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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1342284
審判番号 不服2017-15279  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-13 
確定日 2018-07-31 
事件の表示 特願2015-538236「時分割多重アクセス・ネットワークにおけるデバイス登録およびサウンディング」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 8日国際公開、WO2014/067044、平成28年 1月28日国内公表、特表2016-502778、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年10月29日を国際出願日とする出願であって、平成29年7月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年10月13日に審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年12月11日に前置報告がされ、平成30年2月13日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年7月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-21に係る発明は、以下の引用文献1-8に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2008-263603号公報
2.国際公開第2007/116064号
3.特開2004-328743号公報
4.特開2007-300532号公報
5.特開2000-316010号公報
6.国際公開第2012/071263号
7.国際公開第2005/048467号
8.国際公開第2006/062994号

第3 本願発明
本願請求項1-21に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明21」という。)は、平成29年10月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-21に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ネットワーク・デバイスを登録する方法であって、
マスタ・デバイスへ結合された複数のスレーブ・デバイスのうちのそれぞれのスレーブ・デバイスにおいて、
前記マスタ・デバイスからビーコン・メッセージを受信することと、前記ビーコン・メッセージは、アップストリーム・タイム・スロット、ダウンストリーム・タイム・スロット、および競争ベースのタイム・スロットを規定する、
競争ベースのタイム・スロットの間、前記マスタ・デバイスへ関連付け要求を送信することと、
第1のダウンストリーム・タイム・スロットの間、前記マスタ・デバイスから関連付け応答を受信することと、ここにおいて、前記関連付け応答は、前記スレーブ・デバイスへ割り当てられる識別子を含む、
前記関連付け応答を受信することに応答して、アップストリーム・タイム・スロットの間、前記マスタ・デバイスへ認証要求を送信することと、ここにおいて、前記アップストリーム・タイム・スロットは、前記識別子を使用して割り当てられる、
第2のダウンストリーム・タイム・スロットの間、前記マスタ・デバイスから認証応答を受信することと、を備える方法。」

本願発明2-13は、概略、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明14は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「スレーブ・デバイス」の発明である。
本願発明15は、概略、本願発明14を減縮した発明である。
本願発明16は、本願発明1の、スレーブ・デバイスにおけるネットワークデバイスを登録する方法に対応する、マスタ・デバイスにおけるネットワークデバイスを登録する方法の発明である。
本願発明17は、概略、本願発明16を減縮した発明である。
本願発明18、20は、それぞれ、本願発明16に対応する、カテゴリ表現が異なる「マスタ・デバイス」、「システム」の発明である。
本願発明19、21は、それぞれ、概略、本願発明18、20を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審付与。以下同様。)。

(1) 段落【0002】-【0009】
「【背景技術】
【0002】
図1はIEEE 802.15.3標準案によるピコネットの一例を示す図面である。
【0003】
IEEE 802.15.3標準案によれば、ピコネットは複数の独立的なデータデバイスが互いに通信できる無線アドホックデータ通信システムである。ピコネットは最小10mの範囲にある小さな地域で通信が可能であるという点で他のデータネットワークと区別される。すなわち、既存のLAN(Local Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wireless Area Network)と区別される。
【0004】
図1に図示されたように、ピコネットは複数のデバイスで構成されており、それらのうち一つのデバイスがピコネット調整子となる。ピコネット調整子はビーコンでピコネットのタイミングを提供する。また、ピコネット調整子はQOS(Quality Of Service)要求、電力節約モード、及びピコネットアクセス制御を管理する。IEEE 802.15.3標準案によれば、いずれか一つのデバイスが従属的なピコネットを形成できると規定している。また、IEEE 802.15.3MAC(Media Access Control)は迅速な連結、アドホックネットワーク、QOSが支援されるデータ伝送、保安、動的なメンバーシップ、及び効率的なデータ伝送を指向する。
【0005】
ピコネットに加入しようとするデバイスは結合過程を経る必要がある。ピコネットに結合されるということはデバイスにそのピコネットに対する固有識別子であるデバイスIDを付与することである。システムのオーバーヘッドを減らすために、長さ8オクテットのデバイスアドレスを使用せず、長さ1オクテットのデバイスIDを使用する。新しいデバイスがピコネットに加入した時、ピコネット調整子は既存のあらゆるデバイス及び新しいデバイスに関する情報をビーコンに載せてブロードキャストする。これは、新しいデバイスにピコネットの既存デバイスに関する情報を知らせるだけでなく、既存デバイスが新しいデバイスを認識可能にする。デバイスがピコネットから離れることを所望するか、またはピコネット調整子がピコネットからいずれかのデバイスを除去することを所望するならば、分離過程を経る必要がある。
【0006】
図2は、IEEE 802.15.3標準案で提示されたピコネットスーパーフレームを示す図面である。
【0007】
IEEE 802.15.3ピコネットのタイミングはスーパーフレームを基盤としている。スーパーフレームは3部分、すなわちビーコン、競争アクセス期間、及びチャンネルタイム割当て期間で構成されている。ビーコンはタイム割当てを設定し、ピコネットに関する管理情報を伝達する時に使われる。競争アクセス期間はコマンド及び/または非同期データを伝達する時に使われる。チャンネルタイム割当て期間はコマンド、等時ストリーム、非同期データ連結に使われる。競争アクセス期間はメディアアクセスのためにCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式を使用する。一方、チャンネルタイム割当て期間はメディアアクセスのためにTDMA(Time Division Multiple Access)方式を使用する。図2でMCTA(Management CTA)はピコネット調整子とデバイス間の通信のための区間であり、CTAはデバイス間の通信のための区間である。
【0008】
図3はIEEE 802.15.3標準案によって、ピコネットにデバイスが結合される過程を示す図面である。
【0009】
図3を参照すれば、ピコネットにデバイスが結合される過程は次の通りである。第1デバイスはピコネット調整子に、第1デバイスにデバイスIDを割当てることを要請する第1結合要請コマンドを送信する。次いで、ピコネット調整子は第1デバイスから第1結合要請コマンドを受信し、第1デバイスに第1結合要請コマンドが正常に受信されたということを示す第1即時肯定応答(immediate ACK)を送信し、同時に第1デバイスにデバイスIDを割当て、割当てられたデバイスIDを含む結合応答コマンドを送信する。次いで、第1デバイスは1(当審注:「第1」の誤記と認める。)結合要請コマンドを受信したピコネット調整子から第1即時肯定応答を受信し、第1デバイスに割当てられたデバイスIDを含む結合応答コマンドを受信し、ピコネット調整子に、デバイスIDが第1デバイスに正常に割当てられたということを示す第2結合要請コマンドを送信する。次いで、ピコネット調整子は第1デバイスに、第2結合要請コマンドが正常に受信されたということを示す第2即時肯定応答を送信する。第1デバイスが第2即時肯定応答を受信した時、第1デバイスがピコネットに結合されたと決定する。次いで、ピコネット調整子は第1デバイスに割当てられたデバイスIDを含むビーコンをブロードキャスト方式でピコネット内のあらゆるデバイスに送信する。次いで、ピコネット内のあらゆるデバイスはビーコンを受信し、第1デバイスがピコネットに結合されたということが分かる。図3で、DME(Device Management Entity)はデバイスを管理するエンティティであり、MLME(MAC Layer Management Entity)はMAC階層を管理するエンティティである。IEEE 802.15.3標準案によれば、ピコネット内での通信はMLMEを経由する必要がある。」

(2) 段落【0045】
「【0045】
図10は、IEEE 802.15.3標準案によるビーコンのフォーマットを示す図面である。図10に図示されたビーコンにはピコネットに結合されたデバイス数だけの情報要素フィールドがある。この情報要素フィールドにはピコネット内の各デバイスを管理するための情報が記録されている。」

(3) 図2
図2の上部には、3つの連続するスーパーフレーム#m-1、#m、#m+1が記載され、図2の下部には、スーパーフレーム#mが3部分、すなわち、ビーコン#m、競争アクセス(Contention Access)区間、チャンネルタイム割当て(CTA:Channel Time Allocation )期間で構成され、さらに、チャンネルタイム割当て期間は、2個のMCTA区間と、n個のCTA区間から構成されることが記載されていると認められる。

(4) 図10
図10には、ビーコンのフォーマットには、ピコネット同期パラメータフィールド、複数の情報要素フィールド、FCSフィールドがあることが記載されていると認められる。

したがって、関連図面に照らし、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「IEEE 802.15.3標準案によるピコネットにおいて、
ピコネットは複数の独立的なデータデバイスが互いに通信できる無線アドホックデータ通信システムであり、ピコネットは最小10mの範囲にある小さな地域で通信が可能であるという点で他のデータネットワークと区別され、すなわち、既存のLAN、MAN、WANと区別され、
ピコネットは複数のデバイスで構成されており、それらのうち一つのデバイスがピコネット調整子となり、ピコネット調整子はビーコンでピコネットのタイミングを提供し、
ピコネットに加入しようとするデバイスは結合過程を経る必要があり、ピコネットに結合されるということはデバイスにそのピコネットに対する固有識別子であるデバイスIDを付与することであり、システムのオーバーヘッドを減らすために、長さ8オクテットのデバイスアドレスを使用せず、長さ1オクテットのデバイスIDを使用し、新しいデバイスがピコネットに加入した時、ピコネット調整子は既存のあらゆるデバイス及び新しいデバイスに関する情報をビーコンに載せてブロードキャストし、
IEEE 802.15.3標準案で提示されたピコネットスーパーフレームは、3部分、すなわちビーコン、競争アクセス期間、及びチャンネルタイム割当て期間で構成され、
ビーコンはタイム割当てを設定し、ピコネットに関する管理情報を伝達する時に使われ、
ビーコンのフォーマットには、ピコネット同期パラメータフィールド、ピコネットに結合されたデバイス数だけの情報要素フィールド、FCSフィールドがあり、この情報要素フィールドにはピコネット内の各デバイスを管理するための情報が記録され、
競争アクセス期間はコマンド及び/または非同期データを伝達する時に使われ、
チャンネルタイム割当て期間はコマンド、等時ストリーム、非同期データ連結に使われ、
競争アクセス期間はメディアアクセスのためにCSMA/CA方式を使用し、
チャンネルタイム割当て期間はメディアアクセスのためにTDMA方式を使用し、2個のMCTA区間と、n個のCTA区間から構成され、ここで、MCTA(Management CTA)はピコネット調整子とデバイス間の通信のための区間であり、CTAはデバイス間の通信のための区間であり、
IEEE 802.15.3標準案によって、ピコネットにデバイスが結合される過程において、
第1デバイスはピコネット調整子に、第1デバイスにデバイスIDを割当てることを要請する第1結合要請コマンドを送信し、
ピコネット調整子は第1デバイスから第1結合要請コマンドを受信し、第1デバイスに第1結合要請コマンドが正常に受信されたということを示す第1即時肯定応答(immediate ACK)を送信し、同時に第1デバイスにデバイスIDを割当て、割当てられたデバイスIDを含む結合応答コマンドを送信し、
第1デバイスは第1結合要請コマンドを受信したピコネット調整子から第1即時肯定応答を受信し、第1デバイスに割当てられたデバイスIDを含む結合応答コマンドを受信し、ピコネット調整子に、デバイスIDが第1デバイスに正常に割当てられたということを示す第2結合要請コマンドを送信し、
ピコネット調整子は第1デバイスに、第2結合要請コマンドが正常に受信されたということを示す第2即時肯定応答を送信し、
第1デバイスが第2即時肯定応答を受信した時、第1デバイスがピコネットに結合されたと決定し、
ピコネット調整子は第1デバイスに割当てられたデバイスIDを含むビーコンをブロードキャスト方式でピコネット内のあらゆるデバイスに送信し、
ピコネット内のあらゆるデバイスはビーコンを受信し、第1デバイスがピコネットに結合されたということが分かる、方法。」

2.引用文献1、引用文献2について
原査定の拒絶の理由において、スーパーフレームのフォーマットに関する周知技術を例示する文献として引用された、上記引用文献1、引用文献2には、以下の記載がある。

(1) 引用文献1
「【0041】
MACプロトコルの基礎は、図7aに示すようなスーパーフレームであり、10ミリ秒の定義を有する。マスターは、10ミリ秒ごとに定期的にビーコンBSFを送信することにより、スーパーフレームの開始を示す。ビーコンは、マスターに知られていないノードが登録要求を送信し得る期間に、CAP(contention access period:コンテンション・アクセス期間)により追随される。あるいはビーコンはマスターのアンテナを介して送信される。スレーブノードがビーコンに応答すると、どのアンテナを介してスレーブノードが最初に到達可能かをマスターは知る。CAP(コンテンション・アクセス期間)の後、ダウンリンク及びアップリンクの通信スロットが続き、ここで、ダウンリンクはマスターからスレーブの方向、アップリンクはスレーブからマスターの方向を各々示す。必要とされる送信速度に応じて、アップ及びダウンリンクスロットは異なる長さを有すことが可能である、すなわちこれらは対称である必要はない。」(段落【0041】)

(2) 引用文献2
「As shown in Fig.5, there are fixed tdfTotalTimeSlotNumber timeslots per TDF super frame, which is composed of one synchronization time slot used to send clock synchronization information from TDF AP to TDF STAs; one contention time slot used to send registration request for uplink time slot allocation; tdfUplinkTimeSlotNumber uplink time slots used by the registered TDF STAs to send data and some management frames to TDF AP one after another; and tdfDownlinkTimeSlotNumber downlink time slots used by TDF AP to transmit data and registration response management frames to the modems. 」(7頁14?25行)
(当審訳:図5に示すように、TDFスーパーフレームには一定数であるtdfTotalTimeSlotNumber個のタイムスロットがあり、TDFスーパーフレームは、TDFアクセスポイントがTDFステーションにクロック同期情報を送信するために用いられる1個の同期タイムスロットと、上りタイムスロット割当ての登録要求を送信するために用いられる1個の競合タイムスロットと、データ及びいくつかの管理フレームを登録済みTDFステーションがTDFアクセスポイントに連続的に送信するために用いられるtdfUplinkTimeSlotNumber個のアップリンク・タイムスロットと、TDFアクセスポイントがデータと登録応答管理フレームををモデムに伝送するために用いられるtdfDownlinkTimeSlotNumber個の下りタイムスロットから構成される。)

(3) 引用文献1、引用文献2の上記記載から、通信システムのスーパフレームのフォーマットとして、競争ベースのタイムスロット、アップストリームのタイムスロット、及び、ダウンストリームのタイムスロットを含むものは、周知技術であると認められる。

3.引用文献4、引用文献5について
原査定の拒絶の理由において、認証技術に関する周知技術を示す文献として引用された、上記引用文献4、引用文献5には、以下の記載がある。

(1) 引用文献4
「【0052】
まず、デバイスがホストに対して、DNコネクト(DN_Connect)と呼ばれる、デバイスからの接続を通知し(S102)、ホストからデバイスにその確認として所定のMMCフレームにコネクトACK(Connect_ACK)と呼ばれる接続の確認を含める(S104)。
【0053】
さらに、所定の認証処理が行われ、ホストからデバイスにMMCフレームのセットキー(Set_Key)というコントロール転送によって通知を行って(S106)、GTKというグループ鍵情報を送り(S108)、デバイスはホストにその受領確認(ACK)を返送する(S110)。」(段落【0052】-【0053】)

(2) 引用文献5
「【0074】制御部112および無線インタフェース部111は、基地局装置113-1?113-Mの内、自局が位置する無線ゾーンを形成する基地局装置(ここでは、簡単のため、符号「113-1」で示されると仮定する。)と連係し、その過程では、
・ 通常の発信や着信応答に際して適用されるべき制御チャネルに代えて既述の共用チャネルを適用すると共に、
・ この共用チャネルを介して基地局装置113-1から「他の無線チャネルへ移行すべき」旨を示す制御情報が与えられない限り、その共用チャネルを介して基地局装置113-1と相互に所定の制御情報を送受することによって、基地局装置113-1と対向して「登録要求」の送信と、認証と秘話キーの選定とにかかわる「制御情報」の送受と、「登録応答」の受信とを共用チャネルを介して従来例と同様の手順に基づいて行う(図5(4)?(6))。」(段落【0074】)

(3) 引用文献4、引用文献5の上記記載から、親局と子局間で制御情報を送受信することによって、認証処理を行うことは、周知技術であると認められる。

4.その他の文献について
原査定の拒絶の理由において、引用文献6(8ページ10-14行の記載を参照。)、引用文献7(段落[0039]の記載を参照。)、引用文献8(段落[0044]の記載を参照。)は、いずれも、請求項9-12、15、17、19、21についての、伝送路特性推定のための「サウンディング信号」による帯域の測定、また、その帯域の要求が周知技術であることを示すために引用された文献である。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「ピコネットに加入しようとするデバイス」は、本願発明1の「ネットワーク・デバイス」に相当する。
よって、引用発明の「ピコネットに加入しようとするデバイスは結合過程を経る必要があり、ピコネットに結合されるということはデバイスにそのピコネットに対する固有識別子であるデバイスIDを付与することであ」る方法は、本願発明1の「ネットワーク・デバイスを登録する方法」に相当する。

イ 引用発明の「ピコネット調整子」は、本願発明1の「マスタ・デバイス」に相当する。
引用発明の「ピコネット調整子」によって「ピコネットに結合される」デバイスは、「マスタ・デバイスへ結合された複数のスレーブ・デバイスのうちのそれぞれのスレーブ・デバイス」に相当する。

ウ 引用発明の「ビーコン」は、本願発明1の「ビーコン・メッセージ」に相当する。
よって、引用発明において、「ピコネット調整子はビーコンでピコネットのタイミングを提供し」、「ビーコンをブロードキャスト方式でピコネット内のあらゆるデバイスに送信し」ていることは、本願発明1の「前記マスタ・デバイスからビーコン・メッセージを受信することと、前記ビーコン・メッセージは、アップストリーム・タイム・スロット、ダウンストリーム・タイム・スロット、および競争ベースのタイム・スロットを規定する」ことと、「前記マスタ・デバイスからビーコン・メッセージを受信すること」である点で共通するといえる。

エ 引用発明の「第1結合要請コマンド」は、本願発明1の「関連付け要求」に相当する。
よって、「IEEE 802.15.3標準案によって、ピコネットにデバイスが結合される過程において、第1デバイスはピコネット調整子に、第1デバイスにデバイスIDを割当てることを要請する第1結合要請コマンドを送信し」ていることは、本願発明1の「競争ベースのタイム・スロットの間、前記マスタ・デバイスへ関連付け要求を送信すること」と、「前記マスタ・デバイスへ関連付け要求を送信すること」である点で共通するといえる。

オ 引用発明の「結合応答コマンド」は、本願発明1の「関連付け応答」に相当する。
引用発明の「割当てられたデバイスID」は、本願発明1の「割り当てられる識別子」に相当する。
よって、引用発明の「ピコネット調整子は第1デバイスから第1結合要請コマンドを受信し、…(中略)…第1デバイスにデバイスIDを割当て、割当てられたデバイスIDを含む結合応答コマンドを送信し」ていることは、本願発明1の「第1のダウンストリーム・タイム・スロットの間、前記マスタ・デバイスから関連付け応答を受信することと、ここにおいて、前記関連付け応答は、前記スレーブ・デバイスへ割り当てられる識別子を含む」ことと、「前記マスタ・デバイスから関連付け応答を受信することと、ここにおいて、前記関連付け応答は、前記スレーブ・デバイスへ割り当てられる識別子を含む」点で共通するといえる。

したがって、本願発明1と、引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「ネットワーク・デバイスを登録する方法であって、
マスタ・デバイスへ結合された複数のスレーブ・デバイスのうちのそれぞれのスレーブ・デバイスにおいて、
前記マスタ・デバイスからビーコン・メッセージを受信することと、
前記マスタ・デバイスへ関連付け要求を送信することと、
前記マスタ・デバイスから関連付け応答を受信することと、ここにおいて、前記関連付け応答は、前記スレーブ・デバイスへ割り当てられる識別子を含む、
を備える方法。」

[相違点1]
本願発明1では、「前記ビーコン・メッセージは、アップストリーム・タイム・スロット、ダウンストリーム・タイム・スロット、および競争ベースのタイム・スロットを規定する」のに対して、引用発明の「ビーコン」は、「ピコネットのタイミングを提供し」、「タイム割当てを設定し、ピコネットに関する管理情報を伝達する時に使われ」るものであって、「アップストリーム・タイム・スロット、ダウンストリーム・タイム・スロット、および競争ベースのタイム・スロットを規定する」ことは特定されていない点。

[相違点2]
本願発明1では、「競争ベースのタイム・スロットの間」に、「関連付け要求」を送信するのに対して、引用発明では、「第1結合要請コマンド」の送信に用いるタイムスロットは特定がなされていない点。

[相違点3]
本願発明1では、「第1のダウンストリーム・タイム・スロットの間」に、「関連付け応答」を受信するのに対して、引用発明では、「結合応答コマンド」の受信に用いるタイムスロットは特定がなされていない点。

[相違点4]
本願発明1では、「前記関連付け応答を受信することに応答して、アップストリーム・タイム・スロットの間、前記マスタ・デバイスへ認証要求を送信することと、ここにおいて、前記アップストリーム・タイム・スロットは、前記識別子を使用して割り当てられる、第2のダウンストリーム・タイム・スロットの間、前記マスタ・デバイスから認証応答を受信すること」を備えるのに対して、引用発明では、認証のための信号を送受信することは特定がなされていない点。

(2) 相違点についての判断
上記[相違点1]について検討すると、本願発明1の[相違点1]に係る、「前記ビーコン・メッセージは、アップストリーム・タイム・スロット、ダウンストリーム・タイム・スロット、および競争ベースのタイム・スロットを規定する」という構成は、上記引用文献1-8には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。

引用発明における「ビーコン」は、「ピコネットのタイミングを提供し」、「タイム割当てを設定し、ピコネットに関する管理情報を伝達する時に使われ」るものであり、「ビーコンのフォーマットには、ピコネット同期パラメータフィールド、ピコネットに結合されたデバイス数だけの情報要素フィールド、FCSフィールドがあり、この情報要素フィールドにはピコネット内の各デバイスを管理するための情報が記録され」るものであって、「アップストリーム・タイム・スロット、ダウンストリーム・タイム・スロット、および競争ベースのタイム・スロットを規定する」ものではない。
そもそも、引用発明の「IEEE 802.15.3標準案によるピコネット」における「ピコネットスーパーフレーム」は、「ビーコン」、「競争アクセス期間」、「チャンネルタイム割当て期間」から構成されるものであり、「アップストリーム・タイム・スロット」、「ダウンストリーム・タイム・スロット」を備えていない。
引用発明の「ピコネットスーパーフレーム」の「チャンネルタイム割当て期間」は、「2個のMCTA区間と、n個のCTA区間から構成され、ここで、MCTA(Management CTA)はピコネット調整子とデバイス間の通信のための区間であり、CTAはデバイス間の通信のための区間であ」る。引用発明の「ピコネット」は、「複数の独立的なデータデバイスが互いに通信できる無線アドホックデータ通信システムであ」って、いわゆる「アドホック通信」、すなわち、デバイス同士が直接通信するための「CTA」区間をn個設ける一方、デバイスが制御局と通信するための「MCTA」区間は2個に固定されている。
そして、引用発明には、アドホック通信を行う「ピコネットスーパーフレーム」の「チャンネルタイム割当て期間」のうち、デバイスが制御局と通信するための2個の「MCTA」区間に特に着目して、これに替えて、「アップストリーム・タイム・スロット」と「ダウンストリーム・タイム・スロット」を使用することは記載も示唆もない
上記第4、「2.引用文献1、引用文献2について」記載のとおり、引用文献1、引用文献2には、通信システムにおけるスーパフレームのフォーマットとして、競争ベースのタイムスロット、アップストリームのタイムスロット、及び、ダウンストリームのタイムスロットを含む周知技術が記載されているが、引用発明において、アドホック通信用のピコネットのスーパーフレームの「2個のMCTA区間と、n個のCTA区間から構成され」た「チャンネルタイム割当て期間」のうち、2個のMCTA区間に特に着目して、これに替えて、「アップストリーム・タイム・スロット」と「ダウンストリーム・タイム・スロット」を使用するとともに、引用発明の「ビーコン」を「アップストリーム・タイム・スロット、ダウンストリーム・タイム・スロット、および競争ベースのタイム・スロットを規定する」ように構成を変更する起因、動機付けとなるような記載は見出し難い。
そして、本願発明1は、「前記ビーコン・メッセージは、アップストリーム・タイム・スロット、ダウンストリーム・タイム・スロット、および競争ベースのタイム・スロットを規定する」構成によって、本願明細書の段落【0056】に記載されるように、「方法500および550は、競争ベースのタイム・スロット206(図2B)の持続時間を、アップストリーム・タイム・スロット208および/またはダウンストリーム・タイム・スロット210(図2B)の間、関連付け応答408、認証要求414、認証応答420、および/またはサウンディング要求426(図4)を通信することによって、減らされるまたは最小化されることを可能にする。したがって、競争ベースのタイム・スロット206は、これらの要求および応答を受け入れることができない短い持続時間を有し得、従ってアップストリームおよびダウンストリーム・タイム・スロット208および210のために利用可能な時間を増加する。さらに、いくつかの実施形態において、競争ベースのタイム・スロット206は、設定可能な持続時間を有する。これらの持続時間を増加させることは、衝突および登録レイテンシーを減らす一方、これらの持続時間を減少させることは、帯域幅利用およびデータ・スループットを増加させる。システム・オペレーター(例えば、ケーブル・オペレーター)は、それに応じて持続時間を調整しうる。」との効果を有するものである

したがって、上記[相違点2]-[相違点4]について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献1-8に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-21について
本願発明2-13は、概略、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明14は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「スレーブ・デバイス」の発明であり、本願発明15は、概略、本願発明14を減縮した発明であり、本願発明16は、本願発明1に対応する、マスタ・デバイスにおけるネットワークデバイスを登録する方法の発明であり、本願発明17は、概略、本願発明16を減縮した発明であり、本願発明18、20は、本願発明16に対応する、カテゴリ表現が異なる「マスタ・デバイス」、「システム」の発明であり、本願発明19、21は、概略、本願発明18、20を減縮した発明であって、本願発明1の上記[相違点1]の「前記ビーコン・メッセージは、アップストリーム・タイム・スロット、ダウンストリーム・タイム・スロット、および競争ベースのタイム・スロットを規定する」という構成と実質的に同一の構成を備えるものである。
よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-21も、当業者であっても、引用発明、引用文献1-8に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1-21は、「前記ビーコン・メッセージは、アップストリーム・タイム・スロット、ダウンストリーム・タイム・スロット、および競争ベースのタイム・スロットを規定する」という事項を有しており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-8に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-07-17 
出願番号 特願2015-538236(P2015-538236)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大石 博見  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 松田 岳士
稲葉 和生
発明の名称 時分割多重アクセス・ネットワークにおけるデバイス登録およびサウンディング  
代理人 井関 守三  
代理人 福原 淑弘  
代理人 岡田 貴志  
代理人 蔵田 昌俊  

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