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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D |
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管理番号 | 1343328 |
審判番号 | 不服2017-3661 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-03-12 |
確定日 | 2018-08-13 |
事件の表示 | 特願2016-82466「携帯式の塗料容器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月19日出願公開、特開2017-190182〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願(以下「本願」という。)は、平成28年4月15日に特許出願され、同年9月1日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月21日に意見書の提出とともに手続補正がされ、同年12月12日付けで拒絶査定がされ(謄本送達日同月14日)、平成29年3月12日に審判請求と同時に手続補正がされ、平成30年3月14日付けで当審から拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由」という。)がされ、同年5月9日に意見書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成29年3月12日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「ペットボトルのキャップの下端に予めキャップと一体の状態で前記ペットボトルの首部に嵌めてある合成樹脂製のリングであって、初めてペットボトルを開口する際に前記キャップから分離されて残った前記リングに挿通して取付けた環状の線材を利用して人体の腰のベルトやベルト通しに取付け支持可能としたことを特徴とする携帯式の塗料容器。」 なお、請求項1に関しては、上記平成29年3月12日付け手続補正によって補正されなかった。 第3 拒絶の理由 平成30年3月14日付けの当審が通知した拒絶理由のうち本願発明に関する部分は、次のとおりのものである。 本願発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2、3及び6に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献2.登録実用新案第3143443号公報 引用文献3.特開2004-315075号公報 引用文献6.登録実用新案第3148119号公報 第4 引用文献について 1 各引用文献の記載事項 (1)引用文献6 引用文献6には、次の記載がある。 ア 技術分野、段落【0001】 「この考案はボトル一体型フック、詳しくは飲料入りボトルを手提げ携帯するためのフックをボトルに突設した考案に関するものである。」 イ 段落【0008】 「本考案は飲料入りボトルのキャップ受けリングまたは該キャップ受けリングの下のボトルリングに携帯紐等の通し穴を有すフックを突設してボトル一体型にて構成する。」 ウ 実施例1 (ア)段落【0009】 「図1乃至図3は第1実施例を示すもので、飲料入りボトル1の壜口2に嵌着するキャップ3の受けリング4に通し穴5aを有すフック5を突設した例であって、受けリング4はボトルと一体である。」 (イ)段落【0010】 「キャップ3を初開蓋するとキャップ受けリング4との間で封切りされてキャップ受けリング4がボトル側に残り、キャップ3は壜口2より外れる。」 (ウ)段落【0011】 「なお、フック5は図3に示すように側面視水平形、傾斜形、垂直形のいずれかにて突設する。」 (エ)段落【0012】 「フック5の穴にはカラビナ6を通して携帯用のベルト7が取付けることができて、肩掛けなどして飲料入りボトル1を携帯することとなる。また、ボトル1と一体のフック5はデイバッグ、リュックサックなどに付随したカラビナ、下げ紐7a等に直接吊り下げて携帯することもできる。」 (オ)段落【0013】 「フック5はボトル1と一体のキャップ受けリング4に突設されているので、従来のようにボトル1に装着する手間が省け、またボトル1と一体のため着脱によって生じていたボトルよりの抜け外れも一切解消することとなる。」 エ 図面の簡単な説明、段落【0016】 「【図1】本考案の第1実施例を示すもので、(a)は開蓋前のボトルの斜視図、(b)は同、部分拡大断面図 【図2】フックにカラビナを通してベルトに吊下げた状態を示す斜視図 【図3】フックを側面視水平形(a)、傾斜形(b)、垂直形(c)とした例を示す部分側面図・・・」 オ 【図1】 「 」 カ 【図2】 「 」 キ 【図3】 「 」 (2)引用文献2 引用文献2の段落【0004】には、「すなわちこの考案の飲料用ボトルを容器として利用するための治具は、上述した問題点を解消するため、予め連通孔を開けた飲料用ボトルのキャップを用意した上、ボトルキャップ外面側には前記連通孔と連通するネジ孔をフランジ側に形成したフランジ付きのナットを配置し、またボトルキャップ内面側には筒状ボルトを配置した上、前記筒状ボルトをキャップの穴から差込んで前記フランジ付きのナットのネジ孔に螺着することにより、筒状ボルトとフランジ付きのナットとの間にボトルキャップを固着し、前記フランジ付きのナットを各種機器の適所に取り付け、また前記ボトルキャップに飲料用ボトルを取り付けて塗料等の容器として利用することができるようにしたことを特徴とするものである。」と記載されている。 (3)引用文献3 引用文献3には、次の記載がある。 ア 特許請求の範囲 「【請求項1】 ペットボトルなど物の凹凸を利用し、スライドさせることで片手でもホールド可能な道具。」 イ 発明の詳細な説明 「本発明は、ペットボトル栓などの凹凸を利用して携帯性や、使用前後の取り扱いを、解決したものである。以下、それを説明すると、 (イ) 片手ですき間(4)からキャップ(3)をいれる。 (ロ) 片手でホールド部(1)までスライドさせる。 (ハ) 片手でホールド部(1)からスライドさせてすき間(4)からキャップ(3)を出し飲料。開閉部(2)を使いズボンなどにつける。」 ウ 【図1】 「 」 エ 上記アないしウからみて、特許請求の範囲の請求項1の「ペットボトルなど物の凹凸を利用し、スライドさせることで片手でもホールド可能な道具。」は、線材を環状として、ペットボトル、すなわち容器を人体のベルト通しに取り付け可能なものであることは明らかであるから、引用文献3の上記記載から、「線材を環状として、容器を人体のベルト通しに取り付け可能とすること」が読み取ることができる。 2 引用発明 上記1(1)の記載事項から、引用文献6には、「キャップ3を初開蓋するとキャップ受けリング4との間で封切りされてキャップ受けリング4がボトル側に残り」(1(1)ウ(イ))、その「図1乃至図3は第1実施例を示すもので、飲料入りボトル1の壜口2に嵌着するキャップ3の受けリング4に通し穴5aを有すフック5を突設した例」(同(ア))であって、「ボトル1と一体のフック5はデイバッグ、リュックサックなどに付随したカラビナ、下げ紐7aに直接吊り下げて携帯することもできる」(同(エ))というのであるから、引用文献6には、 「キャップ3を初開蓋するとボトルに残るボトル1と一体のキャップ受けリング4に設けられたフック5の通し穴5aを用いて、デイバッグ、リュックサックなどに付随した下げ紐7aに直接吊り下げて携帯するボトル1」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 第5 対比 1 本願発明と引用発明を対比する。引用発明における「キャップ3」、「ボトル1」、「キャップ受けリング4」、「下げ紐7a」は、本願発明における「キャップ」、「容器」、「リング」、「線材」にそれぞれ相当する。 2 一致点 そうすると、本願発明と引用発明の一致点は、次のとおりのものである。 <一致点> 「ボトルのキャップの下端に予めキャップと一体の状態で前記ボトルの首部に嵌めてあるリングであって、初めてボトルを開口する際に前記キャップから分離されて残った前記リング及び線材を利用して取付け支持可能としたことを特徴とする携帯式の容器。」 3 相違点 本願発明と引用発明とを対比すると、次の点が一応の相違点である。 (1)相違点1 容器及びリングの材料について、本願発明においては、容器が「ペットボトル」であり、リングが「合成樹脂製」であるのに対して、引用発明では、容器及びリングの材料が明らかでない点。 (2)相違点2 線材の容器への取付けについて、本願発明では、「初めてペットボトルを開口する際にキャップから分離されて残ったリングに挿通して取付け」るのに対して、引用発明では、リングに設けられたフックの通し穴に挿通して取付ける点。 (3)相違点3 線材及び容器の支持について、本願発明では、「環状の線材を利用して人体の腰のベルトやベルト通しに取付け支持可能」と特定されているのに対し、引用発明の線材は、環状か否か明らかでなく、デイバッグ、リュックサックなどに取付支持可能である点。 (4)相違点4 容器の用途について、本願発明においては、塗料容器であるのに対し、引用発明においては、飲料用容器である点。 第6 判断 1 相違点1について 引用文献6に明示はないものの、飲料用のペットボトルは周知なものであり、同ペットボトルのリングは合成樹脂製とされることが通常であるところ、当業者が引用文献6の容器を合成樹脂製リング付きのペットボトルとすることは、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。 2 相違点2について (1)本願発明の「リングに挿通して取付け」は、挿通する対象が「リング」であることを規定しているのみであるから、引用発明におけるリングに設けられたフックの通し穴に挿通して取付けた場合を排除するものということができない。ゆえに、相違点2は実質的な相違点ではない。 (2)審判請求人の主張に対して ア 平成28年10月21日付け意見書での主張 (ア)審判請求人は、上記意見書の「二.2.」において、「本発明はあくまでも、「もったいない」の精神を実現すべく、一度は使用してキャップを開けてリングをキャップから分離した使用済みのペットボトルを再利用するものですが、引用文献1?5の記載は、ペットボトルをそのまま再利用するものではありません。」と主張する。 (イ)引用文献2?5(引用文献1は、当審拒絶理由では引用しなかった。)に記載されたものは、再利用する用途に合わせてペットボトルに処置を施して再利用するものではあるものの、本願発明のものも、使用済みのペットボトルの残ったリングに線材を挿入するための処置(必要に応じて隙間に先端の尖ったナイフなどを差し込んで残存リング部Rの内径を強引に押し拡げる)を施して再利用するものであって、「そのまま」再利用するものとはいえず、審判請求人の主張は、その前提に誤りがあって、採用できない。 イ 平成29年3月12日付け審判請求書での主張 (ア)審判請求人は、上記審判請求書の「3.(c)一.」において「本願発明は、フックや孔部を新に形成するのでなく、必要に応じて隙間に先端の尖ったナイフなどを差し込んで残存リング部Rの内径を強引に押し拡げることも可能です。従って、特別に孔部を形成する加工などは必要ありません。」と主張する。 (イ)しかしながら、本願発明における発明特定事項は、「リングに挿通して取付けた環状の線材」というものであるから、引用文献6の図1ないし3における通し穴5aを挿通するものも包含されると解される。審判請求人の上記(ア)の主張は、本願発明を本願実施例レベルに狭く解釈したものであって、採用できない。 ウ 平成30年5月9日付け意見書での主張 (ア)審判請求人は、上記意見書の「二.1.」において、「本願発明は、残った前記リング自体に挿通するので、特別にフック5を突設して、その通し穴5aに線材を挿通する構造とは全く異なります。」と主張する。 (イ)しかしながら、本願発明は「リング」について、「ペットボトルのキャップの下端に予めキャップと一体の状態で前記ペットボトルの首部に嵌めてある合成樹脂製のリングに挿通して」という事項を発明特定事項としているから、残ったリング自体に挿通という主張によって、リングにフックが突設されているものが除外されるとはいえず、上記主張は、特許法36条5項の規定によって、「特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない」とされている本願請求項1の記載に基づかないものであり、理由がない。 3 相違点3について 引用文献3には、線材を環状として、容器を人体のベルト通しに取り付ける可能とすることが記載されている。引用文献3に記載された技術事項を引用発明に適用することは、当業者が容易になし得ることといえる。 4 相違点4について 引用文献2には、飲料用ボトルを、塗料容器として再利用することが記載されている。引用文献2に記載された技術事項を引用発明に適用することは当業者が容易に行い得ることといえる。 5 また、引用発明に上記引用文献2及び3に記載された技術事項を適用することにより、予測を超える効果が奏されるとは認められない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明及び引用文献2及び3に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-06-18 |
結審通知日 | 2018-06-19 |
審決日 | 2018-07-02 |
出願番号 | 特願2016-82466(P2016-82466) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 悟史 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
渡邊 豊英 門前 浩一 |
発明の名称 | 携帯式の塗料容器 |
代理人 | 福島 康文 |