• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録(定型) F01D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録(定型) F01D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録(定型) F01D
管理番号 1342729
審判番号 不服2017-4505  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-31 
確定日 2018-08-21 
事件の表示 特願2012-283887「タービン及び流体から粒状物を分離するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年7月18日出願公開、特開2013-139811、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月27日(パリ条約による優先権主張2012年1月3日、米国)の出願であって、平成27年12月15日に手続補正され、平成28年7月29日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の同年11月7日に手続補正されたが、同年11月25日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。発送日:同年12月6日)され、これに対し、平成29年3月31日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正され、その後、当審において同年11月6日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由1」という。)が通知され、その指定期間内の平成30年2月1日に手続補正され、さらに、同年3月22日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由2」という。)が通知され、その指定期間内の同年6月21日に手続補正されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」という。)は、平成30年6月21日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
タービン翼形部であって、
前記タービン翼形部内部で流体を受けるよう構成された第1のキャビティと、
前記タービン翼形部内部の第2のキャビティと、
前記タービン翼形部内を正圧面側から負圧面側まで通り、第1及び第2のキャビティ間を流体連通する通路と、
を備え、
前記通路は、正圧面側から負圧面側に向かって、直線部と、U字部分と、湾曲部分とが順次配置され、
前記通路は、
前記流体が前記湾曲部分を通って流れるときに、前記流体の流れによって引き起こされる遠心力により粒状物を前記湾曲部分の半径方向外壁に向けて付勢して、前記流体から前記粒状物を分離し、
前記粒状物の量が低減された清浄な流体を前記湾曲部分の半径方向内側壁内の通路を通って前記第2のキャビティに提供し、
残留する流体を前記湾曲部分の下流部分に近接する通路を通って前記タービン翼形部の外側部分に配向する
ように構成される、
タービン翼形部。
【請求項2】
前記清浄な流体が、前記タービン翼形部の壁内の通路を通って配向されて、前記タービン翼形部の温度を制御する、請求項1に記載のタービン翼形部。
【請求項3】
前記流体が空気を含み、前記粒状物が塵埃を含む、請求項1または2に記載のタービン翼形部。
【請求項4】
タービン部品内を流れる流体から粒状物を分離する方法であって、
前記タービン部品内を第1のキャビティから、前記タービン部品内を正圧面側から負圧面側まで通って延在する通路に流体を受けるステップであって、
前記通路は、正圧面側から負圧面側に向けて順次配置された、直線部と、U字部分と、湾曲部分とを順次流れる前記流体を生じさせ、
前記流体が前記湾曲部分を通って流れるときに、前記流体の流れによって引き起こされる遠心力により前記粒状物を前記湾曲部分の半径方向外壁に向けて付勢して、前記流体から粒状物を分離し、
前記粒状物の量が低減された清浄な流体を前記湾曲部分の半径方向内側壁内の通路を通って前記第2のキャビティに提供し、
残留する流体を前記湾曲部分の下流部分に近接する通路を通って前記タービン翼形部の外側部分に配向する、
ステップと、
前記通路から粒状物の量が低減された清浄な流体を前記タービン部品内の第2のキャビティに配向するステップと、
を含む、方法。
【請求項5】
第2のキャビティの壁内の小さな通路を通って前記清浄な流体を配向し、前記部品の温度を制御するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記流体を受けるステップが空気を受けるステップを含み、前記粒状物が塵埃を含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
圧縮機と、
燃焼器と、
タービンと、
請求項1乃至3のいずれかに記載のタービン翼形部と、
を備える、タービン。」

第3 引用文献
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された英国特許出願公開第2452327号明細書(以下「引用文献」という。)には、タービン翼に関して、図面(特に、Fig3、Fig4、Fig9?Fig13参照)とともに、次の事項が記載されている。なお、仮訳は当審による。

(1)8ページ9行?27行
「Figures 3 and 4 show a turbine blade in accordance with the present invention. The blade of Figures 3 and 4 is similar to that of Figures 1 and 2, but has a different configuration in the passage 28 in order to enhance heat transfer. Features of the blade shown in Figures 3 and 4 (and in the subsequent Figures) which are the same as corresponding features in Figures 1 and 2 are denoted by the same reference numbers.

It will be appreciated from Figure 3 that the second section 16 of the duct 8 emerges into the chord-wise passage 28 at the reverse bend 22, which can be regarded as a passage inlet for the passage 28. The passage 28 is provided with three partitions 40, 42, 44 which are spaced apart in the chord-wise flow direction of cooling air along the passage 28. The partitions 40, 42, 44 extend from the outer wall 34 on the pressure side of the aerofoil 2, and stop short of the outer wall 36 on the suction side. The partitions 40, 42, 44 thus define, with the outer wall 36, respective gaps 46, 48, 50.

The partitions 40, 42, 44 divide the passage 28 into four chambers 52, 54, 56, 58 which communicate with one another through the gaps 46, 48, 50. The reverse bend 22 may be regarded as defining the inlet to the passage 28, thus, air flowing through the bend or passage inlet 22 initially reaches the first chamber 52 of the passage 28. The air flow then successively passes to the chambers 54, 56 and 58, eventually emerging to the exterior of the blade through the apertures or slots 30 at the trailing edge, which thus constitute passage exits from the passage 28.」

(仮訳)
図3及び図4は、本実施形態に係るタービン翼を示している。熱伝達を向上させるために図3および図4のブレードは、図1及び図2のものに類似しているが、通路28の構成が異なっている。図1及び図2の対応要素の図3及び図4に示されたブレードの特徴(および後続の図面)には同じ参照番号を付してある。

図3から分かるように、ダクト8の第2の部分16は、逆曲げ部22で翼弦方向の通路28内に出現し、通路28の通路入口と見なすことができる。通路28は、通路28に沿って冷却空気を翼弦方向に流れ方向で離間する3個の仕切り40、42、44を形成される。仕切り40、42、44は、エーロフォイル2の圧力側の外壁34から延在し、負圧側の外壁36の手前で止まっている。仕切り40、42、44は、外壁36と、それぞれの間隙46、48、50を規定する。

仕切り40、42、44は、通路28、間隙46、48、50を介して互いに連通する4つのチャンバ52、54、56、58に分割する。逆曲げ部22は、通路28への入口を画定すると見なすことができ、従って、曲がり又は通路入口22を通って流れる空気は、最初に流路28の第1チャンバ52に到達する。空気流は、その後、連続的にチャンバ54、56及び58を通過し、最終的に、後縁は、通路28から通路出口を構成する開口またはスロット30を通ってブレードの外部に出る。

(2)11ページ18行?24行
「In the embodiments of Figures 9 to 11, the partitions, here designated 90, 92, 94, 96, are provided with lateral extensions 98, 100, 102, 104. These extensions increase the length of the gaps 106, 108, 110, 112, thereby increasing the contact between the respective walls 34, 36 and the cooling air flowing through the gaps. In the embodiments of FIGS. 9 and 10, the extensions 98 to 104 project to one side only of the respective partition 90 to 96. However, in the embodiment of Figure 11, the extensions 98 to 104 project to both sides of the partitions 90 to 96.」
(仮訳)
図9?図11の実施形態では、仕切り90、92、94、96は、ここでは、側方延在部98、100、102、104が設けられている。これらの延長部は、間隙106、108、110、112の長さを増大させ、それにより、それぞれの外壁34、36と間隙を介して流れる冷却空気との間の接触を増大させる。図9および図10の実施形態では、延長部98ないし104は、それぞれ仕切り90?96の一方の側のみに突出している。しかし、図11の実施形態では、延長部98?104は、仕切り90?96の両側に突出している。

(3)12ページ25行?13ページ12行
「It will be appreciated that, as is known, film cooling of the external surfaces of the aerofoil can be achieved by bleeding a proportion of the cooling air from the interior of the aerofoil 2 to the exterior. This is indicted diagrammatically in Figures 12 and 13 by means of arrows 120 which represent passageways through which cooling air can flow.

It will be appreciated that such passageways 120 allow cooling air to flow from at least some of the chambers defined in the passage 28 by the partitions 90 to 96.

It will be appreciated that, in at least some of the embodiments described above, the partitions 40 to 44, 60 to 68 and 90 to 96 cause the cooling air to change direction during flow through the aperture 26. These changes of direction can serve to separate particulate material, such as dust, from the cooling air flow, causing the particles to adhere to the partitions. Consequently, dust can be prevented from reaching one or more of the gaps nearest the trailing edge of the aerofoil 2. To take account of this, the gaps can be progressively narrowed in the downstream direction. Thus, the wider upstream gaps are sufficiently wide to avoid blockage by dust or sand particles, such particles being trapped by the partitions to prevent them from reaching the narrower downstream gaps where they may cause a risk of blockage.」
(仮訳)
知られているように、エーロフォイルの外面のフィルム冷却は、エーロフォイル2の内部から冷却空気の一部分をブリードする外部により達成することができることが理解されよう。これは、冷却空気が流れることができる通路を示す矢印120によって図12および図13に概略的に示されている。

このような通路120は、仕切り90?96によって通路28に画定されたチャンバのうちの少なくとも幾つかから流れる冷却空気が可能になることが理解されよう。

本発明は、少なくとも上述のいくつかの実施形態では、仕切り40?44、60?68および90?96は、冷却空気が開口26を通って流れる間に方向を変更させることが理解されよう。これらの方向の変更は、冷却空気流から埃等の粒状物質を分離する役割を果たして、粒子は隔壁に接着させることができる。その結果、ダストは、エーロフォイル2の後縁に最も近い1つ以上の間隙に到達するのを防止することができる。これを考慮するために、間隙は、下流方向に次第に狭くなってもよい。従って、上流側の間隙である粉塵または砂粒子による閉塞を回避するのに十分に幅が広く、閉塞の危険性を引き起こす可能性があるそのような粒子は、仕切りによって捕らえられ、より狭い下流の間隙に到達するのを防止する。

上記記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「タービン翼であって、
前記タービン翼内部で流体を受けるよう構成された第1のチャンバと、
前記タービン翼内部の第2のチャンバと、
前記タービン翼内を圧力側壁34側から負圧側壁36側まで通り、第1及び第2のチャンバ間を流体連通する通路28と、
を備え、
前記通路28は、圧力側の外壁34側から負圧側の外壁36側に向かって、直線状のギャップ106、110と、方向変更部と、直線状のギャップ108、112とが順次配置され、
前記通路28は、
冷却空気から埃等の粒状物質を分離し、
冷却空気を通路120を通じて前記タービン翼の外側部分に流出する
ように構成される、
タービン翼。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「タービン翼」は前者の「タービン翼形部」に相当し、以下同様に、「通路28」は「通路」に、「チャンバ」は「キャビティ」に、「圧力側の外壁34側」は「正圧面側」に、「負圧側の外壁36側」は「負圧面側」に、「冷却空気」は「流体」に、「埃等の粒状物質」は「粒状物」にそれぞれ相当する。

また、後者の「冷却空気を通路120を通じて前記タービン翼の外側部分に流出する」と前者の「前記残留する流体を前記湾曲部分の下流部分に近接する通路を通って前記タービン翼形部の外側部分に配向する」とは、「流体を通路を通ってタービン翼形部の外側部分に配向する」という限りで一致する。

したがって、両者は、
「タービン翼形部であって、
前記タービン翼形部内部で流体を受けるよう構成された第1のキャビティと、
前記タービン翼形部内部の第2のキャビティと、
前記タービン翼形部内を正圧面側から負圧面側まで通り、第1及び第2のキャビティ間を流体連通する通路と、
を備え、
前記通路は、
流体から粒状物を分離し、
前記流体を通路を通って前記タービン翼形部の外側部分に配向する
ように構成される、
タービン翼形部。」
で一致し、次の点で相違する。

〔相違点〕
本願発明1は、「前記通路は、正圧面側から負圧面側に向かって、直線部と、U字部分と、湾曲部分とが順次配置され」、「前記通路は、前記流体が前記湾曲部分を通って流れるときに、前記流体の流れによって引き起こされる遠心力により粒状物を前記湾曲部分の半径方向外壁に向けて付勢して」流体から前記粒状物を分離し、「前記粒状物の量が低減された清浄な流体を前記湾曲部分の半径方向内側壁内の通路を通って前記第2のキャビティに提供し」、「前記残留する流体を前記湾曲部分の下流部分に近接する」通路を通ってタービン翼形部の外側部分に配向するのに対し、
引用発明は、「前記通路は、圧力側の外壁34側から負圧側の外壁36側に向かって、直線状のギャップ106、110と、方向変更部と、直線状のギャップ108、112とが順次配置され」「冷却空気を通路120を通じて前記タービン翼の外側部分に流出する」点。

そこで、相違点について検討する。
本願発明1は、上記相違点において、通路には湾曲部分が配置され「前記粒状物の量が低減された清浄な流体を前記湾曲部分の半径方向内側壁内の通路を通って前記第2のキャビティに提供し、前記残留する流体を前記湾曲部分の下流部分に近接する通路を通って」タービン翼形部の外側部分に配向するとの事項(以下「発明特定事項A」という。)を備えるものである。
他方、引用文献には発明特定事項Aに関する記載や示唆はなく、また、発明特定事項Aは自明でもない。
そうすると、上記相違点は実質的な相違点であり、また、引用発明において発明特定事項Aを備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

したがって、本願発明1は、引用文献に記載された発明であるとはいえず、又は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

2 本願発明4について
本願発明4は、「前記通路は、正圧面側から負圧面側に向けて順次配置された、直線部と、U字部分と、湾曲部分とを順次流れる前記流体を生じさせ、前記流体が前記湾曲部分を通って流れるときに、前記流体の流れによって引き起こされる遠心力により前記粒状物を前記湾曲部分の半径方向外壁に向けて付勢して、前記流体から粒状物を分離し、前記粒状物の量が低減された清浄な流体を前記湾曲部分の半径方向内側壁内の通路を通って前記第2のキャビティに提供し、残留する流体を前記湾曲部分の下流部分に近接する通路を通って前記タービン翼形部の外側部分に配向する」ことを含む方法であって、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項Aを実質的に備えているから、本願発明1と同様に、引用文献に記載された発明であるとはいえず、又は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

3 本願発明2、3及び5?7について
本願発明2、3及び5?7は、本願発明1又は4の発明特定事項を全て含むものであるから、それぞれ本願発明1又は4と同様に、引用文献に記載された発明であるとはいえず、又は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
(1)原査定の概要
ア 平成28年11月7日の手続補正により補正された請求項1?5、9?14に係る発明については、その優先日前に外国において頒布された引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
イ 同請求項1?15に係る発明については、その優先日前に外国において頒布された引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)原査定についての判断
平成30年6月21日の手続補正により補正された請求項1及び4に係る発明は、発明特定事項Aを備えるものとなっており、前記のとおり、本願発明1?7は、引用文献に記載された発明であるとはいえず、又は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由1、2の概要並びに当審拒絶理由1、2についての判断
当審では、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号及び同項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知した。
しかしながら、平成30年6月21日の手続補正により請求項1?7の記載は、前記「第2」のとおり補正されたので、これらの拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?7は、いずれも、引用文献に記載された発明であるとはいえず、又は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-06 
出願番号 特願2012-283887(P2012-283887)
審決分類 P 1 8・ 121- WYF (F01D)
P 1 8・ 113- WYF (F01D)
P 1 8・ 537- WYF (F01D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山崎 孔徳  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 冨岡 和人
佐々木 芳枝
発明の名称 タービン及び流体から粒状物を分離するための方法  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  
代理人 田中 拓人  
代理人 小倉 博  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ