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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1342816
審判番号 不服2017-13414  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-08 
確定日 2018-08-21 
事件の表示 特願2015-166506「ネットワークシステムおよびサーバ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 2日出願公開、特開2017- 45223、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成27年8月26日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年12月22日付け :拒絶理由の通知
平成29年 2月 1日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年 8月 9日付け :拒絶査定(原査定)
平成29年 9月 8日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成30年 5月16日付け :拒絶理由の通知(当審)
平成30年 5月24日 :意見書,手続補正書の提出

第2 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は,平成30年5月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-5は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
第1のユーザ操作として電源ON命令を受け付けると,識別情報を利用してネットワークに接続する第1の機器と,
第2のユーザ操作に基づく,前記第1の機器に係る認証要求を発する第2の機器と,
前記第2の機器から前記認証要求を受けた場合に,前記第1の機器に対する電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶したネットワーク接続時刻から所定の時間以内に前記認証要求を受け付けた場合に当該認証を成功と判断するサーバとを備えるネットワークシステム。
【請求項2】
前記サーバは,Web API(Application Programming Interface)サービスを提供し,
前記サーバは,前記Web APIサービスの対象となる前記第1の機器から前記第1のユーザ操作を受け付け,前記Web APIサービスを利用するための前記第2の機器から前記第2のユーザ操作に基づく前記認証要求を受け付ける,請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項3】
第1の機器から第1のユーザ操作としての電源ON命令に基づく識別情報を受信し,
第2の機器から第2のユーザ操作に基づく,前記第1の機器に係る認証要求を受信する通信インターフェイスと,
前記第1の機器に対する電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶した前記ネットワーク接続時刻から所定の時間以内に前記第2の機器から第2のユーザ操作に基づく前記認証要求を受けた場合に当該認証を成功と判断するためのプロセッサとを備えるサーバ。
【請求項4】
第1の機器が第1のユーザ操作として電源ON命令を受け付けると,識別情報を利用してネットワークに接続するステップと,
第2の機器が第2のユーザ操作に基づく,前記第1の機器に係る認証要求を発するステップと,
サーバが,前記第2の機器から前記認証要求を受けた場合に,前記第1の機器に対する電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶したネットワーク接続時刻から所定の時間以内に前記認証要求を受け付けた場合に当該認証を成功と判断するステップと,を備える情報処理方法。
【請求項5】
通信インターフェイスが,第1の機器から第1のユーザ操作としての電源ON命令に基づく識別情報を受信するステップと,
前記通信インターフェイスが,第2の機器から第2のユーザ操作に基づく,前記第1の機器に係る認証要求を受信するステップと,
プロセッサが,前記第1の機器に対する電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶した前記ネットワーク時刻から所定の時間以内に前記第2の機器から第2のユーザ操作に基づく前記認証要求を受けた場合に当該認証を成功と判断するステップと,を備えるサーバにおける情報処理方法。」

第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2014-21733号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0075】
図5Aおよび図5Bは,認証システムAにおける認証処理を示すシーケンス図である。図6は,認証処理における携帯端末装置1の表示部16に表示される画面例を示す図である。
【0076】
まず,携帯端末装置1が認証サーバ装置2にログインするために,ステップA1で認証サーバ装置2に対して認証情報を送信する。送信する認証情報は,ユーザID,装置IDなどの識別情報と,認証パスワードである。
【0077】
認証情報を受信した認証サーバ装置2は,ステップB1で記憶部24に予め登録された認証情報と照合し,一致すれば携帯端末装置1を認証してログインを受け付ける。認証が成功してログインが完了すると携帯端末装置1の表示部16には,ログイン完了を示す画面が表示される(図6(a))。
【0078】
ユーザが自律型掃除機3を認証させたい場合には,ログインした状態でIDの共有を行う。IDの共有を行う場合,携帯端末装置1の表示部16に,ID共有画面が表示されるので,たとえば「共有する」と表示されたソフトキー40をユーザがタップすると,携帯端末装置1は,ステップA2で認証サーバ装置2に対してIDの共有を要求する。具体的には,携帯端末装置1が,自律型掃除機3を認証させるための認証パスワードの発行を認証サーバ装置2に対して要求する。ここで,認証パスワードは,携帯端末装置1の認証のためのパスワードとは異なり,一時的に発行されるワンタイムパスワードである。
【0079】
ステップB2で,認証サーバ装置2が,携帯端末装置1からID共有の要求を受けると,ステップB3で,ID共有を要求してきた携帯端末装置1に対して,認証サーバ装置2がID共有情報を送信する。具体的には,自律型掃除機3を認証するためのワンタイムパスワードを発行するとともに,自律型掃除機3が認証サーバ装置2にアクセスするために必要な認証サーバ装置2のURL(サーバURL)を,ワンタイムパスワードと併せて携帯端末装置1に送信する。」

B 「【0083】
ステップA5では,選択された自律型掃除機3に対して,携帯端末装置1が,認証サーバ装置2から受信したID共有情報であるワンタイムパスワードとサーバURLとを,接続が確立されている無線通信によって送信する。
【0084】
自律型掃除機3は,ステップC1で,無線通信によって携帯端末装置1からID共有情報であるワンタイムパスワードとサーバURLとを受信する。自律型掃除機3は,ユーザからの入力を受け付ける入力手段を持たないので,ワンタイムパスワードとサーバURLを受信した自律型掃除機3は,無条件でサーバURLに基づいて認証サーバ装置2にアクセスし,ワンタイムパスワードを送信して自機の認証を要求する。
【0085】
認証サーバ装置2は,ステップB4で,自律型掃除機3から認証の要求を受け,ワンタイムパスワードを受信すると,ステップB5で受信したID共有情報であるワンタイムパスワードを記憶部24に登録されている,発行済みのワンタイムパスワードと照合し,一致すれば,ステップB6で,認証を要求してきた自律型掃除機3に対して,認証のための動作を待機させるための待機信号を送信する。
【0086】
ここで,ワンタイムパスワードが一致したとしても即座に自律型掃除機3を認証するのではなく,一旦認証のための動作を待機させる。上記のように,携帯端末装置1は,近距離無線通信によって,広範囲に存在する多くの電子機器と無線接続を確立することができるため,ステップA4で選択した1つの電子機器が,ユーザが本来認証させたい電子機器とは一致していない可能性がある。」

C 「【0089】
認証サーバ装置2は,ステップB6で自律型掃除機3に待機信号を送信した一方で,携帯端末装置1に対しては,ステップB7で,ID共有確認画面を送信する。これにより,認証サーバ装置2から,携帯端末装置1に対して自律型掃除機3の認証を許可するかどうかを確認することになる。
【0090】
携帯端末装置1は,ステップA6で,認証サーバ装置2からID共有確認画面を受信すると,表示部16に,ID共有確認画面を表示する。ID共有確認画面は,たとえば図6(d)に示すような認証期間の有効期限の設定画面を兼ねている。ID共有確認画面には,複数のラジオボタン44が表示され,有効期限となる「2時間」,「5時間」,「無制限」のうち1つを選択することができる。有効期限を選択して設定することは,すなわち認証を許可することと同義であるので,ステップA7で認証の確認操作として,ユーザが「2時間」に対応するラジオボタン44を選択して,「確認」ソフトキー45をタップすると,ステップA8で,携帯端末装置1から認証サーバ装置2に対して,自律型掃除機3の認証を許可するとの確認結果を送信する。このとき,選択した有効期限も確認結果と併せて認証サーバ装置2へと送信する。
【0091】
また,ユーザが「確認」ソフトキー45ではなく「キャンセル」ソフトキー46をタップすると,ステップA8で,携帯端末装置1から認証サーバ装置2に対して,自律型掃除機3の認証を許可しないとの確認結果を送信する。
【0092】
ユーザは,上記のように,発光部37の発光などによって認証待機状態となっている電子機器を確認し,ユーザが認証させようとしている電子機器と,待機状態となっている電子機器とが一致していれば,「確認」ソフトキー45をタップすればよく,一致していなければ,ステップA4で間違った電子機器を選択してしまったものとして「キャンセル」ソフトキー46をタップすればよい。
【0093】
認証サーバ装置2は,ステップB8で,携帯端末装置1から確認結果を受信すると,ステップB9で,確認結果が,自律型掃除機3の認証を許可するとの結果であるか認証を許可しないとの結果であるかを判断する。携帯端末装置1から受信した確認結果が,自律型掃除機3の認証を許可するとの結果であればステップB10で認証完了信号を,自律型掃除機3に対して送信し,ステップB11で認証完了画面を携帯端末装置1に対して送信する。携帯端末装置1から受信した確認結果が,自律型掃除機3の認証を許可しないとの結果であればステップB12で認証失敗信号を,自律型掃除機3に対して送信する。
…(中略)…
【0097】
このようにして自律型掃除機3の認証が完了すると,携帯端末装置1および自律型掃除機3は,サービスの提供を受けることができる。本発明において,携帯端末装置1および自律型掃除機3が受けるサービスの種類は特に限定されず,種々のサービスを受けることができる。以下では,携帯端末装置1の操作によって自律型掃除機3の動作を制御する遠隔制御が可能となる機器遠隔制御サービスについて説明する。」

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「携帯端末装置1と自律型掃除機3と認証サーバ装置2とを有する認証システムであって,
携帯端末装置1は,認証サーバ2にログインするために認証情報(ユーザID,認証パスワード,等)を送信し,
認証サーバ2は,受信した認証情報と予め登録された認証情報とを照合し,一致すれば携帯端末装置1を認証してログインを受け付け,
携帯端末装置1は,認証サーバ2によるログインが完了した後,ユーザが自律型掃除機3を認証させたい場合,ID共有画面を表示して,ユーザの操作によりソフトキー40がタップされると,認証サーバ装置2に対してID共有を要求し,
認証サーバ装置2は,ID共有を要求してきた携帯端末装置1に対して,ワンタイムパスワードを発行して,当該ワンタイムパスワードと自装置のURL(サーバURL)とをID共有情報として送信し,
携帯端末装置1は,認証サーバ2装置からID共有情報を受信すると,自律型掃除機3に対してID共有情報を送信し,
自律型掃除機3は,携帯端末装置1からID共有情報であるワンタイムパスワードとサーバURLとを受信して,サーバURLに基づいて認証サーバ装置2にアクセスし,ワンタイムパスワードを送信して自機の認証を要求し,
認証サーバ装置2は,自律型掃除機3から認証の要求を受け,受信したワンタイムパスワードを発行済みのワンタイムパスワードと照合し,一致すれば,携帯端末装置1に対して自律型掃除機3の認証を許可するかどうかを確認するためのID共有確認画面を送信し,
携帯端末装置1は,認証サーバ装置2から受信したID共有確認画面を表示して,ユーザの確認操作として,認証機関の有効期限に対応するラジオボタン44が選択され,「確認」ソフトキー45がタップされると,認証サーバ装置2に対して,自律型掃除機3の認証を許可するとの確認結果を認証サーバ装置2へ送信し,
認証サーバ装置2は,携帯端末装置1から受信した確認結果が,自律型掃除機3の認証を許可するとの結果であれば認証完了信号を自律型掃除機3に対して送信し,
自律型掃除機3の認証が完了すると,携帯端末装置1の操作によって自律型掃除機3の動作を制御する遠隔制御が可能となる認証システム。」

2 引用文献2について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2013-41379号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

D 「【0006】
本発明の携帯電子機器は,筐体と,画像を表示すると共に,接触操作を入力信号として検出するタッチパネルと,入力される音を音声信号として検出するマイクと,所定のモードにおいて,音声信号を,タッチパネルに対して行われる接触操作に基づく各種入力信号のいずれかとして処理する制御部と,を備えたことを特徴とする。」

したがって,上記引用文献2には,「装置が備えるマイクに音声を入力することにより,装置を操作する」という技術的事項が記載されていると認められる。

3 引用文献3について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2014-191510号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

E 「【0026】
次に,ユーザー認証通知システム100の処理について説明する。図5は,ユーザー認証通知システム100の処理の流れを示したフローチャートである。まず,画像形成装置1の入力受付部13がログインのための情報(ログインIDやパスワード等)の入力をユーザーから受け付けると(S11),機器側通信制御部111は,入力受付部13に入力されたログインIDと対応付けて記憶されている端末IDをユーザー情報記憶部151から抽出し,抽出した端末IDのユーザー端末3に向けたログインメッセージを機器側通信部14によりサーバー2へ送信させる(S12)。ログインメッセージは,画像形成装置1にログインしたユーザー名等を通知する内容である。
【0027】
サーバー2において,サーバー側通信部22が画像形成装置1からログインメッセージを受信すると,サーバー側通信制御部212は,ログインメッセージの宛先であるユーザー端末3に対して,その動作状態を示すレスポンスを要求する返信リクエストを送信する(S21)。
【0028】
ユーザー端末3は,サーバー2から返信リクエストを受信すると,動作状態についてのレスポンスを返信する(S31)。例えば,ユーザー端末3が電源オンの状態である内容,又はユーザー端末3にログイン中のユーザー名を示す内容をサーバー2へ返信する。
【0029】
次に,認証部211の認証方法について2つの方法を例に挙げて説明する。
(1)ユーザー端末3の電源オン/オフに基づいて認証を行う場合
サーバー側通信部22がユーザー端末3から電源オンの状態であるレスポンスを受信した場合(S22;YES),認証部211は画像形成装置1が受け付けたログインが正当なものであると判断し,サーバー側通信制御部212は画像形成装置1が受け付けたログインが正当であることをサーバー側通信部22から画像形成装置1及びユーザー端末3へ通知させる(S23)。
【0030】
予め定められた時間内にサーバー側通信部22がユーザー端末3からのレスポンスを受信しなかった(つまり,ユーザー端末3が電源オフの状態にある)場合(S22;NO),認証部211は画像形成装置1が受け付けたログインが不正なものであると判断し,サーバー側通信制御部212はサーバー側通信部22に不正ログインが行われたことを画像形成装置1と管理者端末4へ通知させる(S24)。なお,本実施形態では,ユーザー端末3は,上記S21におけるサーバー2からの上記返信リクエストに対応して,当該ユーザー端末3の動作状態を示すレスポンスを返信する機能を有していることが前提である。
【0031】
例えば,画像形成装置1とユーザー端末3が同じ環境(職場や学校)等に配置されている場合,ユーザー端末3の電源がオフということは,このユーザー端末3を割り当てられているユーザーは,当該環境内外で活動しておらず,画像形成装置1を利用可能な当該環境内にも不在である可能性が高い。ユーザー不在にもかかわらず,画像形成装置1がそのユーザーからのログイン情報を受け付けたということは,第三者がそのユーザーになりすまして画像形成装置1にログインした可能性が高い。従って,サーバー2からのリクエスト要求に対するレスポンスがユーザー端末3から無い場合(ユーザー端末3の電源がオフの場合),認証部211は不正ログインであると判断する。」

したがって,上記引用文献3には,「ユーザー端末3と画像形成装置1とサーバー2とを有するユーザー認証通知システム100であって,
画像形成装置1は,ログインメッセージをサーバー2へ送信して,
サーバー2は,画像形成装置1からログインメッセージを受信すると,ユーザー端末3に対してその動作状態を示すレスポンスを要求する返信リクエストを送信し,
ユーザー端末3は,サーバー2から返信リクエストを受信すると,ユーザー端末3が電源オンの状態であることを示すレスポンスを返信し,
サーバー2は,ユーザー端末3から電源オンの状態であるレスポンスを受信した場合,画像形成装置1が受け付けたログインが正当なものであると判断し,画像形成装置1が受け付けたログインが正当であることを画像形成装置1へ通知するユーザー認証通知システム100」という技術的事項が記載されていると認められる。

4 引用文献4について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2007-251557号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

F 「【0099】
ステップS27において,車載ID管理装置31の認証部43は,認証用データに基づいて,携帯電話機13を認証し,ステップS28において,登録処理開始の操作から認証用データと携帯IDを受信するまでの時間が,予め設定された所定時間内であるか否かを判定する。ステップS28で,登録処理開始の操作から認証用データと携帯IDを受信するまでの時間が所定時間内ではないと判定された場合,正規のユーザ2によって正規の手続きに基づいて登録操作が行われなかったとして,登録処理が終了する。」

したがって,上記引用文献4には,「機器を登録する際に機器を認証する認証処理システムにおいて,登録処理開始の操作から機器から認証情報を受信するまでの時間が所定時間内である場合に当該機器を認証する」という技術的事項が記載されていると認められる。

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明では,「携帯端末装置1は,認証サーバ2によるログインが完了した後,ユーザが自律型掃除機3を認証させたい場合,ID共有画面を表示して,ユーザの操作によりソフトキー40がタップされると,認証サーバ装置2に対してID共有を要求」するところ,「ユーザが自律型掃除機3を認証させたい場合,ID共有画面を表示して,ユーザの操作によりソフトキー40がタップされ」ることは,“第1のユーザ操作”とみることができるから,「携帯端末装置」は“第1のユーザ操作を受け付ける”といえる。
そうすると,引用発明の「携帯端末装置」は本願発明1の「第1の機器」に対応し,両者は,後記する点で相違するものの,“第1のユーザ操作を受け付ける第1の機器”である点で共通するといえる。

イ 引用発明では,「携帯端末装置1は,認証サーバ2装置からID共有情報を受信すると,自律型掃除機3に対してID共有情報を送信し」,「自律型掃除機3は,携帯端末装置1からID共有情報であるワンタイムパスワードとサーバURLとを受信して,サーバURLに基づいて認証サーバ装置2にアクセスし,ワンタイムパスワードを送信して自機の認証を要求」するところ,「携帯端末装置1」が「自律型掃除機3に対してID共有情報を送信」することは,“第2のユーザ操作”に係る動作とみることができ,「自律型掃除機」は「サーバ」に対して“認証要求”を発していると解されることから,「自律型掃除機」は“第2のユーザ操作に基づく認証要求を発する”といえる。
そうすると,引用発明の「自律型掃除機」は本願発明1の「第2の機器」に対応し,両者は,後記する点で相違するものの,“第2のユーザ操作に基づく認証要求を発する第2の機器”である点で共通するといえる。

ウ 引用発明では,「認証サーバ装置2」は,「自律型掃除機3から認証の要求を受け」た場合に,「受信したワンタイムパスワードを発行済みのワンタイムパスワードと照合し,一致すれば,携帯端末装置1に対して自律型掃除機3の認証を許可するかどうかを確認するためのID共有確認画面を送信し」,次に「携帯端末装置1」は「認証サーバ装置2から受信したID共有確認画面を表示して,ユーザの確認操作として,認証機関の有効期限に対応するラジオボタン44が選択され,「確認」ソフトキー45がタップされると,認証サーバ装置2に対して,自律型掃除機3の認証を許可するとの確認結果を認証サーバ装置2へ送信」することから,「ユーザの確認操作として,認証機関の有効期限に対応するラジオボタン44が選択され,「確認」ソフトキー45がタップされ」ることは“第1の機器に対するユーザ操作”とみることができる。
また,引用発明では,「認証サーバ装置2」は,「携帯端末装置1から受信した確認結果が,自律型掃除機3の認証を許可するとの結果であれば認証完了信号を自律型掃除機3に対して送信し,自律型掃除機3の認証が完了すると,携帯端末装置1の操作によって自律型掃除機3の動作を制御する遠隔制御が可能となる」ことから,「携帯端末装置1から受信した確認結果が,自律型掃除機3の認証を許可するとの結果」は,上位概念では,「自律型掃除機3」の認証を成功と判断するに当たり,満たすべき“所定の条件”であるといえる。
そうすると,引用発明の「認証サーバ装置」は,“前記第2の機器から前記認証要求を受けた場合に,前記第1の機器に対するユーザ操作が所定の条件を満たしているときに,当該認証を成功と判断する”といえる。
一方,本願発明1では,「サーバ」は「前記第2の機器から前記認証要求を受けた場合に,前記第1の機器に対する電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶したネットワーク接続時刻から所定の時間以内に前記認証要求を受け付けた場合に当該認証を成功と判断する」ところ,「第1の機器に対する電源ON命令」は“第1の機器に対するユーザ操作”とみることができ,「電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶したネットワーク接続時刻から所定の時間以内に前記認証要求を受け付けた場合」は上位概念では,“所定の条件”であるといえることから,「サーバ」は,“前記第2の機器から前記認証要求を受けた場合に,前記第1の機器に対するユーザ操作が所定の条件を満たしているときに,当該認証を成功と判断する”といえる。
してみると,引用発明の「認証サーバ装置」は本願発明1の「サーバ」に対応し,両者は,後記する点で相違するものの,“前記第2の機器から前記認証要求を受けた場合に,前記第1の機器に対するユーザ操作が所定の条件を満たしているときに,当該認証を成功と判断するサーバ”である点で共通するといえる。

エ 引用発明は,「携帯端末装置1と自律型掃除機3と認証サーバ装置2とを有する認証システム」であるところ,上記ア,イ,ウでの検討より,引用発明の「携帯端末装置」,「自律型掃除機」,「認証サーバ装置」は,それぞれ本願発明1の「第1の機器」,「第2の機器」,「サーバ」に対応し,「認証システム」において,「携帯端末装置」,「自律型掃除機」,「認証サーバ装置」は,ネットワークを介して接続されていることは明らかであるから,引用発明の「認証システム」は本願発明1の「ネットワークシステム」に対応するといえる。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「第1のユーザ操作を受け付ける第1の機器と,
第2のユーザ操作に基づく認証要求を発する第2の機器と,
前記第2の機器から前記認証要求を受けた場合に,前記第1の機器に対するユーザ操作が所定の条件を満たしているときに,当該認証を成功と判断するサーバとを備えるネットワークシステム。」

(相違点)
(相違点1)
第1の機器に関し,本願発明1では,「第1のユーザ操作として電源ON命令を受け付けると,識別情報を利用してネットワークに接続する」のに対して,
引用発明では,「携帯端末装置」は,“第1のユーザ操作を受け付ける”ものの,「電源ON命令を受け付けると,識別情報を利用してネットワークに接続する」ことは特定されていない点。

(相違点2)
第2の機器に関し,本願発明1では,「第2のユーザ操作に基づく,前記第1の機器に係る認証要求を発する」のに対して,
引用発明では,「自律型掃除機」は,“第2のユーザ操作に基づく認証要求を発する”ものの,「第1の機器に係る認証要求」であるとは特定されていない点。

(相違点3)
サーバに関し,本願発明1では,「第1の機器に対する電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶したネットワーク接続時刻から所定の時間以内に前記認証要求を受け付けた場合に当該認証を成功と判断する」のに対して,
引用発明では,「認証サーバ装置」は,「携帯端末装置1から受信した確認結果が,自律型掃除機3の認証を許可するとの結果」であった場合に,「自律型掃除機3」の認証を成功と判断する点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点3について
事案に鑑みて,上記相違点3を先に検討すると,引用発明では,サーバ(認証サーバ装置2)は,第2の機器(自律型掃除機3)から認証の要求を受けた場合に,第1の機器(携帯端末装置1)に対するユーザ操作が,第2の機器(自律型掃除機3)の認証を許可するとの結果であれば,当該認証を成功と判断するといえる。そして,引用発明では,第2の機器(自律型掃除機3)の認証が成功すると,第1の機器(携帯端末装置1)の操作によって第2の機器(自律型掃除機3)の遠隔操作が可能となるのであり,第1の機器(携帯端末装置1)は電源ONの状態であることが前提であると解されるから,第2の機器(自律型掃除機3)の認証成功の条件を,第1の機器(携帯端末装置1)に対するユーザ操作である「電源ON命令」に基づき記憶した第1の機器(携帯端末装置1)のネットワーク接続時刻から所定の時間以内に,第2の機器(自律型掃除機3)の認証要求を受け付けたこと,とする動機付けがあるとはいえない。
また,第2の機器の認証成功の条件を,第1の機器に対するユーザ操作である「電源ON命令」に基づき記憶した第1の機器のネットワーク接続時刻から所定の時間以内に,第2の機器の認証要求を受け付けたこと,とする旨の技術は,上記引用文献2-4には記載されておらず,本願出願前に当該技術分野において周知技術であったとまではいえず,当業者が適宜に選択し得た設計的事項であるとすることもできない。
そうすると,引用発明において,サーバが,第2の機器から認証要求を受けた場合に,第1の機器に対する電源ON命令に基づき識別情報に対応付けて記憶したネットワーク接続時刻から所定の時間以内に前記認証要求を受け付けた場合に当該認証を成功と判断すること,すなわち,本願発明1の上記相違点3に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たものであるとすることはできない。

イ まとめ
上記相違点1,2について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明,引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明1の
「第2の機器から前記認証要求を受けた場合に,前記第1の機器に対する電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶したネットワーク接続時刻から所定の時間以内に前記認証要求を受け付けた場合に当該認証を成功と判断するサーバ」(以下,「相違点3に係る構成」という。)
と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明3は,本願発明1に対応する「サーバ」の発明であり,本願発明1の「相違点3に係る構成」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明4は,本願発明1に対応する「情報処理方法」の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であり,本願発明1の「相違点3に係る構成」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5 本願発明5は,本願発明3に対応する「情報処理方法」の発明であり,本願発明3とカテゴリ表現が異なるだけの発明であり,本願発明1の「相違点3に係る構成」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明3と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,請求項1-5について上記引用文献1-4に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
しかしながら,平成30年5月24日付け手続補正により補正された請求項1-5は,それぞれ
「サーバ」が「第2の機器から前記認証要求を受けた場合に,前記第1の機器に対する電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶したネットワーク接続時刻から所定の時間以内に前記認証要求を受け付けた場合に当該認証を成功と判断する」こと,または,
「第2の機器から前記認証要求を受けた場合に,前記第1の機器に対する電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶したネットワーク接続時刻から所定の時間以内に前記認証要求を受け付けた場合に当該認証を成功と判断するサーバ」
に対応する構成を有するものとなっており,
上記のとおり,本願発明1-5は,引用発明,引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
<特許法第36条第6項第2号について>
1 当審では,請求項1の「第1のユーザ操作として電源ON命令を受け付ける第1の機器」について,電源ON命令を受け付けた後の動作,「第2のユーザ操作に基づく認証要求を発する第2の機器」の「認証要求」,「第1の機器に対する電源ON命令から所定の時間以内」が特定する事項が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年5月24日付けの手続補正により,
「第1のユーザ操作として電源ON命令を受け付けると,識別情報を利用してネットワークに接続する第1の機器」,
「第2のユーザ操作に基づく,前記第1の機器に係る認証要求を発する第2の機器」,
「前記第1の機器に対する電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶したネットワーク接続時刻から所定の時間以内」,
と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
また,請求項1を引用する請求項2についても同様に,補正によりこの拒絶の理由は解消した。

2 当審では,請求項3の「第1の機器と第2の機器と通信するための通信インターフェイス」について,「通信インターフェイス」が「第1の機器」,「第2の機器」に係る如何なる情報を受信するのか,「第1の機器に対する第1のユーザ操作としての電源ON命令から所定の期間内」が特定する事項が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年5月24日付けの手続補正により,
「第1の機器から第1のユーザ操作としての電源ON命令に基づく識別情報を受信し,第2の機器から第2のユーザ操作に基づく,前記第1の機器に係る認証要求を受信する通信インターフェイス」,
「前記第1の機器に対する電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶した前記ネットワーク接続時刻から所定の時間以内」,
と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

3 当審では,請求項4の「第1の機器が第1のユーザ操作として電源ON命令を受け付けるステップ」について,電源ON命令を受け付けた後の「第1の機器」の動作,「第2の機器が第2のユーザ操作に基づく認証要求を発するステップ」の「認証要求」,「第1の機器に対する電源ON命令から所定の時間以内」が特定する事項が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年5月24日付けの手続補正により,
「第1の機器が第1のユーザ操作として電源ON命令を受け付けると,識別情報を利用してネットワークに接続するステップ」,
「第2の機器が第2のユーザ操作に基づく,前記第1の機器に係る認証要求を発するステップ」,
「前記第1の機器に対する電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶したネットワーク接続時刻から所定の時間以内」,
と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

4 当審では,請求項5の「通信インターフェイスを介して第1の機器から第1のユーザ操作として電源ON命令に関する情報を受信するステップ」,「前記通信インターフェイスを介して第2の機器から第2のユーザ操作に基づく認証要求を受信するステップ」について,「通信インターフェイス」が「第1の機器」,「第2の機器」に係る如何なる情報を受信するのか,「第1の機器に対する電源ON命令から所定の期間内」が特定する事項が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年5月24日付けの手続補正により,
「通信インターフェイスが,第1の機器から第1のユーザ操作としての電源ON命令に基づく識別情報を受信するステップ」,
「前記通信インターフェイスが,第2の機器から第2のユーザ操作に基づく,前記第1の機器に係る認証要求を受信するステップ」,
「前記第1の機器に対する電源ON命令に基づき前記識別情報に対応付けて記憶した前記ネットワーク時刻から所定の時間以内」,
と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-5は,当業者が引用発明,引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-08 
出願番号 特願2015-166506(P2015-166506)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金沢 史明  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 辻本 泰隆
須田 勝巳
発明の名称 ネットワークシステムおよびサーバ  
代理人 山内 聡  

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