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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G07C
審判 全部無効 特174条1項  G07C
管理番号 1343252
審判番号 無効2015-800019  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-01-30 
確定日 2018-06-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4763982号「入退室管理システム、受信器および入退室管理方法」の特許無効審判事件についてされた平成28年 1月29日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成28年(行ケ)第10061号、平成29年 4月12日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 1 特許第4763982号の明細書、特許請求の範囲を平成29年10月16日付け訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、6、7について訂正することを認める。 2 特許第4763982号の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする。 3 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

平成16年 8月 5日 本件特許出願
平成23年 6月17日 特許権の設定登録
(特許第4763982号 請求項の数7)
平成27年 1月30日 請求人・若林英親による本件無効審判の請求
同年 4月20日付け 被請求人・株式会社マトリックスによる
答弁書の提出
同年 6月24日付け 口頭審理陳述要領書の提出(請求人より)
同年 6月24日付け 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人より)
同年 7月 8日付け 口頭審理陳述要領書の提出(請求人より)
同年 7月 8日付け 上申書の提出(被請求人より)
同年 7月 8日 口頭審理の実施、補正許否の決定
同年 7月13日付け 無効理由通知
同年 7月13日付け 職権審理結果通知
同年 8月11日付け 意見書、訂正請求書の提出(被請求人より)
同年 8月14日付け 意見書の提出(請求人より)
同年 9月26日付け 弁駁書の提出
同年10月13日付け 補正許否の決定
同年11月11日付け 答弁書、訂正請求書の提出
同年12月24日付け 弁駁書の提出
平成28年 1月29日付け 審決(以下「1次審決」という。)
同年 3月 5日 請求人による1次審決取消訴訟
(平成28年(行ケ)第10061号)
訴状提出
平成29年 4月12日 判決(1次審決のうち「本件審判の請求は、
成り立たない。」との部分を取消し)
同年 6月 7日付け 審尋
同年 7月 5日付け 回答書の提出(請求人より)
同年 8月25日付け 無効理由通知
同年10月16日付け 意見書、訂正請求書の提出(被請求人より)
同年11月30日付け 弁駁書の提出
平成30年 2月 2日付け 審決の予告

なお、平成27年8月11日付けの訂正請求、及び、平成27年11月11日付けの訂正請求は、平成29年10月16日付けでさらに訂正請求がなされたことから、特許法第134条の2第6項の規定により取り下げられたものとみなされる。
そして、上記平成29年10月16日付け訂正請求による訂正を、本審決では、以下便宜上「本件再訂正」ということがある。
また、平成30年2月2日付けの審決の予告により、期間を指定して被請求人に訂正を請求する機会を与えたが、被請求人から訂正の請求がなされることなく上記期間が経過した。

第2 無効理由通知の概要

当審が通知した平成29年8月25日付け無効理由の概要は次のとおりである。

(1)平成27年11月11日付けの訂正請求による請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明1」などということがある。)は、下記の刊行物1に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(2)本件訂正発明2ないし5は、下記の刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(3)本件訂正発明6は、下記の刊行物1に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(4)本件訂正発明7は、下記の刊行物1に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。


刊行物1:特公平5- 35935号公報(甲第1号証の公告公報)
刊行物2:特開2004- 94891号公報(甲第7号証)
刊行物3:特開平8- 57104号公報(甲第5号証)
刊行物4:特開平7-283766号公報
刊行物5:特開2003- 21679号公報

第3 請求人の主張の概要
請求人が主張する無効理由の骨子及び概要並びに提出した証拠方法は以下のとおりである。

1 請求人の主張の骨子
(1)本件再訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正でないから、認められない。(平成29年11月30日付け弁駁書第3ページ中段付近?第8ページ上段付近)
そして、本件訂正発明1ないし7に係る特許は、平成29年8月25日付け無効理由通知(以下「無効理由通知(2)という。」)における上記「第2」で示した無効理由により、無効とされるべきである。

(2)仮に、本件再訂正が認められたとしても、本件再訂正後の請求項1ないし7に係る発明(以下「本件再訂正発明1」などという。また、これらをまとめて単に「本件再訂正発明」ということがある。)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。(平成29年11月30日付け弁駁書第8ページ中段付近?第25ページ下段付近)

(3)また仮に、本件再訂正が認められた場合、本件再訂正発明は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしておらず、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。(平成29年11月30日付け弁駁書第25ページ下段付近?第27ページ下段付近)

(4)また仮に、本件再訂正が認められた場合、本件再訂正発明は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしておらず、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。(平成29年11月30日付け弁駁書第27ページ下段付近?第29ページ上段付近)

2 請求人の提出した証拠方法
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証:特開昭62-38040号公報
甲第2号証:日本工業規格 JIS X 6322-3:2001
甲第3号証:特開2004-94891号公報
甲第4号証:立見信之,“三井物産のICタグ戦略 ICタグの現状をどうみるか”,THE WORLD COMPASS,2004年2月,p.2-6
甲第5号証:特開平8-57104号公報
甲第6号証:特開2004-57805号公報
甲第7号証:特開2004-94891号公報
甲第8号証:特開2003-178381号公報
甲第9号証:実願平4-18131号(実開平5-71955号)のCD-ROM
甲第10号証:特開2001-216547号公報
甲第11号証:特開2004-334546号公報
甲第12号証:1次審決取消訴訟(平成28年(行ケ)第10061号)における平成28年4月21日付けの第1準備書面(原告)
甲第13号証:1次審決取消訴訟(平成28年(行ケ)第10061号)における平成28年7月13日付けの被告第1準備書面
甲第14号証:1次審決取消訴訟(平成28年(行ケ)第10061号)における平成28年8月19日付けの第2準備書面(原告)
甲第15号証:1次審決取消訴訟(平成28年(行ケ)第10061号)における平成28年10月21日付けの被告第2準備書面
甲第16号証:1次審決取消訴訟(平成28年(行ケ)第10061号)における平成28年11月11日付けの第3準備書面(原告)
甲第17号証:1次審決取消訴訟(平成28年(行ケ)第10061号)における平成28年11月16日付けの被告第3準備書面

3 請求人の主張の概要
請求人の主張のうち、特に本件再訂正の適法性に関する主張の概要は以下のとおりである。

(1)本件再訂正における「独立して」の文言は、発信器や受信器相互の物理的な非接続を一義的に意味するものではない。そして、「独立して」の解釈として被請求人が主張する「各起動信号発信器同士が接続されていないという構成」及び「受信器と起動信号発信器が接続されていないという構成」についても、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に、何ら記載も示唆もされていない。
図1に基づいて「独立して」との文言を訂正追加する根拠として、図1に示す構成を考慮したとしても、本件再訂正後の発明における「独立して」との文言について、意味内容が不明確であり、依然として、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正とは認められない。(平成29年11月30日付け弁駁書第5ページ上段付近?第6ページ上段付近)

(2)被請求人は、意見書においては、「独立して」の意義として、それぞれのトリガ信号発信器からの出力信号発信のタイミングが独立であることを「独立して」の意義としている。しかし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲には、「独立」との文言自体がなく、独立の解釈として被請求人が主張する各トリガ信号発信器がそれぞれトリガ信号を発信するタイミングが同期ではないことはおろか、トリガ信号発信器がトリガ信号を発信するタイミングに関する説明すらなされていない。(平成29年11月30日付け弁駁書第6ページ中段付近)

(3)仮に、図1が上記独立接続構成についての記載を含むと解釈しても、図1は、機器同士の物理的接続がなされていないことを示すにすぎない。すなわち、図1は、被請求人が主張する「それぞれのトリガ信号発信器によるトリガ信号の発信のタイミング」を開示するとはいえない。すなわち、トリガ信号発信器同士の非接続とトリガ信号の発信のタイミングとの間には相関関係がない。したがって、図1は、機器同士の接続の有無を示す独立接続構成について記載するに留まり、被請求人が主張する意義である、第1トリガ信号発信器と第2トリガ信号発信器とのトリガ信号発信タイミングが相互に「独立」していることが示されているとはいえない。(平成29年11月30日付け弁駁書第7ページ中段付近)

第4 被請求人の主張の概要
被請求人の主張の骨子及び概要並びに提出した証拠方法は以下のとおりである。

1 被請求人の主張の骨子
本件再訂正は、訂正要件を具備し、認められる。
本件再訂正後の本件再訂正発明1ないし7に係る発明は、刊行物1ないし5に記載の発明及び技術事項並びに周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正後の請求項1ないし7についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、無効とされるべきではない。

2 被請求人の提出した証拠方法
乙第1号証:「goo辞書『セミアクティブタグの意味』」のウェブページの写し、インターネット<URL:http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/240716/m0u/>
乙第2号証:「株式会社マトリクス『POWERTAGについて』」のウェブページの写し、インターネット<URL:http://www.matrix-inc.co.jp/powertag02.html>
乙第3号証:「JBT株式会社『RFIDソリューション企画・提案』」のウェブページの写し、インターネット<URL:http://jbt-inc.co.jp/service/solution.html>
乙第4号証:「株式会社トスコ『入退場管理システム Ubic Safe』」のウェブページの写し、インターネット<URL:http://www.tosco.co.jp/products/introduction/ubic-safe/>
乙第5号証:動画「POWERTAG 標準タイプ」(被請求人作成)を記録したDVD
乙第6号証:「@ITリッチクライアント用語辞典『ポーリング』」のウェブページの写し、インターネット<URL:http://www.atmarkit.co.jp/aig/07wcr/polling.html>
乙第7号証:「平成21年度リスクアセスメント実施に関する実態調査報告書-存在検知手段と課題の分析-」,社団法人日本機械工業連合会 社団法人日本電気制御機器工業会,平成22年3月
乙第8号証:「ACTUNI株式会社『フードディフェンス』」のウェブページの写し、インターネット<URL:http://www.actuni.co.jp/security/casestudies/fooddefense.html>
乙第9号証:「イプロス製造業『ACTUNI株式会社 フードディフェンス導入事例:株式会社ニチレイフーズ様』」のウェブページの写し、インターネット<URL:http://www.ipros.jp/catalog/detail/290173>
乙第10号証:「フードディフェンスの第1歩は関係スタッフだけが入れる工場づくり」,月刊食品工場長,2010年4月,p.70-72

3 被請求人の主張の概要
被請求人の主張のうち、特に本件再訂正発明の進歩性に関する主張の概要は以下のとおりである。

(1)本件再訂正発明1では、第1起動信号発信器と第2起動信号発信器が独立して設けられるため、各起動信号発信器の起動信号の発信タイミングは任意である。(平成29年10月26日付け意見書第6ページ下段付近)

(2)本件再訂正発明1においては、各トリガ信号発信器同士が接続されていないことが明記されたことから、かかる点も相違点に含めるべきである。入退室管理を目的とするシステムである以上、第1及び第2トリガ信号発信器はドアを隔てた場所に設置されることが多いが、発信器同士が独立しているため、刊行物1に比して、構成が簡単であり、大幅なコストダウンが実現できる。
無効理由通知(2)において指摘されている刊行物4(特開平7-283766号公報)においても、質問器5から出入口の両側に設けられるマット3及びマット4のアンテナが接続されている以上、本件再訂正発明の第2トリガ信号発信器が第1トリガ信号発信器と独立して設けられる構成を備えるものではない。
他方、刊行物5(特開2003-21679号公報)は、かかる構成を備えるが、わずか1件の資料のみで周知技術を認定することには無理がある(平成29年10月26日付け意見書第7ページ下段付近?第8ページ上段付近)。

(3)一概にIDタグといっても、本件特許の出願時においてその機能・特性には大きなバリエーションが認められ、目的・構成にかなったIDタグ及び信号の種類の選択が要求されるはずである。無効理由通知(2)において主引例として認定された引用発明Aは、広域の検知エリアによるおおまかな位置の検出を目的とする「位置検知システム」であり、刊行物2(特開2004-94891号公報)に記載された展示ブースにおける「入場者数計測システム」についての発明や刊行物3(特開平8-57104号公報)に記載されたトラック、オフロード等における競争の順位やタイムの測定等を行う「競争用計時装置」についての発明とは、技術分野も課題も異なり、システムの構成自体や検知エリアの領域も大きく異なる。これらの点に何ら考慮せずに、刊行物2や刊行物3の構成に用いられている種類のIDタグを、刊行物1に記載も示唆もないにもかかわらず単にコストを削減できる等の理由で引用発明Aに採用して、そもそも所与の機能が得られるか否かも大いに疑問である。
先に述べたように、引用発明Aは、広域の検知エリアにおける、多数の移動体を対象とする、おおまかな位置の検出を目的とする位置検知システムであり、トランスポンディングカード(以下、「TRC」ということがある。)は、入退出時に限らず常に作動することが求められる。そうであれば、トリガ信号を受けたときのみ起動するIDタグを組み合わせる動機付けは、むしろ生じ得ないというべきである。
以上の理由から、引用発明Aに刊行物2及び3のIDタグを採用して、該当相違点に係る本件再訂正発明1の構成に至ることは、当業者にとって容易とはいえない(平成29年10月26日付け意見書第9ページ中段付近?第10ページ上段付近)。

(4)本件再訂正発明は、2つのアンテナを切換えて、受信期間内に応答信号があるか否かを判断して、タグの特定と、移動方向を検出するという従来の入退室管理システムにおいて、構成が複雑で、判別に時間がかかるという課題を解決することを目的とするものである以上(再訂正発明明細書【0002】?【0004】)、各発信器の独立及びトリガ信号の発信タイミングを任意とすることが、重要な意義を有することは明らかである。
無効理由通知(2)は、そもそも、固定無線機からの発信信号が重なる問題が、複数の固定無線機が近接しているシステムにおいて一般的に対処しなければならない課題であるという認識自体が正当ではない。無効理由通知にて主引例として認定された引用発明Aは、「位置検知システム」であって、刊行物1においてビルの各部屋に固定無線機が設置される実施例のみが記載されていることからも明らかなように、典型的には「移動体がどの部屋に在室しているか」を知るために用いるものである。かかる目的を実現するため、各部屋に1台ずつ固定無線機を設置し、当該部屋の全体を網羅するように検知エリアを設定すると、必然的に隣接する部屋の検知エリアとの重複部分が生ずるので、引用発明Aにおける対処が要求される。これに対し、「入退室管理システム」である本件再訂正発明では、出入口の一方側と他方側に起動信号発信器を設け、部屋の全体を網羅するように検知エリアを設ける必要はないので、検知エリアの重複問題は避けることができる(平成29年10月26日付け意見書第11ページ上段?中段付近)

(5)刊行物1には、「移動体7?9の位置が認識できるため、移動体の行先がわかり各種の応用システムを構成することができる」と記載されているに過ぎず、そこには、移動体7?9のある時点の位置(=行先)を認識することが言及されているにとどまり、位置の情報を経時的に蓄積・解析することについてなんら記載も示唆も認められない。
既述したように、もし引用発明Aによって、ごく狭い領域におけるピンポイントの移動体の位置の把握が可能であるのであれば、移動体がポーリング信号の到達範囲にある限り、どの場所に位置しているのかの把握が可能であるため、既に入退室管理の目的は達成されていると考えられる。すなわち、引用発明Aに周知技術を適用して本件再訂正発明1に至ることには、阻害要因があるというべきである(平成29年10月26日付け意見書第12ページ上段付近)。

(6)本件再訂正発明1では,受信器は第1及び第2の起動信号発信器とは独立した機器とされている。かかる構成によって,発信器と受信器を専用化できるため,精度が向上するとともに,各機器を簡素化できるため,コストダウンが可能になる。また,複数の受信器を設ける場合にはそれらからの情報を集約する上位機器が必要になるが,本件再訂正発明1では,受信器の保持情報のみで入退出管理が可能になる。
引用発明Aにおいては,固定無線機が,起動信号の発信を行いかつIDタグが発信した信号を受信する役割を担う機器として開示されているが,起動信号の発信を行う機器と,IDタグが発信した信号を受信する役割を担う機器とを独立分離させるしくみは開示されていない。また,刊行物1において,固定無線機から受信器を独立させる仕組みやかかる仕組みを設ける必要性について何ら示唆はないことから,他の技術事項を適用して,該相違点に係る本件再訂正発明1に至ることは,当業者にとって容易とはいえない(平成29年10月26日付け意見書第12ページ中段付近?第13ページ上段付近)。

第5 本件再訂正について
1 訂正事項
本件再訂正は、特許第4763982号の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書を、平成29年10月16日付け訂正請求書に添付した特許請求の範囲及び明細書のとおり、請求項ごと又は一群の請求項ごとに訂正しようとするものであって、その訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし24のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。

(1)訂正事項1
願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に「第1の位置に設けられ、第1特性を有し、IDタグを起動するトリガ信号を出力する、第1トリガ信号発信器と、
第2の位置に設けられ、前記第1と異なる第2特性を有するトリガ信号を出力する、第2トリガ信号発信器と、
前記第1および第2トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグとを含み、
前記IDタグは、受信したトリガ信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し、
前記IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信する受信器とを含む、動態管理システム。」とあるのを、
「出入口の一方側である第1の位置に設けられ、第1特性を有し、IDタグを起動するトリガ信号を出力する、第1トリガ信号発信器と、
前記出入口の他方側である第2の位置に、前記第1トリガ信号発信器と独立して設けられ、前記第1と異なる第2特性を有するトリガ信号を出力する、第2トリガ信号発信器と、
前記第1および第2トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグとを含み、
前記IDタグは、受信したトリガ信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し、
前記第1および第2トリガ信号発信器と独立して設けられ、前記IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信する受信器とを含む、入退室管理システム」に訂正する。

(2)訂正事項2
願書に添付した特許請求の範囲の請求項2に「請求項1に記載の動態管理システム」とあるのを、「請求項1に記載の入退室管理システム」に訂正する。

(3)訂正事項3
願書に添付した特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2に記載の動態管理システム」とあるのを、「請求項1または2に記載の入退室管理システム」に訂正する。

(4)訂正事項4
願書に添付した特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から3のいずれかに記載の動態管理システム」とあるのを、「請求項1から3のいずれかに記載の入退室管理システム」に訂正する。

(5)訂正事項5
願書に添付した特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から4のいずれかに記載の動態管理システム」とあるのを、「請求項1から4のいずれかに記載の入退室管理システム」に訂正する。

(6)訂正事項6
願書に添付した特許請求の範囲の請求項6に「IDタグを起動するトリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグが出力したID番号を受信する受信器であって、
前記トリガ信号は、それぞれが異なる位置に設けられ、相互に異なる特性を有するトリガ信号を出力する、複数のトリガ信号発信器から出力され、
前記IDタグは、受信したトリガ信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し、
前記IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報と、前記ID番号とを受信する、受信器。」とあるのを、
「IDタグを起動するトリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグが出力したID番号を受信する受信器であって、
前記トリガ信号は、出入口を挟んでそれぞれが異なる位置に設けられ、相互に異なる特性を有するトリガ信号を出力する、複数の独立したトリガ信号発信器から出力され、
前記IDタグは、受信したトリガ信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し、
前記複数のトリガ信号発信器と独立して設けられ、前記IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報と、前記ID番号とを受信する、受信器。」に訂正する。

(7)訂正事項7
願書に添付した特許請求の範囲の請求項7に「異なる位置に設けられたトリガ信号発信器から、IDタグに対して相互に異なる特性を有し、IDタグを起動する複数のトリガ信号を出力するステップと、
トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力するIDタグを、前記異なる位置を通過させるステップと、
受信器によって、IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信するステップとを含む、動態管理方法。」とあるのを、
「出入口を挟んで異なる位置に独立して設けられた複数のトリガ信号発信器から、IDタグに対して相互に異なる特性を有し、IDタグを起動する複数のトリガ信号を出力するステップと、
トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力するIDタグを、前記異なる位置を通過させるステップと、
前記複数のトリガ信号発信と独立して設けられた受信器によって、IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信するステップとを含む、入退室管理方法。」に訂正する。

(8)訂正事項8
願書に添付した発明の名称に、「動態管理システム、受信器および動態管理方法」とあるのを、「入退室管理システム、受信器および入退室管理方法」に訂正する。

(9)訂正事項9
願書に添付した明細書段落【0001】の記載を、「この発明は、部屋の出入口における入退室管理等に用いられる、入退室管理システム、それに用いられる受信器、および入退室管理方法に関し、特に複数の人の動向を容易に知ることができる、入退室管理システム、それに用いられる受信器、および入退室管理方法に関する。」に訂正する。

(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0004】の記載を、「この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、簡単な構成で、容易に出入口における入退出の移動を検出できる、入退室管理システム、受信器および入退室管理方法を提供することを目的とする。」に訂正する。

(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0005】の記載を、「この発明にかかる入退室管理システムは、出入口も一方側である第1の位置に設けられ、第1特性を有するトリガ信号を出力する、第1トリガ信号発信器と、出入口の他方側である第2の位置に設けられ、第1トリガ信号発信器とは独立して第1と異なる第2特性を有するトリガ信号を出力する、第2トリガ信号発信器と、第1および第2トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグとを含み、IDタグは、受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力し、第1および第2トリガ信号発信器と独立して設けられ、IDタグが出力したID番号を受信する受信器とを含む。」に訂正する。

(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0006】の記載を、「IDタグは、相互に独立して設けられた第1と第2のトリガ信号発信器から受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力するため、出入口の一方側と他方側との2つのトリガ信号発信器からの情報だけで、IDクグが、出入口の一方側と他方側とに設けられたどのトリガ信号発信位置をどのように通過したかを知ることができる。」に訂正する。

(13)訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0007】の記載を、「その結果、簡単な構成で、容易に出入口における移動を検出できる、入退室管理システムが提供できる」に訂正する。

(14)訂正事項14
願書に添付した明細書の段落【0012】の記載を、「この発明の他の局面においては、受信器は、トリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグが出力したID番号を受信する。トリガ信号は、出入口を挟んで、それぞれが異なる位置に設けられ、相互に異なる特性を有するトリガ信号を出力する複数の独立したトリガ信号発信器から出力され、IDタグは、受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力し、複数のトリガ信号発信器と独立して設けられた受信器は、IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報と、ID番号とを受信する。」に訂正する。

(15)訂正事項15
願書に添付した明細書の段落【0013】の記載を、「この発明のさらに他の局面においては、入退室管理方法は、出入口を挟んで異なる位置に独立して設けられた複数のトリガ信号発信器から、IDタグに対して相互に異なる特性を有し、IDタグを起動する複数のトリガ信号を出力するステップと、トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、
受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力するIDタグを、前記異なる位置を通過させるステップと、複数のトリガ信号発信器と独立して設けられた受信器によって、IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信するステップとを含む。」に訂正する。

(16)訂正事項16
願書に添付した明細書の段落【0014】の記載を、「IDタグは、相互に独立して設けられたトリガ信号発信器から出力されたトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力するため、出入口を挟んだ、2つのトリガ信号発信器からの情報だけで、IDタグが出入口に設けられたどのトリガ信号発信位置をどのように通過したかを知ることができる。」に訂正する。

(17)訂正事項17
願書に添付した明細書の段落【0015】の記載を、「その結果、簡単な構成で、容易に動態の出入口における移動を検出できる、入退室管理方法が提供できる。」に訂正する。

(18)訂正事項18
願書に添付した明細書の段落【0016】の記載を、「以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、この発明のー実施の形態に係る入退室管理システムを、ある部屋への出入りの管理である入退出管理システムに適用した場合の全体構成を示すブロック図である。」に訂正する。

(19)訂正事項19
願書に添付した明細書の段落【0017】の記載を、「図1を参照して、部屋60には、4つの出入口A?Dが設けられており、所定のIDクグ40を保持した人がこれらの出入口A?Dを介して入退室する。入退出管理システムとしての動態管理システム10は、部屋60の出入口A?Dのそれぞれに設けられ、所定のトリガ信号を発信する、トリガ信号発信アンテナ21?28と、トリガ信号発信アンテナ21?28にトリガ信号を供給するトリガ信号発信器11?18と、トリガ信号を受けてIDタグ40が発信したID番号を受信する受信器35?37と、受信器35?37に接続され、受信器35?37の受信したID番号を処理するコントローラ30とを含む。」に訂正する。

(20)訂正事項20
願書に添付した明細書の段落【0018】の記載を、「トリガ信号発信器11?18は、図1に示すように相互に独立して設けられ、トリガ信号発信時に、それぞれ異なる特性のトリガ信号を出力する。ここでは、トリガ信号IDを出力するものとして説明する。IDタグ40は、後に説明するように、トリガ信号を受信すると、受信したトリガ信号のID番号と、自分のID番号とを合わせて、受信器35?37に送信する。」に訂正する。

(21)訂正事項21
願書に添付した明細書の段落【0020】の記載を、「図1においては、部屋60の内部にトリガ信号発信器11?18とは独立して受信器35を1つ設け、外部には、出入口A、B用に受信器36を設け、出入口C、D用に受信器37を設けた例を示しているが、受信器を各トリガ信号発信器ごとに設けてもよい。」に訂正する。

(22)訂正事項22
願書に添付した明細書の段落【0030】の記載を、「このように、IDタグ40は、相互に独立して設けられた2つのトリガ信号発信器から受信したトリガ信号のIDと自己のIDとを受信器35?37に送信するため、トリガ信号発信アンテナ21?28の設けられている出入口において、どの方向に移動したかを確実に検出できる。」に訂正する。

(23)訂正事項23
願書に添付した明細書の段落【0037】の記載を、「上記実施の形態においては、動態管理システムを、部屋60の出入口を介したIDタグを保持した人の入退室の管理である入退室管理システムに用いた例について説明したが、これに限らず、任意の位置における人の動向を知ることができる。」に訂正する。

(24)訂正事項24
願書に添付した明細書の段落【0039】の記載を削除する。

2 訂正請求についての当審の判断
これら各訂正事項の適法性について検討する。

(1)訂正の目的について
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、本件再訂正前の特許請求の範囲の請求項1における、(i)「第1トリガ信号発信器」が設けられる位置である「第1の位置」及び「第2トリガ信号発信器」が設けられる位置である「第2の位置」をそれぞれ、「出入口の一方側である第1の位置」、「出入口の他方側である第2の位置」と限定し、(ii)「第2トリガ信号発信器」について「第1トリガ信号発信器と独立して設けられ」ることを限定し、(iii)「受信器」について「第1および第2トリガ信号発信器と独立して設けられ」ることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書第1号)を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、本件再訂正前の特許請求の範囲の請求項1における、(iv)「動態管理システム」の「管理」の対象である「動態」を、動態の一例である「入退室」へと限定するものであるから、この点においても特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 訂正事項2ないし5について
訂正事項2ないし5は、上記訂正事項1の(iv)と同様、本件再訂正前の特許請求の範囲の請求項2ないし5の各請求項において、「管理」の対象である「動態」を、動態の一例である「入退室」へと限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

ウ 訂正事項6について
訂正事項6は、本件再訂正前の特許請求の範囲の請求項6における、(i)「トリガ信号発信器」を「出入口を挟んで」「設けられ」た「独立した」「トリガ信号発信器」と訂正することにより、複数の「トリガ信号発信器」が設けられる位置及び関係を限定し、(ii)「受信器」について「複数のトリガ信号発信器と独立して設けられ」ることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

エ 訂正事項7について
訂正事項7は、本件再訂正前の特許請求の範囲の請求項7における、(i)「トリガ信号発信器」を「出入口を挟んで、」「独立して設けられた複数のトリガ信号発信器」と訂正することにより、複数の「トリガ信号発信器」が設けられた位置及び関係を限定し、(ii)「受信器」について「複数のトリガ信号発信器と独立して設けられ」ることを限定し、(iii)「動態管理方法」の「管理」の対象である「動態」を、動態の一例である「入退室」へと限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

エ 訂正事項8について
訂正事項8は、訂正事項1ないし7による特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の発明の名称の記載を特許請求の範囲の記載と整合させようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明(特許法第134条の2第1項ただし書き第3号)を目的とするものに該当する。

オ 訂正事項9ないし19及び訂正事項23ないし24について
訂正事項9ないし19及び訂正事項23ないし24は、訂正事項1ないし7による特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載と整合させようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

カ 訂正事項20について
訂正事項20は、上記訂正事項1、6及び7に係る特許請求の範囲の訂正に伴って、明細書記載の「トリガ信号発信器11?18」につき、発明を実施するためのより限定された「相互に独立して設けられ」という態様にして特許請求の範囲の記載と整合させようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

キ 訂正事項21について
訂正事項21は、上記訂正事項1、6及び7に係る特許請求の範囲の訂正に伴って、明細書記載の「受信器35」につき、発明を実施するためのより限定された「トリガ信号発信器11?18とは独立して」という態様にして特許請求の範囲の記載と整合させようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

ク 訂正事項22について
訂正事項22は、上記訂正事項1、6及び7に係る特許請求の範囲の訂正に伴って、明細書記載の「2つのトリガ信号発信器」につき、発明を実施するためのより限定された「相互に独立して設けられ」という態様にして特許請求の範囲の記載と整合させようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

ケ 小括
以上により、訂正事項1ないし24は、いずれも特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は3号を目的とするものに該当する。

(2)新規事項の存否について
次にこれら各訂正事項の新規事項の存否について検討する。

ア 訂正事項1について
ア-1 訂正事項1(i)及び(iv)について
まず、訂正事項1のうち(i)「第1トリガ信号発信器」が設けられる位置である「第1の位置」及び「第2トリガ信号発信器」が設けられる位置である「第2の位置」をそれぞれ、「出入口の一方側である第1の位置」、「出入口の他方側である第2の位置」と限定する事項(以下「訂正事項1(i)」という。)、(iv)「動態管理システム」を「入退室管理システム」へと限定する事項(以下「訂正事項1(iv)」という。)について検討する。
訂正事項1(i)及び(iv)については、先の平成27年11月11日付けの訂正請求における特許請求の範囲の請求項1についての訂正請求と同様であるところ、1次審決取消訴訟判決は1次審決のうち訂正を認めた部分を取り消していないことを踏まえ、1次審決において示したのと同様の理由により(1次審決第5の3)、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下単に「本件特許明細書等」ということがある。)に記載された事項の範囲内で行われたものということができる。

ア-2 訂正事項1(ii)及び(iii)について
次に、訂正事項1のうち、(ii)「第2トリガ信号発信器」について「第1トリガ信号発信器と独立して設けられ」ることを限定する事項(以下「訂正事項1(ii)」という。)、及び、(iii)「受信器」について「第1および第2トリガ信号発信器と独立して設けられ」ることを限定する事項(以下「訂正事項1(iii)」という。)について検討する。

(ア)上記訂正事項1(ii)及び(iii)に関連する本件特許明細書等の記載として、以下のような記載が見られる。
「【0017】
図1を参照して、部屋60には、4つの出入口A?Dが設けられており、所定のIDタグ40を保持した人がこれらの出入口A?Dを介して入退室する。動態管理システム10は、部屋60の出入口A?Dのそれぞれに設けられ、所定のトリガ信号を発信する、トリガ信号発信アンテナ21?28と、トリガ信号発信アンテナ21?28にトリガ信号を供給するトリガ信号発信器11?18と、トリガ信号を受けてIDタグ40が発信したID番号を受信する受信器35?37と、受信器35?37に接続され、受信器35?37の受信したID番号を処理するコントローラ30とを含む。」

「【0018】
トリガ信号発信器11?18は、トリガ信号発信時に、それぞれ異なる特性のトリガ信号を出力する。ここでは、トリガ信号IDを出力するものとして説明する。IDタグ40は、後に説明するように、トリガ信号を受信すると、受信したトリガ信号のID番号と、自分のID番号とを合わせて、受信器35?37に送信する。
【0019】
コントローラ30は、IDタグ40からのトリガID番号とタグのID番号を受信する、受信部31と、現時時刻を出力する計時部32と、受信部31で受信した上記のデータを、計時部32で計時した時刻とともに記憶する記憶部33と、受信部31、計時部32および記憶部33を制御する制御部34とを含む。」

(イ)上記図1を参酌するに、図1において、出入口に設けられた、入退出を検出するためのそれぞれの対になったトリガ信号発信器、すなわち出入口Aに設けられたトリガ信号発信器21及び22、並びに出入口Bに設けられたトリガ信号発信器23及び24等は、いずれも相互に物理的に接続されていない。また、上記明細書の記載を参酌しても、入退出を検出するためのそれぞれの対になったトリガ信号発信器が接続されていることを示唆する記載は見当たらない。
したがって、本件特許明細書等には、「第2トリガ信号発信器」を「第1トリガ信号発信器と独立して設け」る直接的な記載はないものの、相互に物理的に接続されていない等のごく一般的な意味において、「第2トリガ信号発信器」と「第1トリガ信号発信器」とは「独立して設けら」れているとしても、新たな技術的事項を導入するものとまではいえない。
よって、訂正事項1(ii)は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものということができる。

(ウ)また、上記図1を参酌するに、図1において、受信器35?37は、いずれもトリガ信号発信器11?18とは、いずれも物理的に接続されていない。また、上記明細書の記載を参酌しても、受信器35?37とトリガ信号発信器11?18とが接続されていることを示唆する記載は見当たらない。
したがって、本件特許明細書等には、「受信器」を「第1および第2トリガ信号発信器と独立して設け」る直接的な記載はないものの、少なくとも、直接物理的に接続されていない等のごく一般的な意味において、「受信器」を「第1および第2トリガ信号発信器と独立して設け」るとしても、新たな技術的事項を導入するものとまではいえない。
よって、訂正事項1(iii)も、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものということができる。

(エ)訂正事項1(ii)及び(iii)に関し、請求人は、本件特許明細書等には「独立」との文言自体がなく、独立の解釈として被請求人が主張する各トリガ信号発信器がそれぞれトリガ信号を発信するタイミングが同期ではないことはおろか、トリガ信号発信器がトリガ信号を発信するタイミングに関する説明すらなされていない旨主張する(上記第3の3(2))。しかしながら、「独立して設け」ることの解釈としての各トリガ信号発信器がそれぞれトリガ信号を発信するタイミングの同期は、あくまでも被請求人の主張であって、この解釈の是非が当審の新規事項の判断を左右するものではない。

(オ)以上により、訂正事項1(ii)及び(iii)は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものということができる。

ア-3 訂正事項1についてのまとめ
以上をまとめると、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものということになる。

イ 訂正事項2ないし5について
訂正事項2ないし5は、上記訂正事項1(iv)と同様の訂正を本件再訂正前の特許請求の範囲の請求項2ないし5に対して行おうとするものであるから、上記ア-1にて説示したとおり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものである。

ウ 訂正事項6について
訂正事項6は、上記訂正事項1(i)ないし(iii)と同様の訂正を本件再訂正前の特許請求の範囲の請求項6に対して行おうとするものであるから、上記アにて説示したとおり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものということができる。

エ 訂正事項7について
訂正事項7は、上記訂正事項1(i)ないし(iv)と同様の訂正を本件再訂正前の特許請求の範囲の請求項7に対して行おうとするものであるから、上記アにて説示したとおり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものということができる。

オ 訂正事項8について
訂正事項8は、発明の名称につき、上記訂正事項1(iv)と同様の訂正をして訂正明細書記載の発明の名称とするものであるから、上記ア-1にて説示したとおり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものである。

カ 訂正事項9?23について
訂正事項9?23は、上記訂正事項1(i)ないし(iv)の少なくとも1つと同様の訂正を明細書において行おうとするものであるから、上記アにて説示したとおり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものということができる。

キ 訂正事項24について
訂正事項24は、明細書の記載を削除するものであるから、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたことは明らかである。

ク 小括
したがって、本件再訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものといえ、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記各訂正事項が特許請求の範囲の拡張・変更に該当しないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、請求項1ないし5からなる一群の請求項、請求項6、請求項7についての本件再訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法第134条の2第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第6 本件再訂正発明
上記のとおり本件再訂正は認められるから、本件再訂正発明1ないし7は、平成29年10月16日付け訂正請求書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
出入口の一方側である第1の位置に設けられ、第1特性を有し、IDタグを起動するトリガ信号を出力する、第1トリガ信号発信器と、
前記出入口の他方側である第2の位置に、前記第1トリガ信号発信器と独立して設けられ、前記第1と異なる第2特性を有するトリガ信号を出力する、第2トリガ信号発信器と、
前記第1および第2トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグとを含み、
前記IDタグは、受信したトリガ信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し、
前記第1および第2トリガ信号発信器と独立して設けられ、前記IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信する受信器とを含む、入退室管理システム
【請求項2】
前記IDタグは、前記トリガ信号ごとの異なる特性を記憶する記憶手段を含む、請求項1に記載の入退室管理システム。
【請求項3】
前記トリガ信号発信器の相互に異なる特性は、トリガ信号のIDによって区別される、請求項1または2に記載の入退室管理システム。
【請求項4】
さらに、現在時刻を検出する現在時刻検出器を含み、前記受信器の受信したID番号を前記現在時刻とともに記憶する、請求項1から3のいずれかに記載の入退室管理システム。
【請求項5】
前記受信器は複数のトリガ信号発信器に対して1個設けられる、請求項1から4のいずれかに記載の入退室管理システム。
【請求項6】
IDタグを起動するトリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグが出力したID番号を受信する受信器であって、
前記トリガ信号は、出入口を挟んでそれぞれが異なる位置に設けられ、相互に異なる特性を有するトリガ信号を出力する、複数の独立したトリガ信号発信器から出力され、
前記IDタグは、受信したトリガ信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し、
前記複数のトリガ信号発信器と独立して設けられ、前記IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報と、前記ID番号とを受信する、受信器。
【請求項7】
出入口を挟んで異なる位置に独立して設けられた複数のトリガ信号発信器から、IDタグに対して相互に異なる特性を有し、IDタグを起動する複数のトリガ信号を出力するステップと、
トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力するIDタグを、前記異なる位置を通過させるステップと、
前記複数のトリガ信号発信と独立して設けられた受信器によって、IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信するステップとを含む、入退室管理方法。」

第7 当審の判断
第7-1 引用刊行物の記載内容
当審の無効理由通知にて引用した刊行物1ないし5には、以下の発明または技術事項が記載されていると認められる。 なお、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まない。

1 刊行物1
(1)刊行物1に記載された事項
刊行物1は、請求人の提出した甲第1号証に対応する公告公報であり、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)特許請求の範囲
「1 (a) 施設に設けられる信号の処理装置と、
(b) 該処理装置に接続され、ポーリング信号と位置信号とを同期をとつて送信する送信部及び信号を受信する受信部を具備する複数の固定無線機と、
(c) 移動体に取り付けられ、かつ該固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するメモリを具備するトランスポンディングカードとを設け、
(d) 該トランスポンディングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信し、該信号を固定無線機で受信し、該固定無線機で受信した信号に基づいて前記処理装置にて移動体の位置を検出するトランスポンディングカードによる位置検出システム。」

(イ)「(産業上の利用分野)
本発明は、IC(集積回路)カードに蓄積されたID(個別認識)コードやデータを無線により収集することのできる無線応答方式における移動体の位置検出システムに関するものである。
(従来の技術)
・・・
高度な情報通信機能とビル管理機能を併せ持つインテリジエントビルにこの通信システムを採用すると、例えば、第7図に示されるようになる。即ち、ビルの各部屋などに固定無線機(TRX)5,6を設置し、この固定無線機5,6からアンテナを介してポーリング信号(POL)が発信されると、移動体7?9の携帯無線機からIDコードを含む応答信号が戻り、その応答信号が固定無線機5,6によって受信され、処理装置3に送られる。
第8図はその通信信号のタイムチヤートであり、第5図に示されるものと同様に移動体の携帯無線機からのID信号を含む応答信号がどの固定無線機によって受信されたかが分かれば、移動体7?9の位置が認識できるため、移動体の行先が分かり各種の応用システムを構成することができる。」(第2欄第1行?第3欄第24行)

(ウ)「(実施例)
以下、本発明の実施例について図面に基づいて詳細に説明する。
なお、ここでトランスポンディングカード(以下、TRCという)とは、ICカードに無線通信機能を付加したものをいう。
第1図は本発明に係るTRCによる位置検出システム構成図であり、第2図はその位置検出システムにおける通信信号のタイムチヤート、第3図はTRCの構成図である。
図中、11,12は施設の部屋などに設置される固定無線機、13,14は固定無線機11,12にそれぞれ接続されるアンテナ、15は人や動物などの移動体に取り付けられるTRC、16は施設のセンタなどに設けられる処理装置であり、各固定無線機11,12から送信される信号を処理する。
ここで、まず、TRCの構成について説明する。
第3図において、15-1はTRC全体の管理・制御を行う制御部、15-2は無線通信の制御手順やTRC自体のIDコード及び位置情報を記憶するメモリ、15-3は固定無線機との無線送受信を行う無線送受信部、15-4はIDコードなどのデータを入力するためのキー入力部、15-5はTRC内の各部に電力を供給する電源部である。
なお、図示されていないが、各種の情報を表示する表示部、時刻信号を発生させる時計部などを設けることもできる。
また、このTRCは軽薄短小なカード状に構成され簡単に身に付けることができる。
次に、このTRCによる位置検出システムについて説明する。
施設の所定の部屋などに設けられる固定無線機(TRX)11,12からポーリング信号(POL)と共に各々の固定無線機の位置を示すアドレス信号(AD1,AD2)を付加して送信する。この場合、各固定無線機TRXからの送信信号は全て同じタイミングで送出する。従って、TRC15には複数のポーリング信号とアドレス信号、つまり、POL+AD1とPOL+AD2のどちらでも到達することがあるが、電波の強い方の信号POL+AD1が電波の弱い方の信号POL+AD2をマスクするため、TRC15にはアドレスAD1のみが蓄積されることになる。その後、TRC15は応答信号としてID信号と位置信号ID+AD1を送出する。この応答信号は各固定無線機で受信され、その受信された信号は処理装置16によって処理されTRC15の位置が検出される。この場合、ID+AD1の信号が固定無線機11と12に同時に受信された場合にも、受信信号内に位置信号を含んでいるため、処理装置16は位置を誤って判定することはない。
第4図は本発明の他の実施例を示す通信信号のタイムチヤートであり、常時は一定時間毎に位置信号(AD1,AD2)が送出され、必要な時にのみポーリング信号(POL)が送出されるようにしている。」(第4欄第30行?第5欄第43行)

(エ)「(発明の効果)
・・・
(1) 施設における各部屋のシールドの強化や固定無線機の位置の細かい調整を行うことなく、移動体の位置を正確に、しかも容易に把握することができる。
(2) また、そのシステム構成が従来のものに比して、極めて簡素化されている。
(3) 更に、本発明に係るTRCによる位置検出をインテリジエントビルのコントロールシステムのサブシステムとして用いる時は、そのビルの一層の機能向上を図ることができる。また、このシステムを採用するにあたり施設側に格別の改造を加える必要がないため、既設ビルへの適用も極めて容易に行うことができる。」(第6欄第4?33行)

(2)引用発明Aないし引用発明C
(オ)上記摘記事項(イ)の「ビルの各部屋などに固定無線機(TRX)」、上記摘記事項(ウ)の「図中、11,12は施設の部屋などに設置される固定無線機」等の記載及び図面の第1図等の図示内容を参酌すれば、摘記事項(ア)の「複数の固定無線機」は、施設の各部屋などに設置されるものといえる。

ア 引用発明A
よって、上記摘記事項(ア)ないし(エ)及び上記認定事項(オ)を、図面を参照しつつ1次審決取消判決の判事事項も踏まえて本件再訂正発明1に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。(以下「引用発明A」という。)
「施設に設けられる信号の処理装置と、
該処理装置に接続され、ポーリング信号と位置信号とを同期をとって送信する送信部及び信号を受信する受信部を具備する施設の各部屋などに設置される複数の固定無線機と、
移動体に取り付けられ、かつ該固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するメモリを具備するトランスポンディングカードとを設け、
該トランスポンディングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信し、該信号を固定無線機で受信し、該固定無線機で受信した信号に基づいて前記処理装置にて移動体の位置を検出するトランスポンディングカードによる位置検出システム。」

イ 引用発明B
また、上記引用発明Aを「固定無線機」の観点から把握すれば、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明B」という。)が記載されていると認める。
「ポーリング信号と位置信号とを同期をとって送信する送信部及び信号を受信する受信部を具備する施設の各部屋などに設置される複数の固定無線機であって、移動体に取り付けられ、かつ該固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するメモリを具備するトランスポンディングカードは、ポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信し、該信号を固定無線機で受信する、固定無線機。」

ウ 引用発明C
(カ)引用発明Aは、“引用発明Aのシステムを用いた位置検出方法”としても把握できるので、摘記事項(ア)の「ポーリング信号と位置信号とを同期をとって送信する送信部」の記載から、当該「方法」を遂行するステップとして、刊行物1には、“送信部がポーリング信号と位置信号とを送信するステップ”が実質的に記載されている。
同様に、摘記事項(ア)の「トランスポンディングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信し、該信号を固定無線機で受信し、該固定無線機で受信した信号に基づいて前記処理装置にて移動体の位置を検出する」の記載から、刊行物1には、“トランスポンディングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信するステップ”、“該信号を固定無線機で受信するステップ”、“該固定無線機で受信した信号に基づいて移動体の位置を検出するステップ”の各ステップも実質的に記載されている。

(キ)摘記事項(イ)の「高度な情報通信機能とビル管理機能を併せ持つインテリジエントビルにこの通信システムを採用すると、例えば、第7図に示されるようになる。即ち、ビルの各部屋などに固定無線機(TRX)5,6を設置し、・・・第5図に示されるものと同様に移動体の携帯無線機からのID信号を含む応答信号がどの固定無線機によって受信されたかが分かれば、移動体7?9の位置が認識できるため、移動体の行先が分かり各種の応用システムを構成することができる。」、摘記事項(ウ)の「15は人や動物などの移動体に取り付けられるTRC」、摘記事項(エ)の「施設における各部屋のシールドの強化や固定無線機の位置の細かい調整を行うことなく、移動体の位置を正確に、しかも容易に把握することができる。」等の記載によれば、移動体は各部屋へ移動するものであって、各部屋へ移動した後に移動体の位置が認識されるのであるから、上記認定事項(カ)の“トランスポンディングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信するステップ”の前段階におけるステップとして、刊行物1には、“ポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信するトランスポンデイングカードを、各部屋へ移動させるステップ”が実質的に記載されているといえる。

よって、上記摘記事項(ア)ないし(エ)及び上記認定事項(オ)ないし(キ)を、図面を参照しつつ1次審決取消判決の判事事項も踏まえて本件再訂正発明7に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。(以下「引用発明C」という。)
「固定無線機の送信部によりポーリング信号と位置信号とを送信するステップと、
ポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信するトランスポンディングカードを、各部屋へ移動させるステップと、
トランスポンディングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信するステップと、
該信号を固定無線機で受信するステップと、
該固定無線機で受信した信号に基づいて移動体の位置を検出するステップとを含む、
トランスポンディングカードによる位置検出方法であって、
固定無線機は、ポーリング信号と位置信号とを同期をとって送信する送信部及び信号を受信する受信部を具備する施設の各部屋などに設置される複数の固定無線機であり、
トランスポンディングカードは、移動体に取り付けられ、かつ該固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するメモリを具備するトランスポンディングカードである、
トランスポンディングカードによる位置検出方法。」

2 刊行物2
刊行物2は、請求人の提出した甲第3号証であり、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
入場者の各々に所持され、固有番号を有し、トリガー信号に応答するIDタグと、
複数のイベント会場の各々に設けられ、前記トリガー信号を発信するトリガー信号発信部を有する入場者管理装置とを含み、
前記IDタグおよび前記入場者管理装置は、それぞれ、前記トリガー信号に応答して前記固有番号を出力するか、または、前記トリガー信号とともに入場者管理装置の固有番号を出力し、
前記IDタグが前記固有番号を出力したときは、前記入場者管理装置が前記固有番号を受信し、前記入場者管理装置が前記トリガー信号とともに自分の固有番号を出力した時は、前記IDタグが前記入場者管理装置の固有番号を受信する、入場者数計測システム。」

(イ)「【0009】
ここで、入場者管理装置の固有番号は各イベント会場を特定する番号や展示会場のブースを特定する番号でも良い。」

(ウ)「【0030】
トリガー信号発信部11はトリガー信号発信アンテナ12からトリガー信号を発信する。IDタグ30はこのトリガー信号を受信して固有のID番号を出力する。ID受信アンテナ13はこのID番号を受信して、データ送受信部15を介して管理コンピュータ20へ送信する。なお、メモリ17に受信データを記憶しておいてまとめて出力するようにしてもよい。
【0031】
次にIDタグ30について説明する。図3はIDタグ30の構成を示すブロック図である。図3を参照して、IDタグ30は、受信用アンテナ40とトリガー信号検知部41と、電池49と、スィッチ42と固有番号としてのID番号を発生するID番号発生部43とを含む。ID番号発生部43はアドレス計数部45と、ID番号記憶部46と、発振器47と、出力回路48とから構成される。
【0032】
受信用アンテナ40は入場者管理装置10に設けられたトリガー信号発信部11からのトリガー信号を受信するようになっており、トリガー信号検知部41は、受信用アンテナ40で受信された信号がトリガー信号であると認識したときにスイッチ42をONするようになっている。このように、スイッチ42がONされると、ID番号発生部43に電源が供給されてこのID番号発生部43からそのIDタグ30に対応するID番号が送信用アンテナ44を介して出力される。このように出力されたIDタグ30の番号は発振器47によって高周波信号に変換されて出力回路48を介して送信用アンテナ44から送信される。」

(エ)「【0035】
次に、管理コンピュータに20ついて図5を参照して説明する。図5(A)は管理コンピュータ20と入場者管理装置10との接続状態を示す図であり、図5(B)は管理コンピュータ20の構成を示すブロック図である。図5(A)に示すように、この実施の形態にかかる入場者数計測システムにおいては、各ブースに配置された入場者管理装置10はそれぞれが管理コンピュータ20にLAN等を用いて接続されている。管理コンピュータ20では各ブースからの情報を収集することにより、リアルタイムで入場者の動きを把握できる。なお、このデータ収集は、必ずしもリアルタイムでする必要はなく、1日1回とか、展示会終了後等にまとめて行ってもよい。」

(オ)「【0040】
次に、管理コンピュータ20の動作について図6を参照して説明する。図6を参照して、管理コンピュータ20はまず各入場者管理装置10におけるトリガー信号発信部11およびID受信部14の発信および受信条件を設定するこれは予めプログラムしておいてもよいし、管理者が管理コンピュータ20上で設定してもよい。このデータは上記したように条件設定部23に記憶する。ついで、このデータを各入場者管理装置10へ送信する(ステップS11、以下ステップを省略する)。
【0041】
次に、入場者管理装置10からのデータを受信する(S12)。各ブースごとの入場者管理装置10からのIDデータを受信すると、受信データをデータ記録部24に記録する(S13)。あとは見本市等のイベントが終了するまで上記の処理を繰り返す(S14)。なお、必要に応じて、途中で各入場者管理装置10におけるトリガー信号発信部11およびID受信部14の発信および受信条件を変更してもよい。
【0042】
また、データ記録部への記録としては、ブースごとのID番号の受信時間を記録してもよい。そうすれば、入場者のそのブースに対する興味の度合いも知ることができる。これによって、どのブースにどの入場者が来たかを確実に知ることができる。また、ID番号の受信時間を記録しておけば入場者の各ブースへの来場時間も記録できる。」

(カ)「【0052】
次にこの発明の他の実施の形態について説明する。上記実施の形態では、入場者管理装置10でトリガー信号の発信およびIDタグ30からのID番号の受信および記録を行ったが、この実施の形態では、各ブースに設けられた入場者管理装置10はトリガー信号に自ブースのブース番号を特定する番号(固有番号)と時刻をのせて発信し、発信し、IDタグが各ブースの番号と時刻を受信し、それを記録する。なお、この特定するための番号は、入場者管理装置自身を特定する番号であっても良い。」

(キ)「【0069】
上記実施の形態においては入場者管理装置を見本市等のブースに設けた場合について説明したが、これに限らず、この入場者管理装置等を利用して百貨店、スーパーなどの流動調査などに利用してもよい。特に百貨店等に設けた場合は購買者がどのように百貨店内を移動しているのかを簡単に解明できる。具体的には、各販売コーナーに卓上型等の入場者管理装置を設け、地下鉄の流動調査と同じように百貨店等の出入り口でIDタグを手渡し、出店時に回収すればよい。データ収集や解析等は上記と同様に行う。」

3 刊行物3
刊行物3は、請求人の提出した甲第5号証であり、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】競走者が携帯する固有番号発信器と、レースコースの所定の時間計測点に配置され、この時間計測点を競走者が通過したときに、この引き金信号を受信して、当該の競走者の固有番号発信器からの固有番号を発信する引き金となる信号を送信する引き金信号発生手段と、各競走者の固有番号発信器からの固有番号信号を受信する固有番号信号受信手段と、この固有番号信号から少なくとも当該の競走者の走破タイムを演算する測定手段とを備える構成としたことを特徴とする競走用計時装置。
【請求項2】前記固有番号発信器は、引き金信号検知部と、固有番号信号発生部と、電源としての電池と、引き金信号検知部で引き金信号が検出されたときに作動して、固有番号信号発生部から固有番号信号を発信させるスイッチとを備える構成としたことを特徴とする請求項1記載の競走用計時装置。」

(イ)「【0009】以上のように、固有番号発信器は、引き金信号が与えられた時に初めて作動して、固有番号信号を発信するようになっているから、この固有番号発信器における消費電力が極めて少なくなる。・・・」

(ウ)「【0014】図2に固有番号発信器4の回路構成を示す。図中において、40は受信用アンテナ、41は引き金信号検知部であって、この受信用アンテナ40は引き金信号発生手段2からの引き金信号を受信するようになっており、引き金信号検知部41は、受信用アンテナ40で受信された信号が引き金信号であると認識した時に、スイッチ42をONするようになっている。このように、スイッチ42がONされると、固有番号信号発生部43に電源が供給されて、この固有番号信号発生部43で固有番号信号を生成して、送信用アンテナ44からこの固有番号信号が出力されるようになっている。そして、固有番号信号発生部43は、アドレス計数部45と、固有番号記憶部46と、発振器47と、出力回路48とから構成される。従って、スイッチ42がONすると、まずアドレス計数部45が作動して、アドレス信号を固有番号記憶部46に入力して、この固有番号記憶部46から固有番号のデータが読み出される。このようにして読み出された固有番号のデータは、発振器47によって高周波信号に変換されて、出力回路48を介して送信用アンテナ44から送信されるようになる。ここで、電源としては、電池49が用いられる。」

(エ)「【0022】以上のように、競走者3が携帯する固有番号発信器4は、この固有番号発信器4の固有番号信号発生部43は引き金信号が受信されない限り、作動しないようになっているから、消費電力を最小限に抑制できる。従って、小型の電池であっても繰り返し長期間使用できる。しかも、固有番号信号発生部43から送信される信号は微弱信号であることからも、固有番号発信器4は小型で軽量なものに形成できる。・・・」

4 刊行物4
ア 刊行物4に記載された事項
刊行物4には、「個人識別システム」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】 識別対象者の足の指に装着され質問信号を受信すると個人識別のための識別情報を送信する指輪型IDタグと、
床面に設置され前記信号を送受信するためのアンテナが埋設されたマットと、
このマット内のアンテナに前記質問信号を出力してこれを送信させると共に前記アンテナから識別情報を得る質問器とを有することを特徴とする個人識別システム。
【請求項2】 請求項1記載の個人識別システムにおいて、
前記指輪型IDタグの代わりに、識別対象者の足首に装着され質問信号を受信すると個人識別のための識別情報を送信する足首飾り型IDタグを有することを特徴とする個人識別システム。」

(イ)「【0011】
【実施例】図1(a)は本発明の1実施例で病院等の施設や家庭における患者の行動管理を行う個人識別システムのブロック図、図1(b)はこの個人識別システムで用いるIDタグの装着の様子を示す図である。1は識別対象となる患者(ここでは足のみを表す)、2は患者1の足の指のくびれた部位に通常手の指にする指輪と同様に装着され質問信号を受信すると個人識別のための識別情報を送信する指輪型IDタグ、3はドア15より手前の床面に設置され信号を送受信するためのアンテナが埋設された第1のドアマット、4は同様にドア15の後の床面に設置された第2のドアマットである。」

(ウ)「【0012】また、5はドアマット3、4内のアンテナに質問信号を出力してこれを送信させると共にアンテナから識別情報を得る質問器、6は患者1の行動を管理するための管理情報を予め記憶し、質問器5から識別情報が出力されるとこれに基づいて該当する患者1の管理情報を抽出し、その行動が管理情報に違反するときに警報信号を出力するホストコンピュータ、7は警報信号が出力されると警報を発する警報装置である。そして、ホストコンピュータ6、警報装置7が情報処理装置を構成している。」

(エ)「【0013】また、図2(a)はIDタグ2の斜視図、図2(b)はその断面図、図3(a)はドアマット3、4の平面図、図3(b)はその断面図である。図2において、20は強化プラスチック等の絶縁材料からなる指輪状の外装部、21は外装部20を取り巻くようなコイル状で外装部20内に埋設されたアンテナ、22はアンテナ21が受信した質問信号を検出して応答信号をアンテナ21に出力する制御部である。図3において、30は床面と接する下部ドアマット、31は患者1等の歩行者が踏む面となる上部ドアマット、31は下部ドアマット30と上部ドアマット31の間に設けられたアンテナである。」

(オ)「【0014】IDタグ2のアンテナ21及び制御部22は外装部20内に埋設されており、制御部22は図示しないガラスによって封止されている。そして、制御部22には、図示しない電力変換回路、信号の変復調を行う送受信回路、患者1の識別情報を記憶する記憶回路等が含まれており、アンテナ21が受けた電磁波を内部の電力変換回路で電力に変換することにより制御部22が作動する。患者1には、予め識別情報を書き込んだ上記のようなIDタグ2を図1(b)に示すように足の指に常時装着してもらう。書き込む識別情報としては、例えば氏名、病室、病名、担当医師、緊急連絡先等がある。」

(カ)「【0016】施設の各出入口の床面に図1のように設置されるドアマット3、4は、例えば図3に示すような下部ドアマット30、アンテナ32、上部ドアマット31からなるサンドイッチ構造をしている。なお、本実施例ではアンテナ32が複数のターンを有する形状をしているが、コイル状などの他の形状であっても良く、アンテナ32のドアマットへの埋設も他の埋設方法であっても良い。」

(キ)「【0017】次に、このような個人識別システムの動作を説明する。質問器5はドアマット3、4に質問信号を常時出力しており、ドアマット3、4内のアンテナ32はこれを質問電波Raとして送出する。今、患者1が1階出口のドア15から外に出ようとすると、患者1の足の指に装着されたIDタグ2とドアマット3のアンテナ32とが十分に接近するので、アンテナ32から送出されている質問電波RaがIDタグ2に届くようになる。
【0018】IDタグ2の制御部22は、アンテナ21が受信した質問電波Raを復調して質問信号を検出すると、記憶回路から識別情報を読み出してこの識別情報を含んだ応答信号を生成し、変調した後にアンテナ21に出力する。応答信号は、通常同期信号とその後に続くデータを含み、デジタル符号化された信号である。こうして、応答信号が応答電波RbとしてIDタグ2から送出される。そして、ドアマット3のアンテナ32がこの応答電波Rbを受信して質問器5に出力し、質問器5はこれを応答信号に変換し、得られた応答信号中の識別情報をドアマット3に固有の管理番号と共にホストコンピュータ6に出力する。」

(ク)【0023】また、上記の動作例では、ある設置点としてドア15の内側に設置されたドアマット3のみを用いているが、ドア15の外側に配置されたドアマット4も使用して患者1の出入りを管理することもできる。すなわち、最初にドアマット3のアンテナ32からIDタグ2の識別情報が検出され、次にドアマット4のアンテナ32から識別情報が検出されたときは、ドア15から外に出ていったことになり、逆の順で検出されたときはドア15から入ったことになる。よって、これらをホストコンピュータ6で監視することにより、患者1の出入りを容易に認識することができる。」

イ 刊行物4事項
(ケ)上記摘記事項(キ)の「アンテナ32から送出されている質問電波RaがIDタグ2に届くようになる。・・・IDタグ2の制御部22は、アンテナ21が受信した質問電波Raを復調して質問信号を検出すると、記憶回路から識別情報を読み出してこの識別情報を含んだ応答信号を生成し、変調した後にアンテナ21に出力する。・・・応答信号が応答電波RbとしてIDタグ2から送出される。そして、ドアマット3のアンテナ32がこの応答電波Rbを受信して質問器5に出力し」とあるところ、該「アンテナ32」については、そこから送出された「質問電波Ra」がIDタグ2に届いたことを契機として「IDタグ2の制御部22は、アンテナ21が受信した質問電波Raを復調して質問信号を検出すると、記憶回路から識別情報を読み出してこの識別情報を含んだ応答信号を生成」するのだから、“IDタグ2の起動信号を発生させるアンテナ32”ということができる。
そして、上記摘記事項(ア)ないし(ク)及び認定事項(ケ)を、図面を参照しつつ特に摘記事項(ク)の実施形態に着目して整理すると、刊行物4には以下の技術事項が記載されていると認める。(以下「刊行物4事項」という。)
「患者1の出入りの検出を行うために、IDタグ2の起動信号を発生させるアンテナ32をドア15の内側と外側に設置すること。」

5 刊行物5
ア 刊行物5に記載された事項
刊行物5には、「入退場者の管理システム」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】入退場者にRFIDのタグを保持させ、出入口の外側と内側とに特性の異なる赤外線、音波又は電波発信装置をそれぞれ配設するとともに、タグ用受信機を配設し、前記タグが、受信した赤外線、音波又は電波の特性に基づいて発信装置の位置IDを識別し、該位置IDをタグ自体のIDと共にタグ用受信機に送信することを特徴とする入退場者の管理システム。」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、入退場者(本明細書において入退室者を含む。)の管理システムに関し、特に、波長や周波数が異なる複数の発信装置とRFID(Radio Frequency Identification(電波方式認識)。本明細書において、「RFID」という。)のタグとを組み合わせることにより、複数のタグ保持者が同時に出入りする場合でも、タグ保持者の入退場を正確に把握することができる入退場者の管理システムに関するものである。」

(ウ)「【0010】図1?図3に、本発明の入退場者の管理システムの第1実施例を示す。この入退場者の管理システムは、入退場者にRFIDのタグ1を保持させ、出入口2の外側と内側とに特性の異なる、具体的には、例えば、波長の異なる赤外線発信装置3a、3bをそれぞれ配設するとともに、RFIDの受信用アンテナ4及びタグ用受信機5を配設し、前記タグ1が、受光した赤外線の波長に基づいて赤外線発信装置3a又は赤外線発信装置3bの位置IDを識別し、該位置IDをタグ1自体のIDと共にタグ用受信機5に送信する。
【0011】外側の赤外線発信装置3aは、廊下6の天井に設置され、室外のドア7付近全域をカバーする照射エリアAを有している。また、内側の赤外線発信装置3bは、発信する赤外線の波長が前記外側の赤外線発信装置3aと異なるように設定されており、室8の天井に設置され、室内のドア7付近全域をカバーする照射エリアBを有している。」

(エ)「【0013】一方、RFIDのタグ1は、図3に示すように、赤外線発信装置3a、3bの赤外線を受光する赤外線受光部11と、赤外線受光部が受光した赤外線の波長に基づいて赤外線発信装置の位置IDを識別する位置ID判別処理部12と、この位置IDをタグ1自体のIDと共にRF信号に変換するRF信号変換処理部13と、変換したRF信号をタグアンテナ14とRFID受信用アンテナ4を介してタグ用受信機5に発信するRF信号発信処理部15とを備えている。」

(オ)「【0014】次に、この入退場者の管理システムの作用を説明する。例えば、図1に示すように、タグ保持者が外側の赤外線発信装置3aの赤外線照射エリアAに進入すると、タグ1の赤外線受光部11が赤外線を受信し、赤外線の波長から赤外線発信装置3aの位置IDを認識し、タグ1自体のIDと共にRF信号に変換して電波を発信する。一方、タグ用受信機5では、タグ1からの電波を受信し、赤外線発信装置3aの位置IDとタグIDを認識して、受信機ステーション9へ送信する。以上により、タグ保持者が外側の赤外線発信装置3aの照射エリアAに存在することを把握することができる。さらに、タグ保持者が内側の赤外線発信装置3bの照射エリアBに進入した場合は、上記と同様の原理をによりタグ保持者が内側の赤外線発信装置3bの照射エリアBに存在することを把握することができ、また、タグ保持者が入室したことを同時に受信機ステーション9が判断する。」

イ 刊行物5事項
(カ)上記摘記事項(ア)の「入退場者の管理システム」については、上記摘記事項(イ)に「入退場者(本明細書において入退室者を含む。)」とあることから、「入退室者の管理システム」ということもできる。

(キ)上記摘記事項(ウ)の「赤外線発信装置3a、3b」については、上記摘記事項(オ)に「タグ保持者が外側の赤外線発信装置3aの赤外線照射エリアAに進入すると、タグ1の赤外線受光部11が赤外線を受信し、赤外線の波長から赤外線発信装置3aの位置IDを認識し、タグ1自体のIDと共にRF信号に変換して電波を発信する。・・・タグ保持者が内側の赤外線発信装置3bの照射エリアBに進入した場合は、上記と同様の原理をによりタグ保持者が内側の赤外線発信装置3bの照射エリアBに存在することを把握することができ」とあることから、“RFIDのタグ1の起動信号を発生させる赤外線発信装置3a、3b”ということができる。

そこで、上記摘記事項(ア)ないし(オ)並びに認定事項(カ)及び(キ)を、図面を参照しつつ整理すると、刊行物5には以下の技術事項が記載されていると認める。(以下「刊行物5事項」という。)
「入退室を把握するために、RFIDのタグ1の起動信号を発生させる赤外線発信装置3a、3bを出入口2の外側と内側とに配設すること。」

第7-2 無効理由の判断
1 本件再訂正発明1について
(1)対比
本件再訂正発明1と引用発明Aを対比する。

(ア)引用発明Aの「複数の固定無線機」は、「ポーリング信号と位置信号とを」「送信する送信部及び信号を受信する受信部を具備する施設の各部屋などに設置される」のであるから、それぞれの「固定無線機」は、「施設の各部屋」などに設置されると共に、「施設の各部屋」などに応じた「位置信号」を送信するものである。
ここで、当該「施設の各部屋」は、それぞれ、“第1の位置”、“第2の位置”、…といい得るものであり、また、「位置信号」は、「施設の各部屋」などに対応した信号であるから、引用発明Aの「ポーリング信号と位置信号」は、「施設の各部屋」などに対応した異なる特性を有するものであって、“第1の特性を有する第1の信号”、“第2の特性を有する第2の信号”、…といい得るものである。
さらに、引用発明Aでは、「トランスポンディングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信」するのであるから、引用発明Aの「ポーリング信号と位置信号」のうち、「ポーリング信号」部分は、「自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号」の送信動作を立ち上げて作動させるための起動信号として機能していることは明らかである。
よって、引用発明Aの「ポーリング信号と位置信号とを」「送信する送信部及び信号を受信する受信部を具備する施設の各部屋などに設置される複数の固定無線機と、」「を設け」「る位置検出システム」と本件再訂正発明1の「第1の位置に設けられ、第1特性を有し、IDタグを起動するトリガ信号を出力する、第1トリガ信号発信器と、」「第2の位置に、前記第1トリガ信号発信器と独立して設けられ、前記第1と異なる第2特性を有するトリガ信号を出力する、第2トリガ信号発信器と、」「を含む、入退室管理システム」とは、“第1の位置に設けられ、第1特性を有し、起動信号を出力する、第1起動信号発信器と、第2の位置に設けられ、前記第1と異なる第2特性を有する起動信号を出力する、第2起動信号発信器と、を含む、システム”である点で共通する。

(イ)引用発明Aの「トランスポンディングカード」は、文言の意味、形状又は機能等からみて本件再訂正発明1の「IDタグ」に相当し、以下同様に、「自己を特定する信号」は「ID番号」に、「受信部」は「受信器」に、それぞれ相当する。
また、引用発明Aの「メモリに記憶された位置信号」は、“受信した起動信号を特定する情報”という点で、本件再訂正発明1の「受信した起動信号を特定する情報」と共通する。
さらに、一般に移動体の入退室管理を行うためには、移動体の位置情報の把握が前提となるものであるから、引用発明Aの「位置検出システム」と本件再訂正発明1の「入退室管理システム」とは、“IDタグの位置を把握するシステム”という点で共通する。
よって、引用発明Aの「トランスポンディングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信し、該信号を固定無線機で受信し、該固定無線機で受信した信号に基づいて前記処理装置にて移動体の位置を検出するトランスポンディングカードによる位置検出システム」と本件再訂正発明1の「第1および第2トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグとを含み、前記IDタグは、受信したトリガ信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し、前記第1および第2トリガ信号発信器と独立して設けられ、前記IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信する受信器とを含む、入退室管理システム」とは、“第1および第2起動信号発信器からの起動信号に応答して、ID番号を出力するIDタグとを含み、前記IDタグは、受信した起動信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し、前記IDタグが出力した、起動信号を特定する情報およびID番号を受信する受信器とを含む、IDタグの位置を把握するシステム”である点で共通する。

以上によれば、本件再訂正発明1と引用発明Aとの一致点は次のとおりである。
<一致点>
第1の位置に設けられ、第1特性を有し、起動信号を出力する、第1起動信号発信器と、
第2の位置に設けられ、前記第1と異なる第2特性を有する起動信号を出力する、第2起動信号発信器と、
前記第1および第2起動信号発信器からの起動信号に応答して、ID番号を出力するIDタグとを含み、
前記IDタグは、受信した起動信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し、
前記IDタグが出力した、起動信号を特定する情報およびID番号を受信する受信器とを含む、IDタグの位置を把握するシステム。

そして、上記1次審決取消判決の判示事項も踏まえ、両者は以下の点で少なくとも形式的に相違する。
<相違点1>
第1起動信号発信器が設けられる「第1の位置」及び第2起動信号発信器が設けられる「第2の位置」に関し、本件再訂正発明1では、「第1の位置」が「出入口の一方側である第1の位置」であり、また、「第2の位置」が「出入口の他方側である第2の位置」であるのに対し、引用発明Aでは、「第1の位置」、「第2の位置」の各位置が特定(限定)されていない点。
<相違点2>
本件再訂正発明1では、「第2トリガ信号発信器が」「第1トリガ信号発信器と独立して設けられ」ているのに対し、引用発明Aでは、施設の各部屋などに設置される複数の固定無線機に具備される各送信部が、“独立して”設けられているか明らかでない点。
<相違点3>
第1起動信号発信器又は第2起動信号発信器の出力する起動信号に関し、本件再訂正発明1では、起動信号が「IDタグを起動するトリガ信号」であるのに対し、引用発明Aでは、起動信号に応答してIDタグがID番号(自己を特定する信号)等の出力動作はするものの、起動信号がIDタグを起動させた上で、IDタグにID番号等の出力動作を行わせているのか否かは、不明な点。
<相違点4>
本件再訂正発明1では、第1起動信号発信器により起動信号を出力するタイミングと第2起動信号発信器により起動信号を出力するタイミングとの関係について特段の特定がなく、また、IDタグが受信する起動信号の選択についても特定がないのに対し、引用発明Aでは、第1起動信号発信器による起動信号と第2起動信号発信器による起動信号とは同期をとって出力され、また、IDタグ(トランスポンディングカード)は、電波の強い方の起動信号を選択して受信する点。
<相違点5>
本件再訂正発明1においては、「受信器」が「第1および第2トリガ信号発信器と独立して設けられ」ているのに対し、引用発明Aにおいては、「ポーリング信号と位置信号とを同期をとって送信する送信部」と「信号を受信する受信部」とがいずれも各固定無線器に具備されている点。
<相違点6>
IDタグの位置を把握するシステムに関し、本件再訂正発明1では、そのシステムが「入退室管理システム」であるのに対し、引用発明Aでは、「入退室管理」を行うシステムとまでいえるか不明な点。

(2)相違点についての判断
上記各相違点について検討する。

ア 相違点1について
引用発明Aは、第1起動信号発信器を発信する「固定無線機」及び第2起動信号発信器を発信する「固定無線機」が、「施設の各部屋などに設置される」ものではあるが、「第1の位置」、「第2の位置」の各位置が特定(限定)されたものではない。
ここで、人等の移動体の位置検出を行うために、IDタグの起動信号発信器を出入口の一方側と他方側に設置することは、上記刊行物4事項(上記第7-1の4イ)及び上記刊行物5事項(上記第7-1の5イ)がいずれも備えており、周知の技術事項ということができる。
そして、一般に、人等の移動体の各部屋まわりの移動を検知するにおいては、各部屋の出入口を重点的に検出するのが有効な手段であると考えられるから、「第1の位置」、「第2の位置」の各位置が特定(限定)されていない引用発明Aにおいて、上記周知の技術事項を適用して、IDタグの起動信号発信器(固定無線機)を部屋の出入口の一方側と他方側に設けるように構成することは、当業者において十分動機付けがあるというべきである。
よって、引用発明Aに上記周知の技術事項を適用して相違点1に係る本件再訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 相違点2ついて
上記第5の2(2)ア-2(イ)にて説示したように、本件特許明細書等には「独立して」との直接的記載がないものの、相互に物理的に接続されていない等のごく一般的な意味において、「第2トリガ信号発信器」と「第1トリガ信号発信器」とは「独立して設けられ」ていると言い得るものである。そうであるならば、引用発明Aの「複数の固定無線機」に具備された「受信器」についても、刊行物1を参酌するに、固定無線器11と固定無線器12とは、相互に物理的に接続されていないことから、“独立して設けられ”ているものと解される。したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。
仮に実質的な相違点であるとしても、刊行物5には、「波長の異なる赤外線発信装置3a、3b」が、明らかに物理的及び電気的に独立して設けられており(上記第7-1の5ア摘記事項(ウ))、かかる刊行物5記載の事項を引用発明Aに適用して相違点2に係る本件再訂正発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
被請求人は相違点2に関連して、本件再訂正発明1では、第1起動信号発信器と第2起動信号発信器が独立して設けられるため、各起動信号発信器の起動信号の発信タイミングは任意である旨主張する(上記第4の3(1))。しかしながら、請求人も主張するように(上記第3の3(2))、本件特許明細書等には、「独立」との文言自体がなく、独立の解釈として被請求人が主張する各トリガ信号発信器がそれぞれトリガ信号を発信するタイミングが同期ではないことはおろか、トリガ信号発信器がトリガ信号を発信するタイミングに関する説明すらなされていないところ、「独立して設けられ」によってそのような技術的意義を主張できるなら、新たな技術事項を導入するものといわざるを得ず、本件再訂正は認められないはずである。よって請求人の主張には理由がない。

ウ 相違点3について
上記刊行物2には、「入場者の各々に所持され、固有番号を有し、トリガー信号に応答するIDタグ」(上記第7-1の2摘記事項(ア))が記載されているところ、このIDタグにあっては、「受信用アンテナ40は入場者管理装置10に設けられたトリガー信号発信部11からのトリガー信号を受信するようになっており、トリガー信号検知部41は、受信用アンテナ40で受信された信号がトリガー信号であると認識したときにスイッチ42をONする」ものであって、「スイッチ42がONされると、ID番号発生部43に電源が供給されてこのID番号発生部43からそのIDタグ30に対応するID番号が送信用アンテナ44を介して出力される」というものである(上記第7-1の2摘記事項(ウ)参照)。
また、上記刊行物3には、「引き金信号が与えられた時に初めて作動して、固有番号信号を発信するようになっている」(上記第7-1の3摘記事項(イ))「競走者が携帯する固有番号発信器」(上記第7-1の3摘記事項(ア))が記載されているところ、この固有番号発信器にあっては、「受信用アンテナ40は引き金信号発生手段2からの引き金信号を受信するようになっており、引き金信号検知部41は、受信用アンテナ40で受信された信号が引き金信号であると認識した時に、スイッチ42をONするようになっている」というものであって、「スイッチ42がONされると、固有番号信号発生部43に電源が供給されて、この固有番号信号発生部43で固有番号信号を生成して、送信用アンテナ44からこの固有番号信号が出力される」というものである(上記第7-1の3摘記事項(ウ)参照)。
してみると、IDタグを起動するトリガ信号を受信してID番号を出力するIDタグは、上記刊行物2ないし3の記載事項に照らし、本件出願前より周知の技術事項であったものといえる。
刊行物1における「15-5はTRC内の各部に電力を供給する電源部である。」(上記第7-1の1(1)摘記事項(ウ))との記載によれば、引用発明Aは、トランスポンディングカードに「電源部」を内蔵することを前提とする発明といえるところ、引用発明Aにおいても、消費電力の抑制や電源部の長寿命化は当然に期待される技術課題というべきであるから、引用発明Aに上記周知の技術事項を適用し、起動信号を「IDタグを起動するトリガ信号」とし、第1起動信号発信器及び第2起動信号発信器を「第1トリガ信号発信器」及び「第2トリガ信号発信器」とするとともに、IDタグを「第1および第2トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグ」として相違点3に係る本件再訂正発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

エ 相違点4について
引用発明Aが、相違点4のように、第1起動信号発信器による起動信号と第2起動信号発信器による起動信号とは同期をとって出力され、また、IDタグ(トランスポンディングカード)は、電波の強い方の起動信号を選択して受信するのは、「TRC15には複数のポーリング信号とアドレス信号、つまり、POL+AD1とPOL+AD2のどちらでも到達することがあ」るため(上記第7-1の1摘記事項(ウ))であるが、これは複数の固定無線機(TRX)11,12が近接しており、その発信信号のカバーする領域が重なることが背景にあるものと考えられる。このような固定無線機からの発信信号が重なる問題は、引用発明Aのような位置検出システムであれ、本件再訂正発明1のような入退室管理システムであれ、複数の固定無線機が近接しているシステムにおいては一般的に対処しなければならない課題である。
したがって、本件再訂正発明1のような入退室管理システムにおいても、「第1トリガ信号発信器」のカバー領域と「第2トリガ信号発信器」のカバー領域が重なる場合は何らかの対応が求められるはずであり、逆に、引用発明Aのような位置検出システムにおいて、複数の固定無線機(TRX)のカバー領域が重なっていなければ、起動信号を同期させた上で電波の強い方の起動信号を選択して受信する必要性は乏しい。
すなわち、引用発明Aにおいて、第1起動信号発信器による起動信号と第2起動信号発信器による起動信号とを同期をとって出力し、IDタグ(トランスポンディングカード)は電波の強い方の起動信号を選択して受信する構成は、不可欠なものではない。
よって、相違点4は実質的な相違点でないか、差異があるとしても当業者が適宜なし得る程度のものに過ぎない。

オ 相違点5について
引用発明Aにおいては、「送信部」と「受信部」とがいずれも各固定無線器に具備されており、両者が物理的に接続されているから、“独立して設けられ”ているものとはいえない。
しかしながら、無線システムにおいて、「送信部」と「受信部」とを物理的に接続して送受信機として構成するか、両者を物理的に分離して独立したものとして構成するかは、当業者が適宜選択し得るものであることは技術常識(例えば、刊行物5の図1(上記第7-1(5)ア(ウ)において図示)及びそれに関連する記載には、赤外線発信装置3a、3bをそれぞれタグ用受信器5と分離独立したものとすることが示される。)から明らかである。
よって、引用発明Aにおいて、「送信部」と「受信部」とを物理的に分離して独立したものとして構成し、相違点5に係る本件再訂正発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

カ 相違点6について
上記アにて検討したように、引用発明Aにおいて、周知の技術事項を適用して、IDタグの起動信号発生器(固定無線機)を部屋の出入口の一方側と他方側に設けるように構成することは想到容易であるところ、そのようにIDタグの起動信号発生器を部屋の出入口の一方側と他方側に設ければ、入退室を検知できることは明らかであり、入退室管理システムといえるものとなる。

キ 本件再訂正発明1の効果について
上記相違点1ないし6を総合的に勘案しても、それらの総和以上の格別の技術的意義が生じるとは認められない。

ク 小括
したがって、本件訂正発明1は、引用発明A、引用文献5記載の事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 本件再訂正発明2について
(1)対比
本件再訂正発明2は、本件再訂正発明1の入退室管理システムにおいて、さらに「前記IDタグは、前記トリガ信号ごとの異なる特性を記憶する記憶手段を含む」という限定を付すものである。
そこで、本件再訂正発明2と引用発明Aとを対比すると、上記1(1)の一致点及び相違点1ないし相違点6を有し、さらに、以下の点で相違する。
<相違点21>
本件再訂正発明2においては、IDタグは、トリガ信号ごとの異なる特性を記憶する記憶手段を含むのに対し、引用発明AにおけるIDタグ(トランスポンディングカード)は、そのようなものか明らかでない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点1ないし相違点6について
相違点1ないし相違点6については、上記1における検討と同様に、引用発明A、引用文献5記載の事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。
以下、同様な相違点については、判断が同様である旨の記載を省略する。イ 相違点21について
引用発明Aの「位置信号」は、刊行物1に「施設の所定の部屋などに設けられる固定無線機(TRX)11,12からポーリング信号(POL)と共に各々の固定無線機の位置を示すアドレス信号(AD1,AD2)を付加して送信する。」(上記第7-1の1(1)摘記事項(ウ))と示されるように、施設の各部屋に対応した信号であって、「ポーリング信号と位置信号」という信号の特性を示す信号といえる。
そして、引用発明Aは、「固定無線機から送信される位置信号を受信して記憶するメモリを具備する」のであるから、「ポーリング信号と位置信号」という信号の異なる特性を記憶するメモリを実質的に具備するものである。 よって、相違点21は実質的な相違点ではない。
また、刊行物2にも、「IDタグが各ブースの番号と時刻を受信し、それを記録する」(上記第7-1の2摘記事項(カ))事項が記載されており、相違点21に係る本件再訂正発明2の構成は、周知の技術事項ともいえる。

(3)小括
したがって、本件再訂正発明2は、引用発明A、引用文献5記載の事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 本件再訂正発明3について
(1)対比
本件再訂正発明3は、本件再訂正発明1の入退室管理システムにおいて、さらに「前記トリガ信号発信器の相互に異なる特性は、トリガ信号のIDによって区別される」という限定を付すものである。
そこで、本件再訂正発明3と引用発明Aとを対比すると、上記1(1)の一致点及び相違点1ないし相違点6を有し、さらに、以下の点で相違する。
<相違点31>
本件再訂正発明3においては、トリガ信号発信器の相互に異なる特性は、トリガ信号のIDによって区別されるのに対し、引用発明Aはそのようなものか明らかでない点。

(2)相違点についての判断
引用発明Aは、「位置信号を送信し、該信号を固定無線機で受信し、該固定無線機で受信した信号に基づいて前記処理装置にて移動体の位置を検出する」のであるから、引用発明Aも、実質的には、「ポーリング信号と位置信号」の異なる特性は、「ポーリング信号と位置信号」のうちの「位置信号」によって区別される「システム」といえる。よって、相違点31は実質的な相違点ではない。

(3)小括
したがって、本件再訂正発明3は、引用発明A、引用文献5記載の事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 本件再訂正発明4について
(1)対比
本件再訂正発明4は、本件再訂正発明1の入退室管理システムにおいて、さらに「現在時刻を検出する現在時刻検出器を含み、前記受信器の受信したID番号を前記現在時刻とともに記憶する」という限定を付すものである。
そこで、本件再訂正発明4と引用発明Aとを対比すると、上記1(1)の一致点及び相違点1ないし相違点6を有し、さらに、以下の点で相違する。
<相違点41>
本件再訂正発明4のシステムは、現在時刻を検出する現在時刻検出器を含み受信器の受信したID番号を現在時刻とともに記憶するのに対し、引用発明Aのシステムは、そのような機能を有するか明らかでない点。

(2)相違点についての判断
刊行物2には、「入場者管理装置10はトリガー信号に自ブースのブース番号を特定する番号(固有番号)と時刻をのせて発信し、発信し、IDタグが各ブースの番号と時刻を受信し、それを記録する」ことが記載されている(上記第7-1の2摘記事項(カ))ところ、そのような刊行物2記載の事項を引用発明Aに適用して相違点41に係る本件再訂正発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(3)小括
したがって、本件再訂正発明4は、引用発明A、引用文献5及び引用文献2記載の事項並びに周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 本件再訂正発明5について
(1)対比
本件再訂正発明5は、本件再訂正発明1の入退室管理システムにおいて、さらに「受信器は複数のトリガ信号発信器に対して1個設けられる」という限定を付すものである。
そこで、本件再訂正発明5と引用発明Aとを対比すると、上記1(1)の一致点及び相違点1ないし相違点6を有し、さらに、以下の点で相違する。<相違点51>
本件再訂正発明5においては、受信器は複数のトリガ信号発信器に対して1個設けられるのに対し、引用発明Aにおける受信器は、そのようなものか明らかでない点。

(2)相違点についての判断
刊行物1の「この場合、ID+AD1の信号が固定無線機11と12に同時に受信された場合にも、受信信号内に位置信号を含んでいるため、処理装置16は位置を誤って判定することはない。」(第7-1の1(1)摘記事項(ウ))の記載からみて、引用発明Aの「受信部」は、当該受信部が設置された部屋とは別の部屋に位置するトランスポンディングカードからの信号をも受信可能な受信部といえる。
部材の簡素化ないし共用化は自明の技術課題であるから、引用発明Aにおける複数の固定無線機に関し、それぞれの受信部を共用化して「1個設けられる」として相違点51に係る本件再訂正発明5の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(3)小括
したがって、本件再訂正発明5は、引用発明A、引用文献5記載の事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6 本件再訂正発明6
(1)引用発明B
引用発明Bは、上記第7-1の1(2)イにて認定したとおりである。

(2)対比
上記1(1)(ア)及び(イ)の対応関係を踏まえれば、本件再訂正発明6と引用発明Bとは、以下の5点で少なくとも形式的に相違し、その余の点では一致しているということができる。
<相違点61>
異なる位置に設けられる起動信号発信器に関し、本件再訂正発明6では、「出入口を挟んで」設けられるのに対し、引用発明Bでは、それぞれの位置関係が特定(限定)されていない点。
<相違点62>
本件再訂正発明6では、複数の「トリガ信号発信器」が「独立し」ているのに対し、引用発明Bでは、施設の各部屋などに設置される複数の固定無線機に具備される各送信部が、“独立して”設けられているか明らかでない点。
<相違点63>
本件再訂正発明6では、起動信号が「IDタグを起動するトリガ信号」であるのに対し、引用発明Bでは、起動信号に応答してIDタグがID番号(自己を特定する信号)等の出力動作はするものの、起動信号がIDタグを起動させた上で、IDタグにID番号等の出力動作を行わせているのか否かは、不明な点。
<相違点64>
本件再訂正発明6では、IDタグが受信する信号の選択について特定がないのに対し、引用発明Bでは、IDタグ(トランスポンディングカード)は、電波の強い方の信号を選択して受信する点。
<相違点65>
本件再訂正発明6においては、「受信器」が「複数のトリガ信号発信器と独立して設けられ」ているのに対し、引用発明Bにおいては、「ポーリング信号と位置信号とを同期をとって送信する送信部」と「信号を受信する受信部」とがいずれも各固定無線器に具備されている点。

(3)相違点についての判断
相違点61ないし相違点65は、上記1(2)アで検討した相違点1ないし相違点5と実質的に同じものである。
そうすると、同様の理由により、相違点61ないし65に係る本件再訂正発明6の特定事項は、いずれも、引用発明B、引用文献5記載の事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものということができる。

(4)小括
したがって、本件再訂正発明6は、引用発明B、引用文献5記載の事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7 本件再訂正発明7
(1)引用発明C
引用発明Cは、上記第7-1の1(2)ウにて認定したとおりである。

(2)対比
上記1(1)(ア)及び(イ)の対応関係を踏まえれば、本件再訂正発明7と引用発明Cとは、以下の6点で少なくとも形式的に相違し、その余の点では一致しているということができる。
<相違点71>
異なる位置に設けられる起動信号発信器に関し、本件再訂正発明7では、「出入口を挟んで」設けられるのに対し、引用発明Cでは、それぞれの位置関係が特定(限定)されていない点。
<相違点72>
本件再訂正発明7では、「複数のトリガ信号発信器」が「独立し」ているのに対し、引用発明Cでは、施設の各部屋などに設置される複数の固定無線機に具備される各送信部が、“独立して”設けられているか明らかでない点。
<相違点73>
本件再訂正発明7は、「IDタグを起動する」「トリガ信号を出力するステップ」及び「トリガ信号発生器からのトリガ信号に応答して、受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力するステップ」とを有するのに対し、引用発明Cでは、ポーリング信号の受信に応答してID番号(自己を特定する信号)等を出力動作をするステップを有するものの、IDタグを起動させた上で、IDタグにID番号(自己を特定する信号)等の出力動作を行わせているのか否かは、不明な点。
<相違点74>
本件再訂正発明7では、複数の起動信号を出力するタイミングについて特段の特定がなく、また、IDタグが受信する起動信号の選択についても特定がないのに対し、引用発明Cでは、複数の起動信号は同期をとって出力され、また、IDタグ(トランスポンディングカード)は、電波の強い方の起動信号を選択して受信する点。
<相違点75>
本件再訂正発明7においては、「受信器」が「複数のトリガ信号発信器と独立して設けられ」ているのに対し、引用発明Cにおいては、「ポーリング信号と位置信号とを同期をとって送信する送信部」と「信号を受信する受信部」とがいずれも各固定無線器に具備されている点。
<相違点76>
IDタグの位置を把握する方法に関し、本件再訂正発明7では、その方法が「入退室管理方法」であるのに対し、引用発明Cでは、「入退室管理」を行う方法とまでいえるか不明な点。

(3)相違点についての判断
相違点71ないし76は、上記1(2)アで検討した相違点1ないし相違6と実質的に同じものである。
そうすると、同様の理由により、相違点71ないし76に係る本件再訂正発明7の特定事項は、いずれも、引用発明C、引用文献5記載の事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものということができる。

(4)小括
したがって、本件再訂正発明7は、引用発明C、引用文献5記載の事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第8 むすび
以上のとおり、本件再訂正発明1ないし7は、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件再訂正発明1ないし7についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定に該当するので、他の請求人主張の無効理由について検討するまでもなく無効とすべきものである。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
入退室管理システム、受信器および入退室管理方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口の一方側である第1の位置に設けられ、第1特性を有し、IDタグを起動するトリガ信号を出力する、第1トリガ信号発信器と、
前記出入口の他方側である第2の位置に、前記第1トリガ信号発信器と独立して設けられ、前記第1と異なる第2特性を有するトリガ信号を出力する、第2トリガ信号発信器と、
前記第1および第2トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグとを含み、
前記IDタグは、受信したトリガ信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し、
前記第1および第2トリガ信号発信器と独立して設けられ、前記IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信する受信器とを含む、入退室管理システム。
【請求項2】
前記IDタグは、前記トリガ信号ごとの異なる特性を記憶する記憶手段を含む、請求項1に記載の入退室管理システム。
【請求項3】
前記トリガ信号発信器の相互に異なる特性は、トリガ信号のIDによって区別される、請求項1または2に記載の入退室管理システム。
【請求項4】
さらに、現在時刻を検出する現在時刻検出器を含み、前記受信器の受信したID番号を前記現在時刻とともに記憶する、請求項1から3のいずれかに記載の入退室管理システム。
【請求項5】
前記受信器は複数のトリガ信号発信器に対して1個設けられる、請求項1から4のいずれかに記載の入退室管理システム。
【請求項6】
IDタグを起動するトリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグが出力したID番号を受信する受信器であって、
前記トリガ信号は、出入口を挟んでそれぞれが異なる位置に設けられ、相互に異なる特性を有するトリガ信号を出力する、複数の独立したトリガ信号発信器から出力され、
前記IDタグは、受信したトリガ信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し、
前記複数のトリガ信号発信器と独立して設けられ、前記IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報と、前記ID番号とを受信する、受信器。
【請求項7】
出入口を挟んで異なる位置に独立して設けられた複数のトリガ信号発信器から、IDタグに対して相互に異なる特性を有し、IDタグを起動する複数のトリガ信号を出力するステップと、
トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力するIDタグを、前記異なる位置を通過させるステップと、
前記複数のトリガ信号発信器と独立して設けられた受信器によって、IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信するステップとを含む、入退室管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部屋の出入口における入退室管理等に用いられる、入退室管理システム、それに用いられる受信器、および入退室管理方法に関し、特に複数の人の動向を容易に知ることができる、入退室管理システム、それに用いられる受信器、および入退室管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の入退室管理システムが、たとえば、特開2003-178381号公報(特許文献1)に開示されている。同公報によれば、入退室監視システムは、分離して設けられた2つのアンテナを有し、2つのアンテナを切換えて、受信期間内に応答信号があるか否かを判断して、タグの特定と、移動方向を検出している。
【特許文献1】特開2003-178381号公報(段落番号0009等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の動態管理システムにおいては、上記のようにして、タグの特定と、移動方向を検出していたため、構成が複雑であるとともに、判別に時間がかかるという問題があった。
【0004】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、簡単な構成で、容易に出入口における入退室の移動を検出できる、入退室管理システム、受信器および入退室管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明にかかる入退室管理システムは、出入口の一方側である第1の位置に設けられ、第1特性を有するトリガ信号を出力する、第1トリガ信号発信器と、出入口の他方側である第2の位置に設けられ、第1トリガ信号発信器とは独立して第1と異なる第2特性を有するトリガ信号を出力する、第2トリガ信号発信器と、第1および第2トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグとを含み、IDタグは、受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力し、第1および第2トリガ信号発信器と独立して設けられ、IDタグが出力したID番号を受信する受信器とを含む。
【0006】
IDタグは、相互に独立して設けられた第1と第2のトリガ信号発信器から受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力するため、出入口の一方側と他方側との2つのトリガ信号発信器からの情報だけで、IDタグが、出入口の一方側と他方側とに設けられたどのトリガ信号発信位置をどのように通過したかを知ることができる。
【0007】
その結果、簡単な構成で、容易に出入口における移動を検出できる、入退出管理システムが提供できる。
【0008】
好ましくは、IDタグは、トリガ信号ごとの異なる特性を記憶する記憶手段を含む。
【0009】
さらに好ましくは、トリガ信号発信器の相互に異なる特性は、トリガ信号のIDによって区別される。
【0010】
さらに好ましくは、現在時刻を検出する現在時刻検出器を含み、受信器の受信したID番号を現在時刻とともに記憶する。
【0011】
なお、受信器は複数のトリガ信号発信器に対して1個設けられてもよい。
【0012】
この発明の他の局面においては、受信器は、トリガ信号に応答して、ID番号を出力するIDタグが出力したID番号を受信する。トリガ信号は、出入口を挟んで、それぞれが異なる位置に設けられ、相互に異なる特性を有するトリガ信号を出力する複数の独立したトリガ信号発信器から出力され、IDタグは、受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力し、複数のトリガ信号発信器と独立して設けられた受信器は、IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報と、ID番号とを受信する。
【0013】
この発明のさらに他の局面においては、入退室管理方法は、出入口を挟んで異なる位置に独立して設けられた複数のトリガ信号発信器から、IDタグに対して相互に異なる特性を有し、IDタグを起動する複数のトリガ信号を出力するステップと、トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して、受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力するIDタグを、前記異なる位置を通過させるステップと、複数のトリガ信号発信器と独立して設けられた受信器によって、IDタグが出力した、トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信するステップとを含む。
【0014】
IDタグは、相互に独立して設けられたトリガ信号発信器から出力されたトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力するため、出入口を挟んだ、2つのトリガ信号発信器からの情報だけで、IDタグが出入口に設けられたどのトリガ信号発信位置をどのように通過したかを知ることができる。
【0015】
その結果、簡単な構成で、容易に動態の出入口における移動を検出できる、入退出管理方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施の形態に係る入退出管理システムを、ある部屋への出入りの管理である入退室管理システムに適用した場合の全体構成を示すブロック図である。
【0017】
図1を参照して、部屋60には、4つの出入口A?Dが設けられており、所定のIDタグ40を保持した人がこれらの出入口A?Dを介して入退室する。入退室管理システムとしての動態管理システム10は、部屋60の出入口A?Dのそれぞれに設けられ、所定のトリガ信号を発信する、トリガ信号発信アンテナ21?28と、トリガ信号発信アンテナ21?28にトリガ信号を供給するトリガ信号発信器11?18と、トリガ信号を受けてIDタグ40が発信したID番号を受信する受信器35?37と、受信器35?37に接続され、受信器35?37の受信したID番号を処理するコントローラ30とを含む。
【0018】
トリガ信号発信器11?18は、図1に示すように相互に独立して設けられ、トリガ信号発信時に、それぞれ異なる特性のトリガ信号を出力する。ここでは、トリガ信号IDを出力するものとして説明する。IDタグ40は、後に説明するように、トリガ信号を受信すると、受信したトリガ信号のID番号と、自分のID番号とを合わせて、受信器35?37に送信する。
【0019】
コントローラ30は、IDタグ40からのトリガID番号とタグのID番号を受信する、受信部31と、現時時刻を出力する計時部32と、受信部31で受信した上記のデータを、計時部32で計時した時刻とともに記憶する記憶部33と、受信部31、計時部32および記憶部33を制御する制御部34とを含む。
【0020】
図1においては、部屋60の内部にトリガ信号発信器11?18とは独立して受信器35を1つ設け、外部には、出入口A、B用に受信器36を設け、出入口C、D用に受信器37を設けた例を示しているが、受信器を各トリガ信号発信器ごとに設けてもよい。
【0021】
図2は、IDタグ40の構成を示すブロック図である。図2を参照して、IDタグ40は受信用アンテナ51とトリガ信号検知部41と、電池49と、スィッチ42と固有のID番号を発生する、ID番号発生部43とを含む。ID番号発生部43はアドレス計数部45とID番号記憶部46と発振器47と出力回路48と、ID番号発生部43と、所定のデータを格納しているメモリ52と、全体を制御するCPU50とから構成される。
【0022】
受信用アンテナ51は、トリガ信号発信器11?18に接続されたトリガ信号発信アンテナ21?28からのトリガ信号を受信するようになっており、トリガ信号検知部41は、受信用アンテナ51で受信された信号が、トリガ信号であると認識したときにスイッチ42をONするようになっている。スイッチ42がONされると、ID番号発生部43に電源が供給されて、このID番号発生部43からそのIDタグ40に対応するID番号および、受信用アンテナ51で受信したトリガ信号のIDとが送信用アンテナ44を介して出力される。このように出力されたID番号は発振器47によって高周波信号に変換されて出力回路48を介して送信用アンテナ44から送信される。
【0023】
メモリ52は、トリガ信号発信器11?18の発信する、それぞれが異なる、各トリガ信号のパターンを格納しており、トリガ信号を受信すると、そのパターンからトリガIDを特定するようにしてもよい。
【0024】
ここでIDタグ40に設けられた発振器47からはID番号が、トリガ信号IDとともに発信され、これらのIDをID受信器13が受信する。
【0025】
次に、IDタグ40の動作について説明する。図3は、IDタグ40の動作を示すフローチャートである。
【0026】
図2および図3を参照して、IDタグ40は、まず、トリガ信号を検出する(ステップS11、以下、ステップを省略する)。トリガ信号を受信すると(S11でYES)、マイコン50を起動して(S12)、トリガ信号を取り込む(S13)。トリガ信号は、同期信号を含むヘッダと、トリガIDと、誤り検出用のパリティデータとフッタとを有している。このヘッダから同期信号、パリティデータ、およびトリガIDとを取り出し(S14?S16)、メモリに格納されているトリガ信号のパターンと比較して、受信したトリガ信号が、トリガ信号A?Cのうちの、どのトリガ信号であるかを判別し、データの送信準備を行なう(S17)。
【0027】
トリガ信号から取り出したトリガIDと、ID番号記憶部46に格納されているIDタグのID番号とから、データの準備を行ない(S18)、受信したトリガ信号から、上記した発信間隔データに応じて、タイマーをセットする(S19)。
【0028】
次いで、タイマカウントをセットし、カウントダウンを開始する(S20、S21)。セットしたカウント値になると(S22)、RF(無線周波数)を発信し(S23)、準備したデータを送信して、RFをオフする(S24、S25)。
【0029】
その後、プログラムは、再度S19に戻り、タイマをセットした後、データ送信を繰り返す。これは、予め定められた所定回数繰り返される。
【0030】
このように、IDタグ40は、相互に独立して設けられた2つのトリガ信号発信器から受信したトリガ信号のIDと自己のIDとを受信器35?37に送信するため、トリガ信号発信アンテナ21?28の設けられている出入口において、どの方向に移動したかを確実に検出できる。
【0031】
また、一定間隔で、複数回データを送信することにより、データの受信漏れは生じない。
【0032】
また、計時部32での計時時間を合わせて記憶部33に記憶することにより、誰が何時に、どの出入口から入室、または退室したのかを知ることができる。
【0033】
なお、コントローラ30では、複数の受信器35?37において、重複したデータを受信したときには、いずれかのデータを削除する等の処理を行なう。
【0034】
次に、受信器35?37の動作について図4に示すフローチャートを参照して説明する。図4を参照して、受信器35?37は、IDタグ40からIDを受信すると(S31でYES)、それをコントローラ30へ送信する(S32)。
【0035】
なお、受信器35?37のデータの送信は、一定の時間IDタグからの受信データを図示のないメモリに格納し、所定時間経過後にコントローラ30に送信してもよい。
【0036】
上記実施の形態においては、異なる特性のトリガ信号を出力する例として、トリガ信号IDを出力するものとして説明したが、これに限らず、波形が異なる等の他の方法で特性を変えるようにしてもよい。
【0037】
上記実施の形態においては、動態管理システムを、部屋60の出入口を介したIDタグを保持した人の入退室の管理である入退室管理システムに用いた例について説明したが、これに限らず、任意の位置における人の動向を知ることができる。
【0038】
たとえば、見本市会場のようなイベント会場において、各ブースへの入退室等にも利用が可能である。
【0039】(削除)
【0040】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【0041】
そのような内容の一部を以下に示す。
【0042】
1.動態管理方法においては、トリガ信号発信器の相互に異なる特性は、トリガ信号のIDによって区別する。
【0043】
2.動態管理方法は、現在時刻を検出するステップを含み、受信したID番号を現在時刻とともに記憶するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明にかかる動態管理システムの要部を示すブロック図である。
【図2】IDタグの構成を示すブロック図である。
【図3】IDタグの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】受信器の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
10 動態管理システム、11?18 トリガ信号発信器、21?28 トリガ信号発信アンテナ、30 コントローラ、31 受信部、32 計時部、33 記憶部、34 制御部、35?37 受信器、40 IDタグ、41 トリガ検知部、42 スイッチ、43 ID番号発生部、44 送信用アンテナ、45 アドレス計数部、46 ID番号記憶部、47 発信器、48 出力回路、49 電池、50 マイコン、51 受信用アンテナ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-04-26 
結審通知日 2018-05-01 
審決日 2018-05-14 
出願番号 特願2004-229032(P2004-229032)
審決分類 P 1 113・ 55- ZAA (G07C)
P 1 113・ 121- ZAA (G07C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大谷 光司  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 長屋 陽二郎
五閑 統一郎
登録日 2011-06-17 
登録番号 特許第4763982号(P4763982)
発明の名称 入退室管理システム、受信器および入退室管理方法  
代理人 塩川 修治  
代理人 福田 あやこ  
代理人 福田 あやこ  
代理人 中塚 雅也  
代理人 森下 八郎  
代理人 森下 八郎  

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