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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1342374
審判番号 不服2017-8893  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-19 
確定日 2018-07-12 
事件の表示 特願2014-147986号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年2月8日出願公開、特開2016-22152号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年7月18日の出願であって、平成28年10月24日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年12月22日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年3月14日付け(発送日:平成29年3月21日)で拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年6月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成29年12月28日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年3月8日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本件請求項1に記載された発明
平成30年3月8日付け手続補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、当該補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は次のとおりのものである。(以下「本件発明」という。A?Kは分説のため当審にて付与した。)

「A 遊技が可能な遊技機であって、
B 複数段階にわたって進行するとともに、特定段階へ進行したときに遊技者にとって有利な有利状態へ移行されることを報知する段階演出を実行する段階演出実行手段と、
C 前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行することを示唆する第1示唆演出を実行する第1示唆演出実行手段と、
D 前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行することを示唆する第2示唆演出を実行する第2示唆演出実行手段と、を備え、
E 前記段階演出において段階が進行するときに、1の段階と後の段階との間で区切り演出を実行してから段階を進行させ、
F 前記段階演出における1の段階において、前記第1示唆演出実行手段が実行する第1示唆演出と、前記第2示唆演出実行手段が実行する前記第2示唆演出とを組み合わせて実行可能であり、
G 前記段階演出における1の段階において、前記第2示唆演出は後の段階へ進行する割合が異なる複数の態様で実行可能であり、
H 前記第1示唆演出実行手段は、前記第2示唆演出の実行態様に応じて異なる割合で前記第1示唆演出を実行し、
I 前記第1示唆演出が実行されて前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行するときと、前記第1示唆演出が実行されずに前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行するときとがあり、
J 前記第2示唆演出の態様により、前記特定段階へ進行したときに有利度の高い有利状態に移行する割合が異なる、
K ことを特徴とする遊技機。」

第3 当審の平成29年12月28日付け拒絶理由の概要
当審の平成29年12月28日付け拒絶理由の概要は以下のとおりである。

1.(理由1)この出願の請求項1?2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(理由2)この出願の請求項1?2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1、または、同じく下記の引用文献2及び前記引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.引用文献等
引用文献1:特開2014-33894号公報
引用文献2:特開2003-320119号公報

第4 刊行物に記載された事項
1.当審の平成29年12月28日付け拒絶理由において、上記第3で示したとおり「引用文献1」として提示され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-33894号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(1)刊行物1の明細書には次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
遊技球が発射される遊技領域を備えた弾球遊技機に関する。」

「【0058】
演出表示装置60は、本実施例では液晶ディスプレイなどの高精細なドットマトリクス型表示装置で構成されるが、ドラム回転式などの機械的表示手段やLEDマトリクス式などの表示手段で構成されてもよい。」

「【0074】
・・・メイン基板102は、ぱちんこ遊技機10の全体動作を制御し、とくに第1始動口62、第2始動口63へ入賞したときの抽選等、遊技動作全般を処理する。サブ基板104は、液晶ユニット42を備え、演出表示装置60における表示内容を制御し、特にメイン基板102による抽選結果に応じて表示内容を変動させる。」

「【0169】
次に、通常モードにおいて表示対象となるSP予告演出について詳細に説明する。
本実施例では上述のように、通常モードにおける比較的当り期待度の高い予告演出としてSP予告演出(「特定演出」に対応する)が含まれる。このSP予告演出は、装飾図柄190の擬似連続変動演出とともに表示される。ここで、「擬似連続変動演出」は、装飾図柄190の1回の変動時間(つまり特別図柄の変動時間)において擬似的に複数回の図柄変動が含まれるようにみせる演出である。SP予告演出は、この擬似連続変動演出ごとに敵キャラクタを登場させ、味方キャラクタと対戦させるSPバトルを表示させる。味方キャラクタが敵キャラクタに勝利すると、上述した「大当り1」を獲得することができる。このSP予告演出において味方キャラクタが勝利できる期待度(大当り期待度)は、SPバトルの種類(対戦相手となる敵キャラクタの種類)や、その対戦終盤に割り込むカットイン(「付加演出」に対応する)の種類により異なる傾向となる。このため、遊技者は、いずれの敵キャラクタが出現するか、いずれのカットインが出現するか等によって期待感が煽られるようになる。
【0170】
図26は、SP予告演出として表示されるSPバトルの種類と敵キャラクタとの関係を模式的に示す説明図である。図27は、SP予告演出において表示されるSPバトルの種類と、カットインの種類および属性との関係を模式的に示す説明図である。
【0171】
図26に示すように、本実施例ではSPバトルα,β,γの3種類が設けられる。SPバトルαにおける対戦相手は敵キャラクタAであり、SPバトルβにおける対戦相手は敵キャラクタBであり、SPバトルγにおける対戦相手は敵キャラクタCである。大当り期待度は、傾向としてSPバトルα<SPバトルβ<SPバトルγの順に高期待度となるよう設定されているが、カットインとの組み合わせによっても期待度は異なる。
【0172】
一方、図27に示すように、カットイン予告として、SPバトルαには剣のカットイン、SPバトルβには盾のカットイン、SPバトルγには鎧のカットインが設定されている。各カットインにはそれぞれ属性として色が異なる複数のカットインが含まれる。すなわち、「金」,「赤」,「緑」の属性が設定され、その大当り期待度は金>赤>緑の順に高期待度となるよう設定されている。したがって、遊技者は、各SPバトルにおいて金色のカットインが表示されると、大当り期待度が高いと認識することができる。
【0173】
図28?図30は、SP予告演出の画面例を表す図である。各図の(a)?(h)はその演出過程の一部を例示している。図28には、SP予告演出の過程でカットインの属性が変化する例が示されている。図28(a)に示すように、SP予告演出が開始されると、装飾図柄190が画面隅に小さく変動表示され、SPバトル開始の表示がなされる。図示の例では、SPバトルαの開始であることを示すとともに、対戦相手として敵キャラクタAが表示されている。そして、ある程度戦いが進行すると、図28(b)に示すように操作ボタン82のマークが表示されてその操作が促される。これに応じて遊技者が操作ボタン82を操作すると、図28(c)に示すようにカットインが表示される。図示の例では、相対的に大当り期待度の低い緑色のカットインが表示されている。通常であれば、その後に装飾図柄190が停止表示されるとともに勝敗が表示される。
【0174】
しかし、この例ではその勝敗が表示される前に、図28(d)に示すように、シャッターにて画面が一旦閉じられる演出がなされ、そのシャッターが開かれるとともにSPバトルが振り出しに戻されている。図28(e)には、SPバトルαが再開される例が示されている。ただし、SPバトルの再開時には図示のように、演出表示装置60の表示領域194の左上に補助画面198が表示され、その中に前回のSPバトルが相対的に小さく表示される。すなわち、補助画面198には前回の対戦の開始時に巻き戻された態様で再度表示が開始され、今回の対戦と前回の対戦とが同時並行的に表示される。これにより、遊技者は、今回の対戦と前回の対戦とを比較してその変化をみることにより、前回よりも状況が好転しているか否かを把握することができる。図28(f)には、演出の再生が進んでカットインが表示されるタイミングが示されているが、前回のカットインが緑色であったのに対し、今回のカットインは赤色に変化していることから、大当り期待度が高くなったと認識することができる。このとき、SPバトルの表示契機となった当否抽選結果が大当りである場合には、図28(g)に示すように、その後に味方キャラクタが勝利し、大当り1が確定表示される。一方、SPバトルの表示契機となった当否抽選結果が外れである場合には、図28(h)に示すように、その後に味方キャラクタが敗北し、外れが示唆される。
・・・
【0178】
本実施例では図示のように、メイン基板102側で擬似連続変動パターンが選択されると、サブ基板104側では擬似連続変動演出パターンが選択され、その擬似連続変動演出の仮変動ごとにSPバトルがなされるSP予告演出が表示される。ただし、決定された擬似連続変動演出パターンに応じてその仮変動の回数も異なるため、SPバトルの再生回数も異なる。同図には、SPバトルが仮変動の1変動目まで表示されるものを特殊予告演出1、2変動目まで表示されるものを特殊予告演出2、3変動目まで表示されるものを特殊予告演出3として示しており、それぞれ擬似連続変動1、擬似連続変動2、擬似連続変動3の変動パターンに対応している。各仮変動の期間(時刻t1からt2,t2からt3,t3からt4)は約20秒とされている。なお、特殊予告演出1における仮変動1回は、例外的に本変動1回に相当する。」

「【0192】
図36は、各予告演出パターンテーブルを模式的に示す図である。図36(a)?(i)は、それぞれ予告演出パターンテーブルa?iを示す。演出決定手段132は、決定された予告演出パターンテーブルを参照して予告演出パターンを選択する。各図に示すように、各予告演出パターンテーブルにおいては、パターン抽選値「0?255」に対してSP予告演出の種類とカットインの種類が対応付けられている。予告演出パターンテーブルa?gがSP予告演出に対応し、予告演出パターンテーブルh,iが通常予告演出に対応している。
【0193】
予告演出パターンテーブルa?gのいずれもSPバトルα,β,γを選択対象とし、各SPバトルについて対応するカットインを選択対象とする。カットインの種類はSPバトルの種類に応じて異なるが、基本的に「金」,「赤」,「緑」の3種類の属性を有する。一方、予告演出パターンテーブルによってSPバトル1?3のいずれの段階まで発展するか(図31参照)、つまりSPバトルの再生回数(個別変動演出の回数=擬似連続変動の回数)が異なる。同図の括弧内のSPバトル1,2,3は、SPバトルがそれぞれSPバトル1,2,3まで発展することを示している。また、同図におけるSPバトルα,β,γは、最後の段階で表示されるSPバトルの種類を示すが、特に示さない限り、SPバトルの段階が進んでも図示の種類のみが表示されることを示す。一方、SPバトルβとなる特定の抽選値範囲に(α→β)とあるのは、段階を経ることによりSPバトルαからSPバトルβに発展するものであることを示す。同様に、SPバトルγとなる特定の抽選値範囲に(β→γ)とあるのは、段階を経ることによりSPバトルβからSPバトルγに発展するものであることを示す。また、図示のカットインについては、各SPバトルにおいてカットインが表示されるか否か、および表示される場合の属性とその変化が示されている。「緑→赤」とあるのは、段階を経ることによりカットインの属性が緑から赤に発展するものであることを示す。「赤→金」とあるのは、段階を経ることによりカットインの属性が赤から金に発展するものであることを示す。なお、説明の便宜上、同図にはパターン構成の一例が示されているが、実際にはSPバトルの種類や変化、カットインの種類や変化がより細分化されたものとなる。
・・・
【0195】
また、予告演出パターンテーブルbには、SPバトルα,βとして、SPバトル1から2へ切り替わることにより、カットインが緑色から赤色へ変化する演出パターンが含まれる。なお、図中「金」,「赤」,「緑」のいずれかのみが示されるパターンは、本実施例ではカットインとしてその属性が1回のみ表示されるものであるが、変形例においては、SPバトルの段階ごとに同じ属性が表示されるものとしてもよい(以下同様)。予告演出パターンテーブルbには、また、SPバトルγとして、SPバトル1から2へ切り替わることにより、カットインが赤色から金色へ変化する演出パターンが含まれる。さらに、SPバトル1から2へ切り替わることにより、SPバトルαからβへ変化する演出パターンが含まれる。予告演出パターンテーブルcにも、SPバトルα,βとして、SPバトル1から2へ切り替わることにより、カットインが緑色から赤色へ変化する演出パターンが含まれる。なお、SPバトルα,βとして、SPバトル2から3へ切り替わることにより、カットインが緑色から赤色へ変化するものであってもよい。また、SPバトル1から2へ切り替わることにより、SPバトルβからγへ変化する演出パターンが含まれる。なお、SPバトル2から3へ切り替わることにより、SPバトルβからγへ変化するものであってもよい。
・・・
【0197】
また、予告演出パターンテーブルeには、予告演出パターンテーブルbと同様に、SPバトルα,βとして、SPバトル1から2へ切り替わることにより、カットインが緑色から赤色へ変化する演出パターンが含まれる。また、SPバトルγとして、SPバトル1から2へ切り替わることにより、カットインが赤色から金色へ変化する演出パターンが含まれる。さらに、SPバトル1から2へ切り替わることにより、SPバトルαからβへ変化する演出パターンが含まれる。予告演出パターンテーブルfには、予告演出パターンテーブルcと同様に、SPバトルα,βとして、SPバトル1から2へ切り替わることにより、カットインが緑色から赤色へ変化する演出パターンが含まれる。なお、SPバトルα,βとして、SPバトル2から3へ切り替わることにより、カットインが緑色から赤色へ変化するものであってもよい。また、SPバトル1から2へ切り替わることにより、SPバトルβからγへ変化する演出パターンが含まれる。なお、SPバトル2から3へ切り替わることにより、SPバトルβからγへ変化するものであってもよい。
なお、本実施例では、SP予告演出の開始に先立って同図の予告演出パターンテーブルa?gを参照して演出パターンを決定する例を示したが、例えば遊技者による操作ボタン82の操作有無に基づいて参照先のテーブルを切り替えるようにしてもよい。すなわち、SP予告演出の表示過程で適宜予告演出パターンテーブルを参照するようにしてもよい。例えば、操作ボタン82の操作がなされない場合に、カットインが表示されない(図中「-」の表記された)演出パターンを選択するようにしてもよい。ただし、遊技者の期待感を持続する観点から、SPバトルの種類およびカットインの種類がSPバトルの段階ごとに成り下がらない設定とするのが好ましい。」

(2)刊行物1の図面には以下の事項が記載されている。
ア 上記【0192】?【0197】の記載を参酌し、特に「カットイン」の表示形態に関しては【0195】の「図中「金」,「赤」,「緑」のいずれかのみが示されるパターンは、・・・SPバトルの段階ごとに同じ属性が表示される」との実施形態が採用されるものとすると、図36の(a)?(g)からは、以下の各技術事項を読み取ることができる。
(ア)SP予告の最初のSPバトル(仮変動)である「SPバトル1」における「カットイン」の属性が「赤」色となる場合は、「SPバトル1」または「SPバトル2」、すなわち、【0193】の記載によれば、「SPバトルがそれぞれSPバトル1,2・・・まで」しか「発展」しないSP予告演出に対応する、同図(a)、(b)、(d)、(e)、(g)の予告演出パターンテーブルにしか設定がない。
(イ)同図(a)?(g)の中で、「カットイン」欄が「-」、すなわち、いずれのSPバトルにおいてもカットインが表示されない演出パターンは、SPバトルが「SPバトル2」または「SPバトル3」まで発展する場合に対応する同図(b)、(c)、(e)、(f)のみに設定されている。

イ 上記【0192】?【0195】の記載を参酌すると、図36の(a)?(g)からは、以下の各技術事項を読み取ることができる。
(ア)「SP予告」欄が「α」または「α→β」、つまり、SPバトルの段階の第1段階である「SPバトル1」において「SPバトルα」が実行されるパターンは、同図(a)?(g)のすべて、すなわち、「SPバトル」が1回?3回行われる演出パターン全てについて設定されている。
(イ)「SP予告」欄が「β」または「β→γ」、つまり、SPバトルの段階の第1段階である「SPバトル1」において「SPバトルβ」が実行されるパターンは、「SPバトル」が1回のみ実行されるか、または3回目まで発展する演出パターンに対応する、同図(a)、(c)、(d)、(f)、(g)について設定されている。
(ウ)「SPバトル1」において「SPバトルγ」が実行される演出パターン、すなわち、「SP予告欄」が「γ」である演出パターン、は、「SPバトル」が「SPバトル1」のみ、または「SPバトル2」までしか発展しないパターンに対応する同図(a)、(b)、(d)、(e)、(g)にしか設定されていない。
(エ)「SP予告」欄が「α→β」、すなわち、1回目の「SPバトル1」において「SPバトルα」が、2回目の「SPバトル2」において「SPバトルβ」が実行されるパターンは、「SPバトル」が2回目(「SPバトル2」)までしか実行されない演出パターンに対応する同図(b)、(e)にしか設定されていない。
(オ)「SP予告」欄が「β→γ」、すなわち、1回目の「SPバトル1」において「SPバトルβ」が、2回目の「SPバトル2」において「SPバトルγ」が実行されるパターンは、同図(c)及び(f)のみ、すなわち、「SPバトル」が3回目まで発展する演出パターンにしか設定されていない。

ウ 上記【0192】?【0197】の記載を参酌すると、図36の(a)?(g)からは、以下の各技術事項を読み取ることができる。
(ア)同図(a)?(g)のいずれにおいても、「SP予告」欄の種類(α?γ)ごとに、「カットイン予告」における「カットイン」の属性がいずれであるかや、その変化形態がいずれであるかの出現割合が相違している。
たとえば同図(a)では、「SPバトルα」においては、カットイン属性が「金」となる場合に対しパターン抽選値が10個、「赤」となる場合に対しパターン抽選値が40個、「緑」となる場合に対しパターン抽選値が100個割り当てられており、「SPバトルβ」においては、カットイン属性が「金」となる場合に対しパターン抽選値が6個、「赤」となる場合に対しパターン抽選値が24個、「緑」となる場合に対しパターン抽選値が50個割り当てられ、「SPバトルγ」においては、カットイン属性が「金」となる場合に対しパターン抽選値が3個、「赤」となる場合に対しパターン抽選値が6個、「緑」となる場合に対しパターン抽選値が16個割り当てられており、いずれの「SPバトル」であるかに応じて、「カットイン」の各属性の出現割合が相違している。
同図(d)、(g)についても、個々のパターン抽選値の割当個数は異なるものの、いずれの「SPバトル」であるかに応じて、「カットイン」の各属性の出現割合が相違している。
また、たとえば同図(b)、(c)、(e)、(f)では、「カットイン」の属性が「SPバトル1」での「緑」から「SPバトル2」での「赤」に変化する変化形態となる演出パターンは、「SPバトルα」または「SPバトルβ」でしか出現しない。

エ 上記【0192】?【0197】の記載、特に【0197】の「カットインが表示されない(図中「-」の表記された)演出パターン」なる記載を参酌すると、図36の(a)?(g)からは、以下の各技術事項を読み取ることができる。
(ア)「SPバトル」が2回目の「SPバトル2」、または3回目の「SPバトル3」まで発展する演出パターンに対応する同図(b)、(c)、(e)、(f)では、「カットイン」欄に「-」以外の属性が設定された「カットイン」が実行される演出パターンのほかに、「カットイン」欄が「-」、すなわちカットインが表示されずに「SPバトル」が「SPバトル1」から「SPバトル2」へと、または「SPバトル2」から「SPバトル3」へと発展する演出パターンを含んで設定されている。

オ 上記【0169】?【0172】の記載事項を参酌すると、図28(c)、(f)からは、「敵キャラクタ」の「A」が表示される「SPバトル」の「α」の1回目、及び2回目が実行されている最中に、剣の図柄の「カットイン」が重畳して表示されることを読み取ることができる。

カ 上記【0058】、【0173】の記載事項を参酌すると、図28(a)?(c)、(e)?(h)では演出表示装置60の右上領域に3桁の数字からなる装飾図柄190が表示され、そのうち同図(a)?(c)、(e)、(f)では、前記装飾図柄190は変動中又は「揺れ表示」の状態であるのに対し、同図(g)では、「大当たり1!」、「YOU WIN!」と表示されるとともに、前記装飾図柄190は「777」を示して完全停止していることを読み取ることができる。

(3)上記(1)の各記載事項及び上記(2)で認定した図面の記載事項から、以下の事項が導かれる。
ア 上記【0169】には「本実施例では上述のように、通常モードにおける比較的当り期待度の高い予告演出としてSP予告演出(「特定演出」に対応する)が含まれる。このSP予告演出は、装飾図柄190の擬似連続変動演出とともに表示される。ここで、「擬似連続変動演出」は、装飾図柄190の1回の変動時間(つまり特別図柄の変動時間)において擬似的に複数回の図柄変動が含まれるようにみせる演出である。SP予告演出は、この擬似連続変動演出ごとに敵キャラクタを登場させ、味方キャラクタと対戦させるSPバトルを表示させる。」との記載がある。
また、上記【0173】?【0174】には「図28(a)に示すように、SP予告演出が開始されると、装飾図柄190が画面隅に小さく変動表示され、SPバトル開始の表示がなされる。図示の例では、SPバトルαの開始であることを示すとともに、対戦相手として敵キャラクタAが表示されている。そして、ある程度戦いが進行すると、図28(b)に示すように操作ボタン82のマークが表示されてその操作が促される。これに応じて遊技者が操作ボタン82を操作すると、図28(c)に示すようにカットインが表示される。・・・通常であれば、その後に装飾図柄190が停止表示されるとともに勝敗が表示される。・・・しかし、この例ではその勝敗が表示される前に、図28(d)に示すように、シャッターにて画面が一旦閉じられる演出がなされ、そのシャッターが開かれるとともにSPバトルが振り出しに戻されている。・・・図28(f)には、演出の再生が進んでカットインが表示されるタイミングが示されている・・・。このとき、SPバトルの表示契機となった当否抽選結果が大当りである場合には、図28(g)に示すように、その後に味方キャラクタが勝利し、大当り1が確定表示される。一方、SPバトルの表示契機となった当否抽選結果が外れである場合には、図28(h)に示すように、その後に味方キャラクタが敗北し、外れが示唆される。」との記載がある。
さらに、上記【0178】には「メイン基板102側で擬似連続変動パターンが選択されると、サブ基板104側では擬似連続変動演出パターンが選択され、その擬似連続変動演出の仮変動ごとにSPバトルがなされるSP予告演出が表示される。」と記載されている。
また、サブ基板104の機能については上記【0074】に「サブ基板104は、液晶ユニット42を備え、演出表示装置60における表示内容を制御し、特にメイン基板102による抽選結果に応じて表示内容を変動させる。」と記載されていることから、「メイン基板102による抽選結果に応じて表示内容を変動させる」ことをはじめとする演出表示装置60における表示内容全般の制御を担う機能を備えるものと理解される。
前記各記載から、刊行物1には「1回の特別図柄の変動時間において擬似的に複数回の図柄変動が含まれるようにみせる演出である擬似連続変動演出ごとに、敵キャラクタを登場させ、味方キャラクタと対戦させる「SPバトル」を表示させる「SP予告」演出を実行し、該「SP予告」演出は、「SPバトル」の開始から「カットイン」の表示を経てシャッターにて画面が一旦閉じられる演出がなされ、その後シャッターが開かれるとともに「SPバトル」が振り出しに戻され、再度「カットイン」が表示されるタイミングを経た後、味方キャラクタが勝利し、「大当り1」が確定表示されるか、味方キャラクタが敗北し、外れが示唆されるかの演出、までの演出を実行するものである、サブ基板104の機能」が記載されているといえる。

イ 上記【0172】には「カットイン予告として、SPバトルαには剣のカットイン、SPバトルβには盾のカットイン、SPバトルγには鎧のカットインが設定されている。」と記載されている。
また、上記(2)ア(ア)の認定事項から、SP予告の最初のSPバトル(仮変動)である「SPバトル1」における「カットイン」の属性が「赤」色となる場合は、「SPバトル」は3回目のSPバトルである「SPバトル3」まで発展しないことが確定しているといえ、逆に、「SPバトル1」における「カットイン」の属性が「赤」色以外であれば、「SPバトル」が3回目に発展する可能性があるといえる。
また、上記(2)ア(イ)の認定事項から、例えば1回目の「SPバトル」である「SPバトル1」において「カットイン」を表示しない表示形態の演出が選択された場合には、必ず「SPバトル2」以上にまで発展することが確定しているといえる。
さらに、「カットイン」の表示を含む、演出表示装置60における表示内容の制御がサブ基板104による機能であることは上記アで認定したとおりである。
以上のことから、刊行物1には「1回目の「SPバトル」が2回目や3回目の「SPバトル」にまで発展する可能性を示唆する種々の属性や表示形態の「カットイン」を表示する「カットイン予告」の演出を行う、サブ基板104の機能」が記載されているといえる。

ウ 上記(2)イ(ア)?(ウ)の認定事項から、「SP予告」の1回目の「SPバトル1」において、「SPバトルγ」が実行された場合には「SPバトル」が3回目の「SPバトル3」まで発展することがないことが確定するのに対し、「SPバトルα」または「SPバトルβ」が実行された場合には「SPバトル3」まで発展する可能性があるといえる。
また、上記(2)イ(エ)、(オ)の認定事項から、1回目の「SPバトル1」から2回目の「SPバトル」にかけての「SPバトル」の切り替わりパターンがαからβであれば3回目の「SPバトル3」には発展しないことが確定し、βからγであれば3回目の「SPバトル3」に発展することが確定するといえる。
さらに、「敵キャラクタを登場させ、味方キャラクタと対戦させるSPバトルを表示させるSP予告演出を実行」、すなわち「α」?「γ」の「SP予告」を実行するのがサブ基板104の機能であることは上記アで認定したとおりである。
以上のことから、刊行物1には「1回目の「SPバトル1」において実行された場合に、「SPバトル2」や「SPバトル3」へ発展する可能性があることを示唆し、または該発展する可能性がないことを確定的に示唆する「SPバトル」の演出、または、1回目から2回目の「SPバトル」にかけての切り替わりパターンによって3回目の「SPバトル」への発展があること、またはないことを確定的に示唆する「SPバトル」の演出、を実行する、サブ基板104の機能」、及び、「「SP予告」の1回目の「SPバトル1」において、「SPバトル」が3回目の「SPバトル3」まで発展することがないことが確定する「SPバトルγ」、並びに、「SPバトル3」まで発展する可能性がある「SPバトルα」または「SPバトルβ」が実行される」こと、が記載されているといえる。

エ 上記アの認定事項から、刊行物1には「「SP予告」演出において、1の「SPバトル」の後で次の「SPバトル」が振り出しに戻されて開始するまでの間に、シャッターにて画面が一旦閉じられる演出を行う」ことが記載されているといえる。

オ 上記【0169】には「SPバトルの種類(対戦相手となる敵キャラクタの種類)や、その対戦終盤に割り込むカットイン(「付加演出」に対応する)の種類」との記載があり、上記【0172】には「カットイン予告として、SPバトルαには剣のカットイン、SPバトルβには盾のカットイン、SPバトルγには鎧のカットインが設定されている。」、「各SPバトルにおいて金色のカットインが表示される」なる各記載があり、【0195】には「図中「金」,「赤」,「緑」のいずれかのみが示されるパターンは、・・・SPバトルの段階ごとに同じ属性が表示されるものとしてもよい」なる記載がある。
そして、上記(2)オで認定したとおり、図28(c)、(f)には「「敵キャラクタ」の「A」が表示される「SPバトル」の「α」の1回目、及び2回目が実行されている最中に、剣の図柄の「カットイン」が重畳して表示されること」が示されている。
以上から、刊行物1には「「SPバトル」の1回目?3回目のそれぞれにおいて、「カットイン予告」における「カットイン」の図柄を「SPバトル」に重畳して表示することが可能である」ことが記載されているといえる。

カ 演出表示装置60における表示内容の制御がサブ基板104による機能であることは上記アで認定したとおりである。このことと、上記(2)ウの認定事項から、刊行物1には「サブ基板104は、「SP予告」の種類ごとに、「カットイン」の属性がいずれであるかや、その変化形態がいずれであるかが異なる出現割合となるように「カットイン予告」を実行」することが記載されているといえる。

キ 上記(2)エで認定したとおり、刊行物1には「「SPバトル」が2回目の「SPバトル2」、または3回目の「SPバトル3」まで発展する演出パターンにおいて、「カットイン」が実行される演出パターンと、「カットイン」が表示されずに「SPバトル」が「SPバトル1」から「SPバトル2」へと、または「SPバトル2」から「SPバトル3」へと発展する演出パターンとが設定される」ことが記載されているといえる。

ク 上記【0170】?【0171】には「図26は、SP予告演出として表示されるSPバトルの種類と敵キャラクタとの関係を模式的に示す説明図である。・・・本実施例ではSPバトルα,β,γの3種類が設けられる。・・・大当り期待度は、傾向としてSPバトルα<SPバトルβ<SPバトルγの順に高期待度となるよう設定されている」と記載されている。
一方、上記【0174】には「SPバトルの表示契機となった当否抽選結果が大当りである場合には、図28(g)に示すように、その後に味方キャラクタが勝利し、大当り1が確定表示される。」と記載されているから、当否抽選結果が大当りである場合には、上記アの認定事項における「味方キャラクタが勝利し、「大当り1」が確定表示されるか、味方キャラクタが敗北し、外れが示唆されるかの演出」の段階において、「味方キャラクタが勝利し、大当り1が確定表示される」演出が実行されるといえる。
また、前記図28(g)からは、上記(2)カで認定したとおり、変動後に「「大当たり1!」、「YOU WIN!」と表示され」る際、すなわち、前記「味方キャラクタが勝利」する演出の際に、装飾図柄190が「777」を示して完全停止していることを読み取ることができ、これは前記「大当り1が確定表示され」た状態に該当するから、「SP予告」演出における前記「味方キャラクタが勝利し、大当り1が確定表示される」演出段階は、特別図柄が大当たり図柄で停止表示された状態に該当するといえる。
そうすると、パチンコ遊技機において、「特別図柄が大当たり図柄で停止表示された」後には遊技状態が大当り遊技状態に移行することが技術常識であることを考慮すれば、前記「味方キャラクタが勝利し、大当り1が確定表示される」演出が実行された後は、遊技状態が該「大当り1」に該当する大当たり遊技状態に移行することが自明であるといえる。
よって、刊行物1には「「SPバトル」にはSPバトルα,β,γの3種類が設けられ、「味方キャラクタが勝利し、「大当り1」が確定表示されるか、味方キャラクタが敗北し、外れが示唆されるかの演出」の段階において、味方キャラクタが勝利し、大当り1が確定表示される演出が実行された後大当たり遊技状態に移行する大当りの期待度は、SPバトルα<SPバトルβ<SPバトルγの順に高期待度となるよう設定される」ことが記載されているといえる。

(4)上記(1)の各記載事項、上記(2)、(3)の各認定事項から、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる(a?kは、本件発明の構成A?Kに対応させて付与した。)。

「a 遊技球が発射される遊技領域を備えた弾球遊技機であって、(【0001】)
b 1回の特別図柄の変動時間において擬似的に複数回の図柄変動が含まれるようにみせる演出である擬似連続変動演出ごとに、敵キャラクタを登場させ、味方キャラクタと対戦させる「SPバトル」を表示させる「SP予告」演出を実行し、該「SP予告」演出は、「SPバトル」の開始から「カットイン」の表示を経てシャッターにて画面が一旦閉じられる演出がなされ、その後シャッターが開かれるとともに「SPバトル」が振り出しに戻され、再度「カットイン」が表示されるタイミングを経た後、味方キャラクタが勝利し、大当り1が確定表示されるか、味方キャラクタが敗北し、外れが示唆されるか、までの演出を実行するものである、サブ基板104の機能と、((3)ア)
c 1回目の「SPバトル」が2回目や3回目の「SPバトル」にまで発展する可能性を示唆する種々の属性や表示形態の「カットイン」を表示する「カットイン予告」の演出を行う、サブ基板104の機能と、((3)イ)
d 1回目の「SPバトル1」において実行された場合に、「SPバトル2」や「SPバトル3」へ発展する可能性があることを示唆し、または該発展する可能性がないことを確定的に示唆する「SPバトル」の演出、または、1回目から2回目の「SPバトル」にかけての切り替わりパターンによって3回目の「SPバトル」への発展があること、またはないことを確定的に示唆する「SPバトル」の演出、を実行する、サブ基板104の機能と、を備え、((3)ウ)
e 「SP予告」演出において、1の「SPバトル」の後で次の「SPバトル」が振り出しに戻されて開始するまでの間に、シャッターにて画面が一旦閉じられる演出を行い、((3)エ)
f 「SPバトル」の1回目?3回目のそれぞれにおいて、「カットイン予告」における「カットイン」の図柄を「SPバトル」に重畳して表示することが可能であり、((3)オ)
g 「SP予告」の1回目の「SPバトル1」において、「SPバトル」が3回目の「SPバトル3」まで発展することがないことが確定する「SPバトルγ」、並びに、「SPバトル3」まで発展する可能性がある「SPバトルα」または「SPバトルβ」が実行され、((3)ウ)
h サブ基板104は、「SP予告」の種類ごとに、「カットイン」の属性がいずれであるかや、その変化形態がいずれであるかが異なる出現割合となるように「カットイン予告」を実行し、((3)カ)
i 「SPバトル」が2回目の「SPバトル2」、または3回目の「SPバトル3」まで発展する演出パターンにおいて、「カットイン」が実行される演出パターンと、「カットイン」が表示されずに「SPバトル」が「SPバトル1」から「SPバトル2」へと、または「SPバトル2」から「SPバトル3」へと発展する演出パターンとが設定され、((3)キ)
j 「SPバトル」にはSPバトルα,β,γの3種類が設けられ、「味方キャラクタが勝利し、「大当り1」が確定表示されるか、味方キャラクタが敗北し、外れが示唆されるかの演出」の段階において、味方キャラクタが勝利し、大当り1が確定表示される演出が実行された後大当たり遊技状態に移行する大当り期待度は、SPバトルα<SPバトルβ<SPバトルγの順に高期待度となるよう設定される、((3)ク)
k 弾球遊技機。(【0001】)」

第5 当審の判断
1.対比
(1)刊行物1発明の構成aの「遊技球が発射される遊技領域を備えた弾球遊技機」が、本件発明の構成Aの「遊技が可能な遊技機」に相当することは明らかである。

(2)刊行物1発明の構成bの「1回の特別図柄の変動時間において擬似的に複数回の図柄変動が含まれるようにみせる演出である擬似連続変動演出ごとに、敵キャラクタを登場させ、味方キャラクタと対戦させる「SPバトル」を表示させる「SP予告」演出を実行し、該「SP予告」演出は、「SPバトル」の開始から「カットイン」の表示を経てシャッターにて画面が一旦閉じられる演出がなされ、その後シャッターが開かれるとともに「SPバトル」が振り出しに戻され、再度「カットイン」が表示されるタイミングを経」るまでと、その後に行われる「味方キャラクタが勝利し、「大当り1」が確定表示されるか、味方キャラクタが敗北し、外れが示唆されるか」の演出とは、「擬似的は複数回の図柄変動」の各回の、「SPバトル」と「カットイン」の各演出を含む「擬似的な」「図柄変動」が段階的に実行され、それらの後に「味方キャラクタが勝利し、大当り1が確定表示されるか、味方キャラクタが敗北し、外れが示唆されるか」の演出の段階がさらに行われるのであるから、合わせて本件発明の構成Bの「複数段階にわたって進行する・・・段階演出」に相当するといえる。
ここで、刊行物1発明はその実施形態として、上記【0178】に「特殊予告演出1における仮変動1回は、例外的に本変動1回に相当する」と記載されるとおりの、例えば図36(d)の場合に該当するような1回の仮変動、すなわち「擬似的な図柄変動」のみ有する演出形態が含まれるが、この場合も、前記のとおり、該1回の仮変動と、その後に行われる「味方キャラクタが勝利し、「大当り1」が確定表示されるか、味方キャラクタが敗北し、外れが示唆されるか」の演出とをあわせて、複数の段階を有するといえるから、本件発明の構成Bの、「特定段階」を含む「複数段階にわたって進行する・・・段階演出」に相当するといえる。
また、前記構成bの「大当たり1」は前記構成Bの「遊技者にとって有利な有利状態」に相当し、前記構成bの「味方キャラクタが勝利し、「大当り1」が確定表示されるか、味方キャラクタが敗北し、外れが示唆されるか」の段階の演出は、この演出によって「大当り1」の当選を確定的に知ることができるのであるから、本件発明の「遊技者にとって有利な有利状態へ移行されることを報知する」演出に相当するとともに、該演出の段階は構成Bの「特定段階」に相当するといえる。
以上のとおりであるから、前記構成bの「1回の特別図柄の変動時間において擬似的に複数回の図柄変動が含まれるようにみせる演出である擬似連続変動演出ごとに、敵キャラクタを登場させ、味方キャラクタと対戦させる「SPバトル」を表示させる「SP予告」演出を実行し、該「SP予告」演出は、「SPバトル」の開始から「カットイン」の表示を経てシャッターにて画面が一旦閉じられる演出がなされ、その後シャッターが開かれるとともに「SPバトル」が振り出しに戻され、再度「カットイン」が表示されるタイミングを経た後、味方キャラクタが勝利し、「大当り1」が確定表示されるか、味方キャラクタが敗北し、外れが示唆されるか、までの演出を実行するものである、サブ基板104の機能」は、前記構成Bの「複数段階にわたって進行するとともに、特定段階へ進行したときに遊技者にとって有利な有利状態へ移行されることを報知する段階演出を実行する段階演出実行手段」の機能に相当する。

(3)刊行物1発明の構成cの「1回目の「SPバトル」」、「2回目や3回目の「SPバトル」にまで発展する可能性を示唆する」、「種々の属性や表示形態の「カットイン」を表示する「カットイン予告」の演出」は、それぞれ、本件発明の構成Cの「前記段階演出における1の段階」、「後の段階へ進行することを示唆する」、「第1示唆演出」に相当するといえる。
よって、前記構成cの「1回目の「SPバトル」が2回目や3回目の「SPバトル」にまで発展する可能性を示唆する種々の属性や表示形態の「カットイン」を表示する「カットイン予告」の演出を行う、サブ基板104の機能」は、前記構成Cの「前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行することを示唆する第1示唆演出を実行する第1示唆演出実行手段」の機能に相当する。

(4)刊行物1発明の構成dの「1回目の「SPバトル1」において実行された場合に、「SPバトル2」や「SPバトル3」へ発展する可能性があることを示唆」すること、及び「該発展する可能性がないことを確定的に示唆する「SPバトル」の演出、または、1回目から2回目の「SPバトル」にかけての切り替わりパターンによって3回目の「SPバトル」への発展があること、またはないことを確定的に示唆する」ことは、いずれも本件発明の構成Dの「前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行することを示唆する」ことに相当するといえる。
また、前記構成dの「「SPバトル」の演出」は前記構成Dの「第2示唆演出」に相当する。
よって、前記構成dの「1回目の「SPバトル1」において実行された場合に、「SPバトル2」や「SPバトル3」へ発展する可能性があることを示唆し、または該発展する可能性がないことを確定的に示唆する「SPバトル」の演出、または、1回目から2回目の「SPバトル」にかけての切り替わりパターンによって3回目の「SPバトル」への発展があること、またはないことを確定的に示唆する「SPバトル」の演出、を実行する、サブ基板104の機能」は、前記構成Dの「前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行することを示唆する第2示唆演出を実行する第2示唆演出実行手段」の機能に相当する。

(5)刊行物1発明の構成eの「SP予告演出」は、同構成bで特定されるとおり「1回の特別図柄の変動時間において擬似的に複数回の図柄変動が含まれるようにみせる演出である擬似連続変動演出ごとに、敵キャラクタを登場させ、味方キャラクタと対戦させる「SPバトル」を表示させる」演出であるから、それ自体、各回の擬似的な図柄変動を単位とする複数の段階を備えるものであるので、本件発明の構成Eの「段階演出」に含まれる複数の段階の演出に対応するとともに、前記「擬似的に複数回の図柄変動」に沿って前記複数の段階の演出が進行することは、前記構成Eの「段階演出において段階が進行する」ことに相当するといえる。
また、前記構成eの「1の「SPバトル」の後で次の「SPバトル」が振り出しに戻されて開始するまでの間」、「シャッターにて画面が一旦閉じられる演出」はそれぞれ、前記構成Eの「1の段階と後の段階との間」、「区切り演出」に相当するといえる。
また、前記構成eでの、「シャッターにて画面が一旦閉じられる演出」のあとに「次のSPバトルが振り出しに戻されて開始する」ことは、前記構成Eの「区切り演出を実行してから段階を進行させ」ることに相当する。
よって、前記構成eの「SP予告演出において、1の「SPバトル」の後で次の「SPバトル」が振り出しに戻されて開始するまでの間に、シャッターにて画面が一旦閉じられる演出を行」うことは、前記構成Eの「前記段階演出において段階が進行するときに、1の段階と後の段階との間で区切り演出を実行してから段階を進行させ」ることに相当する。

(6)刊行物1発明の構成fの「「SPバトル」の1回目?3回目のそれぞれ」、「「カットイン予告」における「カットイン」の図柄を「SPバトル」に重畳して表示することが可能」であることは、それぞれ、本件発明の構成Fの「前記段階演出における1の段階」、「前記第1示唆演出実行手段が実行する第1示唆演出と、前記第2示唆演出実行手段が実行する前記第2示唆演出とを組み合わせて実行可能」であること、に相当するといえる。
よって、前記構成fの「「SPバトル」の1回目?3回目のそれぞれにおいて、「カットイン予告」における「カットイン」の図柄を「SPバトル」に重畳して表示することが可能」であることは、前記構成Fの「前記段階演出における1の段階において、前記第1示唆演出実行手段が実行する第1示唆演出と、前記第2示唆演出実行手段が実行する前記第2示唆演出とを組み合わせて実行可能」であることに相当する。

(7)刊行物1発明の構成gの「「SP予告」の1回目の「SPバトル1」」は、本件発明の構成Gの「前記段階演出における1の段階」に相当するといえる。
一方、前記構成gの「「SPバトル」が3回目の「SPバトル3」まで発展することがないこと」とは、「SPバトル3」まで発展する割合が0%であることであり、「「SPバトル3」まで発展する可能性がある」ことは、前記割合が0%よりも大きいことであるから、これらの間で「「SPバトル」が3回目の「SPバトル3」まで発展する」割合は相違する。
また、「SPバトルγ」と「SPバトルα」または「SPバトルβ」とは相互に演出の態様が異なるといえる。
よって、前記構成gの「「SPバトル」が3回目の「SPバトル3」まで発展することがないことが確定する「SPバトルγ」、並びに、「SPバトル3」まで発展する可能性がある「SPバトルα」または「SPバトルβ」が実行され」ることは、前記構成Gの「前記第2示唆演出は後の段階へ進行する割合が異なる複数の態様で実行可能」であることに相当するといえる。
以上のとおりであるから、前記構成gの「「SP予告」の1回目の「SPバトル1」において、「SPバトル」が3回目の「SPバトル3」まで発展することがないことが確定する「SPバトルγ」、並びに、「SPバトル3」まで発展する可能性がある「SPバトルα」または「SPバトルβ」が実行され」ることは、前記構成Gの「前記段階演出における1の段階において、前記第2示唆演出は後の段階へ進行する割合が異なる複数の態様で実行可能であ」ることに相当する。

(8)刊行物1発明の構成hの「「SP予告」の種類」は本件発明の構成Hの「第2示唆演出の実行態様」に相当する。
また、構成hの「カットイン」は上記(3)で認定したとおり本件発明の「第1示唆演出」に相当する「カットイン予告」の演出であるから、その「属性がいずれであるかや、その変化形態がいずれであるかが異なる出現割合となる」ことは、前記構成Hの「異なる割合で前記第1示唆演出を実行」することに相当するといえる。
よって、前記構成hの「サブ基板104は、「SP予告」の種類ごとに、「カットイン」の属性がいずれであるかや、その変化形態がいずれであるかが異なる出現割合となるように「カットイン予告」を実行」することは、前記構成Hの「前記第1示唆演出実行手段は、前記第2示唆演出の実行態様に応じて異なる割合で前記第1示唆演出を実行」することに相当する。

(9)刊行物1発明の構成iの「カットイン」は上記(3)で認定したとおり本件発明の「第1示唆演出」に相当する「カットイン予告」の演出であるから、該構成iの「「SPバトル」が2回目の「SPバトル2」、または3回目の「SPバトル3」まで発展する演出パターンにおいて、「カットイン」が実行される演出パターン」は、本件発明の構成Iの「前記第1示唆演出が実行されて前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行する」演出パターンに相当し、前記構成iの「「SPバトル」が2回目の「SPバトル2」、または3回目の「SPバトル3」まで発展する演出パターンにおいて、・・・「カットイン」が表示されずに「SPバトル」が「SPバトル1」から「SPバトル2」へと、または「SPバトル2」から「SPバトル3」へと発展する演出パターン」は、前記構成Iの「前記第1示唆演出が実行されずに前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行する」演出パターンに相当するといえる。
よって、前記構成iの「「SPバトル」が2回目の「SPバトル2」、または3回目の「SPバトル3」まで発展する演出パターンにおいて、「カットイン」が実行される演出パターンと、「カットイン」が表示されずに「SPバトル」が「SPバトル1」から「SPバトル2」へと、または「SPバトル2」から「SPバトル3」へと発展する演出パターンとが設定される」ことは、前記構成Iの「前記第1示唆演出が実行されて前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行するときと、前記第1示唆演出が実行されずに前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行するときとがある」ことに相当する。

(10)刊行物1発明の構成jの「SPバトル」の演出、「味方キャラクタが勝利し、「大当り1」が確定表示されるか、味方キャラクタが敗北し、外れが示唆されるかの演出」の段階、が、それぞれ、本件発明の構成Jの「第2示唆演出」、「特定段階」に相当することは、それぞれ、上記(4)、(2)で説示したとおりである。
また、前記構成jの「大当たり遊技状態」は前記構成Jの「有利度の高い有利状態」に相当し、前記構成jの「「SPバトル」に」設けられる「SPバトルα,β,γの3種類」のそれぞれは前記構成Jの「第2示唆演出の態様」に相当する。
そして、以上をふまえて、前記構成jの「味方キャラクタが勝利し、大当り1が確定表示される演出が実行された後大当たり遊技状態に移行する大当り期待度」は、前記構成Jの「前記特定段階へ進行したときに有利度の高い有利状態に移行する割合」に相当するといえる。
さらに、前記構成jの「大当り期待度は、SPバトルα<SPバトルβ<SPバトルγの順に高期待度となる」ことは、「SPバトルα,β,γの3種類」の何れが実行されるかによって、大当り遊技が実行される期待度、すなわち割合が異なることにほかならないから、前記構成Jの「第2示唆演出の態様により・・・有利度の高い有利状態に移行する割合が異なる」ことに相当するといえる。
以上のとおりであるから、前記構成jの「「SPバトル」にはSPバトルα,β,γの3種類が設けられ、「味方キャラクタが勝利し、「大当り1」が確定表示されるか、味方キャラクタが敗北し、外れが示唆されるかの演出」の段階において、味方キャラクタが勝利し、大当り1が確定表示される演出が実行された後大当たり遊技状態に移行する大当り期待度は、SPバトルα<SPバトルβ<SPバトルγの順に高期待度となるよう設定される」ことは、前記構成Jの「前記第2示唆演出の態様により、前記特定段階へ進行したときに有利度の高い有利状態に移行する割合が異なる」ことに相当する。

(11)刊行物1発明の構成kの「弾球遊技機」は、本件発明の構成Kの「遊技機」に相当する。

(12)上記(1)?(11)によれば、本件発明と刊行物1発明とは、下記の点で一致し、両者の間に相違点はない。

「A 遊技が可能な遊技機であって、
B 複数段階にわたって進行するとともに、特定段階へ進行したときに遊技者にとって有利な有利状態へ移行されることを報知する段階演出を実行する段階演出実行手段と、
C 前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行することを示唆する第1示唆演出を実行する第1示唆演出実行手段と、
D 前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行することを示唆する第2示唆演出を実行する第2示唆演出実行手段と、を備え、
E 前記段階演出において段階が進行するときに、1の段階と後の段階との間で区切り演出を実行してから段階を進行させ、
F 前記段階演出における1の段階において、前記第1示唆演出実行手段が実行する第1示唆演出と、前記第2示唆演出実行手段が実行する前記第2示唆演出とを組み合わせて実行可能であり、
G 前記段階演出における1の段階において、前記第2示唆演出は後の段階へ進行する割合が異なる複数の態様で実行可能であり、
H 前記第1示唆演出実行手段は、前記第2示唆演出の実行態様に応じて異なる割合で前記第1示唆演出を実行し、
I 前記第1示唆演出が実行されて前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行するときと、前記第1示唆演出が実行されずに前記段階演出における1の段階から後の段階へ進行するときとがあり、
J 前記第2示唆演出の態様により、前記特定段階へ進行したときに有利度の高い有利状態に移行する割合が異なる、
K ことを特徴とする遊技機。」

よって、本件発明は刊行物1発明と同一であるから、本件発明は特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、仮に両発明の間に相違点が存在するとしても微差であり、当業者が容易に想到し得た程度のものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

2.請求人の主張について
(1)請求人の主張
請求人は平成30年3月8日付けの意見書において、上記刊行物1(意見書においては「引用文献1」)に記載された発明に対する本件発明の新規性進歩性に関し、下記のとおり主張している。

「補正後の本願請求項1に係る発明は、下記(特徴A)及び(特徴B)を有しております。
(特徴A):段階演出における1の段階において、第2示唆演出は後の段階へ進行する割合が異なる複数の態様で実行可能であり、第2示唆演出の実行態様に応じて異なる割合で第1示唆演出を実行すること
(特徴B):第1示唆演出が実行されて段階演出における1の段階から後の段階へ進行するときと、第1示唆演出が実行されずに段階演出における1の段階から後の段階へ進行するときとがあること
ここで、引用文献1について、拒絶理由通知書においては、『・・・引用発明1における「大当りの期待度の高い赤色や金色のカットイン」は、本願の請求項1に係る発明における「1の段階から後の段階へ進行することを示唆する第1示唆演出」に相当する。・・・引用発明1における「擬似的な停止表示」は、本願の請求項1に係る発明における「第2示唆演出」に相当する。』とされております。つまり、引用文献1における「カットイン」が「第1示唆演出」に、「仮停止」が「第2示唆演出」に相当する、とされております。
まず、引用文献1においては、第2示唆演出に相当するとされた「仮停止」は、上記(特徴A)のように、「後の段階へ進行する割合が異なる複数の態様で実行可能」なものではありません。したがって、引用文献1には、少なくとも(特徴A)についての開示はありません。
また、上記のご認定とは逆に、「カットイン」が「第2示唆演出」に、「仮停止」が「第1示唆演出」に相当するとした場合も考えてみます。引用文献1においては、図31等を参照して分かるように、「仮停止」が実行されずにSP予告演出におけるSPバトルが後の段階に進行することは開示されておりません。つまり、上記(特徴B)の「第1示唆演出が実行されずに段階演出における1の段階から後の段階へ進行するとき」がある、という事項は、引用文献1に開示されておりません。したがって、このように考えた場合は、引用文献1には、少なくとも(特徴B)についての開示が無いことになります。
したがって、引用文献1に記載の発明は、(特徴A)及び(特徴B)の双方を有する補正後の本願請求項1に係る発明とは異なるものです。このように、補正後の本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載の発明に対して、新規性及び進歩性を有しております。」

(2)当審の見解
上記(1)における「特徴A」は本件発明の構成G、Hに、「特徴B」は同構成Iに対応する。
そして、該各構成に相当する構成がいずれも刊行物1(意見書に於ける「引用文献1」)に記載されていることは、上記1.(7)、(8)、(9)、(12)で説示したとおりである。
よって、上記請求人の主張は採用することができない。

3.むすび
以上のとおり、本件発明は、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、仮に両発明の間に相違点が存在するとしても微差であり、当業者が容易に想到し得た程度のものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-05-08 
結審通知日 2018-05-15 
審決日 2018-05-28 
出願番号 特願2014-147986(P2014-147986)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 美佐  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 樋口 宗彦
櫻井 茂樹
発明の名称 遊技機  
代理人 木村 満  

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