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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 F25B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1342275
審判番号 不服2017-9022  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-21 
確定日 2018-07-09 
事件の表示 特願2015-19750号「空気冷却器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年8月8日出願公開、特開2016-142483号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月3日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 9月 5日付け:拒絶理由通知書
平成28年12月15日 :意見書及び手続補正書
平成29年 5月 1日付け:拒絶査定
平成29年 6月21日 :審判請求書及び手続補正書

第2 平成29年6月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年6月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の平成28年12月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
互いに対向配置された、冷却用空気流入開口と冷却用空気流出開口とを設け、内部に冷却用空気流入開口から冷却用空気流出開口に向かう通風流路を設けたケーシングと、該ケーシング内において、該通風流路に沿う空気流れに交差するように配置され、内部に空気冷却用冷媒が流れる冷却用伝熱管と、該ケーシング内において、該冷却用伝熱管と独立に設けられた、内部にデフロスト用熱媒が流れるデフロスト用伝熱管とを有し、該冷却用伝熱管において、一端開口および他端開口端がそれぞれ、前記ケーシングに設けられた、空気冷却用冷媒流入開口および空気冷却用冷媒流出開口に接続され、該デフロスト用伝熱管において、一端開口および他端開口端がそれぞれ、前記ケーシングの側面に設けられた、デフロスト用熱媒流入開口およびデフロスト用熱媒流出開口に接続され、該デフロスト用伝熱管は、前記ケーシング内において、前記冷却用伝熱管を外部加熱式にデフロスト可能なように配置され、
前記ケーシング内には、前記冷却用伝熱管用のプレート状フインがさらに設けられ、該プレート状フインには、多数の貫通孔が設けられ、前記冷却用伝熱管の前記直管部それぞれ、および前記デフロスト用伝熱管の前記直管部それぞれは、前記貫通孔を貫通する態様で該プレート状フインに固定され、それにより、前記デフロスト用伝熱管から前記プレート状フインおよび前記冷却用伝熱管を熱放射または熱伝導形態でデフロストし、
前記デフロスト用伝熱管は、前記ケーシング内において、前記冷却用伝熱管および前記プレート状フインからデフロストすることにより生じる液が再凍結して前記通風通路の流路面積が狭められるのを防止可能なように、前記冷却用伝熱管に対して所定間隔に配置される、
ことを特徴とする空気冷却器。
【請求項2】
前記ケーシングの下方に配置され、デフロスト時に発生する液を受けるためのドレンパンと、前記デフロスト用熱媒流入開口に接続されるデフロスト用外部配管に対して、デフロスト用熱媒流入開口の上流側で分岐する分岐管と、該分岐管に接続されるデフロスト用伝熱管とが設けられ、前記ドレンパンの底面は、前記デフロスト用熱媒流入開口から前記デフロスト用熱媒流出開口に向かって下り勾配とされ、前記デフロスト用伝熱管は、前記ドレンパンに対して加熱するように、前記底面に対して接触式に這うようにルーティングされる、請求項1に記載の空気冷却器。
【請求項3】
前記ケーシングの対向側面には、多数の貫通孔が設けられ、該デフロスト用伝熱管は、前記ケーシング内で該対向側面間を延びるデフロスト用直管部と、前記ケーシング外で、前記貫通孔を介して前記デフロスト用直管部同士を接続するデフロスト用U字管部とを有し、該冷却用伝熱管は、前記ケーシング内で該対向側面間を延びる冷却用直管部と、前記ケーシング外で、前記貫通孔を介して前記冷却用直管部同士を接続する冷却用U字管部とを有する、請求項1または請求項2に記載の空気冷却器。
【請求項4】
前記プレート状フインは、それぞれ前記通風流路に沿うように、互いに平行に複数設けられ、前記ケーシング内において、前記デフロスト用直管部と前記冷却用直管部とは、非接触態様で、互いに平行に設けられる、請求項3に記載の空気冷却器。
【請求項5】
前記ケーシング内部に加熱コイルが配線されるデフロスト用電気加熱器が設けられ、前記ケーシングの対向側面には、該加熱コイルが貫通する貫通孔が設けられる場合において、加熱コイルが貫通する貫通孔を利用して、デフロスト用電気加熱器の代わりに、前記デフロスト用伝熱管を設ける、請求項3に記載の空気冷却器。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
互いに対向配置された、冷却用空気流入開口と冷却用空気流出開口とを設け、内部に冷却用空気流入開口から冷却用空気流出開口に向かう通風流路を設けたケーシングと、該ケーシング内において、該通風流路に沿う空気流れに交差するように配置され、内部に空気冷却用冷媒が流れる冷却用伝熱管と、該ケーシング内において、該冷却用伝熱管と独立に設けられた、内部にデフロスト用熱媒が流れるデフロスト用伝熱管とを有し、該デフロスト用伝熱管は、前記ケーシング内において、前記冷却用伝熱管を外部加熱式にデフロスト可能なように配置され、
前記ケーシング内には、前記冷却用伝熱管用のプレート状フインがさらに設けられ、該プレート状フインには、多数の貫通孔が設けられ、前記冷却用伝熱管および前記デフロスト用伝熱管それぞれは、前記貫通孔を貫通する態様で該プレート状フインに固定され、それにより、前記デフロスト用伝熱管から前記プレート状フインおよび前記冷却用伝熱管を熱放射または熱伝導形態でデフロストし、
さらに、前記ケーシングの下方に配置され、デフロスト時に発生する液を受けるためのドレンパンと、前記ケーシングに対してデフロスト用熱媒の流れ方向上流側で、前記デフロスト用伝熱管に対して分岐接続されたドレンパン向けデフロスト用伝熱管とが設けられ、前記ドレンパンの底面は、下り勾配とされ、前記ドレンパン向けデフロスト用伝熱管は、前記ドレンパンに対して加熱するように、前記底面に対して接触式に這うようにルーティングされる、ことを特徴とする空気冷却器。
【請求項2】
前記冷却用伝熱管において、一端開口および他端開口端がそれぞれ、前記ケーシングに設けられた、空気冷却用冷媒流入開口および空気冷却用冷媒流出開口に接続され、該デフロスト用伝熱管において、一端開口および他端開口端がそれぞれ、前記ケーシングの側面に設けられた、デフロスト用熱媒流入開口およびデフロスト用熱媒流出開口に接続され、
前記デフロスト用伝熱管は、前記ケーシング内において、前記冷却用伝熱管および前記プレート状フインからデフロストすることにより生じる液が再凍結して前記通風通路の流路面積が狭められるのを防止可能なように、前記冷却用伝熱管に対して所定間隔に配置され、
前記デフロスト用熱媒流入開口に接続されるデフロスト用外部配管に対して、前記デフロスト用熱媒流入開口の上流側で分岐する分岐管が設けられ、前記デフロスト用伝熱管は、該分岐管に接続され、
前記ドレンパンの底面は、前記デフロスト用熱媒流入開口から前記デフロスト用熱媒流出開口に向かって下り勾配とされる、
請求項1に記載の空気冷却器。
【請求項3】
前記ケーシングの対向側面には、多数の貫通孔が設けられ、該デフロスト用伝熱管は、前記ケーシング内で該対向側面間を延びるデフロスト用直管部と、前記ケーシング外で、前記貫通孔を介して前記デフロスト用直管部同士を接続するデフロスト用U字管部とを有し、該冷却用伝熱管は、前記ケーシング内で該対向側面間を延びる冷却用直管部と、前記ケーシング外で、前記貫通孔を介して前記冷却用直管部同士を接続する冷却用U字管部とを有する、請求項1または請求項2に記載の空気冷却器。
【請求項4】
前記プレート状フインは、それぞれ前記通風流路に沿うように、互いに平行に複数設けられ、前記ケーシング内において、前記デフロスト用直管部と前記冷却用直管部とは、非接触態様で、互いに平行に設けられる、請求項3に記載の空気冷却器。
【請求項5】
前記ケーシング内部に加熱コイルが配線されるデフロスト用電気加熱器が設けられ、前記ケーシングの対向側面には、該加熱コイルが貫通する貫通孔が設けられる場合において、加熱コイルが貫通する貫通孔を利用して、デフロスト用電気加熱器の代わりに、前記デフロスト用伝熱管を設ける、請求項3に記載の空気冷却器。」

2 本件補正の適否
(1)補正事項
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、以下のとおりの補正をしたものである。
ア 補正事項1
本件補正前の「該冷却用伝熱管において、一端開口および他端開口端がそれぞれ、前記ケーシングに設けられた、空気冷却用冷媒流入開口および空気冷却用冷媒流出開口に接続され、該デフロスト用伝熱管において、一端開口および他端開口端がそれぞれ、前記ケーシングの側面に設けられた、デフロスト用熱媒流入開口およびデフロスト用熱媒流出開口に接続され」を削除する補正。

イ 補正事項2
本件補正前の「前記デフロスト用伝熱管は、前記ケーシング内において、前記冷却用伝熱管および前記プレート状フインからデフロストすることにより生じる液が再凍結して前記通風通路の流路面積が狭められるのを防止可能なように、前記冷却用伝熱管に対して所定間隔に配置される」を削除する補正。

ウ 補正事項3
本件補正前の「前記冷却用伝熱管の前記直管部それぞれ、および前記デフロスト用伝熱管の前記直管部それぞれは、前記貫通孔を貫通する態様で該プレート状フインに固定され」を、「前記冷却用伝熱管および前記デフロスト用伝熱管それぞれは、前記貫通孔を貫通する態様で該プレート状フインに固定され」として、各管の「直管部」を削除する補正。

エ 補正事項4
「さらに、前記ケーシングの下方に配置され、デフロスト時に発生する液を受けるためのドレンパンと、前記ケーシングに対してデフロスト用熱媒の流れ方向上流側で、前記デフロスト用伝熱管に対して分岐接続されたドレンパン向けデフロスト用伝熱管とが設けられ、前記ドレンパンの底面は、下り勾配とされ、前記ドレンパン向けデフロスト用伝熱管は、前記ドレンパンに対して加熱するように、前記底面に対して接触式に這うようにルーティングされる」との限定を付加する補正。

(2)補正の目的要件についての検討
補正事項1ないし3は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「冷却用伝熱管」及び「デフロスト用伝熱管」に係る発明特定事項を削除するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとはいえない。
請求人は、原請求項1の発明特定事項の一部を削除する補正は、請求項1に係る発明の特徴を規定するに不要な部分に限って削除するものである旨を主張するが(審判請求書「(4)本願発明が特許されるべき理由(I)補正の適法性について」)、 そのような補正は、特許請求の範囲の減縮に該当するとはいえない。
また、補正事項1ないし3は、請求項の削除、誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明にも該当しない。

(3)まとめ
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、さらに、同項1号の請求項の削除、同項3号の誤記の訂正あるいは同項4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもなく、同項各号に掲げるいずれの事項にも該当するものではない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年6月21日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成28年12月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 引用文献の記載事項
(1)引用文献1
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された引用文献である実願昭54-69999号(実開昭55-169988号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。
「(1)圧縮機(2),サブ凝縮器(9),凝縮器(4),キヤピラリチューブ(10),蒸発器(11)を有しこの順に冷媒が流れて前記圧縮機(2)に戻る第1冷媒回路(22)と、吸熱器(12),放熱器(13),冷媒循環用開閉弁(14)を有し霜取り時にこの順に冷媒が流れて前記吸熱器(12)に戻りかつ第1冷媒回路(22)とは独立した第2冷媒回路(23)と、前記サブ凝縮器(9)と吸熱器(12)とを熱交換的に一体化した第1熱交換器(8)を有する蓄熱器(3)と、蒸発器(11)と放熱器(13)とを一体化した第2熱交換器(5)とを備え、第2熱交換器(5)の蒸発器(11)と放熱器(13)を構成する管列のうち少なくとも放熱器(13)の管列を管軸に対して直角な方向に水平より傾斜させたことを特徴とする冷蔵庫の霜取り装置。」(実用新案登録請求の範囲)
「(2)第2熱交換器(5)の放熱器(13)の管列を蒸発器(11)の管列の間に配設した実用新案登録請求の範囲第1項記載の冷蔵庫の霜取り装置。」(実用新案登録請求の範囲)
「(3)第2熱交換器(5)の放熱器(13)と蒸発器(11)の管列を各々等間隔の列ピツチとし、あるいは各々の管列の列ピツチを独自に等間隔とした実用新案登録請求の範囲第1項または第2項記載の冷蔵庫の霜取り装置。」(実用新案登録請求の範囲)
「第1図(a),(b)において、1は冷蔵庫本体で、この本体1下部に設けた機械室には圧縮機2と蓄熱器3とが設置され、冷蔵庫本体1の背面には凝縮器4が設けられ、庫内には第2熱交換器5とその側方に位置する送風機6とが設けられている。第1図(a)中、7はドレン受である。」(明細書3頁末行?4頁6行)
「また、第2図は霜取り装置の冷媒回路を示し、22は冷凍サイクルを構成する第1冷媒回路、23は第1冷媒回路22とは独立して構成された霜取り用の第2冷媒回路である。第1冷媒回路22は、圧縮器2,サブ凝縮器9,凝縮器4,キヤピラリチュ-ブ10,蒸発器11を有し、この順に冷媒が流れて圧縮機2に戻る閉回路を構成している。第2冷媒回路23は、吸熱器12、放熱器13、冷媒循環用開閉弁14を備え、この順に冷媒が流れて吸熱器12に戻る閉回路を構成している。前記蒸発器11と放熱器13とが熱交換的に一体化されて後述する第2熱交換器5が構成されている。前記サブ凝縮器9と吸熱器12とが熱交換的に一体化されて第1熱交換器8が構成され、この熱交換器8が蓄熱槽24に充填された蓄熱材15に埋設され、蓄熱槽24の周囲が断熱材16で囲まれて蓄熱器3が構成されている。」(明細書4頁7行?5頁3行)
「圧縮機2が稼動している通常の冷却運転時には、圧縮機2,サブ凝縮器9,凝縮器4,キヤピラリチューブ10,蒸発器11,圧縮器2の順で冷媒が第1冷媒回路22を循環する。この際に、蒸発器11が冷却され、送風機6の回転によつて庫内に冷気が循環されることにより、庫内が冷却される。この時、サブ凝縮器9,凝縮器4では放熱が行なわれ、サブ凝縮器9から放熱された熱が蓄熱材15に蓄えられる。」(明細書5頁4?13行)
「また、霜取り時には、圧縮機2および送風機6を停止して冷媒循環用開閉弁14を開くと、第2冷媒回路23中の冷媒が吸熱器12,放熱器13,前記開閉器14,前記吸熱器12の順に循環する。すなわち、放熱器13内の低温冷媒液が蓄熱材15の熱を奪って蒸発し、ガス化した冷媒は上昇して放熱器13で冷えている第2熱交換器5の蒸発器11などと熱交換され、これに付着している霜を融解し凝縮液化して吸熱器12に戻る。このように、第2冷媒回路23内の冷媒は、蒸発と凝縮とを繰返すととによる気液密度差によって第2冷媒回路23内を自然に循環し、蓄熱材15の熱を蒸発器11などに搬送して解霜を行なう。解霜された水はドレン受7から庫外に排出された。」(明細書5頁14行?6頁7行)
「第3図(a),(b)はフインチユーブ形熱交換器からなる第2熱交換器5を示す。第3図(a),(b)において、11aは蒸発器11を構成する蒸発管、13a?13nは放熱器13を構成する放熱管、17は上壁断熱材、18は上壁下面、19は下壁断熱材、20は下壁上面、21はプレートフインである。この第2熱交換器5は、複数枚のプレートフイン21を貫通密着させかつ空気の流れ方向Aにある列ピツチをもつて放熱管13a?13n列と蒸発管11aとが配列され、放熱管13a列が蒸発管11a列の中間附近に設けられ、放熱管13a?13nが等間隔で、少なくとも放熱管13a?13n列が第2熱交換器5の空気取入側すなわち吸込側の放熱管13aが高く、空気排出側の放熱管13nが低くなるように管軸に対して直角の方向に水平より傾斜して設けられている。また、吸込側の高い放熱管13a側から低い放熱管13n側に冷媒が放熱管13a?13n列を流れるように構成されている。」(明細書6頁8行?7頁6行)
「以上のように第2熱交換器5を構成したことにより、
(i)放熱管13a?13nが水平より傾斜しているので、高い放熱管13a側の入口Bから流入する気化冷媒が徐々に液化し、液化した冷媒は放熱管13a?13n列に傾斜があるために円滑にその出口Cへと流れる。
(ii)着霜量は第2熱交換器5の空気吸込側が多く、空気排出側で少なくなり、従つて気化冷媒の入口が空気吸込側に設けられているために、着霜量が多い所に多くの融霜熱量を供給することができる。
(iii)放熱管13a?13n列が蒸発管11a列間のほぼ中間にあるためにフイン21の上下方向に対しても均一に融霜熱量を与えることができる。」(明細書7頁7?末行)
「図面の簡単な説明
第1図(a)はこの考案の一実施例による霜取り装置を備えた冷蔵庫を示す一部を切欠いた側面図、第1図(b)は同背面図、第2図はこの考案の一実施例による冷媒回路の構成説明図、第3図(a)は第2熱交換器の一部を切欠いた平面図、第3図(b)は同断面説明図である。」(明細書8頁12?18行)

イ 上記記載並びに第3図(a)及び(b)から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア)「空気の流れ方向A・・・第2熱交換器5の空気取入側すなわち吸込側の放熱管13aが高く、空気排出側の放熱管13nが低くなる」(明細書6頁下6行?7頁2行)及び第3図(b)に示された空気吸込側の空気の流れ方向Aの矢印、空気排出側の矢印、並びに上壁断熱材17、上壁下面18、下壁断熱材19及び下壁上面20から、引用文献1には、互いに対向配置された、空気吸込側の空気流れ部と空気排出側の空気流れ部とを設け、内部に空気吸込側の空気流れ部から空気排出側の空気流れ部に向かう空気流れ流路を設けた上壁及び下壁を含む壁により形成される冷却空間が記載されている。
(イ)第3図(b)に示された空気吸込側の空気の流れ方向Aに加え、第3図(a)に示された蒸発器11を構成する蒸発管11aの配置態様及び放熱器13を構成する放熱管13a?13nの配置態様から、引用文献1には、上壁及び下壁を含む壁内の冷却空間において、空気流れ流路に沿う空気流れに交差するように配置された蒸発器11を構成する蒸発管11a及び放熱器13を構成する放熱管13a?13nが記載されている。
(ウ)側断面図に係る第3図(b)の上壁及び下壁を含む壁により形成される冷却空間に加え、第3図(a)は第2熱交換器5の一部を切欠いた平面図であり、同図には、放熱管13a?13nの冷媒の入口B及び冷媒の出口Cが記載され、該入口B及び出口Cは熱交換器のプレートフィン21とは異なる板状のものから突出しており、さらに蒸発管11aにおいても同じ板状のものから2本の突出が看取できる。
したがって、引用文献1には、蒸発管11a及び放熱管13a?13nの冷媒入口及び冷媒出口を上壁及び下壁を含む壁内の冷却空間に設けることが記載されている。

ウ 上記ア及びイから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「互いに対向配置された、空気吸込側の空気流れ部と空気排出側の空気流れ部とを設け、内部に空気吸込側の空気流れ部から空気排出側の空気流れ部に向かう空気流れ流路を設けた、冷却空間を形成する上壁及び下壁を含む壁と、該壁内の冷却空間において、該空気流れ流路に沿う空気流れに交差するように配置された蒸発器11を構成する蒸発管11aと、蒸発管11aと独立して設けられた放熱器13を構成する放熱管13a?13nとを有し、
蒸発管11a及び放熱管13a?13nの冷媒入口及び冷媒出口を前記壁内の冷却空間に設け、
蒸発管11aからなる蒸発器11と、放熱管13a?13nからなる放熱器13とは熱交換的に一体化されて第2熱交換器5が構成され、霜取り時に放熱器13は蒸発器11と熱交換し、付着している霜を融解し、
前記壁内の冷却空間において、第2熱交換器5は、複数枚のプレートフイン21を貫通密着させかつ空気の流れ方向Aの放熱管13a?13n列と蒸発管11a列とが配列され、放熱管13a列が蒸発管11a列の中間附近に設けられ、放熱管13a?13nが等間隔で設けられている冷蔵庫の第2熱交換器5。」

3 引用発明との対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「空気吸込側の空気流れ部」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願発明の「冷却用空気流入開口」に相当し、以下同様に、「空気排出側の空気流れ部」は「冷却用空気流出開口」に、「空気流れ流路」は「通風流路」に、「蒸発管11a」は「内部に空気冷却用冷媒が流れる冷却用伝熱管」に、「放熱管13a?13n」は「内部にデフロスト用熱媒が流れるデフロスト用伝熱管」に、「プレートフイン21」は「プレート状フイン」に、「冷蔵庫の第2熱交換器5」は「空気冷却器」に、それぞれ相当する。
イ 引用発明の空気流れ流路を設けた「冷却空間」を形成する「上壁及び下壁を含む壁」と、本願発明の通風流路を設けた「ケーシング」とは、「冷却空間形成部材」という限りにおいて、互いに共通するものである。
ウ 引用発明の「蒸発管11aからなる蒸発器11と、放熱管13a?13nからなる放熱器13とは熱交換的に一体化されて第2熱交換器5が構成され、霜取り時に放熱器13は蒸発器11と熱交換し、付着している霜を融解し」は、放熱管13a?13nからの熱により、蒸発管11aを外部から加熱して霜を融解することであるから、本願発明の「デフロスト用伝熱管」は「冷却用伝熱管を外部加熱式にデフロスト可能なように配置され」に相当する。
また、引用発明における霜の融解は、放熱管13a?13nからの、プレートフィン21及び蒸発管11aに対する熱伝導または熱放射といった外部加熱によるものであることが自明であるから、引用発明の「蒸発管11aからなる蒸発器11と、放熱管13a?13nからなる放熱器13とは熱交換的に一体化されて第2熱交換器5が構成され、霜取り時に放熱器13は蒸発器11と熱交換し、付着している霜を融解し」は、本願発明の「デフロスト用伝熱管から前記プレート状フインおよび前記冷却用伝熱管を熱放射または熱伝導形態でデフロストし」に相当する。
エ 引用文献1の第3図(a)を参照すると、第2熱交換器におけるプレートフィン21の貫通密着は、放熱管及び蒸発管の直管部における貫通密着である。
したがって、引用発明の「第2熱交換器5は、複数枚のプレートフイン21を貫通密着させかつ空気の流れ方向Aの放熱管13a?13n列と蒸発管11a列とが配列され、放熱管13a列が蒸発管11a列の中間附近に設けられ、放熱管13a?13nが等間隔で設けられている」は、本願発明の「冷却用伝熱管用のプレート状フインがさらに設けられ、該プレート状フインには、多数の貫通孔が設けられ、前記冷却用伝熱管の前記直管部それぞれ、および前記デフロスト用伝熱管の前記直管部それぞれは、前記貫通孔を貫通する態様で該プレート状フインに固定され」に相当する。

(2)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「互いに対向配置された、冷却用空気流入開口と冷却用空気流出開口とを設け、内部に冷却用空気流入開口から冷却用空気流出開口に向かう通風流路を設けた冷却空間形成部材と、該冷却空間形成部材内において、該通風流路に沿う空気流れに交差するように配置され、内部に空気冷却用冷媒が流れる冷却用伝熱管と、該冷却空間形成部材内において、該冷却用伝熱管と独立に設けられた、内部にデフロスト用熱媒が流れるデフロスト用伝熱管とを有し、
該デフロスト用伝熱管は、前記冷却空間形成部材内において、前記冷却用伝熱管を外部加熱式にデフロスト可能なように配置され、
前記冷却空間形成部材内には、前記冷却用伝熱管用のプレート状フインがさらに設けられ、該プレート状フインには、多数の貫通孔が設けられ、前記冷却用伝熱管の前記直管部それぞれ、および前記デフロスト用伝熱管の前記直管部それぞれは、前記貫通孔を貫通する態様で該プレート状フインに固定され、それにより、前記デフロスト用伝熱管から前記プレート状フインおよび前記冷却用伝熱管を熱放射または熱伝導形態でデフロストする空気冷却器。」

[相違点1]
冷却空間形成部材について、本願発明は「ケーシング」を用いたものであり、該「ケーシング」に対する冷媒の流入及び流出態様について、「該冷却用伝熱管において、一端開口および他端開口端がそれぞれ、前記ケーシングに設けられた、空気冷却用冷媒流入開口および空気冷却用冷媒流出開口に接続され、該デフロスト用伝熱管において、一端開口および他端開口端がそれぞれ、前記ケーシングの側面に設けられた、デフロスト用熱媒流入開口およびデフロスト用熱媒流出開口に接続され」るものであるのに対し、引用発明は、「上壁及び下壁を含む壁」を用いたものであり、冷媒の流入及び流出態様について、「蒸発管11a及び放熱管13a?13nの冷媒入口及び冷媒出口を前記壁内の冷却空間に設け」るものである点。

[相違点2]
本願発明は、「デフロスト用伝熱管」が「前記冷却用伝熱管および前記プレート状フインからデフロストすることにより生じる液が再凍結して前記通風通路の流路面積が狭められるのを防止可能なように、前記冷却用伝熱管に対して所定間隔に配置される」のに対し、引用発明は、「蒸発管11aからなる蒸発器11と、放熱管13a?13nからなる放熱器13とは熱交換的に一体化されて第2熱交換器5が構成され、霜取り時に放熱器13は蒸発器11と熱交換し、付着している霜を融解し、前記壁内の冷却空間において、第2熱交換器5は、複数枚のプレートフイン21を貫通密着させかつ空気の流れ方向Aの放熱管13a?13n列と蒸発管11a列とが配列され、放熱管13a列が蒸発管11a列の中間附近に設けられ、放熱管13a?13nが等間隔で設けられている」点。

4 判断
ア 相違点1について検討する。
引用発明は、上壁及び下壁を含む壁内の冷却空間に「蒸発器11」ないし「第2熱交換器5」を配するものであり、引用文献1の第1図を参照すると、該空間は、冷蔵庫の一部区画を上下壁により形成されるものであることが理解できる。
他方、冷媒が流通する伝熱管からなる蒸発器をケーシング内の配置とすることは周知技術である(例として、原査定で周知例として引用された特開2008-224159号公報の【0010】ないし【0012】並びに図1及び図2、同引用された特公平3-35592号公報の3欄35?39行及び4欄6?7行並びに第1図及び第2図参照。)。
してみると、引用発明の冷却空間を形成する「壁」を、周知技術に基づき、「ケーシング」によるものとすることに、当業者の格別の創意は要しないといえる。
また、蒸発器等の熱交換器をケーシング内の配置とする際に、冷媒入口及び冷媒出口に係る配管の一端又は他端をケーシングに設けられた開口による接続とすることは、技術の具体化の際に当業者が適宜採用し得ることであり、このことも当業者の格別の創意は要しないことである。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明及び周知技術に基づき、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 相違点2について検討する。
相違点2に係る本願発明の構成である「デフロスト用伝熱管」が「・・・冷却用伝熱管に対して所定間隔に配置される」ことについて、本願明細書を参照すると、次の事項が記載されている。
「冷却用伝熱管104の外周面105とデフロスト用伝熱管106の外周面162とを所定間隔D1に設定することにより、図7の矢印に示すように、デフロスト用伝熱管106の内部を流れるデフロスト用熱媒が、プレート状フィン132を介して熱伝導形態で熱伝達するとともに、着霜の程度の少ないデフロスト用伝熱管106の外周面162から外方に熱放射形態で熱伝達することにより、除霜された液の再凍結を有効に防止することが可能である。
冷却用伝熱管104の外周面160とデフロスト用伝熱管106の外周面162との間隔D1は、このような観点から、冷却用伝熱管104の外周面160の温度、デフロスト用伝熱管106の外周面162の温度、熱媒流量、および隣接するプレート状フィン132の間隔D2に応じて、適宜に定めればよい。」(【0025】)
これに対し、上記3(1)ウで述べたとおり、引用発明における霜の融解は、放熱管から、プレートフィン及び蒸発管に対する熱伝導または熱放射といった外部加熱による霜の融解である点で、本願発明と技術が共通するものであり、引用発明の「放熱管13a列」を「蒸発管11a列の中間附近に設け」ることは、「フイン21の上下方向に対しても均一に融霜熱量を与える」(明細書7頁下2行?末行)ためであるから、引用発明の上記「中間附近」という各管列の所定間隔は、設計時において、蒸発管の外周面の温度、放熱管の外周面の温度、熱媒流量、および隣接するプレートフィンの間隔などを考慮して適宜定められるものである。
さらに、引用文献1の「解霜された水はドレン受7から庫外に排出された。」(明細書6頁6?7行)の記載から理解できるとおり、解霜された水は排出するものであり、水が残って再度凍結するという事態が生じないように除霜手段を構成することは、当業者が当然に検討し採用し得る技術的事項であるから、この技術的事項をも考慮に入れて、上記所定間隔を定めることは当業者が通常採用し得ることである。
そして、引用発明において、各管列の所定間隔を上記のとおり定めれば、相違点2に係る本願発明の構成が得られることとなる。
以上から、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明に基づき、当業者が容易に想到し得たものである。

ウ そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-05-09 
結審通知日 2018-05-10 
審決日 2018-05-29 
出願番号 特願2015-19750(P2015-19750)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (F25B)
P 1 8・ 121- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 佐々木 正章
藤原 直欣
発明の名称 空気冷却器  
代理人 岡 潔  

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