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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1342027
異議申立番号 異議2018-700379  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-08 
確定日 2018-07-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第6228531号発明「超純水製造装置及び超純水製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6228531号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6228531号の請求項1?2に係る特許についての出願は、平成26年12月19日を出願日とする出願であって、平成29年10月20日に特許権の設定登録がされ、同年11月 8日にその特許公報が発行され、その後、平成30年 5月 8日に特許異議申立人南雲 嘉明により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6228531号の請求項1?2に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明2」といい、まとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
前処理システムと、一次純水システムと、サブシステムとを備え、
該一次純水システムが、高圧型逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備え、
該高圧型逆浸透膜分離装置が、膜面有効圧力2.0MPa、25℃条件下において0.6?1.3m^(3)/m^(2)/dayの純水透過流束を有し、
前記一次純水システムの出口における被処理水の水質が、比抵抗値18MΩcm以上、TOC(TotalOrganicCarbon)濃度2μg/L以下、ホウ素(B)濃度1ng/L以下、及びシリカ(SiO_(2))濃度0.1μg/L以下であり、
該イオン交換装置が、ア)強酸性カチオン交換樹脂が充填されたカチオン交換塔と、強塩基性アニオン交換樹脂が充填されたアニオン交換塔とを直列に接続した2床2塔式再生型イオン交換装置、イ)強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とが別々の異なる層となるように1つの塔内に該強酸性カチオン交換樹脂と該強塩基性アニオン交換樹脂とを充填した2床1塔式再生型イオン交換装置又はエ)電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した再生型イオン交換装置である、超純水製造装置。
【請求項2】
原水を前処理システムによって処理した被処理水を一次純水システム及びサブシステムの順によって処理し、
該一次純水システムによる処理方法が、高圧型逆浸透膜分離装置に該被処理水を通水する工程と、該通水された被処理水中のガスを脱気する工程と、該脱気された被処理水中の有機物を紫外線酸化装置によって分解する工程と、該有機物が分解された被処理水を、イオン交換装置によって処理する工程とを含み、
該イオン交換装置によって処理された被処理水の水質が、比抵抗値18MΩcm以上、TOC(TotalOrganicCarbon)濃度2μg/L以下、ホウ素(B)濃度1ng/L以下、及びシリカ(SiO_(2))濃度0.1μg/L以下であり、
該イオン交換装置が、ア)強酸性カチオン交換樹脂が充填されたカチオン交換塔と、強塩基性アニオン交換樹脂が充填されたアニオン交換塔とを直列に接続した2床2塔式再生型イオン交換装置、イ)強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とが別々の異なる層となるように1つの塔内に該強酸性カチオン交換樹脂と該強塩基性アニオン交換樹脂とを充填した2床1塔式再生型イオン交換装置又はエ)電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した再生型イオン交換装置である、超純水製造方法。」

第3 異議申立理由の概要
1 特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)各甲号証
本件特許異議申立における各甲号証は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開平10-180254号公報
甲第2号証:特開2012-245439号公報
甲第3号証:特開2013-255864号公報
甲第4号証:特開2003-266097号公報
甲第5号証:特開平7-47364号公報
甲第6号証:特開平10-85740号公報
甲第7号証:谷口 雅英、RO膜を使った海水淡水化技術の現状と今後の展望、日本海水学会誌(2009)Vol.63No.4、p.214-220
甲第8号証:佐々木崇夫ら、海水淡水化用RO膜、膜(MEMBRANE)(2011)Vol.36No.2、p.79-81
甲第9号証:S.Goekem Oenerら、A comparative study for the removal of boron and silica from geothermal water by cross-flow flat sheet reverse osmosis method、Desalination(2011)vol.283、p.10-15
甲第10号証:特開平7-124594号公報
甲第11号証:特開平9-234466号公報
甲第12号証:特開2004-57935号公報

(2)甲第1号証を主引用例とする場合について(異議申立書21頁15行?47頁下から3行、58頁5行?11行、58頁20行?59頁2行。)
本件発明1、2は、甲第1号証に記載される発明から出発して、甲第1号証?甲第6号証に記載の技術事項を適用し、あるいは参照して、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明1、2の先行技術に対する技術上の意義(作用効果)についても、甲第2号証?甲第12号証に記載の技術事項を参酌して、また、本件特許出願時の技術水準に基づき、当業者が容易に予測し、到達する範囲のものに過ぎない。

(2)甲第2号証を主引用例とする場合について(異議申立書47頁下から2行?58頁1行、58頁12行?18行、59頁3行?9行。)
本件発明1、2は、甲第2号証に記載される発明から出発して、甲第1号証?甲第6号証に記載の技術事項を適用し、あるいは参照して、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明1、2の先行技術に対する技術上の意義(作用効果)についても、甲第2号証,甲第3号証、及び甲第7号証?甲第12号証に記載の技術事項を参酌して、また、本件特許出願時の技術水準に基づき、当業者が容易に予測し、到達する範囲のものに過ぎない。

第4 各甲号証の記載事項
1 甲第1号証の記載事項
本件出願日前に公知となった甲第1号証(特開平10-180254号公報)には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。)。
(1-a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 被処理水を加圧下に逆浸透膜装置または限外濾過膜装置に供給して濾過操作を行う工程を含む純水の製造方法において、前記被処理水の圧力を制御して処理水の流量を増減することを特徴とする純水の製造方法。
・・・
【請求項7】 被処理水供給系と、被処理水を加圧するポンプと、逆浸透膜装置または限外濾過膜装置と、これらを順に連結する配管系と、前記逆浸透膜装置または限外濾過膜装置の下流側の配管内の流量を測定する流量計と、前記流量計の流量信号により前記ポンプの回転数を制御する制御装置とを有することを特徴とする純水の製造装置。」

(1-b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、純水(本明細書では超純水を含む意味で用いる)の製造方法及び純水製造装置に係り、特に逆浸透膜装置のように被処理水の水温の低下により透過性能の低下する逆浸透膜装置を用いて純水を製造する際に、透過性能の変化にかかわらず所定の透過水量を保ち得るようにした純水の製造方法及び製造装置、ならびにユースポイントにおける純水の使用量の変動に応じて濾過膜装置の透過水量を増減し得るようにした純水の製造方法及び製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から純水製造プラントにおいては、常圧脱気装置、逆浸透膜装置、フィルタ装置、真空脱気装置、紫外線照射有機物分解装置、イオン交換装置、限外濾過膜装置などを用いて、被処理水の溶存成分や微粒子成分を除去して、比抵抗値18MΩcm以上、TOC1ppb以下、0.05μm粒径の微粒子数個/cc程度までに純度を高めることが行われている。」

(1-c)「【0017】逆浸膜透装置内での沈殿物の析出を確実に防止して長期にわたる処理能力の維持を可能とするために、逆浸透膜装置へ供給する被処理水のpHを6?9、好ましくは6.5?8.0にするとよい。・・・逆浸透膜装置は、被処理水のTOC濃度に応じて2段以上としてもよい。例えば、TOC濃度が0.5ppm?3ppmの場合には、逆浸透膜装置を2段に設けることが好ましい。
・・・
【0019】本発明においては、ポンプは複数設置してもよく、特に、逆浸透膜装置を使用する一次処理系と限外濾過膜装置を使用する二次処理系とを貯水槽を介して連結してなる系では、第1のポンプを逆浸透膜装置の上流側に設置し、第2のポンプを限外濾過膜装置の上流側に設置し、ユースポイントからの還流を逆浸透膜装置と限外濾過膜装置の間に設置した貯水槽に供給する構成を採用することができる。・・・」

(1-d)「【0027】
【実施例1】図1は、本発明の第1の実施例の構成を示すブロック図である。
【0028】同図において、タンク1には例えば市水のような原水が収容されており、この原水は第1の交流ポンプ2により逆浸透膜装置3に圧送されるようになっている。・・・
【0029】真空脱気装置6は、真空度35Torr以下において、窒素ガスのような不活性ガスを被処理水の体積基準にして0.001?11.0、好ましくは0.01?0.05の体積流量比で送入しながら真空脱気して溶存揮発成分を除去する。紫外線照射装置7は、180?190nmの波長を有する紫外線酸化用低圧紫外線ランプであり、この紫外線の照射により、被処理水中に溶存する有機物は有機酸あるいは二酸化炭素にまで分解される。
【0030】イオン交換装置8は、例えば、アニオン交換樹脂として強塩基性アニオン交換樹脂デュオライトA-113Plus(ローム&ハース杜)と、カチオン交換樹脂として強酸性カチオン交換樹脂デュオライトC-20(ローム&ハース社)とを使用し、これらを予め再生してOH型とH型とに変換した後に混合充填した混床式イオン交換装置が好適に使用される。」

(1-e)「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の主要部を示す機器構成図。
・・・
【符号の説明】
1……第1の貯水槽、2……第1の交流ポンプ、3……逆浸透膜装置、4……第1の超音波流量計、5……第1のインバータ制御装置、6……真空脱気塔、7……第1の紫外線照射装置、8……第1のイオン交換装置、9……第2の貯水槽、10……第2の配管系、11……レベル計、12……第2の超音波流量計、13……第2の交流ポンプ、14……第2のインバータ制御装置、 15……第2の紫外線照射装置、16……イオン交換装置、17……限外濾過膜装置、18……ユースポイント」

(1-f)「



(ア)上記(1-a)、(1-b)によれば、甲第1号証には純水製造装置に係る発明が記載されており、上記(1-c)?(1-f)によれば、上記純水製造装置は、逆浸透膜装置3、真空脱気装置6、第1の紫外線照射装置7、第1のイオン交換装置8をこの順で備える一次処理系と、第2の紫外線照射装置15、イオン交換装置16、限外濾過膜装置17等を備える二次処理系を備えるものといえる。

(イ)また、上記(1-d)によれば、第1の紫外線照射装置7は、紫外線酸化用低圧紫外線ランプであり、イオン交換装置16は、強塩基性アニオン交換樹脂と強酸性カチオン交換樹脂とを使用し、予め再生して混合充填した混床式イオン交換装置である。

(ウ)そうすると、甲第1号証には、
「一次処理系と、二次処理系とを備え、
該一次処理系が、逆浸透膜装置と、真空脱気装置と、紫外線酸化用低圧紫外線ランプである紫外線照射装置と、イオン交換装置とをこの順で備え、
該イオン交換装置が、強塩基性アニオン交換樹脂と強酸性カチオン交換樹脂とを使用し、予め再生して混合充填した混床式イオン交換装置である、純水製造装置。」(以下「甲1a発明」という)が記載されていると認める。

(エ)一方、上記(1-a)、(1-b)によれば、甲第1号証には純水製造方法に係る発明が記載されており、上記(1-d)?(1-f)によれば、上記純水製造方法は、被処理水を、逆浸透膜装置3、真空脱気装置6、第1の紫外線照射装置7、第1のイオン交換装置8にそれぞれ通水して処理する一次処理系と、第2の紫外線照射装置15、イオン交換装置16、限外濾過膜装置17にそれぞれ通水して処理する二次処理系を備えるものといえる。

(オ)また、上記(1-d)によれば、逆浸透膜装置3による工程は、逆浸透膜装置に被処理水を通水する工程といえ、真空脱気装置6による工程は、通水された被処理水を真空脱気して溶存揮発成分を除去する工程といえ、第1の紫外線照射装置7による工程は、該脱気された被処理水中に溶存する有機物を有機酸あるいは二酸化炭素にまで分解する工程といえ、第1のイオン交換装置8による工程は、該有機物が分解された被処理水を、イオン交換装置によって処理する工程といえ、これらは、該一次処理系による処理であり、更に、上記第1のイオン交換装置8は、強塩基性アニオン交換樹脂と強酸性カチオン交換樹脂とを使用し、予め再生して混合充填した混床式イオン交換装置であるものである。

(カ)そうすると、甲第1号証には、
「被処理水を一次処理系及び二次処理系の順によって処理し、
該一次処理系による処理方法が、逆浸透膜装置に該被処理水を通水する工程と、該通水された被処理水を真空脱気して溶存揮発成分を除去する工程と、該脱気された被処理水中に溶存する有機物を有機酸あるいは二酸化炭素にまで分解する工程と、該有機物が分解された被処理水を、イオン交換装置によって処理する工程とを含み、
該イオン交換装置が、強塩基性アニオン交換樹脂と強酸性カチオン交換樹脂とを使用し、予め再生して混合充填した混床式イオン交換装置である、純水製造方法。」(以下「甲1b発明」という)が記載されていると認める。

2 甲第2号証の記載事項
本件出願日前に公知となった甲第2号証(特開2012-245439号公報)には、以下の記載がある。
(2-a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次純水システムと、該一次純水システムの処理水を処理するサブシステムとを備え、少なくとも該一次純水システムに逆浸透膜分離装置が設けられている超純水製造装置において、該一次純水システムに設置された逆浸透膜分離装置が高圧型逆浸透膜分離装置であり、且つ単段にて設置されていることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項2】
請求項1において、前記高圧型逆浸透膜分離装置は、標準運転圧力5.52MPa以上、標準運転圧力における純水フラックス0.5m^(3)/m^(2)・D以上、NaCl除去率99.5%(NaCl32000mg/L)以上の特性を有することを特徴とする超純水製造装置。」

(2-b)「【0001】
本発明は超純水製造装置に係り、特に逆浸透膜分離装置(RO装置)を有する一次純水システムを備えた超純水製造装置に関する。」

(2-c)「【0009】
しかしながら、このように逆浸透膜分離装置を2段に設置すると、設置スペースが増大すると共に、装置運転管理が煩雑化する。即ち、半導体製造工場の超純水製造プラントでは、規模にもよるが、一次純水システムの第1段目の逆浸透膜分離装置として例えば4?40個を並列設置し、第2段目にこれと同程度の逆浸透膜分離装置を並列設置しており、逆浸透膜分離装置の設置数が極めて多いものとなっており、逆浸透膜分離装置の設備コスト及びランニングコストが嵩むと共に、設置面積も大きいものとなっている。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、逆浸透膜分離装置の設置数が少ない超純水製造装置を提供することを目的とする。」

(2-d)「【0016】
本発明では、この高圧型逆浸透膜分離装置を超純水製造装置の一次純水システムに単段(1段)に設置する。・・・一方、電子産業分野における一般的なRO膜に適用する原水の塩類濃度は低く、TDS(全溶解性物質)が1500mg/L以下である。このような原水においては、浸透圧が低く、膜面有効圧力わずか2?3MPa程度で十分な透過水量を得、かつ上述のごとく透過水の水質は、従来の逆浸透膜(超低圧RO膜、低圧RO膜)に比べ格段と向上する。
【0017】
このように一次純水システムに高圧型逆浸透膜分離装置を単段設置することにより、逆浸透膜分離装置の設置数が従来の2段設置の場合に比べて半分となり、逆浸透膜分離装置の設置スペースが半減すると共に、設備コスト、運転管理コストもほぼ半減する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の超純水製造装置の実施の形態の一例を示す系統図である。
【図2】従来の超純水製造装置を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の超純水製造装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
本発明においては、図1に示すように、原水を好ましくは前処理システム、一次純水システム及びサブシステムで順次処理して超純水を製造するに当たり、一次純水システムに逆浸透膜分離装置(RO装置)として高圧型逆浸透膜分離装置を単段にて設置する。
【0021】
高圧型逆浸透膜分離装置は、従来、海水淡水化に用いられている逆浸透膜分離装置であり、標準運転圧力5.52MPa以上であり、標準運転圧力において、純水フラックス0.5m^(3)/m^(2)・D以上、NaCl除去率99.5%(NaCl32000mg/L)以上の特性を有する。・・・
【0022】
この高圧型逆浸透膜は、従来の超純水製造装置の一次純水システムに用いられている低圧又は超低圧型逆浸透膜に比べて膜表面のスキン層が緻密となっている。そのため、高圧型逆浸透膜は低圧型又は超低圧型逆浸透膜に比べて単位操作圧力当りの膜透過水量は低いものの有機物除去率は極端に高い。TDS(全溶解性物質)1500mg/L以下の塩類濃度の給水を逆浸透膜処理する場合においては、回収率90%時の運転条件下で逆浸透膜にかかる浸透圧は最大1.0MPa程度である。従って、TDS1500mg/L以下の給水の処理に高圧型逆浸透膜分離装置を用いた場合、好ましくは15?3MPa、特に好ましくは2?3MPa程度の膜面有効圧力(1次側と2次側との圧力差)で、低圧型又は超低圧型逆浸透膜と同程度の水量を確保することが可能となる。その結果、1段RO膜処理のみで従来の2段ROと同等の処理水水質・処理水量を得ることが可能となり、それに伴い膜本数、ベッセル、配管が削減でき低コスト、省スペース化が可能となる。」

(2-e)「【実施例】
【0025】
<実験例1>
電子デバイス工場排水(電気伝導率100mS/m、TDS600mg/L、TOC10mg/L)を1段のみ設置された高圧型逆浸透膜分離装置(RO膜はSWC4+:日東電工製。運転圧力5.52MPaにおけるフラックス24.6m^(3)/m^(2)・D、NaCl除去率99.8%(NaCl32000mg/L))に回収率73%の条件で通水した。その結果、透過水のTOCは0.85mg/Lとなった。膜面有効圧力は2.0MPaであった。
【0026】
<実験例2>
実験例1と同じ電子デバイス工場排水を、超低圧RO膜(ES-20:日東電工製)を充填した2段RO装置に前段RO回収率75%、後段RO回収率90%、全体水回収率73%の条件(後段RO濃縮水は前段RO給水に合流)で通水した。その結果、第1段目RO透過水のTOC濃度は1.35mg/L、第2段目RO透過水のTOC濃度は0.9mg/Lとなった。膜面有効圧力は1段目0.5MPa、2段目0.75MPaであった。」

(2-f)「



(ア)上記(2-a)?(2-c)によれば、甲第2号証には超純水製造装置に係る発明が記載されており、上記(2-d)?(2-f)によれば、上記超純水製造装置は、前処理システム、一次純水システム及びサブシステムで順次処理して超純水を製造するものであって、該一次純水システムは、高圧型逆浸透膜分離装置と、イオン交換装置と、脱気装置とをこの順で備えるものといえる。

(イ)また、上記(2-a)、(2-d)によれば、上記高圧型逆浸透膜分離装置は、標準運転圧力5.52MPa以上、標準運転圧力における純水フラックス0.5m^(3)/m^(2)・D以上、NaCl除去率99.5%(NaCl32000mg/L)以上の特性を有するものである。

(ウ)そうすると、甲第2号証には、
「前処理システムと、一次純水システムと、サブシステムとを備え、
該一次純水システムが、高圧型逆浸透膜分離装置と、イオン交換装置と、脱気装置とをこの順で備え、
該高圧型逆浸透膜分離装置が、標準運転圧力5.52MPa以上、標準運転圧力における純水フラックス0.5m^(3)/m^(2)・D以上、NaCl除去率99.5%(NaCl32000mg/L)以上の特性を有する、超純水製造装置」(以下「甲2a発明」という)が記載されていると認める。

(エ)一方、上記(2-a)?(2-c)によれば、甲第2号証に記載される超純水製造装置により超純水を製造する工程は、純水製造方法といえるものであって、上記(2-d)?(2-f)によれば、上記純水製造方法は、原水を前処理システムによって処理した被処理水を一次純水システム及びサブシステムの順によって処理するものといえる。

(オ)また、上記(2-d)によれば、高圧型逆浸透膜分離装置による工程は、高圧型逆浸透膜分離装置に被処理水を通水する工程といえ、イオン交換装置による工程は、該通水された被処理水をイオン交換装置によって処理する工程といえ、脱気装置による工程は、イオン交換装置によって処理された被処理水中のガスを脱気する工程といえ、これらは、該一次純水システムによる処理である。

(カ)そうすると、甲第2号証には、
「原水を前処理システムによって処理した被処理水を一次純水システム及びサブシステムの順によって処理し、
該一次純水システムによる処理方法が、高圧型逆浸透膜分離装置に被処理水を通水する工程と、該通水された被処理水をイオン交換装置によって処理する工程と、イオン交換装置によって処理された被処理水中のガスを脱気する工程とを含む、超純水製造方法。」(以下「甲2b発明」という)が記載されていると認める。

3 甲第4号証の記載事項
本件出願日前に公知となった甲第4号証(特開2003-266097号公報)には、以下の記載がある。
(4-a)「【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、シリカ、ホウ素等の弱電解物質において、高い水質を要求される半導体等の分野に好適な、一次純水システムにおいてこれらを高度に除去することができる超純水製造装置を提供することを目的とする。」

(4-b)「【0046】実施例1
原水を、活性炭装置→RO膜分離装置→脱ガス装置→電気脱イオン装置→低圧UV酸化装置→非再生型イオン交換装置の順で処理して一次純水を得、得られた一次純水の水質を表5に示した。
・・・
【0056】
【表5】



(4-c)「【0058】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の超純水製造装置によれば、脱ガス装置、RO膜分離装置、電気脱イオン装置、UV酸化装置及び非再生型イオン交換装置の装置構成の一次純水システムにおいて、シリカ、ホウ素等の弱電解物質を高度に除去することができ、後段のサブシステムへの負荷を軽減することができる。」

(4-d)「



4 甲第10号証の記載事項
本件出願日前に公知となった甲第10号証(特開平7-124594号公報)には、以下の記載がある。
(10-a)「【0015】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の低濃度有機性廃水の処理装置は、0.5?3ppmのTOC濃度の低濃度有機廃水をTOC濃度が1ppb以下の超純水に再生する低濃度有機性廃水の処理装置であって、0.5?3ppmのTOC濃度の低濃度有機廃水を60?200ppbの低濃度有機性廃水にする逆浸透膜装置と真空度が35Torr以下の下で被処理水の体積を基準にして0.001?1.0の体積流量比の不活性ガスが塔内に送入される真空脱気塔からなる第1の処理系と、184.9nmの紫外線を照射する低圧紫外線分解装置とイオン交換装置とを順に配置した組を少なくとも1組有する第2の処理系とを流路に沿って順に配設してなることを特徴としている。」

(10-b)「【0021】本発明では、第1の処理系の出口のTOC濃度が低くなるほどTOC除去の効率が向上する。第1の処理系の出口のTOC濃度を低くするには、逆浸透膜装置と真空脱気装置のTOC除去率を高めればよい。しかしながら、逆浸透膜装置のTOC除去率を高めるには逆浸透膜装置を多段に設置しなければならないためイニシャルコスト、ランニングコストが高くなる。したがって、コストアップをできるだけ抑えるためには、真空脱気装置の除去率を高くすることが望ましい。」

(10-c)「【0023】第2の処理系では、低圧紫外線照射装置でTOCの分解により生じた有機酸その他のイオン性物質はイオン交換装置により除去されるが、低圧紫外線照射装置を複数台連結して使用する場合には、イオン交換装置との連結方法がTOCの除去率に影響を与える。」

(10-d)「【0033】
【実施例】図面は、本発明の実施例の構成図である。
【0034】この実施例の第1の処理系は、逆浸透膜装置(SU-710(東レ株式会社製)×12)1、逆浸透膜装置(NTR-759・UP(日東電工株式会社製)×9)2及びN_(2)ガス混入方式の真空脱気装置(直径250mm、充填層高2m)3を接続して構成されている。なお、真空脱気装置3のN_(2)と被処理水の比率は0.03:1である。
【0035】また、第2の処理系は、低圧紫外線照射装置(184.9nm・照射量0.5kW・h/m^(3)、TDFL-4千代田工販株式会社製(電子安定器付))4aと混床式イオン交換装置5a及びこれらと同一仕様の低圧紫外線照射装置4bと混床式イオン交換装置5bとを接続して構成されている。
・・・
【0037】以上の処理装置を使用して、供給水として超純水(TOC濃度0.22?0.23mgC/l、比抵抗17.0MΩ・cm、水温25℃)にイソプロパノールをTOC濃度で約1ppmとなるよう添加したものを用いて処理を行った。
・・・
【0039】表から明らかなように処理された超純水は出口で1ppb以下であり、TOC濃度を非常に低濃度にすることができる。
【0040】
図での位置 TOC 除去率[%]
被処理水 (a) 1.1×10^(3) ppb -
2段R/O出口 (b) 80 92.7
真空脱気出口 (c) 60 25.0
TOC-UV+MB1st (d) 11 81.7
TOC-UV+MB2st (e) 0.6 ?0.8 93.6」

(10-e)「



5 甲第12号証の記載事項
本件出願日前に公知となった甲第12号証(特開2004-57935号公報)には、以下の記載がある。
(12-a)「【0002】
【従来の技術】
従来の超純水製造システムは、図3に示す如く、一般的には前処理部、一次純水システム、サブシステム、及び端末配管部で構成されている。前処理部では、後段の装置が安定して運転を行えるよう、不溶解性物質の除去を主目的として、凝集、沈殿、濾過、軟化、除鉄、除マンガン、吸着などの処理が行われる。一次純水システムは、前処理部とサブシステムとの中間に位置し、前処理水を処理して一次純水を製造するものであり、主にイオン交換装置、脱気装置、逆浸透(RO)膜装置で構成されている。最近では、環境保全の観点から、再生薬品を用いることなく連続採水が可能な電気脱イオン装置が、イオン交換装置に変わる脱塩装置の主流になりつつある。」

(12-b)「【0013】
図1の超純水製造システムでは、前処理部1は、除濁装置11と活性炭吸着装置12とで構成され、超純水製造部2は、前処理水をタンク21に受け、このタンク21内の水をポンプP1によりRO膜装置22、脱気装置23、電気脱イオン装置24に順次通水して処理し、電気脱イオン装置24の処理水をポンプP2で昇圧した後濾過膜装置25で処理して超純水を得る。製造された超純水は端末配管部3の送水配管31よりユースポイント4に送水され、ユースポイント4で使用されなかった余剰水は戻り配管32より超純水製造部2のタンク21に戻される。」

(12-c)「【0017】
また、脱気装置23としては、真空脱気装置、窒素脱気装置、膜脱気装置等を用いることができ、特に制限されるものではないが、超純水製造部2からの不純物溶出の防止、及びコンパクト性を考慮すると、膜脱気装置が好ましい。また、濾過膜装置25の濾過膜は、精密濾過(MF)膜、限外濾過(UF)膜、逆浸透(RO)膜のいずれでも良いが、現在の超純水水質を満足させるためにはUF膜又はRO膜が好ましい。」

(12-d)「【0023】
前述の如く、本発明の超純水製造システムの超純水製造部に設置される電気脱イオン手段の処理水は、得られる超純水の水質に直接影響し、この電気脱イオン手段の処理水の比抵抗値は18MΩ・cm以上、シリカ濃度は1ppb以下であることが好ましいことから、このような処理水が得られるように、本発明では、電気脱イオン手段として、本出願人より、特開2001-113281に提案した、電気脱イオン装置を複数段直列に接続し、最前段の電気脱イオン装置(以下、「第1電気脱イオン装置」と称す。)として、pH8.5以下の原水をアルカリ薬剤を添加することなしに処理したときに、該原水のpHよりも1.0以上高いpHの処理水が得られるように、脱塩室厚みが7mm以上で、セルあたりの操作電圧が1?50V/cell、SVが30?150/hrである装置を用い、2段目以降の電気脱イオン装置(以下、「第2以降電気脱イオン装置」と称す。)として、脱塩室内が区画部材によって多数の小室に区画されており、各小室に臨む区画部材の少なくとも一部は該脱塩室内の平均的な水の流れ方向に対し傾斜しており、該区画部材の少なくとも傾斜した部分は、水を通過させるがイオン交換体の通過を阻止するものを用いることが好ましい。
・・・
【0025】
このような電気脱イオン手段において、第1電気脱イオン装置は、pH8.5以下の被処理水(電気脱イオン装置の給水)にアルカリ薬剤を添加することなく処理した場合において、被処理水よりもpHが1.0以上、好ましくは1.3?3.0程度高い処理水(脱イオン水)を得ることができるものであり、電気脱イオン装置内において、水のpHが上昇することにより、シリカやホウ素等の弱電解物質及び硬度成分が効率よく除去される。」

(12-e)「【0036】
このような処理効率を得るためには、特に上記構成において、脱塩室厚みが10?20mmであり、脱塩室にアニオン交換体とカチオン交換体との混床が充填され、イオン交換体は混合層とし、通水SVが50?100/hrであり、印加電圧が10?30V/cellであると、被処理水中の硬度成分を50%以上、ホウ素、シリカ等の弱電解物質を90%以上除去できる。」

(12-f)「【0059】
実施例1
図1に示す本発明の超純水製造システムにより、市水を原水として超純水の製造を行い、得られた超純水の水質を表1に示した。
・・・
【0066】
【表1】



第5 本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には,以下の記載がある。
(a)「【0001】
本発明は、超純水製造装置及び超純水製造方法に関する。」

(b)「【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、要求水質を充分に満足した高純度の超純水を、フットプリントを軽減させて、かつ、安価に製造することができる超純水製造装置及び超純水製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、超純水装置に備えられる一次純水システムに、適切な装置を、適切な順番に設置することによって、構成ユニット数を低減し、要求水質を充分に満足した高純度の超純水を安価に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。」

(c)「【0022】
<一次純水システム>
本発明に係る実施形態の超純水製造装置に備えられる一次純水システムは、高圧型逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備える、僅か4ユニット構成のシステムである。一次純水システムは、原水(工業用水、水道水、井水、電子デバイス製造工程から排出される使用済みの超純水等)を前処理システムによって処理した被処理水中のイオンや有機成分の除去を行う。そして、一次純水システムが僅か4ユニット構成であるにもかかわらず、本発明に係る実施形態の超純水製造装置によって製造された超純水の水質は、例えば、上記で述べた(A)?(C)の一次純水システムのように逆浸透膜分離装置及び/又はイオン交換装置(塔)を複数段に設置した一次純水システムを備える超純水製造装置によって製造された超純水の水質に対して同等以上の水質を示す。したがって、本発明に係る実施形態の超純水製造装置によって製造された超純水は、要求水質を充分に満足した高純度の超純水である。
【0023】
本発明に係る実施形態の超純水製造装置によって製造された超純水が、要求水質を充分に満足するかどうかは、原水(工業用水、水道水、井水、電子デバイス製造工程から排出される使用済みの超純水等)を前処理システムによって処理した被処理水が、本発明に係る実施形態の超純水製造装置に備えられる一次純水システムによって処理することで、被処理水の水質(一次純水システムの出口における水質)が、比抵抗値18MΩcm以上、TOC(TotalOrganicCarbon)濃度2μg/L以下、ホウ素(B)濃度1ng/L以下、シリカ(SiO_(2))濃度0.1μg/L以下を示すかどうかで判断することができる。したがって、本発明に係る実施形態の超純水製造装置に備えられる一次純水システムによって処理された被処理水の水質が上記のような値を示せば、最終的には後述するサブシステムによって処理された超純水は、要求水質を充分に満足した高純度の超純水となる。」

(d)「【0037】
(実施例1)
電気伝導率30mS/m, TOC2mg/L、SiO_(2)10mg/L及びB30μg/Lを含む工業用水、凝集ろ過水をpH6の条件にて高圧型逆浸透膜(SWC4Max、膜面有効圧力2.0MPa、温度25℃における純水透過流束0.78m^(3)/m^(2)/day;有効圧2.0MPa、温度25℃、NaCl濃度32000mg/LにおけるNaCl除去率99.8%、日東電工製)(回収率85%)に通水した後、脱気装置(脱気膜、X-50ポリポア社製)、紫外線酸化装置(JPW、日本フォトサイエンス製)、次いで1塔内でカチオン交換樹脂層、及びアニオン交換樹脂層を分離したDBP(Double-BedPolisher、栗田工業製)に通水した。」

(e)「【0040】
(比較例3)
上記の実施例1で用いた原水を、高圧型逆浸透膜装置(SWC4Max、日東電工製)(回収率85%)、紫外線酸化装置(JPW、日本フォトサイエンス製)、脱気装置(脱気膜、X-50ポリポア社製)、1塔内でカチオン交換樹脂層及びアニオン交換樹脂層を分離したDBP(Double-Bed Polisher、栗田工業製)の順として処理した以外は実施例1と同条件にて通水した。
【0041】
(比較例4)
上記の実施例1で用いた原水を、脱気装置(脱気膜、X-50ポリポア社製)、高圧型逆浸透膜装置(SWC4Max、日東電工製)(回収率85%)、紫外線酸化装置(JPW、日本フォトサイエンス製)、1塔内でカチオン交換樹脂層及びアニオン交換樹脂層を分離したDBP(Double-Bed Polisher、栗田工業製)の順として処理した以外は実施例1と同条件にて通水した。」

(f)「【0045】
一次純水システムによって処理された、実施例1及び比較例3?4の被処理水のTOC値の経時変化を図1に示す。
【0046】
図1から明らかなように、比較例3の被処理水は実施例1の被処理水に比べTOCの値は0.5μg/L程度高い傾向を示した。これは紫外線酸化装置におけるTOC分解効率が脱気装置の設置順(位置)により異なることを示している。また、図1から明らかなように、比較例4の被処理水は通水開始時こそ実施例1の被処理水と同等の水質を得ていたものの日数の増加に伴い水質が悪化する傾向が観測された。これは脱気装置が原水由来物質により汚染され脱気効率が低下し、それに伴い紫外線酸化分解効率が低下したものと考えられる。」

(g)「



第6 当審の判断
1 甲第1号証を主引用例とする場合について
(1)本件発明1について
(1-1)対比
(ア)本件発明1と甲1a発明とを対比すると、上記第4の1(1-b)によれば、甲1a発明は「超純水製造装置」といえるものであって、甲1a発明の「一次処理系」、「二次処理系」は、それぞれ、本件発明1の「一次純水システム」、「サブシステム」に相当する。
また、甲1a発明の「真空脱気装置」は本件発明1の「脱気装置」に相当し、甲1a発明の「紫外線照射装置」は本件発明1の「紫外線酸化装置」に相当する。

(イ)そうすると、本件発明1と甲1a発明とは、
「一次純水システムと、サブシステムとを備え、
該一次純水システムが、逆浸透膜装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備える、超純水製造装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1a-1:本件発明1は、超純水製造装置が前処理システムを備えるのに対して、甲1a発明は、前処理システムを備えない点。

相違点1a-2:本件発明1は、一次純水システムが高圧型逆浸透膜分離装置を備え、該高圧型逆浸透膜分離装置が、膜面有効圧力2.0MPa、25℃条件下において0.6?1.3m^(3)/m^(2)/dayの純水透過流束を有するのに対して、甲1a発明の逆浸透膜装置は、高圧型逆浸透膜分離装置であるか否かが不明であり、膜面有効圧力2.0MPa、25℃条件下における純水透過流束も不明である点。

相違点1a-3:本件発明1は、一次純水システムの出口における被処理水の水質が、比抵抗値18MΩcm以上、TOC(TotalOrganicCarbon)濃度2μg/L以下、ホウ素(B)濃度1ng/L以下、及びシリカ(SiO_(2))濃度0.1μg/L以下であるのに対して、甲1a発明の一次純水システムの出口における被処理水の水質は不明である点。

相違点1a-4:本件発明1は、イオン交換装置が、ア)強酸性カチオン交換樹脂が充填されたカチオン交換塔と、強塩基性アニオン交換樹脂が充填されたアニオン交換塔とを直列に接続した2床2塔式再生型イオン交換装置、イ)強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とが別々の異なる層となるように1つの塔内に該強酸性カチオン交換樹脂と該強塩基性アニオン交換樹脂とを充填した2床1塔式再生型イオン交換装置又はエ)電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した再生型イオン交換装置であるのに対して、甲1a発明においては、イオン交換装置が混床式イオン交換装置である点。

(1-2)判断
(ア)事案に鑑み、上記相違点1a-3から検討する。
上記第5の(a)、(b)によれば、本件発明は、超純水製造装置及び超純水製造方法に関するものであって、要求水質を充分に満足した高純度の超純水を、フットプリントを軽減させて、かつ、安価に製造することができる超純水製造装置及び超純水製造方法を提供することを課題とするものであり、超純水装置に備えられる一次純水システムに、適切な装置を、適切な順番に設置することによって、構成ユニット数を低減し、要求水質を充分に満足した高純度の超純水を安価に製造することができるものである。

(イ)上記第5の(c)によれば、本件発明に係る超純水製造装置に備えられる一次純水システムは、具体的には、高圧型逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備える4ユニット構成のシステムであって、一次純水システムが僅か4ユニット構成であるにもかかわらず、本件発明に係る超純水製造装置によって製造された超純水の水質は、従来の超純水製造装置によって製造された超純水の水質に対して同等以上の水質を示すものであり、ここで、上記超純水が要求水質を充分に満足するかどうかは、原水(工業用水、水道水、井水、電子デバイス製造工程から排出される使用済みの超純水等)を前処理システムによって処理した被処理水の水質が、上記一次純水システムによって処理することで、比抵抗値18MΩcm以上、TOC(TotalOrganicCarbon)濃度2μg/L以下、ホウ素(B)濃度1ng/L以下、シリカ(SiO_(2))濃度0.1μg/L以下を示すかどうかで判断することができるものである。
そして、上記第5の(d)?(g)によれば、上記高圧型逆浸透膜分離装置、脱気装置、紫外線酸化装置、イオン交換装置の設置順が本件発明と異なると、TOC分解効率が低下するものである。

(ウ)上記(ア)?(イ)の検討によれば、本件発明1は、一次純水システムを、高圧型逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備える4ユニット構成のシステムとして、一次純水の水質を上記相違点1a-3に係る発明特定事項を満足するものとすることにより、要求水質を充分に満足した高純度の超純水を、フットプリントを軽減させて、かつ、安価に製造することができる超純水製造装置を提供する、という上記課題を解決するものといえる。

(エ)ところが、甲第1号証?甲第12号証には、一次純水システムを、高圧型逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備えるものとして、一次純水の水質を上記相違点1a-3に係る発明特定事項を満足できるようにすることは、記載も示唆もされていない。

(オ)特に、上記相違点1a-3に係る発明特定事項のうち、「TOC(TotalOrganicCarbon)濃度2μg/L以下」についてみると、上記第4の3(4-a)?(4-e)によれば、甲第4号証には、原水を、活性炭装置→RO膜分離装置→脱ガス装置→電気脱イオン装置→低圧UV酸化装置→非再生型イオン交換装置の順で処理して得られた一次純水のTOC濃度が、5ppb未満であることが記載されている。
また、上記第4の4(10-a)?(10-e)によれば、甲第10号証には、逆浸透膜装置(SU-710(東レ株式会社製)×12)、逆浸透膜装置(NTR-759・UP(日東電工株式会社製)×9)及びN_(2)ガス混入方式の真空脱気装置(直径250mm、充填層高2m)を接続して構成されている第1の処理系と、低圧紫外線照射装置(184.9nm・照射量0.5kW・h/m^(3)、TDFL-4千代田工販株式会社製(電子安定器付))と混床式イオン交換装置及びこれらと同一仕様の低圧紫外線照射装置と混床式イオン交換装置とを接続して構成されている第2の処理系により処理を行った超純水のTOC濃度は、出口で1ppb以下となることが記載されている。
そして、上記第4の5(12-a)?(12-f)によれば、甲第12号証には、RO膜装置、脱気装置、電気脱イオン装置に順次通水して処理し、電気脱イオン装置の処理水をポンプP2で昇圧した後濾過膜装置で処理して得られた超純水のTOC濃度が5μg/L未満となることが記載されている。

(カ)そこで検討するに、甲第4号証及び甲第12号証には、一次純水のTOC濃度が5ppb未満、5μg/L未満となることが記載されているが、このことから、甲第4号証及び甲第12号証に記載される一次純水のTOC濃度が2μg/L以下となっていると直ちにはいえないし、甲第4号証、甲第12号証に記載される一次純水システムは、いずれも、高圧型逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備える、4ユニット構成のシステムではない。
また、甲第10号証には、一次純水のTOC濃度が2μg/L以下となることが開示されているといえるが、甲第10号証に記載される一次純水システムは、上記4ユニット構成のシステムではなく、更に多数のユニット構成からなるシステムである。

(キ)そうすると、甲第4号証、甲第10号証、甲第12号証には、高圧型逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備える4ユニット構成のシステムにより、一次純水システムの出口における被処理水のTOC濃度を2μg/L以下にできることが記載も示唆もされていない。
また、そのほかの各甲号証には、一次純水システムの出口におけるTOC濃度については記載されていないから、甲1a発明の一次純水システムが、逆浸透膜装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備える4ユニット構成のものであるとしても、甲1a発明において、一次純水システムを上記4ユニット構成としたまま、当該一次純水システムの出口における被処理水のTOC濃度を2μg/L以下とすることを、甲第1号証?甲第12号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。

(ク)してみれば、甲1a発明において、一次純水システムの出口における被処理水の水質のうち、少なくとも、TOC(TotalOrganicCarbon)濃度を2μg/L以下とすることを、甲第1号証?甲第12号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえないので、甲1a発明において、上記相違点1a-3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることを、甲第1号証?甲第12号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るともいえない。

(ケ)したがって、ほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1a発明と、甲第1号証?甲第12号証に記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2について
(2-1)対比
(ア)本件発明2と甲1b発明とを対比すると、上記第4の1(1-b)によれば、甲1b発明は「超純水製造方法」といえるものであって、甲1b発明の「被処理水を一次処理系及び二次処理系の順によって処理」する、との発明特定事項は、本件発明2の「被処理水を一次純水システム及びサブシステムの順によって処理」する、との発明特定事項に相当する。
また、甲1b発明の「該通水された被処理水を真空脱気して溶存揮発成分を除去する工程」は、本件発明2の「該通水された被処理水中のガスを脱気する工程」に相当し、甲1b発明の「該脱気された被処理水中に溶存する有機物を有機酸あるいは二酸化炭素にまで分解する工程」は、本件発明2の「該脱気された被処理水中の有機物を紫外線酸化装置によって分解する工程」に相当する。

(イ)そうすると、本件発明2と甲1b発明とは、
「被処理水を一次純水システム及びサブシステムの順によって処理し、
該一次純水システムによる処理方法が、逆浸透膜分離装置に該被処理水を通水する工程と、該通水された被処理水中のガスを脱気する工程と、該脱気された被処理水中の有機物を紫外線酸化装置によって分解する工程と、該有機物が分解された被処理水を、イオン交換装置によって処理する工程とを含む、超純水製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1b-1:本件発明2は、超純水製造方法が、原水を前処理システムによって処理した被処理水とするものであるのに対して、甲1b発明は、原水を前処理システムによって処理した被処理水とするものではない点。

相違点1b-2:本件発明2は、超純水製造方法の一次純水システムによる処理方法が、高圧型逆浸透膜分離装置に該被処理水を通水する工程を備えるのに対して、甲1b発明の逆浸透膜装置は、高圧型逆浸透膜分離装置であるか否かが不明である点。

相違点1b-3:本件発明2は、イオン交換装置によって処理された被処理水の水質が、比抵抗値18MΩcm以上、TOC(TotalOrganicCarbon)濃度2μg/L以下、ホウ素(B)濃度1ng/L以下、及びシリカ(SiO_(2))濃度0.1μg/L以下であるのに対して、甲1b発明のイオン交換装置によって処理された被処理水の水質は不明である点。

相違点1b-4:本件発明2は、超純水製造方法におけるイオン交換装置が、ア)強酸性カチオン交換樹脂が充填されたカチオン交換塔と、強塩基性アニオン交換樹脂が充填されたアニオン交換塔とを直列に接続した2床2塔式再生型イオン交換装置、イ)強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とが別々の異なる層となるように1つの塔内に該強酸性カチオン交換樹脂と該強塩基性アニオン交換樹脂とを充填した2床1塔式再生型イオン交換装置又はエ)電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した再生型イオン交換装置であるのに対して、甲1b発明においては、イオン交換装置が混床式イオン交換装置である点。

(2-2)判断
(ア)事案に鑑み、上記相違点1b-3から検討すると、甲1a発明において、超純水製造装置の一次純水システムの出口における被処理水の水質のうち、少なくとも、TOC(TotalOrganicCarbon)濃度を2μg/L以下とすることを、甲第1号証?甲第12号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえないので、甲1a発明において、上記相違点1a-3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることを、甲第1号証?甲第12号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえないことは、上記(1)(1-2)(ク)に記載のとおりである。

(イ)そして、イオン交換装置によって処理された被処理水の水質とは、要するに、一次純水システムの出口における被処理水の水質のことであるから、上記相違点1b-3は、実質的に上記相違点1a-3と同一のものである。
そうすると、上記(1)(1-2)(ク)に記載したのと同様の理由により、甲1b発明において、上記相違点1b-3に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることを、甲第1号証?甲第12号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るともいえない。

(ウ)したがって、ほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1b発明と、甲第1号証?甲第12号証に記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 甲第2号証を主引用例とする場合について
(1)本件発明1について
(1-1)対比
(ア)本件発明1と甲2a発明とを対比すると、甲2a発明の「前処理システム」、「一次純水システム」、「サブシステム」は、それぞれ、本件発明1の「前処理システム」、「一次純水システム」、「サブシステム」に相当し、甲2a発明の「高圧型逆浸透膜分離装置」は、本件発明1の「高圧型逆浸透膜分離装置」に相当する。

(イ)そうすると、本件発明1と甲2a発明とは、
「前処理システムと、一次純水システムと、サブシステムとを備え、
該一次純水システムが、高圧型逆浸透膜分離装置を備える、超純水製造装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点2a-1:本件発明1は、一次純水システムが、高圧型逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備えるのに対して、甲2a発明は、一次純水システムが、高圧型逆浸透膜分離装置と、イオン交換装置と、脱気装置とをこの順で備える点。

相違点2a-2:本件発明1は、高圧型逆浸透膜分離装置が、膜面有効圧力2.0MPa、25℃条件下において0.6?1.3m^(3)/m^(2)/dayの純水透過流束を有するのに対して、甲2a発明の高圧型逆浸透膜分離装置は、上記純水透過流束を有するか否かが不明である点。

相違点2a-3:本件発明1は、超純水製造装置の一次純水システムの出口における被処理水の水質が、比抵抗値18MΩcm以上、TOC(TotalOrganicCarbon)濃度2μg/L以下、ホウ素(B)濃度1ng/L以下、及びシリカ(SiO_(2))濃度0.1μg/L以下であるのに対して、甲2a発明の一次純水システムの出口における被処理水の水質は不明である点。

相違点2a-4:本件発明1は、超純水製造装置のイオン交換装置が、ア)強酸性カチオン交換樹脂が充填されたカチオン交換塔と、強塩基性アニオン交換樹脂が充填されたアニオン交換塔とを直列に接続した2床2塔式再生型イオン交換装置、イ)強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とが別々の異なる層となるように1つの塔内に該強酸性カチオン交換樹脂と該強塩基性アニオン交換樹脂とを充填した2床1塔式再生型イオン交換装置又はエ)電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した再生型イオン交換装置であるのに対して、甲2a発明においては、イオン交換装置の構成が不明である点。

(1-2)判断
(ア)事案に鑑み、上記相違点2a-3から検討すると、甲1a発明において、超純水製造装置の一次純水システムの出口における被処理水の水質のうち、少なくとも、TOC(TotalOrganicCarbon)濃度を2μg/L以下とすることを、甲第1号証?甲第12号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえないので、甲1a発明において、上記相違点1a-3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることを、甲第1号証?甲第12号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえないことは、上記1(1)(1-2)(ク)に記載のとおりである。

(イ)そして、上記相違点2a-3は、実質的に上記相違点1a-3と同じものであるから、同様の理由により、甲2a発明において、上記相違点2a-3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることを、甲第1号証?甲第12号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るともいえない。

(ウ)したがって、ほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2a発明と、甲第1号証?甲第12号証に記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2について
(2-1)対比
(ア)本件発明2と甲2b発明とを対比すると、甲2b発明の「原水を前処理システムによって処理した被処理水を一次純水システム及びサブシステムの順によって処理」する、との発明特定事項は、本件発明2の「原水を前処理システムによって処理した被処理水を一次純水システム及びサブシステムの順によって処理」する、との発明特定事項に相当する。
また、甲2b発明の「高圧型逆浸透膜分離装置に被処理水を通水する工程」は、本件発明2の「高圧型逆浸透膜分離装置に被処理水を通水する工程」に相当する。

(イ)そうすると、本件発明2と甲2b発明とは、
「原水を前処理システムによって処理した被処理水を一次純水システム及びサブシステムの順によって処理し、
該一次純水システムによる処理方法が、高圧型逆浸透膜分離装置に被処理水を通水する工程を含む、超純水製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点2b-1:本件発明2は、一次純水システムによる処理方法が、高圧型逆浸透膜分離装置に通水された被処理水中のガスを脱気する工程と、該脱気された被処理水中の有機物を紫外線酸化装置によって分解する工程と、該有機物が分解された被処理水を、イオン交換装置によって処理する工程とを含むのに対して、甲2b発明の一次純水システムによる処理方法は、高圧型逆浸透膜分離装置に被処理水を通水する工程と、該通水された被処理水をイオン交換装置によって処理する工程と、イオン交換装置によって処理された被処理水中のガスを脱気する工程とを含むものである点。

相違点2b-2:本件発明2は、イオン交換装置によって処理された被処理水の水質が、比抵抗値18MΩcm以上、TOC(TotalOrganicCarbon)濃度2μg/L以下、ホウ素(B)濃度1ng/L以下、及びシリカ(SiO_(2))濃度0.1μg/L以下であるのに対して、甲2b発明のイオン交換装置によって処理された被処理水の水質は不明である点。

相違点2b-3:本件発明2は、超純水製造方法におけるイオン交換装置が、ア)強酸性カチオン交換樹脂が充填されたカチオン交換塔と、強塩基性アニオン交換樹脂が充填されたアニオン交換塔とを直列に接続した2床2塔式再生型イオン交換装置、イ)強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とが別々の異なる層となるように1つの塔内に該強酸性カチオン交換樹脂と該強塩基性アニオン交換樹脂とを充填した2床1塔式再生型イオン交換装置又はエ)電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した再生型イオン交換装置であるのに対して、甲2b発明においては、イオン交換装置の構成が不明である点。

(2-2)判断
(ア)事案に鑑み、上記相違点2b-2から検討すると、甲2a発明において、上記相違点2a-3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることを、甲第1号証?甲第12号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえないことは、上記(1)(1-2)(イ)に記載のとおりである。

(イ)そして、イオン交換装置によって処理された被処理水の水質とは、要するに、一次純水システムの出口における被処理水の水質のことであるから、上記相違点2b-2は、実質的に上記相違点2a-3と同一のものである。
そうすると、上記(1)(1-2)(イ)に記載したのと同様の理由により、甲2b発明において、上記相違点2b-2に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることを、甲第1号証?甲第12号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るともいえない。

(ウ)したがって、ほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2b発明と、甲第1号証?甲第12号証に記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、特許異議申立書に記載された申立理由によっては、本件請求項1?2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-07-06 
出願番号 特願2014-256939(P2014-256939)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 片山 真紀  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 金 公彦
山崎 直也
登録日 2017-10-20 
登録番号 特許第6228531号(P6228531)
権利者 栗田工業株式会社
発明の名称 超純水製造装置及び超純水製造方法  
代理人 渡邊 薫  

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