配をつけた状態で路面に設置される。また、フラップ3は、縁辺を金属補強枠により補強された縞鋼板により構成されている。フラップ3は、回動軸5が設けられた軸辺3a、及び、軸辺3aに対向する辺である回動辺3bを有している。そして、フラップ3は、傾斜板2の傾斜上部縁辺2aに近接した位置に、当該傾斜上部縁辺2aと平行に回動軸5が軸支された状態で設置されている。また、フラップ3は、全体形状が、軸辺3aを下辺とし、駐車領域の中央側に偏倚した上辺3b’を有する台形状に形成されている。以下では、フラップ3の上辺3b’を回動辺3bの第1の領域、駐車領域側方側のフラップ3の斜辺3b”を回動辺3bの第2の領域と称す。回動辺3bの第1の領域は、回動辺3bの全領域において軸辺3aとの距離が最大である。また、回動辺3bの第2の領域は、軸辺3aとの距離が駐車領域の中央側から側方側にかけて漸次短くなるように、軸辺3aに対して傾斜して形成されている。」
オ 「【0059】
ここで、フラップ3の高さ(軸辺3aと上辺3b’との距離)は、車高の高い車両に対しても、フラップ3が起立した状態でフラップ3の上辺3aが接触可能な高さとされる。具体的には、フラップ3の高さは、25?50cm程度とするのが好ましい。この程度の高さとしておけば、通常のオフロード仕様車のように車高の高い車両であっても充分に拘束することが可能だからである。
【0060】
傾斜板2及びフラップ3の両側には、フラップ回動機構6及びピローブロック軸受箱7が設置されている。これら、フラップ回動機構6及びピローブロック軸受箱7は、水平回動軸5を軸承する軸受けを有しており、水平回動軸5を水平状体で軸承する。フラップ回動機構6は水平回動軸5を回動駆動して、フラップ3に対して倒起動作をさせる。」
カ 「【0062】
図2は本発明の実施例1に係る車両拘束装置を駐車領域に設置した状態を表す斜視図である。図2において、駐車領域10の車両入口側10aと反対側(以下、「奥側」という。)10bの縁辺付近には、左右対称に2つの車止11,11が設置されている。そして、駐車領域10の路面中央付近に、何れか一方の側部寄りに、駐車装置1が設置される。
【0063】
駐車装置1は、傾斜板2が駐車領域10の車両入口側10a、フラップ3が駐車領域10の奥側10bとなる向きに設置される。これにより、フラップ3の回動辺3bは、上辺(第1の領域)3b’が駐車領域10の中央側に位置するとともに、斜辺(第2の領域)が駐車領域10の側方側に位置するように設置される。」
キ 「【0068】
更に、駐車領域10の側方側に位置するフラップ3の斜辺(第2の領域)3b”は、上辺(第1の領域)3b’よりも幅が狭く形成されている。そのため、車両12の下部からはみ出した部分のフラップ3は、幅が狭い。従って、車高の高い車両12を拘束するためにフラップ3の高さ(上辺3b’と軸辺3aとの距離)を広くした場合でも、車両12の下部からはみ出す部分のフラップ3の高さ(斜辺3b”と軸辺3aとの距離)は狭くなる。そのため、車両12の下部からはみ出した部分のフラップ3の斜辺3b”を足で踏む等して押し下げようとしても、フラップ3に加わるトルクが小さいため、フラップ3を押し下げることが困難となる。従って、車両12を不正に拘束から開放することが困難となる。」
ク 図2から、フラップ3及び斜辺(3b”)が駐車領域10の一側から延びていることが看取できる。

上記摘記事項アないしキ、及び図示事項クを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえ本件発明1に照らして整理すると、甲第7号証には次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。

「駐車場の駐車領域に入庫した車両を拘束するためのフラップを倒起自在に設置し、前記フラップの駐車領域側方側は斜辺であり、当該斜辺は、駐車領域の一側から延びている駐車場の駐車装置。」

(3)甲第8号証
甲第8号証には、以下のとおり記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、駐車場に設置される車両ロック装置に関する。また、その車両ロック装置を用いた駐車管理システムに関する。」
イ 「【0063】
なお、ロック装置ハウジング41の長手方向の長さは、0.5?2mに形成すればよい。日本国内で販売されている最も小型である軽自動車の車幅は、約1.5mである。日本国内で販売されている大型の自動車の車幅は、約2.2mである。そして、自動車2の一台分のパーキングスペース1の幅は、図6に示すように、だいたい2.3?2.5mになっている。車両ロック装置5は、その長手方向が、パーキングスペース1の左横の白線4から、パーキングスペース1の中央にかけて配設される向きで埋設される。したがって、ロック装置ハウジング41の長手方向の長さを0.5?2mに形成することで、多種多様なサイズの自動車2を、このロック装置でロックすることができる。」
ウ 図6から、自動車2をパーキングスペース1の片側に寄せて駐車させた場合の、パーキングスペース1内の自動車2と駐車ロック装置5の配置が看取できる。
エ 上記摘記事項アの「ロック装置ハウジング41の長手方向の長さ」は、駐車ロック装置の寸法の一つである。

上記摘記事項ア、イ、図示事項ウ、及び認定事項エを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえ本件発明1に照らして整理すると、甲第8号証には次の2つの事項が記載されていると認められる。
「駐車ロック装置の寸法を、軽自動車を車室の片側に寄せて駐車させた場合を想定して求めること」(以下、「甲8-1事項」という。)
「車室の幅と軽自動車の車幅を基準として、駐車ロック装置の寸法を求めること」(以下、「甲8-2事項」という。)

(4)甲第9号証
甲第9号証には、次のとおり記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無人駐車場管理システムに関し、特に改良された車両阻止機能を備えた無人駐車場管理システムに関するものである。」
イ 「【0019】
【発明の実施の形態】次に、本発明を具体化する実施の形態について添付図面を参照しつつ説明する。図1は本発明にかかる無人駐車場管理システムを構成する1台分の駐車スペースを示す平面図である。
【0020】隣接する車両スペースとの境界を示す2本の直線の間には、左右のタイヤの進行限界を示すタイヤ止め12、第1の車両阻止部材14、第2の車両阻止部材16が配設されている。」
ウ 「【0021】第1の車両阻止部材14の設置位置は、駐車可能車両のサイズを考慮して、後退入場する場合はタイヤ止め12との間に後輪が位置するように、また前進入場する場合はタイヤ止め12との間に前輪が位置するように設定される。この場合、第1の車両阻止部材14は、車長および車幅の小さい車両、例えば、軽自動車であっても必ず当接する位置に配置される。当然、大きい車両、例えば3ナンバー車まで駐車対象とする場合には、これらの車両寸法をも考慮して配置される。」
エ 上記摘記事項アにおいて、「車両阻止機能」は、車両をロックする機能といえるから、無人駐車場管理システムは駐車場のロック装置ということができる。
オ 上記摘記事項イから、第1の車両阻止部材14とタイヤ止め12は無人駐車場管理システムの構成要素であることが理解でき、第1の車両阻止部材14の設置位置は、第1の車両阻止部材14とタイヤ止め12との距離を規定するから、第1の車両阻止部材14の設置位置を決定することは、無人駐車場管理システムの構成要素の寸法を決定することといえる。

上記摘記事項アないしウ、及び認定事項エ、オを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえ本件発明1に照らして整理すると、甲第9号証には次の事項(以下、「甲9事項」という。)が記載されていると認められる。

「軽自動車の車幅を基準として駐車ロック装置の寸法を決定すること」

(5)甲第10号証
甲第10号証には、次のとおり記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、車止め装置およびこれを用いた駐車システムに係り、特に車止め装置に設けられた車止め板が起立及び伏臥することにより、車両の入出庫を管理することができる車止め装置およびこれを用いた駐車システムに関する。」
イ 「【0012】
また、複数の部分に分割された前記回転体の一部は、回転体の他の部分よりも後退した位置に配置されている、という構成を採っている。このような構成を採ることで、部分的に車両と回転体との接触を防止でき、車両への損傷を無くすことができる。
【0013】
また、前記回転体の後退した部分の位置は、駐車される車両の側面に対応する位置である、という構成を採っている。このような構成を採ることで、車両の側面に設置されているドア(特に、スライドドア)などが開放された場合でも、ドアの底部を傷つけるような問題は生じない。
また、前記車止め板の先端縁の一部分に断面円形の先端部材を装着し、当該先端縁の一部分には前記回転体を装着しない、という構成を採っている。」
ウ 「【0019】
[構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る車止め装置1が設置された車1台分の駐車スペースPを示している。図1に示すように、車止め装置1は、駐車スペースPの幅方向の一方側に寄せて配置され、駐車スペースPの長さ方向の略中央付近に位置決めされている。尚、上記した車止め装置1の配置については一例であり、車両が駐車された状態で前輪と後輪の間になるような場所や、あるいは駐車スペースPの後方が壁などで塞がれている場合には、後ろ向き駐車状態における前輪の前になるような位置に設置してもよい。」
エ 「【0023】
図2は、上記した本実施形態にかかる車止め装置1を示している。図2に示すように、車止め装置1は、車両の入出庫に応じて起立・伏臥する車止め板14と、この車止め板14を駆動する駆動手段12を備えている。また車止め装置1は、駆動手段12から水平方向で且つ車の入出庫方向(図1に矢印で示す)に対して直角方向に延びるように取り付けられた回動軸16を有しており、車止め板14は、この回動軸16に固定されている。回動軸16から見て駐車スペースPの前方側には、入庫する際の車両の車輪が車止め板14を乗り越えやすくするための傾斜板20が設けられている。一方、車止め板14は、傾斜板20に隣接する回動軸16によって、伏臥状態(図3(A))及び起立状態(図3(B))の間で駆動されるようになっている。
【0024】
次に、図2および図3に基づいて、車止め板14について詳細に説明する。車止め板14は板状の部材からなるが、幅方向の両側縁部が所定の曲率半径で直角に折曲げられている。そして、回動軸16側の縁部は回動軸16に固定され、この回動軸16の回動に応じて車止め板14が起立・伏臥するようになっている。尚、車止め板14は、伏臥状態では図3(A)に示すように、上面が傾斜板20の最上面と同じ高さになるように設定されている。」
オ「【0029】
また、回転体31の材質は様々なものが考えられる。・・・更には、ゴムなどの弾性材料で造ってもよい。」
カ「【0033】
[第2の実施形態]
次に、図5に基づいて第2の実施形態について説明する。当該実施形態の構成は、一部箇所を除いて上記した第1の実施形態と同様である。このため、異なる部分についてのみ詳述する。本実施形態の特徴部分は、回転体が車止め板14bの先端縁に沿って複数に分割されていることである。図5に示すように、本実施形態では、回転体311,312,313が車止め板14bの長手方向に沿って3つに分割されている。このため、回動軸16にはそれぞれ4つの支持アーム18bが固定されており、各支持アーム18bの先端の相互間にそれぞれの回転体311,312,313が回転自在に取り付けられている。各回転体311,312,313は長さが第1の実施形態のものと異なるのみで、その他の構成は同様である。本実施形態の回転体311,312,313は、車止め板14bの長さのおよそ3分の1となっている。
【0034】
また、本実施形態では、駆動手段12に最も近い位置に配置された回転体313は、他の位置の回転体311,312よりも回動軸16側に後退している。この部分は、概ね車両の側面に相当する位置である。このように、駆動手段12に近接した位置の回転体313を後退させた理由は以下のとおりである。すなわち、車両の種類によってはドアの下端が車両の下面とほぼ同じ高さとなるものがある。仮に、回転体313の位置を後退させない場合、駆動手段12に近接した位置の回転体313がドアの下部に接触し、ドアに傷をつけたり損傷させたりする可能性があるからである。
【0035】
なお、本実施形態では上記したように各回転体311,312,313の長さを、車止め板14bの長さの約3分の1にしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、2分の1であっても良いし、逆に4分の1以下にしてもよい。また、各部の長さを等分するのではなく、駆動手段12に隣接した部分の回転体313をだけを他の回転体311,312よりも短く構成したり、逆に、駆動手段12に隣接した部分の回転体313だけを他の回転体311,312よりも長く構成してもよい。」
キ 「【0046】
本発明は、例えば無人駐車場などで車両の入出庫を管理するための車止め装置に利用することができる。」

ク 図1及び図5から、車止め装置1の駆動装置12が駐車スペースPの幅方向の一方側に設置されることが看取できる。

ケ 摘記事項イの「図1に示すように、車止め装置1は、駐車スペースPの幅方向の一方側に寄せて配置され」との記載、摘記事項カの「駆動手段12に最も近い位置に配置された回転体313は、他の位置の回転体311,312よりも回動軸16側に後退している。」との記載、及び、図示事項クから、回転体313が、車両の幅方向に関して、駐車スペースPの一側から延びていることが理解できる。

上記摘記事項アないしキ、及び認定事項ケを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえ本件発明1に照らして整理すると、甲第10号証には次の発明(以下、「甲10発明」という。)が記載されていると認められる。

「駐車場の駐車スペースPに該駐車スペースPに駐車した車両の入出庫を管理するための車止め板を起立・伏臥自在に設置し、前記車止め板の車両の側面に相当する位置には、前記車止め板と駐車した車両のドアとの接触を防止するために、車止め板の先端縁に設けた他の回転体よりも後退した回転体が設けられており、
前記後退した回転体は、前記車両の幅方向に関して、前記駐車スペースPの一側から延びており、車止め板の長さの所定の割合の幅寸法を有して設けられ、
前記後退した回転体及び他の回転体は弾性材料で造られた、
駐車場の車止め装置。」

4.取消理由1について
本件発明1の目的は、本件特許明細書の段落【0014】の記載から、車室に駐車する車両の幅寸法が異なる場合であっても、車両のスライドドアを円滑に開閉動作させ、スライドドアの下面の損傷を確実に防止することと認められる。
そして、同段落【0023】の記載のように、車室の片側に駐車した車両のスライドドアに対応する位置に干渉抑制部を形成する場合、車室に駐車すると想定する車両のうち、最小のものと最大のもののスライドドアの位置が含まれるように干渉抑制部の幅寸法を設計すれば、ロック装置の構造上、その中間の車両のスライドドアの位置も含まれることは当業者にとって自明である。
したがって、そのように干渉抑制部の幅寸法を設計すれば、想定するすべての車両のスライドドアに対応することができ、上記目的に適う干渉抑制部を形成することができることも当業者であれば自明である。
このことを踏まえると、段落【0024】の「軽自動車などの小型の車両3の幅寸法Ws」は、車室に駐車すると想定する車両のうち、最も小さい車両の幅寸法を表していることは明らかであり、請求項1に記載された「軽自動車の幅寸法」という文言も同義であることは明らかである。
すなわち、「軽自動車の幅寸法」という文言は明確であり、干渉抑制部の位置も明確である。
さらに、同段落【0023】【0024】を参酌すれば、本件発明を実施することができないともいえない。
よって、請求項1、3?7に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。また、本件特許の発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

5.取消理由2について
(1)甲10発明に基づく取消理由2について
ア 本件発明1
本件発明1と甲10発明とを、技術常識を踏まえて対比すると、甲10発明の「駐車スペースP」は、本件発明1の「車室」に相当し、以下同様に、「車両の入出庫を管理するため」は「車両のロックを行うため」に、「車止め板」は「ロック板」に、「起立・伏臥自在に」は「昇降自在に」に、「車両の側面に相当する位置」は「車両の幅方向一側」に、「車止め板と駐車した車両のドアとの接触を防止するために、車止め板の先端縁に設けた他の回転体よりも後退した回転体」は、「ロック板と駐車した車両の扉動作との干渉を抑制する干渉抑制部」にそれぞれ相当する。
また、甲10発明の「前記後退した回転体は、前記車両の幅方向に関して、前記駐車スペースPの一側から延びており、車止め板の長さの所定の割合の幅寸法を有して設けられる」は、本件発明1の「前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、前記車室の幅寸法から前記軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有して設けられている」と、「前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、所定の幅寸法を有して設けられている」点で共通する。
したがって、本件発明1と甲10発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「駐車場の車室に該車室に駐車した車両のロックを行うためのロック板を昇降自在に設置し、
前記ロック板の車両の幅方向一側に対応する位置には、前記ロック板と駐車した車両の扉動作との干渉を抑制する干渉抑制部が設けられており、
前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、所定の幅寸法を有して設けられていることを特徴とする駐車場のロック装置。」

そして、本件発明1と甲10発明とは、以下の点で相違している。
<相違点1>
本件発明1の干渉抑制部は、車室の幅寸法から軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有するのに対し、甲10発明の干渉抑制部は、そのような幅寸法には限定されていない点。

上記相違点1について検討する。
相違点1に係る構成の「車室の幅寸法から軽自動車の幅寸法を引いた差」は、軽自動車を駐車スペースの片側に寄せて駐車させた場合の軽自動車の幅方向一側に対応する位置と車室の一側との距離である。
そして、駐車スペースに駐車すると見込まれるすべての車両に装置の機能が発揮されるようにするために、駐車スペースに駐車すると見込まれる車両の中で最小の軽自動車を基準にしてロック装置の各種寸法を検討すること、及び、想定される駐車態様の中で最も極端な駐車態様、すなわち自動車を駐車スペースの片側に寄せて駐車させた場合の車両位置を基準にして検討することは、当業者であれば通常行う設計的事項である(甲8-1事項、甲8-2事項、甲9事項参照)。
そうすると、駐車スペースに駐車すると見込まれるすべての車両に干渉抑制部の機能が発揮されるようにするために、車室の幅寸法から軽自動車の幅寸法を引いた差よりも干渉抑制部を大きな幅寸法とするという相違点1に係る構成をとることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
さらに、本件発明1によってもたらされる効果も、甲10発明から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものではない。
したがって、本件発明1は、甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明3
本件発明3は、本件発明1において、さらに「前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた切り欠きである」ことを発明特定事項としたものである。
したがって、本件発明3と甲10発明とを対比すると、両者は上記相違点1に加えて、次の点で相違する。
<相違点2>
本件発明3の干渉抑制部は、切り欠きであるのに対し、甲10発明の干渉抑制部は、車止め板の先端縁に設けた他の回転体よりも後退した回転体である点。

上記相違点2について検討すると、甲10発明の後退した回転体の部分は、他の回転体の位置を基準にすると切り欠いた状態といえる。
したがって、甲10発明の干渉抑制部も切り欠きであり、相違点2は実質的な相違点ではない。
よって、本件発明3は、甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本件発明4、5
本件発明4、5は、本件発明3において、さらに「前記切り欠きは、凹んだ弧状の部分を一部に有する」ことを発明特定事項としたものである。
したがって、本件発明4、5と甲10発明とを対比すると、両者は上記相違点1、2に加えて、次の点で相違する。
<相違点3>
本件発明4、5の切り欠きは、凹んだ弧状の部分を一部に有するのに対し、甲10発明の切り欠きは凹んだ弧状の部分を有しない点。
さらに、本件発明5は、次の点で相違する。
<相違点4>
本件発明5の切り欠きは、車両の幅方向に関する両端のうち、車室の一側から遠い側の端において凹んだ弧状の部分を一部に有するのに対し、甲10発明の切り欠きは凹んだ弧状の部分を有しない点。

上記相違点3、4について検討する。
甲第10号証には、相違点3、4に係る構成は記載されていない。また、相違点3、4に係る構成は、本願出願前に周知の技術ということもできない。
そして、本件発明4、5は、切り欠きが、さらに凹んだ弧状の部分を有することにより、より確実にスライドドアとの干渉を防止することができるという効果を有するものと認められる。
よって、本件発明4、5は、甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

エ 本件発明6
本件発明6は、本件発明1において、さらに「前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた回転体である」ことを発明特定事項としたものである。
そして、甲10発明の干渉抑制部も回転体である。
よって、本件発明6と甲10発明とは、相違点1の他に相違点はないから、本件発明1と同様に、本件発明6は、甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明7
本件発明7は、本件発明1において、さらに「前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた弾性体である」ことを発明特定事項としたものである。
そして、甲10発明の干渉抑制部である後退した回転体も弾性体である。
よって、本件発明7と甲10発明とは、相違点1の他に相違点はないから、本件発明7は、甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)甲6発明に基づく取消理由2について
ア 本件発明1
本件発明1と甲6発明とを、技術常識を踏まえて対比すると、甲6発明の「駐車スペース」は、本件発明1の「駐車場の車室」に相当し、以下同様に、「車両の退出を阻止するため」は「車両のロックを行うため」に、「ロックプレート」は「ロック板」に、「起倒自在に」は「昇降自在に」に、「車両無償退出防止装置」は「ロック装置」にそれぞれ相当する。
したがって、本件発明1と甲6発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「駐車場の車室に該車室に駐車した車両のロックを行うためのロック板を昇降自在に設置した駐車場のロック装置」

そして、本件発明1と甲6発明とは、以下の点で相違している。
<相違点5>
本件発明1は、ロック板の車両の幅方向一側に対応する位置には、前記ロック板と駐車した車両の扉動作との干渉を抑制する干渉抑制部が設けられており、前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、前記車室の幅寸法から前記軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有して設けられているのに対し、甲6発明は、タイヤ通過位置には隆起カバーが設けられており、隆起カバーは駐車スペースの一側から延びており、ロックプレートの位置までの幅寸法を有し、ロックプレートは、駐車車両のタイヤ通過位置より駐車スペース内側のタイヤに無係合の位置に設けられている点。

上記相違点5について検討する。
甲6発明の隆起カバーは、ロックプレートに設けられたものではない。また、隆起カバー部分は、タイヤが通過するために設けられたものであって、車両の扉動作との干渉を抑制するものでもない。仮に、隆起カバーの部分が、車両の扉動作との干渉が起こらない干渉抑制部に相当するとしても、隆起カバーの幅寸法は、タイヤ幅を考慮したものとなるのが自然であって、当該幅寸法を車室の幅寸法から軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法とすることには、動機付けが存在しないから、甲8-1事項、甲8-2事項、甲9事項を適用することはできない。
したがって、本件発明1は、甲6発明、甲8-1事項、甲8-2事項、甲9事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

イ 本件発明3?7
本件発明3?7は、本件発明1を直接または間接的に引用するものであるから、上記のとおり、甲6発明、甲8-1事項、甲8-2事項、甲9事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(3)甲7発明に基づく取消理由2について
ア 本件発明1
本件発明1と甲7発明とを、技術常識を踏まえて対比すると、甲7発明の「駐車領域」は、本件発明1の「車室」に相当し、以下同様に、「入庫した車両を拘束するため」は「車両のロックを行うため」に、「フラップ」は「ロック板」に、「倒起自在に」は「昇降自在に」に、「駐車装置」は「ロック装置」にそれぞれ相当する。

したがって、本件発明1と甲7発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「駐車場の車室に該車室に駐車した車両のロックを行うためのロック板を昇降自在に設置し、た駐車場のロック装置」

そして、本件発明1と甲7発明とは、以下の点で相違している。
<相違点6>
本件発明1は、ロック板の車両の幅方向一側に対応する位置には、前記ロック板と駐車した車両の扉動作との干渉を抑制する干渉抑制部が設けられており、前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、前記車室の幅寸法から前記軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有して設けられているのに対し、甲7発明は、フラップの駐車領域側方側は斜辺であり、当該斜辺は、駐車領域の一側から延びている点。

上記相違点6について検討する。
甲7発明の斜辺は、車両の下部からはみ出した部分のフラップを足で踏む等して押し下げることを困難とするために、フラップの高さを狭くしたもの(摘記事項カ参照)であって、車両の扉動作との干渉を抑制するものではない。仮に、斜辺が、車両の扉動作との干渉が起こらない干渉抑制部に相当するとしても、斜辺の幅寸法は、フラップの高さと、車両の下部からはみ出した部分のフラップの高さに依存するものであり、斜辺の幅寸法を車室の幅寸法から軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法とすることには、動機付けが存在しないから、甲8-1事項、甲8-2事項、甲9事項を適用することはできない。
したがって、本件発明1は、甲7発明、甲8-1事項、甲8-2事項、甲9事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

イ 本件発明3?7
本件発明3?7は、本件発明1を直接または間接的に引用するものであるから、上記のとおり、甲7発明、甲8-1事項、甲8-2事項、甲9事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、3、6、7は甲10発明および甲10事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明1、3、6、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

また、本件発明4、5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことはできない。
さらに、他に本件発明4、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

そして、請求項2に係る特許について、上記2.のとおり、請求項2を削除する本件訂正請求による訂正が認められたので、請求項2に係る特許についての本件特許異議申立ては、その対象が存在しないものとなった。
したがって、請求項2に係る特許についての本件特許異議申立ては、不適法な特許異議申立てであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
駐車場のロック装置
【技術分野】
【0001】
本発明は駐車場のロック装置に係り、特に、スライドドアが装備された車両において、スライドドアを開閉動作させた場合でも、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの損傷を確実に防止することを可能とした駐車場のロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、時間貸し駐車場に設置される駐車場システムとしては、例えば、駐車場の車室ごとに、車両検出器、ロック板などを設置するとともに、車両の駐車料金の算出、表示、精算などを行う精算機を設置し、車両検出器により駐車車両を検出して一定時間経過するとロック板を上昇させて退出を阻止するとともに駐車時間の計測を始め、精算機により駐車料金が精算されるとロック板が下降して退出を許可するようにしたものがある。
【0003】
このような駐車場のロック装置として、従来、例えば、個別の駐車区域に入車した車両を検知したときに生成される車両検知信号に基づいて当該駐車区域内に設置したロック板を上昇させ、駐車車両の出車を阻止する一方、時間当たりの金額で定められる駐車料金の精算の完了に基づいてロック板を下降させ、当該駐車車両の出車を可能にするとともに、駐車料金の精算が完了したときにロック板を下降させ、精算した駐車料金に相当する時間が経過するまで、ロック板を下降状態に維持するように制御する制御手段を備えるようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、その他のロック装置として、従来、例えば、車道に形成された駐車エリアにロック装置を設置し、駐車料金が支払われた場合に、ロック装置を下降させるようにした縦列駐車用のロック装置に関する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2002-074429号公報
【特許文献2】 特開平04-203177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術においては、ロック板を上昇させた際に、ロック板の上端部が車両の車体の下面に当接することになり、前記特許文献2に記載の技術においては、車両の中央側に対応する位置に切欠きが形成されているが、やはり、ロック板を上昇させた際に、ロック板の上端部が車両の車体の下面に当接することになる。
【0007】
そのため、例えば、いわゆるスライドドアを装備した車両においては、ロック板が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させようとした場合に、スライドドアの下端と、ロック板の上端とが接触してしまい、スライドドアを開くことができなかったり、あるいは、とスライドドアを閉じることができない場合があり、さらに、スライドドアの開閉動作時に、スライドドアの下面を損傷してしまうおそれがあるという問題を有している。
【0008】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、スライドドアが装備された車両において、スライドドアを開閉動作させた場合でも、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの損傷を確実に防止することのできる駐車場のロック装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係る駐車場のロック装置は、駐車場の車室に該車室に駐車した車両のロックを行うためのロック板を昇降自在に設置し、
前記ロック板の車両の幅方向一側に対応する位置には、前記ロック板と駐車した車両の扉動作との干渉を抑制する干渉抑制部が設けられており、
前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、前記車室の幅寸法から前記軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有して設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた切欠きであることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項3において、前記切欠きは、凹んだ弧状の部分を一部に有することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項4において、前記切欠きは、前記車両の幅方向に関する両端のうち前記車室の一側から遠い側の端において前記凹んだ弧状の部分を一部に有することを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1において、前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた回転体であることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1において、前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた弾性体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、ロック板の車両の幅方向一側に対応する位置には、ロック板と駐車した車両の扉動作との干渉を抑制する干渉抑制部を設けるようにしているので、車両の幅方向一側に対応する位置に干渉抑制部が位置することになり、車両が駐車してロック板が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合でも、干渉抑制部により、スライドドアの下端と、ロック板の上端との干渉を抑制することができ、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。また、干渉抑制部を、車両の幅方向に関して、車室の一側から延びており、車室の幅寸法から軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有しているようにしているので、車両の幅寸法が異なる場合でも、車両の幅方向一側に干渉抑制部を設けることができ、幅寸法が異なる車両のスライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、干渉抑制部を車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた切欠きとしているので、車両の幅方向一側に切欠きが位置することになり、車両が駐車してロック板が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合でも、切欠きにより、スライドドアの下端と、ロック板の上端との接触を防止することができ、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【0016】
請求項6に係る発明によれば、干渉抑制部を車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた回転体としているので、車両の幅方向一側に回転体が位置することになり、車両が駐車してロック板が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合でも、回転体がスライドドアの下端に接触しながら回転し、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【0017】
請求項7に係る発明によれば、干渉抑制部を車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた弾性体としているので、車両の幅方向一側に弾性体が位置することになり、車両が駐車してロック板が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合でも、スライドドアの下端が弾性体に接触して、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る駐車場のロック装置の第1実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る駐車場のロック装置の第1実施形態におけるロック板を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係る駐車場のロック装置の第1実施形態における切欠きの形成位置を示す説明図である。
【図4】本発明に係る駐車場のロック装置の第1実施形態における切欠きの変形例を示す概略構成図である。
【図5】本発明に係る駐車場のロック装置の第1実施形態における切欠きの他の変形例を示す概略構成図である。
【図6】本発明に係る駐車場のロック装置の第2実施形態におけるロック板を示す概略構成図である。
【図7】本発明に係る駐車場のロック装置の第3実施形態におけるロック板を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は本発明に係る駐車場のロック装置の第1実施形態を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態のロック装置1は、駐車場に設置された車室2の図において左側に設置されるものであり、このロック装置1は、車室2に駐車した車両3のロックを行うためのロック板4を備えている。
【0022】
ロック板4は、駆動装置5により昇降自在とされている。そして、ロック板4は、車室2に車両3が駐車していない状態では、下降状態に保持されており、車室2に設置された車両センサ(図示せず)により車両3の入庫を検出した場合に上昇されて、車両3を出庫できないようにロックするように構成されている。
【0023】
また、本実施形態においては、図2に示すように、ロック板4の一側には、ロック板4の角部を斜めに切欠いてなる干渉抑制部としての切欠き6が形成されており、この切欠き6は、車室2に駐車する車両3の幅寸法に基づいて計算した位置に設けられている。すなわち、図3に示すように、本実施形態においては、ロック装置1が車室2の左側に設置されているので、車室2の右端に車両3が駐車した場合に、車両3がロック装置1から最も離れる位置となる。そのため、車室2の右端に車両3が駐車した場合に、車両3の左側のスライドドアに対応する位置に切欠き6を形成するようにすればよい。
【0024】
このとき、車両3の幅寸法は、車両3の大きさによって異なるが、軽自動車などの小型の車両3の幅寸法をWs、大型車などの大型の車両3の幅寸法をWlとした場合に、小型の車両3の幅寸法Wsの位置に切欠き6の右端が位置するようにすればよく、これにより、切欠き6の右端位置が決定される。また、車両3が車室2の左端に駐車した場合は、車両3の大きさにかかわらず、車両3の左端が車室2の左端に位置することになるので、切欠き6の左端は、ロック板4の左端まで位置する必要がある。したがって、切欠き6の長さ寸法Lは、車室2の幅寸法W-小型の車両3の幅寸法Wsにより決定されるものである。これにより、例えば、大型の車両3が車室2の右端に駐車した場合でも、その車両3の左端は切欠き6上に位置することになる。
【0025】
なお、切欠き6の形状としては、前記斜めに切欠いた形状に限定されるものではなく、車両3のスライドドアと干渉しない形状であれば、例えば、図4に示すように、四角形状に切欠いた形状の切欠き6でもよいし、図5に示すように、弧状に切欠いた形状の切欠き6でもよい。
【0026】
また、切欠き6の深さは、あまり深く形成すると、ロック板4の切欠き6部分を乗り越えて出庫することが可能となってしまうおそれがあるため、スライドドアと干渉しない程度の深さに形成すれば十分である。
【0027】
次に、本実施形態の動作について説明する。
【0028】
本実施形態においては、車室2に車両3が駐車して車両センサにより車両3の入庫を検出した場合に、ロック板4を上昇させて車両3のロックが行われる。そして、本実施形態においては、車両3が車室2の右端または左端のいずれの位置に駐車した場合でも、車両3のスライドドアは、ロック板4の切欠き6部分に位置することになるので、ロック板4が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合でも、スライドドアの下端と、ロック板4の上端とが接触してしまうことがない。
【0029】
以上述べたように、本実施形態においては、ロック板4に切欠き6を形成し、ロック板4が上昇している状態で車両3のスライドドアを開閉動作させた場合でも、スライドドアの下端とロック板4の上端とが接触しないようにしているので、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0031】
本実施形態においては、図6に示すように、ロック板4に干渉抑制部の回転体としての回転ローラ7を回転自在に設けるようにしたものである。この回転ローラ7の長さ寸法は、前記第1実施形態における切欠き6の長さ寸法と同様に、ロック板4の左端から小型の車両3の幅寸法Wsの位置までの長さに形成するようにすればよい。このように回転ローラ7を形成することにより、例えば、車両3が車室2の右端に駐車した場合でも、その車両3の左端は回転ローラ7上に位置することになる。
【0032】
本実施形態においても前記第1実施形態と同様に、車両3が車室2の右端または左端のいずれの位置に駐車した場合でも、車両3のスライドドアは、ロック板4の回転ローラ7部分に位置することになるので、スライドドアの下端と回転ローラ7とが接触することになる。そのため、ロック板4が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合に、スライドドアの下端の移動に伴って回転ローラ7が回転し、スライドドアの開閉動作を円滑に行うことが可能となる。
【0033】
以上述べたように、本実施形態においても前記第1実施形態と同様に、ロック板4に回転ローラ7を設け、ロック板4が上昇している状態で車両3のスライドドアを開閉動作させた場合でも、回転ローラ7がスライドドアの下端に接触しながら回転するようにしているので、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【0034】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0035】
本実施形態においては、図7に示すように、ロック板4に、干渉抑制部としての、例えば、ゴムなどの弾性体8を設けるようにしたものである。この弾性体8の長さ寸法は、前記第1実施形態における切欠き6の長さ寸法と同様に、ロック板4の左端から小型の車両3の幅寸法Wsの位置までの長さに形成するようにすればよい。このように弾性体8を形成することにより、例えば、車両3が車室2の右端に駐車した場合でも、その車両3の左端は弾性体8上に位置することになる。
【0036】
本実施形態においても前記第1実施形態と同様に、車両3が車室2の右端または左端のいずれの位置に駐車した場合でも、車両3のスライドドアは、ロック板4の弾性体8部分に位置することになるので、スライドドアの下端と弾性体8が接触することになる。そのため、ロック板4が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合に、スライドドアの下端は弾性体8に接触しながら移動することになり、スライドドアの下端に損傷を与えてしまうことがない。
【0037】
以上述べたように、本実施形態においても前記各実施形態と同様に、ロック板4に弾性体8を設け、ロック板4が上昇している状態で車両3のスライドドアを開閉動作させた場合でも、スライドドアの下端と弾性体8とが接触した状態でスライドドアの開閉動作を行うことができるようにしているので、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ロック装置
2 車室
3 車両
4 ロック板
5 駆動装置
6 切欠き
7 回転ローラ
8 弾性体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場の車室に該車室に駐車した車両のロックを行うためのロック板を昇降自在に設置し、
前記ロック板の車両の幅方向一側に対応する位置には、前記ロック板と駐車した車両の扉動作との干渉を抑制する干渉抑制部が設けられており、
前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、前記車室の幅寸法から前記軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有して設けられていることを特徴とする駐車場のロック装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた切欠きであることを特徴とする請求項1に記載の駐車場のロック装置。
【請求項4】
前記切欠きは、凹んだ弧状の部分を一部に有することを特徴とする請求項3に記載の駐車場のロック装置。
【請求項5】
前記切欠きは、前記車両の幅方向に関する両端のうち前記車室の一側から遠い側の端において前記凹んだ弧状の部分を一部に有することを特徴とする請求項4に記載の駐車場のロック装置。
【請求項6】
前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた回転体であることを特徴とする請求項1に記載の駐車場のロック装置。
【請求項7】
前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた弾性体であることを特徴とする請求項1に記載の駐車場のロック装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-30 
出願番号 特願2012-216455(P2012-216455)
審決分類 P 1 651・ 536- ZDA (G07B)
P 1 651・ 121- ZDA (G07B)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 小島 哲次  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 関谷 一夫
根本 徳子
登録日 2016-11-25 
登録番号 特許第6046435号(P6046435)
権利者 日本信号株式会社
発明の名称 駐車場のロック装置  
代理人 福田 充広  
代理人 福田 充広  

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