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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1342592
審判番号 不服2017-6647  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-09 
確定日 2018-07-26 
事件の表示 特願2012-264216「回路付サスペンション基板」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月12日出願公開、特開2014-110066〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月3日の出願であって、平成28年8月4日付けで拒絶理由が通知され、同年10月6日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年2月9日付けで拒絶査定されたところ、同年5月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-3に係る発明は、平成28年10月6日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
磁気ヘッドを搭載するスライダと、本体および前記本体から突出するように設けられる光源を備える光源装置とが設けられるスライダ/光源ユニットを搭載するための回路付サスペンション基板であって、
前記回路付サスペンション基板には、前記光源を受け入れ可能な受入部が形成されており、
前記回路付サスペンション基板は、前記スライダ/光源ユニットが搭載されるときに、前記光源を前記受入部に案内するための案内面を備え、
前記回路付サスペンション基板は、長手方向に延びる金属支持基板と、前記金属支持基板の厚み方向一方側に積層されるベース絶縁層とを備え、
前記金属支持基板には、支持開口部が形成されており、
前記ベース絶縁層には、前記支持開口部と前記厚み方向において部分的に重複するベース開口部と、前記ベース開口部の前記長手方向一端部から、前記長手方向一方側に向かって突出する突出開口とが形成されており、
前記受入部は、前記突出開口によって区画され、
前記案内面は、前記突出開口の端面から形成されていることを特徴とする、回路付サスペンション基板。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」として、請求項1について、以下の引用文献1及び2が引用された。

1.特開2012-104211号公報
2.特開2012-018747号公報

第4 引用例の記載事項及び引用発明等
1 引用例1の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、特開2012-104211号公報(平成24年5月31日公開。以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審において付与。)。
(1)「【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子素子を搭載した回路付サスペンション基板が知られている。電子素子としては、例えば、光アシスト法により記録密度の向上を図るための発光素子、例えば、磁気ヘッドの位置精度などを検査するための検査用素子などが知られている。
【0003】
例えば、光アシスト法を採用すべく、金属支持基板と、金属支持基板の表面に実装される発光素子およびスライダとを備える回路付サスペンション基板において、発光素子と電気的に接続される素子側端子部と、スライダに搭載される磁気ヘッドと電気的に接続されるヘッド側接続端子部とを、金属支持基板の同一表面に形成することが知られている。
【0004】
しかし、そのような構成では、発光素子とスライダとの両方を、金属支持基板の同一表面に実装するので、素子側端子部とヘッド側接続端子部とを、高い密度で配置しなければならず、回路付サスペンション基板のコンパクト化が困難となる。
【0005】
そこで、例えば、回路付サスペンション基板の表面に設けられるヘッド側端子と、回路付サスペンション基板の裏面に設けられる素子側端子とを含む導体パターンを備え、ヘッド側端子に電気的に接続される磁気ヘッドを搭載するスライダと、素子側端子に電気的に接続される発光素子とを搭載する回路付サスペンション基板が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。」

(2)「【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の回路付サスペンション基板の第1実施形態の平面図、図2は、図1に示す回路付サスペンション基板の底面図、図3は、図1に示す回路付サスペンション基板のA-A線に沿う断面図を示す。
(中略)
【0030】
スライダ搭載領域9は、スライダ39(後述)を実装するための領域であって、ジンバル部5の後側において、幅方向に長手の平面視略矩形状に区画されている。
【0031】
また、回路付サスペンション基板1は、図1および図3に示すように、金属支持基板11と、金属支持基板11の表面に積層される第1絶縁層としての第1ベース絶縁層12と、第1ベース絶縁層12の表面に積層される第1導体パターン13と、第1ベース絶縁層12の表面に、第1導体パターン13を被覆するように積層される第1カバー絶縁層14とを備えている。
【0032】
金属支持基板11は、長手方向に延び、上記した回路付サスペンション基板1の外形形状と同じ外形形状に形成されている。
【0033】
また、金属支持基板11には、電子素子搭載空間としての挿通開口部36と、導通開口部29とが形成されている。
【0034】
挿通開口部36は、スライダ搭載領域9の幅方向中央において、金属支持基板11を厚み方向に連通するように、平面視略矩形状に貫通形成されている。挿通開口部36は、発光素子40(後述)を受け入れ可能に形成されている。
【0035】
導通開口部29は、配線折返部6の幅方向略中央において、幅方向に間隔を隔てて複数(2つ)直列配置され、金属支持基板11を厚み方向に貫通する平面視略円形状に形成されている。
【0036】
第1ベース絶縁層12は、第1導体パターン13が形成される部分に対応するように形成されている。
【0037】
詳しくは、第1ベース絶縁層12は、挿通開口部36の先側半分を被覆し、挿通開口部36の後側半分を露出するように、配線部2、実装部3のアウトリガー部8の全面に形成されている。つまり、第1ベース絶縁層12の端縁47(後端縁)は、ジンバル部5において、厚み方向に投影したときに、挿通開口部36の先端縁よりも後側へ突出されている。なお、第1ベース絶縁層12から露出される挿通開口部36は、発光素子40(後述)を受け入れ可能に形成されている。」

(3)「【0038】
また、第1ベース絶縁層12は、配線折返部6において、金属支持基板11の各導通開口部29の周端縁を被覆している。これにより、第1ベース絶縁層12には、各導通開口部29に対応する複数(2つ)の第1ベース貫通穴34が、導通開口部29と中心を共有する平面視略円形状に形成されている。
【0039】
第1導体パターン13は、磁気ヘッド38(後述)に接続される磁気ヘッド側パターン61と、発光素子40(後述)に接続される電子素子側パターン62とを備えている。
(中略)
【0046】
電子素子側パターン62は、供給側端子23と、表側導通部27と、供給側端子23および表側導通部27を接続するための表側電源配線25とを一体的に備えている。
(中略)
【0051】
また、回路付サスペンション基板1は、図2および図3に示すように、金属支持基板11の裏面に積層される第2絶縁層としての第2ベース絶縁層18と、第2ベース絶縁層18の裏面に積層される第2導体パターン19と、第2ベース絶縁層18の裏面に、第2導体パターン19を被覆するように積層される第2カバー絶縁層20とを備えている。
【0052】
第2ベース絶縁層18は、第2導体パターン19が形成される部分に対応して形成されている。
【0053】
詳しくは、第2ベース絶縁層18は、実装部3の幅方向略中央(ジンバル部5)において、その後端縁が、厚み方向に投影したときに第1ベース絶縁層12の端縁47(後端縁)に重なるように、形成されている。つまり、第2ベース絶縁層18の端縁45(後端縁)は、ジンバル部5において、厚み方向に投影したときに、挿通開口部36の先端縁よりも後側へ突出されている。
【0054】
また、第2ベース絶縁層18は、配線折返部6において、金属支持基板11の各導通開口部29の周端縁を被覆している。これにより、第2ベース絶縁層18には、各導通開口部29に対応する複数(2つ)の第2ベース貫通穴35が、導通開口部29と中心を共有する平面視略円形状に形成されている。
【0055】
第2導体パターン19は、裏側導通部28、第2端子としての素子側端子22、および、裏側導通部28と素子側端子22とを接続するための裏側電源配線26を一体的に備えている。
【0056】
裏側導通部28は、各第2ベース貫通穴35にそれぞれ充填されるように、複数(2つ)形成されている。
【0057】
これにより、表側導通部27と裏側導通部28とは、第1ベース貫通穴34および第2ベース貫通穴35を介して、直接接触され、電気的に接続されている。
【0058】
素子側端子22は、挿通開口部36に臨むように、第2ベース絶縁層18の後端部に配置されており、各裏側導通部28に対応するように、幅方向に互いに間隔を隔てて複数(2つ)設けられている。また、素子側端子22の端縁46(後端縁)は、厚み方向に投影したときにジンバル部5における第2ベース絶縁層18の端縁45(後端縁)と略面一になるように、配置されている。」

(4)「【0061】
また、この回路付サスペンション基板1には、図3に示すように、スライダ39と、電子素子としての発光素子40とが実装される。
【0062】
スライダ39は、回路付サスペンション基板1とともに、ハードディスクドライブ(図示せず)のロードビーム(図示せず)の先端に実装され、ハードディスクドライブ(図示せず)が駆動されたときには、磁気ディスク(図示せず)に対して、相対的に走行しながら、微小間隔を隔てて浮上される。
【0063】
スライダ39には、磁気ヘッド38と、光導波路51と、近接場光発生部材54とが搭載されている。
【0064】
磁気ヘッド38は、スライダ39の先端部に搭載されている。磁気ヘッド38は、ハードディスクドライブ(図示せず)が駆動されたときには、磁気ディスク(図示せず)に記録された情報の読み取り、または、磁気ディスク(図示せず)への情報の書き込みを実施する。また、磁気ヘッド38の先端部には、回路付サスペンション基板1のヘッド側端子16に対応するように、複数(6つ)の磁気ヘッド端子43が設けられている。
【0065】
光導波路51は、磁気ヘッド38の後側において、スライダ39を厚み方向に貫通するように設けられ、発光素子40から出射される光を近接場光発生部材54へ伝送する。
【0066】
近接場光発生部材54は、光導波路51の上端に連続されるように、スライダ39の表面に搭載されている。近接場光発生部材54は、光導波路51から入射される光を近接場光に変換する。近接場光は、磁気ディスク(図示せず)に照射されると、磁気ディスク(図示せず)の微小な領域を加熱する。なお、近接場光発生部材54は、金属散乱体や開口などからなり、例えば、特開2007-280572号公報、特開2007-052918号公報、特開2007-207349号公報、特開2008-130106号公報などに記載される、公知の近接場光発生装置が採用される。
【0067】
発光素子40は、光導波路51に光を入射させるための光源であって、例えば、電気エネルギーを光エネルギーに変換して、高エネルギーの光を出射する。
【0068】
発光素子40は、光導波路51に接続されるように、スライダ39の裏面に接続されている。また、発光素子40の裏面側端部には、先端側において、回路付サスペンション基板1の素子側端子22に対応するように、複数(2つ)の発光素子端子44が設けられている。発光素子40は、光導波路51および近接場光発生部材54とともに発光ユニットを構成する。
【0069】
そして、発光ユニットは、発光素子40が挿通開口部36に挿通されるとともに、スライダ39が挿通開口部36を表面側から被覆するように、スライダ搭載領域9の周縁部に設けられる接着剤層42を介して、スライダ搭載領域9に搭載されている。」

図1乃至図3は以下のとおりである。
図1


図2


図3


上記(1)?(4)の記載及び図面、並びに当業者の技術常識を考慮すると、

a 上記(1)の記載によれば、引用例1は、光アシスト法により記録密度の向上を図るための発光素子を搭載した回路付サスペンション基板に関する。

b 上記(2)及び(4)の記載によれば、スライダ39には、磁気ヘッド38、光導波路51及び近接場光発生部材54が搭載される。また、発光素子40は、光導波路51に光を入射させるための光源であって、光導波路51に接続されるようにスライダ39の裏面に接続され、光導波路51および近接場光発生部材54とともに発光ユニットを構成する。
そして、回路付サスペンション基板1のスライダ搭載領域9は、スライダ39を実装するための領域であって、発光素子40が挿通開口部36に挿通されるとともに、スライダ39が挿通開口部36を表面側から被覆するように、スライダ搭載領域9に搭載される。
そうすると、回路付サスペンション基板1は、「磁気ヘッド38、光導波路51及び近接場光発生部材54が搭載されるスライダ39と、光導波路51に光を入射させるための光源であって光導波路51に接続されるようにスライダ39の裏面に接続されて光導波路51及び近接場光発生部材54とともに発光ユニットを構成する発光素子40と、を搭載するスライダ搭載領域9を有する」といえ、「発光ユニットがスライダ搭載領域9に搭載されるときに、スライダ39は挿通開口部36を表面側から被覆し、発光素子40は挿通開口部36に挿通される」といえる。

c 上記(2)の記載によれば、回路付サスペンション基板1は、長手方向に延びる金属支持基板11と、金属支持基板11の表面に積層される第1絶縁層としての第1ベース絶縁層12とを備える。そして、金属支持基板11には、挿通開口部36と、導通開口部29とが形成されている。
また、図1も併せて参照すれば、第1ベース絶縁層12には、挿通開口部36の先側半分を被覆し、挿通開口部36の後側半分を露出する開口部が形成されていることが認められる。そして、第1ベース絶縁層12の端縁47(後端縁)は、厚み方向に投影したときに、挿通開口部36の先端縁よりも後側へ突出され、第1ベース絶縁層12から露出される挿通開口部36は、発光素子40を受け入れ可能に形成されている。
そうすると、「回路付サスペンション基板1は、長手方向に延びる金属支持基板11と、金属支持基板11の表面に積層される第1絶縁層としての第1ベース絶縁層12とを備え」、「金属支持基板11には、挿通開口部36と、導通開口部29とが形成されており」、「第1ベース絶縁層12には、挿通開口部36の先側半分を被覆し、挿通開口部36の後側半分を露出する開口部が形成されており」、「第1ベース絶縁層12から露出される挿通開口部36は、発光素子40を受け入れ可能に形成されて」いるといえる。

d 上記(2)及び(3)の記載並びに図2及び図3によれば、第1導体パターン13は、発光素子40に接続される電子素子側パターン62を備え、電子素子側パターン62は、各導通開口部29に対応する第1ベース貫通穴34および第2ベース貫通穴35を介して金属支持基板11の裏面に形成された第2導体パターン19の素子側端子22により発光素子40に接続される。
また、回路付サスペンション基板1は、金属支持基板11の裏面の第2導体パターン19が形成される部分に対応して形成される第2ベース絶縁層18を備え、第2ベース絶縁層18は、その後端縁が、厚み方向に投影したときに第1ベース絶縁層12の端縁47(後端縁)に重なるように形成され、第2ベース絶縁層18の端縁45(後端縁)は、厚み方向に投影したときに、挿通開口部36の先端縁よりも後側へ突出されている。
そうすると、「回路付サスペンション基板1は、電子素子側パターン62を導通開口部29を介して金属支持基板11の裏面から発光素子40に接続するために、金属支持基板11の裏面に形成された素子側端子22を有する第2導体パターン19と、
金属支持基板11の裏面の第2導体パターン19が形成される部分に対応して形成される第2ベース絶縁層18とを備え、
第1ベース絶縁層12及び第2ベース絶縁層18は、厚み方向に投影したときに、その後端縁(端縁47及び端縁45)が重なるように形成され、かつ、挿通開口部36の先端縁よりも後側へ突出されている」といえる。

上記a?dを総合すると、引用例1には、光アシスト法により記録密度の向上を図るための発光素子を搭載した回路付サスペンション基板に関する次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「磁気ヘッド38、光導波路51及び近接場光発生部材54が搭載されるスライダ39と、光導波路51に光を入射させるための光源であって光導波路51に接続されるようにスライダ39の裏面に接続されて光導波路51及び近接場光発生部材54とともに発光ユニットを構成する発光素子40と、を搭載するスライダ搭載領域9を有する回路付サスペンション基板1であって、
回路付サスペンション基板1は、長手方向に延びる金属支持基板11と、金属支持基板11の表面に積層される第1絶縁層としての第1ベース絶縁層12とを備え、
金属支持基板11には、挿通開口部36と、導通開口部29とが形成されており、
第1ベース絶縁層12には、挿通開口部36の先側半分を被覆し、挿通開口部36の後側半分を露出する開口部が形成されており、
第1ベース絶縁層12から露出される挿通開口部36は、発光素子40を受け入れ可能に形成されており、
発光ユニットがスライダ搭載領域9に搭載されるときに、スライダ39は挿通開口部36を表面側から被覆し、発光素子40は挿通開口部36に挿通され、
さらに、回路付サスペンション基板1は、電子素子側パターン62を導通開口部29を介して金属支持基板11の裏面から発光素子40に接続するために、金属支持基板11の裏面に形成された素子側端子22を有する第2導体パターン19と、
金属支持基板11の裏面の第2導体パターン19が形成される部分に対応して形成される第2ベース絶縁層18とを備え、
第1ベース絶縁層12及び第2ベース絶縁層18は、厚み方向に投影したときに、その後端縁(端縁47及び端縁45)が重なるように形成され、かつ、挿通開口部36の先端縁よりも後側へ突出されている、
回路付サスペンション基板1。」

2 引用例2の記載事項及び引用例2に記載された技術事項
原査定の拒絶の理由で引用された、特開2012-018747号公報(平成24年1月26日公開。以下「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審において付与。)。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アシスト磁気記録に用いる光を放射する光源を備えた光源ユニットと、スライダとを接続して構成される熱アシスト磁気記録ヘッドに関する。また、このヘッドを備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)に関し、さらにこのHGAを備えた磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットの爆発的な普及に伴い、サーバ、情報端末等において、従来とは桁違いの大容量を有する多量のデータが保存され利用され始めており、この傾向は、今後も加速度的に高まることが予測されている。そのような状況下で、大容量ストレージとしての磁気ディスク装置に代表される磁気記録装置に対する需要は、ますます拡大し、その高記録密度化への要請も、日を追ってエスカレートしている。
【0003】
この磁気記録技術において、さらなる高記録密度を達成するためには、磁気ヘッドが磁気記録媒体により微小な記録ビットを書き込むことが不可欠となる。現在、このより微小な記録ビットを安定して形成するために、媒体面に垂直な磁化成分を記録ビットとする垂直磁気記録技術が実用化され、さらに、磁化の熱安定性がより高い磁気記録媒体を使用可能とする熱アシスト磁気記録技術の開発が精力的に進められている。
【0004】
この熱アシスト磁気記録技術においては、記録ビットを形成する磁化がより安定するように磁気異方性エネルギーKUの大きな磁性材料で形成された磁気記録媒体を用いる一方で、この磁気記録媒体の書き込むべき部分を加熱することによってこの部分の異方性磁界を低下させ、その直後に書き込み磁界を印加して書き込みを行う。実際には、磁気記録媒体に近接場光等の光を照射することによって磁気記録媒体を加熱する方法が一般的である。この方法においては、十分に高い強度の光を安定的に所望の位置に供給するために、高出力の光源を磁気ヘッド内の何処に且つどのように設置するかが重要なポイントとなる。」

(2)「 【0025】
図1は、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの一実施形態を示す斜視図である。
【0026】
図1によれば、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、光源としてのレーザダイオード40及び光検出部としてのフォトダイオード部55を備えた光源ユニット23と、光学系31を備えたスライダ22とが、位置を合わせられ接続されることによって構成されている。
【0027】
ここで、スライダ22は、適切な浮上量を得るように加工された媒体対向面である浮上面(ABS)2200を有するスライダ基板220と、ABS2200に垂直であってABS2200と隣り合う集積面2202上に形成された、光学系31を含むヘッド素子部221とを備えている。一方、光源ユニット23は、接着面2300を有するユニット基板230と、接着面2300に垂直であって接着面2300と隣り合う光源設置面2302に設けられた光源としてのレーザダイオード40と、ユニット基板230中に形成された、レーザダイオード40の光出力を計測、監視(モニタリング)するフォトダイオード部55とを備えている。」

(3)「【0092】
図7によれば、HGA17において、サスペンション20は、ロードビーム200と、このロードビーム200に固着されており弾性を有するフレクシャ201と、ロードビーム200の基部に設けられたベースプレート202と、フレクシャ201の磁気ディスク10に対向する面上に設けられた配線部材2030と、フレクシャ201の磁気ディスク10とは反対側の面上に設けられた配線部材2031とを備えている。配線部材2030及び2031の各々は、リード導体及びその両端に電気的に接続された接続パッドを備えている。熱アシスト磁気記録ヘッド21は、各磁気ディスク10の表面に対して所定の間隔(浮上量)をもって対向するように、サスペンション20の先端部であってフレクシャ201に固着されている。
【0093】
このフレクシャ201には、開口2010が設けられており、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、その一部である光源ユニット23がこの開口2010を通してフレクシャ201の反対側に出るように接着されている。また、配線部材2030の一端(接続パッド)は、スライダ22の端子電極370及び371にワイヤボンディング、SBB等の方法によって電気的に接続されている。さらに、配線部材2031の一端(接続パッド)は、光源ユニット23の第1及び第2の引き出し電極412及び413、引き出し部4101(光源引き出し電極層410)、並びに光源端子電極411に同じくワイヤボンディング、SBB等の方法によって電気的に接続されている。これらの電気的接続に関しては、次に図8を用いて説明する。なお、サスペンション20の構造も、以上に述べた構造に限定されるものではない。図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップが装着されていてもよい。
【0094】
図8は、本発明によるHGA17の一実施形態における、フレクシャ201と熱アシスト磁気記録ヘッド21との接続を概略的に示す斜視図である。同図においては、ヘッド21の磁気ディスク10表面に対向するABS2200が下側になって表示されている。
【0095】
図8によれば、熱アシスト磁気記録ヘッド21の背面2201とフレクシャ201とが、開口2010を通して光源ユニット23がフレクシャ201の反対側に突き出るように、接着されている。フレクシャ201は、ステンレス鋼等で形成された基板201aと、ポリイミド等で形成されており基板201aを被覆する被覆層201b及び201cとを備えている。また、被覆層201b上に、Cu等の導電材料から形成された配線部材2030が設けられており、さらに被覆層201c上に、同じくCu等の導電材料から形成された配線部材2031が設けられている。
【0096】
配線部材2030の接続パッド2030a?2030dは、MR素子33及び電磁変換素子34用の端子電極370及び371に、ワイヤボンディング、SBB等の方法によって電気的に接続されている。これにより、配線部材2030を介して、MR素子33及び電磁変換素子34を動作させることができる。また、配線部材2031の接続パッド2031a?2031dは、レーザダイオード40用の引き出し部4101及び光源端子電極411とフォトダイオード部55用の第1及び第2の引き出し電極412及び413とに、ワイヤボンディング、SBB等の方法によって電気的に接続されている。これにより、配線部材2031を介して、レーザダイオード40及びフォトダイオード部55を動作させることができる。」

図1及び図8は以下のとおりである。
図1


図8


a 上記(1)の記載によれば、熱アシスト磁気記録に用いる光を放射する光源を備えた光源ユニットと、スライダとを接続して構成される熱アシスト磁気記録ヘッドを備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)の背景技術として、さらなる高記録密度を達成し、磁化の熱安定性がより高い磁気記録媒体を使用可能とする熱アシスト磁気記録技術の開発が精力的に進められており、磁気記録媒体に近接場光等の光を照射することによって磁気記録媒体を加熱する方法では、十分に高い強度の光を安定的に所望の位置に供給するために、高出力の光源を磁気ヘッド内の何処に且つどのように設置するかが重要なポイントであったとしている。
よって、引用例2は、さらなる高記録密度を達成し、磁化の熱安定性がより高い磁気記録媒体を使用可能とする熱アシスト磁気記録技術において、磁気記録媒体に近接場光等の光を照射することによって磁気記録媒体を加熱する方法に用いられる熱アシスト磁気記録ヘッドに関する。

b 上記(2)の記載及び図1によれば、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、光源としてのレーザダイオード40及び光検出部としてのフォトダイオード部55を備えた光源ユニット23と、光学系31を備えたスライダ22とから構成される。また、スライダ22は、光学系31を含むヘッド素子部221を備え、光源ユニット23は、光源としてのレーザダイオード40と、ユニット基板230と、ユニット基板230中に形成されたフォトダイオード部55とを備える。そして、図1も参照すれば、光源としてのレーザダイオード40は、ユニット基板230から突出するように設けられていることが認められる。また、図8によれば、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、レーザダイオード40が、ユニット基板230から長手方向一方側に向って突出するようにフレクシャ201に搭載されることが認められる。
そうすると、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、「ヘッド素子部を備えるスライダと、ユニット基板及び前記ユニット基板から突出するように設けられる光源としてのレーザダイオードを備える光源ユニットとが設けられ、前記レーザダイオードが、前記ユニット基板から長手方向一方側に向って突出するようにフレクシャに搭載される熱アシスト磁気記録ヘッド」といえる。

よって、引用例2には、さらなる高記録密度を達成し、磁化の熱安定性がより高い磁気記録媒体を使用可能とする熱アシスト磁気記録技術における、磁気記録媒体に近接場光等の光を照射することによって磁気記録媒体を加熱する方法に用いる熱アシスト磁気記録ヘッドに関する、次の技術事項が記載されているといえる。

「ヘッド素子部を備えるスライダと、ユニット基板及び前記ユニット基板から突出するように設けられる光源としてのレーザダイオードを備える光源ユニットとが設けられた、前記レーザダイオードが、前記ユニット基板から長手方向一方側に向って突出するようにフレクシャに搭載される熱アシスト磁気記録ヘッド。」

3 本願出願当時の技術水準を示す周知技術
(1)引用例2
引用例2の記載事項については、上記2の(1)?(3)の記載、図1及び図8参照。

上記2の(1)?(3)の記載及び図面、並びに当業者の技術常識を考慮すると、

a 上記2のとおり、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、「ヘッド素子部を備えるスライダと、ユニット基板及び前記ユニット基板から突出するように設けられる光源としてのレーザダイオードを備える光源ユニットとが設けられた」「熱アシスト磁気記録ヘッド」であるから、「ヘッド素子部を備えるスライダ」、「ユニット基板」、「ユニット基板から突出するように設けられる光源としてのレーザダイオード」及び「光源ユニット」は、それぞれ「磁気ヘッドを搭載するスライダ」、「本体」、「本体から突出するように設けられる光源」、「光源装置」といえ、「スライダ」と「光源装置」とが設けられた」「熱アシスト磁気記録ヘッド」は、「磁気ヘッドを搭載するスライダと、本体及び前記本体から突出するように設けられる光源を備える光源装置とが設けられるスライダ/光源ユニット」といえる。

b 上記(3)の記載及び図8によれば、フレクシャ201は、ステンレス鋼等で形成された基板201aと、基板201aを被覆するポリイミド等で形成された被覆層201b及び201cとを備える。また、被覆層上に接続パッド2030a?d及び2031a?dを有する配線部材2030及び2031が設けられる。そして、接続パッド2031aは、ユニット基板230から長手方向に突出するように設けられたレーザダイオード40の光源端子電極411に接続され、接続パッド2031b?2031dは、ユニット基板230上に設けられたレーザダイオード40用の引き出し部4101並びにフォトダイオード部55用の第1及び第2の引き出し電極412及び413に接続される。
そして、熱アシスト磁気記録ヘッド21の背面2201とフレクシャ201とは、開口2010を通して光源ユニット23がフレクシャ201の反対側に突き出るように接着されるから、熱アシスト磁気記録ヘッド21が接着される上記フレクシャ201は、「スライダ/光源ユニットを搭載するための回路付サスペンション基板」といえる。
ここで、図1によれば、上記引き出し部4101及び上記第2の引き出し電極413と、上記第1の引き出し電極412とは、ユニット基板230上、レーザダイオード40を挟んで反対側に配置されていることが認められる。そして、図8によれば、平面視上、上記引き出し部4101並びに上記第1及び第2の引き出し電極412及び413が接続される接続パッド2031b?dの被覆層上の位置と、レーザダオード40の位置とが重なっていることからみて、平面視上、レーザダイオード40の手前及び奥には接続パッド2031b?dが配置された被覆層が存在することが認められる。
そうすると、ポリイミド等で形成された被覆層には、ユニット基板が配置される開口部分と、レーザダイオードの形状に合わせて該開口部分から長手方向に突出する突出開口部分とが形成されており、前記フレクシャのレーザダイオードが配置される位置は、前記突出開口部分によって区画されていると解することができるから、「スライダ/光源ユニットを搭載するための回路付サスペンション基板に、本体及び前記本体から突出するように設けられる光源の形状に合わせた開口を形成」しているといえる。
また、光源ユニットが上記開口を通してフレクシャ201の反対側に突き出るように接着されるときに、前記レーザダイオード40は、前記突出開口部分の端面を通過して所定の位置に配置されるから、「本体から突出するように設けられる光源を、当該光源の形状に合わせて形成された開口の所定の位置に受け入れる」といえる。

(2)米国特許出願公開第2011/0128827号明細書
米国特許出願公開第2011/0128827号明細書(2011年6月2日公開。以下、周知例1という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審において付与。)。

ア 「As shown in FIG.2, the thermally-assisted magnetic recording head 21 is constituted by joining a light source unit 23 including a laser diode 40 as a light source to a slider 22. The slider 22 includes a slider substrate 220 and a head element part 221 provided on the element-integration surface of the slider substrate 220. (中略)Further, the flexure 201 has an aperture 2010; the light source unit 23 protrudes from the aperture 2010 on the side opposite to the slider 22 in relation to the flexure 201.」(段落0056)
(当審訳:「図2に示したように、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、レーザダイオード40を備えた光源である光源ユニット23を接合するスライダ22とから構成されている。スライダ22は、スライダ基板220の集積面に設けられたスライダ基板220とヘッド素子部221を備えている。(中略)さらに、フレクシャ201は、開口部2010を有しており、光源ユニット23は、フレクシャ201との関係においてスライダ22とは反対側で開口部2010から突出している。」)

イ 「As shown in FIG.3, a thermally-assisted magnetic recording head 21 is constituted of the slider 22 and the light source unit 23 as described above. (中略) While, the light source unit 23 includes: a unit substrate 230 having an joining surface 2300, and formed of, for example, AlTiC (Al_(2)O_(3)-TiC); and a laser diode 40 as a light source provided on a source-installation surface 2302 that is perpendicular to and adjacent to the joining surface 2300.(以下、略)」(段落0062)
(当審訳:「図3に示すように、スライダ22と光源ユニット23とから構成される熱アシスト磁気記録ヘッド21が設けられている。(中略)光源ユニット23は、接合面2300を有し、例えば、アルティック(Al_(2)O_(3)-TiC)で形成されたユニット基板230と、接合面2300に垂直で隣接した光源設置面2302に設けられた光源としてのレーザダイオード40とを含む。(以下、略)」)

図2は、次のとおりである。


(3)国際公開第2012/114460号
国際公開第2012/114460号(2012年8月30公開。以下、周知例2という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審において付与。)。

ア 「[0023] これらの図において、ディスク1は回転可能に支持されており(図1を参照)、磁気ヘッド21を含むスライダ2は、ディスク1上で、流入端22から流出端23の方向に流れる空気の旋回流により、所定の間隔で浮上している(図4を参照)。熱アシスト磁気記録ヘッド21は、スライダ基板24であるマウント上に、薄膜プロセスにより、薄膜を積層して形成されている。この磁気ヘッド21には、記録磁極211、記録コイル212、導波路213、近接場光発生素子214、そして、再生素子と215が形成されている(図5を参照)。また、図5中の符号24はスライダ基板を示している。

[0024] 一方、サブマウント31上にLD(発光ダイオード)32が実装されている光源(LD)ユニット3は、スライダ2に搭載されている(図4を参照)。スライダ2はサスペンション4に支持されている。サスペンション4は、フレクシャ41とロードビーム42から成り、キャリッジアーム5により支持されており、キャリッジアーム5は、ピボット6を回転軸として揺動可能に支持されている。また、図1中の符号7は、ボイスコイルモータを示している。」

イ 「[0030] そして、図6にも示すように、サスペンション4のフレクシャ41とロードビーム42には、各々、開口部としての孔411、421が形成されており、当該孔411、421を貫通するようにLDユニット3を配置することで、サスペンション4と干渉することなくLDユニット3(31、32)を実装することが可能となる。なお、本実施例では、フレクシャ41とロードビーム42に設けられた開口部としては、各々に形成された孔411、421について説明したが、しかしながら、本発明はこれに限定されることなく、例えば、切り欠きであっても構わない。」

図3、図6は、以下のとおりである。
図3


図6


(4)周知技術
上記(1)?(3)によれば、本願出願当時の技術水準を示す、以下の周知技術が認められる。

「磁気ヘッドを搭載するスライダと、本体及び前記本体から突出するように設けられる光源を備える光源装置とが設けられるスライダ/光源ユニットを搭載するための回路付きサスペンション基板に、本体及び前記本体から突出するように設けられる光源の形状に合わせた開口を形成し、前記光源を、当該光源の形状に合わせて形成された開口の所定の位置に受け入れる。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「磁気ヘッド38、光導波路51及び近接場光発生部材54が搭載されるスライダ39」は、「磁気ヘッド38」が搭載される「スライダ39」であり、本願明細書の段落0101及び図6によれば、本願発明の「磁気ヘッドを搭載するスライダ」が「光導波路36および近接場光発生部材37」を搭載することを排除していないから、本願発明の「磁気ヘッドを搭載するスライダ」に対応する。また、引用発明の「光導波路51に光を入射させるための光源であって光導波路51に接続されるようにスライダ39の裏面に接続されて光導波路51及び近接場光発生部材54とともに発光ユニットを構成する発光素子40」は、本願発明の「光源を備える光源装置」に対応する。そして、引用発明の「スライダ39」と「光導波路51に接続されるようにスライダ39の裏面に接続されて光導波路51及び近接場光発生部材54とともに発光ユニットを構成する発光素子40」とを合わせたものは、本願発明にいう「スライダ/光源ユニット」に対応し、引用発明において、上記「スライダ39」と上記「発光素子40」とを「搭載するスライダ搭載領域9を有する回路付サスペンション基板1」は、本願発明の「スライダ/光源ユニットを搭載するための回路付サスペンション基板」に対応する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「磁気ヘッドを搭載するスライダと、光源を備える光源装置とが設けられるスライダ/光源ユニットを搭載するための回路付サスペンション基板」である点で共通するといえる。

(2)引用発明の「長手方向に延びる金属支持基板11」及び「挿通開口部36」は、本願発明の「長手方向に延びる金属支持基板」及び「支持開口部」に相当し、本願発明と引用発明とは、「前記金属支持基板には、支持開口部が形成されて」いる点で一致する。
また、引用発明の「金属支持基板11の表面に積層される第1絶縁層としての第1ベース絶縁層12」は、本願発明の「前記金属支持基板の厚み方向一方側に積層されるベース絶縁層」に相当し、引用発明の第1ベース絶縁層12には、「挿通開口部36の先側半分を被覆し、挿通開口部36の後側半分を露出する開口部」が形成されているから、本願発明と引用発明とは、「前記ベース絶縁層には、前記支持開口部と前記厚み方向において部分的に重複するベース開口部が形成されて」いる点で共通する。
ここで、引用発明では、さらに金属支持基板11の裏面に形成された素子側端子22を有する第2導体パターン19と第2ベース絶縁層18とを備え、表面の電子素子側パターン62を、導通開口部29を介して裏面の第2導体パターン19の素子側端子22により発光素子40に接続している。他方、本願発明においても、光源装置に配線を接続する必要があることは当然であるが、請求項1には、光源装置に接続するための配線や端子の構成について何ら特定はない。
そうすると、本願発明は、引用発明のように、さらに金属支持基板の裏面に第2導体パターン及び第2ベース絶縁層を備えて光源装置に接続するための配線を裏面の素子側端子により接続することを排除していないといえる。
よって、本願発明と引用発明とは、「前記回路付サスペンション基板は、長手方向に延びる金属支持基板と、前記金属支持基板の厚み方向一方側に積層されるベース絶縁層とを備え」る点で一致するといえる。

(4)引用発明の「第1ベース絶縁層12から露出される挿通開口部36」は、発光素子40を受け入れ可能に形成されており、スライダ39が挿通開口部36を表面側から被覆し、発光素子40が挿通開口部36に挿通されることで、発光ユニットがスライダ搭載領域9に搭載される。
そうすると、引用発明の「第1ベース絶縁層12から露出される挿通開口部36」は、本願発明の「前記光源を受け入れ可能な受入部」に対応し、本願発明と引用発明とは、「前記回路付サスペンション基板には、前記光源を受け入れ可能な受入部が形成されており」、「前記受入部が、開口によって区画され」る点で共通するといえる。
また、本願発明にいう「光源」を含む引用発明の発光素子40は、発光ユニットをスライダ搭載領域9に搭載するときに、第1ベース絶縁層12から露出される挿通開口部36の端面を通過して、挿通開口部36の所定の受入位置まで挿通されると解されるから、引用発明の「第1ベース絶縁層12から露出される挿通開口部36の端面」は、前記受入部に案内するための案内面として機能するといえ、前記案内面は、開口の端面から形成されているといえる。
よって、本願発明と引用発明とは、「前記回路付サスペンション基板は、前記スライダ/光源ユニットが搭載されるときに、前記光源を前記受入部に案内するための案内面を備え」、「前記案内面は、開口の端面から形成されている」点で共通するといえる。

したがって、本願発明と引用発明との一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]

「 磁気ヘッドを搭載するスライダと、光源を備える光源装置とが設けられるスライダ/光源ユニットを搭載するための回路付サスペンション基板であって、
前記回路付サスペンション基板には、前記光源を受け入れ可能な受入部が形成されており、
前記回路付サスペンション基板は、前記スライダ/光源ユニットが搭載されるときに、前記光源を前記受入部に案内するための案内面を備え、
前記回路付サスペンション基板は、長手方向に延びる金属支持基板と、前記金属支持基板の厚み方向一方側に積層されるベース絶縁層とを備え、
前記金属支持基板には、支持開口部が形成されており、
前記ベース絶縁層には、前記支持開口部と前記厚み方向において部分的に重複するベース開口部が形成されており、
前記受入部が、開口によって区画され、
前記案内面は、開口の端面から形成されていることを特徴とする、回路付サスペンション基板。」

[相違点]
本願発明では、回路付サスペンション基板が搭載するスライダ/光源ユニットの光源装置が備える光源が、「本体および前記本体から突出するように設けられる」ものであり、
回路付サスペンション基板のベース絶縁層に、「前記ベース開口部の前記長手方向一端部から、前記長手方向一方側に向かって突出する突出開口」が形成されており、
受入部は、「前記突出開口によって区画され」、
案内面は、「前記突出開口の端面から形成されている」のに対し、
引用発明では、光源が、本体および前記本体から突出するように設けられておらず、これに伴い、
回路付サスペンション基板のベース絶縁層に、「突出開口」は形成されておらず、
受入部は、「第1ベース絶縁層12から露出される挿通開口部36」によって区画されており、
案内面は、「第1ベース絶縁層12から露出される挿通開口部36」の端面から形成されている点。

第6 判断
引用発明の「回路付サスペンション基板1」は、光アシスト法により記録密度の向上を図るための発光素子を搭載した回路付サスペンション基板に関し、磁気ヘッド38が搭載されるスライダ39と、スライダ39の裏面に接続されて光導波路51及び近接場光発生部材54とともに発光ユニットを構成する光源としての発光素子40と、を搭載するものである。
そして、上記「第4」の2のとおり、引用例2に記載された技術事項は、さらなる高記録密度を達成し、磁化の熱安定性がより高い磁気記録媒体を使用可能とする熱アシスト磁気記録技術における、磁気記録媒体に近接場光等の光を照射することによって磁気記録媒体を加熱する方法に用いる熱アシスト磁気記録ヘッドに関するものであるから、引用発明において、さらなる記録密度の向上を図るために、上記引用例2に記載された「ヘッド素子部を備えるスライダと、ユニット基板及び前記ユニット基板から突出するように設けられる光源としてのレーザダイオードを備える光源ユニットとが設けられた、前記レーザダイオードが、前記ユニット基板から長手方向一方側に向って突出するようにフレクシャに搭載される熱アシスト磁気記録ヘッド」(本願発明の「磁気ヘッドを搭載するスライダと、本体および前記本体から突出するように設けられる光源を備える光源装置とが設けられるスライダ/光源ユニット」に相当。)を搭載する動機があるといえる。

ここで、上記「第4」の3のとおり、本願出願当時の技術水準として、「磁気ヘッドを搭載するスライダと、本体及び前記本体から突出するように設けられる光源を備える光源装置とが設けられるスライダ/光源ユニットを搭載するための回路付サスペンション基板に、本体及び前記本体から突出するように設けられる光源の形状に合わせた開口を形成し、前記光源を、当該光源の形状に合わせて形成された開口の所定の位置に受け入れる」ことが周知技術であったことも踏まえれば、引用発明の回路付サスペンション基板に、上記引用例2に記載された「熱アシスト磁気記録ヘッド」を「前記レーザダイオードが、前記ユニット基板から長手方向一方側に向って突出するように」搭載するにあたり、レーザダイオードの形状に合わせた開口を形成し、レーザダイオードを、当該開口の所定位置に受け入れることは、当業者が適宜なし得る実装上の変更にすぎない。

よって、引用発明において、上記引用例2に記載された「熱アシスト磁気記録ヘッド」を搭載するために、厚み方向に投影したときに、その後端縁(端縁47及び端縁45)が重なるように形成され、かつ、挿通開口部36の先端縁よりも後側へ突出されている第1ベース絶縁層12及び第2ベース絶縁層18に、ユニット基板から長手方向一方側に向って突出したレーザダイオードの形状に合わせて、「前記ベース開口部の前記長手方向一端部から、前記長手方向一方側に向かって突出する突出開口」を形成し、上記引用例2に記載された「熱アシスト磁気記録ヘッド」が搭載されるときに、上記レーザダイオードが、「前記突出開口の端面から形成されている」案内面を通過し、「前記突出開口によって区画され」た受入部に受け入れられるようにして、本願発明とすることは、当業者が容易に想到し得る。

したがって、本願発明は、上記周知技術によって示される本願出願当時の技術水準に鑑みれば、上記引用例1に記載された発明及び上記引用例2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-05-22 
結審通知日 2018-05-29 
審決日 2018-06-11 
出願番号 特願2012-264216(P2012-264216)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 斎藤 眞  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 北岡 浩
山本 章裕
発明の名称 回路付サスペンション基板  
代理人 岡本 寛之  

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