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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1343326
審判番号 不服2017-343  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-11 
確定日 2018-08-14 
事件の表示 特願2014-530290「有機電界効果トランジスタ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日国際公開、WO2013/038077、平成26年11月17日国内公表、特表2014-530490〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年(2012年)6月11日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年9月14日,仏国)を国際出願日とする出願であって、平成27年6月3日付けで審査請求がなされ、平成28年3月29日付けで拒絶理由が通知され、同年6月15日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたが、同年9月6日付けで拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成29年1月11日付けで審判請求がなされ、当審において同年8月15日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月13日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正(以下、「本手続補正」という。)がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、本願発明は以下のとおりの発明である。
「プラスチック基板(2)と呼ばれる、プラスチック材料で作られた少なくとも1つの下部基板と、前記プラスチック基板(2)上に堆積された、それぞれソース電極(3)及びドレイン電極(4)である2つの電極(3、4)と、有機半導体材料で作られ、前記電極(3、4)の上部かつそれらと接触して、並びに前記プラスチック基板(2)の上部に堆積された半導体層(5)と、誘電材料で作られ、前記半導体層(5)上に堆積された誘電体層(6)と、前記誘電体層(6)上に形成されたゲート電極(7)と、を含む有機トランジスタ(1)であって、それはさらに、誘電材料で作られ、前記プラスチック基板(2)と前記半導体層(5)との間に延在する多孔質層(9)を含み、前記多孔質層(9)は、少なくとも前記ソース(3)及びドレイン(4)電極の間の領域の下に延在し、前記プラスチック基板(2)の表面の誘電率を低下させ、
前記ソース(3)及びドレイン(4)電極は前記多孔質層(9)上に堆積されている、有機トランジスタ(1)。」

第3 引用例、引用発明等
1 引用例1について
当審拒絶理由に引用された特開2009-73124号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の少なくとも片面上に、高分子で構成され且つ連通性の低い独立した多数の微小孔が形成された多孔質層を有する積層体及びその製造方法、並びに高分子で構成され且つ連通性の低い独立した多数の微小孔が形成された多孔質膜及びその製造方法に関する。これら多孔質層を有する積層体や多孔質膜は、多孔質層や多孔質膜が有する空孔特性をそのまま利用することにより、回路用基板、電磁波シールドや電磁波吸収体などの電磁波制御材、低誘電率材料、アンテナ、セパレーター、クッション材、インク受像シート、絶縁材、断熱材、細胞培養基材等、広範囲な基板材料として利用可能である。」
(2)「【0053】
本発明の多孔質層積層体は、基材と、前記基材の少なくとも片面上の高分子で構成されている多孔質層とを含む積層体であって、
前記多孔質層における微小孔の平均孔径が0.01?10μmであり、空孔率が30?80%であり、前記微小孔は、連通性の低い独立微小孔である、積層体である。」
(3)「【0056】
基材を構成する材料としては、上記テープ剥離試験により多孔質層と界面剥離を生じなければ特に限定されず、多孔質層を構成する材料に応じて適宜選択できる。基材を構成する材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエステル系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、ポリベンゾチアゾール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂等を含む)、ポリアリレート系樹脂等のプラスチック等が挙げられる。これらの材料は単独で又は2種以上混合して使用してもよく、また、上記樹脂の共重合体(グラフト重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体等)を単独で又は組み合わせて用いることも可能である。さらに、上記樹脂の骨格(ポリマー鎖)を主鎖又は側鎖に含む重合物を用いることも可能である。このような重合物の具体例として、
ポリシロキサンとポリイミドの骨格を主鎖に含むポリシロキサン含有ポリイミド等が挙げられる。」
(4)「【0093】
多孔質層は、主成分が例えば高分子成分で構成されている。多孔質層を構成する高分子成分としては、上記テープ剥離試験により多孔質層と界面剥離を生じない基材を形成可能であれば特に限定されず、基材を構成する材料に応じて適宜選択できる。前記高分子成分としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエステル系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、ポリベンゾチアゾール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂等のプラスチック等が挙げられる。これらの高分子成分は単独で又は2種以上混合して使用してもよく、また、上記樹脂の共重合体(グラフト重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体等)を単独で又は組み合わせて用いることも可能である。さらに、上記樹脂の骨格(ポリマー鎖)を主鎖又は側鎖に含む重合物を用いることも可能である。このような重合物の具体例として、ポリシロキサンとポリイミドの骨格を主鎖に含むポリシロキサン含有ポリイミド等が挙げられる。」
(5)「【0129】
本発明の多孔膜積層体は、上記構成を有するため、広範な分野において多様な用途に適用できる。具体的には、多孔質層が有する空孔特性をそのまま利用して、例えば、低誘電率材料、セパレーター、クッション材、インク受像シート、試験紙、絶縁材、断熱材等として利用できる。さらに、多孔膜積層体に他の層(金属メッキ層、磁性メッキ層等)を積層した複合材料として、例えば回路用基板、放熱材(放熱板等)、電磁波シールドや電磁波吸収体などの電磁波制御材、細胞培養基材等として利用可能である。」
(6)「【0153】
本発明の多孔膜積層体や多孔性フィルムは、低誘電率材料としても有用である。ブロードバンド時代の到来により、大容量の情報を高速で伝達する必要が生じている。そのため、電子機器で使用される周波数も高まってきており、その中で使われる電子部品も高周波信号に対応する必要がある。これまでの配線基板(主にガラスエポキシ樹脂)を高周波回路に使用すると、(1)高い誘電率による伝達信号の遅れや、(2)高い誘電損失による、信号の混信・減衰の発生、消費電力の増加、回路内の発熱などの問題が生じる。これらの問題を解決するための高周波用配線基板材料としての多孔性の材料が有用であるとされている。それは、空気の比誘電率は1と低いのに対して、多孔性の材料にすれば、低い比誘電率を達成可能なためである。このため、従来、多孔性基板材料が必要とされてきたが、低誘電率にするためには空孔率を上げる必要があり、その結果、基板としての強度が低下してしまうという問題があった。本発明の多孔膜積層体は、多孔質層が基材に積層されており、低誘電率特性を持っているのみならず、多孔質層が基材に密着しているため取り扱う上で十分な強度を確保することができ、低誘電率材料として好ましい媒体である。
【0154】
本発明の多孔膜積層体や多孔性フィルムを低誘電率な回路基板材料として使用する場合、上記したように、多孔膜積層体や多孔性フィルム表面に銅箔を貼り合わせ、エッチングにより銅箔の不要な部分を除去することにより配線を形成する方法により製造することが考えられる。配線の微細化、高密度化は困難になりつつあるが、現在でもこの従来法でほとんどの回路基板が作られており、本発明の多孔膜積層体や多孔性フィルムもこの方法で使用することができる。非常に要求が強くなってきている基板の低誘電率化に対応しうる有用な材料と言える。多孔質層の連通性が低いため、銅箔をエッチングする時に、エッチング液が多孔質層の中に入り難く、好ましくない銅箔の裏側からのエッチングが起こりにくく、連通性の低い独立した多孔質層の特徴を生かすことが可能である。
【0155】
インク受像シートは、印刷メディアとも呼ばれ、印刷技術においてしばしば使用されてる。一方、現在、多くの印刷法が実用化、利用されており、このような印刷技術として、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ディスペンサ印刷、凸版印刷(フレキソ印刷)、昇華型印刷、オフセット印刷、レーザープリンタ印刷(トナー印刷)、凹版印刷(グラビア印刷)、コンタクト印刷、マイクロコンタクト印刷等を挙げることができる。使用されるインクの構成成分としては、特に制限されないが、例えば導電体、誘電体、半導体、絶縁体、抵抗体、色素等が挙げられる。
【0156】
電子材料を印刷法で作成するメリットとしては、(1)シンプルなプロセスで製造できる、(2)廃棄物の少ない低環境負荷プロセスである、(3)低エネルギー消費によって短時間で製造できる、(4)初期投資額が大幅に低減できる等があるが、その一方、これまでにない高精細な印刷が要求され、技術的に困難であることもこと実である。従って、特に電子材料の製造に利用される印刷に関しては、印刷機械の性能だけでなく、インクやインク受像シートの特性が印刷結果に大きな影響を与える。本発明の多孔膜積層体は、多孔質層が基材に密着しており、多孔質層の微細な多孔構造はインクを吸ったり、インクを精密に固定することができるため、これまでにない高精細な印刷を達成することができ、非常に好ましく用いられる。また、多孔質層が基材に密着しているため、取り扱う上で十分な強度を確保することができ、例えば、ロールツーロールで連続的に印刷することもでき、生産効率を著しく向上することができる。
【0157】
電子材料を印刷により製造する場合、印刷法としては上述の方法を利用できる。印刷により製造される電子材料の具体例としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、ICカード、ICタグ、太陽電池、LED素子、有機トランジスタ、コンデンサー(キャパシタ)、電子ペーパー、フレキシブル電池、フレキシブルセンサ、メンブレンスイッチ、タッチパネル、EMIシールド等を挙げることができる。
【0158】
上記電子材料を製造する方法は、例えば導電体、誘電体、半導体、絶縁体、抵抗体等の電子素材を含むインクを多孔質層(基板)表面に印刷する工程を含んでいる。例えば多孔質層(基板)表面に誘電体を含むインクで印刷することにより、コンデンサー(キャパシタ)を形成できる。このような誘電体としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等を挙げることができる。また、半導体を含むインクで印刷することにより、トランジスタ等を形成することができる。半導体としては、ペンタセン、液状シリコン、フルオレン-ビチオフェンコポリマー(F8T2)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)等を挙げることができる。」
(7)上記(1)ないし(6)から、上記引用例1には次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「プラスチックから構成された基材と、
前記基材に積層された、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエステル系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、ポリベンゾチアゾール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂等のプラスチック等で構成され、多孔性の材料にすることにより低い比誘電率とした、多孔質層と、
を含み、
多孔質層が基材に積層されていることにより、低誘電率特性を持っているのみならず、多孔質層が基材に密着しているため十分な強度を確保することができる、
積層体を備え、
インクジェット印刷、スクリーン印刷、ディスペンサ印刷、凸版印刷(フレキソ印刷)、昇華型印刷、オフセット印刷、レーザープリンタ印刷(トナー印刷)、凹版印刷(グラビア印刷)、コンタクト印刷、マイクロコンタクト印刷等の印刷手法により、多孔質層に印刷された、有機トランジスタ。」

2 引用例2について
当審拒絶理由に引用された特開2008-205144号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法および半導体装置の製造方法に関し、さらに詳しくは、有機半導体層を有する薄膜トランジスタの電極パターン形成方法およびこれを用いた半導体装置の製造方法に関する。」
(2)「【0016】
(第1実施形態)
本発明のパターン形成法に係わる実施の形態の一例を、トップゲート・ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタからなる半導体装置の製造方法を例にとり、図1の製造工程断面図によって説明する。ここでは、塗布法により下地層上の全域に導電性膜を形成した後に、導電性膜上にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクに用いたエッチングにより導電性パターンを形成する「サブトラクティブ法」について説明する。
【0017】
まず、図1(a)に示すように、例えばガラス基板からなる基板11上には、例えば銀(Ag)からなる導電性膜12’が50nmの膜厚で設けられている。
【0018】
上記基板11としては、上述したガラス基板の他に、石英基板、プラスチック基板、絶縁性被膜のコートされた金属シートが用いられる。また、導電性膜12’としては、上述したAg以外に、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、チタン(Ti)、クロム(Cr)またはニッケル(Ni)等の金属、またはその合金もしくはITO(Indium Thin Oxide)が用いられ、膜厚は20nm?1μmの範囲であることとする。
・・・ 中 略 ・・・
【0030】
以上のようにして、基板11上にソース・ドレイン電極12を形成した後、図2(f)に示すように、ソース・ドレイン電極12を覆う状態で、基板11上に、有機半導体層13を形成する。ここでは、例えばスピンコート法により、ペンタセン誘導体の1wt%トルエン溶液を塗布した後、100℃で溶媒を揮発させて50nmの有機半導体層13を形成する。
【0031】
ここで、有機半導体層13としては、上記ペンタセン誘導体の他に、ポリチオフェン、フルオレン-チオフェンコポリマー、ポリアリルアミン等の高分子材料、または、ルブレン、チオフェンオリゴマー、ナフタセン誘導体等の低分子材料を用いてもよい。
【0032】
また、有機半導体層13の形成方法としては、上記スピンコート法の他に、インクジェット法、ディスペンサー法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法等の印刷方法により形成してもよい。なお、ここでは、有機半導体層13をベタ膜状に形成する例について説明するが、各種印刷法により有機半導体層13を各素子毎にパターンニングしてもよく、シャドウマスクを用いた真空蒸着法により有機半導体層13をパターン形成してもよい。
【0033】
次いで、有機半導体層13上に、例えばポリビニルフェノール(PVP)からなるゲート絶縁膜14を4μmの膜厚で形成する。ゲート絶縁膜14としては、上記PVPの他に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ベンゾシクロブテン(BCB)等を用いることができる。
・・・ 中 略 ・・・
【0038】
以上のようにして、基板11上にソース・ドレイン電極12、有機半導体層13、ゲート絶縁膜14、ゲート電極15がこの順に積層されたトップゲート・ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタが形成される。」
(3)【図2】(h)には、基板11と、基板11上に積層されたソース・ドレイン電極12と、ソース・ドレイン電極12および基板11の上部に積層された有機半導体層13と、有機半導体層13上に積層されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上に積層されたゲート電極15とからなる、トップゲート・ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタが示されている。
(4)上記(1)ないし(3)から、上記引用例2には次の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されていると認められる。
「プラスチック基板11と、
プラスチック基板11上に積層されたソース・ドレイン電極12と、
ソース・ドレイン電極12および基板11の上部に積層された有機半導体層13と、
有機半導体層13上に積層された、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ベンゾシクロブテン(BCB)等を用いたゲート絶縁膜14と、
ゲート絶縁膜14上に積層されたゲート電極15とからなる、
トップゲート・ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタ。」

第4 対比・判断
1 対比
本願発明と引用例1発明とを対比すると、次のことがいえる。
(1)引用例1発明の「プラスチックから構成された基材」および「有機トランジスタ」は、それぞれ本願発明の「プラスチック基板(2)と呼ばれる、プラスチック材料で作られた少なくとも1つの下部基板」および「有機トランジスタ(1)」に相当する。
(2)引用例1発明の「多孔質層」は、「ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエステル系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、ポリベンゾチアゾール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂等のプラスチック等で構成され」ているから、誘電材料で作られていると言える。
また、引用例1発明は、「多孔質層が基材に積層されていることにより、低誘電率特性を持っているのみならず、多孔質層が基材に密着しているため十分な強度を確保することができる」ことから、「基材」に積層された「多孔質層」は、「基材」の「多孔質層」が積層された面の誘電率を低下させていると言える。
そうすると、引用例1発明の「多孔質層」と、本願発明の「誘電材料で作られ、前記プラスチック基板(2)と前記半導体層(5)との間に延在」し、「少なくとも前記ソース(3)及びドレイン(4)電極の間の領域の下に延在し、前記プラスチック基板(2)の表面の誘電率を低下させ」ており、また、「前記ソース(3)及びドレイン(4)電極」が堆積している「多孔質層(9)」は、「誘電材料で作られ、」「前記プラスチック基板(2)の表面の誘電率を低下させ」ている「多孔質層(9)」である点で共通する。
(3)してみると、本願発明と引用例1発明は以下の点で一致し、また、相違する。
[一致点]
「プラスチック基板(2)と呼ばれる、プラスチック材料で作られた少なくとも1つの下部基板とを含む有機トランジスタ(1)であって、
それはさらに、誘電材料で作られた多孔質層(9)を含み、前記多孔質層(9)は、前記プラスチック基板(2)の表面の誘電率を低下させている、有機トランジスタ(1)。」

[相違点1]
本願発明は「前記プラスチック基板(2)上に堆積された、それぞれソース電極(3)及びドレイン電極(4)である2つの電極(3、4)と、有機半導体材料で作られ、前記電極(3、4)の上部かつそれらと接触して、並びに前記プラスチック基板(2)の上部に堆積された半導体層(5)と、誘電材料で作られ、前記半導体層(5)上に堆積された誘電体層(6)と、前記誘電体層(6)上に形成されたゲート電極(7)と、を含む有機トランジスタ(1)であ」るのに対して、引用例1発明は、「有機トランジスタ」が「インクジェット印刷、スクリーン印刷、ディスペンサ印刷、凸版印刷(フレキソ印刷)、昇華型印刷、オフセット印刷、レーザープリンタ印刷(トナー印刷)、凹版印刷(グラビア印刷)、コンタクト印刷、マイクロコンタクト印刷等の印刷手法により、多孔質層に印刷」されるとの記載はあるものの具体的な構成が示されていない点。
[相違点2]
本願発明の「多孔質層(9)」は、「前記プラスチック基板(2)と前記半導体層(5)との間に延在」し、「少なくとも前記ソース(3)及びドレイン(4)電極の間の領域の下に延在し」ており、また、「前記ソース(3)及びドレイン(4)電極」が堆積しているのに対して、引用例1発明は、「有機トランジスタ」が「インクジェット印刷、スクリーン印刷、ディスペンサ印刷、凸版印刷(フレキソ印刷)、昇華型印刷、オフセット印刷、レーザープリンタ印刷(トナー印刷)、凹版印刷(グラビア印刷)、コンタクト印刷、マイクロコンタクト印刷等の印刷手法により、多孔質層に印刷」されるとの記載はあるものの対応する構成の明示がない点。

2 相違点についての判断
[相違点1]および[相違点2]について以下に検討する。
(1)引用例2発明の「有機半導体層13上に積層された、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ベンゾシクロブテン(BCB)等を用いたゲート絶縁膜14」は、誘電材料であることは明らかであるから、引用例2発明の「ゲート絶縁膜14」は、本願発明の「誘電材料で作られ、前記半導体層(5)上に堆積された誘電体層(6)」に相当する。
(2)そうすると、「前記プラスチック基板(2)上に」積層された、「それぞれソース電極(3)及びドレイン電極(4)である2つの電極(3、4)と、有機半導体材料で作られ、前記電極(3、4)の上部かつそれらと接触して、並びに前記プラスチック基板(2)の上部に」積層された「半導体層(5)と、誘電材料で作られ、前記半導体層(5)上に」積層された「誘電体層(6)と、前記誘電体層(6)上に形成されたゲート電極(7)と、を含む有機トランジスタ(1)」は、公知の構成であり、該公知の構成を引用例1発明の「有機トランジスタ」として採用することに格別の困難性は認められない。[相違点1]
(3)本願明細書に
「【0035】
多孔質層9は、スピンコーティング、拡散(spreading)、シルクスクリーニング、又は印刷、例えばあるいはグラビア印刷、フレクソグラビア(flexogravure)、又はインクジェットなどの当業者によってよく知られている任意の方法によって、プラスチック基板2上に堆積され得る。」
と記載されているように、本願は「シルクスクリーニング」,「グラビア印刷」、「フレクソグラビア(flexogravure)」,「インクジェット」により「堆積」が行われるとしているから、本願明細書に記載された上記方法に対応する引用例1発明の方法である、「スクリーン印刷」,「凹版印刷(グラビア印刷)」,「凸版印刷(フレキソ印刷)」,「インクジェット印刷」を採用した際に、本願発明と同様の「堆積」が行われることは明らかである。
そうすると、引用例1発明において該公知の構成を採用し「有機トランジスタ」を作製する際に、「印刷手法」として、「スクリーン印刷」,「凹版印刷(グラビア印刷)」,「凸版印刷(フレキソ印刷)」,「インクジェット印刷」を採用し、「ソース電極(3)及びドレイン電極(4)」,「半導体層(5)」および「誘電体層(6)」を「堆積」により積層することに格別の困難性は認められない。[相違点1,2]
(4)加えて、引用例1発明に該公知の構成を採用した際に、引用例1発明は「高周波用配線基板材料としての多孔性の材料」(前記1(6)段落【0153】)を前提とするから、引用例1発明の「多孔質層」を、高周波信号が伝搬する引用例2発明の「ソース・ドレイン電極12」や「有機半導体層13」の基板として位置付けることにより、同「多孔質層」が、「前記プラスチック基板(2)と前記半導体層(5)との間に延在」し、「少なくとも前記ソース(3)及びドレイン(4)電極の間の領域の下に延在し」ており、また、「前記ソース(3)及びドレイン(4)電極」が「堆積」している構成を導出することは、当業者にとって容易に為しうることである。[相違点2]

3 小括
そうすると、本願発明は、引用例1および2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 結語
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用例1および2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-14 
結審通知日 2018-03-19 
審決日 2018-03-30 
出願番号 特願2014-530290(P2014-530290)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河合 俊英  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 須藤 竜也
小田 浩
発明の名称 有機電界効果トランジスタ  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 阿部 達彦  
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