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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H05B
管理番号 1342039
異議申立番号 異議2018-700352  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-26 
確定日 2018-07-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第6225267号発明「ライト調整システムおよびライト」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6225267号の請求項1ないし6、8ないし10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6225267号の請求項1?10に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)9月2日(優先権主張 2014年9月2日 (JP)日本国)を国際出願日とするものであって、平成29年10月13日に特許の設定登録がされ、その後、その請求項1?6、8?10に係る特許に対し、特許異議申立人徐金龍(以下「異議申立人」という。なお、「金」3つの文字は、「金」1つにより表記する。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明
特許第6225267号の請求項1?6、8?10に係る特許は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?6、8?10に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1?6、8?10に係る特許発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」等という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
携帯可能なライトの発光制御を行うライト調整システムにおいて、
前記ライトと通信可能な携帯端末にインストールされたアプリケーションソフトと、
前記アプリケーションソフトは、
ユーザにより入力された、少なくとも複数の発光色および当該複数の発光色を発光させる順番を含む入力情報を受け付ける受付部と、
前記入力情報を色の要素情報として調整する色調整部と、
前記調整された色の要素情報を前記ライトに送信する送信部とを備え、
前記ライトは、
前記送信された色の要素情報を受信する受信部と、
前記受信された色の要素情報に基づいて、前記ライトが前記複数の発光色を前記発光させる順番で発光するように当該ライトの発光条件を制御する発光制御部と、
前記発光制御部が制御した前記発光条件に基づいて前記ライトが発光する発光部とを備えるライト調整システム。
【請求項2】
前記色調整部は、
前記発光条件のうち、発光色を調整するものであって、前記発光色は、少なくともRGB値であることを特徴とする請求項1記載のライト調整システム。
【請求項3】
前記色調整部は、更に、
前記発光条件のうち、明度を調整することにより、発光した際の明るさ、および/または、強さを調整されたものであることを特徴とする請求項1または2項記載のライト調整システム。
【請求項4】
前記色調整部は、
前記発光条件のうち、点灯、および/または、消灯の時間を調整されたものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のライト調整システム。
【請求項5】
前記ライト調整システムは、複数のライトを備えるものであって、
前記複数のライトそれぞれは、同一の色の要素情報を受信するものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載のライト調整システム。
【請求項6】
前記アプリケーションソフトは、更に、
前記色の要素情報を表示制御部に表示するための表示制御部を備えることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載のライト調整システム。
【請求項8】
前記ライト調整システムは、更に、
前記ライトが複数の発光部を備え、
前記ライトが発光する際に、複数の発光部をそれぞれ異なる発光条件で発光させることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載のライト調整システム。
【請求項9】
前記ライト調整システムは、ライトを複数備えるものであって、
前記複数のライトを連結することによって、一のライトが受信した発光条件を、他のライトに送信し、前記複数のライトが同じ発光条件で発光することを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載のライト調整システム。
【請求項10】
携帯端末にインストールされたアプリケーションソフトから、該アプリケーションソフトの受付部を介してユーザにより入力された、少なくとも複数の発光色および当該複数の発光色を発光させる順番を含む入力情報を色の要素情報として調整し、該調整された色の要素情報を送信されたものを受信する受信部と、
前記受信された色の要素情報に基づいて、前記ライトが前記複数の発光色を前記発光させる順番で発光するように当該ライトの発光条件を制御する発光制御部とを備える携帯可能なライト。」

第3 特許異議申立理由の概要
異議申立人は、主たる証拠として下記の甲第1号証及び従たる証拠として下記の甲第2号証を提出し、請求項1?6、8?10に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1?6、8?10に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
・甲第1号証:特開2014-56723号公報
・甲第2号証:特開平6-310284号公報

第4 特許異議申立理由についての検討
1 刊行物に記載された発明及び技術的事項
(1)甲第1号証
本件の優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証の【請求項1】、段落【0001】、【0023】?【0025】、【0027】、【0030】、【0034】、【0039】、【0056】、【0058】の記載から、甲第1号証には次の発明(以下「甲1A発明」という。)が記載されているものと認める。
「設置場所を変更可能な移動可能型の照明機器2と、前記照明機器2の点灯制御内容を設定するためのコントローラ3と、を備えた照明システム1であって、
前記コントローラ3は、前記照明機器2の属性情報を表示する表示部31と、前記表示部31と一体化されて操作指示を検知する操作部と、前記属性情報を記憶する記憶部32と、前記照明機器2へ向けて該照明機器2の属性情報を含む制御信号を送受信する送受信部33と、を備え、
前記記憶部32は、前記属性情報として、前記照明機器2が配された対象エリアを含むエリア情報と、前記対象エリアにおける前記照明機器2の識別情報と、前記照明機器2の点灯条件に関する点灯情報と、を記憶し、
前記表示部31は、前記エリア情報及び前記識別情報を図形化した第1の図形を有する第1の操作画面と、前記点灯情報を図形化した第2の図形を有する第2の操作画面と、を夫々2次元的又は3次元的に表示し、前記第1の操作画面において前記操作部上の操作指示により制御対象となる照明機器2が選定されると、選定された照明機器2に対応する前記第2の図形を有する前記第2の操作画面を、前記第1の操作画面に重畳させるようにダイアログ表示し、前記第2の操作画面において前記照明機器2の点灯情報が選定されると、前記第1の操作画面において前記照明機器2の識別情報及びその周囲のエリアに相当するエリア情報を示す第1の図形を、前記選定された点灯情報が反映されるようにハイライト表示するものであって、
前記点灯情報は、照明光の調光率(光量)及び色温度、色度、彩度、明度が含まれ、
前記コントローラ3は、専用ソフトウェアをインストールしたタブレット又はスマートフォン等の多機能携帯端末であり、
前記第1の操作画面において、ユーザが「RGB」ボタンをタッチすると、前記表示部31は、RGB系から色度等を設定するための第2の操作画面を、第1の操作画面上に重畳するように表示し、
前記コントローラ3により設定された点灯情報、及び前記照明機器2の識別情報が、前記コントローラ3から出力される制御信号に取り込まれて、この制御信号が、直接又は制御器4を介して各照明機器2に向けて出力され、
前記照明機器2は、コントローラ3からの制御信号を受信する送受信部22と、
前記送受信部22が受信した制御信号に含まれる点灯情報に従って前記照明機器2の光源部21を駆動する制御部23とを備える、
照明システム1。」

また、以下の発明(以下「甲1B発明」という。)も記載されているものと認める。
「コントローラ3により点灯制御内容を設定される、設置場所を変更可能な移動可能型の照明機器2であって、
前記コントローラ3は、前記照明機器2の属性情報を表示する表示部31と、前記表示部31と一体化されて操作指示を検知する操作部と、前記属性情報を記憶する記憶部32と、前記照明機器2へ向けて該照明機器2の属性情報を含む制御信号を送受信する送受信部33と、を備え、
前記記憶部32は、前記属性情報として、前記照明機器2が配された対象エリアを含むエリア情報と、前記対象エリアにおける前記照明機器2の識別情報と、前記照明機器2の点灯条件に関する点灯情報と、を記憶し、
前記表示部31は、前記エリア情報及び前記識別情報を図形化した第1の図形を有する第1の操作画面と、前記点灯情報を図形化した第2の図形を有する第2の操作画面と、を夫々2次元的又は3次元的に表示し、前記第1の操作画面において前記操作部上の操作指示により制御対象となる照明機器2が選定されると、選定された照明機器2に対応する前記第2の図形を有する前記第2の操作画面を、前記第1の操作画面に重畳させるようにダイアログ表示し、前記第2の操作画面において前記照明機器2の点灯情報が選定されると、前記第1の操作画面において前記照明機器2の識別情報及びその周囲のエリアに相当するエリア情報を示す第1の図形を、前記選定された点灯情報が反映されるようにハイライト表示するものであって、
前記点灯情報は、照明光の調光率(光量)及び色温度、色度、彩度、明度が含まれ、
前記コントローラ3は、専用ソフトウェアをインストールしたタブレット又はスマートフォン等の多機能携帯端末であり、
前記第1の操作画面において、ユーザが「RGB」ボタンをタッチすると、前記表示部31は、RGB系から色度等を設定するための第2の操作画面を、第1の操作画面上に重畳するように表示し、
前記コントローラ3により設定された点灯情報、及び前記照明機器2の識別情報が、前記コントローラ3から出力される制御信号に取り込まれて、この制御信号が、直接又は制御器4を介して各照明機器2に向けて出力され、
前記照明機器2は、コントローラ3からの制御信号を受信する送受信部22と、
前記送受信部22が受信した制御信号に含まれる点灯情報に従って前記照明機器2の光源部21を駆動する制御部23とを備える、
設置場所を変更可能な移動可能型の照明機器2。」


(2)甲第2号証
本件の優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証の【請求項1】、【請求項3】、段落【0009】、【0013】、【0016】、【0025】、【0030】、【0044】?【0046】の記載から、甲第2号証には次の技術的事項(以下「甲2技術」という。)が記載されているものと認める。
なお、段落【0030】に「主制御部26には、記録手段を構成する図示しないRAMなどが備えられているとともに」(下線は当審で付与。)と記載されているが、「RAM」の作用を説明する段落【0045】、【0046】の記載からみて、下線部は「記憶手段」(【請求項3】に対応)の誤記と認める。
「照明器具1に接続され、この照明器具1を制御して、この照明器具1から照射される光線の少なくとも色、光量および配光を制御する点灯ユニット5と、
前記照明器具1から照射される光線の色、光量、配光を制御する操作部21を設け、この操作部21の操作により前記点灯ユニット5を制御する多機能ユニット9とを備え、
前記多機能ユニット9は、前記照明器具1の制御状態を記憶、再現する記憶手段を構成するRAMを備え、
前記多機能ユニット9は、複数の照明器具1の色温度、照度レベル、配光特性などを同時に制御して、総合的な照明効果を実現するシーン設定モードを有し、
あらかじめRAMに記憶したシーンを再生する場合には、シーン番号を入力することにより、内部のRAMに記憶された各照明器具1の設定状態が呼び出されて順次送信され、各照明器具1が所定の設定状態に制御される、
照明制御装置。」

2 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1A発明とを対比する。
(ア)後者の「照明機器2」は、前者の「ライト」に相当し、後者の「光源部21」は、前者の「発光部」に相当する。

(イ)後者の「コントローラ3」は、「タブレット又はスマートフォン等の多機能携帯端末」であるから、前者の「携帯端末」に相当するといえる。

(ウ)後者の「送受信部22」はコントローラ3からの制御信号を受信するものであるから、前者の「受信部」に相当するといえる。また、後者の「点灯情報」は、前者の「発光条件」に相当し、後者の「制御部23」は点灯情報に基づいて光源部21を駆動するものであるから、前者の「発光制御部」に相当するといえる。

(エ)後者の「照明システム1」は、「照明機器2」の点灯制御内容を調整するものといえるから、前者の「ライト調整システム」に相当するといえる。

(オ)上記(ア)、(イ)、(エ)を踏まえると、後者の「設置場所を変更可能な移動可能型の照明機器2と、前記照明機器2の点灯制御内容を設定するためのコントローラ3と、を備えた照明システム1」と、前者の「携帯可能なライトの発光制御を行うライト調整システム」とは、「移動可能なライトの発光制御を行うライト調整システム」の限度で一致するといえる。

(カ)後者の「専用ソフトウェア」は、「タブレット又はスマートフォン等の多機能携帯端末」である「コントローラ3」にインストールされるものであり、「コントローラ3」は「前記照明機器2へ向けて該照明機器2の属性情報を含む制御信号を送受信する送受信部33と、を備え」るものである。
そうすると、上記(ア)?(ウ)をも踏まえると、後者の「専用ソフトウェア」と、前者の「前記ライトと通信可能な携帯端末にインストールされたアプリケーションソフト」に相当するといえる。

(キ)後者の「前記点灯情報は、照明光の調光率(光量)及び色温度、色度、彩度、明度が含まれ」、「前記第1の操作画面において、ユーザが「RGB」ボタンをタッチすると、前記表示部31は、RGB系から色度等を設定するための第2の操作画面を、第1の操作画面上に重畳するように表示し、前記コントローラ3により設定された点灯情報、及び前記照明機器2の識別情報が、前記コントローラ3から出力される制御信号に取り込まれて、この制御信号が、直接又は制御器4を介して各照明機器2に向けて出力され」るという事項について、「専用ソフトウェア」による制御であるから、前者の「アプリケーションソフト」が備える「入力情報を受け付ける受付部」、「入力情報を色の要素情報として調整する色調整部」、「調整された色の要素情報を前記ライトに送信する送信部」に相当する構成を有していることは明らかである。また、「RGB系から色度等を設定する」ということは、複数の発光色を設定しているといえるものである。
そうすると、上記(カ)をも踏まえると、後者の上記事項と、前者の「前記アプリケーションソフトは、ユーザにより入力された、少なくとも複数の発光色および当該複数の発光色を発光させる順番を含む入力情報を受け付ける受付部と、前記入力情報を色の要素情報として調整する色調整部と、前記調整された色の要素情報を前記ライトに送信する送信部とを備え」ることとは、「前記アプリケーションソフトは、ユーザにより入力された、少なくとも複数の発光色を含む入力情報を受け付ける受付部と、前記入力情報を色の要素情報として調整する色調整部と、前記調整された色の要素情報を前記ライトに送信する送信部とを備え」ることの限度で一致するといえる。

(ク)後者の「前記照明機器2は、コントローラ3からの制御信号を受信する送受信部22と、前記送受信部22が受信した制御信号に含まれる点灯情報に従って前記照明機器2の光源部21を駆動する制御部23とを備える、照明システム1」という事項について、「光源部21」により「照明機器2」が発光するものであることは明らかである。
そうすると、上記(ア)?(ウ)、(キ)をも踏まえると、後者の上記事項と、前者の「前記ライトは、前記送信された色の要素情報を受信する受信部と、前記受信された色の要素情報に基づいて、前記ライトが前記複数の発光色を前記発光させる順番で発光するように当該ライトの発光条件を制御する発光制御部と、前記発光制御部が制御した前記発光条件に基づいて前記ライトが発光する発光部と、を備えるライト調整システム」とは、「前記ライトは、前記送信された色の要素情報を受信する受信部と、前記受信された色の要素情報に基づいて、当該ライトの発光条件を制御する発光制御部と、前記発光制御部が制御した前記発光条件に基づいて前記ライトが発光する発光部と、を備えるライト調整システム」の限度で一致するといえる。

(ケ)以上のことから、本件特許発明1と甲1A発明との一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点1〕
「移動可能なライトの発光制御を行うライト調整システムにおいて、
前記ライトと通信可能な携帯端末にインストールされたアプリケーションソフトと、
前記アプリケーションソフトは、
ユーザにより入力された、少なくとも複数の発光色を含む入力情報を受け付ける受付部と、
前記入力情報を色の要素情報として調整する色調整部と、
前記調整された色の要素情報を前記ライトに送信する送信部とを備え、
前記ライトは、
前記送信された色の要素情報を受信する受信部と、
前記受信された色の要素情報に基づいて、当該ライトの発光条件を制御する発光制御部と、
前記発光制御部が制御した前記発光条件に基づいて前記ライトが発光する発光部とを備えるライト調整システム。」

〔相違点1〕
「移動可能なライト」に関し、本件特許発明1は、「携帯可能な」ものであるのに対し、甲1A発明は、「設置場所を変更可能な移動可能型の」ものである点。

〔相違点2〕
本件特許発明1は、「入力情報」が「当該複数の発光色を発光させる順番」を含むものであり、「ライトの発光条件」が「前記ライトが前記複数の発光色を前記発光させる順番で発光するように」しているものであるのに対し、甲1A発明は、それら事項を有していない点。

イ 判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
(ア)甲2技術は、「前記多機能ユニット9は、複数の照明器具1の色温度、照度レベル、配光特性などを同時に制御して、総合的な照明効果を実現するシーン設定モードを有し、あらかじめRAMに記憶したシーンを再生する場合には、シーン番号を入力することにより、内部のRAMに記憶された各照明器具1の設定状態が呼び出されて順次送信され、各照明器具1が所定の設定状態に制御される」という事項を有するものである。
そして、「色温度」を制御するということは、本件特許発明1の「複数の発光色」を発光させることに相当するといえる。
しかしながら、上記事項の「内部のRAMに記憶された各照明器具1の設定状態が呼び出されて順次送信され、各照明器具1が所定の設定状態に制御される」ということは、複数の照明器具1が個々に設定された状態になるようにしているものであって、1つの照明器具1に対し、複数の発光色を設定された発光させる順番で発光するようにしているものではない。
したがって、甲1A発明に甲2技術を適用したとしても、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を有するものには至らない。

(イ)なお、異議申立人は、異議申立書の第15ページ第2?5行において「甲第2号証には、一旦調整された照明状態(制御状態)を複数記憶し、これら複数の制御状態を再現すること(記憶手段)が記載されている。この記憶手段が順次記憶させた複数の発光色をその順番で発光するように制御できることは自明かつ本件特許出願前の技術常識である」、同第16ページ第15?16行において「一旦調整され記憶された複数の発光色をその順番で発光するように制御することは、甲第2号証の記載されている」(なお、「甲第2号証の」は「甲第2号証に」の誤記と認める。)と主張しているが、甲第2号証の「記憶手段が順次記憶させた複数の発光色をその順番で発光するように制御できる」ことを自明と言う根拠も技術常識と言う根拠もいずれも証拠から読み取ることはできない。

(ウ)したがって、甲1A発明において、少なくとも上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を有するものとすることが、甲1A発明及び甲2技術に基いて当業者にとって容易になし得たことということはできない。
よって、本件特許発明1は、甲1A発明及び甲2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件特許発明2?6、8?9について
本件特許発明2?6、8?9は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲1A発明及び甲2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件特許発明10について
ア 対比
本件特許発明10と甲1B発明とを対比する。
(ア)後者の「照明機器2」は、前者の「ライト」に相当する。

(イ)後者の「コントローラ3」は、「タブレット又はスマートフォン等の多機能携帯端末」であるから、前者の「携帯端末」に相当するといえる。

(ウ)後者の「送受信部22」はコントローラ3からの制御信号を受信するものであるから、前者の「受信部」に相当するといえる。

(エ)後者の「専用ソフトウェア」は、「タブレット又はスマートフォン等の多機能携帯端末」である「コントローラ3」にインストールされるものである。
そうすると、上記(イ)をも踏まえると、後者の「専用ソフトウェア」は、前者の「携帯端末にインストールされたアプリケーションソフト」に相当するといえる。

(オ)後者の「前記点灯情報は、照明光の調光率(光量)及び色温度、色度、彩度、明度が含まれ」、「前記第1の操作画面において、ユーザが「RGB」ボタンをタッチすると、前記表示部31は、RGB系から色度等を設定するための第2の操作画面を、第1の操作画面上に重畳するように表示し、前記コントローラ3により設定された点灯情報、及び前記照明機器2の識別情報が、前記コントローラ3から出力される制御信号に取り込まれて、この制御信号が、直接又は制御器4を介して各照明機器2に向けて出力され、前記照明機器2は、コントローラ3からの制御信号を受信する送受信部22と、前記送受信部22が受信した制御信号に含まれる点灯情報に従って前記照明機器2の光源部21を駆動する制御部23とを備える、設置場所を変更可能な移動可能型の照明機器2」という事項について、「専用ソフトウェア」による制御であるから、前者の「アプリケーションソフト」の「受付部を介してユーザにより入力された」「入力情報を色の要素情報として調整する色調整」すること、及び、「調整された色の要素情報を前記ライトに送信されたもの」に相当する構成を有していることは明らかである。また、「RGB系から色度等を設定する」ということは、複数の発光色を設定しているといえるものである。
そうすると、上記(ア)?(エ)をも踏まえると、後者の上記事項と、前者の「携帯端末にインストールされたアプリケーションソフトから、該アプリケーションソフトの受付部を介してユーザにより入力された、少なくとも複数の発光色および当該複数の発光色を発光させる順番を含む入力情報を色の要素情報として調整し、該調整された色の要素情報を送信されたものを受信する受信部と、前記受信された色の要素情報に基づいて、前記ライトが前記複数の発光色を前記発光させる順番で発光するように当該ライトの発光条件を制御する発光制御部とを備える携帯可能なライト」とは、「携帯端末にインストールされたアプリケーションソフトから、該アプリケーションソフトの受付部を介してユーザにより入力された、少なくとも複数の発光色を含む入力情報を色の要素情報として調整し、該調整された色の要素情報を送信されたものを受信する受信部と、前記受信された色の要素情報に基づいて、当該ライトの発光条件を制御する発光制御部とを備える移動可能なライト」の限度で一致するといえる。

(カ)以上のことから、本件特許発明10と甲1B発明との一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点2〕
「携帯端末にインストールされたアプリケーションソフトから、該アプリケーションソフトの受付部を介してユーザにより入力された、少なくとも複数の発光色を含む入力情報を色の要素情報として調整し、該調整された色の要素情報を送信されたものを受信する受信部と、
前記受信された色の要素情報に基づいて、当該ライトの発光条件を制御する発光制御部とを備える移動可能なライト。」

〔相違点3〕
「移動可能なライト」に関し、本件特許発明10は、「携帯可能な」ものであるのに対し、甲1B発明は、「設置場所を変更可能な移動可能型の」ものである点。

〔相違点4〕
本件特許発明10は、「入力情報」が「当該複数の発光色を発光させる順番」をも含むものであり、「ライトの発光条件」が「前記ライトが前記複数の発光色を前記発光させる順番で発光するように」しているものであるのに対し、甲1B発明は、それら事項を有していない点。

イ 判断
事案に鑑み、上記相違点4について検討する。
上記相違点4は、実質的に上記相違点2と同様の内容であって、その判断についても同様である。
したがって、甲1B発明において、少なくとも上記相違点4に係る本件特許発明10の発明特定事項を有するものとすることが、甲1B発明及び甲2技術に基いて当業者にとって容易になし得たことということはできない。
よって、本件特許発明10は、甲1B発明及び甲2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 むすび
以上検討したとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?6、8?10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?6、8?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-07-10 
出願番号 特願2016-546683(P2016-546683)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田中 友章  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
中川 真一
登録日 2017-10-13 
登録番号 特許第6225267号(P6225267)
権利者 株式会社ルイファン・ジャパン
発明の名称 ライト調整システムおよびライト  
代理人 特許業務法人白坂  
代理人 高梨 玲子  
代理人 播磨 里江子  
代理人 白坂 一  

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