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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1343322
審判番号 不服2017-18340  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-08 
確定日 2018-09-04 
事件の表示 特願2015-247729「複製されたデータインスタンスのためのフェイルオーバーおよび復旧」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月19日出願公開、特開2016- 85753、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2010年10月26日に国際出願された特願2012-536965号(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年10月26日,米国)の一部を平成26年4月17日に新たな特許出願とした特願2014-85421号の一部を平成27年12月18日に新たな特許出願としたものであって,平成29年2月16日付けで拒絶の理由が通知され,同年7月20日に手続補正書が提出され,同年8月2日付けで拒絶査定(謄本送達日同年8月8日)がなされ,これに対して同年12月8日に審判請求がなされると共に手続補正がなされ,同年12月28日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,平成30年3月16日に上申書が提出されたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成29年8月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-17
・引用文献等 1-3

<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2005/0114410号明細書
2.特開2007-115007号公報
3.特開2004-272884号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)


第3 本願発明

本願請求項1乃至16に係る発明(以下「本願発明1」乃至「本願発明16」という。)は,特許請求の範囲の請求項1乃至16に記載された,次のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
複製データベースを管理するコンピュータ実装方法であって、
実行可能な命令を用いて構成される1つ以上のコンピュータシステムの制御下で、
一次インスタンス複製および二次インスタンス複製の初期のペアリングに基づいて、世代識別子を取得することであって、前記一次インスタンス複製および前記二次インスタンス複製はデータ環境に関連付けられ、前記世代識別子は、前記一次インスタンス複製に記憶された前記複製データベースの複製データの現在の世代、および前記二次インスタンス複製に記憶された前記複製データベースの複製データの現在の世代を識別していることと、
ブロックレベル複製機構を使用して、前記一次インスタンス複製と前記二次インスタンス複製との間のデータを同期することと、
制御環境の監視構成要素に状態情報を定期的に提供することであって、前記制御環境は、前記データ環境から分離されていることと、
前記一次インスタンス複製が前記二次インスタンス複製と通信することができないことに応答して、前記監視構成要素に故障情報を提供することであって、前記故障情報は、少なくとも前記世代識別子を含むことと、を含み、
前記一次インスタンス複製が前記二次インスタンス複製と通信することができない場合において、前記一次インスタンス複製が、前記監視構成要素と通信することができると判定された場合、
前記一次インスタンス複製に記憶された複製データの前記現在の世代を識別する第2の世代識別子を取得することと、
前記一次インスタンス複製を介して、1つ以上の入力/出力(I/O)操作を実行することと
を含むことを特徴とするコンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記一次インスタンス複製と前記二次インスタンス複製を再ペアリングすることと、
前記一次インスタンス複製を介して実行された前記1つ以上のI/O操作に基づいて、前記一次インスタンス複製と前記二次インスタンス複製との間の前記データを同期することであって、前記1つ以上のI/O操作は、前記第2の世代識別子を生成した後に実行されることと、
前記一次インスタンス複製に記憶された複製データの前記現在の世代および前記二次インスタンス複製に記憶された複製データの前記現在の世代を識別する第3の世代識別子を取得することと
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記一次インスタンス複製を新しい二次インスタンス複製とペアリングすることと、
前記一次インスタンス複製と前記新しい二次インスタンス複製との間のデータを同期することと、
前記一次インスタンス複製に記憶された複製データの前記現在の世代および前記新しい二次インスタンス複製に記憶された複製データの現在の世代を識別する第3の世代識別子を生成することと
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記一次インスタンス複製が前記二次インスタンス複製と通信することができない場合において、前記一次インスタンス複製が前記監視構成要素と通信することができないと判定された場合、
前記二次インスタンス複製の前記世代識別子が前記一次インスタンス複製の最新の既知の世代識別子に対応するか検証することと、
前記二次インスタンス複製を新しい一次インスタンス複製に昇格させることと、
前記新しい一次インスタンス複製を新しい二次インスタンス複製とペアリングすることと、
前記新しい一次インスタンス複製と前記新しい二次インスタンス複製との間のデータを同期することと、
前記新しい一次インスタンス複製に記憶された複製データの現在の世代および前記新しい二次インスタンス複製に記憶された複製データの現在の世代を識別する第2の世代識別子を取得することと
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
複製データベースを管理するシステムであって、
プロセッサと、
メモリデバイスであって、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
一次インスタンス複製および二次インスタンス複製の初期のペアリングに基づいて、前記一次インスタンス複製に記憶された複製データの現在の世代、および前記二次インスタンス複製に記憶された複製データの現在の世代を識別する世代識別子を取得することと、
前記複製データベースの前記一次インスタンス複製と前記二次インスタンス複製との間のデータを同期することであって、前記一次インスタンス複製および前記二次インスタンス複製はデータ環境に関連付けられていることと、
制御環境の監視構成要素に状態情報を提供することであって、前記制御環境は、前記データ環境から分離されていることと、
前記一次インスタンス複製が前記二次インスタンス複製と通信することができないことに応答して、前記監視構成要素に故障情報を提供することであって、前記故障情報は少なくとも前記世代識別子を含むことと、を含み、
前記一次インスタンス複製が前記二次インスタンス複製と通信することができない場合において、前記一次インスタンス複製が、前記監視構成要素と通信することができると判定された場合、
前記一次インスタンス複製に記憶された複製データの前記現在の世代を識別する第2の世代識別子を取得することと、
前記一次インスタンス複製を介して、1つ以上の入力/出力(I/O)操作を実行することと
を行わせる命令を含む、メモリデバイスと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項6】
前記命令は実行されると、前記プロセッサに、
前記一次インスタンス複製と前記二次インスタンス複製を再ペアリングすることと、
前記一次インスタンス複製を介して実行された前記1つ以上のI/O操作に基づいて、前記一次インスタンス複製と前記二次インスタンス複製との間の前記データを同期することであって、前記1つ以上のI/O操作は、前記第2の世代識別子を生成した後に実行されることと、
前記一次インスタンス複製および前記二次インスタンス複製の第3の世代識別子を取得することと
をさらに行なわせることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記命令は実行されると、前記プロセッサに、
前記一次インスタンス複製を新しい二次インスタンス複製とペアリングすることと、
前記一次インスタンス複製と前記新しい二次インスタンス複製との間のデータを同期することと、
前記一次インスタンス複製に記憶された複製データの前記現在の世代および前記新しい二次インスタンス複製に記憶された複製データの現在の世代を識別する第3の世代識別子を取得することと
をさらに行なわせることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記命令は実行されると、前記プロセッサに、
前記一次インスタンス複製が前記二次インスタンス複製と通信することができない場合において、前記一次インスタンス複製が前記監視構成要素と通信することができないと判定された場合、
前記二次インスタンス複製の前記世代識別子が、前記一次インスタンス複製の最新の既知の世代識別子に対応するか検証することと、
前記二次インスタンス複製を新しい一次インスタンス複製に昇格させることと、
前記新しい一次インスタンス複製を新しい二次インスタンス複製とペアリングすることと、
前記新しい一次インスタンス複製と前記新しい二次インスタンス複製との間のデータを同期することと、
前記新しい一次インスタンス複製に記憶された複製データの現在の世代および前記新しい二次インスタンス複製に記憶された複製データの現在の世代を識別する第2の世代識別子を取得することと
をさらに行なわせることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記世代識別子は、汎用一意識別子を含むことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
複製データベースを管理するための命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令は、プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記複製データベースの一次インスタンス複製および二次インスタンス複製の初期のペアリングに基づいて、前記一次インスタンス複製に記憶された複製データの現在の世代および前記二次インスタンス複製に記憶された複製データの現在の世代を識別する世代識別子を取得することであって、前記一次インスタンス複製および前記二次インスタンス複製はデータ環境に関連付けられていることと、
前記一次インスタンス複製と前記二次インスタンス複製との間のデータを同期することと、
制御環境の監視構成要素に状態情報を提供することであって、前記制御環境は、前記データ環境から分離されていることと、
前記一次インスタンス複製が前記二次インスタンス複製と通信することができないことに応答して、前記監視構成要素に故障情報を提供することであって、前記故障情報は、少なくとも前記世代識別子を含むことと、を行わせ、
前記一次インスタンス複製が前記二次インスタンス複製と通信することができない場合において、前記一次インスタンス複製が前記監視構成要素と通信することができないと判定された場合、
前記二次インスタンス複製の前記世代識別子が、前記一次インスタンス複製の最新の既知の世代識別子に対応するか検証することと、
前記二次インスタンス複製を新しい一次インスタンス複製に昇格させることと、
前記新しい一次インスタンス複製を新しい二次インスタンス複製とペアリングすることと、
前記新しい一次インスタンス複製と前記新しい二次インスタンス複製との間のデータを同期することと、
前記新しい一次インスタンス複製に記憶された複製データの現在の世代および前記新しい二次インスタンス複製に記憶された複製データの現在の世代を識別する第2の世代識別子を取得することと
を行わせることを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項11】
前記命令は実行されると、前記プロセッサに、
前記一次インスタンス複製が前記二次インスタンス複製と通信することができない場合において、前記一次インスタンス複製が前記監視構成要素と通信することができると判定された場合、
前記一次インスタンス複製に記憶された複製データの前記現在の世代を識別する第2の世代識別子を取得することと、
前記一次インスタンス複製を介して1つ以上のI/O操作を実行することと
をさらに行なわせることを特徴とする請求項10に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項12】
前記命令は実行されると、前記プロセッサに、
前記一次インスタンス複製と前記二次インスタンス複製を再ペアリングすることと、
前記一次インスタンス複製を介して実行された前記1つ以上のI/O操作に基づいて、前記一次インスタンス複製と前記二次インスタンス複製との間の前記データを同期することであって、前記1つ以上のI/O操作は、前記第2の世代識別子を生成した後に実行されることと、
前記一次インスタンス複製に記憶された複製データの前記現在の世代および前記二次インスタンス複製に記憶された複製データの前記現在の世代を識別する第3の世代識別子を取得することと
をさらに行なわせることを特徴とする請求項11に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
前記命令は実行されると、前記プロセッサに、
前記一次インスタンス複製を新しい二次インスタンス複製とペアリングすることと、
前記一次インスタンス複製と前記新しい二次インスタンス複製との間のデータを同期することと、
前記一次インスタンス複製に記憶された前記複製データの現在の世代および前記新しい二次インスタンス複製に記憶された複製データの現在の世代を識別する第3の世代識別子を取得することと
をさらに行なわせることを特徴とする請求項11に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
前記世代識別子は、汎用一意識別子を含むことを特徴とする請求項10に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
前記命令は実行されると、前記プロセッサに、
ブロックレベル複製機構を使用することに少なくとも部分的に基づき、前記一次インスタンス複製と前記二次インスタンス複製との間のデータを同期することを行なわせることを特徴とする請求項10に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
前記命令は実行されると、前記プロセッサに、
ブロックレベル複製機構を使用することに少なくとも部分的に基づき、前記一次インスタンス複製と前記二次インスタンス複製との間のデータを同期することを行なわせることを特徴とする請求項5に記載のシステム。」


第4 引用例

1 引用例1に記載された事項
原審における平成29年2月16日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という。)において引用した,本願の原出願(特願2014-85421)の第一国出願前に既に公知である,米国特許出願公開第2005/0114410号明細書(2005年5月26日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A 「[0001]This invention relates to systems for storing data, and in particular to volume replication in storage area networks. Large storage systems are now well known in which primary and secondary storage systems are provided for a data center or other similar need. The primary and secondary volumes are sometimes also referred to as production and replica volumes, respectively. In such storage systems the primary and secondary storage systems (or subsystems) are linked, for example, using a communications link such as an optical fiber, the Internet, or other well known data communication pathway. The purpose of linking such systems is to assure that an extra copy of data is available at a remote location. This assures that a natural disaster, a failure of the data link, a failure of one or the other storage systems, or other event, does not preclude the system from having useful data. 」
(当審仮訳:本発明は,データを記憶するためのシステムに関し,特に,ストレージ・エリア・ネットワークのボリュームの複製に関する。データセンタまたは他の同様の必要性のために設けられた,一次記憶システムおよび二次記憶システムからなる大容量記憶システムは現在よく知られている。一次および二次ボリュームは,製品とレプリカボリュームとそれぞれ呼ばれることがある。このようなストレージシステムでは,一次及び二次記憶システム(またはサブシステム)は,例えば,光ファイバ,インターネット,または他の公知のデータ通信経路などの通信リンクを使用して連結されている。このようなシステムの目的は,データの別のコピーがリモート位置で使用可能であることを保証することである。これは,データリンクの故障,または他のストレージシステムの故障,あるいはその他の事象,自然災害などが,有用なデータからシステムを排除しないことを保証する。)

B 「[0006]In another approach for obtaining the point-in-time volume image, if the volume replication function uses log-based volume management, the memorized log sequence number (or its time stamp) at the time of suspension can be used. Thus, the base volume image together with all the logs until that sequence number will enable recovery of the volume image at the time point of the suspension.」
(当審仮訳:ポイント・イン・タイムのボリュームイメージを得るための別のアプローチでは,ボリュームレプリケーション機能は,ログ管理を使用する場合,中断時に記憶されているログシーケンス番号(またはタイムスタンプ)を使用することができる。このため,そのシーケンス番号までの全てのログとベースボリュームイメージを一緒にしたものは,中断時点のボリュームイメージの回復を可能にする。)

C 「[0024]FIG. 1 is a diagram illustrating an overall configuration for resynchronization of suspended paired volumes. Shown in FIG. 1 are a primary volume 10 and a secondary volume 20 coupled by a link 30. Volumes 10 and 20 will typically be hard disk drives or storage systems containing numerous hard disk drives, while link 30 is provided by any conventional data transfer path, e.g. FibreChannel, the internet, etc. For typical remote replication functionality, link 30 will typically be a link between the two storage systems such as FibreChannel, ESCON, Ethernet, ATM, Sonet, etc.」
(当審仮訳:図1はペアボリュームの再同期化のための全体的な構成を示す図である。図1には,リンク30によって結合されたプライマリボリューム10及びセカンダリボリューム20が示される。ボリューム10及び20は,典型的には,ハードディスクドライブや多数のハードディスクドライブを含む記憶システムであり,リンク30は,任意の従来のデータ転送路,例えば,ファイバチャネル,インターネット等によって提供される。典型的なリモートレプリケーション機能では,リンク30は,典型的には,ファイバチャネル,ESCON,イーサネット,ATM,SONET等のような,2つのストレージシステムとの間のリンクである。)

D 「[0025]Volumes 10 and 20 are typically configured as primary (P) and secondary (S) volumes, where the primary volume is the production volume and the secondary volume is a paired volume for replication purposes. While only one secondary volume is illustrated in FIG. 1 , any desired number may also be implemented.」
(当審仮訳:ボリューム10及び20は,典型的には,プライマリ(P)及びセカンダリ(S)ボリュームとして構成され,プライマリボリュームは,プロダクションボリュームであり,セカンダリボリュームは複製のためのペアボリュームである。図1には,ただ1つのセカンダリボリュームが描かれているが,任意の所望の数で実現してよい。)

E 「[0026]As also shown in FIG. 1 , at the time of the suspension as caused by a planned or unplanned failure of the link 30 , a copy is made of the primary volume image. Updates to the data stored on the primary volume after that time are also stored. These same events occur at the secondary volume 20. 」
(当審仮訳:また,図1に示されるように,リンク30の計画的又は計画外の故障によって引き起こされる中断した時点で,プライマリボリュームイメージの複製が作成される。その時以降のプライマリボリュームに記録されたデータの更新も記録される。これらの同じイベントはセカンダリボリューム20でも発生する。)

F 「[0037]FIG. 8 is a diagram which illustrates use of the point-in-time image with a log-based volume management system. In these systems, data is stored in a separate location and metadata is stored on the point-in-time volumes as a table of sequential numbers and pointers of the data storage area where the data is stored for each write operation 77 . For this operation, the sequence number for the last successful write (pre-suspension) to the volume is retained, then the base volume image plus all of the logs from the point-in-time of the base volume image to the retained sequence number are stored. The area for storage of the data can be selected from the pool of unused capacity, provided by a separate volume, or otherwise made available. Of course, once the base volume image is saved and the logs reflecting changes since that time are also saved, images made prior to that base volume image may be discarded or archived. Generally, every write operation to the volume is numbered sequentially with the associated data stored in the data storage area. A table maintains the relationship of the sequence number and the pointer of the location on the data storage area where the data is stored.」
(当審仮訳:図8は,ログベースボリューム管理システムとポイント・イン・タイム・イメージの使用を示す図である。これらのシステムでは,データは別々の場所に格納され,メタデータは,書き込み動作77ごとにデータが格納されるデータ格納領域の連続番号及びポインターのテーブルとしてポイント・イン・タイム・ボリュームに格納される。この動作のために,最後の成功した書き込み(中断前の)のシーケンス番号が保持され,そして,ベースボリュームイメージと,ベースボリュームイメージのある時点から保持された連続番号までの全てのログは,格納される。データ格納領域は,未使用容量のプールや分割ボリュームやその他から使用可能となる。もちろん,一旦ベースボリュームイメージがセーブされ,その時からの変更を反映しているログもセーブされると,ベースボリュームイメージより前に生成されたイメージは削除又はアーカイブされ得る。一般的に,ボリュームへの全ての書き込み動作は,データ格納領域に格納されている付随情報を使用して順次ナンバリングされる。テーブルは,データが格納されるデータ記憶領域上の位置のポインタとシーケンス番号の関係を保持する。)

G 「[0038]FIG. 9 is a flowchart illustrating log-based volume management for point-in-time image retention. As shown there, at step 701 the sequence number of the log of the last write IO operation to the volume is memorized. Then, as shown by step 702 the base volume image and the logs from the point-in-time of the base volume image are maintained until that sequence number. Then at step 703 a determination is made as to whether the store area for the log data is full. If it is not full, as shown by step 710 , the system continues to log the new write data. On the other hand, if the store area is full, three examples are shown. 」
(当審仮訳:図9は,ポイント・イン・タイム・イメージを保持する,ログベースのボリューム管理を示すフローチャートである。そこに示されるように,ステップ701で,ボリュームへの最後の書き込みI/Oオペレーションのログシーケンス番号が,記憶される。次に,ステップ702に示すように,ベースボリュームと,その連続番号からベースボリュームイメージが保持された時点までのログが保持される。次いで,ステップ703において,ログデータのための記憶領域が満杯であるか否かを判定する。満杯でない場合には,ステップ710に示すように,システムは,新しい書き込みデータを記録し続ける。一方,記憶領域が一杯になると,3つの例が示される。)

上記記載事項A乃至Gから,引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「データを記憶するためのシステムであって,
一次および二次ボリュームは,製品とレプリカボリュームとそれぞれ呼ばれることがあり,
データリンクの故障,または他のストレージシステムの故障,あるいはその他の事象,自然災害などに備えるものであり,
ポイント・イン・タイムのボリュームイメージを得るため,ボリュームレプリケーション機能により,ログ管理を使用する場合,中断時に記憶されているログシーケンス番号を使用し,そのシーケンス番号までの全てのログとベースボリュームイメージを一緒にしたものは,中断時点のボリュームイメージの回復を可能にするものであって,
リンク30によって結合されたプライマリボリューム10及びセカンダリボリューム20を有し,
前記ボリューム10及び20は,プライマリ(P)及びセカンダリ(S)ボリュームとして構成され,プライマリボリュームは,プロダクションボリュームであり,セカンダリボリュームは複製のためのペアボリュームであり,
リンクの中断が生じると,リンクが中断された時点での運用ボリュームのイメージを維持し,それ以降,プライマリとセカンダリの両ボリュームに対して行われた更新は,追跡され,記録され,
データは別々の場所に格納され,メタデータは,書き込み動作ごとにデータが格納されるデータ格納領域の連続番号及びポインターのテーブルとしてポイント・イン・タイム・ボリュームに格納され,
この動作のために,最後の成功した書き込み(中断前の)のシーケンス番号が保持され,そして,ベースボリュームイメージと,ベースボリュームイメージのある時点から保持された連続番号までの全てのログは,格納され,
一般的に,ボリュームへの全ての書き込み動作は,データ格納領域に格納されている付随情報を使用して順次ナンバリングされ,
ボリュームへの最後の書き込みI/Oオペレーションのログシーケンス番号が,記憶され,
ベースボリュームと,その連続番号からベースボリュームイメージが保持された時点までのログが保持される
データを記憶するためのシステム。」

2 引用例2に記載された事項
原審拒絶理由において引用した,本願の原出願(特願2014-85421)の第一国出願前に既に公知である,特開2007-115007号公報(平成19年5月10日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

H 「【0028】
図3は、トランザクションログテーブル120の構成を示す。トランザクションログテーブル120の各エントリは、5つのフィールドから構成される、すなわち、差分スナップショットを転送(または受信)した時刻を格納する転送時刻201、送信または受信の通信方向を示す種別202、スナップショットのボリュームを識別するボリューム名203、スナップショットを作成した日時を格納するスナップショット時刻204、送信先または受信先のアドレスを格納する通信先アドレス205、である。たとえば1番目のエントリは、09:02に、ボリュームVol1の09:00のスナップショットを10.0.0.2(副サイト2のIPアドレス)の通信先に送信完了した、ことを表し、2番目のエントリは、09:05に、ボリュームVol2の09:00のスナップショットを10.0.0.2の通信先から受信完了したことを表す。」

I 「【0040】
図10は、時刻9:00におけるリモートコピーの準備(全コピー処理)の流れを示す。2つのストレージ装置101、1011をネットワーク3で接続し、コピー元のストレージ装置を正サイト1のストレージ装置101とし、コピー先のストレージ装置を副サイト2のストレージ装置1011とする。正サイト1ではボリューム804(Vol1)をクライアント803から使用している。つまり、ボリューム804が運用ボリュームとなる。正サイト1のボリューム804の内容を副サイト2のボリューム805(Vol1)にこれから説明する3つの手順でリモートコピーする。なお、ボリューム804、805は、図1、図2で示したボリューム105であり、以下では手順の説明のため符号を変更する。なお、作成したスナップショットは各ストレージ装置101、1011の所定のボリュームに格納する。
【0041】
まず、正サイト管理者が管理端末106から、ボリューム804のスナップショット806を作成を指示し、ストレージ装置101のスナップショット作成ルーチン118がボリューム804(Vol1)の時刻9:00のスナップショット806を作成する。つぎに、正サイト管理者は管理端末106からストレージ装置101に全コピーを指令する。ストレージ装置101のプロセッサ装置103は全コピールーチン121を起動して、スナップショット806の内容をすべて正サイト1から副サイト2へ転送し、副サイト2のボリューム805に書き込む。最後に、副サイト管理者が管理端末106からストレージ装置1011にスナップショットの作成を指令し、副サイト2のストレージ装置1011ではスナップショット作成ルーチン118が起動して、書き込んだボリューム805のスナップショット807を作成する。この手順が完了した時点で、2つの正副サイトは時刻9:00における共通のスナップショット806、807を持ち、副サイト2のボリューム805の内容は9:00時点相当となり、正サイトのボリューム804に同期する。
【0042】
最初に上記のような全コピーを行っておくことで、正副サイト共通のスナップショット806、807が得られるため、以降ではこの共通スナップショット806、807を利用した差分コピーによるリモートコピー運用が可能となる。そして、正副サイトのプロセッサ装置103は、送受信の結果をそれぞれのトランザクションログテーブル120に書き込んでおく。なお、ここでは、正サイト1のストレージ装置101のIPアドレスが10.0.0.1であり、副サイト2のストレージ装置1011のIPアドレスが10.0.0.2とする。
【0043】
図11は、時刻10:00におけるリモートコピーの運用の流れを示す。正サイト1では1時間毎にスナップショット作成ルーチン118とスナップショット転送ルーチン113が起動されリモートコピー処理が周期的に実行される。このリモートコピー処理は、次に示す2つの手順で、正サイト1のボリューム804の内容(スナップショット)の差分データを副サイト2のボリューム805にコピーする。このコピーを差分コピーとする。このコピーでは、スナップショットの差分データにボリューム名を付して送信する。
【0044】
まず、正サイト1において、スナップショット作成ルーチン118が時刻10:00のボリューム804のスナップショット808を作成する。つぎに、正サイト1において、スナップショット転送ルーチン113を起動する。このスナップショット転送ルーチン113の起動は、例えば、スナップショット作成ルーチン118のスナップショット作成完了を契機とすることができる。
【0045】
スナップショット転送ルーチン113は、トランザクションログテーブル120を参照し、差分転送のベースとなる直前のスナップショット806を特定し、ベースのスナップショット806と指定されたスナップショット808との差分データを生成し、副サイト2にこの差分データを送信する。副サイト2のストレージ装置1011は受信した差分データをボリューム805に書き込んで、ボリューム805の内容を正サイト1のボリューム804の時刻10:00の時点に同期させる。次に、副サイト2のストレージ装置1011は、ボリューム805のスナップショット809を作成する。また、副サイト2のストレージ装置1011は、副サイト2のトランザクションログテーブル120に新たなエントリを追加して受信の履歴を格納する。
【0046】
この手順が完了した時点では、ボリューム805の内容は10:00時点相当になり、2つのサイトの共通のスナップショットは時刻9:00と時刻10:00の2組になる。このようにして共通スナップショットを起点にすることで差分コピーが行える。差分コピーが行えなくなるため、共通スナップショットが削除できないが、定期的に差分コピーを行うことで、共通スナップショットは次々に新しく更新されていき、古い共通スナップショットを削除して不要なボリューム領域を解放することができる。ここで注意すべき点は、差分コピー先つまりここでは副サイト2において、ボリューム805と共通スナップショット809、が一致していなければならない、ということである。たとえば、ここでボリューム805に副サイト2で独自の更新を加えてしまったら、もう差分コピーはできなくなる。これは差分コピーの必要条件である。
【0047】
図12は、時刻11:10におけるディザスタリカバリ(フェールオーバ)の流れを示す。時刻11:00において、正サイト1にはスナップショット810が作成されているが、通信回線(ネットワーク3)の障害によって副サイト2への差分コピーが失敗している。このため副サイト2では10:00?11:10に正サイト1で発生したデータ更新をあきらめ、最新のスナップショットである時刻10:00時点のデータ、すなわちボリューム805を使って業務の引き継ぎ、つまりフェールオーバを行う。
【0048】
具体的には正サイト1の管理者と副サイト2の管理者がネットワーク3を利用しない電話等の通信手段で連絡をとり、正サイト1の管理者は管理端末106等から正サイト1のクライアント803の業務停止を指示し、副サイト2の管理者は副サイト2の管理端末等からクライアント803に副サイト2が業務を引き継いだことを通知する。以降、クライアント803は、副サイト2のストレージ装置1011に複製されたボリューム805にアクセスすることになる。
【0049】
この時点で、正副サイトの共通スナップショットは、時刻09:00と10:00の2組であり、10:00以降のスナップショットの更新は、正サイト1と副サイト2は別々のものになっている。
【0050】
図13は、時刻13:00におけるフェールバック(ロールバック)の流れを示す。副サイト2では定期的(例えば1時間毎)にスナップショットを作成しているので、この時点では、時刻12:00のスナップショット812および時刻13:00のスナップショット813が加わって、合計4つのスナップショットが存在している。また、正サイト1のボリューム805は、ネットワーク3に障害が発生したディザスタリカバリの11:10時点の状態となっており、フェールバック処理の開始時点では、図中3つのスナップショット806、808、810が存在する。
【0051】
ここで、フェールバック処理は、引き継ぎ(フェールオーバ)時刻11:10からフェールバック時点13:00までの副サイト2における更新データを正サイト1にリストアし、業務を副サイト2から正サイト1に戻し、正サイト1から副サイト2へのリモートコピー運用を再開する。
【0052】
このフェールバック処理中のサービス停止を最小限にするために、副サイト2から正サイト1の更新データの引き継ぎを全コピーではなく差分コピーで行う。副サイト2のデータを正サイト1にリストアするに当たって、正サイト1と副サイト2で共通するスナップショットのうち最新のものを選択する必要がある。このため、管理者は管理端末106から図7のログ表示ルーチン116を起動して副サイト2のトランザクションログテーブル120と、正サイト1のトランザクションログテーブル120を取得し、図12の下方に示すように2つのトランザクションログテーブル120を比較する。2つのトランザクションログテーブル120から同一のボリューム名で、最新のスナップショット時刻のものを抽出する。
【0053】
図12(図13の13:00の時点)では、正副サイトの共通スナップショットのうち最新のものは10:00時点までの1組のスナップショット808および809である。つまり、同期させるポイントをスナップショットの転送ログを比較することで実現する。」

上記記載事項H及びIから,引用例2には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

「2つのストレージ装置101,1011をネットワーク3で接続し,コピー元のストレージ装置を正サイト1のストレージ装置101とし,コピー先のストレージ装置を副サイト2のストレージ装置1011とし,正サイト1ではボリューム804(Vol1)をクライアント803から使用していて,ボリューム804が運用ボリュームとなり,正サイト1のボリューム804の内容を副サイト2のボリューム805(Vol1)に次の手順でリモートコピーするものであって,
まず,正サイト管理者が管理端末106から,ボリューム804のスナップショット806を作成を指示し,ストレージ装置101のスナップショット作成ルーチン118がボリューム804(Vol1)の時刻9:00のスナップショット806を作成し,
つぎに,正サイト管理者は管理端末106からストレージ装置101に全コピーを指令し,スナップショット806の内容をすべて正サイト1から副サイト2へ転送し,副サイト2のボリューム805に書き込み,副サイト管理者が管理端末106からストレージ装置1011にスナップショットの作成を指令し,副サイト2のストレージ装置1011ではスナップショット作成ルーチン118が起動して,書き込んだボリューム805のスナップショット807を作成し,この手順が完了した時点で,2つの正副サイトは同期し,最初に上記のような全コピーを行っておくことで,正副サイト共通のスナップショット806,807が得られるため,以降ではこの共通スナップショット806,807を利用した差分コピーによるリモートコピー運用が可能となり,
正副サイトのプロセッサ装置103は,送受信の結果をそれぞれのトランザクションログテーブル120に書き込んでおき,
正サイト1では1時間毎にスナップショット作成ルーチン118とスナップショット転送ルーチン113が起動されリモートコピー処理が周期的に実行され,このリモートコピー処理は,正サイト1のボリューム804の内容(スナップショット)の差分データを副サイト2のボリューム805にコピーするものであり,
この手順が完了した時点では,ボリューム805の内容は10:00時点相当になり,2つのサイトの共通のスナップショットは時刻9:00と時刻10:00の2組になり,このようにして共通スナップショットを起点にすることで差分コピーが行え,
通信回線(ネットワーク3)の障害によって副サイト2への差分コピーが失敗し,このため副サイト2では,最新のスナップショットである時刻10:00時点のデータ,すなわちボリューム805を使って業務の引き継ぎ,つまりフェールオーバを行い,
副サイト2では定期的(例えば1時間毎)にスナップショットを作成しているので,この時点では,時刻12:00のスナップショット812および時刻13:00のスナップショット813が加わって,合計4つのスナップショットが存在していて,正サイト1のボリューム805は,ネットワーク3に障害が発生したディザスタリカバリの11:10時点の状態となっており,フェールバック処理の開始時点では,3つのスナップショット806,808,810が存在し,
ここで,フェールバック処理は,引き継ぎ(フェールオーバ)時刻11:10からフェールバック時点13:00までの副サイト2における更新データを正サイト1にリストアし,業務を副サイト2から正サイト1に戻し,正サイト1から副サイト2へのリモートコピー運用を再開し,
このフェールバック処理中のサービス停止を最小限にするために,副サイト2から正サイト1の更新データの引き継ぎを全コピーではなく差分コピーで行い,
同期させるポイントをスナップショットの転送ログを比較することで実現する
正サイト1のボリューム804の内容を副サイト2のボリューム805にリモートコピーする方法。」


第5 対比・判断

1 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「データを記憶するためのシステム」は,「リンク30」,「プライマリボリューム10」及び「セカンダリボリューム20」といったリソースが存在し,「リンクの中断が生じると,リンクが中断された時点での運用ボリュームのイメージを維持し,それ以降,プライマリとセカンダリの両ボリュームに対して行われた更新は,追跡され,記録され」るものであることから,これらの処理を行う所定の“コンピュータ”が存在することは自明であって,当該コンピュータによって,所定の“実行可能な命令”によって所定の処理が行われることも当業者には明らかであるから,本願発明1と引用発明とは,“複製データベースを管理するコンピュータ実装方法であって,実行可能な命令を用いて構成される1つ以上のコンピュータシステムの制御下で”所定の処理を行う,“コンピュータ実装方法”である点で一致するといえる。

(2)引用発明の「プライマリボリューム」及び「セカンダリボリューム」はそれぞれ,「プライマリボリュームは,プロダクションボリュームであり,セカンダリボリュームは複製のためのペアボリューム」であり,「リンクの中断が生じると,リンクが中断された時点での運用ボリュームのイメージを維持」することから,当該「運用ボリュームのイメージ」は,本願発明1の「一次インスタンス複製」に相当し,また,引用発明の「セカンダリボリューム」は,「プロダクションボリューム」の「複製のためのペアボリューム」である以上,当該「セカンダリボリューム」の複製,すなわち本願発明1の「二次インスタンス複製」に相当する構成を有するといえるから,引用発明と本願発明1とは,“一次インスタンス複製と二次インスタンス複製との間のデータを同期する”点で一致する。

(3)引用発明は,「ボリュームへの全ての書き込み動作は,データ格納領域に格納されている付随情報を使用して順次ナンバリングされ」るとともに,「ボリュームへの最後の書き込みI/Oオペレーションのログシーケンス番号が,記憶され」るものであることから,引用発明と本願発明1とは,“前記一次インスタンス複製を介して,1つ以上の入力/出力(I/O)操作を実行する”点で一致するといえる。

(4)以上,(1)乃至(3)の検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
複製データベースを管理するコンピュータ実装方法であって,
実行可能な命令を用いて構成される1つ以上のコンピュータシステムの制御下で,
一次インスタンス複製と二次インスタンス複製との間のデータを同期することと,
前記一次インスタンス複製を介して,1つ以上の入力/出力(I/O)操作を実行することと
を含むことを特徴とするコンピュータ実装方法。

〈相違点1〉
本願発明1は,「一次インスタンス複製および二次インスタンス複製の初期のペアリングに基づいて,世代識別子を取得することであって,前記一次インスタンス複製および前記二次インスタンス複製はデータ環境に関連付けられ,前記世代識別子は,前記一次インスタンス複製に記憶された前記複製データベースの複製データの現在の世代,および前記二次インスタンス複製に記憶された前記複製データベースの複製データの現在の世代を識別している」のに対し,引用発明は,「世代識別子」に相当する構成を有さず,当該「世代識別子」をどの時点で取得するのか特定されていない点。

〈相違点2〉
本願発明1が,「制御環境の監視構成要素に状態情報を定期的に提供することであって,前記制御環境は,前記データ環境から分離されている」のに対し,引用発明は,「制御環境」,「監視構成要素」,「状態情報」及び「データ環境」に相当する構成が特定されていない点。

〈相違点3〉
本願発明1が,「前記一次インスタンス複製が前記二次インスタンス複製と通信することができないことに応答して,前記監視構成要素に故障情報を提供することであって,前記故障情報は,少なくとも前記世代識別子を含む」ものであるのに対し,引用発明は,「リンクの中断が生じると,リンクが中断された時点での運用ボリュームのイメージを維持し,それ以降,プライマリとセカンダリの両ボリュームに対して行われた更新は,追跡され,記録され」,「最後の成功した書き込み(中断前の)のシーケンス番号が保持され,そして,ベースボリュームイメージと,ベースボリュームイメージのある時点から保持された連続番号までの全てのログは,格納され」,「一般的に,ボリュームへの全ての書き込み動作は,データ格納領域に格納されている付随情報を使用して順次ナンバリングされ」,「ボリュームへの最後の書き込みI/Oオペレーションのログシーケンス番号が,記憶され」,「ベースボリュームと,その連続番号からベースボリュームイメージが保持された時点までのログが保持される」ものであるものの,「世代識別子」を含む「故障情報」を,「監視構成要素」に提供することが特定されていない点。

〈相違点4〉
本願発明1が,「前記一次インスタンス複製と前記二次インスタンス複製との間のデータを同期する」に際し,「ブロックレベル複製機構を使用して」行われるものであるのに対し,引用発明は,そのような機構が特定されていない点。

〈相違点5〉
本願発明1が,「前記一次インスタンス複製が前記二次インスタンス複製と通信することができない場合において,前記一次インスタンス複製が,前記監視構成要素と通信することができると判定された場合,前記一次インスタンス複製に記憶された複製データの前記現在の世代を識別する第2の世代識別子を取得する」ものであるのに対し,引用発明は,「第2の世代識別子を取得する」ことが特定されていない点。

2 判断
事案に鑑み,相違点1,3及び5の,主に「世代識別子」の点について検討する。
本願発明1は,多くのアプリケーションおよびサービスが,インターネット等のネットワーク上で利用可能になるに従い,クラウドコンピューティング等の技術に方向転換しており(本願明細書段落1),クラウド内では様々なアプリケーションおよびリソースの態様を調整および管理することができる一方で,これらのアプリケーションおよびリソースが依存するデータ格納場所は,顧客やユーザによる同様の調整が可能ではないかあるいは容易には管理されず,データベース管理者(DBA)または同様の専門家ユーザを必要とし,データインスタンスが単一の位置または領域内にあり,その領域内の故障または停電によってデータインスタンスが故障した際,故障から復旧するために必要なタスクを実行するためには,時間がかかる(同段落2)ことを技術的背景とし,データベース複製を異なるデータゾーン内で動作するようにし,データベース書き込みは,データが失われることがないように,ブロックレベルにおける同期複製機構を使用し,インスタンス複製を用いることによって,単一のデータベースインスタンスを使用したときよりも高い利用可能性が提供され,例えば,データベースの一次複製が停止している場合,フェイルオーバー操作を実行して,二次複製が新しい一次複製を引き継ぎ,データゾーンの故障,データボリューム故障等から保護することができる(同段落9)ことを,その解決しようとする課題としたものであって,複製データベースインスタンスを作成し,その結果として高い耐久性がありかつ高い利用可能なデータソリューションが提供され,顧客が複製データベースインスタンスを作成する際,顧客データは,一次/二次複製モデルを使用して,同期的に複製され,複製は,異なるデータゾーン内等の異なる物理位置に配置され,一次複製が故障するか,またはそうでなければ利用できなくなる場合,二次複製へ迅速かつ自動的にフェイルオーバーすることができ,非常に小さな故障時間または非常に小さなデータ欠損をもたらし(同段落39),BLRM(ブロックレベル複製機構)は,複製されたデータの世代を識別する世代識別子(「GI」)を使用し,それによってBLRMは,2つのノードが同一の複製ペアのメンバであるかどうか,バックグラウンド再同期(必要であれば)の方向であるかどうか,ならびに部分的なまたは完全な再同期は必要とされるかどうか等の態様を判定することができ,BLRMドライバは,切断された予備複製が一次複製に切り替わる際,あるいは一次の役割におけるリソースが二次複製から切断される際,複製ペアの初期化の間等の任意の適切な時期において,新しい世代を始動することができる(同段落44)ものであるところ,引用発明は,「データを記憶するためのシステム」であって,「データリンクの故障,または他のストレージシステムの故障,あるいはその他の事象,自然災害などに備えるもの」であり,2つのボリュームが存在し,両ボリュームでの同期を図る点,及びリンクが切断された後,切断された時点での情報を用いて当該同期処理がなされるものである点では共通するといえるものの,当該同期処理にあたって用いられる情報として,本願発明1では,「世代識別子」を,まず「一次インスタンス複製および二次インスタンス複製の初期のペアリング」に基づいて取得し,その後「前記一次インスタンス複製が前記二次インスタンス複製と通信することができない場合」に,「第2の世代識別子を取得」するものである。
一方,引用発明では,「リンクの中断が生じると,リンクが中断された時点での運用ボリュームのイメージを維持し,それ以降,プライマリとセカンダリの両ボリュームに対して行われた更新は,追跡され,記録され,データは別々の場所に格納され,メタデータは,書き込み動作ごとにデータが格納されるデータ格納領域の連続番号及びポインターのテーブルとしてポイント・イン・タイム・ボリュームに格納され,この動作のために,最後の成功した書き込み(中断前の)のシーケンス番号が保持され,そして,ベースボリュームイメージと,ベースボリュームイメージのある時点から保持された連続番号までの全てのログは,格納され,一般的に,ボリュームへの全ての書き込み動作は,データ格納領域に格納されている付随情報を使用して順次ナンバリングされ,ボリュームへの最後の書き込みI/Oオペレーションのログシーケンス番号が,記憶され,ベースボリュームと,その連続番号からベースボリュームイメージが保持された時点までのログが保持される」ものであって,そこで用いられるものは,「ログシーケンス番号」であり,これは,「ベースボリュームイメージのある時点から保持された連続番号までの全てのログ」に係るものであり,本願発明の「前記一次インスタンス複製に記憶された前記複製データベースの複製データの現在の世代、および前記二次インスタンス複製に記憶された前記複製データベースの複製データの現在の世代を識別」している「世代識別子」や,「前記一次インスタンス複製に記憶された複製データの前記現在の世代を識別」する「第2の世代識別子」とは,上記本願発明1の課題及び目的並びに作用効果からみて,その役割及び機能の点において異なるものといわざるを得ない。
また,当該「世代識別子」に関しては,引用発明2の存在をもってしても,読取ることはできない。
してみれば,当該「世代識別子」に相当する構成を有しない引用発明及び引用発明2からは,当業者といえども,本願発明1は容易になし得たということはできない。

3 本願発明2乃至16について
本願発明5及び10は,概ね本願発明1とそのカテゴリーが相違するものの,本願発明1と同様,「世代識別子」に係る構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また,本願発明2乃至4,6乃至9及び16,並びに11乃至15はそれぞれ,本願発明1,5及び10を直接乃至間接的に引用するものであって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-20 
出願番号 特願2015-247729(P2015-247729)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 月野 洋一郎  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 山崎 慎一
須田 勝巳
発明の名称 複製されたデータインスタンスのためのフェイルオーバーおよび復旧  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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