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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B65B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65B
管理番号 1343040
異議申立番号 異議2018-700445  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-04 
確定日 2018-08-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第6242255号発明「シール不良検査装置およびシール不良検査方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6242255号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許6242255号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成26年3月17日に特許出願され、平成29年11月17日にその特許権の設定登録がされ、その特許に対し、平成30年6月4日に特許異議申立人高橋雅和(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許6242255号の請求項1?3の特許に係る発明(以下、「本件発明1?3」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、下記のA?Rの項目は、当審が付したものであり、本件特許異議申立書の(4-1)と同様である。
「【請求項1】
A 被包装物を包装体で覆うとともに当該包装体の所定部を熱シールする手段を含む包装品製造装置において用いられるシール不良検査装置であって、
B 熱シール直後のシール部における温度を当該シール部内の複数箇所において検知するシール部温度検知手段と、
C 熱シール直後のシール隣接部における温度を当該シール隣接部内の複数箇所において検知するシール隣接部温度検知手段と、
D 前記シール部温度検知手段により検知された温度および前記シール隣接部温度検知手段により検知された温度に基づき、
E 前記シール部内の平均温度から所定以上の温度差を示す箇所を検出した場合、
F または、前記シール隣接部内の平均温度から所定以上の温度差を示す箇所を検出した場合に
G シール不良と判定するシール不良検出手段と、
H を備えるシール不良検査装置。
【請求項2】
I 前記包装品製造装置により製造される包装品は、背貼り部が設けられたピロータイプの包装品であり、
J 前記シール部温度検知手段および前記シール隣接部温度検知手段は、前記背貼り部の温度を検知しないことを特徴とする請求項1に記載のシール不良検査装置。
【請求項3】
K 被包装物を包装体で覆うとともに当該包装体の所定部を熱シールする手段を含む包装品製造装置において用いられるシール不良検査方法であって、
L 熱シール直後のシール部における温度を当該シール部内の複数箇所において検知するシール部温度検知工程と、
M 熱シール直後のシール隣接部における温度を当該シール隣接部内の複数箇所において検知するシール隣接部温度検知工程と、
N 前記シール部温度検知工程により検知された温度および前記シール隣接部温度検知工程により検知された温度に基づき、
O 前記シール部内の平均温度から所定以上の温度差を示す箇所を検出した場合、
P または、前記シール隣接部内の平均温度から所定以上の温度差を示す箇所を検出した場合に
Q シール不良と判定するシール不良を検出するシール不良検出工程と、
R を含むシール不良検査方法。」

第3 申立理由の概要
1.申立理由1(進歩性欠如)
申立人は、主たる証拠として次の甲第1号証を提出するとともに、従たる証拠として次の甲第2号証、甲第3号証を提出し、周知技術を示す証拠として次の甲第4号証?甲第6号証を提出し、本件発明1?3は、特許法第29条第2項の規定に該当するものであるから、それらの特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべき旨を主張している。
甲第1号証:特開2000-79917号公報
甲第2号証:特開平6-144416号公報
甲第3号証:特開平10-59331号公報
甲第4号証:特開2013-1405号公報
甲第5号証:特開2008-36878号公報
甲第6号証:特開2013-14365号公報
以下、上記甲第1号証?甲第6号証を、それぞれ、刊行物1?6という。

2.申立理由2(サポート要件違反)
申立人は、本件発明1?3は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、それらの特許は同法113条第4号の規定により取り消されるべき旨を主張している。

3.申立理由3(実施可能要件違反)
申立人は、本件発明1?3は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、それらの特許は同法113条第4号の規定により取り消されるべき旨を主張している。

第4 刊行物の記載事項、技術的事項ないし発明
1.刊行物1について
(1)刊行物1には、下記の事項が図面とともに記載されている。
ア.
「【0001】
【産業の属する技術分野】本発明は、包装体熱シール部における内容物の噛み込み、内容物の表面への付着、シール過不足、斜めシールなどのシール不良を検出するための非破壊検査方法に関する。」

イ.
「【0010】
【発明の実施の形態】《包装用袋》本発明で用いる包装用袋はヒートシール可能な袋でれば何でも良い。特にアルミニウム箔ラミネートフィルムなど非透視性の包装材料で作製した包装用袋を用いたレトルト食品の場合に、本発明の意義が大きいものとなる。充填物(被包装物)の種類、形態は問わないが、シール部分への内容物の噛み込み、表面への内容物の付着などが生じる液体状のレトルト食品の場合に、本発明の意義が大きいものとなる。
【0011】《ヒートシール》図3は、一般的に使用される充填機である。袋把持装置で把持された包装用袋は、テーブル回りにテーブルと連動して間歇回動し、充填物が充填され包装(ヒートシール)されるようになっている充填機である。包装用袋としては例えば3辺をシールして製袋した袋を用い、充填物としては例えば液体状のレトルト食品が充填され、開口部をシールヒーターで挟んで加熱しシールする。シール幅は袋の大きさ、充填物の種類などに応じ8mm幅などと適宜決められる。
【0012】《包装体のシール不良》レトルト食品などの充填ラインにおいて、充填後開口部をヒートシール(150?180℃)するとき、下記のようなシール不良が発生する。
(1)包装体熱シール部における内容物の噛み込み
レトルト食品等を包装用袋に充填する場合には、開口部より被包装物を充填した後、その開口部をヒートシールによってシールするが、このときシール部に内容物を噛み込むとシール不良を生じることがある。このような場合、その後の過程において密封性が失われ、内容物が流れ出したり、内容物の腐敗などを起こす恐れがある。
(2)内容物の表面への付着
シール部表面に内容物(液体や具)が付着すると、ヒートシール後にシール部分に内容物の焦げつきが残ったり、また液体が付着した場合には滅菌工程後、シミとして残ったりする場合があり、商品価値を失うことになる。
(3)シール過不足、斜めシール
レトルト食品などの充填ラインにおいては、袋把持装置にて包装用袋を把持しながら、充填やヒートシールの工程が進められていくが、包装用袋を袋把持装置に受け渡しする際に、袋が傾いたり袋が所定の位置に把持されなかったりすると、斜めシールやシール幅不足等のシール不良を生じる(図1参照)。この場合、その後の工程における衝撃で密封性を失いやすいとともに、シール部分の見栄えも悪く商品価値を落とす。
【0013】《シール部分の温度情報》内容物の温度はヒートシール温度に比してが低い。シール部分に内容物が噛み込むと、ヒートシール温度に比して内容物の温度が低いため、その部分に温度降下が生じる。シール部表面や裏面に内容物の付着があった場合には、包装袋材質と付着物の放射率や熱伝導率の違い、温度差などが生ずる。本発明ではこうしたヒートシール直後のシール部分の温度情報に基づきシール不良を検出しようとするものである。シール部分に内容物が噛み込むと、ヒートシール温度に比して内容物の温度が低いため、その部分に温度降下が生じ、シール不良として検出することが可能である。噛み込む具材(タマネギのの薄皮など)によっては細長い繊維状の噛み込みを生じる場合があるが、本手法により安定して検出できる。生じる幅不足や斜めシールについては、シール幅の狭い部分の波形の絶対レベルが下がるため、シール不良として検出することが可能である。シール幅過多がある場合には、シール幅不足とは逆に、温度分布とシール幅を示すような波形の絶対レベルが正常品に比して高くなるために検出が可能である。シール部表面や裏面に内容物の付着があった場合には、包装袋材質と付着物の放射率や熱伝導率の違い、温度差などにより熱画像に変化が表れシール不良として検出できる。
【0014】《シール部分の熱画像情報》ヒートシール直後のシール部分の温度分布は、好ましくは例えばヒートシール直後のシール部分の赤外線カメラで撮像した熱画像情報を処理することによって計測される(図4参照)。赤外線カメラでとらえたシール部熱画像を画像処理装置で処理し、シール不良を検出する。熱シール後、シールヒーターが開くが、そのタイミングでシール部分を赤外線カメラでとらえる。赤外線カメラでとらえたシール部熱画像を画像処理装置で処理する。シール不良品は、画像処理装置からのシール不良信号により、取り出しコンベア以降の不良品除去機構によって排出される。図2のaに示すように、監視領域(図中破線枠)において、赤外線カメラによって得られた各点のパラメータ値を縦方向に積算し、シール幅と温度分布を表すような波形を作成する。正常にヒートシールされたものについては、図2のa′のような波形が得られる。この波形の最大値、最小値、微分値、偏差などを監視することによってシール不良を検出する。」

ウ.
「【0018】実施例1
図3は一般的に使用される充填機、袋把持装置把持された袋をテーブル回りに回転しながら充填物を充填し包装(ヒートシール)するような充填機である。包装用袋は、ポリプロピレン、アルミニウムおよびポリエチレンテレフタレートの3層構造のラミネートフィルムで作製した126×165、134×167、140×180の3種類のサイズのものを用いた。3辺をシールして製袋した包装用袋に、液体状のレトルト食品を充填し開口部をシール幅8mmでヒートシールした。図4に示すように、包装体は、充填後、開口部をシールヒーターで挟んで加熱しシールし、図5に示すように、熱シール後、シールヒーターが開いたそのタイミングでシール部分を赤外線カメラでとらえた。赤外線カメラでとらえたシール部熱画像を画像処理装置で処理し、シール不良を検出した。シール不良品は、画像処理装置からのシール不良信号により、取り出しコンベア以降の不良品除去機構によって排出した。
【0019】図2のbのように、シール部分への内容物に噛み込みがある場合には、ヒートシール温度に比して内容物の温度が低いため、その部分に温度降下が生じ、画像処理によって図2のb′で示した波形が得られた。図2のcのように、シール部表面や裏面に内容物の付着がある場合には、包装袋材質と付着物の放射率や熱伝導率の違い、温度差などにより熱画像に変化が表れ、画像処理によって図2のc′で示したシール幅と温度分布を表す波形が得られた。図2のd、eのようにシール幅不足、斜めシールがある場合には、シール幅の狭い部分の波形の絶対レベルが下がるため、画像処理によって図2のd′、e′で示した波形が得られた。シール幅過多がある場合には、波形の絶対レベルが高くなるため、シール幅不足とは逆に、画像処理によって正常品に比して高いレベルの波形が得られた(図面省略)。赤外線カメラでとらえたシール部熱画像を画像処理装置で処理して得られたこれらの波形はいずれも正常にヒートシールされたものについて得られた波形と対比することによりシール不良であると判別された。シール不良品は、画像処理装置からのシール不良信号により、取り出しコンベア以降の不良品除去機構によって輩出された。」

エ.
図1





図2





図3





図4





図5





(2)上記(1)の摘記事項を踏まえると、刊行物1には次の刊行物1発明1及び刊行物1発明2が記載されている。
刊行物1発明1:
「内容物を包装体で覆うとともに当該包装体の開口部をヒートシールするシールヒータを含む充填機を備えた装置において用いられるシール不良を検査する装置であって、
ヒートシール直後のシール部を含む監視領域における温度を当該監視領域の複数箇所において検知する赤外線カメラと、
前記赤外線カメラにより検知された温度に基づいて温度分布を表す波形を得て、この波形を正常にヒートシールされたものについて得られた波形と対比することによりシール不良と判定する手段と、
を備えるシール不良を検査する装置。」

刊行物1発明2:
「内容物を包装体で覆うとともに当該包装体の開口部をヒートシールするシールヒータを含む充填機を備えた装置において用いられるシール不良を検査する方法であって、
ヒートシール直後のシール部を含む監視領域における温度を当該監視領域の複数箇所において検知する温度を検知する工程と、
前記温度を検知する工程により検知された温度に基づいて温度分布を表す波形を得て、この波形を正常にヒートシールされたものについて得られた波形と対比することによりシール不良と判定するシール不良を検出する工程と、を含むシール不良を検査する方法。」

2.刊行物2について
刊行物2には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(1)
「【請求項2】 前記ヒートシール部のシール幅方向に沿う各点の温度を単一の温度センサによるスキャニングにより検出する請求項1記載の容器のヒートシール状態検査方法。」

(2)
「【0026】・・・温度計20は、単一材にて、ヒートシール部のシール幅方向に沿う各点の温度をスキャニングにより検出する。」

(3)
「【0060】2○(当審注:「2」を「○」で囲んだもの)赤外線放射表面温度計20はヒートシール部のシール幅方向に沿う各点の温度を検出するものであり、検出精度が高い。」

(4)
「【0064】・・・第1容器検出器51のオン?第2容器検出器52のオンの検出タイミングの間(容器Tが温度計20の前面を通過する間)の温度計20の出力電圧に対し、適正温度範囲の上限値Hi と下限値Lo とを設定し、電圧の立ち下がりが、Hi 又はLo を越えると「1」、そうでなければ「0」を認識するものとする。
【0065】図12において、良品容器Tでは、容器Tのヒートシール部の一端が赤外線放射表面温度計20の前面に入るときと、他端が温度計20の前面から出るときの2回だけ、「1」を認識せしめるのに対し、不良品容器Tでは、上記2回の他に、不良シール部の液付きに基づく特異温度情報の存在が「1」を認識せしめる。・・・
【0066】即ち、図12の検出タイミング?ではA、Bの位置で「1」を2回認識して良品を判定し、?ではC、Dの位置で「1」を2回認識して良品を判定し、?ではE、F、Gの位置で「1」を3回認識して不良品を判定するものとなる。
【0067】尚、本発明の実施においては、容器Tのヒートシール部の表面温度検出手段として、単一の赤外線放射表面温度計にてスキャニングするものに限らず、ヒートシール部のシール幅方向の各点に対応し得る複数個の温度検出素子をライン状に並列配置してなるラインセンサ型の赤外線放射表面温度計を用いることもできる。このラインセンサ型の赤外線放射表面温度計を用いれば、容器Tのシール幅方向の各点の表面温度を同時に採取できる。」

(5)
図5





図12





3.刊行物3について
刊行物3には、下記の事項が記載されている。
「【0030】そこでまず、画像メモリ13aに格納された画像中のシール部分を抽出する(ST1)。この抽出処理は、背景部分は、搬出コンベア10であり温度が低く、一方包装体9(シール部分9a)は、高温度であるため、色調が異なる。よって、両者の境界部分で色調の変化が大きいので、エッジ抽出処理などをしてシール部分を取り出すことができる。また、包装体9の通過タイミングは、例えばエンドシール装置8のエンドシーラの回転の0位置情報を取得することにより容易に精度よく知ることができる。よって、そのタイミングに合わせて、予め包装体に合わせて設定したウインドウ内の画像データを抽出するようにしてもよい。」

4.刊行物4について
(1)刊行物4には、下記の事項が図面とともに記載されている。
ア.
「【請求項1】
筒状に製袋した包装フィルムの両側縁を貼り合わせてセンターシール部とするとともに、そのセンターシール部と交差方向の両端開口を熱シールしてなるピロー包装体において、
上下が開放した枠体内に被包装物を収容した状態で包装されることを特徴とするピロー包装体。」

イ.
図1





図2





(2)上記(1)の摘記事項から、刊行物4は次の周知の技術を示しているといえる。
「背貼り部が設けられたピロータイプの包装品」

5.刊行物5について
(1)刊行物5には、下記の事項が図面とともに記載されている。
ア.
「【請求項1】
包装袋の縦シール部を形成する縦シール形成部と、包装袋の横シール部を形成する横シール形成部とを備え、包装材料を筒状に形成する際、前記縦シール形成部で、進行方向に沿った前記包装材料の両側縁を貼り合わせて背貼り部を形成する背貼り部を有する包装袋の製袋装置であって、
前記横シール形成部が、前記包装袋の横シール部を形成する際、前記背貼り部が前記横シール部と重ならない状態で、前記横シール部を横シールできるように構成することを特徴とする背貼り部を有する包装袋の製袋装置。」

イ.図2





(2)上記(1)の摘記事項から、刊行物5は次の周知の技術を示しているといえる。
「背貼り部が設けられたピロータイプの包装品」

6.刊行物6について
(1)刊行物6には、下記の図面が示されている。
図1





図4





(2)上記(1)の摘記事項から、刊行物6は次の周知の技術を示しているといえる。
「背貼り部が設けられたピロータイプの包装品」

第5 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(1)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、被包装物を包装体で覆うとともに、その包装体の所定部を熱シールする手段を含む包装品製造装置において用いられる、シール不良を検出するシール不良検査装置およびシール不良検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、被包装物が包装体に覆われた状態でその包装体の所定部が熱シールされ、さらに切断されることで製造される、被包装物が封入された包装品が、様々な製品として流通している。このような包装品としては、例えば、小袋入りの液体スープや粉末スープ、乾燥された麺塊等を含む被包装物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)や延伸ポリプロピレン(OPP)等を原料とするラミネートフィルムからなる包装フィルムにより封入された、袋入り即席麺等の袋入りの食品が挙げられる。
【0003】
このような包装品の製造装置においては、包装体の熱シールが正常に行われているか否かを検査することが従前より行われている。例えば従来、可視光や赤外線ライト等を熱シール後のシール部に照射しながら撮影することで、シール部に被包装物等の異物が噛み込んでいるか否かを検出することが行われている。例えば、シール部に異物が噛みこんでいた場合には、その異物の影が撮影画像に映し出されるため、これを検出することで熱シールが不良であると判別することができる。
【0004】
また、特許文献1には、熱シール直後のシール部の温度分布に基づき、正常に熱シールされたものについて得られた温度分布と対比してシールの良否を判別することによりシール不良を検出する検出方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-79917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような可視光や赤外線ライト等をシール部に照射しながら撮影する方法では、包装体に文字や絵柄等がプリントされている場合や、包装体がアルミニウム箔ラミネートフィルム等の非透視性の包装材料で作製されていた場合等には、可視光や赤外線ライトがうまく透過しないため、異物の影を検出することが困難であった。これに対し、特許文献1記載の方法では、非透視性の包装材料で作製した包装体を用いていても、シール不良を検出することが可能である。しかし、特許文献1記載の方法では、被包装物のごく一部がシール部に噛みこんだ場合等には、シール不良がうまく検出できない場合があった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、包装体の透視性の高低に関わらず、また、異物のごく一部がシール部に噛みこんだ場合でも、シール不良を検出できるシール不良検査装置およびシール不良検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るシール不良検査装置は、被包装物を包装体で覆うとともに当該包装体の所定部を熱シールする手段を含む包装品製造装置において用いられるシール不良検査装置であって、熱シール直後のシール部における温度を検知するシール部温度検知手段と、熱シール直後のシール隣接部における温度を検知するシール隣接部温度検知手段と、前記シール部温度検知手段により検知された温度および前記シール隣接部温度検知手段により検知された温度に基づいてシール不良を検出するシール不良検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るシール不良検査方法は、被包装物を包装体で覆うとともに当該包装体の所定部を熱シールする手段を含む包装品製造装置において用いられるシール不良検査方法であって、熱シール直後のシール部における温度を検知するシール部温度検知工程と、
熱シール直後のシール隣接部における温度を検知するシール隣接部温度検知工程と、前記シール部温度検知工程により検知された温度および前記シール隣接部温度検知工程により検知された温度に基づいてシール不良を検出するシール不良検出工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、包装体の透視性の高低に関わらず、また、異物のごく一部がシール部に噛みこんだ場合でも、シール不良を検出できる。」

(2)
「【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
・・・
【0018】
シール不良検査装置100は、赤外線カメラ110とシール不良検出部120とを有する。シール不良検査装置100は、エンドシーラー900により熱シールおよびカットされることで製造された直後の包装品200のシール不良を、順次検査するためのものである。ここでいう「製造された直後」とは、包装品200がエンドシーラー900により熱シールされたことにより上昇した温度が、測定困難になるまで低下するより以前であれば特に限定されないが、例えば、エンドシーラー900により熱シールされてから5秒以内程度である。
【0019】
ここで、図2を参照して、シール不良検査装置100の構成について詳述する。シール不良検査装置100の構成要素である赤外線カメラ110は、物体から放射される赤外線放射エネルギーを赤外線イメージセンサ(図示せず)で検出し、各画素の受光量を温度分布を示す画像(以下、「熱画像」という。)に変換するためのものであり、例えば一般的な赤外線サーモグラフィー装置を用いることができる。変換された熱画像のデータはシール不良検出部120に送信される。
【0020】
シール不良検出部120は、処理部121と記憶部122と入力部123と出力部124とを有する。処理部121は、CPU(Central Processing Unit)等により構成され、各種演算処理を行うためのものである。記憶部122は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはフラッシュメモリ等により構成される。記憶部122には、予め記憶されたプログラムやデータ、もしくは処理部121や入力部123を介して記憶されたデータ等が格納される。入力部123は、外部より入力された信号やデータを受け付け、シール不良検出部120に入力するためのものである。出力部124は、信号やデータをシール不良検出部120から外部に出力するためのものである。
【0021】
以下、本実施形態に係るシール不良検査装置およびシール不良検査方法について順を追って説明する。
図1に示す通り、包装品製造装置において、コンベアベルト700上を第一被包装物210が順次搬送される。ここに、第二被包装物投入部800において投入された第二被包装物220が合流し、第一被包装物210とともに搬送される。合流した第一被包装物210と第二被包装物220は、エンドシーラー900に搬送されるまでの間に、筒状に形成された包装体230の内側に配置される。その後、第一被包装物210と第二被包装物220とが1つずつ含まれるように、エンドシーラー900により順次熱シールされ、カットされていく。
【0022】
エンドシーラー900により熱シールされ、カットされた包装体240は、第一被包装物210と第二被包装物220とを封入し、包装品200として順次製造される。その後、シール不良検査装置100は、製造された直後の包装品200のシール不良を検査する。
【0023】
ここで、シール不良検査装置100が包装品200のシール不良を検知する様子を、図2?図5を用いて説明する。
図2に示す通り、包装品200がシール不良検査装置100の近傍を通過する際、赤外線カメラ110により包装品200の熱画像が撮影される。なお、図2中、赤外線カメラ110の下部先端から放射状に伸びる点線は、熱画像の撮影可能領域を示しており、左右のエンドシール部241a、241bを含む包装品200の全体が撮影可能である。
【0024】
図3は、熱シール直後の包装品200における、シール不良検査装置100により検査されるエリアを示す上面図である。なお、説明を簡単にするため、第一被包装物210は図示を省略する(図4、図5(a)においても同様)。図3においては、第二被包装物220は包装品200に正常に内包されている例を示す。第二被包装物220は、包装体240の材質によっては外部から視認することができない場合もあるが、説明のため図示する(図4、図5においても同様)。また、センターシール部242は、切断前の包装体230を筒状に形成する時点で熱シールされた箇所であり、包装品200の上面または底面に形成される。
【0025】
図3に示す通り、シール不良検査装置100は、包装品200中のシール部検査エリアA1a?A1d、及びシール隣接部検査エリアA2a?A2dについて、シール不良の検査を行う。シール部検査エリアA1a、A1bは、それぞれ左エンドシール部241a内に位置する。シール部検査エリアA1c、A1dは、それぞれ右エンドシール部241b内に位置する。シール隣接部検査エリアA2a?A2dは、それぞれ左右のエンドシール部241a、241bよりも中央寄りに隣接した箇所に位置する。シール部検査エリアA1a?A1dおよびシール隣接部検査エリアA2a?A2dは、ともにセンターシール部242とは重複しないように配置される。センターシール部242を検査エリアから除外する理由として、センターシール部242と包装体240の他の部分とが重なり合うため、シール部分の温度差が生じにくく検知が困難であることが挙げられる。また、包装機械の特性上、センターシール部242は噛み込みが発生しにくく、検査する必要性が低いことも理由の1つとして挙げられる。
【0026】
なお、シール部検査エリアA1a?A1dおよびシール隣接部検査エリアA2a?A2dの位置は、予め各エリアに対応する指定座標範囲を記憶部122に記憶しておき、熱画像が撮影される毎に指定座標範囲に対応する領域を各エリアとして決定してもよいし、熱画像が撮影される毎に熱画像中の温度情報からシール不良検出部120が各エリアを判断して決定してもよい。
【0027】
シール不良検査装置100においては、赤外線カメラ110により撮影された包装品200の熱画像のデータがシール不良検出部120に送信される。熱画像データは入力部123を介してシール不良検出部120に入力され、記憶部122に一時記憶される。処理部121は、記憶部122に記憶された熱画像データのうち、シール部検査エリアA1a?A1d、シール隣接部検査エリアA2a?A2dそれぞれのエリア内における平均温度を算出する。処理部121は、算出された平均温度に対し、一定温度以上高温または低温である箇所が存在するか否かを各エリア毎に判定し、存在すると判定されたエリアを1以上検出すると、その包装品200はシール不良があると判定する。そして、処理部121は、シール不良であるという情報を出力部124を介して出力する。この情報に基づき、シール不良が判定された包装品200を不良品として製造ラインから除外する等、適宜処理が可能である。
【0028】
ここで、算出された平均温度に対し一定温度以上高温または低温の箇所があるとして検出される基準は適宜設定することができるが、少なくともそのエリアに、後述する複数の温度帯が跨って存在する場合には、平均温度に対し一定温度以上高温または低温であるとして検出される。また、上述したエリア毎の平均温度の算出方法としては、例えばエリア内の複数箇所の温度を検知し、その平均値を算出する方法がある。また、平均温度に対して一定温度以上高温または低温である箇所が存在するか否かの判定方法は、予め記憶部122に温度差情報を記憶しておき、検知された複数箇所のうち、平均温度より温度差情報に基づく温度差以上高温または低温である箇所が一箇所以上存在するか否かを判定することで可能である。
【0029】
図4および図5は、熱シール直後の包装品200における温度分布を示す上面図である。図4および図5において、高温帯B1が最も高温な領域であり、中高温帯B2が次に高温な領域であり、低温帯B3は最も低温な領域である。その他の領域は、低温帯B3より高温、かつ、中高温帯B2より低温な領域である(以下「中温帯」という)。
高温帯B1、中高温帯B2、中温帯および低温帯B3の具体的な温度帯は限定されないが、例えば、高温帯B1は55℃以上70℃未満、中高温帯B2は40℃以上55℃未満、中温帯は30℃以上40℃未満、低温帯B3は30℃未満程度である。
【0030】
図4(a)は、第二被包装物220が正常に内包され、左右のエンドシール部241a、241bにおいて正常に熱シールされた場合の温度分布を示す上面図である。ここで、図3と対比すると、シール部検査エリアA1a?A1dは、いずれも全体が中高温帯B2に属することが分かる。また、シール隣接部検査エリアA2a?A2dは、いずれも全体が中温帯に属することが分かる。よって、いずれの検査エリアも、エリア全体が中高温帯B2または中温帯のいずれか一方の温度範囲内に属するため、各エリアの平均温度より一定温度以上高温または低温である箇所は検出されず、シール不良とは判定されない。
【0031】
図4(b)は、第二被包装物220が左側に極端に寄った位置に配置され、左エンドシール部241aに噛み込んだ状態で熱シールされた場合の温度分布を示す上面図である。ここで、図3と対比すると、シール部検査エリアA1a、A1c、A1dは、いずれも全体が中高温帯B2に属することが分かる。また、シール隣接部検査エリアA2a、A2c、A2dは、いずれも全体が中温帯に属することが分かる。よって、シール部検査エリアA1a、A1c、A1d、及びシール隣接部検査エリアA2a、A2c、A2dは、いずれもエリア全体が中高温帯B2または中温帯のいずれか一方の温度範囲内に属するため、各エリアの平均温度より一定温度以上高温または低温である箇所は検出されない。
【0032】
一方、シール部検査エリアA1bには、中高温帯B2の箇所と、中温帯の箇所とが併存している。これは、第二被包装物220が左エンドシール部241aに噛み込むことで、その付近の温度が低下していることによると考えられる。また、シール隣接部検査エリアA2bには、低温帯B3の箇所と、中温帯の箇所とが併存している。これは、第二被包装物220がシール隣接部検査エリアA2bに跨ることで、第二被包装物220に由来する
低温帯B3が検知されることによると考えられる。よって、シール部検査エリアA1b及びシール隣接部検査エリアA2bからは、それぞれ複数の温度帯に跨る箇所が検出されるため、各エリアの平均温度より一定温度以上高温または低温である箇所が検出され、シール不良と判定される。従って、図4(b)のような場合には、シール不良であるという情報が出力部124を介して出力される。
【0033】
図5(a)は、第二被包装物220が左側にやや寄った位置に配置され、左エンドシール部241aに僅かに噛み込んだ状態で熱シールされた場合の温度分布を示す上面図である。ここで、図3と対比すると、シール部検査エリアA1a?A1dは、いずれも全体が中高温帯B2に属する。また、シール隣接部検査エリアA2a、A2c、A2dは、いずれも全体が中温帯に属する。よって、シール部検査エリアA1a?A1d、及びシール隣接部検査エリアA2a、A2c、A2dは、いずれもエリア全体が中高温帯B2または中温帯のいずれか一方の温度範囲内に属するため、各エリアの平均温度より一定温度以上高温または低温である箇所は検出されない。
【0034】
一方、シール隣接部検査エリアA2bには、第二被包装物220に由来する低温帯B3の箇所と、その他の領域の箇所とが併存している。よって、シール隣接部検査エリアA2bからは複数の温度帯に跨る箇所が検出されるため、当該エリアの平均温度より一定温度以上高温または低温である箇所が検出され、シール不良と判定される。従って、図5(a)のような場合には、シール不良であるという情報が出力部124を介して出力される。よって、シール部検査エリアA1a?A1dの検査のみでは検出されない僅かな噛み込みも、シール隣接部検査エリアA2a?A2dの検査も行うことで、検出可能となる。
【0035】
図5(b)は、第一被包装物210、第二被包装物220いずれも正常に内包されているが、第一被包装物の欠片211が左エンドシール部241aに噛み込んだ状態で熱シールされた場合の温度分布を示す上面図である。ここで、図3と対比すると、シール部検査エリアA1b?A1dは、いずれも全体が中高温帯B2に属する。また、シール隣接部検査エリアA2a?A2dは、いずれも全体が中温帯に属する。よって、シール部検査エリアA1b?A1d、及びシール隣接部検査エリアA2a?A2dは、いずれもエリア全体が中高温帯B2または中温帯のいずれか一方の温度範囲内に属するため、各エリアの平均温度より一定温度以上高温または低温である箇所は検出されない。
【0036】
一方、シール隣接部検査エリアA1aには、中高温帯B2の箇所と、高温帯B1の箇所とが併存している。これは、第一被包装物の欠片211が左エンドシール部241aに噛み込むことで、その付近の温度が高くなったことによると考えられる。よって、シール隣接部検査エリアA1aからは、複数の温度帯に跨る箇所が検出されるため、当該エリアの平均温度より一定温度以上高温または低温である箇所が検出され、シール不良と判定される。従って、図5(b)のような場合には、シール不良であるという情報が出力部124を介して出力される。」

(3)
図1





図2





図3





図4





図5





第6 判断
1.申立理由1(進歩性欠如)について
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1発明1とは、少なくとも、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1では、「前記シール部温度検知手段により検知された温度および前記シール隣接部温度検知手段により検知された温度に基づき、前記シール部内の平均温度から所定以上の温度差を示す箇所を検出した場合、または、前記シール隣接部内の平均温度から所定以上の温度差を示す箇所を検出した場合にシール不良と判定するシール不良検出手段」を備えているのに対し、刊行物1発明1に記載された発明では、「前記赤外線カメラより検知された温度に基づいて温度分布を表す波形を得て、この波形を正常にヒートシールされたものについて得られた波形と対比することによりシール不良と判定する手段」を備えている点。
上記<相違点1>について検討する。
刊行物1には、本件発明1の上記<相違点1>に係る構成のシール不良検出手段が記載ないし示唆されていない。また、刊行物2、3にも、本件発明1の上記シール不良検出手段が記載ないし示唆されていない。そして、刊行物4?6に示される周知の技術も、本件発明1の上記シール不良検出手段を示すものではない。
そして、本件発明1は、上記<相違点1>に係る構成のシール不良検出手段を備えることにより、「包装体の透視性の高低に関わらず、また、異物のごく一部がシール部に噛み込んだ場合でも、シール不良を検出できる。」(上記第5(1)で摘記した本件特許明細書の【0010】参照)という格別な作用効果を奏するものである。
したがって、上記<相違点1>に係る本件発明1の構成は、刊行物1発明1及び刊行物2、3に記載された技術的事項、刊行物4?6に示される周知の技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明1は、刊行物1発明1及び刊行物2、3に記載された技術的事項、刊行物4?6に示される周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、上記本件発明1を引用するものであって、上記本件発明1の発明特定事項にさらに技術的限定を加える構成を付加したものであるから、上記(1)で検討した本件発明1と同様、刊行物1発明1及び刊行物2、3に記載された技術的事項、刊行物4?6に示される周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明3について
本件発明3と刊行物1発明2とは、少なくとも、以下の点で相違する。
<相違点2>
本件発明3では、「前記シール部温度検知工程により検知された温度および前記シール隣接部温度検知工程により検知された温度に基づき、前記シール部内の平均温度から所定以上の温度差を示す箇所を検出した場合、または、前記シール隣接部内の平均温度から所定以上の温度差を示す箇所を検出した場合にシール不良と判定するシール不良を検出するシール不良検出工程」を含むのに対して、刊行物1発明2では、「前記温度を検知する工程により検知された温度に基づいて温度分布を表す波形を得て、この波形を正常にヒートシールされたものについて得られた波形と対比することによりシール不良と判定するシール不良を検出する工程」を含む点。
上記相違点2について検討する。
<相違点2>に係る本件発明3の構成は、上記<相違点1>に係る本件発明1の構成に対し、「シール部温度検知手段」、「シール隣接部温度検知手段」、「シール不良検出手段」が、それぞれ、「シール部温度検知工程」、「シール隣接部温度検知工程」、「シール不良を検出するシール不良検出工程」に置き換えられたものにすぎない。また、<相違点2>に係る刊行物1発明2の構成は、上記<相違点1>に係る刊行物1発明1の構成に対し、「前記赤外線カメラにより検知された温度」、「シール不良と判定する手段」が、それぞれ、「前記温度を検知する工程により検知された温度」、「シール不良と判定するシール不良を検出する工程」に置き換えられたものにすぎない。そうすると、上記(1)で検討した<相違点1>に係る本件発明1の構成と同様、<相違点2>に係る本件発明3の構成は、刊行物1発明2及び刊行物2、3に記載された技術的事項、刊行物4?6に示される周知の技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明3は、刊行物1発明2及び刊行物2、3に記載された技術的事項、刊行物4?6に示される周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)申立人の主張について
ア.申立人は、本件特許異議申立書の(4-1)「ウ」「a-4.」において、「甲第1号証記載発明では、シール部温度検知手段およびシール隣接部温度検知手段により検知された温度と正常にヒートシールされたもの(シール部内の平均温度)の温度との温度差(偏差)とを対比し、当該温度差が所定値以上である場合にシール不良と判定している。」、「よって、甲第1号証記載発明は、構成要件D、EおよびGを備える点において、本件は特許発明1と同一である。」と主張している。
しかしながら、本件発明1の発明特定事項B「熱シール直後のシール部における温度を当該シール部内の複数箇所において検知するシール部温度検知手段と、」、発明特定事項D「前記シール部温度検知手段により検知された温度および前記シール隣接部温度検知手段により検知された温度に基づき、」、発明特定事項E「前記シール部内の平均温度から所定以上の温度差を示す箇所を検出した場合、」、発明特定事項G「シール不良と判定するシール不良検出手段と、」から、「シール部内の平均温度」は、熱シール直後のシール部内の複数箇所において検知された温度に基づく温度といえ、当該シール部についてシール不良か否か判定されるのであるから、本件発明1の「シール部内の平均温度」とは、判定対象のものの平均温度であるといえる。また、上記第5(2)で摘記した本件特許明細書の【0027】には、「処理部121は、記憶部122に記憶された熱画像データのうち、シール部検査エリアA1a?A1d、シール隣接部検査エリアA2a?A2dそれぞれのエリア内における平均温度を算出する。処理部121は、算出された平均温度に対し、一定温度以上高温または低温である箇所が存在するか否かを各エリア毎に判定し、存在すると判定されたエリアを1以上検出すると、その包装品200はシール不良があると判定する。」と記載されており、「シール部内の平均温度」とは、判定対象のものの平均温度であることが示されている。そうすると、上記申立人の主張は、「シール部内の平均温度」は正常にヒートシールされたものの平均温度とすることを前提とするものであって、「シール部内の平均温度」は判定対象のものの平均温度である本件発明1とは異なるから、当を得たものではない。よって、甲第1号証記載発明は、構成要件D、E、Gを備える点において、本件は特許発明1と同一であるとする上記申立人の主張は、採用することができない。

イ.また、申立人は、本件特許異議申立書の(4-1)「ウ」「c-4.」において、「上記a-4で述べたのと同様の理由により、甲第1号証記載発明は、構成要件N、OおよびQを備える点について、本件特許発明3と同一である。」と主張している。
本件発明3の発明特定事項N、O、Qは、本件発明1の発明特定事項のD、E、Gについて、「シール部温度検知手段」、「シール隣接部温度検知手段」、「シール不良検知手段」が、それぞれ、「シール部温度検知工程」、「シール隣接部温度検知工程」、「シール不良を検出するシール不良検出工程」に置き換わったものにすぎない。そうすると、上記ア.で述べたのと同様の理由により、甲第1号証記載発明は、構成要件N、O、Qを備える点において、本件は特許発明3と同一であるとする上記申立人の主張は、採用することができない。

(5)小括
以上のとおりであるから、本件発明1?3は、刊行物1発明1、2及び刊行物2、3に記載された技術的事項、刊行物4?6に示される周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しないから、それらの特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものとはいえない。

2.申立理由2(サポート要件違反)について
(1)本件発明1?3の解決すべき課題と解決手段について
上記第5(1)で摘記した本件特許明細書の記載からみて、本件発明1は、「包装体の熱シールが正常に行われているか否かを検査することが従前より行われている」ところ、「可視光や赤外線ライト等を熱シール後のシール部に照射しながら撮影することで、シール部に被包装物等の異物が噛み込んでいるか否かを検出する」方法では、「包装体に文字や絵柄等がプリントされている場合や、包装体がアルミニウム箔ラミネートフィルム等の非透視性の包装材料で作製されていた場合等には、可視光や赤外線ライトがうまく透過しないため、異物の影を検出することが困難であ」り、また、「熱シール直後のシール部の温度分布に基づき、正常に熱シールされたものについて得られた温度分布と対比してシールの良否を判別することによりシール不良を検出する検出方法」では、「被包装物のごく一部がシール部に噛みこんだ場合等には、シール不良がうまく検出できない場合があった」ため、「包装体の透視性の高低に関わらず、また、異物のごく一部がシール部に噛みこんだ場合でも、シール不良を検出できるシール不良検査装置およびシール不良検査方法を提供すること」を解決すべき課題としたものである(【0003】?【0007】参照)。
そして、本件発明1は、発明特定事項B「熱シール直後のシール部における温度を当該シール部内の複数箇所において検知するシール部温度検知手段と、」、発明特定事項C「熱シール直後のシール隣接部における温度を当該シール隣接部内の複数箇所において検知するシール隣接部温度検知手段と、」、発明特定事項D「前記シール部温度検知手段により検知された温度および前記シール隣接部温度検知手段により検知された温度に基づき、」、発明特定事項E「前記シール部内の平均温度から所定以上の温度差を示す箇所を検出した場合、」、発明特定事項F「または、前記シール隣接部内の平均温度から所定以上の温度差を示す箇所を検出した場合に」、発明特定事項G「シール不良と判定するシール不良検出手段と、」を含む発明特定事項A?Hを備えることにより、「包装体の透視性の高低に関わらず、また、異物のごく一部がシール部に噛みこんだ場合でも、シール不良を検出できる。」(【0010】参照)という効果を奏し、上記課題を解決したものである。
また、上記本件発明1を引用する本件発明2は、上記発明特定事項B?Gを含む発明特定事項A?Jを備えることにより、本件発明1と同様、「包装体の透視性の高低に関わらず、また、異物のごく一部がシール部に噛みこんだ場合でも、シール不良を検出できる。」(【0010】参照)という効果を奏し、上記課題を解決したものである。
さらに、本件発明3は、発明特定事項L「熱シール直後のシール部における温度を当該シール部内の複数箇所において検知するシール部温度検知工程と、」、発明特定事項M「熱シール直後のシール隣接部における温度を当該シール隣接部内の複数箇所において検知するシール隣接部温度検知工程と、」、発明特定事項N「前記シール部温度検知工程により検知された温度および前記シール隣接部温度検知工程により検知された温度に基づき、」、発明特定事項O「前記シール部内の平均温度から所定以上の温度差を示す箇所を検出した場合、」、発明特定事項P「または、前記シール隣接部内の平均温度から所定以上の温度差を示す箇所を検出した場合に」、発明特定事項Q「シール不良と判定するシール不良を検出するシール不良検出工程と」を含む発明特定事項K?Rを備えることにより、「包装体の透視性の高低に関わらず、また、異物のごく一部がシール部に噛みこんだ場合でも、シール不良を検出できる。」(【0010】参照)という効果を奏し、上記課題を解決したものである。

(2)本件発明1?3は、発明の詳細な説明に記載したものといえるかについて
本件発明1?3は、上記(1)で指摘した「包装体の透視性の高低に関わらず、また、異物のごく一部がシール部に噛みこんだ場合でも、シール不良を検出できるシール不良検査装置およびシール不良検査方法を提供すること」という解決すべき課題を、それぞれ、発明特定事項A?H、発明特定事項A?J、発明特定事項K?Rを備えることにより解決した発明であることが、上記第5(1)、(2)で摘記した【0008】?【0009】、【0020】?【0036】に記載されている。
よって、本件発明1?3の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているといえる。

(3)申立人の主張について
ア.申立人は、本件特許異議申立書の(4-2)「ウ」「a」において、「上記「4-1」「ウ」「a-2」で述べたように、本件特許発明1は、参考図1に例示されるような態様も含まれている。」、「しかしながら、本件特許発明の明細書には、単一のシール部検査エリアおよび単一のシール隣接部検査エリアを設定する態様についての開示はなされていないところ、かかる態様によって本件特許発明の課題を解決できることを当業者は認識することはできない。」と主張している。ここで、上記「参考図1」とは次に示す図である。
参考図1




これに対し、本件の発明の詳細な説明では、包装品200にセンターシール部242があり、当該センターシール部242を避けて、4つのシール部検査エリアA1a?A1d及び4つのシール隣接部検査エリアA2a?A2dを設定する態様が挙げられている(上記第5(2)、(3)で摘記した【0025】、図3参照)。
しかしながら、本件の発明の詳細な説明によると、上記(1)で指摘したように、本件発明は、「包装体の透視性の高低に関わらず、また、異物のごく一部がシール部に噛みこんだ場合でも、シール不良を検出できるシール不良検査装置およびシール不良検査方法を提供すること」を解決すべき課題とし、「包装体の透視性の高低に関わらず、また、異物のごく一部がシール部に噛みこんだ場合でも、シール不良を検出できる。」という効果を得るものである。
センターシール部がない包装体についても、センターシール部がある包装体と同様、上記の課題を有しているから、本件の発明の詳細な説明は、センターシール部がない包装体についても適用されることが予定されているといえる。そして、このようなセンターシール部がない包装体については、上記本件の【0025】、図3のように、センターシール部を避けて、シール部検査エリア及びシール隣接部検査エリアを分割する必要がないから、参考図1のように単一のシール部検査エリア及び単一のシール隣接部検査エリアを設定する態様とすることは、当業者であれば通常認識し得たことといえる。
したがって、上記申立人の主張を採用することはできない。

イ.また、申立人は、本件特許異議申立書の(4-2)「ウ」「a」において、「また、上記「4-1」「ウ」「a-5」で述べたように、ピロータイプの特定も検査エリアの数の特定も異物の大きさの特定もなされていない本件特許発明1においては、構成要件Fは、課題解決に寄与するものではなく、当業者は本件特許発明の課題を解決できることを認識することはできない。付言するに、本件特許発明1の構成要件Fは、第二被包装物220のような大きさの物体の位置ずれの問題解決には寄与するものの、たとえばレトルト食品における米粒の噛み込みを検出するような場合には、課題解決に何ら寄与しないのみならず、シール部への噛み込みが生じていないにもかかわらずシール隣接部に米粒があるのでシール不良と判定してしまうという問題が生じるのである。」、「よって、本件特許発明1は、発明が解決しようとする課題を解決することができない態様を内包する」と主張している。ここで、上記「「4-1」「ウ」「a-5」」において、申立人は、「また、本件特許の図5(a)のような噛み込みが検出されないのは、ピロータイプの包装品において「センターシール部242を検査エリアから除外」していることに起因する(本件特許の明細書【0025】)。ピロータイプの特定も検査エリアの特定もなされていない本件特許発明1においては、構成要件Fは、何らの技術的意義も有しない発明特定事項であると言わざるを得ない。」と主張している。
しかしながら、上記第5(2)で摘記した、本件特許明細書の【0033】、【0034】には、「図5(a)は、第二被包装物220が左側にやや寄った位置に配置され、左エンドシール部241aに僅かに噛み込んだ状態で熱シールされた場合の温度分布を示す上面図である。ここで、図3と対比すると、シール部検査エリアA1a?A1dは、いずれも全体が中高温帯B2に属する。また、シール隣接部検査エリアA2a、A2c、A2dは、いずれも全体が中温帯に属する。よって、シール部検査エリアA1a?A1d、及びシール隣接部検査エリアA2a、A2c、A2dは、いずれもエリア全体が中高温帯B2または中温帯のいずれか一方の温度範囲内に属するため、各エリアの平均温度より一定温度以上高温または低温である箇所は検出されない。」、「一方、シール隣接部検査エリアA2bには、第二被包装物220に由来する低温帯B3の箇所と、その他の領域の箇所とが併存している。よって、シール隣接部検査エリアA2bからは複数の温度帯に跨る箇所が検出されるため、当該エリアの平均温度より一定温度以上高温または低温である箇所が検出され、シール不良と判定される。従って、図5(a)のような場合には、シール不良であるという情報が出力部124を介して出力される。よって、シール部検査エリアA1a?A1dの検査のみでは検出されない僅かな噛み込みも、シール隣接部検査エリアA2a?A2dの検査も行うことで、検出可能となる。」と記載されており、本件特許の図5(a)の態様について噛み込みが検出されないのは、センターシール部242を検査エリアから除外しているのではなく、左エンドシール部241aでの噛み込みが僅かであるためである。そして、左エンドシール部241aでの噛み込みが僅かであっても、シール隣接部検査エリアA2bの温度を検出することで、シール不良であると判定されている。そうすると、構成要件Fは、シール部温度検知手段による検査のみでは検出できない僅かな噛み込みを検出するためのものといえるから、課題解決に寄与するものであり、当業者が課題を解決できることを認識することができるといえる。
そして、申立人が主張するように、被包装物によっては、シール部への噛み込みが生じていないにもかかわらずシール隣接部に被包装物があるのでシール不良と判定してしまう問題が生じるとしても、異物がシール部に噛み込むことに起因するシール不良を検出すること自体が不可能となるわけではない。
そうとすると、本件発明1は、発明が解決しようとする課題を解決することができない態様を内包するとはいえない。
したがって、上記申立人の主張を採用することはできない。

ウ.また、申立人は、本件特許異議申立書の(4-2)「ウ」「b」において、「本件特許発明2は、本件特許発明1に従属するものであるから、本件特許発明1がサポート要件を充足しない以上、本件特許発明2もサポート要件を充足しないものである。」と主張している。
しかしながら、上記(1)、(2)で述べたとおり、本件発明1と本件発明1に従属する本件発明2は、サポート要件を充足しているといえる。また、上記ア.、イ.で述べたとおり、本件発明1に対するサポート要件に関する申立人の主張を採用することはできないから、当該申立人の主張を考慮しても、本件発明2がサポート要件を充足しないとはいえない。
したがって、上記申立人の主張を採用することはできない。

エ.さらに、申立人は、本件特許異議申立書の(4-2)「ウ」「c」において、「上記「4-1」「ウ」「a-2」で述べたのと同様の理由により、本件特許発明3は、参考図1に例示されるような態様も含まれている。」、「したがって、前記「a 本件特許発明1について」で述べたのと同様の理由により、本件特許発明3は、発明が解決しようとする課題を解決することができない態様を内包する」と主張している。
しかしながら、上記ア.で述べたとおり、本件の発明の詳細な説明について、参考図1に例示するような態様は、当業者であれば通常認識し得たものといえる。また、上記イ.で述べたのと同様の理由により、本件発明3は、発明が解決しようとする課題を解決することができない態様を内包しているとはいえない。
したがって、上記申立人の主張を採用することはできない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1?3は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえないから、それらの特許は同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものとはいえない。

3.申立理由3(実施可能要件違反)について
(1)本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえるかについて
上記2.(1)で述べたとおり、本件発明1?3は、「包装体の透視性の高低に関わらず、また、異物のごく一部がシール部に噛みこんだ場合でも、シール不良を検出できるシール不良検査装置およびシール不良検査方法を提供すること」を解決すべき課題とし、それぞれ、発明特定事項A?H、A?J、K?Rを備えることにより、「包装体の透視性の高低に関わらず、また、異物のごく一部がシール部に噛みこんだ場合でも、シール不良を検出できる。」という効果を奏し、上記課題を解決したものである。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、このような本件発明1?3の実施の形態について、上記上記第5(2)で摘記した【0012】?【0036】に、熱シール直後のシール部及びシール隣接部で温度を検知する手段・工程、検知された温度に基づくシール不良の検出手段・検出工程が詳細に記載されている。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえ、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているといえる。

(2)申立人の主張について
ア.申立人は、本件特許異議申立書の項目(4-3)「ウ」「a」において、「上記「4-1」「ウ」「a-2」で述べたように、本件特許発明1は、参考図1に例示されるような態様も含まれている。」、「しかしながら、本件特許発明の明細書には、単一のシール部検査エリア及び単一のシール隣接部検査エリアを設定する態様についての開示はなされていないところ、かかる態様については、当業者が実施できる程度に明確かつ充分に説明されていない。したがって、発明の詳細な説明に、請求項に記載された上位概念に含まれる一部の下位概念についての実施の形態のみが実施可能に記載されている場合に該当するから、実施可能要件を充足しない。」と主張している。
しかしながら、上記2.(3)ア.で指摘したように、本件の発明の詳細な説明について、単一のシール部検査エリア及び単一のシール隣接部検査エリアを設定する態様とすることは、当業者であれば通常認識し得たことといえる。
したがって、上記申立人の主張を採用することはできない。

イ.また、申立人は、同項目(4-3)「ウ」「a」において、「また、本件特許発明1は、あらゆる異物の噛み込みを対象とした上位概念の発明であるところ、構成要件Fを満たす場合に、シール不良と判定するための構成を当業者は実施することはできない。たとえば、レトルト食品における米粒の噛み込みを検出するような場合に、シール隣接部のみを検査してシール不良を判定することを可能とする構成を当業者は実施することはできない。本件特許発明1では、第二被包装物220の位置ズレを検出することを目的に構成要件Fを規定しているようであるが、被包装物の位置ズレの問題とシール不良の問題は別の問題である。すなわち、当業者は、構成要件Fによりシール不良の課題を解決するための手段を実現することができない。例えば、下記参考図2に示すように、シール部への噛み込みが生じていない場合でも、構成要件Fによればシール不良があると判定されてしまうが、本件特許発明1では第二被包装物のような物体の配置位置は特定されていないところ、実施可能要件を充足しない。」と主張している。ここで、上記「参考図2」とは次に示す図である。
参考図2




しかしながら、上記2.(3)イ.で検討したように、構成要件Fは、シール部温度検知手段による検査のみでは検出できない僅かな噛み込みを検出するためのものと解される。そして、同2.(3)イ.で検討したように、申立人が主張するように、被包装物によっては、シール部への噛み込みが生じていないにもかかわらずシール隣接部に被包装物があるのでシール不良と判定してしまう問題が生じるとしても、異物がシール部に噛み込むシール不良を検出すること自体が不可能となるわけではない。
したがって、本件の発明の詳細な説明について、実施可能要件を充足しないとはいえず、上記申立人の主張を採用することはできない。

ウ.また、申立人は、本件特許異議申立書の項目(4-3)「ウ」「b」において、「本件特許発明2は、本件特許発明1に従属するものであるから、本件特許発明1が実施可能要件を充足しない以上、本件特許発明2も実施可能要件を充足しない」と主張している。
しかしながら、上記(1)で述べたとおり、本件発明1と本件発明1に従属する本件発明2は、実施可能要件を充足しているといえる。また、上記ア.、イ.で述べたとおり、本件発明1に対する実施可能要件に関する申立人の主張を採用することはできないから、当該申立人の主張を考慮しても、本件発明2が実施可能要件を充足しないとはいえない。
したがって、上記申立人の主張を採用することはできない。

エ.さらに、申立人は、本件特許異議申立書の項目(4-3)「ウ」「c」において、「本件特許発明3は、本件特許発明1とカテゴリが相違する以外は、実質的に同一の発明特定事項を有する発明である。」、「したがって、前記「a 本件特許発明1について」で述べたのと同様の理由により、本件特許発明3にかかる特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。」と主張している。
しかしながら、上記ア.、イ.で述べたとおり、本件発明1について実施可能要件を充足しないとはいえないから、当該本件発明1とカテゴリが相違する以外は、実質的に同一の発明特定事項を有する本件発明3についても、実施可能要件を充足しないとはいえない。
したがって、上記申立人の主張を採用することはできない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明1?3は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえないから、それらの特許は同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものとはいえない。

第7 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-08-02 
出願番号 特願2014-52879(P2014-52879)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (B65B)
P 1 651・ 536- Y (B65B)
P 1 651・ 121- Y (B65B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 井上 茂夫
西藤 直人
登録日 2017-11-17 
登録番号 特許第6242255号(P6242255)
権利者 日清食品ホールディングス株式会社
発明の名称 シール不良検査装置およびシール不良検査方法  

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