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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R
管理番号 1343300
審判番号 不服2017-10087  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-06 
確定日 2018-09-04 
事件の表示 特願2013-242073号「安全運転支援装置および安全運転支援方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月 4日出願公開、特開2015-101150号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月22日の出願であって、平成29年1月30日付けで拒絶理由が通知され、同年4月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月18日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、同年7月6日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1?5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧
1.特開2013-124957号公報
2.特開2005-018575号公報
3.特開2005-233902号公報
4.特開2002-216299号公報
5.特開2010-188981号公報

第3 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明(以下「本願発明1?3」という。)は、平成29年4月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
車両内に設置されて使用される安全運転支援装置であって、
前記車両の前方を撮影する前方撮影カメラと、
前記車両の後方を撮影する後方撮影カメラと、
前記車両内のメータパネルを撮影するメータパネル撮影カメラと、
前記車両の運転者に警告を行う警告発生部と、
前記前方撮影カメラにより撮影された映像、前記後方撮影カメラにより撮影された映像および前記メータパネル撮影カメラにより撮影された映像を画像解析して、前記車両の進行方向と車速に基づく状態および前記車両の運転者が注意すべき対象を判別するとともに、前記判別した対象と前記車両の進行方向と車速に基づく状態に基づいて、前記車両と前記判別した対象とが前記車両の進行方向と車速に基づく状態に応じた警告すべき位置関係にあるか否かを判定し、前記車両と前記判別した対象とが警告すべき位置関係であると判定した場合に、前記警告発生部が前記車両の運転者に警告を行うよう前記警告発生部に対して指示を行う演算部と、を備える
ことを特徴とする安全運転支援装置。
【請求項2】
運転者に警告を行う警告発生部を備えた車両に警告の指示を行う安全運転支援装置であって、
前方撮影カメラにより撮影された前記車両の前方の映像と、後方撮影カメラにより撮影された前記車両の後方の映像と、メータパネル撮影カメラにより撮影された前記車両内のメータパネルの映像を画像解析して、前記車両の進行方向と車速に基づく状態および前記車両の運転者が注意すべき対象を判別するとともに、前記判別した対象と前記車両の進行方向と車速に基づく状態に基づいて、前記車両と前記判別した対象とが前記車両の進行方向と車速に基づく状態に応じた警告すべき位置関係にあるか否かを判定し、前記車両と前記判別した対象とが警告すべき位置関係であると判定した場合に、前記警告発生部が前記車両の運転者に警告を行うよう前記警告発生部に対して指示を行う演算部と、を備える
ことを特徴とする安全運転支援装置。
【請求項3】
運転者に警告を行う警告発生部を備えた車両に警告の指示を行う安全運転支援方法であって、
演算部が、前方撮影カメラにより撮影された前記車両の前方の映像と、後方撮影カメラにより撮影された前記車両の後方の映像と、メータパネル撮影カメラにより撮影された前記車両内のメータパネルの映像を画像解析して、前記車両の進行方向と車速に基づく状態および前記車両の運転者が注意すべき対象を判別するとともに、前記判別した対象と前記車両の進行方向と車速に基づく状態に基づいて、前記車両と前記判別した対象とが前記車両の進行方向と車速に基づく状態に応じた警告すべき位置関係にあるか否かを判定し、前記車両と前記判別した対象とが警告すべき位置関係であると判定した場合に、前記警告発生部が前記車両の運転者に警告を行うよう前記警告発生部に対して指示を行うステップと、を備えた
ことを特徴とする安全運転支援方法。」

第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されており、且つ、ナビゲーション機能を有する車載機器と、
カメラ機能を有する携帯情報端末と、
前記車載機器と前記情報端末とで相互に情報の授受を行える情報通信手段と、
を具備し、
前記車載機器のナビゲーション機能によって得られる案内情報を前記情報通信手段によって
前記携帯端末に送信し、前記携帯端末でえられるカメラ映像と取得した案内情報を合成し、
合成した案内情報を前記情報通信手段によって前記車載機器へ送信し、
前記車載機器で合成された案内情報を表示可能に構成することを特徴とする携帯情報端末を用いたナビゲーションシステム。
・・・
【請求項5】
前記携帯情報端末のカメラ取得画像を用いて、画像認識技術により、前方の車両を認識検知して車間距離を得る、または、信号や道路標識を認識して識別する、または、車線を認識する、または、歩行者やバイクなどを認識する、のいずれかの1つ以上の認識結果が前記車載機器の表示に反映されるように構成されることを特徴とする、請求項1?4の何れか1項記載の携帯情報端末を用いたナビゲーションシステム。」
(1b)「【0001】
本発明は、従来のカーナビシステムを拡張すべく、カメラ付きスマートフォン等の携帯情報端末の映像やネットワーク情報と、ナビゲーションのもつ地図およびナビゲーション情報を融合して、
ユーザーにとって新しく、見やすいナビゲーション表示に関する技術である。」
(1c)「【0029】
図4の自車両100において、カメラ部21の位置110は、カメラが水平で且つ、車の向きに平行に設置する。
【0030】
カメラを水平に設置する方法はいろいろ考えられるが、前記携帯情報端末20に搭載されている3軸の加速度センサを利用すると比較的容易に設置できる。こうしてカメラ部21が水平および、車の向きと水平に設置されると、図5のように、カメラ部21による画像エリア200領域中の中心の平行線201は実際の水平線と一致する。
【0031】
そして、道路202を走行する前方車両101を画像認識により検出し、その最下点のライン203を検出でき、その時、カメラ部21の画角がわかっていれば、図4における前方車両の最下点の角度104が計算でき、また、設置するときにあらかじめカメラ部21の高さ103がわかっていれば、前方車両との距離102も計算することが可能となる。
【0032】
このように、三角測量の原理で、前方車両との距離を計算し、車速に応じて車間距離の近づき具合により危険度を計算して、前記携帯情報端末20の表示部22や前記カーナビゲーション装置10の表示部11に警告表示を行うとともに、車載機スピーカー18やスマートフォンスピーカー28から警告音や警告の音声を出力してもよい。
・・・
【0034】
携帯情報端末20は複数台使用することも考えられる。例えば、図6のように前方に向けて前記携帯情報端末20のカメラ部21を設置することに加えて、別の携帯情報端末40のカメラを後方に向けて設置するものや、左側面に向けて別の携帯情報端末50を設置するものや、別の携帯情報端末60を右側面に向けて設置するものでも構わない。」
(1d)引用文献1には、以下の図が示されている。


(2)引用文献2の記載事項
引用文献2には、次の記載がある。
(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、現在位置などを検出し表示する、カーナビゲーション装置に関する。」
(2b)「【0012】
本発明を適用したカーナビゲーション装置1は、例えば、図1に示すように、自動車101の内部のコンソール部102に取り付けられたカーナビゲーション本体110と、フロントパネル部103を撮影するためにステアリングの固定部104に固定されたカメラ部9と、操作部10と、表示部11と、図示しないGPS(Global Positioning System)アンテナとから構成されている。カーナビゲーション装置1は、カメラ部9によって撮影された、例えば、フロントパネル部103のスピードメータや、シフトポジションランプや、サイドブレーキ警告ランプの現在の状況を認識し、現在位置や、車両の状況を表示するための補完データとして使用する。
・・・
【0016】
CPU5は、位置情報処理部4から供給される現在位置とドライブ部6から供給される地図データなどを元に、地図データ上の現在位置を検出する。また、CPU5は、カメラ部9から取り込まれた車両のフロントパネル部の画像を処理し、例えば、スピードメータから現在の車速、シフトポジションランプから現在のシフトポジション、サイドブレーキ警告ランプからサイドブレーキがかかっているか否かなどを検出する。
・・・
【0032】
続いて、カーナビゲーション装置1が、GPS衛星からの電波や補完データから現在位置を表示する動作について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0033】
ステップS1において、CPU5は、カメラ部9からの画像を画像認識し、認識された車速が0かどうかを判断する。画像認識された車速が0の場合、つまり、車が動いていないと判断された場合は、ステップS2に進む。また、画像認識された車速が0ではない、つまり、車が動いていると判断された場合は、ステップS3に進む。
【0034】
ステップS2において、CPU5は、車が動いていないので、停止状態として判断し、ステップS5に進む。
【0035】
ステップS3において、CPU5は、カメラ部9からの画像を画像認識し、サイドブレーキがひかれているかどうかを判断する。サイドブレーキがひかれている場合、ステップS4に進む。また、サイドブレーキがひかれていないと判断された場合、ステップS5に進む。
【0036】
ステップS4においては、CPU5は、図6に示すように、「サイドブレーキが引かれたまま走行しています。安全のため、車を停車させた後にサイドブレーキを解除してください。」というような警告を発するメッセージを表示部11に表示するようにする。さらに、ユーザに危険回避を促すために、サイドブレーキが解除されるまで警告音を発して危険を知らせるようにする。これは、サイドブレーキを引いた状態で走行すると、ブレーキパットが加熱し、ブレーキが利かなくなるなどの問題が発生し、重大な事故につながるのを防ぐためである。なお、警告を発する方法としては、上記のように限られたものではなく、例えば、警告音を鳴らすだけだと、ユーザが驚き運転操作を誤るおそれがあるため、現在のサイドブレーキが引かれている旨を音声で説明してもよい。また、突然サイドブレーキを解除すると速度が上がるおそれもあるため、安全に停車してからサイドブレーキを解除するよう表示、または音声で指示をするようにしてもよい。」
(2c)引用文献2には、以下の図が示されている。


(3)引用文献3の記載事項
引用文献3には、次の記載がある。
(3a)「【0001】
本発明は、現在位置などを検出し表示するカーナビゲーション装置に関する。」
(3b)「【0013】
本発明を適用したカーナビゲーション装置1は、例えば、図1に示すように、自動車101の内部のコンソール部102に取り付けられたカーナビゲーション本体110と、フロントパネル部103を撮影するためにステアリングの固定部104に固定されたカメラ部9と、操作部10と、表示部11などから構成されている。このカーナビゲーション装置1は、カメラ部9によって、例えば、フロントパネル部103の燃料計103Aや方向指示ランプ103F,103Lの現在の状況を撮像して画像認識し、現在位置や車両の状況に応じたナビゲーションを行う。
・・・
【0022】
このカーナビゲーション装置1において、上記制御部5は、ユーザーが操作部10を操作することにより与えられる目的地や縮尺情報、各種制御情報に応じて、上記GPS情報処理部3により与えられる現在位置情報や上記VICS情報処理部4により与えられる交通情報や渋滞情報、上記ディスクドライブ部6により与えられる地図データや音声データなどに従って上記表示部11やオーディオ出力部12からナビゲーション画像やガイド音声を出力するとともに、上記カメラ部9により撮像されたフロントパネル部103の画像について画像認識処理を行い、その認識結果に基づいて、上記表示部11やオーディオ出力部12を介して警告を発する制御を行う。
・・・
【0031】
上記制御部5は、このようにして範囲設定が終了した後は、カメラ部9からナビゲーション部2に取り込まれる定期的(数秒に1回程度)に画像について、画像認識処理により、燃料(ガソリン)の残量の判定を行う。
【0032】
また、このカーナビゲーション装置1において、上記制御部5は、上記カメラ部9によって撮像されるフロントパネル部103の画像に基づいて、図4に示す方向指示画像40について画像認識し、方向指示ランプ103F,103Lの現在の状況を判定することにより、車両の右折又は左折を検出するようになっている。
【0033】
そして、このカーナビゲーション装置1において、上記制御部5は、図8のフローチャートに示す手順に従って、燃料残量が所定残量よりも少なくなった場合に警告を発する処理を行う。
・・・
【0041】
このステップS7における判定結果がYESすなわち自動車101が右折又は左折しようとしている場合には、上記制御部5は、右折又は左折した場合に道交法に違反する否かを上記VICS情報と現在位置情報と道路地図情報に基づいて判定し(ステップS8)、その判定結果がNOすなわち違反とならない場合には、上記ステップS5に戻って、右折又は左折した場合の進行方向に渋滞があるか否かを判定し、進行方向に渋滞があることをユーザーに知らせる警告処理を行う(ステップS6)。
・・・
【0045】
また、上記ステップS8における判定結果がYESすなわち右折又は左折した場合に交通違反となってしまう場合には、上記制御部5は、右折又は左折した場合に交通違反となることをユーザーに知らせる警告処理を行って(ステップS9)、上記ステップS1に戻って、上記制御部5は、上記カメラ部9によって撮像されるフロントパネル部103の画像に基づいて、画像認識処理を行う。」
(3c)引用文献3には、以下の図が示されている。


(4)引用文献4の記載事項
引用文献4には、次の記載がある。
(4a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両周辺の障害物を検知して通知を行う障害物通知装置に関する。
・・・
【0012】障害物通知装置1は、4つのカメラ10?13、4つの障害物検知部20?23、進路検出部30、検知結果判定部32、警告作成部34を含んで構成されている。カメラ10?13は、それぞれ車両の所定位置に設置されており、車両の周辺を撮影する。具体的には、カメラ10は車両の前方を、カメラ11は車両の後方を、カメラ12は車両の右側後方を、カメラ13は車両の左側後方をそれぞれ撮影し、画像データを出力する。
【0013】障害物検知部20?23は、それぞれに対応するカメラ10?13から出力される画像データに対して所定の画像処理を行い、車両周辺の物体の種類、位置、速度などの情報を抽出し、障害物となる物体の存在を検知する。具体的には、障害物検知部20は、カメラ10から出力される画像データに基づいて車両前方の障害物の存在を検知し、障害物検知部21は、カメラ11から出力される画像データに基づいて車両後方の障害物の存在を検知する。同様に、障害物検知部22は、カメラ12から出力される画像データに基づいて車両右側後方の障害物の存在を検知し、障害物検知部23は、カメラ13から出力される画像データに基づいて車両左側後方の障害物の存在を検知する。
【0014】進路検出部30は、車両の進路を検出する。具体的には、進路検出部30は、車両に搭載されている制御用マイコン等(図示せず)から車両のウインカーレバーの操作状態を示すウインカー信号を取得し、これに基づいて車両の進路の変更状態を検出する。また進路検出部30は、ナビゲーション装置2において経路誘導処理が行われている場合には、誘導経路上における交差点などに車両が接近したか否か、接近している場合にはその交差点等において予定されている進路に関する情報をナビゲーション装置2から取得し、この情報に基づいて進路を検出する。
【0015】検知結果判定部32は、進路検出部30から出力される検出結果に基づいて車両の進路を判定し、車両の進路に応じて、障害物検知部20?23による検知結果のいずれかを用いて障害物の有無を判定し、障害物が存在する場合には、その旨を警告作成部34に通知する。
【0016】例えば、検知結果判定部32は、左折時や左側車線への車線変更時など車両の進路が「左方向」である場合には、障害物検知部23の検知結果に基づいて、車両の左側後方に障害物が存在するか否かを判定する。同様に検知結果判定部32は、右折時や右側車線への車線変更時など車両の進路が「右方向」である場合には、障害物検知部22の検知結果に基づいて、車両の右側後方に障害物が存在するか否かを判定する。
【0017】また、検知結果判定部32は、車両の進路が右折または左折ではない場合、すなわち、車両の進路が「前方向」あるいは「後方向」である場合には、障害物検知部20および21の各検知結果に基づいて、車両の前方や後方に障害物が存在するか否かを判定する。
【0018】警告作成部34は、検知結果判定部32から所定の通知が出力された場合に、障害物の存在を運転者に対して通知する警告画像を表示するための画像データや、警告音声を出力するための音声データを作成し、ナビゲーション装置2内のナビゲーションコントローラ50に向けて出力する。
【0019】警告作成部34により作成された画像データおよび音声データは、ナビゲーション装置2に送られる。画像データは、ナビゲーションコントローラ50を介してディスプレイ装置58に出力され、ディスプレイ装置58の画面上に所定の警告画像が表示される。また音声データは、ナビゲーションコントローラ50を介してオーディオ部60に出力され、オーディオ部60から所定の警告音声が出力される。このように、本実施形態の障害物通知装置1は、ナビゲーション装置2に備わったディスプレイ装置58およびオーディオ部60を利用して警告画像の表示と警告音声の出力を行うことにより、障害物の存在を運転者に対して通知している。
(4b)引用文献1には、以下の図が示されている。


(5)引用文献5の記載事項
引用文献5には、次の記載がある。
(5a)「【0001】
本発明は、自車両の周辺環境を認識してドライバに対する運転支援を行う車両の運転支援装置に関する。
・・・
【0012】
本実施の形態においては、図1に示すように、運転支援装置1は、主要構成として、交差点等の道路環境や対向車線を走行する他車両の状況等といった自車両を取り巻く交通環境を、車載のカメラやレーダ等の自律センサによって認識する交通環境認識部2、車車間通信や路車間通信によって外部からの交通情報を取得する外部通信情報取得部3、自車両の進路を予測し、予測した進路上の自車両の位置を算出する自車位置予測部4、自車両の予測進路と交差する可能性のある障害物の位置、予測進路及び種別を検出する障害物検出部5、検出した障害物と自車両との衝突可能性を判断する衝突判断部6、自車両と障害物との衝突可能性有りと判断されたとき、ドライバが認知し易い最適な警報を、警報装置8を介して表示させる表示制御信号を出力する支援制御部7の各機能部を備えている。
【0013】
尚、支援制御部7は、その他、必要に応じて自動ブレーキや車両の回避制御を指示するための制御信号を、車両の制御装置(図示せず)に出力する。また、各機能部は、単一或いは複数のコンピュータユニットで構成され、車内ネットワークを形成する通信バスを介して互いにデータを交換可能に構成されている。
【0014】
次に、運転支援装置1の各機能部について説明する。先ず、交通環境認識部2は、例えば車載のステレオカメラやミリ波レーダ等の認識センサによる情報、自車両位置の測位情報や地図情報、外部通信情報取得部3で車車間通信・路車間通信によって取得した情報等を処理して、自車両の走行環境に存在する障害物(例えば、ガードレール、縁石、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等)を認識し、これらのデータを障害物検出部5に送信する。
【0015】
自車位置予測部4は、自車両が置かれている現在の交通環境と自車両の現在の状態とに基づいて、自車両の将来の進路を予測する。具体的には、現在の車速が設定車速以上の場合には、ハンドル角と車速とに基づいて進路を予測し、現在の車速が設定車速より低い場合、左右のウィンカ(方向指示器)の点滅状態や変速機のレンジ位置に応じて、地図情報等から進路を予測する。この予測進路は、所定の時間刻み毎に自車両の予測位置を算出し、この予測位置を直線で結んだ経路で近似する。
【0016】
障害物検出部5は、障害物の位置と予測進路を算出する機能と障害物の種別を検出する機能とを有しており、自車両の予測進路と交差する可能性のある移動体(他の車両、2輪車、歩行者等)、或いは自車両の進路上に存在する固定建造物や駐車車両等の静止物体を、自車進路と交差する可能性のある障害物として、その位置、予測進路及び種別を検出して衝突判断部6に送信する。この場合、障害物が移動体である場合には、その移動体が現在の速度と現在の進行方向を維持して走行すると仮定し、現在の位置から所定の時間刻み毎に予測位置を算出し、各時刻毎の予測位置を結んだ経路を予測進路とする。また、障害物が道路上の静止物体である場合には、その静止物体の検出位置を保持する。
【0017】
衝突判断部6は、自車位置予測部4及び障害物検出部5からの情報に基づいて、自車両との衝突可能性を判断し、衝突の可能性があると判断したとき、支援制御部7を介して運転支援制御の実行を指示する。本実施の形態においては、自車両が予測された進路を進み、時刻tにおける自車両の位置と障害物の同時刻tの位置との間の距離が予め設定された範囲内に入るとき、自車両との衝突可能性有りと判断する。
【0018】
支援制御部7は、自車両と障害物との衝突可能性有りと判断されたとき、ドライバが認知し易い最適な警報表示として、少なくとも自車両の予測進路と障害物とが交差する衝突予測位置をドライバに報知するための制御信号を警報装置8に出力する。本実施の形態においては、障害物の現在位置、予測進路、種別、自車両の予測進路、衝突予測位置を警報装置8のディスプレイに表示させ、衝突予測位置には、ドライバの注意を喚起するための視覚記号としてアイコンを表示させる。更に、自車両の現在の状況をドライバが容易に認知可能とするため、現在の自車両周囲の交通環境を併せて表示させる。
(5b)引用文献5には、以下の図が示されている。


2 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、「ナビゲーション表示」に関する技術について開示されているところ(摘示(1b))、その特許請求の範囲の請求項1及び5の記載(摘示(1a))によれば、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両に搭載されており、且つ、ナビゲーション機能を有する車載機器と、
カメラ機能を有する携帯情報端末と、
前記車載機器と前記情報端末とで相互に情報の授受を行える情報通信手段と、を具備し、
前記車載機器のナビゲーション機能によって得られる案内情報を前記情報通信手段によって前記携帯端末に送信し、前記携帯端末でえられるカメラ映像と取得した案内情報を合成し、合成した案内情報を前記情報通信手段によって前記車載機器へ送信し、前記車載機器で合成された案内情報を表示可能に構成する、携帯情報端末を用いたナビゲーションシステムであって、
前記携帯情報端末のカメラ取得画像を用いて、画像認識技術により、前方の車両を認識検知して車間距離を得る、または、信号や道路標識を認識して識別する、または、車線を認識する、または、歩行者やバイクなどを認識する、のいずれかの1つ以上の認識結果が前記車載機器の表示に反映されるように構成される、
携帯情報端末を用いたナビゲーションシステム。」

3 対比・判断
3-1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「車両」は、本願発明1の「車両」に相当する。
イ 引用発明は、「カメラ機能を有する携帯情報端末」を具備し、「前記携帯情報端末のカメラ取得画像を用いて、画像認識技術により、前方の車両を認識検知して車間距離を得る」ものであるから、上記「携帯情報端末」の「カメラ機能」によって、「前方の車両」が撮影されることが技術的に明らかである。
したがって、引用発明の「カメラ機能を有する携帯情報端末」は、本願発明1の「前記車両の前方を撮影する前方撮影カメラ」に相当するものといえる。
ウ 引用発明は、「前記携帯情報端末のカメラ取得画像を用いて、画像認識技術により、前方の車両を認識検知して車間距離を得る、または、信号や道路標識を認識して識別する、または、車線を認識する、または、歩行者やバイクなどを認識する、のいずれかの1つ以上の認識結果が前記車載機器の表示に反映されるように構成される」ものであるところ、引用文献1の「前方車両との距離を計算し、車速に応じて車間距離の近づき具合により危険度を計算して、・・・前記カーナビゲーション装置10の表示部11に警告表示を行う」(摘示(1c)【0032】)等の記載によれば、引用発明の「前方の車両を認識検知して車間距離を得る、または、信号や道路標識を認識して識別する、または、車線を認識する、または、歩行者やバイクなどを認識する、のいずれかの1つ以上の認識結果が前記車載機器の表示に反映されるように構成される」ことは、少なくとも、安全運転支援に係り、車両の運転者に警告を行うことと位置付けられ得るものである。
したがって、引用発明において、上記「認識結果」を「表示に反映さ」せる「車載機器」は、本願発明1の「前記車両の運転者に警告を行う警告発生部」に相当するものといえる。
エ 引用発明の「携帯情報端末を用いたナビゲーションシステム」は、「車両に搭載され」るものであって、上記ウで述べたとおり、安全運転支援に係る装置と位置付けられ得るものであるから、本願発明1の「車両内に設置されて使用される安全運転支援装置」に相当するものといえる。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
「車両内に設置されて使用される安全運転支援装置であって、
前記車両の前方を撮影する前方撮影カメラと、
前記車両の運転者に警告を行う警告発生部と、
を備える、安全運転支援装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明1は、前方撮影カメラに加えて「前記車両の後方を撮影する後方撮影カメラと、前記車両内のメータパネルを撮影するメータパネル撮影カメラと」を備えるとともに、「前記前方撮影カメラにより撮影された映像、前記後方撮影カメラにより撮影された映像および前記メータパネル撮影カメラにより撮影された映像を画像解析して、前記車両の進行方向と車速に基づく状態および前記車両の運転者が注意すべき対象を判別するとともに、前記判別した対象と前記車両の進行方向と車速に基づく状態に基づいて、前記車両と前記判別した対象とが前記車両の進行方向と車速に基づく状態に応じた警告すべき位置関係にあるか否かを判定し、前記車両と前記判別した対象とが警告すべき位置関係であると判定した場合に、前記警告発生部が前記車両の運転者に警告を行うよう前記警告発生部に対して指示を行う演算部と、を備え」て構成されるものであるのに対し、引用発明は、「カメラ機能を有する携帯情報端末」を備えるとともに、「前記携帯情報端末のカメラ取得画像を用いて、画像認識技術により、前方の車両を認識検知して車間距離を得る、または、信号や道路標識を認識して識別する、または、車線を認識する、または、歩行者やバイクなどを認識する、のいずれかの1つ以上の認識結果が前記車載機器の表示に反映されるように構成される」ものである点。

(2)判断
ア 原査定の判断
原査定の判断は、車両の右左折の際の危険を考慮して警告することは、良く知られた周知技術であって(引用文献4の段落【0014】-【0037】、図1-図2、引用文献5の段落【0011】-【0036】、図2を参照)、引用文献1に記載されたカーナビゲーション装置において、引用文献2、3のメータパネルを撮影して車両の状態を判別する技術を適用した際に、車両の右左折をも判別して車両の右左折の際の危険を考慮して警告することは適宜なし得る設計事項にすぎない、というものであるので、以下検討する。
イ 検討
(ア) 引用文献1には、「携帯情報端末20は複数台使用することも考えられる。例えば、図6のように前方に向けて前記携帯情報端末20のカメラ部21を設置することに加えて、別の携帯情報端末40のカメラを後方に向けて設置するものや、左側面に向けて別の携帯情報端末50を設置するものや、別の携帯情報端末60を右側面に向けて設置するものでも構わない。」(摘示(1c)【0034】)と記載されているから、引用発明の「カメラ機能を有する携帯情報端末」は、前方、後方、左側側面及び右側側面等に向けた複数の配設態様が想定されるものである。
したがって、引用文献2、3に記載されたメータパネルを撮影して車両の状態を判別する技術を適用する動機付けは存在する、ということもできるので、その適用について検討する。
(イ)引用文献2には、「カーナビゲーション装置」に関する技術について開示されており(摘示(2a))、具体的には、摘示(2b)のとおり、カーナビゲーション装置1は、カーナビゲーション本体110と、フロントパネル部103を撮影するカメラ部9を具備するものであって、カメラ部9によって撮影された、例えば、フロントパネル部103のスピードメータや、シフトポジションランプや、サイドブレーキ警告ランプの現在の状況を認識し、現在位置や、車両の状況を表示するための補完データとして使用すること(【0012】)、CPU5は、カメラ部9から取り込まれた車両のフロントパネル部の画像を処理し、例えば、スピードメータから現在の車速、シフトポジションランプから現在のシフトポジション、サイドブレーキ警告ランプからサイドブレーキがかかっているか否かなどを検出すること(【0016】)、CPU5は、カメラ部9からの画像を画像認識し、認識された車速が0かどうかを判断し、画像認識された車速が0ではない、つまり、車が動いていると判断された場合は、ステップS3に進むこと(【0033】)、ステップS3において、CPU5は、カメラ部9からの画像を画像認識し、サイドブレーキがひかれているかどうかを判断し、サイドブレーキがひかれている場合、ステップS4に進むこと(【0035】)、ステップS4においては、CPU5は、「サイドブレーキが引かれたまま走行しています。安全のため、車を停車させた後にサイドブレーキを解除してください。」というような警告を発するメッセージを表示部11に表示するようにすること(【0036】)、が記載されている。
(ウ)また、引用文献3には、「カーナビゲーション装置」に関する技術について開示されており(摘示(3a))、具体的には、摘示(3b)のとおり、カーナビゲーション装置1は、カーナビゲーション本体110と、フロントパネル部103を撮影するカメラ部9などから構成され、カーナビゲーション装置1は、カメラ部9によって、例えば、フロントパネル部103の燃料計103Aや方向指示ランプ103F,103Lの現在の状況を撮像して画像認識し、現在位置や車両の状況に応じたナビゲーションを行うこと(【0013】)、カーナビゲーション装置1において、制御部5は、カメラ部9により撮像されたフロントパネル部103の画像について画像認識処理を行い、その認識結果に基づいて、表示部11やオーディオ出力部12を介して警告を発する制御を行うこと(【0022】)、制御部5は、カメラ部9からナビゲーション部2に取り込まれる画像について、画像認識処理により、燃料(ガソリン)の残量の判定を行うこと(【0031】)、制御部5は、カメラ部9によって撮像されるフロントパネル部103の画像に基づいて方向指示画像40について画像認識し、方向指示ランプ103F,103Lの現在の状況を判定することにより、車両の右折又は左折を検出するようになっていること(【0032】)、制御部5は、燃料残量が所定残量よりも少なくなった場合に警告を発する処理を行うこと(【0033】)、自動車101が右折又は左折しようとしている場合には、制御部5は、右折又は左折した場合に道交法に違反する否かをVICS情報と現在位置情報と道路地図情報に基づいて判定すること(【0041】)、右折又は左折した場合に交通違反となってしまう場合には、制御部5は、右折又は左折した場合に交通違反となることをユーザーに知らせる警告処理を行うこと(【0045】)、が記載されている。
(エ)ここで、引用発明は、「カメラ機能を有する携帯情報端末」を備えるとともに、「前記携帯情報端末のカメラ取得画像を用いて、画像認識技術により、前方の車両を認識検知して車間距離を得る、または、信号や道路標識を認識して識別する、または、車線を認識する、または、歩行者やバイクなどを認識する、のいずれかの1つ以上の認識結果が前記車載機器の表示に反映されるように構成される」というものであるから、引用発明に、上記引用文献2に記載された技術事項を適用するならば、上記「カメラ取得画像」として、フロントパネル部のスピードメータや、シフトポジションランプや、サイドブレーキ警告ランプの画像も取得されることとなり、そのような画像を画像認識することで、例えば、「サイドブレーキが引かれたまま走行しています。安全のため、車を停車させた後にサイドブレーキを解除してください。」というような警告をも発する構成が想定される。また、引用発明に、上記引用文献3に記載された技術事項を適用するならば、上記「カメラ取得画像」として、フロントパネル部の燃料計の画像も取得されることとなり、そのような画像を画像認識することで、燃料残量が所定残量よりも少なくなった警告を発する構成が想定され、あるいは、フロントパネル部の方向指示ランプの画像も取得されることとなり、そのような画像を画像認識するとともに、VICS情報、現在位置情報及び道路地図情報をも加味して、右折又は左折した場合に交通違反となることをユーザーに知らせる警告を発する構成が想定される。
しかし、かかる構成は、引用発明の「前方の車両を認識検知して車間距離を得る、または、信号や道路標識を認識して識別する、または、車線を認識する、または、歩行者やバイクなどを認識する」といった認識結果に加え、さらに、フロントパネル部を撮影するカメラ部を設けることによって得られる新たな警告に係る識別結果をも表示に反映されるものにとどまるものであって、上記相違点に係る本願発明1の「前記前方撮影カメラにより撮影された映像、前記後方撮影カメラにより撮影された映像および前記メータパネル撮影カメラにより撮影された映像を画像解析して、前記車両の進行方向と車速に基づく状態および前記車両の運転者が注意すべき対象を判別するとともに、前記判別した対象と前記車両の進行方向と車速に基づく状態に基づいて、前記車両と前記判別した対象とが前記車両の進行方向と車速に基づく状態に応じた警告すべき位置関係にあるか否かを判定し、前記車両と前記判別した対象とが警告すべき位置関係であると判定した場合に、前記警告発生部が前記車両の運転者に警告を行うよう前記警告発生部に対して指示を行う演算部と、を備え」るという構成には至らない。
(オ)また、引用文献4(摘示(4a))には、「障害物通知装置」に関する技術として(【0001】)、障害物通知装置1は、4つのカメラ10?13、4つの障害物検知部20?23、進路検出部30、検知結果判定部32、警告作成部34を含んで構成されており、カメラ10は車両の前方を、カメラ11は車両の後方を、カメラ12は車両の右側後方を、カメラ13は車両の左側後方をそれぞれ撮影し、画像データを出力すること(【0012】)、障害物検知部20?23は、それぞれに対応するカメラ10?13から出力される画像データに対して所定の画像処理を行い、車両周辺の物体の種類、位置、速度などの情報を抽出し、障害物となる物体の存在を検知すること(【0013】)、進路検出部30は、車両の進路を検出するものであって、車両に搭載されている制御用マイコン等から車両のウインカーレバーの操作状態を示すウインカー信号を取得し、これに基づいて車両の進路の変更状態を検出すること(【0014】)、検知結果判定部32は、進路検出部30から出力される検出結果に基づいて車両の進路を判定し、車両の進路に応じて、障害物検知部20?23による検知結果のいずれかを用いて障害物の有無を判定し、障害物が存在する場合には、その旨を警告作成部34に通知すること(【0015】)、警告作成部34は、検知結果判定部32から所定の通知が出力された場合に、障害物の存在を運転者に対して通知する警告画像を表示するための画像データを作成し、ナビゲーション装置2内のナビゲーションコントローラ50に向けて出力すること(【0018】)、警告作成部34により作成された画像データは、ナビゲーション装置2に送られ、ナビゲーションコントローラ50を介してディスプレイ装置58に出力され、ディスプレイ装置58の画面上に所定の警告画像が表示されること(【0019】)、が記載され、
引用文献5(摘示(5a))には、「車両の運転支援装置」に関する技術として(【0001】)、運転支援装置1は、交差点等の道路環境や対向車線を走行する他車両の状況等といった自車両を取り巻く交通環境を、車載のカメラやレーダ等の自律センサによって認識する交通環境認識部2、車車間通信や路車間通信によって外部からの交通情報を取得する外部通信情報取得部3、自車両の進路を予測し、予測した進路上の自車両の位置を算出する自車位置予測部4、自車両の予測進路と交差する可能性のある障害物の位置、予測進路及び種別を検出する障害物検出部5、検出した障害物と自車両との衝突可能性を判断する衝突判断部6、自車両と障害物との衝突可能性有りと判断されたとき、ドライバが認知し易い最適な警報を、警報装置8を介して表示させる表示制御信号を出力する支援制御部7の各機能部を備えていること(【0012】)、交通環境認識部2は、例えば車載のステレオカメラやミリ波レーダ等の認識センサによる情報、自車両位置の測位情報や地図情報、外部通信情報取得部3で車車間通信・路車間通信によって取得した情報等を処理して、自車両の走行環境に存在する障害物を認識し、これらのデータを障害物検出部5に送信すること(【0014】)、自車位置予測部4は、自車両が置かれている現在の交通環境と自車両の現在の状態とに基づいて、自車両の将来の進路を予測し、現在の車速が設定車速以上の場合には、ハンドル角と車速とに基づいて進路を予測し、現在の車速が設定車速より低い場合、左右のウィンカ(方向指示器)の点滅状態や変速機のレンジ位置に応じて、地図情報等から進路を予測すること(【0015】)、障害物検出部5は、障害物の位置と予測進路を算出する機能と障害物の種別を検出する機能とを有しており、自車両の予測進路と交差する可能性のある移動体、或いは自車両の進路上に存在する固定建造物や駐車車両等の静止物体を、自車進路と交差する可能性のある障害物として、その位置、予測進路及び種別を検出して衝突判断部6に送信すること(【0016】)、衝突判断部6は、自車位置予測部4及び障害物検出部5からの情報に基づいて、自車両との衝突可能性を判断し、衝突の可能性があると判断したとき、支援制御部7を介して運転支援制御の実行を指示すること(【0017】)、支援制御部7は、自車両と障害物との衝突可能性有りと判断されたとき、ドライバが認知し易い最適な警報表示として、少なくとも自車両の予測進路と障害物とが交差する衝突予測位置をドライバに報知するための制御信号を警報装置8に出力すること(【0018】)、が記載されているが、それら引用文献4及び5に記載された技術事項は、そもそもメータパネル撮影カメラを具備するものではなく、さらに、前方撮影カメラ、後方撮影カメラ及びメータパネル撮影カメラにより撮影された映像を画像解析して、車両の進行方向と車速に基づく状態および車両の運転者が注意すべき対象を判別するものでもないから、引用文献1に、上記引用文献2、3に記載された技術を適用した際に、引用文献4及び5に記載された技術事項を考慮しても、上記相違点に係る本願発明1の「前記前方撮影カメラにより撮影された映像、前記後方撮影カメラにより撮影された映像および前記メータパネル撮影カメラにより撮影された映像を画像解析して、前記車両の進行方向と車速に基づく状態および前記車両の運転者が注意すべき対象を判別するとともに、前記判別した対象と前記車両の進行方向と車速に基づく状態に基づいて、前記車両と前記判別した対象とが前記車両の進行方向と車速に基づく状態に応じた警告すべき位置関係にあるか否かを判定し、前記車両と前記判別した対象とが警告すべき位置関係であると判定した場合に、前記警告発生部が前記車両の運転者に警告を行うよう前記警告発生部に対して指示を行う演算部と、を備え」るという構成には至らない。
(カ)したがって、上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献2?5に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得るものということはできない。
よって、本願発明1は、引用文献1?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3-2 本願発明2及び3について
本願発明2は、「前方撮影カメラにより撮影された前記車両の前方の映像と、後方撮影カメラにより撮影された前記車両の後方の映像と、メータパネル撮影カメラにより撮影された前記車両内のメータパネルの映像を画像解析して、前記車両の進行方向と車速に基づく状態および前記車両の運転者が注意すべき対象を判別するとともに、前記判別した対象と前記車両の進行方向と車速に基づく状態に基づいて、前記車両と前記判別した対象とが前記車両の進行方向と車速に基づく状態に応じた警告すべき位置関係にあるか否かを判定し、前記車両と前記判別した対象とが警告すべき位置関係であると判定した場合に、前記警告発生部が前記車両の運転者に警告を行うよう前記警告発生部に対して指示を行う演算部」との構成を備え、また、本願発明3は、「演算部が、前方撮影カメラにより撮影された前記車両の前方の映像と、後方撮影カメラにより撮影された前記車両の後方の映像と、メータパネル撮影カメラにより撮影された前記車両内のメータパネルの映像を画像解析して、前記車両の進行方向と車速に基づく状態および前記車両の運転者が注意すべき対象を判別するとともに、前記判別した対象と前記車両の進行方向と車速に基づく状態に基づいて、前記車両と前記判別した対象とが前記車両の進行方向と車速に基づく状態に応じた警告すべき位置関係にあるか否かを判定し、前記車両と前記判別した対象とが警告すべき位置関係であると判定した場合に、前記警告発生部が前記車両の運転者に警告を行うよう前記警告発生部に対して指示を行うステップと、を備え」て構成されるものであるところ、それらいずれの構成も、上記相違点に係る本願発明1の構成と同様に、「前方撮影カメラにより撮影された」「映像」、「後方撮影カメラにより撮影された」「映像」及び「メータパネル撮影カメラにより撮影された」「映像」を「画像解析して」、「前記車両の進行方向と車速に基づく状態および前記車両の運転者が注意すべき対象を判別するとともに、前記判別した対象と前記車両の進行方向と車速に基づく状態に基づいて、前記車両と前記判別した対象とが前記車両の進行方向と車速に基づく状態に応じた警告すべき位置関係にあるか否かを判定し、前記車両と前記判別した対象とが警告すべき位置関係であると判定した場合に、前記警告発生部が前記車両の運転者に警告を行うよう前記警告発生部に対して指示を行う」という構成を具備するものである。
そして、かかる構成は、上記「3-1(2)」で述べたとおり、引用発明及び引用文献2?5に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得るものということはできないから、本願発明2及び3も本願発明1と同様に、引用文献1?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-20 
出願番号 特願2013-242073(P2013-242073)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 飯島 尚郎  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 仁木 学
氏原 康宏
発明の名称 安全運転支援装置および安全運転支援方法  
代理人 辻岡 将昭  
代理人 中島 成  
代理人 田澤 英昭  
代理人 坂元 辰哉  
代理人 井上 和真  
代理人 濱田 初音  

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