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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41N |
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管理番号 | 1342716 |
審判番号 | 不服2017-10779 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-07-20 |
確定日 | 2018-08-01 |
事件の表示 | 特願2016-505459「多重織物を利用する印刷用ブランケット」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 2日国際公開、WO2014/158323、平成28年 6月 2日国内公表、特表2016-515961〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)1月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年3月25日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年1月13日付け、平成29年1月20日付けで手続補正がなされ、同年4月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月20日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成29年7月20日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)後の本願の発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、 「印刷面と基礎とを備える印刷用ブランケットであって、 前記基礎は、少なくとも1つの多重織物と、少なくとも1つの付加的な一重織物層とを備え、 各多重織物は、少なくとも、第1の織物プライと隣接する第2の織物プライとを備え、 各織物プライは、縦糸方向における縦糸のセットと、前記縦糸と織り交ぜられる、前記縦糸方向に垂直な横糸方向における横糸のセットとから構成され、 各織物プライの前記縦糸と前記横糸は織り交ぜられ、クロスポイントで交差しており、 前記第1及び第2の織物プライは、前記多重織物内の前記第1及び第2の織物プライ間で縦糸と横糸との点のような織り合わせによって形成されるステッチングポイントを通じて一体化され、 前記ステッチングポイントは、ライザーステッチ、シンカーステッチ、及びライザーステッチとシンカーステッチとの組み合わせ、からなる群の中から選択されるステッチにより形成され、 前記ライザーステッチは、前記第2の織物プライから前記第1の織物プライに持ち上げられ、前記第1の織物プライの単一の横糸に引っ掛けられ、前記第2の織物プライに戻る縦糸によって形成され、 前記シンカーステッチは、前記第1の織物プライから前記第2の織物プライに下げられ、前記第2の織物プライにおける単一の横糸に引っ掛けられ、前記第1の織物プライに戻る縦糸により形成され、 前記第1の織物プライの前記縦糸及び前記横糸は、前記ステッチングポイントにおける前記隣接する第2の織物プライとのみ相互作用し、 前記多重織物の大部分において、前記縦糸はそれぞれの織物プライにとどまり、同じ織物プライの中で前記横糸と織り合わされる、印刷用ブランケット。」 と補正された。 本件補正は、補正前の特許請求の範囲に記載の請求項1乃至請求項8を削除すると共に、請求項9乃至請求項15を、それぞれ、請求項1乃至請求項7に繰り上げたものであって、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。 また、本件補正は、特許法第17条の2第3項、第4項の規定に適合する。 第3 引用刊行物 本願の優先日前の平成6年10月25日に頒布された特開平6-297877号公報(以下「刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。 1.「【特許請求の範囲】 【請求項1】ゴム表層と、これに補強層を加えて積層構成された印刷用ゴムブランケットにおいて、ゴム補強用基布原糸として高張力化学繊維を10cm?30cm程度に切断した長繊維綿と、5cm程度までの任意短繊維綿との混紡糸、または交撚糸を用いて積層構成することを特徴とするソリッドタイプ印刷用ゴムブランケット。 【請求項2】「請求項1」により構成されたソリッドタイプ印刷用ゴムブランケットまたは従来構成ブランケットを基礎体とし、これに圧縮層構成材としてイ)たて・よこ接結多重組織の接結たて糸を任意角に構成した基布。ロ)よこ多重組織のよこ糸に、かさ高加工糸を用いて構成した基布。上記イ)ロ)の何れか、または双方を付加積層することを特徴とする圧縮性タイプ印刷用ゴムブランケット。」 2.「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は印刷用ゴムブランケット(以下ブランケットと記す)のゴム補強層及び圧縮層の構成に関するものである。」 3.「【0003】 【発明が解決しようとする課題】ソリッドタイプ、圧縮性タイプの何れのブランケットにおいても、機械運転に伴う負荷により長さが伸び、あるいは厚さを減ずる等の寸法変化が避けられず、かつ印圧に対する緩衝・復元性も劣化して連続運転が不能となり、一時作業を中断してブランケットを締め直し、あるいは下敷きパッキングを挿入する等により長さや厚さの補整を必要とするに到った。その他、ソリッドタイプブランケットにおいては印圧に伴うバルジ現象により、印刷の鮮明さを損なう恐れをも有していた。また、バルジ発生を防ぐためスポンジ層を付加積層した圧縮性タイプブランケットにおいても、十分な印圧を与え鮮明な印刷を得るためには、用い得るスポンジ層の厚さは0.5mm程度以下と制約され、過度の厚さになると「のれんに腕押し」となって必要な印圧を得られず、かつ、回転に伴う負荷でブランケット表面の動的安定を欠いて印刷の鮮明を損なう等により、圧縮性能も限定される難点があった。また、これら問題点を解決するため化学繊維(主としてフィラメントヤーン)採用の試みが重ねられて来た事も周知されているが、積層接着性や柔軟性に欠け含気性も劣る等、結果的には得る所よりも失う所が大きく、実用化には到っていないのが現状である。本発明は、以上の課題を解決するため新しくその発生要因を解明して、これに対応する新規技術を開発。これにより、ブランケットの寸法変化や緩衝・復元性劣化等を防ぎ、かつ、新しく優れた圧縮機能をも加重し得て、ここに発明を完成するに到った。」 4.「【0015】第1実施例。本発明の基礎体となるもので「請求項1」ソリッドタイプブランケット用主基布として用いる。織物規格は従来と同じく、たて糸は20番手双糸、よこ糸は20番手単糸を用い、たて糸密度55/インチ、よこ糸密度60/インチ、平織組織とする。「図1」のゴム表層(1)の下に、補助基布(2)ゴム接着層(3)主基布(4)を順次積層構成する。(5)はたて糸、(6)はよこ糸を示し、主基布(4)には、「図2」Bを用いる。従来は、高級原綿紡績糸使用を余儀なくされて来たが、本発明では、これに代え人工長繊維綿と任意短繊維綿との混紡糸、または交撚糸を用いる。補助基布(2)は、主基布に比し細番手のたて曲がり平織物(ポプリン級)を用いて、ブランケットの横伸びを防ぐ程度とするが或いはこれを省略してもよい。「図2」Aは原布を示し、製繊に伴う繊縮みで、たて・よこ糸は均衡を得た波状クリンプを呈している。Bは、これにストレッチ加工を施してたて糸クリンプを除去、たて糸は直線状となり、原布のたて・よこ曲り織物はよこ曲がり織物となって、よこ糸クリンプ波高は増大、この形態下にヒートセットを施す。 【0016】第2実施例。「請求項2」イ)圧縮性ブランケットの圧縮層(P)の構成素材となるもので、「図4」に示すたて・よこ接結二重平織組織を用いる。図4は、上下織物の接結方法を示す説明図で(S)は接結たて糸を示し、C図は単式接結法、D図は複式接結法、E図は固着式接結法を示す。3種類の接結方法と、交錯角度や接結たて糸の物性は、被印刷物の硬軟・厚薄やその偏差等を考慮して、印刷目的に適応するよう任意設計して所望の圧縮性を付与。これをソリッドタイプブランケットに付加積層して、圧縮性ブランケットを構成する。なお、単式・複式接結法を複合して鋸歯形(直角三角状)や、その左右対称形とする事も可能であり、また気泡密封スポンジ薄層を付加積層する事も可能である。」 5.上記1.【請求項1】、4.【0015】、図1、及び図2より、ゴム補強用基布原糸として高張力化学繊維を10cm?30cm程度に切断した長繊維綿と、5cm程度までの任意短繊維綿との混紡糸、または交撚糸を用いて積層構成した一重織物層が看取できる。 6.上記1.【請求項2】、4.【0016】、及び図4Dより、第1の織物プライと隣接する第2の織物プライとを備えた多重織物において、各織物プライは、たて糸方向におけるたて糸,及び接結たて糸と、前記たて糸と織り交ぜられる、前記たて糸方向に垂直なよこ糸方向におけるよこ糸とから構成され、各織物プライの前記たて糸,及び前記接結たて糸と前記よこ糸は織り交ぜられ、一点で交差しており、前記第1及び第2の織物プライは、前記多重織物内の前記第1及び第2の織物プライ間で接結たて糸とよこ糸とが一点で織り合わせによって一体化され、前記一点での前記接結たて糸とよこ糸との織り合わせは、ライザーステッチとシンカーステッチとの組み合わせにより形成され、前記ライザーステッチは、前記第2の織物プライから前記第1の織物プライに持ち上げられ、前記第1の織物プライの単一のよこ糸に引っ掛けられ、前記第2の織物プライに戻る接結たて糸によって形成され、前記シンカーステッチは、前記第1の織物プライから前記第2の織物プライに下げられ、前記第2の織物プライにおける単一のよこ糸に引っ掛けられ、前記第1の織物プライに戻る接結たて糸により形成され、前記第1の織物プライの前記たて糸及び前記よこ糸は、前記一点における前記隣接する第2の織物プライとのみ相互作用する、多重織物が看取できる。 上記記載事項1.乃至6.から、刊行物には次の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用発明」という。) 「ゴム表層と、これに補強層を加えて積層構成された印刷用ゴムブランケットにおいて、ゴム補強用基布原糸として高張力化学繊維を10cm?30cm程度に切断した長繊維綿と、5cm程度までの任意短繊維綿との混紡糸、または交撚糸を用いて積層構成した一重織物層により構成されたソリッドタイプ印刷用ゴムブランケットを基礎体とし、これに圧縮層構成材として、第1の織物プライと隣接する第2の織物プライとを備えた多重織物において、各織物プライは、たて糸方向におけるたて糸,及び接結たて糸と、前記たて糸と織り交ぜられる、前記たて糸方向に垂直なよこ糸方向におけるよこ糸とから構成され、各織物プライの前記たて糸,及び前記接結たて糸と前記よこ糸は織り交ぜられ、一点で交差しており、前記第1及び第2の織物プライは、前記多重織物内の前記第1及び第2の織物プライ間で接結たて糸とよこ糸とが一点で織り合わせによって一体化され、前記一点での前記接結たて糸とよこ糸との織り合わせは、ライザーステッチとシンカーステッチとの組み合わせにより形成され、前記ライザーステッチは、前記第2の織物プライから前記第1の織物プライに持ち上げられ、前記第1の織物プライの単一のよこ糸に引っ掛けられ、前記第2の織物プライに戻る接結たて糸によって形成され、前記シンカーステッチは、前記第1の織物プライから前記第2の織物プライに下げられ、前記第2の織物プライにおける単一のよこ糸に引っ掛けられ、前記第1の織物プライに戻る接結たて糸により形成され、前記第1の織物プライの前記たて糸及び前記よこ糸は、前記一点における前記隣接する第2の織物プライとのみ相互作用する、多重織物を付加積層した圧縮性タイプ印刷用ゴムブランケット。」 第4 対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比する。 1.後者の「圧縮性タイプ印刷用ゴムブランケット」、及び「第1の織物プライと隣接する第2の織物プライとを備えた多重織物」は、前者の「印刷用ブランケット」、及び「少なくとも1つの多重織物」に相当する。 2.後者の「ゴム表層」は、「圧縮性タイプ印刷用ゴムブランケット」の表層であるから、「印刷面」を有するのは明らかである。 3.後者の「一重織物層」は、「圧縮性タイプ印刷用ゴムブランケット」の「基礎体」を構成するものであるから、「少なくとも1つの付加的な一重織物層」といえる。そうすると、後者の「第1の織物プライと隣接する第2の織物プライとを備えた多重織物」、及び「一重織物層」とは、前者の「基礎」に相当する。 4.後者の「第1の織物プライと隣接する第2の織物プライとを備え」は、前者の「第1の織物プライと隣接する第2の織物プライとを備え」に相当する。 5.後者の「『たて糸』、『接結たて糸』」、及び「よこ糸」は、それぞれ、前者の「縦糸」、及び「横糸」に相当する。そして、後者の「たて糸」、「接結たて糸」、及び「よこ糸」はいずれも、複数の「糸」からなることが明らかであって、「セット」といえるから、後者の「各織物プライは、たて糸方向におけるたて糸,及び接結たて糸と、前記たて糸と織り交ぜられる、前記たて糸方向に垂直なよこ糸方向におけるよこ糸とから構成され」は、前者の「各織物プライは、縦糸方向における縦糸のセットと、前記縦糸と織り交ぜられる、前記縦糸方向に垂直な横糸方向における横糸のセットとから構成され」に相当する。 6.後者の「各織物プライの前記たて糸,及び前記接結たて糸と前記よこ糸は織り交ぜられ、一点で交差して」いて、特定の点(ポイント)で交差しているといえるから、後者の「各織物プライの前記たて糸,及び前記接結たて糸と前記よこ糸は織り交ぜられ、一点で交差しており」は、前者の「各織物プライの前記縦糸と前記横糸は織り交ぜられ、クロスポイントで交差しており」に相当する。 7.後者の「第1及び第2の織物プライ」は、「多重織物内の前記第1及び第2の織物プライ間で接結たて糸とよこ糸とが一点で織り合わせによって一体化され」ていて、特定の点(ポイント)で織り合わせによって一体化しているといえるから、後者の「前記第1及び第2の織物プライは、前記多重織物内の前記第1及び第2の織物プライ間で接結たて糸とよこ糸とが一点で織り合わせによって一体化され」は、前者の「前記第1及び第2の織物プライは、前記多重織物内の前記第1及び第2の織物プライ間で縦糸と横糸との点のような織り合わせによって形成されるステッチングポイントを通じて一体化され」に相当する。 8.後者の「一点での前記接結たて糸とよこ糸との織り合わせは、ライザーステッチとシンカーステッチとの組み合わせにより形成され」は、前者の「ステッチングポイントは、ライザーステッチ、シンカーステッチ、及びライザーステッチとシンカーステッチとの組み合わせ、からなる群の中から選択されるステッチにより形成され」に包含される。 9.後者の「ライザーステッチ」は、「前記第2の織物プライから前記第1の織物プライに持ち上げられ、前記第1の織物プライの単一のよこ糸に引っ掛けられ、前記第2の織物プライに戻る接結たて糸によって形成され」るものであるから、後者の「前記ライザーステッチは、前記第2の織物プライから前記第1の織物プライに持ち上げられ、前記第1の織物プライの単一のよこ糸に引っ掛けられ、前記第2の織物プライに戻る接結たて糸によって形成され」は、前者の「ライザーステッチは、前記第2の織物プライから前記第1の織物プライに持ち上げられ、前記第1の織物プライの単一の横糸に引っ掛けられ、前記第2の織物プライに戻る縦糸によって形成され」に相当する。 10.後者の「シンカーステッチ」は、「前記第1の織物プライから前記第2の織物プライに下げられ、前記第2の織物プライにおける単一のよこ糸に引っ掛けられ、前記第1の織物プライに戻る接結たて糸により形成され」るものであるから、後者の「前記シンカーステッチは、前記第1の織物プライから前記第2の織物プライに下げられ、前記第2の織物プライにおける単一のよこ糸に引っ掛けられ、前記第1の織物プライに戻る接結たて糸により形成され」は、前者の「前記シンカーステッチは、前記第1の織物プライから前記第2の織物プライに下げられ、前記第2の織物プライにおける単一の横糸に引っ掛けられ、前記第1の織物プライに戻る縦糸により形成され」に相当する。 11.後者の「第1の織物プライの前記たて糸及び前記よこ糸」は、「前記一点における前記隣接する第2の織物プライとのみ相互作用」していて、特定の点(ポイント)で相互作用しているといえるから、後者の「前記第1の織物プライの前記たて糸及び前記よこ糸は、前記一点における前記隣接する第2の織物プライとのみ相互作用する」は、前者の「前記第1の織物プライの前記縦糸及び前記横糸は、前記ステッチングポイントにおける前記隣接する第2の織物プライとのみ相互作用し」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「印刷面と基礎とを備える印刷用ブランケットであって、 前記基礎は、少なくとも1つの多重織物と、少なくとも1つの付加的な一重織物層とを備え、 各多重織物は、少なくとも、第1の織物プライと隣接する第2の織物プライとを備え、 各織物プライは、縦糸方向における縦糸のセットと、前記縦糸と織り交ぜられる、前記縦糸方向に垂直な横糸方向における横糸のセットとから構成され、 各織物プライの前記縦糸と前記横糸は織り交ぜられ、クロスポイントで交差しており、 前記第1及び第2の織物プライは、前記多重織物内の前記第1及び第2の織物プライ間で縦糸と横糸との点のような織り合わせによって形成されるステッチングポイントを通じて一体化され、 前記ステッチングポイントは、ライザーステッチ、シンカーステッチ、及びライザーステッチとシンカーステッチとの組み合わせ、からなる群の中から選択されるステッチにより形成され、 前記ライザーステッチは、前記第2の織物プライから前記第1の織物プライに持ち上げられ、前記第1の織物プライの単一の横糸に引っ掛けられ、前記第2の織物プライに戻る縦糸によって形成され、 前記シンカーステッチは、前記第1の織物プライから前記第2の織物プライに下げられ、前記第2の織物プライにおける単一の横糸に引っ掛けられ、前記第1の織物プライに戻る縦糸により形成され、 前記第1の織物プライの前記縦糸及び前記横糸は、前記ステッチングポイントにおける前記隣接する第2の織物プライとのみ相互作用する、印刷用ブランケット。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 本願発明が、「前記多重織物の大部分において、前記縦糸はそれぞれの織物プライにとどまり、同じ織物プライの中で前記横糸と織り合わされる」ものであるのに対し、引用発明では、そのような事項が特定されていない点。 第5 判断 上記相違点について、以下に検討する。 多重織物において、ライザーステッチ、及びシンカーステッチをどの程度用いて他のプライの横糸に引っ掛けるかは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。また、本願明細書をみても、本願発明において、「前記多重織物の大部分において、前記縦糸はそれぞれの織物プライにとどまり、同じ織物プライの中で前記横糸と織り合わされる」ものとした点に格別な作用効果は認められない。 そうすると、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本願発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明から、当業者が予測しうる範囲内のものである。 したがって、引用発明より、本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことといえる。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-03-05 |
結審通知日 | 2018-03-06 |
審決日 | 2018-03-19 |
出願番号 | 特願2016-505459(P2016-505459) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 亀田 宏之 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 森次 顕 |
発明の名称 | 多重織物を利用する印刷用ブランケット |
代理人 | 鵜飼 健 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 飯野 茂 |
代理人 | 井上 正 |