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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1342020
異議申立番号 異議2017-700955  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-05 
確定日 2018-07-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6107002号発明「シーラントフィルム、並びにそれを用いた包装材及び包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6107002号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6107002号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成24年9月4日に特許出願され、平成29年3月17日にその特許権の設定登録がされた。
その後、平成29年10月5日に、請求項1?6に係る特許について、特許異議申立人土田裕介(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成30年1月16日付けで取消理由が通知され、平成30年3月16日に意見書が提出されたものである。

2.本件発明
特許第6107002号の請求項1?6の特許に係る発明(以下、「本件発明1?6」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本件発明1は、以下に示すとおりのものである。
《本件発明1》
基材層に積層して用いるシーラントフィルムであって、
1層またはそれ以上の石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層と、1層またはそれ以上の植物由来ポリエチレン系樹脂からなる層とからなる多層積層フィルムであり、
基材層積層面を形成する最表層は、滑り性を低下させることなく植物由来ポリエチレン系樹脂中の低分子量化合物の基材層積層面へのブリードアウトを防ぎ基材層とのラミネート強度を高める、石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層であり、
該石油由来ポリエチレン系樹脂は、石油由来LLDPE、または、石油由来LLDPEと石油由来LDPEとの混合物であり、
該植物由来ポリエチレン系樹脂は、植物由来LLDPEであり、
シーラントフィルム全体のバイオマス度が45?80%であることを特徴とする、上記シーラントフィルム。

3.特許異議の申立てについて
(1)取消理由の概要
平成30年1月16日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
なお、上記取消理由通知において申立人の特許異議申立理由は全て採用した。

ア.理由1
本件特許は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1、2号に規定する要件を満たしていない。

(ア)本件発明1の「滑り性を低下させることなく植物由来ポリエチレン系樹脂中の低分子量化合物の基材層積層面へのブリードアウトを防ぎ基材層とのラミネート強度を高める、石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層」なる語句及び同語句に関する本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1、2号に規定する要件を満たしていない。
(イ)本件発明1?6は、課題を解決し得ないものをも含むものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

イ.理由2
本件発明1?6は、その出願前日本国内または外国において頒布された、以下の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

《刊行物》
甲1.特開平7-241967号公報
甲2.杉山英路,外1名,“地球環境にやさしい「サトウキビ由来のポリエチレン」”,コンバーテック,株式会社加工技術研究会,2009年8月15日,第37巻,第8号,通巻437号,p.63-67
甲3.杉山英路,“新しいバイオマスプラスチックスの可能性?「サトウキビ由来ポリエチレン」の製品化から?”,Polyfile,株式会社大成社,2009年12月10日,第46巻,第12号,通巻550号,p.28-30
甲4.“プラスチックフィルム・レジン材料総覧2008”,株式会社加工技術研究会,2008年1月31日,p.382-387
甲5.特開2006-1055号公報
甲6.特開2008-80509号公報
甲7.藤本省三,外3名,“L-LDPEのフィルム加工について”,東洋曹達研究報告,東洋曹達工業株式会社,昭和58年7月1日,第27巻,第2号,通巻54号,p.87-98
甲8.牧野太宣,“サトウキビから作られたプラスチック包装材料「Bipro-PE」”,コンバーテック,株式会社加工技術研究会,2011年2月15日,第39巻,第2号,通巻455号,p.83-85
甲9.松浦一雄,外1名,“ポリエチレン技術読本 触媒・製造プロセスの進歩と材料革新”,株式会社工業調査会,2001年7月1日,初版第1刷,p.163-196
甲10.大浜俊生,“メタロセン系ポリエチレンの構造・物性と応用展開”,成形加工,社団法人プラスチック成形加工学会,1996年10月20日,第8巻,第10号,p.631-637

《備考》
甲1?10は、特許異議申立の甲第1号証?甲第10号証であり、甲1に記載された発明を甲1発明といい、甲1?10に記載された事項を甲1記載事項?甲10記載事項という。
本件発明1?6は、甲1発明、甲1記載事項?甲3記載事項、甲4記載事項?甲6記載事項に例示される周知技術及び甲7記載事項?甲10記載事項に例示される技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)判断
ア.理由1について
(ア)本件発明の解決すべき課題及び作用効果
本件特許明細書の発明の詳細な説明(以下、「本件明細書」という。)の記載からみて、本件発明は、本件の出願時点において、「石油由来のポリエチレン系樹脂を含んでなるシーラントフィルムにおいて、原料のポリエチレン系樹脂の一部を、植物由来ポリエチレン系樹脂に変えると、その配合率が高くなるにつれて、その上に積層する基材層とのラミネート強度が低下し、層間剥離が起き易くなる」(段落【0004】)こと及び「この問題に対し、シーラントフィルム中にブリードアウト抑制剤を存在させることにより、基材層とのラミネート強度を高めることができたが、その一方で、滑り性が低下するという問題が生じた」(段落【0005】)ことを認識し、「植物由来ポリエチレン系樹脂の配合率が上がるにつれて起きるラミネート強度の低下が、植物由来ポリエチレン系樹脂中の低分子量化合物、例えばモノマー、オリゴマー等のフィルム表面上へのブリードアウト(析出)に起因していること」及び「植物由来ポリエチレン系樹脂を含むシーラントフィルムにおいて、その基材層積層面を、石油由来ポリエチレン系樹脂のみからなる層で覆うことにより、滑り性を低下させることなく、該低分子量化合物の基材層積層面へのブリードアウトを防ぎ、基材層とのラミネート強度を高められることを見出し(段落【0009】)」たことを踏まえたものであるといえる。
そして、本件発明は、「基材層と高いラミネート強度を示し、且つ、滑り性に優れ、且つ、フィルム全体として少なくとも45%の高いバイオマス度を示すことから環境への負荷が低減されたシーラントフィルム、並びにそれを用いた包装材及び包装袋を提供すること」(段落【0008】)を解決すべき課題とし、特許請求の範囲に記載された事項を、その発明特定事項とすることにより、「高いバイオマス度を有するものである」がゆえに「カーボンニュートラルの観点から、大気中のCO_(2)量の増加を抑制し、且つ、石油資源利用の節約にも貢献する」(段落【0011】)、「フィルムを長期間保存した後であっても、例えば長時間日光に曝露した後であっても、フィルム表面の種々の物性の変化が少なく、基材層と高いラミネート強度を示し、且つ優れた滑り性を示し、経時劣化及びそれに伴う層間剥離、フィルム同士の癒着等を起こしにくい。すなわち、優れた耐候性を示す」(段落【0013】)、「基材層積層面を形成する最表層が、石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層であり、該石油由来ポリエチレン系樹脂としては、様々な物性のものが開発されている。したがって、多種多様な選択肢の中から、基材層積層面を形成する石油由来ポリエチレン系樹脂を適宜に選択することができ、基材層とのラミネート強度やラミネート条件等の調整が容易となる。」(段落【0014】)及び「ヒートシール面を形成する最表層が、石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層である場合も同様に、多種多様な選択肢の中から、所望のヒートシール強度及びヒートシール条件に適する石油由来ポリエチレン系樹脂を、適宜に選択することができる。」(段落【0015】)といった作用効果を奏するものであることが理解できる。

(イ)本件発明1における「滑り性を低下させることなく植物由来ポリエチレン系樹脂中の低分子量化合物の基材層積層面へのブリードアウトを防ぎ基材層とのラミネート強度を高める、石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層」なる語句について
まず、上記語句における「石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層」について、本件明細書には、上記段落【0009】、【0014】及び【0015】の他、【0034】において、「「石油由来」とは、植物原料に由来する炭素を含まず、従来どおり、石油から得られるナフサを熱分解して得られるエチレンに由来する構造を主成分とするものである。本発明で使用される石油由来ポリエチレン系樹脂は、シーラントフィルムとしてヒートシール性を有するものとして一般的に用いられる任意のポリエチレン系樹脂である。」と説明されている。
また、「1層またはそれ以上の石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層と、1層またはそれ以上の植物由来ポリエチレン系樹脂からなる層とからなる多層積層フィルム」の「基材層積層面を形成する最表層」として、シーラントフィルムとしてヒートシール性を有するものとして一般的に用いられる石油由来ポリエチレン系樹脂を採用しただけでは、「滑り性を低下させることなく植物由来ポリエチレン系樹脂中の低分子量化合物の基材層積層面へのブリードアウトを防ぎ基材層とのラミネート強度を高める」ことができないことを推認させる証拠は提出されておらず、前記のことを推認させるような事項は、理由2.の証拠として提出された甲1?10にも、記載されていない。
そうすると、上記語句における「石油由来ポリエチレン系樹脂」とは、本件明細書に記載されているとおり、シーラントフィルムとしてヒートシール性を有するものとして一般的に用いられる任意のポリエチレン系樹脂であると、解するのが自然である。
そして、このことは、本件明細書の【0056】?【0071】で説明されている実施例1?3において、石油由来ポリエチレン系樹脂として用いられている「エボリューSP2020」が、理由2.の証拠として提出された甲4?6にも記載されているように、シーラントフィルムとしてヒートシール性を有するものとして一般的に用いられるポリエチレン系樹脂であることからも裏付けられるものである。

次に、上記語句における「滑り性を低下させることなく」、「植物由来ポリエチレン系樹脂中の低分子量化合物の基材層積層面へのブリードアウトを防ぎ基材層とのラミネート強度を高める」ことについて、本件明細書には、「実施例1?3のシーラントフィルムの基材層積層面、及び比較例1?2のシーラントフィルムの一方の面に、コロナ処理を施し、その処理面に、接着剤層を介して二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)をドライラミネートして、積層フィルムを作製した。この積層フィルムを、40℃×3日間エージングし、さらに23℃で2週間経過後のラミネート強度を、15mm幅あたり、T型剥離、引張速度50mm/分にて測定した。(段落【0062】)」及び「実施例1?3及び比較例1?2のシーラントフィルムをそれぞれ2枚用意し、フィルム(ヒートシール面)対フィルム(ヒートシール面)の滑り性について、JIS K7125:1999(摩擦係数試験方法)に準拠して動摩擦係数を測定した。(段落【0064】)」と記載されている。
また、段落【0065】【表1】から、実施例1?3として実施されたシーラントフィルムは、「滑り性」及び「ラミネート強度」の双方について、一般的に用いられるポリエチレン系樹脂のみによるシーラントフイルムと遜色がないものであることが把握される。
さらに、「植物由来ポリエチレン系樹脂の配合率が上がるにつれて起きるラミネート強度の低下が、植物由来ポリエチレン系樹脂中の低分子量化合物、例えばモノマー、オリゴマー等のフィルム表面上へのブリードアウト(析出)に起因していることを見出し(段落【0009】)」との記載を踏まえると、上記語句における「ブリードアウトを防ぎ」の程度やその評価は、上記「ラミネート強度」が、一般的に用いられるポリエチレン系樹脂のみによるシーラントフイルムと遜色がないことをもって行われていると解することができる。
したがって、「滑り性を低下させることなく」、「植物由来ポリエチレン系樹脂中の低分子量化合物の基材層積層面へのブリードアウトを防ぎ基材層とのラミネート強度を高める」ことの比較の基準は、一般的に用いられるポリエチレン系樹脂のみによるシーラントフイルムであり、「ブリードアウトを防ぎ」の程度やその評価方法についても不明な点はないといえる。

以上により、本件発明1が上記語句を発明特定事項としていることを理由として、本件発明が課題を解決し得ないものを含むもので、かつ、不明確であり、また、本件明細書の記載が、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとはいえない。

(ウ)本件発明は、課題を解決し得ないものをも含むものであるか、について
本件発明は、上記(2)ア.(ア)で示したとおり、本件の出願時点において、「石油由来のポリエチレン系樹脂を含んでなるシーラントフィルムにおいて、原料のポリエチレン系樹脂の一部を、植物由来ポリエチレン系樹脂に変えると、その配合率が高くなるにつれて、その上に積層する基材層とのラミネート強度が低下し、層間剥離が起き易くなる」(段落【0004】)こと及び「この問題に対し、シーラントフィルム中にブリードアウト抑制剤を存在させることにより、基材層とのラミネート強度を高めることができたが、その一方で、滑り性が低下するという問題が生じた」(段落【0005】)ことを認識し、「植物由来ポリエチレン系樹脂の配合率が上がるにつれて起きるラミネート強度の低下が、植物由来ポリエチレン系樹脂中の低分子量化合物、例えばモノマー、オリゴマー等のフィルム表面上へのブリードアウト(析出)に起因していること」及び「植物由来ポリエチレン系樹脂を含むシーラントフィルムにおいて、その基材層積層面を、石油由来ポリエチレン系樹脂のみからなる層で覆うことにより、滑り性を低下させることなく、該低分子量化合物の基材層積層面へのブリードアウトを防ぎ、基材層とのラミネート強度を高められることを見出し(段落【0009】)」たことを踏まえたものであるといえ、「基材層と高いラミネート強度を示し、且つ、滑り性に優れ、且つ、フィルム全体として少なくとも45%の高いバイオマス度を示すことから環境への負荷が低減されたシーラントフィルム、並びにそれを用いた包装材及び包装袋を提供すること」(段落【0008】)を解決すべき課題とした発明である。
そして、上記「石油由来のポリエチレン系樹脂を含んでなるシーラントフィルムにおいて、原料のポリエチレン系樹脂の一部を、植物由来ポリエチレン系樹脂に変えると、その配合率が高くなるにつれて、その上に積層する基材層とのラミネート強度が低下」することは、植物由来LLDPEを含み、そのバイオマス度が50%であった「比較例1」のラミネート強度(1.1N/15mm幅)が、一般的に用いられるポリエチレン系樹脂のみによるシーラントフイルムの例である「比較例2」のラミネート強度(8.6N/15mm幅)に比して著しく低いことを示す本件明細書の段落【0060】、【0061】及び【0065】【表1】の記載に裏付けられたものであり、また、本件発明が上記課題を解決するものであることは、実施例1?3のラミネート強度(各々、8.3、8.9、9.1 N/15mm幅)が、上記「比較例2」のラミネート強度と同程度となっているを示す上記段落【0060】、【0061】及び【0065】【表1】の記載に裏付けられたものである。
さらに、「1層またはそれ以上の石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層と、1層またはそれ以上の植物由来ポリエチレン系樹脂からなる層とからなる多層積層フィルム」の「基材層積層面を形成する最表層」として、シーラントフィルムとしてヒートシール性を有するものとして一般的に用いられる石油由来ポリエチレン系樹脂を採用しただけでは、「滑り性を低下させることなく植物由来ポリエチレン系樹脂中の低分子量化合物の基材層積層面へのブリードアウトを防ぎ基材層とのラミネート強度を高める」ことができないことを推認させる証拠は提出されておらず、前記のことを推認させるような事項は、理由2.の証拠として提出された甲1?10にも、記載されていない。
したがって、本件明細書の上記記載を踏まえれば、本件発明は、課題を解決し得ないものをも含むものであるとはいえない。

なお、申立人は、特許異議申立書の第25頁第10行?第31頁第9行において、本件明細書の記載から、「植物由来ポリエチレン系樹脂を含む樹脂フィルムは、(フィルム中の石油由来ポリエチレン系樹脂が、同じコモノマーを使用して同1条件で製造された、MFR及び密度や低分子量化合物の量が同じ植物由来のポリエチレン系樹脂に置換されて、)植物由来ポリエチレン樹脂の配合率が高くなるにつれて、シーラントとして使用する場合のラミネート強度が低下するという問題が存在する」ことは理解できない旨を主張しているが、この主張は、(フィルム中の石油由来ポリエチレン系樹脂が、同じコモノマーを使用して同1条件で製造された、MFR及び密度や低分子量化合物の量が同じ植物由来のポリエチレン系樹脂に置換されて、)という、本件発明が発明特定事項とはしていない事項を前提とした主張である。
さらに、(フィルム中の石油由来ポリエチレン系樹脂が、同じコモノマーを使用して同1条件で製造された、MFR及び密度や低分子量化合物の量が同じ植物由来のポリエチレン系樹脂に置換されて、)なる事項は、甲2の第63頁の「1.はじめに」?第64頁の「4.サトウキビ由来ポリエチレンの生産概要と生産予定グレード」及び「表2」の記載事項、甲3の第28頁の「1.はじめに」?第29頁の「4.生産予定グレード」及び「表1」の記載事項及び特許権者による平成30年3月16日付け意見書に添付された参考資料1(特開2015-189160号公報)の段落【0008】の記載事項から把握される本件特許の出願時近辺の技術常識、すなわち、本件特許の出願時点において、入手可能であった植物由来ポリエチレン系樹脂は、石油由来ポリエチレン系樹脂に比して、使用されるコモノマー、製造条件、MFR及び密度や低分子量化合物の量等が、きわめて限定的で、種類が少なかったことからみて、実際的とはいえない事項であり、申立人の上記主張は、当該実際的とはいえない事項を前提とした主張であるといわざるをえない。
したがって、申立人の主張は、その前提において誤りないし無理があるから、採用できない。

(エ)まとめ
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び2号の規定に違反しておらず、また、本件明細書の記載は、同条第4項第1号の規定に違反していないから、同法第113条第4号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

イ.理由2について
(ア)本件発明1について
a.甲1発明
甲1の【請求項1】、段落【0001】?【0007】、【0015】、【0016】、【0018】、【0019】及び【図1】の記載を踏まえると、甲1には以下の甲1発明が記載されている。
《甲1発明》
外層である二軸延伸プラスチックフィルム1、
当該二軸延伸プラスチックフィルム1に積層する、線状低密度ポリエチレン3、4からなる内層であって、
外面側の線状低密度ポリエチレン4の層と、当該外面側の線状低密度ポリエチレン4よりも密度が低い内面側の線状低密度ポリエチレン3の層との共押し出しフィルム2、
からなる積層フィルム

b.対比、判断
甲1発明の「外層である二軸延伸プラスチックフィルム1」は、本件発明1の「基材層」に相当し、甲1発明の「外面側の線状低密度ポリエチレン4の層」及び「内面側の線状低密度ポリエチレン3の層」と、本件発明1の「石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層」及び「植物由来ポリエチレン系樹脂からなる層」とは、「基材層積層面を形成する層」及び「基材層積層面を形成しない層」という限りにおいて一致するところ、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
《相違点》
「基材層積層面を形成する層」及び「基材層積層面を形成しない層」が、本件発明1では「滑り性を低下させることなく植物由来ポリエチレン系樹脂中の低分子量化合物の基材層積層面へのブリードアウトを防ぎ基材層とのラミネート強度を高める、石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層であり、該石油由来ポリエチレン系樹脂は、石油由来LLDPE、または、石油由来LLDPEと石油由来LDPEとの混合物であ」る層及び「植物由来ポリエチレン系樹脂からなる層」であり、「該植物由来ポリエチレン系樹脂は、植物由来LLDPEであ」る層であり、シーラントフィルム全体のバイオマス度が45?80%であるのに対し、甲1発明では「線状低密度ポリエチレン4の層」及び「当該外面側の線状低密度ポリエチレン4よりも密度が低い内面側の線状低密度ポリエチレン3の層」であり、シーラントフィルム全体のバイオマス度が不明である点。

上記相違点について検討する。
甲1発明は、「従来多く用いられている外層が二軸延伸ナイロンフィルム、内層が線状低密度ポリエチレンからなるフィルムは、製袋時のヒートシールの温度、圧力、時間が制約を受けてしまうので、低いシール温度のシール層を用いないと、シール強度が安定せず不十分な場合があり、液体を充填した場合、破袋等の事故が発生する恐れがあり、また、低いシール温度のシール層とすると、液体を充填した場合、剛性が不足し、起立させた際、袋にしわが発生するという問題があった」(甲1の段落【0004】及び【0006】の記載を参照)ことに鑑み、「スタンディングパウチの製造、液体の充填包装を連続的に行うのに適した積層フィルムを用いたスタンディングパウチを提供すること」(同段落【0007】を参照)を課題とし、「外面側の線状低密度ポリエチレン4の層と、当該外面側の線状低密度ポリエチレン4よりも密度が低い内面側の線状低密度ポリエチレン3の層との共押し出しフィルム2」を採用することに関し、「特に外面側の線状低密度ポリエチレン4よりも内面側の線状低密度ポリエチレン3の方が密度が低いものを用いる構成が、シール強度の安定性、成形性の点で好ましい。」とされるものであるところ、甲1には、上記の線状低密度ポリエチレン3及び4について、植物由来ポリエチレン系樹脂を用いることやシーラントフィルム全体のバイオマス度をある程度確保することについては、全く記載されておらず、これを示唆する記載もない。
すなわち、甲1には、甲1発明における「外面側の線状低密度ポリエチレン4の層」を植物由来ポリエチレン系樹脂とし、かつ、「内面側の線状低密度ポリエチレン3の層」を、前記植物由来ポリエチレン系樹脂の密度よりも低い密度のものとする動機付けとなる事項が記載されておらず、これを示唆する記載もないところ、上記動機付けとなる事項は、甲2?甲10にも記載されていない。
そして、本件発明1は、上記相違点に係る事項を発明特定事項とすることにより、上記(2)ア.(ア)で示した、課題を解決し、作用効果を奏するものであるところ、このことは、甲1?10の記載からは、予測しがたいものである。

したがって、本件発明1は、甲1発明、甲1記載事項?甲3記載事項、甲4記載事項?甲6記載事項に例示される周知技術及び甲7記載事項?甲10記載事項に例示される技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ)本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えるものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明、甲1記載事項?甲3記載事項、甲4記載事項?甲6記載事項に例示される周知技術及び甲7記載事項?甲10記載事項に例示される技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)まとめ
以上のとおり、本件発明1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

4.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-06-26 
出願番号 特願2012-194238(P2012-194238)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (B32B)
P 1 651・ 536- Y (B32B)
P 1 651・ 121- Y (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 久保田 葵増田 亮子細井 龍史  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 武井 健浩
渡邊 豊英
登録日 2017-03-17 
登録番号 特許第6107002号(P6107002)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 シーラントフィルム、並びにそれを用いた包装材及び包装袋  
代理人 吉住 和之  
代理人 竹林 則幸  
代理人 黒木 義樹  
代理人 結田 純次  
代理人 長谷川 芳樹  
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