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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 D21H |
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管理番号 | 1342003 |
異議申立番号 | 異議2018-700228 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-03-16 |
確定日 | 2018-06-28 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6205872号発明「印刷用塗工紙」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6205872号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6205872号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成25年6月5日に特許出願され、平成29年9月15日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成30年3月16日に特許異議申立人 加藤 玄(以下「本件申立人」という。)によって特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 1 特許第6205872号の請求項1及び2の特許に係る発明(以下「本件発明1」「本件発明2」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 本件発明1 本件発明1を分説すると以下のとおりである。A)ないしH)は、当審で付した。 「A)基紙上の少なくとも一方の面に塗工層を設けた印刷用塗工紙であって、 B)印刷用塗工紙の王研式透気度が、100sec以上8000sec以下であリ、 C)塗工層が、25℃における純水を用い、吸収時間5msec^(1/2)の吸液量が7ml/m^(2)以上、30ml/m^(2)以下であり、且つ、 D)30重量%のエタノール水溶液を用い、エタノール水溶液が塗工層に接触してから0.1sec後の接触角が22°以上28°以下であり、 E)塗工層に軽質炭酸カルシウムと F)接着剤としてスチレン-ブタジエン共重合体、または、スチレン-ブタジエン共重合体と酸化澱粉を含有し、 G)前記軽質炭酸カルシウム100質量部に対して前記接着剤を4質量部以上15質量部以下含有する H)(ただし、塗工層の顔料100質量部中カオリンを50質量部以上含有する場合を除き、軽質炭酸カルシウムを除く顔料としてカオリンまたは重質炭酸カルシウムのいずれか一方だけを使用する場合を除く) A)ことを特徴とする印刷用塗工紙。」 3 本件発明2 本件発明2を同様に分説すると以下のとおりである。I)は、当審で付した。 「I)前記接触角が24°以上28°以下である A)請求項1記載の印刷用塗工紙。」 第3 特許異議の申立ての概要 1 本件申立人は、証拠として下記の甲第1号証?甲第4号証を提出し、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきと主張している。 2 証拠 (1)甲第1号証 特開2012-224535号公報 (2)甲第2号証 特開平10-316419号公報 (3)甲第3号証 江前敏晴、「印刷用紙分析評価技術の進歩と事例」、日本印刷学会誌、Vol.45、No.3、116?123頁(2008) (4)甲第4号証 特開平11-20305号公報 第4 刊行物の記載 1 甲第1号証 甲第1号証には、軽質炭酸カルシウム含有スラリーを含む塗工液を塗工した塗被紙について記載されており、各種の印刷用紙に用いる点が記載されており、また、接着剤として、スチレン-ブタジエン共重合体、または、スチレン-ブタジエン共重合体と酸化澱粉を用いる点も記載されている。 2 甲第2号証 甲第2号証には、塗被組成物を塗工した塗被紙であって、王研式透気度が特定の数値範囲であるものが記載されている。 3 甲第3号証 甲第3号証には、市販のインクジェット紙について、水を用いた吸収時間5msec^(1/2)の吸液量が特定の数値であることが記載されている。 4 甲第4号証 甲第4号証には、インクジェット記録適性を備えた用紙であって、特定の表面張力を有する液体を用いた場合の接触角が特定の数値範囲となることが記載されている。 第5 判断 1 本件発明1について (1)本件発明1と甲第1号証に記載された発明を対比すると、甲第1号証には、本件発明1におけるD)「30重量%のエタノール水溶液を用い、エタノール水溶液が塗工層に接触してから0.1sec後の接触角が22°以上28°以下」とする点(以下「本件相違点」という。)が記載も示唆もされていない。そして、本件相違点は、甲第2?4号証のいずれにも記載されていない。本件発明1は、本件相違点を備えることにより、本件特許明細書の段落【0024】に記載されているように、インクジェット印刷時のドット形状が最適化されるという効果を奏するものであるから、本件相違点は、甲第1?4号証の記載から当業者が容易に想到し得たということはできない。 (2)本件申立人は、甲第4号証に、表面張力45dyne/cmの液体と接触時間1秒における接触角が19?26°という記載があることから、本件発明1における「30%エタノール水溶液」の表面張力とされる36dyne/cmとほぼ同等であって、甲第4号証の接触時間1秒も本件発明1の「接触時間0.1sec」とほぼ同等であると主張する。しかしながら、表面張力の違いにより、どの程度接触角が異なるかの主張立証はなく、また、接触時間の0.1秒と1秒との相違は、甲第3号証の第124頁の図7のグラフからみても、小さな相違と言い切ることはできない(場合によっては、接触角が、0.1秒から1秒の間に1/3に減少している。)。本件相違点について、何らかの推測が可能であると認めるに足りる証拠は提出されていない。 2 本件発明2について 本件発明2は、本件発明1に係る発明特定事項をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記の本件発明1についての判断と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第1?4号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。 3 小括 以上のとおり、本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1?4号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1及び2に係る特許は、特許法29条2項の規定に反して特許されたということはできず、特許法113条2号に規定される特許に該当しない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-06-19 |
出願番号 | 特願2013-119330(P2013-119330) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(D21H)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 阿川 寛樹、平井 裕彰 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
西藤 直人 門前 浩一 |
登録日 | 2017-09-15 |
登録番号 | 特許第6205872号(P6205872) |
権利者 | 王子ホールディングス株式会社 |
発明の名称 | 印刷用塗工紙 |