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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1343293 |
審判番号 | 不服2016-18025 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-12-01 |
確定日 | 2018-08-17 |
事件の表示 | 特願2014-231823「改善された経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを有する天然及び/又は合成高甘味度甘味料組成物、これらの配合方法、および使用」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月19日出願公開、特開2015- 33391〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2009年5月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年5月15日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2011-509727号の一部を平成26年11月14日に新たな特許出願としたものであって、平成27年9月18日付けの拒絶理由通知に対して、平成28年3月25日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、同年8月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月1日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願に係る発明は、平成28年3月25日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるところ、請求項1に係る発明は次のとおりのものである。(以下、請求項1に記載された発明を「本願発明1」という。) レバウジオシドA、 塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの塩、 大豆タンパク質加水分解物と還元糖のMaillard反応生成物、ゾニポリド、(N-(3-メトキシフェニル)-4-クロロシンナミド)、カプサゼピン、フェナミル、ベンザミル、およびこれらの誘導体、並びにこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの塩味抑制物質、および 少なくとも1つの甘味改善組成物 を含む、甘味料組成物。 第3 原査定の理由 原査定における拒絶理由の理由3(実施可能要件)及び理由4の(サポート要件)概要は、次のとおりである。 1 理由4(サポート要件)について この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 本願発明の課題は、塩を用いて甘味の経時的挙動を改善した組成物において、塩味抑制物質の添加により、前記塩による甘味改善の効果を残しつつ、前記塩の添加により生じた塩味を軽減したことを特徴とする、味質が改善された甘味料組成物を提供することであるが(明細書段落[0001]-[0005]等)、発明の詳細な説明には、上記のような甘味料組成物を実際に製造し、その味質を確認したことについては何も記載されていない。 そして、味覚は、甘味や塩味等の各味質に対応する味覚受容体から入力される味覚情報の単純な足し引きで決まるものではなく、種々の呈味料や呈味増強/抑制剤等から入力される味覚情報が複雑に相互作用した結果として生物によって認識されるものであることを考慮すると、味覚試験等が何らなされていない本願発明の甘味料組成物について、添加した塩による甘味の質の改善効果のみが残り、塩味が特異的に減少するといった、上記本願発明の課題が実際に解決されるか否かは不明である。 よって、本願出願時の技術常識に照らしても、上記本願発明の課題について、請求項1-19に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。 2 理由3(実施可能要件) この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 上記本願発明の課題を解決するような甘味料組成物を製造するためには、本願の特許請求の範囲や明細書に多数列挙されている物質の中から適切な成分を選択するのみならず、選択した各成分の配合量も検討した上で味質試験等を行う必要があると考えられ、当該工程は当業者に過度の負担を強いるものと認められる。 第4 当審の判断 1 理由4(サポート要件)について (1) 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2) 本願明細書の発明の詳細な説明の記載について 本願明細書には、以下の記載がある。なお、「・・・」は省略を示す。 (ア)「【0001】 本発明は、本発明は、概して、合成及び/又は天然高甘味度甘味料の味の改善およびこれを用いて甘味を付与した組成物に関する。特に、本発明は、合成及び/又は天然高甘味度甘味料およびこれを用いて甘味を付与した組成物の経時的挙動を、塩を用いて改善すること、ならびに結果として得られる配合物の塩味を軽減するための方法に関する。」 (イ)「【0004】 塩は、ノンカロリーもしくは低カロリーの甘味料の経時的挙動をさらに糖に似せるようにするのに有効であることが見いだされた。たとえば、2006年11月17日付で出願された米国特許出願第11/561,148号および第11/561,158号で開示されているように、天然及び/又は合成高甘味度甘味料の組み合わせと無機塩(たとえば、鉱物塩)の組み合わせは、天然及び/又は合成高甘味度甘味料の経時的及び/又はフレーバープロファイルを改善して、より糖に似るようにすることができる。しかし、無機塩を添加すると、改善された甘味料配合物に塩味も生じ得る。 【0005】 したがって、天然及び/又は合成高甘味度甘味料と無機塩とを組み合わせた結果生じる塩味を軽減して、高甘味度甘味料の経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを改善することが望ましい。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 概して、本発明は、改善された経時プロファイルもしくはフレーバープロファイルまたは両者を有するノンカロリーもしくは低カロリーの甘味料組成物、ノンカロリーもしくは低カロリーの甘味料の経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを改善する方法、改善された経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを有するノンカロリーもしくは低カロリーの甘味料で甘味を付与された組成物、およびノンカロリーもしくは低カロリーの甘味料で甘味を付与した組成物の経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを改善するための方法を提供することによって前記の必要に対処する。特に、本発明は、さらに糖に似た経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを付与することによって、経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを改善する。 【0007】 さらに詳細には、本発明は、さらに糖に似た経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを有する合成甘味料及び/又は天然高甘味度甘味料(「NHPS」)組成物を包含し、それは(i)少なくとも1つの合成甘味料、NHPS、もしくは改質NHPS、(ii)少なくとも1つの塩、(iii)少なくとも1つの塩味抑制物質、および(iv)任意で、炭水化物、ポリオール、アミノ酸、他の甘味改善添加剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの甘味改善組成物を含む。」 (ウ)「【0010】 さらに別の態様によれば、本発明は、甘味を付与され得る組成物と、(i)少なくとも1つの合成甘味料、NHPS、もしくは改質NHPS、(ii)少なくとも1つの塩、(iii)少なくとも1つの塩味抑制物質、および(iv)任意で、炭水化物、ポリオール、アミノ酸、他の甘味改善添加剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの甘味改善組成物とを組み合わせることによって、さらに糖に似た経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを天然及び/又は合成高甘味度甘味料で甘味を付与された組成物に付与する方法を包含する。この場合も、本発明の特定の実施形態によれば、天然及び/又は合成高甘味度甘味料で甘味を付与された組成物は、飲料、食品、医薬品、タバコ、口腔衛生/化粧品、栄養補助食品などから成る群より選択される。」 (エ)「【0015】 先に概要を記載したように、本発明の実施形態は、改善された経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを有する甘味料組成物ならびに天然及び/又は合成高甘味度甘味料の経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを改善する方法を包含する。特に、本発明の実施形態は、天然及び/又は合成高甘味度甘味料の経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを改善し、同時に甘味料組成物に無機塩を添加した結果としての塩味を軽減する。簡単に記載すると、本発明の実施形態は、少なくとも1つの天然及び/又は合成高甘味度甘味料、少なくとも1つの無機塩、少なくとも1つの塩味抑制物質を含む、改善された経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを有する甘味料組成物を提供することによって、前記必要性に対処する。甘味料組成物は任意で、少なくとも1つの無機塩以外の少なくとも1つの他の甘味改善組成物をさらに含む。」 【0016】 本明細書において前述のように、少なくとも1つの無機塩と組み合わせた少なくとも1つの天然及び/又は合成高甘味度甘味料は、少なくとも1つの天然及び/又は合成高甘味度甘味料に、より糖に似た味を付与することが判明した。しかし、無機塩を添加すると、結果として甘味料組成物に塩味が付加される可能性がある。どんな理論によっても拘束されることを望まないが、甘味料組成物の味は、さらに、塩味抑制物質の使用により付加された塩味を軽減することによって、改善することができる。それにより、甘味料組成物ならびに改善された経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを有する甘味料組成物を提供する方法を提供する。加えて、より糖に似た経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを有し、甘味を付与され得る組成物、少なくとも1つの天然及び/又は合成高甘味度甘味料、少なくとも1つの塩、少なくとも1つの塩味抑制物質、任意で少なくとも1つの甘味改善組成物を有する、甘味を付与された組成物を提供する。 I.塩味抑制物質 【0017】 「塩味抑制物質」は、本明細書において用いられる場合、塩味特性を軽減、抑制、または阻害する組成物を包含し、「塩気抑制物質」および「塩抑制物質」と同義である。塩味抑制物質の限定されない例としては、イオンチャンネル競合物質、上皮ナトリウムチャンネル阻害物質、およびバニロイド受容体1型塩味受容体阻害物質が挙げられる。」 (オ)「【0020】 具体的な一実施形態において、好適な塩味抑制物質は、TRPV1経路を阻害する化合物を含んでもよい。好適なTRPV1阻害物質(拮抗物質)の限定されない例としては、大豆タンパク質加水分解物および還元糖(たとえば、キシロース)のMaillard反応生成物、カプサゼピン、ゾニポリドおよび・・・。塩味を抑制できる他のTVPR1拮抗物質は、ヨード-レシニフェラトキシン、BCTC、ネオマイシン、ルテニウムレッド、SB-452533、DD161515、DD191515、およびJYL1421を含み得る。 【0021】 本明細書において用いられる場合、「タンパク質加水分解物」には、酸、酵素、またはこれらの組み合わせを用いてタンパク質を加水分解することによって調製される、アミノ酸およびペプチドの混合物が含まれる。・・・ 【0022】 別の特定の実施形態において、好適な塩味抑制物質は、ENaC阻害物質などの他の機構によって塩味を抑制することができる化合物を含み、ENaC阻害物質の限定されない的例としては、米国特許公開第2006/0062814号で開示されているクエン酸、リン酸などの塩(たとえば、クエン酸ナトリウム、・・・またはヘテロ環状基であり得る。」 (カ)「【0025】 特性がより糖に似ているかどうかは、糖ならびに、少なくとも1つの天然及び/又は合成高甘味度甘味料(甘味改善組成物を含むもの及び含まないものの両方)を含む組成物の専門家による官能パネル評価によって判定される。このような評価によって、少なくとも1つの天然及び/又は合成高甘味度甘味料(甘味改善組成物を含むものおよび含まないものの両方)の、糖を含む組成物との類似性を定量化する。組成物がより糖に似た味を有するかどうかを決定するのに適した手順は、当該技術分野で周知である。 【0026】 特定の実施形態では、評価者のパネルを用いて、後を引く甘味の軽減を測定する。簡単に記載すると、評価者のパネル(一般的に8?12人)を訓練して甘味の知覚を評価し、試料をまず口中に入れてから、吐き出した後3分までのいくつかの時点での甘味を測定する。統計分析を用いて、添加物を含む試料と添加物を含まない試料との間で結果を比較する。試料を口から除去した後に測定した時点についての得点の減少は、甘味の知覚が低下したことを示す。 【0027】 評価者のパネルは、当業者に周知の手順を用いて訓練することができる。特定の実施形態において、評価者のパネルは、Spectrum(商標)Descriptive Analysis Method(Meilgaardら、Sensory Evaluation Techniques、第3版、11章)を用いて訓練することができる。望ましくは、訓練の焦点は、基本的な味、特に甘味の認識および測定でなければならない。 結果の精度および再現性を保証するために、各評価者は試料ごとに約3?約5回、甘味の後味の軽減の測定を繰り返し、各繰り返し及び/または試料間で少なくとも5分の間をおき、水でよくすすいで口を清浄化しなければならない。 【0028】 一般的に、甘味を測定する方法は、10mLの試料を口中に入れ、試料を口中に5秒間含み、試料を口中で穏やかに回し、5秒で感じた甘味強度を評価し、試料を吐き出し(試料をはき出した後、飲み込まない)、一口分の水ですすぎ(たとえば、洗口剤を用いるように口中で水を激しく動かす)、そしてすすぎ水をはき出し、すすぎ水をはき出した直後に感じられる甘味強度を評価し、45秒間待ち、この45秒待っている間に、最大に感じられる甘味強度の時間を確認し、そしてその時間での甘味強度を評価し(口を普通どおり動かし、必要に応じて飲み込む)、さらに10秒後に甘味強度を評価し、さらに60秒後に甘味強度を評価し(すすいだ後、累積で120秒)、さらに60秒後に甘味強度を評価する(すすいだ後、累積で180秒)。試料間に5分の中断をとり、水で充分にすすいで、口を清浄化する。 【0029】 甘味料は、望ましくはノンカロリーの甘味料または低カロリーの甘味料を含む。ノンカロリーの甘味料は、カロリー量がさらに低く、スクロース、フルクトース、もしくはグルコースよりも高い甘味度を有する任意の甘味料を包含する。ノンカロリーの甘味料は、合成および天然高甘味度甘味料を包含する。 A.高カロリー甘味料 【0030】 好適な高カロリー炭水化物甘味料の限定されない例としては、スクロース、フルクトース、グルコース、・・・が挙げられる。 B.合成高甘味度甘味料 【0031】 本明細書において用いられる場合、「合成甘味料」という語句は、「合成高甘味度甘味料」と同義であり、天然に存在せず、特徴としてスクロース、フルクトース、もしくはグルコースよりも高い甘味度を有し、さらには低カロリーである任意の組成物を意味する。本発明の実施形態に好適な合成甘味料の限定されない例としては、スクラロース、アセサルフェームカリウム、アスパルテーム、・・・これらの塩等が挙げられる。」 「 C.天然高甘味度甘味料 【0032】 本明細書において用いられる場合、「天然高甘味度甘味料」、「NHPS」、「NHPS組成物」、および「天然高甘味度甘味料組成物」という語句は同義である。「NHPS」は、未加工、抽出、精製、または任意の他の形態であってよく、単独もしくはこれらの組み合わせで、特徴としてスクロース、フルクトース、もしくはグルコースよりも高い甘味度を有するが、それでもなお低カロリーを有する、天然に存在する任意の甘味料を意味する。本発明の実施形態に適したNHPSの限定されない例としては、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC(ズルコシドB)、・・・が挙げられる。NHPSは改質NHPSも包含する。」 (キ)「 D.塩 【0067】 本発明で提供する甘味料組成物は、少なくとも1つの塩をさらに含んで、少なくとも1つの天然及び/又は合成高甘味度甘味料の経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを改善する。「塩」という用語は、本明細書において用いられる場合、本発明の甘味改善組成物の所望の味覚活性の保持を可能にし、一般的に許容可能な範囲でのヒトもしくは動物の消費に関して安全である無機もしくは有機塩を意味する。アルカリ金属(たとえば、ナトリウムもしくはカリウム)またはアルカリ土類金属(たとえば、カルシウムもしくはマグネシウム)塩を作製することができる。塩は、アルカリおよびアルカリ土類金属の組み合わせも含むことができる。かかる塩の限定されない例は、(a)カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウム、ナトリウム、カリウム等の、無機酸および無機塩基を用いて形成される酸付加塩、(b)アンモニア、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、D-グルコサミン、テトラエチルアンモニウム、またはエチレンジアミン等の有機塩基および有機もしくは無機酸を用いて形成される塩基付加塩、あるいは(c)(a)と(b)との組み合わせである。従って、本明細書で以下に記載する甘味改善組成物から誘導することができる任意の塩形態を用いることができる。添加物の塩形態を、天然及び/又は合成甘味料組成物に、これらの酸もしくは塩基形態と同じ量で添加することができる。 【0068】 特定の実施形態において、甘味改善添加剤として有用である好適な無機塩としては、これらに限定されるものではないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、・・・が挙げられる。 【0069】 好適な有機酸塩添加物としては、これらに限定されるものではないが、あらゆる有機酸のナトリウム、カルシウム、カリウム、・・・および任意の他の実行可能な官能基からなる群から選択される1以上で置換することができる。ただし、置換有機酸塩添加物は、少なくとも1つの天然及び/又は合成高甘味度甘味料の甘みを改善する働きをするものとする。」 (ク)「 E.他の甘味改善組成物 【0070】 本発明で提供する甘味料組成物の特定の実施形態は、場合によって、本明細書で前記の無機塩とは異なる甘味改善組成物を含むことができる。本明細書において用いられる場合、「甘味改善組成物」という語句は、より糖に似た経時プロファイルまたは糖に似たフレーバープロファイルまたは両者をNCSに付与する任意の組成物を包含する。甘味改善組成物の例としては、これらに限定されるものではないが、炭水化物、ポリオール、アミノ酸、およびこのような糖に似た特性を付与する他の甘味改善味添加物が挙げられる。 【0071】 一実施形態において、1つの甘味改善組成物を、1つの天然及び/又は合成高甘味度甘味料および少なくとも1つの塩および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて用いることができる。本発明の別の実施形態では、1つの甘味改善組成物を、1以上の天然及び/又は合成高甘味度甘味料および少なくとも1つの塩および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて用いることができる。・・・ 【0072】 本明細書において用いる場合、「炭水化物」という用語は、一般的に、複数のヒドロキシル基で置換された、一般式(CH_(2)O)_(n)(式中、nは3?30である)のアルデヒドまたはケトン化合物、ならびにこれらのオリゴマーおよびポリマーを意味する。・・・ただし、炭水化物誘導体もしくは置換炭水化物は、甘味料組成物の甘味を改善する働きをするものとする。 【0073】 本発明の実施形態における炭水化物の限定されない例としては、タガトース、トレハロース、・・・およびグルコースシロップが挙げられる。さらに、ここで用いられる炭水化物は、D-もしくはL-配置のいずれであってもよい。」 (ケ)「【0075】 本発明の実施形態における甘味改善ポリオール添加物の限定されない例としては、エリトリトール、マルチトール、マンニトール・・・および糖アルコールまたは甘味料組成物の味に悪影響を及ぼさない還元可能な任意の他の炭水化物が挙げられる。 【0076】 本発明の実施形態における使用に好適な甘味改善アミノ酸添加物としては、これらに限定されるものではないが、アスパラギン酸、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、・・・又はこれらの他のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、あるいは酸塩)の組み合わせも本発明の実施形態において好適な甘味改善添加剤である。アミノ酸は天然であっても、または合成であってもよい。・・・ 【0077】 好適な甘味改善ポリアミノ酸添加物としては、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-リシン(たとえば、ポリ-L-α-リシンもしくはポリ-L-ε-リシン)、ポリ-L-オルニチン(たとえば、ポリ-L-α-オルニチンもしくはポリ-L-γ-オルニチン)・・・ 【0078】 本発明の実施形態における使用に好適な甘味改善酸添加物としては、これらに限定されるものではないが、アルドン酸、ウロン酸、アルダル酸、・・・ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。 【0079】 本発明の実施形態における使用に好適な甘味改善ヌクレオチド添加物としては、これらに限定されるものではないが、イノシン一リン酸(IMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、・・・およびこれらのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。・・・ 【0080】 好適な甘味改善有機酸添加物は、-COOH部分を含む任意の化合物を包含する。本発明の実施形態における使用に好適な甘味改善有機酸添加物としては、これらに限定されるものではないが、C2?C30カルボン酸、置換ヒドロキシルC1?C30カルボン酸、・・・およびそれらのアルカリまたはアルカリ土類金属塩誘導体が挙げられる。加えて、甘味改善有機酸添加物は、D-またはL-配置のいずれであってもよい。 【0081】 好適な甘味改善有機酸塩添加物としては、これらに限定されるものではないが、あらゆる有機酸のナトリウム、カルシウム、カリウム、・・・および任意の他の実行可能な基からなる群から選択される基の1以上で置換されていてもよい。ただし、置換有機酸塩添加物剤は甘味料組成物の甘味を改善する働きをするものとする。 【0082】 本発明の実施形態における使用に好適な甘味改善無機酸添加物としては、これらに限定されるものではないが、リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、塩酸、硫酸、炭酸、リン酸二水素ナトリウム、およびこれらの対応するそのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩が挙げられる。 【0083】 本発明の実施形態における使用に好適な甘味改善苦味化合物添加物としては、これらに限定されるものではないが、カフェイン、キニーネ、尿素、橙皮油、ナリンギン、カシア、およびこれらの塩が挙げられる。 【0084】 本発明の実施形態における使用に好適な甘味改善香味料(flavorant)および香味成分添加物としては、これらに限定されるものではないが、バニリン、バニラ抽出物、マンゴー抽出物、・・・およびブドウ種抽出物が挙げられる。・・・ 【0085】 本明細書における使用に好適な甘味改善ポリマー添加剤としては、これらに限定されるものではないが、キトサン、ペクチン、・・・ならびに他のカチオン性およびアニオン性ポリマーが挙げられる。・・・ 【0086】 本発明の実施形態における使用に好適な甘味改善タンパク質もしくはタンパク質加水分解物添加物としては、これらに限定されるものではないが、ウシ血清アルブミン(BSA)、乳漿タンパク質(その画分もしくは濃縮物、例えば90%インスタント乳漿タンパク質単離物、・・・ならびにコラーゲン加水分解物(たとえば、ブタコラーゲン加水分解物)が挙げられる。 【0087】 本発明の実施形態における使用に好適な甘味改善界面活性剤添加物としては、これらに限定されるものではないが、ポリソルベート(たとえば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80)、ポリソルベート20、ポリソルベート60)、・・・および他の乳化剤等が挙げられる。 【0088】 本発明の実施形態における使用に好適な甘味改善フラボノイド添加物は、一般的に、フラボノール、フラボン、フラバノン、フラバン-3-オール、イソフラボン、またはアントシアニジンに分類される。・・・ 【0089】 本発明の実施形態における使用に好適な甘味改善アルコール添加物としては、これらに限定されるものではないが、エタノールが挙げられる。 【0090】 好適な甘味改善収斂剤化合物添加物としては、これらに限定されるものではないが、タンニン酸、塩化ユウロピウム(EuCl_(3))、塩化ガドリニウム(GdCl_(3))、塩化テルビウム(TbCl_(3))、硫酸アルミニウム、タンニン酸、およびポリフェノール(たとえば、茶ポリフェノール)が挙げられる。 【0091】 好適な甘味改善ビタミンとしては、ニコチンアミド(ビタミンB3)および塩酸ピリドキサール(ビタミンB6)が挙げられる。 【0092】 甘味改善組成物は、天然及び/又は合成高甘味度甘味料を含んでもよい。たとえば、甘味料組成物が少なくとも1つのNHPSを含む場合、少なくとも1つの甘味改善組成物は、合成高甘味度甘味料を含んでもよく、その限定されない例としては、スクラロース、アセサルフェームカリウム、アスパルテーム、・・・それらの塩等が挙げられる。甘味改善組成物は、当該技術分野で周知の標準的手順を用いて得ることができる塩形態であってもよい。「塩」という用語は、本発明の甘味改善組成物の化学的活性を保持する複合体も意味し、一般的に許容可能な範囲でヒトもしくは動物の消費に関して安全である。アルカリ金属(たとえば、ナトリウムもしくはカリウム)またはアルカリ土類金属(たとえば、カルシウムもしくはマグネシウム)塩も調製することができる。・・・したがって、甘味改善組成物から誘導することができる任意の塩形態を、甘味改善添加剤の塩が甘味料組成物もしくは甘味料組成物を含む経口摂取可能な組成物の味に悪影響を及ぼさない限り、本発明の実施形態で用いることができる。添加物の塩形態を、その酸もしくは塩基形態と同じ量で甘味料組成物に添加することができる。」 (コ)「【0101】 本発明の特定の実施形態によれば、本発明で提供する甘味料組成物は、少なくとも1つの塩、少なくとも1つの塩味抑制物質、および任意で少なくとも1つの甘味改善組成物を甘味料組成物中、甘味料組成物が甘味料組成物の水溶液に少なくとも10ミリオスモル/Lのオスモル濃度を付与するために有効な量で含み、ここで、少なくとも1つの天然及び/又は合成高甘味度甘味料は、水溶液中、10重量%のスクロース水溶液と等しい最大甘味度を付与するために十分な量で存在する。本明細書において用いられる場合、「ミリオスモル/L」とは、1リットルあたりのミリオスモルを意味する。別の実施形態によれば、甘味料組成物は、少なくとも1つの塩、少なくとも1つの塩味抑制物質、および任意で少なくとも1つの甘味改善組成物を、甘味料組成物が500ミリオスモル/Lのオスモル濃度、別の実施形態では好ましくは25?500ミリオスモル/Lのオスモル濃度、・・・のオスモル濃度を甘味料組成物の水溶液に付与するために有効な量で含み、この場合、少なくとも1つの天然及び/又は合成高甘味度甘味料は、10重量%のスクロース水溶液と等しい最大甘味度を付与するために十分な量で存在する。複数の甘味改善組成物を、少なくとも1つの天然及び/又は合成高甘味度甘味料、少なくとも1つの塩、および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせる場合、付与されるオスモル濃度は、複数の甘味改善組成物および少なくとも1つの塩および少なくとも1つの塩味抑制物質の組み合わせの合計である。」 (サ)「【0103】 一実施形態において、レバウジオシドA、ステビア、ステビオシド、・・・もしくは他の塩、またはネオテームを含む甘味料を、少なくとも1つの無機塩および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて含む甘味料組成物を提供する。限定されない例としては、少なくとも1つの塩味抑制物質ならびにレバウジオシドA、ステビア、ステビオシド、・・・またはこれらの他の組み合わせて含む甘味料が挙げられる。特定の実施形態は、少なくとも1つの塩味抑制物質ならびにレバウジオシドA、ステビア、ステビオシド、・・・およびカルシウムの塩化物、リン酸塩、および硫酸塩などの無機塩の混合物・・・と組み合わせて含む甘味料を含む。 【0104】 特定の実施形態において、甘味料を含む甘味料組成物は、アスパルテーム、アセサルフェームカリウムまたは他の塩、およびスクラロースを、少なくとも1つの無機塩および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて含む。特定の実施形態において、少なくとも1つの無機塩添加剤は、組成物の約25?約5,000ppmの範囲の量で存在する。限定されない例は、少なくとも1つの塩味抑制物質ならびにアスパルテーム、アセサルフェームカリウム、およびスクラロースを含む甘味料と塩化マグネシウムとの組み合わせ、少なくとも1つの塩味抑制物質ならびにアスパルテーム、アセサルフェームカリウム、およびスクラロースを含む甘味料と硫酸マグネシウムとの組み合わせ、または少なくとも1つの塩味抑制物質ならびにアスパルテーム、アセサルフェームカリウム、およびスクラロースを含む甘味料と硫酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムとの組み合わせを含む。 【0105】 一実施形態において、レバウジオシドA、ステビア、ステビオシド、・・・もしくは他の塩、またはネオテーム含む甘味料を、少なくとも1つの有機酸塩および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて含む甘味料組成物を提供する。限定されない例は、少なくとも1つの塩味抑制物質およびレバウジオシドA、ステビア、ステビオシド、・・・もしくは他の塩、またはネオテームを含む甘味料を、クエン酸緩衝液中塩化コリン、D-グルコン酸ナトリウム塩、グアニジンHCl、D-グルコサミンHCl、もしくはこれらの組み合わせと組み合わせて含む。 【0106】 一実施形態において、レバウジオシドA、ステビア、ステビオシド、・・・もしくは他の塩、またはネオテームを含む甘味料を、少なくとも1つの甘味改善有機酸添加物と組み合わせて含む甘味料組成物を提供する。限定されない例は、少なくとも1つの塩味抑制物質ならびにレバウジオシドA、ステビア、ステビオシド、・・・もしくは他の塩、またはネオテームを含む甘味料を、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、・・・もしくはこれらの組み合わせと組み合わせて含む。 【0107】 別の実施形態において、レバウジオシドA、ステビア、ステビオシド、・・・もしくは他の塩、またはネオテームを含む甘味料を、少なくとも1つの甘味改善アミノ酸添加物、少なくとも1つの甘味改善ポリオール添加物、少なくとも1つの無機塩、少なくとも1つの有機酸塩、および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて含む甘味料組成物を提供する。特定の実施形態において、少なくとも1つの甘味改善アミノ酸添加物は組成物の約100?約25,000ppmの量で存在し、少なくとも1つの甘味改善ポリオール添加物は組成物の約400?約80,000ppmの量で存在し、少なくとも1つの無機塩は組成物の約25?約5,000ppmの量で存在し、そして少なくとも1つの有機酸塩は組成物の約20?約10,000ppmの量で存在する。限定されない例は、少なくとも1つの塩味抑制物質およびレバウジオシドA、ステビア、ステビオシド、・・・および塩化コリンと組み合わせて含む。 【0108】 別の実施形態において、レバウジオシドA、ステビア、ステビオシド・・・もしくは他の塩、またはネオテームを含む甘味料を、少なくとも1つの甘味改善アミノ酸添加物、少なくとも1つの甘味改善ポリオール添加物、少なくとも1つの無機酸塩、および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて含む甘味料組成物を提供する。・・・ 【0109】 別の実施形態において、レバウジオシドA、ステビア、ステビオシド、・・・もしくは他の塩、またはネオテームを含む甘味料を、少なくとも1つの無機酸塩および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて含む甘味料組成物を提供する。限定されない例は、少なくとも1つの塩味抑制物質およびレバウジオシドA、ステビア、ステビオシド、・・・もしくは他の塩、またはネオテームを含む甘味料を、塩化ナトリウムと組み合わせて含む。 【0110】 一実施形態において、レバウジオシドA、ステビア、ステビオシド、またはクルクリンから選択される少なくとも1つのNHPSを、少なくとも1つの甘味改善ポリオール添加物、少なくとも1つの甘味改善有機酸添加物、少なくとも1つの塩、および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて含む甘味料組成物を提供する。・・・ 【0111】 別の実施形態において、レバウジオシドAを少なくとも1つの甘味改善ポリオール添加物、少なくとも1つの甘味改善有機酸添加物、少なくとも1つの塩、および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて含む組成物を提供する。特定の実施形態において、レバウジオシドAは、ステビオールグリコシド混合物中、約50?約100重量%のレバウジオシドA、別の実施形態では約80?約99.5重量%のレバウジオシドA、そしてさらに別の実施形態において、・・・ 【0112】 別の実施形態において、レバウジオシドAを本明細書で前述の少なくとも1つの甘味改善ポリオール添加物、少なくとも1つの甘味改善有機酸添加物、少なくとも1つの塩、および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて含む組成物は、少なくとも1つの甘味改善無機酸添加物をさらに含む。特定の実施形態において、少なくとも1つの甘味改善無機酸添加物は、組成物の約25?約5,000ppmの量で存在し得る。甘味改善無機酸添加物の限定されない例は、リン酸、安息香酸、ソルビン酸、およびこれらの組み合わせを含む。 【0113】 レバウジオシドAを少なくとも1つの甘味改善ポリオール添加物、少なくとも1つの甘味改善有機酸添加物、少なくとも1つの塩、および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて含む、本明細書で前述の組成物の一実施形態において、少なくとも1つの塩は、少なくとも1つの無機酸塩及び/又は少なくとも1つの有機酸塩を含む。一実施形態において、少なくとも1つの無機酸塩は、組成物の約25?約5,000ppmの量で存在し得、別の実施形態では約50?約250ppmの量、そしてさらに別の実施形態では約150ppmの量で存在し得る。別の実施形態では、少なくとも1つの有機酸塩は、組成物の約20?約10,000ppmの量で存在し得、別の実施形態では約50?約350ppmの量、さらに別の実施形態では、約148ppmの量で存在し得る。限定されない例は、レバウジオシドAと、エリトリトール、塩化ナトリウムまたは塩化マグネシウム、および乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、またはこれらの組み合わせ、ならびに少なくとも1つの塩味抑制物質との組み合わせ、レバウジオシドAと、エリトリトール、クエン酸カリウムもしくはクエン酸ナトリウム、および乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、もしくはこれらの組み合わせ、および少なくとも1つの塩味抑制物質との組み合わせ、あるいはレバウジオシドAと、エリトリトール、塩化ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、および酒石酸、もしくはこれらの組み合わせ、ならびに少なくとも1つの塩味抑制物質との組み合わせを含む。 【0114】 レバウジオシドAを少なくとも1つの甘味改善ポリオール添加物、少なくとも1つの甘味改善無機酸添加物、少なくとも1つの甘味改善有機酸添加物、少なくとも1つの塩および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて含む本明細書で前述の組成物の別の実施形態では、少なくとも1つの塩は少なくとも1つの無機酸塩及び/又は少なくとも1つの有機酸塩を含む。一実施形態において、少なくとも1つの無機酸塩は、組成物の約25?約5,000ppmの量で存在し得、別の実施形態では約50?約250ppmの量、そしてさらに別の実施形態では約150ppmの量で存在し得る。別の実施形態では、少なくとも1つの有機酸塩は、組成物の約20?約10,000ppmの量で存在し得、別の実施形態では約50?約350ppmの量、そしてさらに別の実施形態では、約148ppmの量で存在し得る。限定されない例は、REBAと、エリトリトール、リン酸、塩化ナトリウムもしくは塩化マグネシウム、および乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、もしくはこれらの組み合わせ、・・・ 【0115】 別の実施形態において、グリチルリチン、たとえばモノアンモニウムグリチルリチン酸塩水和物を、少なくとも1つの無機酸塩および少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせて含む組成物を提供する。限定されない例としては、塩化ナトリウムおよび少なくとも1つの塩味抑制物質と組み合わせたモノアンモニウムグリチルリチン酸塩水和物が挙げられる。 【0116】 甘味料組成物中の、(1つまたは複数の)甘味改善組成物に対する天然及び/又は合成高甘味度甘味料の所望の重量比は、特定の天然及び/又は合成高甘味度甘味料、ならびに甘味および最終製品もしくは口摂取可能な組成物において望ましい他の特性に依存する。天然及び/又は合成高甘味度甘味料は、それらの甘味度にかなりの差があり、重量に基づき、スクロースの30倍を超える効力からスクロースの約8,000倍を超える効力までの範囲である。一般的に、天然及び/又は合成高甘味度甘味料の甘味改善組成物に対する重量比は、選択された特定の天然及び/又は合成高甘味度甘味料に応じて、例えば、10,000:1?1:10,000の範囲であり、さらなる限定されない例は約9,000:1?約1:9,000の範囲であり、・・・」 (シ)上記(ア)ないし(ウ)の記載に照らせば、本願発明の課題は、天然及び/又は合成高甘味度甘味料の経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを改善し、同時に甘味料組成物に無機塩を添加した結果としての塩味を軽減することである。 (ス)上記(カ)の記載によると、明細書の発明の詳細な説明には、官能試験の手法が記載されているが、官能試験の結果については記載されていない。 (3)判断 特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを、以下検討する。 本願明細書の発明の詳細な説明には、「さらに詳細には、本発明は、さらに糖に似た経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを有する合成甘味料及び/又は天然高甘味度甘味料(「NHPS」)組成物を包含し、それは(i)少なくとも1つの合成甘味料、NHPS、もしくは改質NHPS、(ii)少なくとも1つの塩、(iii)少なくとも1つの塩味抑制物質、および(iv)任意で、炭水化物、ポリオール、アミノ酸、他の甘味改善添加剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの甘味改善組成物を含む。」(【0007】)及び「本発明は、甘味を付与され得る組成物と、(i)少なくとも1つの合成甘味料、NHPS、もしくは改質NHPS、(ii)少なくとも1つの塩、(iii)少なくとも1つの塩味抑制物質、および(iv)任意で、炭水化物、ポリオール、アミノ酸、他の甘味改善添加剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの甘味改善組成物とを組み合わせることによって、さらに糖に似た経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを天然及び/又は合成高甘味度甘味料で甘味を付与された組成物に付与する方法を包含する。」(【0010】)が記載されている。しかし、このことを具体的な物質を用いた官能評価により確認したといえるような実施例の記載はない(上記(2)(ス))。また、レバウジオシドA、特定の塩、特定の塩味抑制物質及び甘味改善組成物を含んだ甘味料組成物が経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを改善し、同時に甘味料組成物に無機塩を添加した結果として塩味を軽減することが技術常識であるともいえない。 そうすると、レバウジオシドA、特定の塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの塩、特定の塩味抑制物質として、大豆タンパク質加水分解物と還元糖のMaillard反応生成物、ゾニポリド、(N-(3-メトキシフェニル)-4-クロロシンナミド)、カプサゼピン、フェナミル、ベンザミル、およびこれらの誘導体、並びにこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの塩味抑制物質及び甘味改善組成物を含んだ甘味料組成物が天然及び/又は合成高甘味度甘味料の経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを改善し、同時に甘味料組成物に無機塩を添加した結果としての塩味を軽減するという本願発明の課題を解決できるとは認識できない。 そうすると、本願発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。 (4)小括 本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2 理由3(実施可能要件)について (1)本願明細書の発明の詳細な説明の記載について 本願明細書には、上記「1(2)」の記載がある。 (2)判断 本願明細書の発明の詳細な説明には、「さらに詳細には、本発明は、さらに糖に似た経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを有する合成甘味料及び/又は天然高甘味度甘味料(「NHPS」)組成物を包含し、それは(i)少なくとも1つの合成甘味料、NHPS、もしくは改質NHPS、(ii)少なくとも1つの塩、(iii)少なくとも1つの塩味抑制物質、および(iv)任意で、炭水化物、ポリオール、アミノ酸、他の甘味改善添加剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの甘味改善組成物を含む。」(【0007】)及び「本発明は、甘味を付与され得る組成物と、(i)少なくとも1つの合成甘味料、NHPS、もしくは改質NHPS、(ii)少なくとも1つの塩、(iii)少なくとも1つの塩味抑制物質、および(iv)任意で、炭水化物、ポリオール、アミノ酸、他の甘味改善添加剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの甘味改善組成物とを組み合わせることによって、さらに糖に似た経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを天然及び/又は合成高甘味度甘味料で甘味を付与された組成物に付与する方法を包含する。」(【0010】)が記載されている。しかし、このことを具体的な物質を用いた官能評価により確認したといえるような実施例の記載はない。 そうすると、塩味が抑制された甘味料組成物を得るためには、明細書の発明の詳細な説明に多数列挙されている物質の中から適切な成分を選択するのみならず、選択した各成分の配合量も検討した上で味質試験等を行う必要があり、当該工程は当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を強いるものと認められる。 よって、本願の明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。 (3)小括 本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 第5 むすび 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 また、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-03-26 |
結審通知日 | 2018-03-27 |
審決日 | 2018-04-09 |
出願番号 | 特願2014-231823(P2014-231823) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(A23L)
P 1 8・ 537- Z (A23L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 北田 祐介、田中 耕一郎 |
特許庁審判長 |
山崎 勝司 |
特許庁審判官 |
莊司 英史 紀本 孝 |
発明の名称 | 改善された経時プロファイル及び/又はフレーバープロファイルを有する天然及び/又は合成高甘味度甘味料組成物、これらの配合方法、および使用 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 江口 昭彦 |