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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F03D
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 F03D
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F03D
管理番号 1342621
審判番号 不服2017-6559  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-08 
確定日 2018-07-23 
事件の表示 特願2014- 54904「空気移動エネルギ発生方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 5日出願公開、特開2015-175358〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月18日の出願であって、平成28年6月23日付けの拒絶理由の通知に対し、平成28年9月20日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成29年1月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年5月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年5月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年5月8日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。
「【請求項1】
プロペラと発電装置を天井を除く全ての空間に配置し、建築物内に空気移動を発生させる空気移動発生手段を設け、この空気移動発生手段により発生させた空気移動をエネルギとすることを特徴とするエネルギ発生方法において、プロペラの位置は風が壁の孔を出た後に設け、且つ前記孔の内径はプロペラの直径の68%から73%の内径の孔にし、前記空気移動発生手段は、建物上部を吹いている風のベンチュリ効果により空気流入を起こし前記プロペラに風を吹き付けて回転させることを特徴とするエネルギ発生方法。」

(2)本件補正前の、平成28年9月20日の手続補正による特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
プロペラと発電装置を天井を除く特定の空間に配置し、建築物内に空気移動を発生させる空気移動発生手段を設け、この空気移動発生手段により発生させた空気移動をエネルギとすることを特徴とするエネルギ発生方法において、プロペラの位置は風が壁の孔を出た後に設け、且つ前記孔の内径はプロペラの直径の70?75%の内径の孔にし、前記空気移動発生手段は、建物上部を吹いている風のベンチュリ効果により空気流入を起こし前記プロペラに風を吹き付け回転させることを特徴とするエネルギ発生方法。」


2.補正の適否
(1)新規事項について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を「プロペラと発電装置を天井を除く全ての空間に配置し」とする補正と「孔の内径はプロペラの直径の68%から73%の内径の孔にし」と補正することを含むものである。
本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、「プロペラと発電装置を天井を除く特定の空間に配置」(当初特許請求の範囲【請求項1】)すること、および建物22の入り口14に連なる廊下23の奥の壁16に設けた丸孔17を風がでた後にプロペラ18の位置を設け(当初明細書【0017】、【0020】、【図7】参照)、プロペラ18と発電機19は丸孔17の内側に支えられている固定具20により支えられていること(当初明細書【0017】参照)について記載されているのみであり、本件補正により追加された「プロペラと発電装置を天井を除く全ての空間に配置」することは、当初明細書等には記載されていない。
また、本願の当初明細書には、「孔17の内径は、プロペラ18の直径の70?75%の内径の孔にすること」は記載(【0021】参照)されているが、本件補正により追加された「孔の内径はプロペラの直径の68%から73%の内径の孔に」することは、当初明細書等には記載されていない。
そして、上記補正により追加された「プロペラと発電装置を天井を除く全ての空間に配置」することと「孔の内径はプロペラの直径の68%から73%の内径の孔に」することは、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1の記載が、「プロペラと発電装置を天井を除く特定の空間に配置し」とされていたものを本件補正後の請求項1の記載では「プロペラと発電装置を天井を除く全ての空間に配置し」と補正し、また、本件補正前の請求項1の記載が「孔の内径はプロペラの直径の70?75%の内径の孔にし」とされていたものを「孔の内径はプロペラの直径の68%から73%の内径の孔にし」と補正することを含むものである。
そして、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項であるプロペラと発電機の配置について、「天井を除く特定の空間に配置」と特定されていたものを「天井を除く全ての空間に配置」すると特定するものであるから、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。すなわち、前記補正は、請求項の削除を目的とするものではなく、「特定の空間」の下位概念として「全ての空間」が含まれるものではないから、「天井を除く特定の空間に配置」と特定されていたものを「天井を除く全ての空間に配置」すると特定するする補正は、特許請求の範囲の減縮でもなく、また、補正前の「天井を除く特定の空間に配置」という記載に誤記が含まれるとも、またこの記載が明りょうでない記載であるともいえないから、誤記の訂正および明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもなく、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。
また、本件補正における、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「孔の内径はプロペラの直径の70?75%の内径の孔にし」と特定されていたものを「孔の内径はプロペラの直径の68%から73%の内径の孔にし」と特定する補正は、請求項の削除を目的とするものではなく、また補正前の「孔の内径はプロペラの直径の70?75%の内径の孔にし」という記載に誤記が含まれるとも、またこの記載が明りょうでない記載であるともいえないから、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものではない。さらに、本件補正前の請求項1に記載された発明には含まれていなかった孔の内径がプロペラの直径の68%から70%である場合について、本件補正後の請求項1に記載された発明には含まれることとなるので、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもない。したがって、「孔の内径はプロペラの直径の70?75%の内径の孔にし」と特定されていたものを「孔の内径はプロペラの直径の68%から73%の内径の孔にし」と特定する本件補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。

3.補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年9月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2.原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、この出願の請求項1に係る発明は、本願出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2006-299835号公報(以下、「引用文献1」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。

3.引用文献
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
(1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物内の空気移動を利用するエネルギ発生装置。
【請求項2】
エネルギを発生させる空気移動を発生せしめ得ることを特徴とする建築物。
【請求項3】
建築物内の空気の移動を利用してエネルギを発生する
装置を設けた建築物。」

(2)「【0001】
本発明はエネルギ発生に関する。」

(3)「【0010】
図6は本発明実施例を示す。図6は平面図で、土地21に建物22があり、その入り口14に格子状のドア15を設け、それに連なる廊下23の奥に丸孔17を設けた壁16を設け、その丸孔の奥にプロペラ18が回転する発電機19の外側に設けられ、プロペラ18と発電機19は丸孔17の内側に支えられている指示具20(当審注:「固定具20」の誤記)により支えられている。24はプロペラを覆う保護網である…。
【0011】
入口14から入った空気は、入口廊下23を通り、孔17を通りプロペラ18を通り、内側廊下25に流れ、吹抜け26に流れて上空に上がり、この建物内の空気の移動によりプロペラ18が回わり、これにより発電機19が電気を起こす。図7は図6の本発明実施例の縦断面図を示し、廊下23の突き当たりにある壁16、そこに設けた丸孔17、プロペラ18、発電機19、吹抜け26を示し、入口14から流入し鉄格子15を通った空気が廊下23を抜け、孔17を吹抜け、孔17にあるプロペラ18を回し、発電機19を廻して発電し、吹抜け26に抜けていることを示す。」

(4)「【0013】
図8は断面図で、壁16に設けた孔19の内径に固定具20を固着し、これに発電機軸39を固定し、これを中心に回転するプロペラ18付アウターローター発電機19からの電気的出力はケーブル38により蓄電用バッテリ、又は蓄電用系統連携基板に接続される。
【0014】
断面図8に示す如く、プロペラ18の位置は風32が壁16の孔17を出た後に設け、且つ、孔17の内径は、プロペラ18の直径の70?75%の内径の孔にすることが、孔17の中にプロペラ18を入れるよりも効率が良い事が、風洞実験により確認された。25は壁16に取り付けた円筒状のもので、ここに安全用網24をかぶせる。この網側から見た図が図9で、格子30側から見た図が図10である。図11は前記空気導入用入り口ドア15を示し、開閉ハンドル27、手を入れてカギが開かないようにする防犯板28、更にその外側に空気孔29を設けた腕の入らない防犯板30を設けた格子戸15で、扉のほぼ全面から空気が入るけれども、泥棒などが侵入しないように工夫されている。
【0015】
図12は図6及び図7の原理を説明したもので、建物22にある吹抜け26の上部を吹いている風31のベンチュリ効果により吹抜け上部の空気が減圧され、吹抜け内の空気が上部に吸い上げられ、吹抜け自身による煙突効果と相俟って、入口14から空気流入32が起こり、壁16の孔17を通りプロペラ18が回転し、これにより発電機19が回り発電することを示す。…」

上記(1)ないし(4)からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「廊下23の奥に設けられた壁16に設けられた孔17の内側に支えられている固定具20によりプロペラ18と発電機19を支え、建物22に入口14から空気流入32が起こる吹抜け26を設け、入口14から流入し鉄格子15を通った空気が廊下23を抜け、孔17を吹抜け、孔17にあるプロペラ18を回すエネルギ発生方法において、プロペラ18の位置は風32が壁16の孔17を出た後に設け、且つ前記孔17の内径は、プロペラ18の直径の70?75%の内径の孔にし、前記吹抜け26は、建物22にある吹抜け26の上部を吹いている風31のベンチュリ効果により空気流入32が起こり、壁16の孔17を通りプロペラ18が回転するエネルギ発生方法。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「廊下23の奥に設けられた壁16に設けられた孔17の内側に支えられている固定具20によりプロペラ18と発電機19を支え」ることは、プロペラ18と発電機19を壁16に設けられた孔の17の近傍に配置することとなり、壁16は、天井ではないから、本願発明の「プロペラと発電装置を天井を除く特定の空間に配置」することに相当し、引用発明の「建物22に入口14から空気流入32が起きる」ことは、建物内に空気の移動を発生させていることであるから、本願発明の「建築物内に空気移動を発生させる」ことに相当し、引用発明の「吹抜け26」は、本願発明の「空気移動発生手段」に相当する。
さらに、引用発明の「入口14から流入し鉄格子15を通った空気が廊下23を抜け、孔17を吹抜け、孔17にあるプロペラ18を回す」ことは、引用発明の吹抜26により発生した空気流入により、プロペラ18が回ることから、本願発明の「この空気移動発生手段により発生させた空気移動をエネルギとする」ことに相当し、引用発明の「建物22にある吹抜け26の上部を吹いている風31」、「空気流入32が起こり、壁16の孔17を通りプロペラ18が回転する」は、それぞれ、本願発明の「建物上部を吹いている風」、「空気流入を起こし前記プロペラに風を吹き付け回転させる」に相当する。

したがって、本件発明と引用発明は、以下の構成において一致し、相違点は存在しない。
「プロペラと発電装置を天井を除く特定の空間に配置し、建築物内に空気移動を発生させる空気移動発生手段を設け、この空気移動発生手段により発生させた空気移動をエネルギとするエネルギ発生方法において、プロペラの位置は風が壁の孔を出た後に設け、且つ前記孔の内径はプロペラの直径の70?75%の内径の孔にし、前記空気移動発生手段は、建物上部を吹いている風のベンチュリ効果により空気流入を起こし前記プロペラに風を吹き付け回転させるエネルギ発生方法。」

よって、本願発明は、引用発明である。

第4 むすび
上記のとおりであって、本願発明は、本願出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
そうすると、同様の理由により本願は拒絶するべきであるとした原査定に取り消すべき理由はない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-05-10 
結審通知日 2018-05-15 
審決日 2018-06-04 
出願番号 特願2014-54904(P2014-54904)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (F03D)
P 1 8・ 57- Z (F03D)
P 1 8・ 561- Z (F03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 貴雄佐藤 秀之  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 長馬 望
久保 竜一
発明の名称 空気移動エネルギ発生方法  

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