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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1342907
審判番号 不服2017-10415  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-12 
確定日 2018-08-08 
事件の表示 特願2014-116307「大麦を主とする即席食品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月21日出願公開、特開2015-228820〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成26年6月4日の特許出願であって、平成28年10月20日付けの拒絶理由通知書に対し、平成29年2月15日に意見書及び手続補正書が提出された後、平成29年4月10日付けで拒絶査定がされ(発送日:平成29年4月12日)、これに対し、平成29年7月12日に本件拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出された。


第2 平成29年7月12日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年7月12日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「製造工程上で単に大麦の外皮及び糠を研削加工もしくは研磨加工で除去し、加水及び加温による調質工程の後、一対のロール間のクリアランス0.5mm以下で大麦組織が破壊されるよう押圧を行う大麦を主とする即席食品の製造方法であり、該大麦製品は煮沸時間5分以内での調理を可能としたことを特徴とする大麦を主とする即席食品の製造方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年2月15日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「製造工程上で単に大麦の外皮及び糠を研削加工もしくは研磨加工で除去し、加水及び加温による調質工程の後、クリアランス0.5mm以下で大麦組織が破壊されるよう押圧を行う大麦製品の製造方法であり、該大麦製品は煮沸時間5分以内での調理が可能であることを特徴とする大麦製品の製造方法。」

2 補正の適否
(1)本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「クリアランス」を「一対のロール間のクリアランス」(以下、「補正事項1」という。)とし、同じく「調理が可能である」を「調理を可能とした」(以下、「補正事項2」という。)とし、同じく「大麦製品の製造方法」について「大麦を主とする即席食品の製造方法」(以下、「補正事項3」という。)とするものである。
このうちの補正事項3による補正について検討するに、「大麦製品」が大麦を加工した製品を意味するのに対して、「即席食品」は、【0015】を参酌すると、大麦製品に粉末スープや具材の乾燥品を加えた等の短時間で煮沸調理を行う即席食品を意味しているから、補正事項3による補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。
したがって、このような補正事項3を含む本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

(2)本件補正は、このように却下すべきものであるが、仮に本件補正が特許法第17条の2第5項第2号の減縮を目的とするものに該当するとした場合、本件補正後の請求項1に記載される発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)についても、以下に、検討する。
なお、本件補正後の請求項1中の「該大麦製品」は、明らかに「該即席食品」の誤記と理解されるので、本件補正後の請求項1に記載される発明は、次のものと認定する(以下、「本件補正発明」という。)。
「製造工程上で単に大麦の外皮及び糠を研削加工もしくは研磨加工で除去し、加水及び加温による調質工程の後、一対のロール間のクリアランス0.5mm以下で大麦組織が破壊されるよう押圧を行う大麦を主とする即席食品の製造方法であり、該即席食品は煮沸時間5分以内での調理を可能としたことを特徴とする大麦を主とする即席食品の製造方法。」

(3)引用発明
ア 原査定の拒絶の理由に引用文献1として示された、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開昭61-141849号公報(昭和61年6月28日出願公開。以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「2. 特許請求の範囲
1. 0.1?0.7mmに圧扁した扁平精白麦を70℃以上の熱水と共に1?10分間加熱することを特徴とする麦粥の製造法。
2. 0.1?0.7mmに圧扁した扁平精白麦を、沸とう水と共に1?5分加熱する特許請求の範囲第1項記載の麦粥の製造法。
3. 扁平精白麦及び又は熱水と共に調味料、香辛料、野菜、果実、魚介類、鶏肉、畜肉、精白米粉末、コーン又はその粉末、脂質、きのこ類、豆類、海藻、ミネラル、ビタミン、アミノ酸、胚芽、糠の少くとも1つ以上を加えて、雑炊とする特許請求の範囲第1項記載の麦粥の製造法。」(1ページ左下欄)
(イ)「3. 発明の詳細な説明
〔産業上の利用分野〕
本発明は、大麦を水と共に加熱して、即席的に(短時間で)麦粥を製造する方法に関する。
〔従来技術〕
従来、でんぷん含有量の多い穀類を用いて、短時間に、粥を製造する方法として、含有でんぷんをα化した形で乾燥し、これを熱水で3?10分戻して、粥を製造する方法が行われていたが、この方法は穀類、特に大麦では、粒の中心部は、10分位の加熱でも柔らかくならず、大麦の即席粥は、評判が悪かった。又、一般の押麦では、中心部迄柔らかくなったと感じるのに20?40分の煮炊時間を要して居り、即席的食品として利用されなかった。
〔発明の目的〕
本発明は、大麦を1?10分で麦粥とする場合、上記問題点を解決する方法を提供することにある。」(1ページ左下欄17行?右下欄15行)
(ウ)「〔発明の構成〕
本発明は、0.1?0.7mmに圧扁した扁平精白麦を70℃以上の熱水と共に1?10分間加熱することにより、しん(中心部)迄柔らかい麦粥を得るものである。
本発明を更に詳しく説明すると、原料とする精白麦は収穫された大麦の外皮を除去した玄麦を研削搗精し、表皮(麦糠部分)を除去した麦又は更に、中央にある黒い条溝(以下黒条又はふんどしと略記)は、人によって、食感として嫌い或は、見た目も悪いので、この黒条にそって、粒を縦に切断(以下切断麦と略記)し、更に再び研削搗精し、ふんどしを出来る丈除去した麦(後者を特に白麦とも呼んでいる)である。中には黒条をはずれて切断される粒もあるが、再研削搗精された白麦粒であれば、十分である。これら精白麦表面に蒸気をあて、水分と熱を与え(この段階では粒の表面でんぷんがα化しているか或は殆んど、α化したでんぷんはないと考えてよい)、熱ロールの圧扁機で0.1?0.7mmの厚さに圧扁する。(普通市販の押麦は、0.9mm前後の厚さであるが、これを、しん迄柔らかく煮るには20?40分を要する。)このようにして得た、0.1?0.7mm、通常0.3?0.6mm、食感の上から最も好ましくは0.3?0.5mmの扁平精白麦を麦粥の原料とすることにより1?10分の短時間(即席的)煮熟で麦粥の製造を可能としたものである。この押麦の厚みと煮炊時間について、普通市販の押麦とは、厚さがわずか0.1?0.3mm程度の差と思われるが、実験の結果では煮炊時間か1/2?1/20或はそれ以下に短縮される大きな差となることが判明したのである。更に、0.6mm以下では4?5分で煮炊され、0.1?0.3mmでは約1分で食に供しうるものである。又、本発明の扁平精白麦では保熱性のよい容器で、熱水と共に70℃以上に約2?10分保温する事によっても粥が出来る。食感として最もよい粥は、沸とう水中に0.3?0.6mmの扁平白麦を投入し、3分程度煮炊した時、マカロニー的食感が最も強く、更に嗜好的に米粥の香味を欲する時は、精白米の粉末を混入することによって得られることも判明した。
又、即席食品とする時は、調味料(塩、醤油、味噌、エキス、化学調味料等を指す)、香辛料(ゴマ又はゴマ油、ラーユの様なもの又はうめ-干等嗜好食品を含む)、野菜、果実、魚介類、鶏肉(卵を含む)、畜肉(乳又はその加工品を含む)類、精白米粉末、コーン又はその粉末、脂肪、きのこ類、海藻、豆類、ミネラル、ビタミン、アミノ酸、胚芽、糠の少くとも1種以上を加えた粥、即ち雑炊として、更に栄養強化した食品とすることが好ましい。これら雑炊とするための「ぐ」等は、乾、湿、液状等何れの状態でも添加する事が出来る。又これら「ぐ」等の添加は、扁平精白麦及び又は熱水又は白粥の何れの時期に添加してもよい。最も好まれたのは、先ず熱水をつくり、その中に「ぐ」等と、精白麦を投入し、粥状(雑炊)としたものであった。又調味料の中、食塩は米雑炊の場合より、ひかえめに添加しないとからくなるので注意を要する。
本発明を実施することにより、即席でんぷん含有食品が先づ、でんぷん質をα化するものという従来観念を打破したものであり、従ってα化工程が削除出来、且つ更に、α化でんぷんとするより、かえって、しんのない即席でんぷん加工食品のえられること、0.1?0.7mmに圧扁することによって、小粒で、キチキチブツブツする歯ごたえしたマカロニー的、洋風感覚にマッチした粥もえられる。」(1ページ右下欄16行?2ページ右下欄5行)
(エ)「実施例1
1段目の精白麦を黒条にそって切断し、更に搗精した精白麦(白麦ともいう)を約0.1?0.2mm、約0.3?0.5mm、約0.5?0.7mmに圧扁した3種の扁平精白麦を、予め調味した400mlの沸とう水中に投入した所、厚さ約0.1?0.2mmのものは約1分で、約0.3?0.5mmのものは約3分で、又約0.5?0.7mmのものは約85?90%が約5分?7分(全粒完全に柔らかくなったと思われるのは9?10分間)で、しんの固さを感じない粥となった。
実施例2
切断精白麦の0.3?0.6mmの扁平精白麦50gを、精白米粉末10gを含む400mlの熱水中に投入し、麦粥を作った所、大麦特有の臭いが消え、粘り、とろみも十分で嗜好性にとんだ麦粥がえられた。
実施例3
1段目のふんどしのついた扁平精白麦を、0.5?0.7mmに圧扁し、粉末スープ及びニラの入った沸とう水中に投入し、10分間煮炊し、雑炊を作った。この場合、しんは柔らかいが、ザラツキを感じた。しかし、押麦常食の人は、扁平白麦の場合より好ましいとする人が多かった。
実施例4
切断精白麦の0.3?0.4mmの扁平白麦40gを凍結乾燥むきえび、ニラと調合スープ及び精白米粉末5gと共に発泡スチロール容器に入れ、沸とう水200mlを入れ密閉して4分放置し麦雑炊を作った。同様の操作で20ケを作り、20名のパネルで市販の米雑炊と比較し、○1(○中に1。以下同様。)どちらを好むか、○2その理由として、(イ)しんがある、(ロ)ボソつく、(ハ)なめらかな歯ごたえあり、の設問に○印をさせた。結果は18名が、麦雑炊がうまいと答え、18名共(ハ)項の特徴を指摘した。
実施例5
切断精白麦の0.3?0.4mmの扁平白麦100gを、食塩0.4%を添加した沸とう寸前のエビむき身、海藻、カツオエキス入り豆乳700m1中に投入し、3分間90℃以上に保ち、麦粥を作った。この麦粥は、マカロニ切片の洋風粥を食べる感じであった。更に10代2名、20代15名、30代3名からなる20名のパネルで、官能評価した結果、旨い、面白いと評価した数20、又3分加熱で食べられる場合、あなたは買いますか、との問いに対し、買う、とした数20であった。」(2ページ右下欄6行?3ページ右上欄14行)
(オ)「明細書第2頁2?11行「従来、でんぷん……利用されなかった」とあるを「従来、精白麦に蒸気をあてて、直ちに、同一周速で互いに逆方向に回転する、表面平滑な熱ロール間で圧扁して、厚さ0.8?1.2mmに加工した押麦がある。しかし、この押麦は、水とともに炊飯しても、粒の中心部迄柔らかくなるのに20?40分の長い時間を要した。又、即席的機能をもたせた麦加工品として、異なる周速で回転する表面平滑な熱ロール間で擦り潰されながら固結して、ロールから剥げ落ちる麦薄片(通常flakeと呼ばれる)がある。これは、沸とう水とともに加熱した時、即席的にスープ(soup)が出来る。しかし、食感がベタベタ、ザラザラして、しかも形くずれするので、好まれない。他に精白割麦があるが、粒の中心部迄柔らかくなるのに長時間を要し、又、細かくなった破片は、ベタベタ、ザラザラして食感が悪い。上記欠点を除く他の手段として、穀類の含有するでんぷん質を炊飯α化して、そのまゝ乾燥して、加工大麦を作り、沸とう水と共に3?10分加熱して粥とする方法が行われたが、粒の中心への吸水が悪く(即ち、粒の中心部が柔らかくならず、しんがある)、この方法による大麦粥も好まれなかった。
上述のように、従来、大麦を熱水と共に加熱して麦粥を作るに際し、即席的に、食感のよい麦粥を製造する方法はなく、更に即席的短時間加熱で残存しやすい大麦特有の好まれない臭を防止する方法はなかった」と訂正。」(3ページ左下欄18行?4ページ左上欄8行(昭和60年7月24日付け手続補正書(自発)の「5.補正の内容」(2))

イ 上記記載事項(ア)?(オ)を総合すると、以下の事項が把握、認識できる。
(カ)大麦を水と共に加熱して、即席的に(短時間で)麦粥を製造することを目的とすること((イ)参照。)
(キ)収穫された大麦の外皮を除去した玄麦を研削搗精し、表皮(麦糠部分)を除去して精白麦を製造すること((ウ)参照。)。
(ク)精白麦表面に蒸気をあて、水分と熱を与え、熱ロールの圧扁機で0.1?0.7mmの厚さに圧扁して扁平精白麦を製造し、この扁平精白麦を麦粥の原料とすること((ウ)参照)。
(ケ)製造された扁平精白麦は、1?10分の短時間(即席的)煮熱で麦粥が製造できること((ウ)参照。)。
(コ)扁平精白麦の厚みを0.1?0.3mmにしたものでは約1分で食に供しうるものであること((ウ)参照)。
(サ)「ぐ」等を添加しても良く、この「ぐ」等は、乾、湿、液状等何れの状態でも良く、また、これら「ぐ」等の添加は、扁平精白麦の時期に添加してもよいこと((ウ)参照。)。

ウ 以上を踏まえ、本件補正発明の表現にならって整理すると、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「大麦の外皮を除去した玄麦を研削搗精し、麦糠部分を除去し、水分と熱を与えた後、熱ロールの圧扁機で0.1?0.3mmの厚みになるように圧扁を行う「ぐ」等を添加した大麦を用いた麦粥の原料の製造方法であり、該原料は煮熱時間約1分での即席的な調理を可能とした、「ぐ」等を添加した大麦を用いた麦粥の原料の製造方法。」

(4)発明の対比・判断
ア 対比
本件補正発明(以下、「前者」ということがある。)と引用発明(以下、「後者」ということがある。)を対比する。
(ア)後者の「大麦の外皮を除去した玄麦を研削搗精し、麦糠部分を除去し、」は、前者の「製造工程上で単に大麦の外皮及び糠を研削加工もしくは研磨加工で除去し、」に相当する。
(イ)後者の「水分と熱を与えた後、」は、前者の「加水及び加温による調質工程の後、」に相当する。
(ウ)後者の「圧扁を行う」は、対象となる大麦(精白麦)の厚みを薄くして延ばす作業であるから、前者の「大麦組織が破壊されるよう押圧を行う」に相当する。
そして、後者の「熱ロールの圧扁機で0.1?0.3mmの厚みになるように圧扁を行う」と、前者の「一対のロール間のクリアランス0.5mm以下で大麦組織が破壊されるよう押圧を行う」とは、一対のロール間で大麦組織が破壊されるよう押圧を行うの限りで共通する。
(エ) 後者の「煮熱時間約1分での即席的な調理を可能とした」は、前者の「煮沸時間5分以内での調理を可能とした」に相当し、後者の「「ぐ」等を添加した大麦を用いた麦粥の原料」は、前者の「大麦を主とする即席食品」に相当する。

イ 一致点、相違点
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で一応相違する

<一致点>
「製造工程上で単に大麦の外皮及び糠を研削加工もしくは研磨加工で除去し、加水及び加温による調質工程の後、一対のロール間で大麦組織が破壊されるよう押圧を行う大麦を主とする即席食品の製造方法であり、該即席食品は煮沸時間5分以内での調理を可能としたことを特徴とする大麦を主とする即席食品の製造方法。」

<相違点>
本件補正発明は、一対のロール間が「クリアランス0.5mm以下で」押圧を行うのに対して、引用発明は、熱ロールの圧扁機で「0.1?0.3mmの厚みになるように」圧扁を行う点

ウ 判断
上記相違点について検討する。
引用発明の熱ロールの圧扁機で「0.1?0.3mmの厚みになるように」圧扁を行うとは、一対の熱ロールの間には当然クリアランスがあって、その大きさが0.3mm以下であることは、当業者にとって自明な事項である。
そうすると、上記相違点は実質的な相違点でなく、本件補正発明は引用発明である。

(5)小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当するので、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、また、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年7月12日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年2月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されたとおりのものである(前記第2[理由]1(2)参照)。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1、2に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開昭61-141849号公報

3 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用文献1として示されたものの記載事項及びそこに記載された発明(引用発明)は、前記第2の[理由]2(3)ア及びウに記載したとおりである。

4 発明の対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明におけるクリアランスについての「一対のロール間の」という限定事項がなく、「大麦を主とする即席食品の製造方法」が「大麦製品の製造方法]であり、「調理を可能とした」が「調理が可能である」というものに相当する。
そうすると、本願発明を引用発明と対比すれば、両者には、前記第2の[理由]2(4)に記載したと同様の相当関係が成り立ち、引用発明の「大麦の外皮を除去した玄麦を研削搗精し、麦糠部分を除去し、水分と熱を与えた後、熱ロールの圧扁機で0.1?0.3mmの厚みになるように圧扁を行」ったものは、本願発明の「大麦製品」に相当し、引用発明に大麦製品の製造方法が記載されているといえるから、結局、本願発明と引用発明は、発明特定事項において異なるところがない。
したがって、本願発明は、引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当する。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当するから特許を受けることができない。
したがって、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-06-13 
結審通知日 2018-06-14 
審決日 2018-06-27 
出願番号 特願2014-116307(P2014-116307)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 厚田 一拓  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 佐々木 正章
井上 哲男
発明の名称 大麦を主とする即席食品の製造方法  
代理人 土橋 博司  

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