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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1342616
審判番号 不服2016-17987  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-01 
確定日 2018-07-24 
事件の表示 特願2013-550448「液体食品を保存するためのパッケージ、該パッケージの一部を形成するブランク、ブランクのリール、及び繊維系パッケージング材料に触覚パターンを形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年8月9日国際公開、WO2012/105891、平成26年3月17日国内公表、特表2014-506549〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月25日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年1月25日 スウェーデン国)を国際出願日とする出願であって、平成27年11月24日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月22日に意見書の提出と共に手続補正がされ、同年7月25日付けで拒絶査定がなされ(謄本送達日同年8月1日)、これに対して同年12月1日に本件審判請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成28年12月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年12月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は補正箇所を示す)。
「液体食品を封入するためのパッケージ(100;200;600)であって、前記パッケージが、厚紙層、前記厚紙層を覆うポリマー材料からなる外側透明層(14)、及び遮断フィルム(18)を含む繊維系パッケージング材料(10)から作られ、
前記パッケージ(100;200;600)が、外面及び内面を有し、前記外面が、少なくとも、意図する使用者把持部を示すため、及び装飾絵を強調するための触覚パターン(120;220;620)を有する領域(118;218;610;612)を備え、前記触覚パターン(120;220;620)を備える前記外面が、厚紙の平坦な層及び/又は前記外側透明層(14)の圧縮によって前記パッケージング材料に形成され、且つ前記内面が、少なくとも、前記外面に前記触覚パターン(120;220;620)を有する前記領域(118;218;610;612)に対応した位置にある平坦な領域を有し、
前記遮断フィルム(18)が、少なくとも、前記触覚パターン(120;220;620)を有する前記領域(118;218;610;612)に対応した位置にある平坦な領域を有し、
前記パッケージ(100;200;600)が、閉じられた底端部(104;204)から閉じられた上部(106;206)に向かって延びる、厚紙ベースのパッケージング材料からなる中空本体(102;202)をさらに備える、パッケージ(100;200;600)。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の平成28年2月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「液体食品を封入するためのパッケージ(100;200;600)であって、
前記パッケージが、厚紙層を含む繊維系パッケージング材料(10)から作られ、
前記パッケージ(100;200;600)が、外面及び内面を有し、前記外面が、少なくとも、意図する使用者把持部を示すため、及び装飾絵を強調するための触覚パターン(120;220;620)を有する領域(118;218;610;612)を備え、前記触覚パターン(120;220;620)を備える前記外面が、厚紙の平坦な層及び/又は前記厚紙層を覆うポリマー材料からなる外側透明層(14)の圧縮によって前記パッケージング材料に形成され、且つ前記内面が、少なくとも、前記外面に前記触覚パターン(120;220;620)を有する前記領域(118;218;610;612)に対応した位置にある平坦な領域を有し、
前記パッケージ(100;200;600)が、閉じられた底端部(104;204)から閉じられた上部(106;206)に向かって延びる、厚紙ベースのパッケージング材料からなる中空本体(102;202)をさらに備える、パッケージ(100;200;600)。」
2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「繊維系パッケージング材料」について,1)遮断フィルムを含むこと、及び2)その遮断フィルムが少なくとも触覚パターンを有する領域にに対応した位置にある平坦な領域を有する、という限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものと認める。
(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献1(実願平02-044778号(実開平04-003918号)のマイクロフィルム)には、次の記載が認められる。
(イ)明細書1頁、2.実用新案登録請求の範囲
「角筒状の容器本体における相対する両側面に罫線加工により形成された複数の凹状罫線からなる把持領域を設けたことを特徴とする滑り止め付き紙容器。」
(ウ)明細書1頁10行ないし2頁3行
「[産業上の利用分野]
本考案は、板紙で作成される紙容器に関するものである。
[従来の技術]
近年、使い捨ての飲料用容器として、表面にポリエチレン等の合成樹脂をラミネートした板紙を用い、これを角筒状の形態として底部を塞ぎ、その中に内容物である液体を充填した後、上部を屋根状に密封して形成されるいわゆるゲーベルトップ型の紙容器が広く使用されている。そしてこのような紙容器は簡便性に優れていることから、ジュース類や酒類などの飲料用容器としてのみならず、最近では食用油等の油類もこの紙容器に入れて販売されるようになってきている。」
(エ)明細書3頁2ないし5行
「上記凹状罫線としては、横方向の直線状のものの他に、例えば横方向の波線状又は折れ線状のものでもよく、或いは斜めの格子状のものでも構わないものである。」
(オ)明細書4頁7行ないし5頁2行
「[実施例]
以下、本考案の実施例について説明する。
第1図(a)は本考案に係る滑り止め付き紙容器の一実施例を示す前方斜視図、第1図(b)は同じく後方斜視図である。
第1図(a),(b)に示すように、滑り止め付き紙容器1はゲーベルトップ型の角筒状をしており、その上部の前方斜面2にはプラスチック製の注出口Sが設けられている。そして、注出口Sの設けられた前方斜面2の下方に連接されている前方側面3と注出口Sが設けられていない後方斜面4下方に連接されている後方側面5とを挟むようにして連接されている中間側面6及び中間側面7には、それぞれ横方向の凹状罫線8,10が縦に複数本形成されており、これらによりそれぞれ把持領域9,11が構成されている。」
(カ)図1



(キ)明細書5頁3行ないし6頁10行
「本実施例における滑り止め付き紙容器1の容器本体は、外側から順にポリエチレン/紙/ポリエチレン/アルミニウム/ポリエステル/ポリエチレンをラミネートして作成された板紙で作成されており、その組立手順は従来の紙容器と同じである。即ち、まず、打抜機により板紙が所定の形状に打抜かれると共に組立に必要な筋付けが行なわれる。次いで、この打ち抜かれた用紙が筋で折り曲げられて角筒状のブランク板とされ、このブランク板が充填機に供給される。充填機内においては、底部が閉鎖され内容物の油類が充填された後、上部がトップシールされて組立が完了する。なお、注出口Sは充填機内で取り付けられるようになっている。
そして、横方向の凹状罫線8,10は、打抜機により容器本体組立用の筋が入れられる時と同時に形成される。なお、滑り止め容器1は把持領域9,11の部分を手で持つことから、第1図(a),(b)に示すように、凹状罫線8,10は縦に複数段設け全ての指がこの把持領域9,11に掛かるようにしている。また本実施例では、把持領域9,11を設ける位置は、注出口Sの設けられる部分に対して反対側寄り、すなわち後方側面5寄りとしている。
上記の構成からなる滑り止め付き紙容器1を油類の付いた手で持ち上げようとする場合、指の先を把持領域9,11に位置させて掴むことにより凹状罫線8,10の凹部に指の先が引っ掛かり滑らずに持ち上げることができる。」
(ク)明細書6頁11ないし20行
「[考案の効果]
以上説明したように本考案の滑り止め付き紙容器は、容器本体の相対する両側面に複数の凹状罫線からなる把持領域を設けたことにより、手による把持が確実に行なえることとなり、誤って落とすという危険性を防止することができる。
また、上記の凹状罫線は、容器本体を形成する板紙の打抜時において通常の罫線を入れる時と同時に形成できるので、簡単に把持領域を設けることができる。」
(ケ)引用発明の認定
上記(イ)ないし(ク)の記載のうち、特に上記(キ)における充填機内で油類が充填された後の状態を想定すると、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「食用油などの油類のための容器であって、その容器が、外側から順にポリエチレン/紙/ポリエチレン/アルミニウム/ポリエステル/ポリエチレンをラミネートして作成された板紙から作られ、
容器の中間側面(6,7)の注出口Sが設けられる部分と反対側寄りに滑り止めのための凹状罫線が設けられており、
底部が閉鎖され、上部を屋根状に密封して形成されたゲーベルトップ型の容器」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
イ 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献2(特開2009-149338号公報)には、次の記載が認められる。
(イ)請求項1
「少なくとも外面紙材料層と中間樹脂層とアルミニウム蒸着層又はセラミック蒸着層を有するバリアフィルム層と内面シーラント層とを積層した紙積層材料製の、上面板と側面板と底面板とを連設して成る直方体状の液体用紙容器において、紙積層材料の外面紙材料層の表面に、平滑なミラー状の表面樹脂層を積層して、外面側からエンボス状の金属板と内面側から平坦な金属板などとで、同時に常温で圧着することによって、この紙積層材料の外面紙材料層の表面側に、エンボス模様を形成したことを特徴とする液体用紙容器。」
(ウ)背景技術
a 段落【0002】
「従来から、ジュースや調味料や酒類などを収容する、少なくとも外面紙材料層4と中間樹脂層5とアルミニウム蒸着層又はセラミック蒸着層を有するバリアフィルム層6と内面シーラント層7とを積層した紙積層材料製の、例えば図3A,Bに示すような、上面板a,a,a,aと側面板b,b,b,bと底面板c,c,c,cとを連設して成る、上面が平坦な又は上面が切妻屋根形の直方体状の、内容量が200?3000mlの液体用紙容器が、一般に広く用いられている。」
b 段落【0003】
「この従来の、液体用紙容器の紙積層材料については、例えば図2に示すような、表面に文字や絵柄などの印刷層2とポリエチレン(PE)などの表面樹脂層3とを積層した、強度,保形性が優れた150?550g/m^(2)の適宜の外面紙材料層4と、熱接着性が優れた20?60μmのエチレン-メタアクリル酸共重合体(EMAA)などの中間樹脂層5と、各種バリア性が優れたアルミニウム(Al)蒸着層又はセラミック(SiOx)蒸着層を有する強度が優れた12?25μmのポリエステル(PET)などのバリアフィルム層6(又は各種バリア性が優れた6?12μmのアルミニウム箔のバリアフィルム層6)と、熱融着性,密封性が優れた30?100μmの低密度ポリエチレン(LDPE)などの内面シーラント層7とを、積層強度などが優れた図示していないウレタン系の接着剤層を介して、通常のドライラミネーション方法などで積層した、強度,保形性や各種バリア性や熱融着性,密封性などが優れた紙積層材料が、一般に広く用いられている。」
c 図3



d 図2



e 段落【0005】
「ところが従来の液体用紙容器の、少なくとも外面紙材料層4と中間樹脂層5とアルミニウム蒸着層又はセラミック蒸着層を有するバリアフィルム層6と内面シーラント層7とを積層した紙積層材料については、紙積層材料の外面紙材料層4の表面側に、凹凸状のエンボス模様を形成して、液体用紙容器の表面を加飾するために、図2に示すように、外面側からエンボス状の金属板21と内面側から金属板21の凹凸形状に対応したエンボス状の金属板23とで、同時に常温で(又は加熱した状態で)圧着した時(浮上げ工程と通称する)に、紙積層材料のアルミニウム蒸着層又はセラミック蒸着層を有するバリアフィルム層6が、金属板21,23の凹凸形状に合せて変形して延伸することが問題であって、各種バリア性が優れたアルミニウム(Al)蒸着層又はセラミック(SiOx)蒸着層を有する強度が優れた12?25μmのポリエステル(PET)などのバリアフィルム層6の、アルミニウム蒸着層又はセラミック蒸着層に多数の亀裂が発生して、優れた各種バリア性が劣化するために、前述した浮上げ工程で、この紙積層材料の外面紙材料層4の表面側に、凹凸状のエンボス模様を形成して液体用紙容器の表面を加飾することは、一般に広く行われることはなかった。」
(エ)段落【0008】
「本発明の液体用紙容器は、少なくとも外面紙材料層と中間樹脂層とアルミニウム蒸着層又はセラミック蒸着層を有するバリアフィルム層と内面シーラント層とを積層した紙積層材料製の、上面板と側面板と底面板とを連設して成る直方体状の液体用紙容器において、紙積層材料の外面紙材料層の表面に、図1に示す平滑なミラー状の表面樹脂層を積層して、図1に示すように、外面側からエンボス状の金属板と内面側から平坦な金属板などとで、同時に常温で圧着することによって、この紙積層材料の外面紙材料層の表面側に、エンボス模様を形成したことを特徴とする液体用紙容器である。」
(オ)図1



(カ)図4



(キ)実施例
a 段落【0016】
「図1は、本発明の実施例1における、液体用紙容器の紙積層材料の断面説明図であって、また図3B及び図4は、上面が切妻屋根形の直方体状の液体用紙容器の、斜視図及びブランクの平面図である。」
b 段落【0017】
「・・・表面に平滑なミラー状の15μmの中密度ポリエチレン(MDPE)の表面樹脂層3を、熱溶融押出し(エクストルージョンラミと言う)して積層して、続いて文字や絵柄などの印刷層2を、通常のグラビア印刷方法で積層した、強度,保形性が優れた400g/m^(2)の液体用上質紙の外面紙材料層4と、各種バリア性が優れたセラミック蒸着層(SiOx,400nm)を有する強度が優れた12μmのポリエステル(PET)のバリアフィルム層6と、熱融着性,密封性が優れた60μmの低密度ポリエチレン(LDPE)の内面シーラント層7とを、外面紙材料層4とセラミック蒸着層を有するバリアフィルム層6との間は、熱接着性が優れた25μmのエチレン-メタアクリル酸共重合体(EMAA)の中間樹脂層5を介して、熱溶融押出し(エクストルージョンラミと言う)して積層して、またセラミック蒸着層を有するバリアフィルム層6と内面シーラント層7との間は、積層強度などが優れた図示していないウレタン系の接着剤層(5g/m^(2))を介して、通常のドライラミネーション方法で積層して、強度,保形性や各種バリア性や熱融着性,密封性などが優れた、図1に示す液体用紙容器の紙積層材料を作製した。」
c 段落【0018】
「次に、図1に示す液体用紙容器の紙積層材料を用いて、通常の打抜型を用いた打抜工程で、上面板a,a,a,aと側面板b,b,b,bと底面板c,c,c,cとを連設して成る、図3Bに示す上面が切妻屋根形の直方体状の液体用紙容器の、図4に示す無駄が少ない1枚物のブランクを作製した後に、通常の小型の浮き上げ工程で、図1に示すように、このブランクの紙積層材料の外面側から、印刷層2の文字や絵柄などにデザイン的に合致させた高低差が10?100μmのエンボス状の金属板21と、またブランクの紙積層材料の内面側から、平坦なベース金属板22とで、120トン/m^(2)の圧力で、同時に常温で圧着したところ、
この高低差が10μm程度の微細な砂目模様のエンボス状の金属板21が、平滑なミラー状の15μmの中密度ポリエチレン(MDPE)の表面樹脂層3に、印刷層2の文字や絵柄などに合致させた艶消し効果などを発揮して、また高低差が100μm程度の文字や絵柄などの輪郭を強調した凹凸状のエンボス状の金属板21が、400g/m^(2)の液体用上質紙の外面紙材料層4に、印刷層2の文字や絵柄などに合致させた浮上げ効果などを発揮して、液体用紙容器のブランクの紙積層材料の表面を加飾することができた。」
d 段落【0019】
「・・・内面側の、各種バリア性が優れたセラミック蒸着層(SiOx,400nm)を有する強度が優れた12μmのポリエステル(PET)のバリアフィルム層6の、ガラス状のセラミック蒸着層に多数の亀裂が発生していない、図1に示す僅かに波打つ程度の平坦な状態で、優れた各種バリア性を劣化させないで、前述した紙積層材料の外面紙材料層4の表面側に、文字や絵柄などに合致させた艶消し効果や浮上げ効果などを発揮したエンボス模様を形成して、効果的に表面を加飾した液体用紙容器を得ることができた。」
e 段落【0020】
「・・・表面樹脂層3に、印刷層2の文字や絵柄などに合致させた艶消し効果などを発揮した時に、この平滑なミラー状の表面樹脂層3に滑り止め効果が得られるものであって、顧客の指に触れる部分などのハンドリング性を向上させながら、前述した紙積層材料の外面紙材料層4の表面側に、文字や絵柄などに合致させた艶消し効果や浮上げ効果などを発揮したエンボス模様を形成して、効果的に表面を加飾した液体用紙容器を得ることができた。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明における「食用油などの油類」、「容器」は、本件補正発明における「液体食品」、「パッケージ」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「容器」は、底部が「閉鎖」され、上部を屋根状に「密封」されるから、「食用油などの油類」を封入するものといえる。
(イ)引用発明における「板紙」は、外側から順にポリエチレン層、紙層、ポリエチレン層、アルミニウム層、ポリエステル層、ポリエチレン層がラミネートされたものである。そして、アルミニウムのガス透過率が低いため、アルミニウム層が、遮断フィルムであることは技術常識であって、また、引用発明の紙層は、その全体が「板紙」であることから厚紙層であると言える。また、外側のポリエチレン層は、ポリマー材料の一種であり、紙層が繊維系材料に属することは、技術常識である。
(ウ)引用発明において、凹状罫線が設けられた側面は、容器の外面であり、また、容器内側に内面も存在することは明らかである。
(エ)引用発明の凹状罫線は、指との接触の際に滑り止めとなることから、触覚により認識可能なものであるから「触覚パターン」の範疇に入るものである。
(オ)引用発明の容器においても、底部と上部の間に中空本体が存在することは、容器の機能・構造上明らかである。
イ そうすると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(ア)一致点
「液体食品を封入するためのパッケージであって、
前記パッケージが、厚紙層、前記厚紙層を覆うポリマー材料からなる外側層、及び遮断フィルムを含む繊維系パッケージング材料から作られ、
前記パッケージが、外面及び内面を有し、前記外面が、触覚パターンを有する領域を備え、
前記パッケージが、閉じられた底端部から閉じられた上部に向かって延びる、厚紙ベースのパッケージング材料からなる中空本体をさらに備える、パッケージ。」である点。
(イ)相違点1
本件補正発明における厚紙層を覆うポリマー材料が「透明」と特定されているのに対し、引用発明では透明か否か明らかでない点。
(ウ)相違点2
本件補正発明においては、触覚パターンが、「少なくとも、意図する使用者把持部を示すため、及び装飾絵を強調するための」ものであって、「厚紙の平坦な層及び/又は外側透明層の圧縮によって前記パッケージング材料に形成される」のに対し、引用発明では、滑り止めのための凹状罫線であって、形成手段が明らかでない点。
(エ)相違点3
本件補正発明においては、触覚パターンを有する領域に対応した位置における内面及び遮断フィルムが平坦な領域を有するのに対して、引用発明では触覚パターンを有する領域に対応した位置における内面及び遮断フィルムの状態が明らかでない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明におけるポリエチレンは、不透明化のための顔料などを混合しない場合には、透明であることは、技術常識であるところ、引用発明において、特に顔料を混合したとの記載がないことから、引用発明における厚紙層を覆うポリエチレンは、透明であると推認できる。相違点1は、実質的な相違点ではない。実質的な相違点であるとしても、そのような板紙材料は、例を挙げるまでもなく周知であり、相違点1は当業者が容易に想到し得ることである。
イ 相違点2について
(ア)「意図する使用者把持部を示すため」について
引用発明において、凹状罫線を設ける位置は、注出口Sの設けられる部分の反対側寄りの側面としたのは、その部分をつかむ方が使い勝手がよく、使用者の手がその部分に接触することが通常であるからと認められる。そして、そのような位置に設けられた凹状罫線は、その容器に不慣れな使用者にとっては、「意図する使用者把持部を示す」ものとなるから、この点で相違があると言うことはできない。
(イ)「装飾絵を強調するため」について
上記2(2)イ(キ)eにおいて摘記したように、引用文献2におけるエンボスパターンは、滑り止め機能を有すると同時に「文字や絵柄などに合致させた艶消し効果や浮上効果などを発揮」と記載されているように、装飾絵を強調するものである。引用発明の凹状罫線が設けられた領域に装飾を施すことに何ら阻害事由は認められないところ、引用発明に対して、引用文献2に記載された上記事項を適用することにより、この相違点は当業者が容易に想到し得ることである。
(ウ)触覚パターンの形成手段について
上記2(2)イ(キ)cにおいて摘記したように、引用文献2に記載された技術事項は、「印刷層2の文字や絵柄などにデザイン的に合致させた高低差が10?100μmのエンボス状の金属板21と、またブランクの紙積層材料の内面側から、平坦なベース金属板22とで、120トン/m^(2)の圧力で、同時に常温で圧着」することで、「高低差が100μm程度の文字や絵柄などの輪郭を強調した凹凸状のエンボス状の金属板21が、400g/m^(2)の液体用上質紙の外面紙材料層4に、印刷層2の文字や絵柄などに合致させた浮上げ効果」が生じるものである。このことは、本件補正発明における「厚紙の平坦な層及び/又は外側透明層の圧縮によって前記パッケージング材料に形成される」のうち、「厚紙の平坦な層及び外側透明層の圧縮によって前記パッケージング材料に形成される」に相当するものである。さらに、上記(イ)に記載したように、引用文献2に記載された技術事項は装飾絵を強調する機能を有すると同時に滑り止め機能を有するから、触覚パターンの形成手段として、引用文献2に記載された上記技術事項を採用することに動機付けがある。
ウ 相違点3について
(ア)内面について
引用文献2に記載されたエンボス加工において、上記(2)イ(エ)に摘記したように「図1に示すように、外面側からエンボス状の金属板と内面側から平坦な金属板などとで、同時に常温で圧着する」のであるから、容器の内面は平坦となっていると認められる。この点は、引用発明に引用文献2に記載のエンボス加工を採用することで、当業者が容易に想到し得ることである。
(イ)遮断フィルムについて
引用文献2には、上記(2)イ(キ)dに摘記したように、「バリアフィルム層6の、ガラス状のセラミック蒸着層に多数の亀裂が発生していない、図1に示す僅かに波打つ程度の平坦な状態で、優れた各種バリア性を劣化させない」と記載されており、本件補正発明における「平坦領域を有する」ものと文言上相違がない。そうすると、この点は、引用発明に引用文献2に記載のエンボス加工を採用することで、当然に実現する構成であるに過ぎない。
エ 小括
以上アないしウのとおり、相違点1は、実質的な相違点でなく、相違点2及び相違点3は、引用発明に対して、引用文献2に記載された事項を適用することにより、当業者が容易に想到し得ることである。また、本件補正発明が奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された事項から予測可能なものと認められる。
(5)請求人の主張に対して
ア 請求人は、引用発明に対して、引用文献2に記載された事項を適用することに阻害事由がある旨主張していると解される。
(ア)すなわち、請求人は、平成28年2月22日付け意見書において、「引用文献2におけるエンボスされたパターンは製造に関し、より難しく、同時に引用文献2におけるスタンピングツールを使用するバリア層の完全性を損傷する危険を有しています。引用文献2は本質的に非常に薄い材料層を生成する蒸着について開示しているので、引用文献2のバリアフィルム層は非常に薄いアルミニウム又はセラミックの層とされています。すなわち、引用文献1に開示されたパッケージに比べて改良された把持表面を達成するために、当業者が引用文献1に開示された発明を組み合わせるとすると、良好な把持表面は得られるかもしれませんが、バリア特性に危険性がある、非常に複雑で高価な製造工程を実行しなければならなくなるのです。」
(イ)しかしながら、引用文献2には、エンボス加工を行っても、バリア層の完全性を損傷しない旨記載されていると解される。すなわち、前記(2)イ(キ)dで摘記したように「バリアフィルム層6の、ガラス状のセラミック蒸着層に多数の亀裂が発生していない、図1に示す僅かに波打つ程度の平坦な状態」と記載されていることから、多数でない亀裂の発生を許容するとも解されるが、当該記載は、上記(2)イ(ウ)eにおける従来技術において「多数の亀裂が発生して」という語句に対応したものと解される。そうすると、引用文献2にバリア性を劣化させる程の亀裂の発生を許容する旨の記載があるということはできない。請求人の主張は、引用文献2の誤解に基づくものであって採用できない。
イ 請求人は、引用発明に対して、引用文献2に記載された事項を適用しても、本願発明が構成されない旨主張している。
(ア)すなわち、請求人は、平成28年12月1日付け審判請求書(平成29年1月13日に理由補充)において、「引用文献2の段落[0019]には、審査官殿が認定されたように、バリアフィルム層に多数の亀裂が発生していることはないが、波打つ程度の状態にあることが記載されているのである。すなわち、触覚パターンを有する領域に対応した位置にバリアフィルム層が平坦な領域を有していることを特徴とする本願補正発明は、引用文献1に記載された考案に、引用文献2に記載された発明を採用することによって当業者が容易になし得たようなものではないと思料する。」と主張する。
(イ)しかしながら、引用文献2の、「僅かに波打つ程度に平坦な状態」との記載は、上記に示したとおり理解すべきである。さらに付け加えると、本願明細書の段落【0019】に記載された製造方法によると、パターン化表面を持つローラーと、非パターン化表面を持つローラーの間で、パッケージング材料の連続ウェブを圧縮するというのであるから、引用文献2に記載のエンボス方法と同様であって、本願発明の遮断フィルムの「平坦な領域」には、そのように加工された遮断フィルムの状態が含まれると解される。この点でも、請求人の主張には理由がない。
3 本件補正についてのむすび
上記1,2で検討したとおり,本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。したがって、本件補正は,特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年2月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2、並びにその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,遮断フィルムに係る限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加した発明に相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2018-02-19 
結審通知日 2018-02-26 
審決日 2018-03-09 
出願番号 特願2013-550448(P2013-550448)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 千壽 哲郎
門前 浩一
発明の名称 液体食品を保存するためのパッケージ、該パッケージの一部を形成するブランク、ブランクのリール、及び繊維系パッケージング材料に触覚パターンを形成する方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 阿部 達彦  
代理人 実広 信哉  

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