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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G |
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管理番号 | 1342849 |
審判番号 | 不服2016-14041 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-09-20 |
確定日 | 2018-08-06 |
事件の表示 | 特願2015-153774「安定した発光性トナー組成物のシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 5日出願公開、特開2015-194778〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、2008年8月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年8月21日 米国)を国際出願日とする特願2010-521996号の一部を、平成27年8月4日に新たな特許出願としたものであって、出願と同日に手続補正がなされ、同年9月1日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月3日に意見書が提出され、同年5月16日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し同年9月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 その後、当審において、平成29年8月8日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知し、その応答期間中の平成30年2月8日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。 2 本願発明 本件出願の請求項1?34に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?34に記載された事項により特定されるとおりのものであって、本件補正前の請求項1に係る発明とカテゴリーが共通する発明である、請求項4に係る発明は、以下のとおりのものである。 「 【請求項4】 発光性トナー組成物を作成する方法であって、 第1の励起エネルギーを照射されたときに、第1の発光スペクトル領域内に1つまたは複数の主発光ピークを有し、前記1つまたは複数の主発光ピークのそれぞれが対応する発光波長の中心にある、光を放射するフォトルミネッセンス剤を選択するステップと、 前記フォトルミネッセンス剤と化学的に親和性があり、可視光を照射されたときに前記可視スペクトル内の光を放射せず、前記第1の励起エネルギーを照射されたときに前記第1の発光スペクトル領域内の光を放射しない電荷制御剤を選択するステップと、 前記フォトルミネッセンス剤および前記電荷制御剤と親和性があり、可視光を照射されたときに前記可視スペクトル内の光を放射せず、前記第1の励起エネルギーを照射されたときに前記第1の発光スペクトル領域内の光を放射しない1つまたは複数の添加剤を選択するステップと、 前記フォトルミネッセンス剤、電荷制御剤、および1つまたは複数の添加剤を組み合わせて、基材上にイメージ成分を生成するように印刷されたときに前記第1の励起エネルギーの照射に対する前記イメージ成分の前記発光スペクトルが前記フォトルミネッセンス剤の前記1つまたは複数の主発光ピークに対応する主発光ピークのみを含むような発光性トナー組成物を形成するステップと、 を含む方法。」(以下、「本件発明」という。) 3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は以下のとおりである。 (1)理由1(サポート要件) 本件補正前の請求項2-5,18,19,23-31に係る発明は、トナー組成物が、何れも、フォトルミネッセンストナー安定係数が下限値以上とする限定を付したものであるが、実施例1として開示された1例のみに基づいて、上記各請求項に係る特定の式で特定されたフォトルミネッセンストナー安定係数が特定の範囲のものにまで、拡張しうるとする根拠を見いだせない。 よって、請求項2-5,18,19,23-31に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (2)理由2(進歩性) 本件補正前の請求項1,6-17,20-22に係る発明は以下の引用例1-9に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2007-17719号公報 2.特開平2-90176号公報 3.特開2007-79223号公報 4.特開2000-160050号公報 5.特開2003-107803号公報 6.特開平1-201677号公報 7.特開2002-296845号公報 8.特開2004-138727号公報 9.特開2007-206262号公報 4 引用刊行物の記載及び引用発明 (1)引用文献1 ア 当審拒絶理由に引用され、本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2007-17719号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は合議体が付与した。以下同様。) (ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 通常は無色であり紫外線を照射されることにより赤色に発光することを特徴とする蛍光トナー。 【請求項2】 前記赤色に発光する光の最大発光波長が580?800nmである、ことを特徴とする請求項1記載の蛍光トナー。 【請求項3】 前記赤色に発光する材料として「Y2 O2 S:Eu」(Y2 O2 Sにユーロピウムをドープさせた材料)を含有する、ことを特徴とする請求項1記載の蛍光トナー。 【請求項4】 通常は無色であり紫外線を照射されることにより緑色に発光することを特徴とする蛍光トナー。 【請求項5】 前記緑色に発光する光の最大発光波長が490?570nmである、ことを特徴とする請求項4記載の蛍光トナー。 【請求項6】 前記緑色に発光する材料として「BaMg2 Al16O27:Eu,Mn」(BaMg2 Al16O27にユーロピウム及びマンガンをドープさせた材料)を含有する、ことを特徴とする請求項4記載の蛍光トナー。 【請求項7】 通常は無色であり紫外線を照射されることにより青色に発光することを特徴とする蛍光トナー。 【請求項8】 前記青色に発光する光の最大発光波長が380?490nmである、ことを特徴とする請求項7記載の蛍光トナー。 【請求項9】 前記青色に発光する材料として「BaMg2 Al16O27:Eu」(BaMg2 Al16O27にユーロピウムをドープさせた材料)を含有する、ことを特徴とする請求項7記載の蛍光トナー。」 (イ) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、蛍光トナー、その蛍光トナーを用いて行う印刷方式、及びその印刷を行う印刷機に関する。 (中略) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 (中略) 【0010】 本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、紫外線の照射によってフルカラーの可視光画像を発光可能な蛍光トナー、その蛍光トナーを用いて小ロットの蛍光フルカラー画像を簡便に印刷できる印刷方式及びその印刷を行う印刷機を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0011】 第1の発明の蛍光トナーは、通常は無色であり紫外線を照射されることにより赤色に発光するように構成される。上記赤色に発光する光の最大発光波長は、例えば580?800nmである。 【0012】 この蛍光トナーは、例えば、上記赤色に発光する材料として「Y2 O2 S:Eu」(Y2 O2 Sにユーロピウムをドープさせた材料)を含有する。 【0013】 第2の発明の蛍光トナーは、通常は無色であり紫外線を照射されることにより緑色に発光するように構成される。上記緑色に発光する光の最大発光波長は、例えば490?570nmである。 【0014】 この蛍光トナーは、例えば、上記緑色に発光する材料として「BaMg2 Al16O27:Eu,Mn」(BaMg2 Al16O27にユーロピウム及びマンガンをドープさせた材料)を含有する。 【0015】 第3の発明の蛍光トナーは、通常は無色であり紫外線を照射されることにより青色に発光するように構成される。上記青色に発光する光の最大発光波長は、例えば380?490nmである。 【0016】 この蛍光トナーは、例えば、上記青色に発光する材料として「BaMg2 Al16O27:Eu」(BaMg2 Al16O27にユーロピウムをドープさせた材料)を含有する。 (中略) 【発明の効果】 【0025】 本発明によれば、紫外線の照射によってフルカラーの可視光画像を発光可能な蛍光トナー、その蛍光トナーを用いて小ロットの蛍光フルカラー画像を簡便に印刷できる印刷方式及びその印刷を行う印刷機を提供することが可能となる。」 (ウ) 「【0026】 以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。尚、以下に述べる各蛍光トナーの処方は、あらかじめ印刷に用いる印刷機の性能を考慮し、種々検討の上で決定されたものである。 【0027】 (実施形態1) 先ず、実施形態1として、通常は無色であり紫外線を照射されることにより赤色に発光する蛍光トナーの製造方法について説明する。 【0028】 1.軟化点134℃のトナー用ポリエステル樹脂86質量% 2.蛍光材料(Y2 02 Sにユーロピウムをドープさせた粒子で、平均粒子径は個数平均で1.22μm、シスメックス製FPIA-2100にて測定)10質量% 3.ポリエチレン系WAX(三井化学社製「NP056」)3質量% 4.帯電付与材(日本カーリット社製有機ホウ素化合物「LR-147」)1質量% 以上4種類の材料をミキサーにて混合した後、2軸スクリュー混練機にて温度(最高温度160℃)をかけながら混練を行った。 【0029】 得られた混練物を、2mm程度まで機械式粉砕機にて粉砕した後、気流式粉砕機にて更に小粒子径まで粉砕し、目的の粒子径に分級を行った。 【0030】 その後、シリコンオイル又はアルキルジシラザンにて表面処理したシリカ粒子(混練粉砕物に対して2質量%)を混練粉砕物に外添を行い、ふるいを通して、トナーを得た。 【0031】 このトナーの軟化温度は、133℃、平均粒径は体積平均(D50)で9.4μmである。 【0032】 (実施形態2) 次に、実施形態2として、通常は無色であり紫外線を照射されることにより緑色に発光する蛍光トナーの製造方法について説明する。 【0033】 1.軟化点134℃のトナー用ポリエステル樹脂86質量% 2.蛍光材料(BaMg2 Al16027にユーロプウム及びマンガンをドープさせた粒子で、平均粒子径は個数平均で0.96μm、シスメックス製FPIA-2100にて測定)10質量% 3.ポリエチレン系WAX(三井化学社製「NP056」)3質量% 4.帯電付与材(日本か-リット社製有機ホウ素化合物「LR-147」)1質量% 以上4種類の材料をミキサーにて混合した後、2軸スクリュー混練機にて温度(最高温度160℃)をかけながら混練を行った。 【0034】 得られた混練物を、2mm程度まで機械式粉砕機にて粉砕した後、気流式粉砕機にて更に小粒子径まで粉砕し、目的の粒子径に分級を行った。 【0035】 その後、シリコンオイル又はアルキルジシラザンにて表面処理したシリカ粒子(混練粉砕物に対して2質量%)を混練粉砕物に外添を行い、ふるいを通して、トナーを得た。 【0036】 このトナーの軟化温度は、133℃、平均粒径は体積平均(D50)で9.2μmである。 【0037】 (実施形態3) 更に、実施形態3として、通常は無色であり紫外線を照射されることにより青色に発光する蛍光トナーの製造方法について説明する。 【0038】 1.軟化点134℃のトナー用ポリエステル樹脂86質量% 2.蛍光材料(BaMg2 Al16O27にユーロプウムをドープさせた粒子で、平均粒子径は個数平均で1.00μm、シスメックス製FPIA-2100にて測定)10質量% 3.ポリエチレン系WAX(三井化学社製「NP056」)3質量% 4.帯電付与材(日本カーリット社製有機ホウ素化合物「LR-147」)1質量% 以上4種類の材料をミキサーにて混合した後、2軸スクリュー混練機にて温度(最高温度160℃)をかけながら混練を行った。 【0039】 得られた混練物を、2mm程度まで機械式粉砕機にて粉砕した後、気流式粉砕機にて更に小粒子径まで粉砕し、目的の粒子径に分級を行った。 【0040】 その後、シリコンオイル又はアルキルジシラザンにて表面処理したシリカ粒子(混練粉砕物に対して2質量%)を混練粉砕物に外添を行い、ふるいを通して、トナーを得た。 【0041】 このトナーの軟化温度は、134℃、平均粒径は体積平均(D50)で8.8μmである。」 (エ) 「【0042】 尚、上記第1?第3の実施形態では、無機系の蛍光材料を使用しているが、無機系ではなく有機系の蛍光材料を使用してもよい。 【0043】 すなわち、赤色発光の無機系蛍光材としては、Y2 O2 S:Eu(Y2 O2 Sにユーロピウムをドープさせた材料)以外の材料を用いてもよい。例えば、「Y2 O3 :Eu」、「(Y,Gd)BO3 :Eu)」、「Y(P, V)O4 :Eu」、「YVO4 :Eu」、「ZnS:Mn」、「(Sr・Mg)3 (PO4 )2 :Sn」、「(ZnSr)3 (PO4 )2 :Mn」、「3.5MgO・0.5MgF2 ・GeO2 :Mn」、「Mg5 As2 O11:Mn」、「(Ca、Sr)Si03 :Pb,Mn」等を用いることができる。 【0044】 また、緑色発光の無機系蛍光材としては、BaMg2 Al16O27:Eu・Mn(BaMg2 Al16O27にユーロピウム、およびマンガンをドープさせた材料)以外の材料を用いてもよい。例えば、「Zn2 SiO4 :Mn」、「(Ba,Sr, Mg)O・aA12 O3 Mn」、「(Y, Gd)BO3 :Tb」、「ZnO:Zn」、「(Ba, Eu)(Mg,Mn)Al10O17」、「ZnS:CulAl」、「ZnS:Cu, Au, Al」、「Gd2 O2 S:Tb」、「LaPO4 :Ce, Tb」、「Sr4 Al14O25:Eu」、「CeMgAl11O19:Tb」、「Ce(Mg, Zn)Al11O19:Mn」、「CeMgAl11O19:Ce,Tb」等を用いることができる。 【0045】 また、青色発光の無機系蛍光材としては、BaMg2 Al16O27:Eu(BaMg2 Al16O27にユーロピウムをドープさせた材料)以外の材料を用いてもよい。 例えば、「BaMgAl10O17:Eu」、「(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4 )6 C12:Eu」「(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al10O17」、「Sr10(PO4 )6 C12:Eu」、「(Ba,Eu)MgAl10O17」、「ZnS:Ag」、「Y2 SiO5 :Tb」、「ZnS:Ag,Al」、「(Sr,Ca,Ba,Mg)5 (PO4 )3 Cl=Eu」、「CaWO4 」、「Ba2 SrMg3 Al30O51:Eu,Mn」、「CaWO4 :Pb」、「Sr2 P2 O7 :Eu」、「(Sr,Ca,Ba)3 (PO4 )2 C12:Eu」、「3Sr3 (PO4 )2 C12:Eu」等を用いることができる。」 (オ) 「【0046】 (実施形態4) 続いて、実施形態4として、加法混色の三原色となる上記赤(R)、緑(G)、青(B)を蛍光発光する3種類の蛍光トナーを用いて行われる電子写真式印刷方式及び電子写真式印刷機について説明する。 【0047】 先ず、上記の3種類の蛍光トナーを、それぞれトナーカ-トリッジに充填し、これらのトナーカ-トリッジを、電子写真式印刷機(カシオ計算機製N5300)に取り付けて、一般的なプリンタ用紙に印刷を試みた。 (中略) 【0077】 これにより、前述したように、用紙18は、画像形成ユニット5-1の転写部で最初の色のトナー像として青(B)の蛍光トナー像が転写され、画像形成ユニット5-2の転写部で次に色として緑(G)の蛍光トナー像が転写され、画像形成ユニット5-3の転写部で3番目の色として赤(R)の蛍光トナー像が転写され、そして、必要に応じて、画像形成ユニット5-4の転写部で、黒のトナー像が転写される。 【0078】 このように、N5300プリンタの汎用機の特殊な設定を行うことなく、わずかな構成変更のみで、任意の画像信号の入力によって、任意の箇所にR、G、Bの3種類のいずれの蛍光トナーも印刷を行うことができた。 【0079】 蛍光トナーの印刷箇所はほぼ白色(無色)であり、用紙18の無地の箇所との視認による区別は、つき難かった。この印刷物(蛍光トナー像を転写され熱定着された用紙18)に対して、水銀ランプにて365nmの波長を含有する紫外線を照射したところ、蛍光トナーの印刷箇所がそれぞれ、赤色、緑色、青色、に発光した。 【0080】 次に、上記の蛍光トナーを組み合わせて印刷を行った。赤色蛍光トナーと緑色蛍光トナーを重ねて印刷した場合にはイエロー色に発光する画像が得られた。 【0081】 同様に、赤色蛍光トナーと青色蛍光トナーからはマゼンタ色、緑色蛍光トナーと青色蛍光トナーからはシアン色に発光する画像が得られた。 【0082】 さらに、赤色、緑色、青色、の3種類の蛍光トナーを重ねて印刷したところ、白色に発光する画像が得られた。 【0083】 すなわち、このR、G、Bの3種類の蛍光トナーを用いることで、フルカラーの蛍光発光画像を印刷することができた。 【0084】 また、R、G、Bの3種類のトナーを重ねて印刷するのではなく、並べてドット印刷を行っても、例えば3角形に配置した3ドットを1画素として3ドットの各1ドットに赤色、緑色、青色の蛍光トナーを配分するように印刷をおこなっても、それぞれ発光する3種類の蛍光トナーを使用してフルカラーの蛍光発光画像を得ることができた。 【0085】 電子写真プリンタ1(N5300)に3種類の蛍光トナーと黒トナーの4種類の画像形成ユニット5を装着して、蛍光トナー3種類の印刷とともに、黒トナーの印刷も試みた。 【0086】 その結果、同一画像内にフルカラーの蛍光画像とともに黒トナーによる印刷を行うことができた。すなわち蛍光画像と有色の黒画像はそれぞれの画像を損なうことなく印刷することができた。 【0087】 電子写真プリンタ1(N5300)に3種類の蛍光トナーと黒トナーの4種類の画像形ユニット5を装着して、「(イメージ画像に対して)黒トナーを使用しない」モードにて、写実画像の印刷を試みたところ、見た目には白色(無色)であるが紫外線を照射するとオリジナルの写真画像と同様なフルカラー画像が発現した。」 イ 引用文献1の記載事項(ウ)には、実施形態1?3として、3種類の蛍光トナーの製造方法が記載されており、記載事項(オ)には、この3種類の蛍光トナーを用いて行われる電子写真式印刷方式で印刷された印刷物についての記載がある。上記記載事項(ウ)の実施形態1?3に基づけば、引用文献には、以下の発明が記載されていると認められる。 「1.トナー用ポリエステル樹脂 2.蛍光材料 3.ポリエチレン系WAX 4.帯電付与材 以上4種類の材料をミキサーにて混合した後、2軸スクリュー混練機にて温度(最高温度160℃)をかけながら混練を行い、得られた混練物を、2mm程度まで機械式粉砕機にて粉砕した後、気流式粉砕機にて更に小粒子径まで粉砕し、目的の粒子径に分級を行い、その後、シリコンオイル又はアルキルジシラザンにて表面処理したシリカ粒子を混練粉砕物に外添を行い、ふるいを通してトナーを得る方法であって、該トナーは、通常は無色であり紫外線を照射されることにより赤色に発光する蛍光トナー、通常は無色であり紫外線を照射されることにより緑色に発光する蛍光トナー、及び、通常は無色であり紫外線を照射されることにより青色に発光する蛍光トナーであり、上記の3種類の蛍光トナーを、それぞれトナーカ-トリッジに充填し、これらのトナーカ-トリッジを、電子写真式印刷機に取り付けて、一般的なプリンタ用紙に印刷を試みると、蛍光トナーの印刷箇所はほぼ白色(無色)であり、用紙の無地の箇所との視認による区別は、つき難く、この印刷物に対して、水銀ランプにて365nmの波長を含有する紫外線を照射すると、蛍光トナーの印刷箇所がそれぞれ、赤色、緑色、青色、に発光する、トナーを得る方法。」(以下、「引用発明」という。) (2)引用文献2 当審拒絶理由に引用され、本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平2-90176号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「 <産業上の利用分野> 本発明は、電子写真において潜像を現像するための電子写真用トナーと、その製造方法と、電子写真用現像剤とに関する。」(第1頁右下欄第6?9行) イ 「 トナー粒子に用いる樹脂は、加熱あるいは圧着等の定着方法に応じて公知の樹脂から選択すればよく、特に制限はなく、例えば以下に挙げるものがある。」(第3頁右上欄第12?15行) ウ 「 着色剤は、目的に応じて選択すればよく、特に制限はない。 好適な着色剤としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。」(第3頁左下欄第3?5行) エ 「 荷電制御剤は、帯電極性、帯電量等を制御するために必要に応じて添加される。 本発明では、目的とする極性、帯電量等に応じて公知の適当な荷電制御剤を選択すればよく、特に制限はない。 例えば、金属錯塩アゾ系染料、ニグロシン系染料等が挙げられるが、これらは要求特性に応じて選択されるものである。」(第3頁右下欄第3?9行) オ 「 ワックスは離型剤として、オフセット防止のために必要に応じて添加される。 本発明では用いるワックスに特に制限はなく、公知の種々のワックス、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、シリコンワックス等を用いればよいが、これらは要求特性に応じて選択されるものである。」(第3頁右下欄第13?19行) (3)引用文献3 ア 当審拒絶理由に引用され、本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2007-79223号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、レーザービームプリンタ、ファクシミリ、デジタルコピー等に好適に用いられるトナー、並びに該トナーを用いた現像剤、トナー入り容器、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に関する。」 イ 「【0022】 本発明のトナーは、材料などについては、上記条件を満たしていれば、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、粉砕トナーとしては以下の粉砕法が好適である。また、重合トナーは、以下の水系媒体中で油相を乳化、懸濁又は凝集させトナー母体粒子を形成させる、懸濁重合法、乳化重合法、ポリマー懸濁法等がある。」 ウ 「【0028】 前記トナー材料は、少なくともバインダー、着色剤、離型剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。 【0029】 前記バインダーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-ジクロルメタクリル酸メチル共重合体、スタレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、クマロインデン樹脂、脂肪族又は脂肪族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。 これらの中でも、ポリエステル樹脂が特に好ましい。」 エ 「【0038】 -離型剤- 前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ワックス類、等が好適に挙げられる。 該ワックス類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ラノリン等の動物及び植物ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油ワックス;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレン共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン共重合体、酸価変性型ポリエチレン、酸変性型ポリエチレン、芳香族モノマーによるグラフト変性型ポリエチレン、熱分解型低密度ポリエチレン、熱分解型ポリプロピレン等のオレフィン系ワックス等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」 オ 「【0041】 -着色剤- 前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、等が挙げられる。 これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。 前記着色剤の前記トナーにおける含有量は1?15質量%が好ましく、3?10質量%がより好ましい。」 カ 「【0043】 -帯電制御剤- 前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、感光体に帯電される電荷の正負に応じて正又は負の荷電制御剤を適宜選択して用いることができる。 前記負の荷電制御剤としては、例えば、電子供与性の官能基を持つ樹脂又は化合物、アゾ染料、有機酸の金属錯体、などを用いることができる。具体的には、ボントロン(品番:S-31、S-32、S-34、S-36、S-37、S-39、S-40、S-44、E-81、E-82、E-84、E-86、E-88、A、1-A、2-A、3-A)(以上、オリエント化学工業社製))、カヤチャージ(品番:N-1、N-2)、カヤセットブラック(品番:T-2、004)(以上、日本化薬社製))、アイゼンスピロンブラック(T-37、T-77、T-95、TRH、TNS-2)(以上、保土谷化学工業社製)、FCA-1001-N、FCA-1001-NB、FCA-1001-NZ、(以上、藤倉化成社製)、などが挙げられる。 前記正の荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料等の塩基性化合物、4級アンモニウム塩等のカチオン性化合物、高級脂肪酸の金属塩等を用いることができる。具体的には、ボントロン(品番:N-01、N-02、N-03、N-04、N-05、N-07、N-09、N-10、N-11、N-13、P-51、P-52、AFP-B)(以上、オリエント化学工業社製)、TP-302、TP-415、TP-4040(以上、保土谷化学工業社製)、コピーブルーPR、コピーチャージ(品番:PX-VP-435、NX-VP-434)(以上、ヘキスト社製)、FCA(品番:201、201-B-1、201-B-2、201-B-3、201-PB、201-PZ、301)(以上、藤倉化成社製)、PLZ(品番:1001、2001、6001、7001)(以上、四国化成工業社製)、などが挙げられる。 これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」 5 対比 本件発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「トナーを得る方法」は、4種類の材料を混合、混練等の処理を経て、複数の材料の混合物からなる蛍光トナーを作成するものである。そうすると、引用発明の「トナーを得る方法」は、本件発明の「発光性トナー組成物を作成する方法」に相当する。 (2)引用発明の「蛍光材料」は、通常は無色であり、紫外線を照射されることにより赤色、緑色又は青色に発光するものである。引用発明の「蛍光材料」は、紫外線からなる第1の励起エネルギーを照射されたときに、赤色、緑色又は青色に発光するものであるから、可視光領域からなる第1の発光スペクトル領域内に1つ又は複数の主発光ピークを有する光を照射するフォトルミネッセンス剤であるといえる。 そうすると、引用発明の「蛍光材料」と本件発明の「第1の励起エネルギーを照射されたときに、第1の発光スペクトル領域内に1つまたは複数の主発光ピークを有し、前記1つまたは複数の主発光ピークのそれぞれが対応する発光波長の中心にある、光を放射するフォトルミネッセンス剤」とは、「第1の励起エネルギーを照射されたときに、第1の発光スペクトル領域内に1つまたは複数の主発光ピークを有する、光を放射するフォトルミネッセンス剤」である点で共通する。 (3)引用発明の「帯電付与材」は、技術常識に鑑みて、得られるトナーの電荷を制御するものといえるから、本件発明の「電荷制御剤」に相当する。 そして、引用発明の「帯電付与材」は、「蛍光材料」等とともに混練することができ、その結果蛍光トナーが得られるものであるから、本件発明の「前記フォトルミネッセンス剤と化学的に親和性があり」とする要件を満たすものである。さらに、上記「帯電付与材」を含むトナーを用いて一般的なプリンタ用紙に印刷を試みると、「蛍光トナーの印刷箇所はほぼ白色(無色)」であって、「水銀ランプにて365nmの波長を含有する紫外線を照射すると、蛍光トナーの印刷箇所がそれぞれ、赤色、緑色、青色、に発光する」ものであるから、引用発明の「蛍光トナー」において、「蛍光材料」以外に由来する発光は生じていないといえる。したがって、引用発明の「帯電付与材」は、本件発明の「可視光を照射されたときに前記可視スペクトル内の光を放射せず、前記第1の励起エネルギーを照射されたときに前記第1の発光スペクトル領域内の光を放射しない」とする要件も満たすものである。 (4)引用発明の「トナー用ポリエステル樹脂」及び「ポリエチレン系WAX」は、混練されてトナーを構成するものであるから、本件発明の「発光性トナー組成物」における「1つまたは複数の添加剤」に相当する。 そして、引用発明の「トナー用ポリエステル樹脂」及び「ポリエチレン系WAX」も、「蛍光材料」及び「帯電付与材」とともに混練することができ、蛍光トナーが得られるものであるから、本件発明の「前記フォトルミネッセンス剤および前記電荷制御剤と親和性があり」とする要件を満たすものである。さらに、上記「トナー用ポリエステル樹脂」及び「ポリエチレン系WAX」を含むトナーを用いて一般的なプリンタ用紙に印刷を試みると、「蛍光トナーの印刷箇所はほぼ白色(無色)」であって、「水銀ランプにて365nmの波長を含有する紫外線を照射すると、蛍光トナーの印刷箇所がそれぞれ、赤色、緑色、青色、に発光する」ものであるから、引用発明の「蛍光トナー」において、「蛍光材料」以外に由来する発光は生じていないといえる。したがって、引用発明の「トナー用ポリエステル樹脂」及び「ポリエチレン系WAX」も、本件発明の「可視光を照射されたときに前記可視スペクトル内の光を放射せず、前記第1の励起エネルギーを照射されたときに前記第1の発光スペクトル領域内の光を放射しない」とする要件を満たすものである。 (5)引用発明の「4種類の材料をミキサーにて混合した後、2軸スクリュー混練機にて温度(最高温度160℃)をかけながら混練を行い、得られた混練物を、2mm程度まで機械式粉砕機にて粉砕した後、気流式粉砕機にて更に小粒子径まで粉砕し、目的の粒子径に分級を行い、その後、シリコンオイル又はアルキルジシラザンにて表面処理したシリカ粒子を混練粉砕物に外添を行い、ふるいを通してトナーを得る」工程は、「トナー用ポリエステル樹脂」、「蛍光材料」、「ポリエチレン系WAX」、「帯電付与材」の4種類の材料を組み合わせてトナー組成物を形成する工程といえる。したがって、引用発明の「4種類の材料をミキサーにて混合した後、2軸スクリュー混練機にて温度(最高温度160℃)をかけながら混練を行い、得られた混練物を、2mm程度まで機械式粉砕機にて粉砕した後、気流式粉砕機にて更に小粒子径まで粉砕し、目的の粒子径に分級を行い、その後、シリコンオイル又はアルキルジシラザンにて表面処理したシリカ粒子を混練粉砕物に外添を行い、ふるいを通してトナーを得る」工程は、本件発明の「前記フォトルミネッセンス剤、電荷制御剤、および1つまたは複数の添加剤を組み合わせて」、「発光性トナー組成物を形成するステップ」に相当する。そして、引用発明の上記工程によって得られるトナーを用いて一般的なプリンタ用紙に印刷を試みると、「蛍光トナーの印刷箇所はほぼ白色(無色)」であって、「水銀ランプにて365nmの波長を含有する紫外線を照射すると、蛍光トナーの印刷箇所がそれぞれ、赤色、緑色、青色、に発光する」ものであるから、上記工程によって得られるトナーは、本件発明の「基材上にイメージ成分を生成するように印刷されたときに前記第1の励起エネルギーの照射に対する前記イメージ成分の前記発光スペクトルが前記フォトルミネッセンス剤の前記1つまたは複数の主発光ピークに対応する主発光ピークのみを含む」とする要件を満たしている。 (6)以上より、本件発明と引用発明とは、 「発光性トナー組成物を作成する方法であって、 第1の励起エネルギーを照射されたときに、第1の発光スペクトル領域内に1つまたは複数の主発光ピークを有する、光を放射するフォトルミネッセンス剤と、 前記フォトルミネッセンス剤と化学的に親和性があり、可視光を照射されたときに前記可視スペクトル内の光を放射せず、前記第1の励起エネルギーを照射されたときに前記第1の発光スペクトル領域内の光を放射しない電荷制御剤と、 前記フォトルミネッセンス剤および前記電荷制御剤と親和性があり、可視光を照射されたときに前記可視スペクトル内の光を放射せず、前記第1の励起エネルギーを照射されたときに前記第1の発光スペクトル領域内の光を放射しない1つまたは複数の添加剤と、 を組み合わせて、基材上にイメージ成分を生成するように印刷されたときに前記第1の励起エネルギーの照射に対する前記イメージ成分の前記発光スペクトルが前記フォトルミネッセンス剤の前記1つまたは複数の主発光ピークに対応する主発光ピークのみを含むような発光性トナー組成物を形成するステップと、 を含む方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点]本件発明は、1つまたは複数の主発光ピークのそれぞれが対応する発光波長の中心にあるフォトルミネッセンス剤を選択するステップ、荷電制御剤を選択するステップ、1つまたは複数の添加剤を選択するステップが特定されているのに対し、引用発明は、それぞれを選択するステップが特定されていない点。 6 判断 上記[相違点]について検討する。引用文献1の記載事項(ウ)の段落【0025】の「以下に述べる各蛍光トナーの処方は、あらかじめ印刷に用いる印刷機の性能を考慮し、種々検討の上で決定されたものである。」との記載や、記載事項(エ)の段落【0042】の「上記第1?第3の実施形態では、無機系の蛍光材料を使用しているが、無機系ではなく有機系の蛍光材料を使用してもよい。」との記載に基づけば、第1?第3の実施形態では、複数の蛍光材料から使用する蛍光材料を選択しており、他の材料についても種々検討の上で選択されているといえるものの、どのように選択しているかを明らかにしていない。 しかしながら、引用発明は、紫外線の照射によってフルカラーの可視光画像を発光可能なR、G、Bの3種類の蛍光トナーを提供するものである。得られるトナーを、R、G、Bいずれかの発光スペクトルを有するものとするにあたり、特定の発光スペクトル領域内に主発光ピークを有し、それが目的とする発光波長の中心にある蛍光材料を選択すること、発光スペクトルに影響を与えない帯電制御剤及び添加剤を選択することは当業者であれば当然考慮することに過ぎない。また、混合してトナーを得るものであるから、蛍光材料、帯電制御剤、添加剤を選択するに際して、混合することができるように相互に化学的親和性のある材料を選択することも、当業者であれば当然考慮することである。そして、例えば引用文献2には、記載事項イに「トナー粒子に用いる樹脂は、加熱あるいは圧着等の定着方法に応じて公知の樹脂から選択すればよく、特に制限はなく、例えば以下に挙げるものがある。」、記載事項ウに「着色剤は、目的に応じて選択すればよく、特に制限はない。」、記載事項エに「荷電制御剤は、帯電極性、帯電量等を制御するために必要に応じて添加される。本発明は、目的とする極性、帯電量等に応じて公知の適当な荷電制御剤を選択すればよく、特に制限はない。」、記載事項オに「ワックスは離型剤として、オフセット防止のために必要に応じて添加される。本発明では用いるワックスに特に制限はなく、公知のワックス、例えば…を用いればよいが、これらは要求特性に応じて選択されるものである。」との記載があり、引用文献3にも、記載事項イに「本発明のトナーは、材料などについては、上記条件を満たしていれば、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、・・・」、記載事項ウに「前記バインダーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、・・・」)、記載事項エに「前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ワックス類、等が好適に挙げられる。」、記載事項オに「前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、・・・」、記載事項カに「前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、感光体に帯電される電荷の正負に応じて正又は負の荷電制御剤を適宜選択して用いることができる。」との記載がある。以上のとおり、トナーを得るにあたり、着色剤、帯電制御剤、WAX等の添加剤を、得られるトナーが目的とする物性を有するように選択することは周知技術である。 したがって、引用発明において、蛍光材料、帯電付与剤、トナー用樹脂やWAXについて、発光スペクトルおよび化学的親和性が所望の要件を満たすように選択するステップを設けることにより、本件発明の上記[相違点]に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 なお、引用発明の方法によって得られるトナーは、「通常は無色であり紫外線を照射されることにより赤色に発光する蛍光トナー、通常は無色であり紫外線を照射されることにより緑色に発光する蛍光トナー、及び、通常は無色であり紫外線を照射されることにより青色に発光する蛍光トナー」であって、「一般的なプリンタ用紙に印刷を試みると、蛍光トナーの印刷箇所はほぼ白色(無色)であり、用紙の無地の箇所との視認による区別は、つき難く、この印刷物に対して、水銀ランプにて365nmの波長を含有する紫外線を照射すると、蛍光トナーの印刷箇所がそれぞれ、赤色、緑色、青色、に発光する」というものである。引用発明は、フォトルミネッセンス剤、荷電制御剤、1つまたは複数の添加剤を選択するステップを明示しないものの、得られるトナーが上記特性を満たすように、それぞれの材料の選択を当然行っているともいえる。 したがって、引用発明は、紫外線を照射されることにより所望とする赤色、緑色、又は、青色に発光するように、第1の励起エネルギーを照射されたときに、第1の発光スペクトル領域内に1つまたは複数の主発光ピークを有し、前記1つまたは複数の主発光ピークのそれぞれが対応する発光波長の中心にある蛍光材料を選択するステップと、混合、混練等によりトナーを得ることができるように他の材料と化学的に親和性があり、蛍光トナーの印刷箇所はほぼ白色(無色)であるように可視光を照射されたときに前記可視スペクトル内の光を放射せず、所望の色に発光するように前記第1の励起エネルギーを照射されたときに前記第1の発光スペクトル領域内の光を放射しない帯電付与材、トナー用ポリエステル樹脂及びポリエチレン系WAXを選択するステップとを、当然具備しているともいえる。 7 むすび 以上のとおり、本件発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件出願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-03-14 |
結審通知日 | 2018-03-15 |
審決日 | 2018-03-27 |
出願番号 | 特願2015-153774(P2015-153774) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03G)
P 1 8・ 113- WZ (G03G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高松 大 |
特許庁審判長 |
中田 誠 |
特許庁審判官 |
清水 康司 宮澤 浩 |
発明の名称 | 安定した発光性トナー組成物のシステムおよび方法 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 大貫 敏史 |