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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1343477
審判番号 不服2016-14188  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-23 
確定日 2018-08-22 
事件の表示 特願2014-547158「フィルム含有組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月20日国際公開、WO2013/089759、平成27年 1月 5日国内公表、特表2015-500337〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,国際出願日である平成23年12月16日にされたとみなされる特許出願であって,平成28年5月20日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年9月23日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲が補正され,平成29年11月20日付けで拒絶理由(以下「本件拒絶理由」という。)が通知されたものである。

第2 本願発明及び本件拒絶理由について
本願の請求項1?5に係る発明は,平成28年9月23日に補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載されている事項により特定されるとおりのものである。
また,本件拒絶理由の内容は,本審決末尾に掲記のとおりである。

第3 むすび
請求人は,本件拒絶理由に対して,指定期間内に特許法159条2項で準用する同法50条所定の意見書を提出するなどの反論を何らしていない。そして,本件拒絶理由を覆すに足りる根拠は見いだせず,本願は本件拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。

以下,本件拒絶理由の内容を掲記する。

本願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

請求項: 1?5
刊行物:
・国際公開第2010/114551号(査定の理由で引用された引用文献1。以下,「刊行物1」という。)
・特表2009-543900号公報(拒絶査定の備考欄のなお書きで審査官が提示した特許文献。以下,「刊行物3」という。)

[備考]
1 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は,平成28年9月23日に補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。(以下,順に「本願発明1」?「本願発明5」という。)
「【請求項1】
顔料を含む第一の単一層フィルムを含むオーラルケア組成物であって,
該第一のフィルムは,該第一のフィルムの乾燥重量で表して,20?60%の,メチルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,およびそれらの組合せから選択されるセルロースエーテル;10?30%のプロピレングリコール;1?5%のポリソルベート80;および15?55%の顔料を含み;
該第一のフィルムは,インビトロにて,室温,水の存在下で,30秒よりも長い時間の後に崩壊して該顔料を放出し,水性媒体中における該第一のフィルムの溶解速度が該第一のフィルムの厚みに逆比例し;および
該第一のフィルムの平均厚みが38.1?76.2μmである,組成物。
【請求項2】
該第一のフィルムが,水の存在下で,30秒よりも長く180秒よりも短いブラッシング,スクラビングまたはかき混ぜの時間の後に溶解し,それにより,該第一のフィルムに含まれる顔料の合計量の90%よりも多い量が放出される,請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該第一のフィルムの水性媒体中での溶解速度よりも速い水性媒体中の溶解速度を有する第二のフィルムを含み,ここで,該第二のフィルムは抗菌剤;着香剤,芳香剤;およびそれらの2以上の組合せから選択される活性剤を含む,請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
透明なジェル練り歯磨きであり,ここで,該顔料が,30?120秒の時間のブラッシングの後に該第一のフィルムから放出される,請求項1?3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
該顔料の全量の90%よりも多い量が同一の時点に該第一のフィルムから放出される,請求項1?4のいずれか一項に記載の組成物。」

2 刊行物に記載された発明
刊行物1には,特に実施例2?4に係る記載([0001],[0050]?[0054],表1?3)から,次のとおりの発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「使用時において泡の色を白色から青色に変化させるような視覚的シグナルを発揮する,色変化薄膜を含む練り歯磨き組成物であって,該薄膜は,不透明な白色層1,中間の青色層2及び不透明な白色層3からなり,かつ上記青色層2を上記白色層1及び上記白色層3で覆い隠すよう構成されており,上記薄膜は,該薄膜の乾燥重量(%)とともに表して,以下の成分からなる,組成物。
Methocel HPMC E5 36.140%
Methocel HPMC E50 10.175
TiO_(2) 13.567(=20.351*2/3)
青色顔料 6.784(=20.351*1/3)
プロピレングリコール 31.579
Tween 80 1.754 」

3 本願発明と引用発明との対比,判断
(1) 本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,引用発明の「薄膜」は本願発明1の「第一のフィルム」に,「Methocel HPMC E5」及び「Methocel HPMC E50」は「セルロースエーテル」に,「青色顔料」は「顔料」に,「Tween 80」は「ポリソルベート80」にそれぞれ相当する。
よって,上記両発明の相違点は次のとおりであると認める。
・ 相違点1
第一のフィルム(薄膜)の構成について,本願発明1は「単一層」のフィルムであると特定するのに対し,引用発明は「不透明な白色層1,中間の青色層2及び不透明な白色層3」からなる点。
・ 相違点2
第一のフィルム(薄膜)の性質について,本願発明1は「インビトロにて,室温,水の存在下で,30秒よりも長い時間の後に崩壊して該顔料を放出し,水性媒体中における該第一のフィルムの溶解速度が該第一のフィルムの厚みに逆比例」すると特定するのに対し,引用発明はそのような特定事項を有しない点。
・ 相違点3
第一のフィルム(薄膜)の平均厚みについて,本願発明1は「38.1?76.2μm」と特定するのに対し,引用発明はその点が明らかでない点。
・ 相違点4
第一のフィルム(薄膜)を構成する成分の割合のうち,プロピレングリコールについて,本願発明1が「10?30%」と特定するのに対して引用発明が「31.579%」と特定し,また顔料(青色顔料)について,本願発明1が「15?55%」と特定するのに対して引用発明が「6.784%」と特定する点。
イ 相違点についての検討
(ア) 相違点1について
引用発明は,その薄膜が不透明な白色層1,中間の青色層2及び不透明な白色層3の三層構造からなるものではあるが,適切な時間のブラッシングの後に色変化シグナルを供給して,利用者が自分の歯をより長い時間磨くことを促進するための,フィルムを含む練り歯磨き(オーラルケア組成物)を提供するといった課題を解決するものである点で本願発明1と何ら異なるものでない。また,上述の色変化シグナルは,(具体的には薄膜を構成する青色層2中に含まれたものではあるものの,)薄膜中に含まれた青色顔料が放出されることで発現するという意味で,本願発明1の機序と同じである。
引用発明は,青色顔料の配置について,青色層2に存在させ,これを白色層で挟むという三層構造とすることで薄膜中に局在化させたものであるが,これを非局在化させること,すなわち薄膜を白色層1及び3並びに青色層2を構成する成分の混合物からなる単一層とする程度のこと(三層構造のものから白色層1及び3を除去するという意味ではない。)は,当業者であれば想到容易である。
そして,本願明細書には,本願発明1が相違点1に係る構成を有することで格別顕著な効果を奏する旨の記載はなく,本願発明1の効果は,刊行物から予測の範囲内のものである。
(イ) 相違点2について
引用発明の薄膜は,溶解することで中に含まれている青色顔料が放出され,色変化シグナルが発現するものである。そして,そのような引用発明において,薄膜の溶解速度ないしは青色顔料の放出までの時間を特定の値に設定すること,また,その具体的な値として「インビトロにて,室温,水の存在下」という条件のもとで「30秒よりも長い時間の後」とすることは,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
また,本願発明1の「水性媒体中における該第一のフィルムの溶解速度が該第一のフィルムの厚みに逆比例」するとの特定は,本願発明1のフィルムが持つ性質を,その厚みとの関係で説明しているにすぎないものであるところ,本願発明1がフィルムの溶解速度の制御方法やフィルムの製造方法に係る発明であれば格別,物の発明である本願発明1において,上記特定は何ら意味を持たない。上記特定に係る相違は,実質的な相違点とはならない。
(ウ) 相違点3について
引用発明の薄膜の作成方法については,刊行物1の[0052]に具体的な記載があるところ,上記薄膜の平均厚みについて,「38.1?76.2μm」とする程度のことは,単なる設計事項にすぎない。
(エ) 相違点4について
引用発明の薄膜を構成する成分の配合割合を相違点4に係る構成のものとする程度のことも,単なる設計事項にすぎない。
ウ 小括
以上のとおりであるから,本願発明1は,引用発明に対し,いわゆる進歩性を有しないといえる。

(2) 本願発明2,4及び5について
引用発明との相違点(数値条件の相違)に係る構成は,本願発明1において検討したことと同様に,単なる設計事項にすぎないといえる。

(3) 本願発明3について
刊行物1(例えば[0047])には,引用発明の練り歯磨き組成物に,香味料などの任意成分(活性剤)をさらに含ませることができる旨の開示がある。そして,練り歯磨き組成物に活性剤を含ませるにあたり,活性成分を含ませたフィルムを用いることは刊行物3に記載のとおり本願の出願前に公知の技術であるところ(例えば【0016】),引用発明に刊行物3記載の技術を適用して本願発明3を想到することは格別困難でない。

(4) まとめ
したがって,本願発明1?5は,その出願前に頒布された刊行物1及び3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2018-03-19 
結審通知日 2018-03-27 
審決日 2018-04-11 
出願番号 特願2014-547158(P2014-547158)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片山 真紀  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 長谷川 茜
須藤 康洋
発明の名称 フィルム含有組成物  
代理人 村井 康司  

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