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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08F |
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管理番号 | 1342810 |
審判番号 | 不服2016-10326 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-07 |
確定日 | 2018-07-31 |
事件の表示 | 特願2014-534892「熱成形品、大きい、深い、複雑なおよび/または厚い物品を製造するためのポリプロピレン、変性ポリプロピレンを大きい、深い、複雑なおよび/または厚い物品に熱成形するプロセス、ならびに該ポリプロピレンの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月18日国際公開、WO2013/053025、平成26年12月18日国内公表、特表2014-534297〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2011年10月11日を国際出願日とする出願であって、平成26年6月11日に手続補正書が提出され、平成27年6月5日付けで拒絶理由が通知され、同年9月15日に誤訳訂正書及び意見書が提出され、平成28年2月26日付けで拒絶査定がされたところ、これに対して、同年7月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年9月12日付けで前置報告書が作成され、当審において平成29年6月14日付けで平成28年7月7日付け手続補正について補正の却下の決定がされると共に拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月19日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。 第2 平成29年6月14日付けの拒絶理由の概要 1 当審における平成29年6月14日付けで通知した拒絶理由は、以下のものを含むものである。 「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 ・・・ 3 請求項1には、『炭素原子1,000個当り0.3から2個の長鎖分岐を含有することを特徴とする、・・・ポリプロピレンであって』と記載されるが、ポリマー構造、モノマー組成の点において、主鎖と長鎖分岐との区別が明らかでない。 さらに、本願明細書には、長鎖分岐の含有割合の測定方法、あるいは、算出方法についての記載はなく、『実施例』において示されるいずれのポリマーについても、変性したポリマーの長鎖分岐の含有割合は示されておらず、そもそも長鎖分岐を測定したことすら記載されていない。そして、本願出願時において、ポリプロピレンの長鎖分岐の含有割合の測定方法、算出方法が技術常識であったともいえないから、上記長鎖分岐の含有割合の測定方法、算出方法が明らかでない。 ・・・ 6 ・・・ そして、そもそも、『ポリプロピレン』のマトリックス(相)(段落【0016】、【0025】、【0028】、【0029】)と『ゴム相』とは、ポリマー構造、モノマー組成の点において、区別が明らかでない。 ・・・ 8 ・・・ そして、上記3および6で述べたように、そもそも、『変性異相コポリマーポリプロピレン』と『長鎖分岐』と『ゴム相』との関係が明らかでない。 ポリマーの構成に関するこれらの事項に関し、本願明細書を参酌すると、段落【0028】に『このように長鎖分岐を導入すると、炭素原子1000個当り0.3から2個の長鎖分岐が存在するようになり、ここで、マトリックスは、0から6重量%までのコモノマーならびにエテンおよび炭素原子数3から18のアルファ-オレフィンコモノマーを有してもよく、ゴム相がある場合、前記相は、ポリプロピレンと少なくともあと1種のエテンおよび/またはアルファ-オレフィンコモノマーとを、エテンとアルファ-オレフィンとが合わせて3から70重量%となる割合で含み、アルファ-オレフィンコモノマーは、3から18個の炭素を含む。』と記載されるものの、該記載から、『マトリックス』、『コモノマー』、『ゴム相』およびゴム相の『ポリプロピレンと少なくともあと1種のエテンおよび/またはアルファ-オレフィンコモノマー』、『炭素原子数3から18のアルファ-オレフィンコモノマー』の関係は理解できず、ゴム相を有する具体例の変性前のポリプロピレンコポリマーについて、段落【0066】に『実施例5?10については、様々なゴム含有量およびMFRを有する、様々なポリプロピレンコポリマーを使用した。ゴムの粘度はほぼ同じであり、その組成も同様である。』と記載され、表3において (略) 触媒、供給源として『パイロットプラントからの製品』、『工業製品』と記載されるにとどまり、表4において (略) ゴム含有量が、『低』、『中』、『中-高』、『高』と記載されるにとどまり、マトリックスのモノマー構成、ゴム相のモノマー構成、ゴム相の定量的な含有量は具体的に何ら示されていない。 よって、本願明細書の記載を参酌しても、請求項1の『変性異相コポリマーポリプロピレン』のポリマーとしての構成が明らかでない。 ・・・ 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、上記・・・で指摘した事項により、その内容および範囲が著しく不明確である。 したがって、本願請求項1に係る発明は、明確性以外の特許要件については、判断をしておらず、本願請求項1を引用する請求項2ないし18に係る発明については、全ての特許要件について、判断をしていない。」 2 因みに、当審拒絶理由の対象となった請求項1の記載は次のとおりのものであった。 「1.5g/10分より大きいMFR、12cNと40cNの間の190℃における溶融強度、及び11cm/秒より大きい伸長性を有し、炭素原子1,000個当り0.3から2個の長鎖分岐を含有することを特徴とする、その反応においてコモノマー0から6%を含むポリプロピレンであって、プロペンおよび少なくとも1種のアルファ-オレフィンまたはエテンコモノマーを3から70重量%である割合で含むゴム相、および炭素原子数3から18のアルファ-オレフィンコモノマーを有する、反応押出による変性で得られた熱成形品を作製するための変性異相コポリマーポリプロピレン。」 第3 特許請求の範囲の記載 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし18に係る発明は、平成29年12月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載されたとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、次のとおりである。 「1.5g/10分より大きく10g/10分までのMFR、12cNと40cNの間の190℃における溶融強度、及び11cm/秒より大きい伸長性を有し、炭素原子1,000個当り0.3から2個の長鎖分岐を含有することを特徴とする、分岐異相ポリプロピレンコポリマーであって、熱成形品の作製のための反応押出製品であり、 コモノマー0から6重量%を含むポリプロピレンマトリックス、および プロペンおよび少なくとも1種のコモノマーを含むゴム相 を含み、 ゴムが異相ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて3から70重量%である割合で存在し、 前記コモノマーがエチレンと3より多く18までの炭素を有するアルファ-オレフィンから選択される、分岐異相ポリプロピレンコポリマー。」 第4 当審の判断 1 請求項の記載 本願請求項1には、分岐異相ポリプロピレンコポリマーが、反応押出製品であること、長鎖分岐を含有すること、及びプロピレンマトリックスとゴム相とを含むこと、それらのマトリックス及びゴム相を構成するモノマー種については各々特定されている。 しかしながら、物質と物品では「物」としてのカテゴリーが異なるところ、請求項1の記載では、物質である分岐異相ポリプロピレンコポリマーと、物品である反応押出製品との対応が明らかでない。 そして、ゴムの割合が異相ポリプロピレンコポリマーの重量に基づいて特定されるが、ゴムとゴム相、及び、異相ポリプロピレンコポリマーと分岐異相ポリプロピレンコポリマーとの対応が明らかでない。 また、請求項1の記載では、長鎖分岐の構造について、分岐異相ポリプロピレンコポリマーを構成するプロピレンマトリックスとゴム相との関係、プロピレンマトリックスとゴム相の構成モノマーとの関係について特定されておらず、分岐異相ポリプロピレンコポリマーの構造について、コモノマー種、ポリプロピレンマトリックス中のコモノマー量について特定され、異相ポリプロピレンコポリマー中のゴムの量については特定されているものの、ポリプロピレンマトリックスとゴム相の配列について特定されていないこと及び上述したようにゴムとゴム相、及び、異相ポリプロピレンコポリマーと分岐異相ポリプロピレンコポリマーとの対応が明らかでないから、分岐異相ポリプロピレンコポリマーについて、長鎖分岐のモノマー組成やポリマー構造を含め、どのようなポリマー構造であるかが不明である。 2 明細書の記載 平成26年6月11日付け手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)には、長鎖分岐及び分岐異相ポリプロピレンコポリマーの構造、組成、製法について次の記載がある。 ア「本発明は、再生可能資源から得ることができる変性ポリプロピレンを対象とし、前記ポリプロピレンは、長鎖分岐をポリプロピレンマトリックス相上に挿入することによって熱成形プロセスにより適するように変性された、ホモポリマー、ランダムコポリマーまたは異相コポリマーである。本発明の文脈において、『長鎖分岐』は、1,000個より多い炭素原子を含有する分岐を意味する。」(段落【0025】) イ「前記分岐は、例えば、次の方法の1つまたは複数によって、ポリプロピレン上に導入することができる: - 反応押出:過酸化物を添加することによってフリーラジカルが生じ、それがポリプロピレン中で主鎖の分岐の形で再結合する。ラジカル発生剤は、こうしたラジカルを発生することができるアゾペルオキシド化合物、例えばジセチルペルオキシドジカーボネートなどであってもよい; - 電離放射線:電子線衝撃またはガンマ線照射がラジカルを発生し、それがポリプロピレンの分岐の形で再結合する;および - 架橋:シランなどの架橋剤がポリプロピレン鎖中にグラフト化され、それらが制御された架橋プロセスにかけられることによって、分岐構造である最終状態が生じる。」(段落【0026】) ウ「このように長鎖分岐を導入すると、炭素原子1000個当り0.3から2個の長鎖分岐が存在するようになり、ここで、マトリックスは、0から6重量%までのコモノマーならびにエテンおよび炭素原子数3から18のアルファ-オレフィンコモノマーを有してもよく、ゴム相がある場合、前記相は、ポリプロピレンと少なくともあと1種のエテンおよび/またはアルファ-オレフィンコモノマーとを、エテンとアルファ-オレフィンとが合わせて3から70重量%となる割合で含み、アルファ-オレフィンコモノマーは、3から18個の炭素を含む。」(段落【0028】) エ「変性異相コポリマーであるポリプロピレンにおいて、ゴム相は、ランダムポリプロピレンマトリックスを有する。」(段落【0032】) オ「実施例5?10については、様々なゴム含有量およびMFRを有する、様々なポリプロピレンコポリマーを使用した。ゴムの粘度はほぼ同じであり、その組成も同様である。 製品を、Table 3(表3)およびTable 4(表4)に列挙する。 【表3】 【表4】 (実施例5) コポリマー ・・・ (実施例6) ゴム含有量 ・・・ 例えば、実施例2および6でわかる通り、ポリプロピレンの特性はプロセスに極めて重要であり、ここでは、いかなる異相コポリマーポリプロピレンを変性しても熱成形に良好なものになることを意味しておらず、それは、相の特性すべてに依存する。ゴムの存在またはその含有量だけが、ポリプロピレンを熱成形により適した製品に変えるのではないことが分かる。 (実施例7) 高MFRのCPの変性 マトリックスのMFRを変性によって増加させると、・・・。この有意な変化は、ポリプロピレンマトリックスが長鎖の分岐を含有するように変化し、そしてプレートの重量によって生じる伸長変形を支えるように変化したことに起因する。単に線状ポリプロピレンを進化させれば、それが、大きい、厚い、深いおよび/または複雑な物品を熱成形するのに適切になることを意味しているのではないことは明らかである。 【表5】 (実施例8) 中間的なMFRの変性 より高いMFRのポリプロピレンを変性することにより、挙動は完全に異なるものとなり、ポリプロピレンをはるかに熱成形しやすいものとする。 ・・・ 【表6】 変性の度合いにより、製品は、温度の均一化および厚さの増大のために長時間自重を支えるのに材料が十分な強度を有するような、意図される挙動に近づくようになる。」(段落【0066】?【0078】) 以下に上記本願明細書の記載及び出願時における技術常識を加えて検討する。 上記アにおいて、長鎖分岐は1,000個より多い炭素原子を含有する分岐とされるものの、炭素原子数の上限はなく、その具体的な分岐構造が特定されてはいない。 また、上記アないしウより、長鎖分岐は、過酸化物を添加する反応押出や電離放射線あるいは架橋によってポリプロピレンマトリックス相上に主鎖の分岐の形で再結合して導入されるとされ、上記オより、ゴムを有する異相ポリプロピレンコポリマーを変性してポリプロピレンマトリックスが長鎖分岐を含有するように変化するとされている。 しかしながら、変性前のポリプロピレンマトリックスとゴムを有する異相ポリプロピレンコポリマーについて、そもそも主鎖の構造を含むコポリマーとしての構造が明らかでないことに加えて、当該(異相)ポリプロピレンコポリマーが過酸化物を添加する反応押出や電離放射線あるいは架橋といった手段により変性されて、ポリプロピレンマトリックス上に、どのような主鎖がどのような構造の鎖として分岐の形で再結合するのかが不明であり、仮に、過酸化物を添加する反応押出や電離放射線によるラジカルを用いるものの場合には、当該ラジカルは、ポリプロピレンマトリックスとゴムとの区別なく反応することの結果として、ポリプロピレンマトリックスとゴムとがランダムに架橋している構造のものが得られると認められ、これはもはや長鎖分岐を含有するポリプロピレンコポリマーといえるものではないし、そもそも主鎖と長鎖分岐との区別もできないものである。 そして、主鎖と結合する鎖が主鎖に由来する鎖であれば、主鎖と長鎖分岐とは区別ができず(そもそも、主鎖を決定することすらできない)、結合する鎖が主鎖が分解した鎖であれば、長鎖分岐の構造、組成が不明である。 また、上記オには実施例7、8として、ゴム相を含むポリプロピレンコポリマーの変性物について記載されているものの、変性物のMFR、Eta(0)(ゼロせん断粘度)、MS(溶融強度)、Ext(伸長性)が記載されるのみであって、ポリマーの長鎖分岐の構造はもとより、1000個より多い炭素原子数を有する特定の長鎖分岐の存在及びその含有割合について具体的な記載がなく、変性後の、マトリックス、ゴム相、長鎖分岐の区別、ポリマーの構造といった、ポリマー構成は何ら示されていない。 さらに、MFR、溶融強度、伸長性の条件を満たす例は実施例8の表6のCP 4 MODIIのみであるところ、当該CP 4 MODIIの変性物は、長鎖分岐の含有割合、ポリプロピレンマトリックス中のコモノマー量、ゴム相の含有量が不明であって、そもそも請求項1に係る発明に含まれるか否かも不明である。 そして、請求項1の記載からは主鎖と長鎖分岐のそれぞれの構成が特定されていないところ、請求項1に係る発明が、本願明細書、特にオに記載される、ゴム相を有するポリプロピレンコポリマーを変性してポリプロピレンマトリックスが長鎖分岐を含有するようにしたコポリマーに限定されるのか否かも明らかでない。 よって、請求項1に記載される分岐異相ポリプロピレンコポリマーについて、本願明細書の記載及び技術常識から、長鎖分岐のモノマー組成やポリマー構造を含め、どのようなポリマー構成であるかが明らかとはいえない。 3 請求人の主張について (1)主張の内容 請求人は、平成29年12月19日付けの意見書において、 「3.・・・ この点について、主鎖とは炭素原子の数が最も多い鎖を意味しており、長鎖分岐とは100より多くの炭素原子を有する分岐鎖を意味しております。 例えば、文献『Investigation of Long-Chain Branching in HDPE using Triple-Detector GPC (Hammons, J.et al. Annual Technical Conference ANTEC, 2002)』及び『Characterization of Complex Polymer Systems by Size Exclusion Chromatography - Homopolymers with Long Chain Branching and Copolymers With Compositions Drift (Hamielec, A. Pure and Applied Chemistry, Volume 54, Issue 2, Pages 293-307)』には、系中の分岐の数を見積もる方法が以下のように記載されています。 まず、『g’』(分岐因子)とは、Mark Houwinkの式から分岐の有無によらないポリマーの変位であり、下式:(式は省略)・・・ しかるに、g’の値が小さいほど、分子中の分岐の数(Bn)が大きくなる。g’の値から、下式: (式は省略) の通りBnを算出することができる。 溶液中においては、分子の構造によって主鎖さえも熱力学的に好ましいものとなることから、効果は分岐のみから得られる。 以上より、当業者であれば、請求項1に記載される『炭素原子1,000個当り0.3から2個の長鎖分岐を含有することを特徴とする、・・・ポリプロピレンコポリマー』について、主鎖と長鎖分岐とを明確に識別することができ、また長鎖分岐の含有割合を算出することもできると思料いたします。よって、当業者によれば、本願新請求項1に係る発明は十分明確に理解されると思料致します。 ・・・ 8.・・・ ここで、本願発明による分岐異相ポリプロピレンコポリマーは、 (i)マトリックスの重量に基づいて0から6重量%のコモノマーを含むポリプロピレンマトリックスと、 (ii)ゴム相の重量に基づいてプロペン及びコモノマーを含むゴム相 とを含み、 前記ゴム相が、異相ポリプロピレンの重量に基づいて3から70重量%である割合で存在し、また、両相のコモノマーが、エチレン及び3より多く18までの炭素を有するアルファ-オレフィンから選択されるものです。 前記異相コポリマーは、また、反応押出により導入された炭素原子1,000個当り0.3から2個の長鎖分岐を含有し、1.5g/10分より大きく10g/10分までのMFR、12cNと40cNの間の190℃における溶融強度、及び11cm/秒より大きい伸長性を有することを特徴としております。 新請求項1で行っております補正及び以上の説明により、本願発明による分岐異相ポリプロピレンコポリマーの構成は十分明確になったと思料いたします。 ・・・」と主張する (2)主張に対する見解 長鎖分岐の炭素原子数については、本願出願日の時点で明確な定義が存在するものではないところ、長鎖分岐とは100より多くの炭素原子を有する分岐鎖を意味するとの主張については、本願明細書の上記2 アの記載と整合せず、また、本願明細書のその他の箇所には長鎖分岐の定義についての記載もないことから、炭素原子数についての請求人の主張は認められない。 そして、提示する分岐数Bnの算出法について、該方法により、本願請求項1に記載される特定の長鎖分岐のみの分岐数が算出されるかは不明である。 また、請求人はゴム相の量に関し、「異相ポリプロピレン組成物中」の量との主張をしているが、コポリマーは化合物、すなわち、物質であり、組成物は複数の物質が含まれる混合物であって、両者は「物」として異なるカテゴリーに属するものであるところ、本願請求項1に係る発明は「分岐異相ポリプロピレンコポリマー」であるから、主張自体において用語を含めた内容が整合せず、また、本願特許請求の範囲及び明細書の記載とも対応しない。 ここで、主鎖とは炭素原子の数が最も多い鎖を意味するとの主張は理解できるものの、主鎖、長鎖分岐がそれぞれどのようにしてマトリックス、ゴム相により構成されているかというコポリマーの構造について何ら説明はなく、上記2で述べたとおり、反応押出製品である分岐異相ポリプロピレンコポリマーについて、長鎖分岐のモノマー組成やポリマー構造を含め、どのようなポリマー構造であるかが、明細書を参酌しても明らかとはいえない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 4 まとめ 以上のとおりであるから、依然として、請求項1の「分岐異相ポリプロピレンコポリマーであって、熱成形品の作製のための反応押出製品であり、・・・分岐異相ポリプロピレンコポリマー」は、ポリマーとしての構成が明らかでないから、請求項1に係る発明は明確であるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、請求項1に係る発明についての当審拒絶理由は妥当なものであって、平成29年12月19日付け意見書及び手続補正書の内容を検討しても、これを覆すに足りる根拠が見いだせないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-02-27 |
結審通知日 | 2018-03-05 |
審決日 | 2018-03-16 |
出願番号 | 特願2014-534892(P2014-534892) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(C08F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松元 洋 |
特許庁審判長 |
小野寺 務 |
特許庁審判官 |
橋本 栄和 上坊寺 宏枝 |
発明の名称 | 熱成形品、大きい、深い、複雑なおよび/または厚い物品を製造するためのポリプロピレン、変性ポリプロピレンを大きい、深い、複雑なおよび/または厚い物品に熱成形するプロセス、ならびに該ポリプロピレンの使用 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 阿部 達彦 |