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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1342312
審判番号 不服2017-16180  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-01 
確定日 2018-07-31 
事件の表示 特願2013-134606「タッチパネル及びそれを備える画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月19日出願公開、特開2015- 11425、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月27日の出願であって、平成29年7月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年11月1日に審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年7月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-288732号公報
2.特開2011-175601号公報
3.国際公開第2013/069683号

第3 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、平成29年11月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
表示素子側基板とタッチ入力素子とが間隙を置いて配置され、
前記表示素子側基板の間隙側表面及び前記タッチ入力素子の間隙側表面のうち少なくとも一方に、透明支持体と、その上に形成された、断面曲線のスキューネスPskの絶対値が0.3以下の微細な表面凹凸形状を有する塗工層とを備える光学フィルムが、その塗工層側を前記間隙に向けて配置され、
前記光学フィルムは、全ヘーズが0.8%以下であることを特徴とする、タッチパネル。」

本願発明2-9は、概略、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審付与。以下同様。)。

(1) 段落【0001】-【0003】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、映り込みを防止する防眩フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型で大画面に用いられている液晶表示装置(LCD)やプラズマディスプレイパネル(PDP)など様々な画像表示装置においては、画面に外部から入射した光が反射することによって表示画像を見難くすることがある。特に、画像表示装置の大型化に伴い、上記問題を解決することがますます重要となってきており、様々な映り込み防止方法が提案・設置されている。
この映り込み防止方法の内、表面に微細な凹凸を形成することによる映り込み防止方法は、防眩処理とも呼ばれ、従来よりサンドブラスト加工、エンボス加工、微粒子を含有する塗膜の形成などが行なわれている。またこれらの方法を用いた賦型フィルムを用い、賦型フィルムの形状を転写によって表面形状を形成する方法も試みられている。
例えば、塗工ムラや塗工スジなどを回避するために、ブラスト処理したロールを型として形状を賦与する方法が特許文献1で提案されている。
【0003】
また、透光性微粒子、透光性樹脂および透光性樹脂の良溶媒と貧溶媒からなる塗工液により防眩フィルムの防眩層を形成するにあたり、乾燥過程で貧溶媒の作用により透光性微粒子と透光性樹脂がゲル化し、凹凸構造を形成する方法が特許文献2に開示されている。
また、スチレンビーズなどの透明性微粒子を含んだ樹脂組成物を透明プラスチック基材に塗工することによる、シンチレーション防止方法が特許文献3に開示されている。
本発明者らの検討によると、これらの方法はいずれも表面凹凸に関してその形成方法の制約上、凹凸のピッチの分布が大きく、細かなピッチのものから大きなピッチ成分までが幅広く混在していた。このため、例えば、レンズ効果による明るさの濃淡が生ずるいわゆる面ギラあるいはギラツキと呼ばれている現象が顕著に表れる傾向があった。このギラツキ防止策として内部での透過光の散乱によってギラツキを防止する方法を用いる例が多く、そのため透過特性を大きく犠牲にせざるを得なかった。
また、ピッチの分布が広いために、微小で急峻な凹凸によって外光の散乱による表面の白ちゃけまたは白浮きと呼ばれる現象が生じ、視認性の低下が生じていた。このように、これらギラツキや白ちゃけという現象を低減させた状態での、外光の映り込み防止と透過映像のクリアさを満足させることは難しく、従来の提案では不十分であった。」

(2) 段落【0007】-【0019】
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決し、クリアな透過映像を有すると共に、優れた映り込み防止機能を合わせ持ち、ギラツキや白ちゃけの非常に少ないバランスの取れた防眩フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、これら全ての特性を発揮できるフィルムについて鋭意検討した結果、従来にない特定の凹凸形状を賦与することによってこれら全ての特性を発揮させることがが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の通りのものである。
(1)表面凹凸を有する防眩フィルムであり、該凹凸のピッチが20?500μm、ピッチに対する高さの比が2/1000?300/1000、凹凸を中心面でスライスした断面積の標準偏差σが断面積の平均値Savの2倍以下であることを特徴とする防眩フィルム。
(2)該凹凸のスキューネス(SRsk)が-1.0?1.0であることを特徴とする上記(1)記載の防眩フィルム。
(3)該凹凸が、粒子層の形状を転写した形状であることを特徴とする上記(1)又は〈2〉に記載の防眩フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、様々な表示装置においてもギラツキや白ちゃけがなく、コントラストと視野角にも優れた透過映像を表示できると共に、優れた映り込み防止特性を併せ持つフィルムを提供することができるため、LCD、PDP、有機ELなどの各種画像表示装置にも有用である。また、各種ショーケース、ショーウィンドーなどにも有用に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について、以下に具体的に説明する。
本発明の防眩フィルムは表面凹凸を有する防眩フィルムであり、透明な基材フィルム(透明フィルム基材)の表面に凹凸を有するものである。凹凸形状は、フィルムに直接凹凸形状を賦与してもよく、また凹凸形状を有する樹脂層を透明な基材フィルムに積層していてもよい。凹凸形状を有する樹脂層としてはハードコート層に形状が賦与されているものが好ましく用いられる。
【0011】
本発明において、表面凹凸のピッチは20?500μmの範囲である。ピッチが小さ過ぎると外光による白ちゃけが顕著になり、コントラストの低下が生じ、視認性が低下する傾向にある。一方、ピッチが大きすぎるとギラツキを生じやすくなる傾向があり、また、表面の凹凸が目視で容易に認識できるようになるため、意匠性が悪くなる傾向がある。これらの内、表面凹凸のピッチとしては25?300μmが好ましく用いられ、特に30?300μmの範囲がより好ましく用いられる。
【0012】
本発明において、表面凹凸のピッチに対する高さの比は2/1000?300/1000の範囲である。表面凹凸の高さとは凹凸の山谷の高低差を表している。この高さがピッチに対して2/1000より小さい場合は、蛍光灯などの外光の映り込み防止が不十分であり、高さがピッチに対して300/1000より大きいと外光による白ちゃけが多くなる傾向があるとともに、斜めから見た場合の像のボヤケが生じる傾向、いわゆる視野角依存性が悪くなる傾向がある。これらの内、表面凹凸のピッチに対する高さとしては、3/1000?100/1000が好ましく、特に5/1000?50/1000の範囲が好ましく用いられる。
表面凹凸のピッチとピッチに対する高さは、上記範囲内において、用いる表示装置によって適宜選択するのが好ましい。表示装置によって画素サイズと発光部から防眩フィルムまでの距離がことなるため、ギラツキの生じる範囲などが大きく異なってくる。また表示装置の用途によってその必要機能や優先される機能が異なるため、それぞれ好ましいピッチとそれに対する高さを適宜選択することができる。

・・・(中略)・・・

【0016】
本発明はこのようにして導き出される標準偏差(σ)/平均(Sav)が2以下である。これは表面凹凸の分布が、先に述べた防眩フィルムサンプルAに比較して非常に優れていることが分かる。このように表面凹凸の分布が特定の範囲であるため、各種特性を満足させることが容易である。一方、バラツキがほとんどないものは、その規則性が高すぎるため、表示装置によってはモアレがでることもある。そのため、これらの内、標準偏差(σ)/平均(Sav)が0.1?1.5の範囲のものが好ましく、特に0.3?1.0の範囲のものがもっとも好ましく用いられる。

・・・(中略)・・・

【0018】
本発明の表面凹凸のスキューネス(SRsk)が-1.0?1.0であるのが好ましい。このスキューネス(SRsk)は、上下のバランスを表す指標であり、凹凸形状が上に凸形状の場合、SRsk>0となり、凹凸形状が下に凸形状に凹んでいる場合はSRsk<0となる特性を表す指標であり、2次元の凹凸形状についてはRskとしてJIS-B-0601:2001に規定されている。このRskを3次元の表面形状データに適用したものがSRskであり、株式会社小坂研究所の表面形状測定器「サーフコーダET4000」の付属ソフト標準に搭載されている。例えば、図1に示したような上に突起があるような形状の場合は、SRsk=1.56となり、これを他の樹脂に転写すると転写率にもよるが下に凹む形状となって、SRskはおよそ-1.5という負の値をもつ。このSRskが正の値で大きいと表面の磨耗によって削れ易くなり、傷つきやすいものとなってしまう。一方、負の値が大きい場合、表面が汚れた場合にティッシュ等での拭取り性が悪くなる傾向がある。そのため本発明においては、-1.0?1.0が好ましく、さらには-0.5?0.5が好ましく、-0.3?0.3が最も好ましい。
【0019】
本発明の表面凹凸のクルトシス(SRku)は、5以下であるのが好ましい。このクルトシス(SRku)は、形状の鋭さを表す指標であり、RkuとしてJIS-B-0601:2001に規定されている。このRkuを3次元の表面形状データに適用したものがSRkuであり、株式会社小坂研究所の表面形状測定器「サーフコーダET4000」の付属ソフト標準に搭載されている。このクルトシスは微粒子を凝集させたような形状の場合、大きな値を持ち、図1の場合、8.6という値を持つ。このように急峻な形状は、表面ヘーズを大きくする要因であることが分かった。本発明においては急峻な形状が少ないほど好ましく、このクルトシス(SRku)は、5以下が好ましく、特に2?4が好ましく用いられる。
本発明において、防眩フィルムのヘーズは、用途にもよるが10%以下が好ましく、特に5%以下、最も好ましくは3%以下である。表面ヘーズは3%以下であるものが好ましく、さらには1%以下、特に0.7%以下のものはクリアさの要求される用途においては好ましく用いられる。」

(3) 段落【0022】
「【0022】
本発明において最表面の凹凸形状は、樹脂層の上に形成されるのが好ましい態様である。この樹脂層は、最表面の形状をなす層であるため、樹脂としては、紫外線硬化樹脂を用いるのが好ましく、ハードコート層とするのが好ましい。紫外線硬化樹脂を設けて、表層を硬くすることによって、耐擦傷性などの実用特性を満足させやすくなる。
耐擦傷性の一つの指標として、鉛筆硬度試験を用いることができる。本発明の防眩フィルムは、鉛筆硬度がHB以上、好ましくはH以上、さらには2H以上のものが最も好ましく用いることができる。鉛筆硬度は、JIS-K-5600に定義されている。樹脂層の厚みとしては、0.5μm?50μmのものを用いることがでる。ハードコート層の厚みが厚すぎるとフィルムがカールしやすくなる傾向がある。一方、薄すぎると十分な鉛筆硬度が出にくくなる。このため特に1?10μmの範囲で好ましく用いられる。」

(4) 段落【0061】
「【0061】
本発明の防眩フィルムの表面抵抗は、表面抵抗率は10^(6)Ω/□?10^(18)Ω/□であることが好ましい。表面抵抗率を下げることによって塵の付着等を押さえることができ、ディスプレイなどに組み込む場合の収率を向上させることができる。このような表面抵抗はこれまでに記載した帯電防止機能を構成する層に持たせることによって達成することができる。
本発明の防眩フィルムは、粘着剤を用いて表示装置表面のガラスなどに貼り付けることによって表示装置の防眩機能や反射防止機能を付与することができる。この粘着剤としては必要に応じて、光学用のアクリル系粘着剤に、各種色素などを含有させることができる。また粘着剤層に粒子を混入させて透過光を僅かに散乱させて制御することもできる。」

(5) 段落【0063】
「【0063】
本発明の防眩フィルムは、液晶テレビ、PDP、有機ELなどのフラットパネルディスプレイや、その他、例えば、無機ELディスプレイ、TVブラウン管、ノートパソコン、電子手帳、タッチパネル、液晶ディスプレイ、車載用テレビ、液晶ビデオ、プロジェクションテレビ、プラズマアドレス液晶ディスプレイ、電解放出型ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ、光ファイバー、光ディスク等の電子情報機器分野;照明グローブ、蛍光灯、鏡、時計等の家庭用品分野;ショーケース、額、半導体リソグラフィー、コピー機器等の業務用分野;液晶ゲーム機器、パチンコ台ガラス、ゲーム機等の娯楽分野などにおいて、映り込みの防止の向上を必要としている非常に広範な用途に用いることができる。」

(6) 段落【0084】の【表1】
段落【0084】の【表1】には、スキューネスSRskが、具体的には、0.25(実施例1)、0.20(実施例3)、0.35(実施例4)である実施例が記載されていると認められる。
また、段落【0084】の【表1】には、ヘーズが、具体的には、1.5%(実施例1)、1.4%(実施例3)、1.6%(実施例4)である実施例が記載されていると認められる。

したがって、関連図面に照らし、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「映り込み防止方法の内、表面に微細な凹凸を形成することによる映り込み防止方法は、防眩処理とも呼ばれ、
表面凹凸を有する防眩フィルムであり、該凹凸のピッチが20?500μm、ピッチに対する高さの比が2/1000?300/1000、凹凸を中心面でスライスした断面積の標準偏差σが断面積の平均値Savの2倍以下であることを特徴とする防眩フィルムであって、
凹凸形状を有する樹脂層を透明な基材フィルムに積層しており、
表面凹凸のピッチが小さ過ぎると外光による白ちゃけが顕著になり、ピッチが大きすぎるとギラツキを生じやすくなる傾向があり、
表面凹凸のピッチに対する高さの比が2/1000より小さい場合は、蛍光灯などの外光の映り込み防止が不十分であり、300/1000より大きいと外光による白ちゃけが多くなる傾向があるとともに、斜めから見た場合の像のボヤケが生じる傾向、いわゆる視野角依存性が悪くなる傾向があり、
標準偏差(σ)/平均(Sav)が2以下であると、表面凹凸の分布が特定の範囲であるため、各種特性を満足させることが容易であり、一方、バラツキがほとんどないものは、その規則性が高すぎるため、表示装置によってはモアレがでることもあり、そのため、標準偏差(σ)/平均(Sav)が0.1?1.5の範囲のものが好ましく、特に0.3?1.0の範囲のものがもっとも好ましく、
本発明の表面凹凸のスキューネス(SRsk)が-1.0?1.0であるのが好ましく、このSRskが正の値で大きいと表面の磨耗によって削れ易くなり、傷つきやすいものとなってしまう一方、負の値が大きい場合、表面が汚れた場合にティッシュ等での拭取り性が悪くなる傾向があり、そのため本発明においては、-1.0?1.0が好ましく、さらには-0.5?0.5が好ましく、-0.3?0.3が最も好ましく、スキューネスSRskが、具体的には、0.25(実施例1)、0.20(実施例3)、0.35(実施例4)であり、
防眩フィルムのヘーズは、用途にもよるが10%以下が好ましく、特に5%以下、最も好ましくは3%以下であり、ヘーズが、具体的には、1.5%(実施例1)、1.4%(実施例3)、1.6%(実施例4)であり、
最表面の凹凸形状は、樹脂層の上に形成されるのが好ましく、この樹脂層は、最表面の形状をなす層であるため、樹脂としては、紫外線硬化樹脂を用いるのが好ましく、ハードコート層とするのが好ましく、紫外線硬化樹脂を設けて、表層を硬くすることによって、耐擦傷性などの実用特性を満足させやすくなり、
粘着剤を用いて表示装置表面のガラスなどに貼り付けることによって表示装置の防眩機能や反射防止機能を付与することができ、
液晶テレビ、PDP、有機ELなどのフラットパネルディスプレイや、その他、例えば、無機ELディスプレイ、TVブラウン管、ノートパソコン、電子手帳、タッチパネル、液晶ディスプレイ、車載用テレビ、液晶ビデオ、プロジェクションテレビ、プラズマアドレス液晶ディスプレイ、電解放出型ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ、光ファイバー、光ディスク等の電子情報機器分野;照明グローブ、蛍光灯、鏡、時計等の家庭用品分野;ショーケース、額、半導体リソグラフィー、コピー機器等の業務用分野;液晶ゲーム機器、パチンコ台ガラス、ゲーム機等の娯楽分野などにおいて、映り込みの防止の向上を必要としている非常に広範な用途に用いることができる、
防眩フィルム。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由において、周知技術を例示する文献として引用された、上記引用文献2には、以下の記載がある。

(1) 段落【0003】
「【0003】
抵抗膜方式のタッチパネルは、対向する側に透明電極を有する2枚のフィルム又は板を一定間隔で保持して構成されている電気部品である。その作動方式は、一方の透明電極を固定した上で、視認側からペン又は指で他方の透明電極を押圧し、撓ませて、固定した透明電極と接触、導通することにより、検出回路が位置を検知し、所定の入力がなされる。このようなタッチパネルの作動方式において、ペン又は指で電極を押圧する際、押圧している指やペンなどのポインティング治具の周辺に、干渉による虹模様(いわゆる、「ニュートンリング」と呼ばれる干渉色又は干渉縞)が現れることがあり、画面の視認性を低下させる。詳しくは、2枚の透明電極が接触するか又は接触のために撓み、対向する2枚の透明電極の間隔が可視光の波長程度(約0.5μm)となったときに、2枚の透明電極に挟まれた空間で反射光の干渉を生じ、ニュートンリングが発生する。このようなニュートンリングの発生は、抵抗膜方式のタッチパネルの原理上、不可避の現象である。このようなタッチパネルにおけるニュートンリングを軽減する対策として、透明電極を形成する支持体フィルムの表面に凹凸構造を形成する方法が提案されている。」

(2) 段落【0011】-【0013】
「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、抵抗膜方式タッチパネルにおけるニュートンリングの発生を有効に抑制でき、かつ打鍵耐久性にも優れる透明導電性膜及びこの透明導電膜を備えたタッチパネルを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、膜表面で均一な導電性を有するとともに、ギラツキやチラツキを抑制できる鮮明な画像を表示できる透明導電性膜及びこの透明導電膜を備えたタッチパネルを提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、繰り返し打鍵しても、割れや損傷が抑制され、ニュートンリング防止効果の低下を抑制できる透明導電性膜及びこの透明導電膜を備えたタッチパネルを提供することにある。」

(3) 段落【0115】-【0121】
「【0115】
[タッチパネル]
本発明の透明導電性膜は、タッチパネル(特に抵抗膜方式タッチパネル)の透明電極に利用できる。透明電極としては、透明導電層が形成された面の反対面に、さらにハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層としては、慣用の透明樹脂層、例えば、前記硬化性樹脂前駆体の項で例示された光硬化性化合物で形成されたハードコート層の他、透明樹脂中に無機又は有機微粒子を含有する防眩性ハードコート層、アンチニュートンリング層と同様に透明樹脂を相分離させて得られる防眩性ハードコート層などが利用できる。ハードコート層の厚みは、例えば、例えば、0.5?20μm、好ましくは1?20μm、さらに好ましくは5?15μm程度である。

・・・(中略)・・・

【0117】
本発明のタッチパネル(特に抵抗膜方式タッチパネル)は、前記透明電極を備えている。図2は、本発明のタッチパネルの一例を示す概略断面図である。このタッチパネル10は、上部透明電極11と下部透明電極13とがスペーサー12を介して積層されており、上部透明電極11の透明導電層11aと下部透明電極13の透明導電層13aとが対向し、液晶パネル20の上に配設されている。
【0118】
上部透明電極11は、透明プラスチックフィルムで構成された透明基板11cの一方の面(パネル表側又は上部の面)にハードコート層11dが形成され、他方の面(パネル裏側又は下部の面)に相分離層(アンチニュートンリング層)11bが形成されている。相分離層11bの表面(パネル裏側又は下部の面)には前記透明導電層11aが形成されており、相分離層11bの表面が均一で規則的な凹凸構造を有するため、透明導電層11aの表面も相分離層11bの凹凸構造に追従した凹凸構造を有している。上部透明電極11は、指やペンなどの押圧部材によって押圧することより、透明導電層11aが撓んで下部透明電極13の透明導電層13aと接触して導通し、位置検出が行われる。本発明では、上部透明電極11の透明導電層11aの表面が相分離層11bに追随して均一な凹凸構造を有しているため、上部透明電極11を押圧しても、上部透明電極11とスペーサー12によって形成された空間(空気層)との界面反射光の干渉によるニュートンリングの発生を抑制できる。

・・・(中略)・・・

【0120】
下部透明電極13は、前記スペーサー12を介在させて、上部透明電極11の下部に配設されており、ガラスで構成された透明基板13cの一方の面(パネル表側又は上部の面)に、透明導電層13aが形成され、他方の面(パネル裏側又は下部の面)にハードコート層13dが形成されている。下部透明電極13の透明導電層13aの表面は平滑であるが、上部透明電極11と同様に、相分離層(アンチニュートンリング層)を形成し、表面に凹凸構造を形成してもよい。上部透明電極11及び下部透明電極13の双方に相分離層を形成することにより、アンチニュートンリング効果を向上できる。一方、上部透明電極11に凹凸構造を形成することなく、下部透明電極13に相分離層を形成してもよい。アンチニュートンリング効果とタッチパネルの下部に配設する表示装置の視認性とを両立できる点からは、一方の透明電極(特に上部透明電極)に相分離層を形成するのが好ましい。透明基板13cは、上部透明電極の透明基板11cとは異なり、可撓性は必要ないため、ガラス基板などの非可撓性材料であってもよいが、透明基板11cと同様の可撓性を有する透明プラスチックフィルムであってもよい。
【0121】
このような上下透明電極を備えたタッチパネル10は、液晶表示(LCD)装置である液晶パネル20の上に配設されている。本発明では、前記相分離層11bは、透過光を等方的に透過して散乱させながら、特定の角度範囲での光散乱強度を向上できるため、ニュートンリングの防止だけでなく、液晶パネル20の視認性をも向上できる。具体的には、液晶パネルの表示部におけるギラツキを抑制できるとともに、透過像の鮮明性に優れ、表示面での文字ボケを抑制できる。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由において、周知技術を例示する文献として引用された、上記引用文献3には、以下の記載がある。

(1) 段落[0005]
「[0005] 一方、光学フィルムの分野では、フィルム同士、あるいはフィルムと他の部材(たとえばガラス板)が接触した際に、グレアやニュートンリング、又はブロッキングが生じることがある。これらを防止するために、フィルム表面に微細な凹凸形状を設けることが行われている。形成する凹凸の大きさは、要求される性能(アンチグレア、アンチニュートンリング、又はアンチブロッキング)に応じて設定され、アンチグレアの場合が最も大きく、アンチブロッキングの場合が最も小さい。このような凹凸形状の形成方法としては、ハードコート層に粒子を含有させる方法が一般的に用いられている(たとえば特許文献4?6)。」

(2) 段落[0008]
「[0008] 本発明者らは、鋭意検討の結果、1枚透明基板タイプの静電容量式タッチパネルの裏面と、表示装置の前面とが空間を介して対向した構成において、前記タッチパネルの裏面(前記表示装置の前面と対向する面)、又は表示装置の前面(前記静電容量式タッチパネルの裏面と対向する面)を、所定の表面粗さを有するものとすることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「透明な基材フィルム(透明フィルム基材)」は、本願発明1の「透明支持体」に相当する。
引用発明の「樹脂層」は、本願発明1の「塗工層」に相当する。
引用発明の「防眩フィルム」は、本願発明1の「光学フィルム」に相当する。
引用発明の「表面凹凸のスキューネス(SRsk)」は、本願発明1の「断面曲線のスキューネスPsk」に相当する。
よって、引用発明の「凹凸形状を有する樹脂層を透明な基材フィルムに積層しており」、「本発明の表面凹凸のスキューネス(SRsk)が-1.0?1.0であるのが好ましく、このSRskが正の値で大きいと表面の磨耗によって削れ易くなり、傷つきやすいものとなってしまう一方、負の値が大きい場合、表面が汚れた場合にティッシュ等での拭取り性が悪くなる傾向があり、そのため本発明においては、-1.0?1.0が好ましく、さらには-0.5?0.5が好ましく、-0.3?0.3が最も好ましく、スキューネスSRskが、具体的には、0.25(実施例1)、0.20(実施例3)、0.35(実施例4)であ」る、「防眩フィルム」が、「粘着剤を用いて表示装置表面のガラスなどに貼り付けることによって表示装置の防眩機能や反射防止機能を付与することができ」ることは、本願発明1の「表示素子側基板とタッチ入力素子とが間隙を置いて配置され、前記表示素子側基板の間隙側表面及び前記タッチ入力素子の間隙側表面のうち少なくとも一方に、透明支持体と、その上に形成された、断面曲線のスキューネスPskの絶対値が0.3以下の微細な表面凹凸形状を有する塗工層とを備える光学フィルムが、その塗工層側を前記間隙に向けて配置され」ることと、「透明支持体と、その上に形成された、断面曲線のスキューネスPskの絶対値が0.3以下の微細な表面凹凸形状を有する塗工層とを備える光学フィルムが、配置され」る点で共通するといえる。

イ 引用発明の「防眩フィルム」は、「液晶テレビ、PDP、有機ELなどのフラットパネルディスプレイや、その他、例えば、無機ELディスプレイ、TVブラウン管、ノートパソコン、電子手帳、タッチパネル、液晶ディスプレイ、車載用テレビ、液晶ビデオ、プロジェクションテレビ、プラズマアドレス液晶ディスプレイ、電解放出型ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ、光ファイバー、光ディスク等の電子情報機器分野;照明グローブ、蛍光灯、鏡、時計等の家庭用品分野;ショーケース、額、半導体リソグラフィー、コピー機器等の業務用分野;液晶ゲーム機器、パチンコ台ガラス、ゲーム機等の娯楽分野などにおいて、映り込みの防止の向上を必要としている非常に広範な用途に用いることができる」から、引用発明の「粘着剤を用いて表示装置表面のガラスなどに貼り付けることによって表示装置の防眩機能や反射防止機能を付与することができ」る「防眩フィルム」を、特に「タッチパネル」に貼り付けたものは、本願発明1の「タッチパネル」に相当する。

したがって、本願発明1と、引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「透明支持体と、その上に形成された、断面曲線のスキューネスPskの絶対値が0.3以下の微細な表面凹凸形状を有する塗工層とを備える光学フィルムが、配置された、
タッチパネル。」

[相違点1]
本願発明1では、「表示素子側基板とタッチ入力素子とが間隙を置いて配置され」、「前記表示素子側基板の間隙側表面及び前記タッチ入力素子の間隙側表面のうち少なくとも一方に」、透明支持体と、その上に形成された、断面曲線のスキューネスPskの絶対値が0.3以下の微細な表面凹凸形状を有する塗工層とを備える光学フィルムが、「その塗工層側を前記間隙に向けて」配置されるのに対して、引用発明の「防眩フィルム」を、どのような構造の「タッチパネル」に、どのように貼り付けるかは特定がなされていない点。

[相違点2]
光学フィルムの特性について、本願発明1では、「前記光学フィルムは、全ヘーズが0.8%以下である」のに対して、引用発明の「防眩フィルム」は、「防眩フィルムのヘーズは、用途にもよるが10%以下が好ましく、特に5%以下、最も好ましくは3%以下であり、ヘーズが、具体的には、1.5%(実施例1)、1.4%(実施例3)、1.6%(実施例4)であり」、「全ヘーズが0.8%以下である」ことは特定がなされていない点。

(2) 相違点についての判断
上記[相違点1]について検討する。
引用文献1には、「防眩フィルム」を、タッチパネルの表示素子側基板とタッチ入力素子との間隙に配置する構成は記載も示唆もない。
引用発明の「防眩フィルム」は、たまたま、スキューネスの範囲が、「-0.3?0.3が最も好まし」いことを規定しているが、これは、「負の値が大きい場合、表面が汚れた場合にティッシュ等での拭取り性が悪くなる傾向があり、そのため」である。よって、引用発明の「防眩フィルム」は、人がタッチする側に貼り付けることが前提であると理解するのが自然である。
たしかに、上記引用文献2、引用文献3の記載から、ギラツキやグレアなどを防止するために、凹凸を備えたフィルムを、タッチパネルの表示素子側基板とタッチ入力素子との「間隙」に配置することは、周知技術といえる。
しかし、上記のとおり、引用発明の「防眩フィルム」は、人がタッチする側に貼り付けることが前提であること、周知技術を示す引用文献2でも、図2(特に「ハードコート層11d」)、段落【0115】「[タッチパネル] 本発明の透明導電性膜は、タッチパネル(特に抵抗膜方式タッチパネル)の透明電極に利用できる。透明電極としては、透明導電層が形成された面の反対面に、さらにハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層としては、慣用の透明樹脂層、例えば、前記硬化性樹脂前駆体の項で例示された光硬化性化合物で形成されたハードコート層の他、透明樹脂中に無機又は有機微粒子を含有する防眩性ハードコート層、アンチニュートンリング層と同様に透明樹脂を相分離させて得られる防眩性ハードコート層などが利用できる。」の記載から、人がタッチする側にも「防眩性ハードコート層」が設けられているから、引用発明の「防眩フィルム」を、ギラツキなどを防ぐ目的で上記周知技術に適用する場合でも、直ちに、(人がタッチする側ではなく)タッチパネルの表示素子側基板とタッチ入力素子との「間隙」に配置する構成が想定できるとはいえない。
仮に、引用発明の「防眩フィルム」を、上記周知技術に適用する場合に、タッチパネルの表示素子側基板とタッチ入力素子との「間隙」に配置するような構成が想定できたとしても、この場合、引用発明の「防眩フィルム」が、「負の値が大きい場合、表面が汚れた場合にティッシュ等での拭取り性が悪くなる傾向があり、そのため」、スキューネスを規定しているという、スキューネスを規定する必要性がなくなることは明らかである。
また、タッチパネルの表示素子側基板とタッチ入力素子との「間隙」に配置する光学フィルムのスキューネスを制限することで、ニュートンリングの発生が防止できることは、引用文献1-3には記載されておらず、周知技術であるともいえない。
よって、当業者といえども、引用発明及び引用文献2、引用文献3に記載された技術的事項及び周知技術から、本願発明の上記[相違点1]に係る「表示素子側基板とタッチ入力素子とが間隙を置いて配置され」、「前記表示素子側基板の間隙側表面及び前記タッチ入力素子の間隙側表面のうち少なくとも一方に」、透明支持体と、その上に形成された、断面曲線のスキューネスPskの絶対値が0.3以下の微細な表面凹凸形状を有する塗工層とを備える光学フィルムが、「その塗工層側を前記間隙に向けて」配置されるという構成を容易に想到することはできない。

したがって、上記[相違点2]について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、引用文献3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-9について
本願発明2-9は、概略、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明1の上記[相違点1]の「表示素子側基板とタッチ入力素子とが間隙を置いて配置され」、「前記表示素子側基板の間隙側表面及び前記タッチ入力素子の間隙側表面のうち少なくとも一方に」、透明支持体と、その上に形成された、断面曲線のスキューネスPskの絶対値が0.3以下の微細な表面凹凸形状を有する塗工層とを備える光学フィルムが、「その塗工層側を前記間隙に向けて」配置されるという構成と同一の構成を備えるものである。
よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-9も、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、引用文献3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1-9は、「表示素子側基板とタッチ入力素子とが間隙を置いて配置され」、「前記表示素子側基板の間隙側表面及び前記タッチ入力素子の間隙側表面のうち少なくとも一方に」、透明支持体と、その上に形成された、断面曲線のスキューネスPskの絶対値が0.3以下の微細な表面凹凸形状を有する塗工層とを備える光学フィルムが、「その塗工層側を前記間隙に向けて」配置されるという事項を有しており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-3に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-07-17 
出願番号 特願2013-134606(P2013-134606)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 安久 司郎
特許庁審判官 稲葉 和生
松田 岳士
発明の名称 タッチパネル及びそれを備える画像表示装置  
代理人 坂元 徹  
代理人 中山 亨  

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