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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23G
管理番号 1342033
異議申立番号 異議2018-700107  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-08 
確定日 2018-07-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第6181254号発明「乳酸菌含有チョコレートおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6181254号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6181254号(以下「本件特許」という。)の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成28年8月11日に出願され、平成29年7月28日にその特許権の設定登録がされ、平成29年8月16日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成30年2月8日に特許異議申立人矢部陽子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2.特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の請求項1?7の記載は、以下のとおりである。

【請求項1】
生きた状態の乳酸菌を含有する乳酸菌含有チョコレートであって、該乳酸菌含有チョコレート中の固体粒子の平均粒子径が5μmより大きく7μm未満であり、かつ、粒子径が単一の分布ピークを有することを特徴とする、乳酸菌含有チョコレート。
【請求項2】
乳酸菌が、ラクトバチルス属、エンテロコッカス属、ビフィドバクテリウム属、あるいはロイコノストック属からなる群から選ばれるいずれか1種以上である、請求項1に記載の乳酸菌含有チョコレート。
【請求項3】
乳酸菌がラクトバチルス属ブレビス種である請求項1に記載の乳酸菌含有チョコレート。
【請求項4】
乳酸菌を1×10^(4)個/グラム以上1×10^(12)個/グラム以下で含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の乳酸菌含有チョコレート。
【請求項5】
乳酸菌を1×10^(6)個/グラム以上1×10^(12)個/グラム以下で含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の乳酸菌含有チョコレート。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の乳酸菌含有チョコレートを含む食品。
【請求項7】
原料の微粒化の際に、平均粒子径が5μmより大きく7μm未満となるように、かつ、粒子径が単一の分布ピークを有するように微粒化することを特徴とする乳酸菌含有チョコレートの製造方法。

3.申立理由の概要
申立理由の概要は、以下のとおりである。
(1)請求項1、7に記載された「平均粒子径」の算出方法が定義されていないため、その範囲が明確でない。また、請求項1、7に記載された「単一の分布ピーク」がどのような粒度分布を意味しているのかが明確でない。
よって、請求項1?7に記載された発明は明確でなく、特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
(2)請求項1、7に記載された「平均粒子径」の範囲が明確でないため、発明の実施に際して、平均粒子径をどのように定めればよいかがわからない。また、請求項1、7に記載された「単一の分布ピーク」がどのような粒度分布を意味しているのかが明確でないため、どのような粒度分布を採用できるのかがわからない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1?7に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
<証拠方法>
甲第1号証:SHIMADZU Excellence in Science, Application News No.Q112, Particle Size Distribution Measurement of Chocolate, First Edition, Nov, 2012 及び部分訳
甲第2号証:特許第5815944号公報
甲第3号証:特開2009-263638号公報
甲第4号証:特開平11-169079号公報
甲第5号証:"Functional, rheological and sensory properties of probiotic milk chocolate prodused in a ball mill", RSC Advances, 2016年1月28日, Vol.6, p.13934-13941 及び部分訳
甲第6号証:平成16年(行ケ)第290号審決取消請求事件の判決文
甲第7号証:平成18年(ワ)第11880号(甲事件)特許権侵害差止等請求事件、同第11881号(乙事件)特許権侵害差止等請求事件、同第11882号(丙事件)特許権侵害差止等請求事件の判決文

4.判断
(1)36条6項2号について
ア 「平均粒子径」について
本件特許明細書には、平均粒子径に関し、以下の記載がある。
「なお、平均粒子径は島津製作所製レーザ回折式粒子径分布測定装置を用いて測定を行い、水分活性はロトロニック社製水分活性測定システムAW-ラボを用いて測定を行った。」(【0035】)
「平均粒子径の具体的な測定方法は乳酸菌含有チョコレート0.5gをイソプロパノール10mLに入れ、50℃の湯煎で10分間撹拌しながら溶かし、測定波長680nmの吸光度が0.1?0.2になるようにイソプロパノールで希釈したサンプルを、レーザ回折式粒子径分布測定装置にて測定する。」(【0037】)
以上によれば、請求項1、7に記載された「平均粒子径」とは、島津製作所製レーザ回折式粒子径分布測定装置により、明細書の【0037】に記載された所定の手順に従って測定した値であることが理解できる。
一方、甲第1号証には、
「チョコレートの味を表現するためのいくつかの可能なパラメータがある。・・・このようなパラメータには、「舌触り」が含まれる。粒度分布は、このパラメータを数値で表現するための潜在的な指標を提供する。
この記事では、チョコレート中の粒子の粒径分布を測定するためのレーザー回折式粒度分析装置SALD-2300の使用について記載する。」(序文)旨が記載され、図3下部の表には、「Median D(μm)」、「Modal D(μm)」、「Mean V(μm)」と記載されている。
ここで、「Median」、「Modal」、「Mean」とは、それぞれ、「中央値」、「最頻値」、「平均値」のことであるから、甲第1号証より、チョコレート中の粒子の粒径分布の測定にレーザー回折式粒度分析装置を用いること、その結果として「中央値」、「最頻値」、「平均値」がそれぞれ得られることが、技術常識であったといえる。
してみれば、本件特許明細書に記載された所定の手順に従って、レーザ回折式粒子径分布測定装置を使用してチョコレート中の粒子の粒径分布を測定すれば、その「平均値」が得られることは明らかであるから、本件特許の請求項1、7に記載された「平均粒子径」の意味は明確であるといえる。
申立人は、平均粒子径の算出方法として、Median D(中央値)、Modal D(最頻値)、Mean V(体積平均値)の3つがあること(甲第1号証)、平均粒子径の定義を、平均体積粒子直径とする例(甲第2号証、甲第5号証)や、メジアン径とする例(甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証)があること、平均粒子径に関する裁判例(甲第6号証、甲第7号証)があることから、本件特許の請求項1、7に記載された「平均粒子径」の範囲が明確でない旨を主張する(特許異議申立書8?9頁)。
しかし、甲第1号証に示される、Median D(中央値)、Modal D(最頻値)は、いずれも「平均値」ではないし、平均粒子径としてメジアン径を用いる場合には、その旨を明示することが普通であり(甲第3号証、甲第4号証)、甲第6号証、甲第7号証の裁判例は、平均粒子径の測定方法も開示されていないという例であって、本件特許とは事情が異なるから、上記申立人の主張は採用できない。
イ 「単一の分布ピーク」について
請求項1、7に記載された「単一の分布ピーク」は、文言上、粒度分布において、ピークが単一であることを意味していることは明らかである。
申立人は、甲第5号証の図2(a)における、50%粒子径が9.26±0.04であるラクトバチルス・アシドフィラスNCFM含有チョコレートの粒度分布について、ピークが1つであるのに、特許権者は単一ピークではない旨を主張していたとして、本件特許発明でいう「単一の分布ピーク」が不明確である旨を主張する。
しかし、甲第5号証に、「本研究で製造されたミルクチョコレートの粒度分布は、図2及び表2に示される。・・・プロバイオティクスを含むチョコレートでは、すべて、プロバイオティクスを含まないチョコレートに対して、約7μmと13μmの2つのピークが見られた。」(甲第5号証の部分訳2頁4?9行)と記載されるとおり、上記申立人が指摘する粒度分布は、2つのピークを有するものであるから、申立人の主張は前提が誤りであって採用できない。
ウ 小活
したがって、請求項1?7に記載された発明に不明確なところはなく、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
(2)36条4項1号について
上記(1)で検討したとおり、「平均粒子径」の範囲、及び、「単一の分布ピーク」について、不明確なところはない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が請求項1?7に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとする根拠はなく、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

5.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-07-04 
出願番号 特願2016-158335(P2016-158335)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (A23G)
P 1 651・ 537- Y (A23G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小倉 梢  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 莊司 英史
紀本 孝
登録日 2017-07-28 
登録番号 特許第6181254号(P6181254)
権利者 日東薬品工業株式会社 株式会社ロッテ
発明の名称 乳酸菌含有チョコレートおよびその製造方法  
代理人 田村 弥栄子  
代理人 鎌田 光宜  
代理人 赤井 厚子  
代理人 戸崎 富哉  
代理人 土井 京子  
代理人 高島 一  
代理人 當麻 博文  
代理人 高島 一  

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