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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1343382
審判番号 不服2017-2582  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-22 
確定日 2018-08-16 
事件の表示 特願2014-548502「端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月30日国際公開、WO2014/080744〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年11月1日(優先権主張 平成24年11月22日)を国際出願日とする出願であって、平成27年8月21日に手続補正がされ、平成28年8月19日付けで拒絶理由が通知され、同年10月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月17日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成29年2月22日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、平成29年2月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりである
「 【請求項1】
マクロ基地局と前記マクロ基地局とは異なる通信装置に信号を送信可能な端末装置であって、
前記マクロ基地局から、前記マクロ基地局との通信で使用する情報を含み、第1の信号フォーマットで構成される第1の制御信号、または前記通信装置との通信で使用する情報を含み、第2の信号フォーマットで構成される第2の制御信号を受信し、
前記第1の信号フォーマットと、前記第2の信号フォーマットとは、互いに異なるフォーマットであり、前記端末装置がデータを送信するために必要な周波数割り当て情報を含み、
前記第1の信号フォーマットで指定可能な周波数割り当てにおける最大クラスタ数と、
前記第2の信号フォーマットで指定可能な周波数割り当てにおける最大クラスタ数とは異なる値であり、
前記端末装置は、前記第1の制御信号を受信した場合は、前記第1の信号フォーマットで示される周波数割り当てを用いて信号を送信し、
前記第2の制御信号を受信した場合は、前記第2の信号フォーマットで示される周波数割り当てを用いてOFDM信号またはDFT-S-OFDM信号を送信する端末装置。」(以下、「本願発明」という。)

第3 原査定の拒絶の理由
拒絶査定の理由である、平成28年8月19日付け拒絶理由通知の理由2は、概略、次のとおりである。

理由2(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

そして、理由2についてのコメントの概要は以下のとおりである。
「(端末装置が)第1の通信装置から、前記第1の通信装置に関する第1の制御情報、または、第2の通信装置に関する第2の制御情報を受信する」ことが、発明の詳細な説明に記載したものではない。
マクロ基地局からピコ基地局に関する制御情報を受信すること、また、ピコ基地局からマクロ基地局に関する制御信号を受信することが、発明の詳細な説明に記載されていない。

また、平成28年8月19日付けの拒絶査定における理由2についてのコメントの概要は以下のとおりである。
「(端末装置が)前記第1の通信装置から、前記第1の通信装置との通信で使用する情報を含み、第1の信号フォーマットで構成される第1の制御信号、または前記第2の通信装置との通信で使用する情報を含み、第2の信号フォーマットで構成される第2の制御信号を受信(する)」ことが、発明の詳細な説明に記載したものではない。
マクロ基地局からピコ基地局に関する制御情報を受信すること、また、ピコ基地局からマクロ基地局に関する制御信号を受信することが、発明の詳細な説明に記載されていない。

第4 当審の判断
1.発明の詳細な説明に発明として記載されたもの
(1)発明の詳細な説明及び図面の記載
発明の詳細な説明及び図面には、次の記載がある([当審注]:下線部は当審が付した。以下、同様。)。
ア 「【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の各実施形態ではセルラシステムにおけるアップリンクを前提に説明を行うが、ダウンリンクに対しても同様の発明が適用可能である。なお、ダウンリンクでの適用の場合には、送信電力の大きい基地局(例えば、マクロ基地局)では伝送特性の良好なアクセス方式を用い、送信電力の小さい基地局(例えば、ピコ基地局やフェムト基地局などを含めた省電力基地局)で電力効率のよいアクセス方式を使うといった方法も考えられるため、ダウンリンクも本発明に含まれる。また、アクセス方式についてシングルキャリアベースのアクセス方式であるDFT-S-OFDM(SC-FDMA)、Clustered DFT-S-OFDMを前提として説明するが、単純なOFDM等、その他の複数のサブキャリアを使用する方式に対して有効である。
【0015】
また、各実施形態では、端末装置は、マクロ基地局とピコ基地局とをダウンリンクの最大送信電力の大きさにより、区別している。基地局各々から、該基地局の最大送信電力に関する情報が、ダウンリンクで端末装置に伝えられていてもよいし、マクロ基地局から、自局とピコ基地局の最大送信電力に関する情報が、端末装置に伝えられていてもよい。もちろん、その他の識別方法を本発明から除外するものではない。
(中略)
【0017】
図2は、本実施形態に係る端末装置20の構成を示す概略ブロック図である。本実施形態では、端末装置が用いることが可能な最大送信ストリーム数が2の場合の構成を例に用いて説明する。なお、図2中のハイフンで番号が付加されている部(図2中のハイフン2が付加されている部)の数は、端末装置が用いることが可能な最大送信ストリーム数によって決定される。端末装置20は、符号化部201-1、201-2、S/P(Serial/Parallel:直並列)変換部202-1、202-2、DFT(Discrete Fourier Transform:離散フーリエ変換)部203-1、203-2、電力制御部204-1、204-2、RB割当部205-1、205-2、プリコーティング部206、SRS多重部207-1、207-2、IDFT(Inverse Discrete Fourier Transform:逆離散フーリエ変換)部208-1、208-2、CP(Cyclic Prefix:サイクリックプレフィックス)挿入部209-1、209-2、P/S(Parallel/Serial:並直列)変換部210-1、210-2、D/A(Digital/Analog:ディジタル/アナログ)変換部211-1、211-2、RF(Radio Frequency:無線周波数)部212-1、212-2、送信アンテナ部213-1、213-2、制御部214、SRS生成部215、受信アンテナ部220、受信部221を含んで構成される。
(中略)
【0021】
RB割当部205-1は、制御部214から指定されたリソースブロックに、電力制御部204-1において係数を乗算された離散スペクトルを配置して、第1のストリームの周波数信号を生成する。RB割当部205-2は、電力制御部204-2において係数を乗算された離散スペクトルに対して、同様の処理をして、第2のストリームの周波数信号を生成する。なお、ここでリソースブロックとは、1以上の連続するサブキャリアと1シンボル時間以上の連続する時間幅で構成されるものであり、マクロ基地局装置30aおよびピコ基地局装置30bが、端末装置20に無線リソースを割り当てる際の最小割当単位である。
(中略)
【0026】
RF部212-1は、D/A変換部211-1が生成したアナログ信号を、無線周波数にアップコンバートし、送信アンテナ部213-1から無線送信する。RF部212-2は、D/A変換部211-2が生成したアナログ信号を、無線周波数にアップコンバートし、送信アンテナ部213-2から無線送信する。
【0027】
受信アンテナ部220は、マクロ基地局装置30aおよびピコ基地局装置30bが送信した信号を受信する。受信部221は、受信アンテナ部220が受信した信号から制御情報CIを検出し、制御部214に入力する。この制御情報CIには、送信電力の制御に関する電力制御情報、リソースブロックの割り当て情報、符号化率と変調方式を指定するMCS(Modulation and Coding Scheme)情報、ストリーム数を指定するランク情報、プリコーディング行列を指定するプリコーディング情報、サウンディングリファレンス信号の配置を指定するSRS情報が含まれる。
【0028】
制御部214は、受信部221から入力された制御情報CIに基づき、符号化部201-1、201-2に対して、符号化率と変調方式とを指定する。同様に、制御部214は、入力された制御情報CIに基づき、電力制御部205-1、205-2に対して、電力を制御するために、周波数信号に乗算する係数を指定する。また、制御部214は、入力された制御情報CIに基づき、RB割当部205-1、205-2に対して、信号を配置するリソースブロックを指定する。なお、本実施形態では、制御情報CIに含まれ、リソースブロックの割り当てを指定する割り当て情報のフォーマットが、マクロ基地局装置30aと、ピコ基地局装置30bとで異なる。」

イ 「【0032】
図3は、制御部214の構成を示す概略ブロック図である。制御部214は、割り当て情報抽出部230、割り当てRB判定部231、基地局種別判別部232、電力制御部情報抽出部233、係数算出部234、SRSスケジュール決定部235、マクロ用間隔記憶部236、ピコ用間隔記憶部237、プリコーディング決定部238、MCS決定部239を含んで構成される。割り当て情報抽出部230は、受信部221から入力された制御情報CIから、割り当て情報を抽出する。割り当て情報抽出部230は、抽出の対象とする割り当て情報のフォーマットを、基地局種別判定部232から取得した相手基地局の種別に応じて変更する。
【0033】
なお、相手基地局の種別がマクロ基地局であるときに、抽出の対象とする割り当て情報のフォーマットよりも、相手基地局の種別がピコ基地局であるときに、抽出の対象とする割り当て情報のフォーマットの方が、ビット数の少ないフォーマットである。例えば、割り当て情報抽出部230は、基地局種別判定部232から取得した相手基地局の種別がマクロ基地局であるときは、クラスタ数の最大値が「3」の割り当て情報を、制御情報CIから抽出する。また、割り当て情報抽出部230は、基地局種別判定部232から取得した相手基地局の種別がピコ基地局であるときは、クラスタ数の最大値が「2」の割り当て情報を、制御情報CIから抽出する。すなわち、相手基地局の種別がマクロ基地局であるときよりもピコ基地局であるときのほうが、クラスタ数の最大値が小さいため、ビット数の少ないフォーマットとなる。
【0034】
割り当てRB判定部231は、割り当て情報抽出部230が抽出した割り当て情報に基づいた、信号を配置するリソースブロックの指定を、RB割当部205-1、205-2に通知する。基地局種別判定部232は、電力制御情報として通知された相手基地局の最大送信電力に関する情報に基づき、相手基地局の種別を判定し、判定結果を割り当て情報抽出部230とSRSスケジュール決定部235とに通知する。なお、基地局の種別には、マクロ基地局と、ピコ基地局とがある。基地局種別判定部232は、最大送信電力が、所定の閾値を越えていたらマクロ基地局、越えていなかったらピコ基地局と判定する。なお、最大送信電力に関する情報は、相手基地局がシステム情報として通知したものを用いるようにしてもよい。また、相手基地局が、自局の種別を示す情報をシステム情報として通知し、基地局種別判定部232は、情報に基づき、相手基地局の種別を判定するようにしてもよい。
【0035】
電力制御情報抽出部233は、制御情報CIから電力制御情報を抽出する。電力制御情報抽出部233は、電力制御情報のうち、相手基地局の最大送信電力を示す情報を、基地局種別判定部232に通知する。また、電力制御情報抽出部233は、電力制御情報のうち、端末装置20の送信電力を指定する情報を、係数算出部234に通知する。係数算出部234は、指定された送信電力となるように、周波数信号に乗じる係数を算出する。なお、送信電力を指定する情報は、前回の送信電力に対する差分を指定する情報であってもよい。その場合、係数算出部234は、該情報が指定する差分に基づき、前回の係数に対して変更を加えた値を、周波数信号に乗じる係数とする。」

ウ 「【0044】
図5は、マクロ基地局装置30aが生成する割り当て情報の例を示す図である。本実施形態の例では、マクロ基地局装置30aが生成する割り当て情報のフォーマットは、クラスタ数の最大値(最大分割数)が「3」のフォーマットである。図5に示す割り当て情報の例は、クラスタCl1のRB番号「0」、RB数「3」と、クラスタCl2のRB番号「5」、RB数「2」と、クラスタCl3のRB番号「8」、RB数「2」とからなる。すなわち、RB番号を配置する領域とRB数を配置する領域とを、それぞれ3つ(クラスタ数の最大値)有するフォーマットとなっている。
(中略)
【0046】
図6は、ピコ基地局装置30bが生成する割り当て情報の例を示す図である。本実施形態の例では、ピコ基地局装置30bが生成する割り当て情報のフォーマットは、クラスタ数の最大値がマクロ基地局装置30aの場合よりも小さい値である「2」のフォーマットである。図5に示す割り当て情報の例は、クラスタCl1のRB番号「13、RB数「12」と、クラスタCl2のRB番号「29」、RB数「6」とからなる。すなわち、RB番号を配置する領域とRB数を配置する領域とを、それぞれ2つ(クラスタ数の最大値)有するフォーマットとなっている。
(中略)
【0048】
なお、割り当て情報のフォーマットとして、その他のフォーマットが用いられても良い。例えば、各クラスタの先頭のRB番号と終端のRB番号との組み合わせを示すビット情報であっても良い。この場合においても、ピコ基地局装置30bにおけるクラスタ数の最大値を減らすことにより、必要なビット数を削減することができる。また、ピコ基地局装置30bにおけるクラスタ数の最大値を「1」とし、端末装置20が、Clustered DFT-S-OFDMではなく、DFT-S-OFDMを用いて、ピコ基地局装置30bに対して送信するようにしてもよい。」

エ 「【0061】
これらの理由から、ピコ基地局装置30bと端末装置20との接続においては、最大クラスタ数をマクロ基地局装置30aとの接続の場合より小さくし、割り当て情報に必要なビット数を削減することで制御情報によるオーバーヘッドを削減する方が、周波数ダイバーシチ利得による効果よりも、スループットの改善効果が大きい。
即ち、マクロ基地局装置30aに対して接続する際のクラスタ数の最大値に対し、ピコ基地局装置30bに接続する際のクラスタ数の最大値を小さくすれば、通信品質劣化を起こすことなく、制御情報の情報量を削減することが可能になる。」

オ 「【0070】
図10は、マクロ基地局装置30aの構成を示す概略ブロック図である。マクロ基地局装置30aは、制御データ生成部300a、データ送信部301、データ受信部302、送信アンテナ303、複数の受信アンテナ304を含んで構成される。制御データ生成部300aは、データ受信部302から入力された伝搬路推定値を参照して、端末装置20に通知する制御情報CIを生成する。制御データ生成部300aは、生成した制御情報CIをデータ送信部301に入力し、端末装置20に送信させる。
【0071】
前述したように、制御情報CIに、送信電力の制御に関する電力制御情報、リソースブロックの割り当て情報、符号化率と変調方式を指定するMCS(Modulation and Coding Scheme)情報、ストリーム数を指定するランク情報、プリコーディング行列を指定するプリコーディング情報、サウンディングリファレンス信号の配置を指定するSRS情報が含まれる。なお、制御データ生成部300aは、上りリンクのリソースブロックの割り当てを決定するスケジューリングを行う際に、端末装置20のクラスタ数の最大値が「3」である場合を例とすると、制御データ生成部300aが生成する上りリンクのリソースブロックの割り当て情報は、図5に例示したクラスタ数の最大値が「3」の割り当て情報である。」

カ 「【0076】
図11は、ピコ基地局装置30bの構成を示す概略ブロック図である。ピコ基地局装置30bは、マクロ基地局装置30aとは、制御データ生成部300aに変えて、制御データ生成部300bを有する点と、送信部301の最大送信電力がマクロ基地局装置30aよりも小さい点が異なる。その他の部分は、同様であるので、説明を省略する。制御データ生成部300bは、データ受信部302から入力された伝搬路推定値を参照して、端末装置20に通知する制御情報CIを生成する。制御データ生成部300bは、生成した制御情報CIをデータ送信部301に入力し、端末装置20に送信させる。
【0077】
マクロ基地局装置30aと同様に、制御情報CIに、送信電力の制御に関する電力制御情報、リソースブロックの割り当て情報、符号化率と変調方式を指定するMCS(Modulation and Coding Scheme)情報、ストリーム数を指定するランク情報、プリコーディング行列を指定するプリコーディング情報、サウンディングリファレンス信号の配置を指定するSRS情報が含まれる。しかし、制御データ生成部300bは、上りリンクのリソースブロックの割り当てを決定するスケジューリングを行う際に、端末装置20のクラスタ数の最大値が「2」である場合を例とすると、制御データ生成部300bが生成する上りリンクのリソースブロックの割り当て情報は、図6に例示したクラスタ数の最大値が「2」の割り当て情報である。」

キ 「【0080】
更に、端末装置20とピコ基地局装置30bとの間で、周波数選択ダイバーシチ利得を全く期待しない場合、ピコ基地局装置30bから端末装置20に対して、通信機会毎に使用するリソースブロック割り当ての情報を通知することを全く行わなければ(端末装置20がマクロ基地局装置30aと通信する場合は、マクロ基地局装置30aから端末装置20に対して、通信機会毎に使用するリソースブロック割り当ての情報を通知するものとする)、更に、制御情報を削減することができる。この場合は、端末装置20毎にあらかじめ使用するリソースブロックを決定しておく、あるいは、端末装置20固有のID等の値に基づいて、リソースブロックを決定するなどの方法がある。更に、フレーム番号にも依存させて使用するリソースを変更することで、伝搬路特性の悪い周波数のリソースブロックを常に使用してしまう状況を回避できる。」

ク 図2、図3、図10及び図11は次のとおりである。
図2

図3

図10


図11


(2)発明の詳細な説明に発明として記載されたもの
ア 上記段落【0044】、【0070】?【0071】、【0080】の記載及び図10によれば、マクロ基地局装置30aは、制御データ生成部300a、データ送信部301等を含んで構成され、端末装置20がマクロ基地局装置30aと通信する場合、制御データ生成部300aは、送信電力の制御に関する電力制御情報、上りリンクの通信機会毎に使用するリソースブロックの割り当て情報を含む制御情報CIを生成し、データ送信部301を介して端末装置20に通知する。ここで、上りリンクのリソースブロックの割り当てを決定するスケジューリングを行う際に、マクロ基地局装置30aが生成する割り当て情報のフォーマットは、クラスタ数の最大値である「3」のフォーマットである。
また、上記段落【0046】、【0076】?【0077】の記載及び図11も参照すれば、ピコ基地局装置30bは、制御データ生成部300b、データ送信部301等を含んで構成され、端末装置20がピコ基地局装置30bと通信する場合、制御データ生成部300bは、送信電力の制御に関する電力制御情報、上りリンクの通信機会毎に使用するリソースブロックの割り当て情報を含む制御情報CIを生成し、データ送信部301を介して端末装置20に通知する。ここで、上りリンクのリソースブロックの割り当てを決定するスケジューリングを行う際に、ピコ基地局装置30bが生成する割り当て情報のフォーマットは、クラスタ数の最大値がマクロ基地局装置30aの場合よりも小さい値である「2」のフォーマットである。さらに、上記段落【0048】によれば、クラスタ数の最大値を「1」としてもよい。
そして、端末装置20に関する説明中の、「ここでリソースブロックとは、(中略)、マクロ基地局装置30aおよびピコ基地局装置30bが、端末装置20に無線リソースを割り当てる際の最小割当単位である。」(段落【0021】)、「受信アンテナ部220は、マクロ基地局装置30aおよびピコ基地局装置30bが送信した信号を受信する。受信部221は、受信アンテナ部220が受信した信号から制御情報CIを検出し、制御部214に入力する。この制御情報CIには、送信電力の制御に関する電力制御情報、リソースブロックの割り当て情報、(中略)が含まれる。」(【0027】)との記載も参照すれば、マクロ基地局装置30a及びピコ基地局装置30bのそれぞれが、端末装置20に無線リソースを割り当てているといえ、端末装置20からみれば、マクロ基地局装置30aとの通信において、マクロ基地局装置30aから、クラスタ数の最大値「3」のフォーマットで構成された上りリンクの通信機会毎に使用するリソースブロックの割り当て情報を受信し、ピコ基地局装置30bとの通信において、ピコ基地局装置30bから、クラスタ数の最大値「2」又は「1」のフォーマットで構成された上りリンクの通信機会毎に使用するリソースブロックの割り当て情報を受信するといえる。そして、上記段落【0048】によれば、クラスタ数の最大値が「1」の場合、端末装置20は、Clustered DFT-S-OFDMではなく、DFT-S-OFDMを用いて、ピコ基地局装置30bに対して送信するようにしてもよい。

イ 上記段落【0017】、【0021】、【0026】?【0028】の記載及び図2によれば、端末装置20は、符号化部201-1、電力制御部204-1、RB割当部205-1、送信アンテナ部213-1、制御部214、受信部221等を含んで構成される。また、受信部221から入力された制御情報CIには、送信電力の制御に関する電力制御情報、リソースブロックの割り当て情報、符号化率と変調方式を指定するMCS情報等が含まれる。そして、制御部214は、当該制御情報CIに基づき、符号化部201-1に対して、符号化率と変調方式とを指定し、電力制御部205-1に対して、電力を制御するために、周波数信号に乗算する係数を指定し、RB割当部205-1に対して、信号を配置するリソースブロックを指定し、これにより、端末装置20は、マクロ基地局装置30a又はピコ基地局装置30bによって割り当てられた無線リソースを用いて送信アンテナ部213-1から無線送信を行うといえる。
ここで、端末装置20の制御部214に関し、上記段落【0028】、【0032】?【0035】の記載及び図3によれば、制御情報CIに含まれ、リソースブロックの割り当てを指定する割り当て情報のフォーマットは、マクロ基地局装置30aとピコ基地局装置30bとで異なるため、受信部221から入力された制御情報CIから割り当て情報を抽出する割り当て情報抽出部230は、抽出の対象とする割り当て情報のフォーマットを、基地局種別判定部232から取得した相手基地局の種別に応じて変更する必要がある。
このため、基地局種別判定部232では、制御信号CIに含まれる電力制御情報として通知された相手基地局の最大送信電力に関する情報に基づいて相手基地局の種別(マクロ基地局かピコ基地局か)を判定し、判定結果を割り当て情報抽出部230に通知し、割り当て情報抽出部230は、相手基地局の種別に応じて抽出の対象とする割り当て情報のフォーマットを変更する。そして、段落【0034】には、基地局種別判定部232が相手基地局の種別を判定するための情報は、最大送信電力に関する情報でも、相手基地局がシステム情報として通知した自局の種別を示す情報でもよく、また、最大送信電力に関する情報は、制御情報CIに含まれる送信電力の制御に関する電力制御情報として通知しても、相手基地局がシステム情報として通知してもよいことも記載されている。
そして、マクロ基地局及びピコ基地局の最大送信電力は、動的に変化するものではないことが技術常識であり、段落【0015】には「基地局各々から、該基地局の最大送信電力に関する情報が、ダウンリンクで端末装置に伝えられていてもよいし、マクロ基地局から、自局とピコ基地局の最大送信電力に関する情報が、端末装置に伝えられていてもよい。」とも記載されている。
そうすると、当該最大送信電力に関する情報は、相手基地局から通知される割り当て情報のフォーマットを特定するために予め通知しておく情報であると解することができ、当該最大送信電力に関する情報は、制御信号CIに含まれる電力制御情報として端末装置に通知され、端末装置は、当該最大送信電力に関する情報に基づいて相手基地局の種別(マクロ基地局かピコ基地局か)を判定し、相手基地局の種別に応じて抽出の対象とする割り当て情報のフォーマットを変更すると解するのが相当である。
そして、端末装置20は、変更後のフォーマットに基づいて割り当て情報を抽出し、割り当て情報が指定するリソースブロックに信号を配置することにより、マクロ基地局装置30aによって割り当てられた無線リソースを用いて無線送信を行い、また、ピコ基地局装置30bによって割り当てられた無線リソースを用いてClustered DFT-S-OFDM又はDFT-S-OFDM信号をピコ基地局装置30bに対して送信するといえる。

ウ 上記ア及びイを総合すると、発明の詳細な説明に発明として記載されたものは、以下のとおりといえる。
(i)端末装置が、マクロ基地局装置30aとの通信において、マクロ基地局装置30aから、クラスタ数の最大値「3」のフォーマットで構成された上りリンクの通信機会毎に使用するリソースブロックの割り当て情報を受信し、当該割り当て情報を抽出し、当該割り当て情報が指定するリソースブロックに信号を配置することにより、マクロ基地局装置30aによって割り当てられた無線リソースを用いて無線送信を行うこと、
(ii)端末装置が、ピコ基地局装置30bとの通信において、ピコ基地局装置30bから、クラスタ数の最大値「2」又は「1」のフォーマットで構成された上りリンクの通信機会毎に使用するリソースブロックの割り当て情報を受信し、当該割り当て情報を抽出し、当該割り当て情報が指定するリソースブロックに信号を配置することにより、ピコ基地局装置30bによって割り当てられた無線リソースを用いてClustered DFT-S-OFDM信号又はDFT-S-OFDM信号をピコ基地局装置30bに対して送信すること、
(iii)端末装置において、相手基地局から通知される割り当て情報のフォーマットを特定するために予め通知しておく最大送信電力に関する情報が、制御信号CIに含まれる電力制御情報として通知され、当該最大送信電力に関する情報に基づいて相手基地局の種別(マクロ基地局かピコ基地局か)を判定し、相手基地局の種別に応じて抽出の対象とする割り当て情報のフォーマットを変更すること。

2.判断
発明の詳細な説明に発明として記載されたもの(上記1(2)ウ参照)の「マクロ基地局装置30a」、「ピコ基地局装置30b」は、それぞれ本願発明の「マクロ基地局」、「前記マクロ基地局とは異なる通信装置」に対応する。
また、「クラスタ数の最大値「3」のフォーマットで構成された上りリンクの通信機会毎に使用するリソースブロックの割り当て情報を受信」すること、及び「マクロ基地局装置30aによって割り当てられた無線リソースを用いて無線送信を行うこと」は、それぞれ本願発明の「第1の信号フォーマット」に含まれる上りリンクの通信機会毎に使用するリソースブロックの割り当てに係る「前記端末装置がデータを送信するために必要な周波数割り当て情報」である「前記マクロ基地局との通信で使用する情報を含み、第1の信号フォーマットで構成された第1の制御信号」を「受信」すること、及び「前記第1の信号フォーマットで示される周波数割り当てを用いて信号を送信」することに対応し、
「クラスタ数の最大値「1」のフォーマットで構成された上りリンクの通信機会毎に使用するリソースブロックの割り当て情報を受信」すること、及び「ピコ基地局装置30aによって割り当てられた無線リソースを用いて」「DFT-S-OFDM信号をピコ基地局装置30bに対して送信すること」は、本願発明の「第2の信号フォーマット」に含まれる上りリンクの通信機会毎に使用するリソースブロックの割り当てに係る「前記端末装置がデータを送信するために必要な周波数割り当て情報」である「前記通信装置との通信で使用する情報を含み、第2の信号フォーマットで構成された第2の制御信号」を「受信」すること、「前記第2の信号フォーマットで示される周波数割り当てを用いて」「DFT-S-OFDM信号を送信する」ことに対応する。

そうすると、発明の詳細な説明には、
「前記マクロ基地局との通信で使用する情報を含み、第1の信号フォーマットで構成される第1の制御信号、または前記通信装置との通信で使用する情報を含み、第2の信号フォーマットで構成される第2の制御信号を受信」すること、
「前記端末装置は、前記第1の制御信号を受信した場合は、前記第1の信号フォーマットで示される周波数割り当てを用いて信号を送信」すること、
前記第2の制御信号を受信した場合は、前記第2の信号フォーマットで示される周波数割り当てを用いてDFT-S-OFDM信号を送信する」こと
は、記載されているといえる。

しかしながら、発明の詳細な説明に発明として記載されたものは、上記1(2)ウ(ii)のとおり、マクロ基地局装置30aによって割り当てられた上記割り当て情報をマクロ基地局装置30aから受信し、ピコ基地局装置30bによって割り当てられた上記割り当て情報をピコ基地局装置30bから受信するものであるから、少なくとも、本願発明の「 前記マクロ基地局から、前記マクロ基地局との通信で使用する情報を含み、第1の信号フォーマットで構成される第1の制御信号、または前記通信装置との通信で使用する情報を含み、第2の信号フォーマットで構成される第2の制御信号を受信し、」との事項は、発明の詳細な説明に記載も示唆もなく、自明ともいえない。

よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

3 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、理由2について次のように主張している。
「 指摘事項(イ)について
(1)明細書の[0015]に、「マクロ基地局から、自局とピコ基地局の最大送信電力に関する情報が、端末装置に伝えられてもよい。」と記載されているように、第1の通信装置から受信した制御信号によって、第2の通信装置に関する情報が伝えられることがあることは記載されている。
そして、[0015]に、「端末装置は、マクロ基地局とピコ基地局とをダウンリンクの最大送信電力の大きさにより、区別している。」と記載されている。また、[0027]に、「制御情報CIには、送信電力の制御に関する電力制御情報、リソースブロック割り当て情報、符号化率と変調方式を指定するMCS(Modulation and Coding Scheme)情報、ストリーム数を指定するランク情報、プリコーディング行列を指定するプリコーディング情報、サウンディングリファレンス信号の配置を指定するSRS情報が含まれる。」と記載されている。さらに、[0034]に「基地局種別判定部232は、電力制御情報として通知された相手基地局の最大送信電力に関する情報に基づき、相手基地局の種別を判定し、」と記載されている。
(中略)
指摘事項(ロ)について
(2)同日付け手続補正書により、請求項1記載の「第1の通信装置」を「マクロ基地局」に、「第2の通信装置」を「マクロ基地局とは異なる通信装置」に補正した。(中略)
当該補正および上記[0015]、[0027]、[0034]の記載により、「マクロ基地局からピコ基地局に関する制御情報を受信すること」、および「マクロ基地局から受信した制御情報CI/割り当て情報が、マクロ基地局に関する情報かピコ基地局に関する情報かを区別する仕掛け」は、発明の詳細な説明に記載したものである。つまり、補正後の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。」

そこで検討するに、段落【0027】によれば、制御情報CIには、送信電力の制御に関する電力制御情報、リソースブロック割り当て情報等が含まれるところ、段落【0028】によれば、本願発明の「前記端末装置がデータを送信するために必要な周波数割り当て情報を含」む「第1」及び「第2の信号フォーマット」は、制御情報CIのフォーマットではなく、「リソースブロックの割り当てを指定する割り当て情報のフォーマット」である。そして、段落【0034】の「最大送信電力に関する情報は、相手基地局がシステム情報として通知したものを用いるようにしてもよい」ことに鑑みれば、「マクロ基地局から、自局とピコ基地局の最大送信電力に関する情報が、端末装置に伝えられてもよい」(段落【0015】)からといって、「前記通信装置との通信で使用する情報を含み、第2の信号フォーマットで構成される第2の制御信号」である「端末装置がデータを送信するために必要な周波数割り当て情報」が「マクロ基地局から」送信されることが記載されていると同然とはいえない。
また、上記1(2)イのとおり、最大送信電力に関する情報は、相手基地局から通知される割り当て情報のフォーマットを特定するために予め通知しておく情報であると解される。そして、請求人が主張する段落【0015】及び段落【0034】の上記記載は、最大送信電力に関する情報を制御情報CIに含まれる電力制御情報として通知する実施例において、相手基地局から通知される制御情報のフォーマットを特定するために予め通知された最大送信電力に関する情報に基づいて、相手基地局の種別(マクロ基地局かピコ基地局か)を判定し、相手基地局の種別に応じて抽出の対象とする割り当て情報のフォーマットを変更することを説明したものである。

したがって、本願発明の「 前記マクロ基地局から、前記マクロ基地局との通信で使用する情報を含み、第1の信号フォーマットで構成される第1の制御信号、または前記通信装置との通信で使用する情報を含み、第2の信号フォーマットで構成される第2の制御信号を受信し、」との事項は、段落【0015】、【0027】、【0034】には記載も示唆もなく、自明ともいえない。

したがって、請求人の上記主張は採用できない。

4 小括
以上より、少なくとも、請求項1に記載された
「 前記マクロ基地局から、前記マクロ基地局との通信で使用する情報を含み、第1の信号フォーマットで構成される第1の制御信号、または前記通信装置との通信で使用する情報を含み、第2の信号フォーマットで構成される第2の制御信号を受信し、」
との事項を含む本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

したがって、本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび
以上のとおり、本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-06-12 
結審通知日 2018-06-19 
審決日 2018-07-02 
出願番号 特願2014-548502(P2014-548502)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H04W)
P 1 8・ 55- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深津 始  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 北岡 浩
海江田 章裕
発明の名称 端末装置  
代理人 福地 武雄  

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