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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1343518
審判番号 不服2017-16699  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-09 
確定日 2018-09-11 
事件の表示 特願2015-546646「エンタテインメント装置、表示制御方法、プログラム及び情報記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月14日国際公開、WO2015/068699、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2014年(平成26年)11月4日(優先権主張 平成25年11月8日)を国際出願日とする出願であって、平成29年1月31日付けで拒絶理由が通知され、同年3月6日付けで手続補正がされ、同年6月16日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年8月17日付けで手続補正がされ、同年8月31日付けで平成29年8月17日付けの手続き補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年11月9日に拒絶査定不服の審判請求がされると同時に手続補正されたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成29年8月31日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

本願請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2013-54074号公報
2.特開2001-42891号公報


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

(1)審判請求時の補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、請求項1の「コマンド情報配置部」を特定する「前記音声が所与の情報を表す場合に、画面の表示内容に応じて決定される、第1の処理に対応付けられる第1のコマンドを示す第1のコマンド情報、又は、第2の処理に対応付けられる第2のコマンドを示す第2のコマンド情報、のいずれか一方を、当該表示内容に応じた当該画面内の位置に配置する」との記載を、「前記音声が所与の情報を表す場合に、画面に表されているゲームの場面が所定の場面であるか否かに応じて決定される、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理である第1の処理に対応付けられる第1のコマンドを示す第1のコマンド情報、又は、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理とは異なる第2の処理に対応付けられる第2のコマンドを示す第2のコマンド情報、のいずれか一方を、前記画面の表示内容に応じた当該画面内の位置に配置する」と補正するもの(下線部は補正部分を示す)であり、請求項4の「コマンド情報配置ステップ」、請求項5及び請求項6の「コマンド情報配置手順」についても同様の補正をするものである。

(2)上記補正について、新規事項を追加するものではないか、また、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるかについて、以下に検討する。

A.新規事項の追加について
出願当初の明細書・特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)には、「プレイ画面」について、以下の記載がある。

(a)段落0066?0074
「【0066】
図11は、当該ゲームプログラムの実行時に生成されてディスプレイ14に表示されるプレイ画面42の一例を示す図である。図11に示すプレイ画面42が表示されている際には、情報処理装置12はボイスコマンド入力不可能状態である。ここで例えば情報処理装置12がマジックワードを受け付けると、情報処理装置12はボイスコマンド入力可能状態に切り替わる。そしてプレイ画面42は、図12に示すように音声入力案内画像38が配置される状態に切り替わる。図12に示す音声入力案内画像38には、ホーム画面30に戻るコマンドを示すコマンド情報CIが配置されている。当該コマンド情報CIの左にはコマンド識別画像CIPが配置されている。
・・・(中略)・・・
【0072】
また本実施形態では、情報処理装置12は、画面の表示内容に応じて、特定のコマンドについては当該コマンドに対応するコマンド情報CIを配置するか否かを制御する。具体的には、例えば、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存するコマンドを示すコマンド情報CIについては、図7や図14に示すホーム画面30には配置されるが図12に示すプレイ画面42には配置されない。しかし、図12に示すプレイ画面42が表示されている場合でも、情報処理装置12は、「スクリーンショットを撮る」との語句を表す音声を受け付けた際には、プレイ画面42の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理を実行する。以上のように例えばコマンド情報CIが配置される領域ができるだけ小さい方が望ましい場合などに、音声入力による受付が可能なコマンドの一部についてのコマンド情報CIが表示されないようにしてもよい。このようにしてコマンド情報CIが配置される領域の大きさが節約されるようにすれば、画面に配置されるコマンド情報CIがユーザの邪魔になるおそれがさらに低減できることとなる。
【0073】
また、情報処理装置12は、複数のコマンド情報CIのそれぞれについて、画面の表示内容に応じて、当該コマンド情報を配置するか否かを制御するようにしてもよい。例えば図16に示すように、画面の表示内容によっては、ホーム画面30に戻るコマンドを示すコマンド情報CIの代わりに、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存するコマンドを示すコマンド情報CIが画面に配置されるようにしてもよい。図16には、一例としてゲームにおいてドラゴンを倒した場面が示されている。このような場面では、ユーザはキャプチャ画像を保存したくなる可能性が高い。そこでこのような場面では、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存するコマンドを示すコマンド情報CIが画面に配置されるようにしてもよい。
【0074】
そして、図16に示すプレイ画面42が表示されている場合に、「スクリーンショットを撮る」との語句を表す音声を情報処理装置12が受け付けた際には、プレイ画面42の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像が記憶部22に保存されるようにしてもよい。また、「ホーム画面」との語句を表す音声を受け付けた際には、表示されている画面が図14に示すホーム画面30に切り替わるようにしてもよい。」

(b)段落0098?0099
「【0098】
また、コマンド情報配置部68は、上述のように、画面の表示内容に応じた大きさの画面内の領域の表示内容を隠して当該領域にコマンド情報CIを配置してもよい。また、コマンド情報配置部68は、プレイ画面42が表示されている際には、ホーム画面30が表示されている際よりも小さな画面内の領域の表示内容を隠して当該領域にコマンド情報CIを配置してもよい。
【0099】
画面生成部70は、表示される画面、例えばホーム画面30やプレイ画面42を生成する。本実施形態では、画面生成部70は、所定のフレームレートで画面を生成する。画面生成部70は、コマンド情報配置部68が決定した配置に従ってコマンド情報CIが配置された画面を生成する。また画面生成部70は、選択肢特定部60が注目選択肢及び代替選択肢を特定した際には、当該注目選択肢が強調表示され、代替選択肢に対応付けられる名称を示す代替選択肢情報AIが配置されたホーム画面30を生成する。」

(c)新規事項の追加であるか否かの判断
上記補正における「画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理である第1の処理に対応付けられる第1のコマンドを示す第1のコマンド情報」、「画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理とは異なる第2の処理に対応付けられる第2のコマンドを示す第2のコマンド情報」は、それぞれ、段落0073に記載された「画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存するコマンドを示すコマンド情報CI」、「ホーム画面30に戻るコマンドを示すコマンド情報CI」を特定するものと認められる。
そして、段落0066の「情報処理装置12がマジックワードを受け付けると、・・・プレイ画面42は、・・・音声入力案内画像38が配置される状態に切り替わる。・・・音声入力案内画像38には、ホーム画面30に戻るコマンドを示すコマンド情報CIが配置されている。」との記載、段落0073の「情報処理装置12は、複数のコマンド情報CIのそれぞれについて、画面の表示内容に応じて、当該コマンド情報を配置するか否かを制御するようにしてもよい。例えば・・・ホーム画面30に戻るコマンドを示すコマンド情報CIの代わりに、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存するコマンドを示すコマンド情報CIが画面に配置されるようにしてもよい。」との記載、および「一例としてゲームにおいてドラゴンを倒した場面が示されている。・・・そこでこのような場面では、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存するコマンドを示すコマンド情報CIが画面に配置されるようにしてもよい。」との記載、段落0098の「コマンド情報配置部68は、・・・画面の表示内容に応じた大きさの画面内の領域の表示内容を隠して当該領域にコマンド情報CIを配置してもよい。また、コマンド情報配置部68は、プレイ画面42が表示されている際には、ホーム画面30が表示されている際よりも小さな画面内の領域の表示内容を隠して当該領域にコマンド情報CIを配置してもよい。」との記載を総合することにより、「情報処理装置12」で実装される機能手段である「コマンド情報配置部68」は、「音声が所与の情報を表す場合に、画面に表されているゲームの場面が所定の場面であるか否かに応じて決定される、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理である第1の処理に対応付けられる第1のコマンドを示す第1のコマンド情報、又は、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理とは異なる第2の処理に対応付けられる第2のコマンドを示す第2のコマンド情報、のいずれか一方を、前記画面の表示内容に応じた当該画面内の位置に配置する」機能を有するとの技術的事項を導くことができる。
してみれば、請求項1の「コマンド情報配置部」についてする補正は、当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。同様に、請求項4の「コマンド情報配置ステップ」、請求項5及び請求項6の「コマンド情報配置手順」についてする補正は、当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、審判請求時の補正は、当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、新規事項を追加する補正ではない。

B.特許請求の範囲の減縮を目的とするかについて
(a)補正前の「画面の表示内容に応じて決定される」を「画面に表されているゲームの場面が所定の場面であるか否かに応じて決定される」とする補正は、「画面の表示内容」を具体的に「画面に表されているゲームの場面が所定の場面であるか否か」と限定するものである。
(b)補正前の「第1の処理に対応付けられる第1のコマンドを示す第1のコマンド情報」を「画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理である第1の処理に対応付けられる第1のコマンドを示す第1のコマンド情報」とする補正は、「第1の処理」を具体的に「画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理である」と限定するものである。
(c)補正前の「第2の処理に対応付けられる第2のコマンドを示す第2のコマンド情報」を「画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理とは異なる第2の処理に対応付けられる第2のコマンドを示す第2のコマンド情報」とする補正は、「第2の処理」を具体的に「画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理とは異なる」と限定するものである。
(d)補正前の「当該表示内容に応じた当該画面内の位置に配置する」を「前記画面の表示内容に応じた当該画面内の位置に配置する」とする補正は、「当該表示内容に応じた」を具体的に「前記画面の表示内容に応じた」と限定するものである。

したがって、審判請求時の請求項1、4、5、6についてする補正は、補正前の各々の請求項の発明特定事項を限定するものである。
また、審判請求時の補正が、請求項1、4、5、6を減縮するものであること、補正前の請求項1、4、5、6に記載された発明と補正後の各々の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることは明らかであるから、上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-6に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明
本願の請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成29年11月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
音声を受け付ける音声受付部と、
前記音声が所与の情報を表す場合に、画面に表されているゲームの場面が所定の場面であるか否かに応じて決定される、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理である第1の処理に対応付けられる第1のコマンドを示す第1のコマンド情報、又は、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理とは異なる第2の処理に対応付けられる第2のコマンドを示す第2のコマンド情報、のいずれか一方を、前記画面の表示内容に応じた当該画面内の位置に配置するコマンド情報配置部と、
前記第1の処理又は前記第2の処理を実行する処理実行部と、を含み、
前記処理実行部は、前記第1のコマンド情報が前記画面に配置されており前記第2のコマンド情報が前記画面に配置されていない場合も、前記第2のコマンド情報が前記画面に配置されており前記第1のコマンド情報が前記画面に配置されていない場合も、前記音声受付部が受け付ける音声が前記第1コマンド情報を表す際には前記第1の処理を実行し、前記音声受付部が受け付ける音声が前記第2のコマンド情報を表す際には前記第2の処理を実行する、
ことを特徴とするエンタテインメント装置。」

なお、本願発明2-6の概要は以下のとおりである。
本願発明2、3は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明4-6は、それぞれ本願発明1に対応する方法の発明、プログラムの発明、プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。


第5 引用文献・引用発明等

1.引用文献1について
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により注目する点に付与した。以下、同様。)
(a)段落0023?0029
「【0023】
(基本的概念)
音声認識装置は、単独の装置として、あるいは、他の装置やシステムの一部として、構成することができる。以下では、音声認識装置を、車両に搭載されたナビゲーション装置の一部として構成した例について説明する。
・・・(中略)・・・
【0026】
適応コマンドをディスプレイに表示する方法として、本実施の形態では、ディスプレイに地図が表示されている場合に当該地図に重畳して適応コマンドを表示させる方法と、ディスプレイに標準コマンドを表示すべき場合に当該標準コマンドと同時に適応コマンドを表示させる方法との2通りの方法を使用する。同時に表示させるとは、ディスプレイにおける同一画面上に、これら標準コマンドと適応コマンドを表示させることを意味する。以下、前者の方法によって表示される適応コマンドを「重畳表示コマンド」、後者の方法によって表示される適応コマンドを「同一画面表示コマンド」と称する。
【0027】
(構成-ナビゲーション装置)
最初に、本実施の形態に係る音声認識装置をその一部とするナビゲーション装置の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るナビゲーション装置1を例示するブロック図である。このナビゲーション装置1は、図1に示すように、制御部2及びデータ記録部3を備えている。また、ナビゲーション装置1には、マイク4、タッチパネル5、ディスプレイ6、スピーカ7、及び現在位置検出処理部8が接続されている。
【0028】
(構成-ナビゲーション装置-制御部)
制御部2は、ナビゲーション装置1を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態に係る音声認識プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介してナビゲーション装置1にインストールされることで、制御部2の各部を実質的に構成する。
【0029】
この制御部2は、機能概念的に、音声認識制御部2a、音声検出部2b、及び音声認識コマンド特定部2cを備える。音声認識制御部2aは、音声認識コマンド特定部2cにより特定された音声認識コマンドに対応する所定の制御を実行すると共に、音声認識コマンドを選択してディスプレイ6に表示させる音声認識制御手段である。音声検出部2bは、ユーザの発話音声を検出する音声検出手段である。音声認識コマンド特定部2cは、音声検出部2bにて検出されたユーザの発話音声に基づいて、当該ユーザの発話音声に含まれる音声認識コマンドを特定する音声認識コマンド特定手段である。これらの各部によって実行される処理の詳細については後述する。」

(b)段落0048?0052
「【0048】
(処理-音声認識制御処理)
次に、図4の音声認識制御処理に戻り、音声認識制御部2aは、ディスプレイ6に地図を表示中であるか否かを判定する(SA3)。そして、表示中である場合(SA3、Yes)、音声認識制御部2aは、地図に重畳表示コマンドを重畳表示するための地図重畳表示処理を起動する(SA4)。一方、表示中でない場合(SA3、No)、音声認識制御部2aは、音声識別コマンドを選択するためのメニュー(以下、音声識別メニュー)をディスプレイ6に表示中であるか否を判定し(SA5)、表示中である場合には(SA5、Yes)、同一画面表示コマンドを表示するための同一画面表示処理を起動し(SA6)、表示中でない場合には(SA5、No)、これら地図重畳表示処理や同一画面表示処理を起動することなく、SA7に移行する。
【0049】
(処理-音声認識制御処理-地図重畳表示処理)
まず、地図重畳表示処理(SA4)について説明する。図6は、地図重畳表示処理のフローチャートである。この処理において、音声認識制御部2aは、ディスプレイ6に表示されている地図に、重畳表示コマンドを重畳表示する(SC1)。すなわち、音声認識制御部2aは、図5の適応マッチング処理のSB3で選択されSB4でソートされた適応コマンドを、重畳表示コマンドとして表示する。この重畳表示コマンドは、階層構造において最下位階層に位置付けられている音声認識コマンド(最下位階層コマンド)であることから、ユーザが直に操作内容を特定することができる音声認識コマンドを表示でき、音声認識による操作内容の指示をショートカットして迅速に行うことが可能になる。
【0050】
このように重畳表示コマンドを重畳表示する際の表示領域は、ユーザにとって重要であると考えられる表示領域を除外した表示領域であることが好ましい。ユーザにとって重要であると考えられる表示領域としては、例えば、車両の現在位置が表示されている領域、走行経路が設定されている場合には出発地、目的地、走行経路が表示されている領域、交差点や案内標識の拡大表示領域、あるいは高速略図等の略図表示領域を挙げることができる。
・・・(中略)・・・
【0052】
次いで、図6において、音声出力を行った後や(SC4)、更新有りフラグがONになっていない場合(SC2、No)、音声認識コマンド特定部2cは、所定時間(例えば、1分)以内に、重畳表示コマンドの操作があったか否かを判定する(SC5)。具体的には、音声認識コマンド特定部2cは、ユーザの発話音声がマイク4を介して入力され音声検出部2bにて検出されたか否かを監視し、検出された場合には、当該検出された発話音声に、その時点でディスプレイ6に表示している重畳表示コマンドのいずれか一つが含まれているか否かを、公知の音声認識方法にて音声認識する。そして、重畳表示コマンドが含まれている場合、音声認識コマンド特定部2cは、音声認識コマンドの操作があったものと判定する(SC5、Yes)。この場合、重畳表示コマンドが最下位階層に位置付けられた音声認識コマンドであり、当該重畳表示コマンドが操作された場合には直ちに操作内容を特定できるため、当該重畳表示コマンドを対象とした音声認識コマンド実行処理を起動する(SC6)。そして、音声認識コマンド実行処理が終了した場合や、重畳表示コマンドの操作がないものと判定された場合には(SC5、No)、地図重畳表示処理を終了する。」

(c)段落0056?0060
「【0056】
(処理-音声認識制御処理-同一画面表示処理)
次に、図4の同一画面表示処理(SA6)について説明する。図9、10は、同一画面表示処理のフローチャートである。この処理において、音声認識制御部2aは、ディスプレイ6に標準コマンドを表示する(SE1)。この標準コマンドの選択は従来と同様の方法で行うことができ、最初に表示する標準コマンドとしては、階層構造により階層化された所定の音声認識コマンドの中で、最上位階層の標準コマンドを表示する。
【0057】
次いで、音声認識制御部2aは、ディスプレイ6に同一画面表示コマンドを表示する(SE2)。具体的には、音声認識制御部2aは、図5の適応マッチング処理のSB3で選択されSB4でソートされた適応コマンドを、同一画面表示コマンドとして、SE1で表示した標準コマンドと平行に表示する。
・・・(中略)・・・
【0060】
次に、音声認識コマンド特定部2cは、ユーザからの音声認識コマンドの操作が所定時間以内にあったか否かを図6のSC5と同様に判定し(SE6)、操作があった場合には、当該操作があった音声認識コマンドが、最下位階層コマンドではない標準コマンドの操作であるか否かを判定する(SE7)。そして、最下位階層コマンドではない標準コマンドの操作でないと判定した場合(SE7、No)、同一画面表示コマンドの操作又は最下位階層コマンドの標準コマンドの操作であり、当該操作された同一画面表示コマンド又は標準コマンドによって操作内容が特定できるので、音声認識コマンド特定部2cは、当該同一画面表示コマンド又は標準コマンドを対象とした音声認識コマンド実行処理を起動する(SE8)。この音声認識コマンド実行処理は、上述した図8の音声認識コマンド実行処理と同じであるため、その詳細な説明を省略する。」

(d)段落0077
「【0077】
(適応コマンドの表示方法について)
・・・(中略)・・・
また、各適応コマンドを個別的に表示する以外にも、例えば、「その他」という音声認識コマンドをディスプレイ6に表示し、当該音声認識コマンドが選択された場合には、その時点でディスプレイ6に表示していない他の適応コマンドをディスプレイ6に表示するようにしてもよい。」

(e)図11
図11には、標準コマンドとして、「曲を探す」、「インターネット」等が記載されていると認められる。

上記記載(特に下線部)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

〈引用発明〉
「制御部2及びデータ記録部3を備え、マイク4、タッチパネル5、ディスプレイ6、スピーカ7、及び現在位置検出処理部8が接続されたナビゲーション装置1であって、
制御部2は、機能概念的に、音声認識制御部2a、音声検出部2b、及び音声認識コマンド特定部2cを備え、音声認識制御部2aは、音声認識コマンド特定部2cにより特定された音声認識コマンドに対応する所定の制御を実行すると共に、音声認識コマンドを選択してディスプレイ6に表示させる音声認識制御手段であり、音声検出部2bは、ユーザの発話音声を検出する音声検出手段であり、音声認識コマンド特定部2cは、音声検出部2bにて検出されたユーザの発話音声に基づいて、当該ユーザの発話音声に含まれる音声認識コマンドを特定する音声認識コマンド特定手段であり、
音声認識制御部2aは、ディスプレイ6に地図を表示中であるか否かを判定し、表示中である場合地図に重畳表示コマンドを重畳表示するための地図重畳表示処理を起動し、一方、表示中でない場合、音声識別コマンドを選択するためのメニュー(以下、音声識別メニュー)をディスプレイ6に表示中であるか否を判定し、表示中である場合には、同一画面表示コマンドを表示するための同一画面表示処理を起動し、
音声認識制御部2aは、地図重畳表示処理において、ディスプレイ6に表示されている地図に、重畳表示コマンドを重畳表示し、重畳表示コマンドを重畳表示する際の表示領域は、ユーザにとって重要であると考えられる表示領域を除外した表示領域であることが好ましく、
次いで、音声出力を行った後、音声認識コマンド特定部2cは、ユーザの発話音声がマイク4を介して入力され音声検出部2bにて検出されたか否かを監視し、検出された場合には、当該検出された発話音声に、その時点でディスプレイ6に表示している重畳表示コマンドのいずれか一つが含まれているか否かを、公知の音声認識方法にて音声認識し、重畳表示コマンドが含まれている場合、音声認識コマンド特定部2cは、音声認識コマンドの操作があったものと判定し、当該重畳表示コマンドを対象とした音声認識コマンド実行処理を起動し、
音声認識制御部2aは、同一画面表示処理において、ディスプレイ6に、「曲を探す」、「インターネット」等の標準コマンドを表示し、最初に表示する標準コマンドとしては、階層構造により階層化された所定の音声認識コマンドの中で、最上位階層の標準コマンドを表示し、次いで、適応コマンドを、同一画面表示コマンドとして、表示した標準コマンドと平行に表示し、
音声認識コマンド特定部2cは、ユーザからの音声認識コマンドの操作が所定時間以内にあったか否かをと同様に判定し、操作があった場合には、当該同一画面表示コマンド又は標準コマンドを対象とした音声認識コマンド実行処理を起動し、
また、各適応コマンドを個別的に表示する以外にも、例えば、「その他」という音声認識コマンドをディスプレイ6に表示し、当該音声認識コマンドが選択された場合には、その時点でディスプレイ6に表示していない他の適応コマンドをディスプレイ6に表示するようにしてもよい、ナビゲーション装置1。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、音声認識機能を有する装置やシステムに適用される音声認識装置、音声認識搭載装置、音声認識搭載システム、音声認識方法、及び記憶媒体に関するものである。
・・・(中略)・・・
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したように従来の音声認識機能では、音声認識開始スイッチ480をONに操作することで、今から操作キーワードを入力することを当該音声認識機能に対して認識させるように構成されている。すなわち、音声認識機能による動作指示のための操作キーワードの入力の開始(以下、「音声認識の開始」と言う)を、音声認識開始スイッチ480で行なうように構成されている。これは、常に操作キーワードの入力が可能な状態(音声認識開始スイッチ480がON状態)にしておくと、ある動作を実行させるための操作キーワード以外の、単なる同乗者との会話の音声や、ラジオから出力される音声、或いはノイズ等までもが、操作キーワードの認識の対象となってしまい、この結果、使用者が意図していない時に突然誤動作する可能性があるためである。
・・・(中略)・・・
【0011】
そこで、本発明は、上記の欠点を除去するために成されたもので、音声認識の開始をも音声入力で行えるように構成することで、操作性向上を図ることができ、さらには装置やシステム全体のコストダウン、及び音声認識機能の高性能化をも図ることができる、音声認識装置、音声認識搭載装置、音声認識搭載システム、音声認識方法、及び記憶媒体を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】 斯かる目的下において、第1の発明は、任意の機能に対して実行指示するための操作キーワードの音声入力を認識する操作認識手段と、上記操作認識手段での上記操作キーワードの認識動作開始を指示するための開始キーワードの音声入力を認識する開始認識手段とを備え、上記操作認識手段は、上記開始認識手段の認識結果に基づいて、上記操作キーワードの認識動作を開始することを特徴とする。」

上記記載(特に下線部)によれば、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。

〈引用文献2記載の技術事項〉
「常に操作キーワードの音声入力が可能な状態にしておくと、ある動作を実行させるための操作キーワード以外の、会話の音声や、ラジオから出力される音声、或いはノイズ等による誤動作する可能性があるため、これを防止するために開始キーワードの音声入力により音声認識の開始を行えるように構成する」


第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「音声検出部2b」は、「ユーザの発話音声を検出する音声検出手段」であるから、本願発明1の「音声を受け付ける音声受付部」に相当する。
(イ)引用発明の「音声認識制御部2a」は、「ディスプレイ6に地図を表示中であるか否かを判定し、表示中である場合地図に重畳表示コマンドを重畳表示するための地図重畳表示処理を起動し、一方、表示中でない場合、音声識別コマンドを選択するためのメニュー(以下、音声識別メニュー)をディスプレイ6に表示中であるか否を判定し、表示中である場合には、同一画面表示コマンドを表示するための同一画面表示処理を起動し」、「地図重畳表示処理」は、「ディスプレイ6に表示されている地図に、重畳表示コマンドを重畳表示し、重畳表示コマンドを重畳表示する際の表示領域は、ユーザにとって重要であると考えられる表示領域を除外した表示領域」であり、「同一画面表示処理」は、「ディスプレイ6に標準コマンドを表示し、最初に表示する標準コマンドとしては、階層構造により階層化された所定の音声認識コマンドの中で、最上位階層の標準コマンドを表示し、次いで、適応コマンドを、同一画面表示コマンドとして、表示した標準コマンドと平行に表示」するものであるから、本願発明1の「前記音声が所与の情報を表す場合に、画面に表されているゲームの場面が所定の場面であるか否かに応じて決定される、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理である第1の処理に対応付けられる第1のコマンドを示す第1のコマンド情報、又は、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理とは異なる第2の処理に対応付けられる第2のコマンドを示す第2のコマンド情報、のいずれか一方を、前記画面の表示内容に応じた当該画面内の位置に配置するコマンド情報配置部」と、「画面に表されている表示内容が所定の内容であるか否かに応じて決定される、第1の処理に対応付けられる第1のコマンドを示す第1のコマンド情報、又は、第1の処理とは異なる第2の処理に対応付けられる第2のコマンドを示す第2のコマンド情報、のいずれか一方を、前記画面の表示内容に応じた当該画面内の位置に配置するコマンド情報配置部」である点では共通するといえる。
(ウ)引用発明の「音声認識コマンド特定部2c」は、「ユーザの発話音声がマイク4を介して入力され音声検出部2bにて検出されたか否かを監視し、検出された場合には、当該検出された発話音声に、その時点でディスプレイ6に表示している重畳表示コマンドのいずれか一つが含まれているか否かを、公知の音声認識方法にて音声認識し、重畳表示コマンドが含まれている場合、音声認識コマンド特定部2cは、音声認識コマンドの操作があったものと判定し、当該重畳表示コマンドを対象とした音声認識コマンド実行処理を起動」し、「ユーザからの音声認識コマンドの操作が所定時間以内にあったか否かをと同様に判定し、操作があった場合には、当該同一画面表示コマンド又は標準コマンドを対象とした音声認識コマンド実行処理を起動」しているから、本願発明1の「前記第1の処理又は前記第2の処理を実行する処理実行部」であって、「前記第1のコマンド情報が前記画面に配置されており前記第2のコマンド情報が前記画面に配置されていない場合も、前記第2のコマンド情報が前記画面に配置されており前記第1のコマンド情報が前記画面に配置されていない場合も、前記音声受付部が受け付ける音声が前記第1コマンド情報を表す際には前記第1の処理を実行し、前記音声受付部が受け付ける音声が前記第2のコマンド情報を表す際には前記第2の処理を実行する」「処理実行部」と、「前記第1の処理又は前記第2の処理を実行する処理実行部」であって、「前記音声受付部が受け付ける音声が前記第1コマンド情報を表す際には前記第1の処理を実行し、前記音声受付部が受け付ける音声が前記第2のコマンド情報を表す際には前記第2の処理を実行する」「処理実行部」である点では共通するといえる。
(エ)引用発明の「ナビゲーション装置1」は、「「曲を探す」、「インターネット」等の標準コマンドを表示し」ているから、後述する相違点を除き、本願発明1の「エンタテイメント装置」に相当するといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、以下の一致点及び相違点があるといえる。

(一致点)
「音声を受け付ける音声受付部と、
画面に表されている表示内容が所定の内容であるか否かに応じて決定される、第1の処理に対応付けられる第1のコマンドを示す第1のコマンド情報、又は、第1の処理とは異なる第2の処理に対応付けられる第2のコマンドを示す第2のコマンド情報、のいずれか一方を、前記画面の表示内容に応じた当該画面内の位置に配置するコマンド情報配置部と、
前記第1の処理又は前記第2の処理を実行する処理実行部と、を含み、
前記処理実行部は、前記音声受付部が受け付ける音声が前記第1コマンド情報を表す際には前記第1の処理を実行し、前記音声受付部が受け付ける音声が前記第2のコマンド情報を表す際には前記第2の処理を実行する、
ことを特徴とするエンタテインメント装置。」

(相違点1)
本願発明1の「コマンド情報配置部」は、「前記音声が所与の情報を表す場合に、画面に表されているゲームの場面が所定の場面であるか否かに応じて決定される、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理である第1の処理に対応付けられる第1のコマンドを示す第1のコマンド情報、又は、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理とは異なる第2の処理に対応付けられる第2のコマンドを示す第2のコマンド情報、のいずれか一方を、前記画面の表示内容に応じた当該画面内の位置に配置する」ものであるのに対し、引用発明は、そのような構成は特定されていない点。

(相違点2〉
本願発明1の「処理実行部」は、「前記第1のコマンド情報が前記画面に配置されており前記第2のコマンド情報が前記画面に配置されていない場合も、前記第2のコマンド情報が前記画面に配置されており前記第1のコマンド情報が前記画面に配置されていない場合も、前記音声受付部が受け付ける音声が前記第1コマンド情報を表す際には前記第1の処理を実行し、前記音声受付部が受け付ける音声が前記第2のコマンド情報を表す際には前記第2の処理を実行する」ものであるのに対し、引用発明は、そのような構成は特定されていない点。

(2)判断
上記相違点1について検討する。
相違点1に係る本願発明1の「画面に表されているゲームの場面が所定の場面であるか否かに応じて決定される、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理である第1の処理に対応付けられる第1のコマンドを示す第1のコマンド情報、又は、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理とは異なる第2の処理に対応付けられる第2のコマンドを示す第2のコマンド情報、のいずれか一方を、前記画面の表示内容に応じた当該画面内の位置に配置する」という構成は、引用文献2に記載も示唆されていない。また、このような構成が、本願優先日前において周知技術であったともいえない。

したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2、3について
本願発明2、3は、上記相違点1に係る本願発明1の構成と同じ構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明4-6について
本願発明4-6は、上記相違点1に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-6は「画面に表されているゲームの場面が所定の場面であるか否かに応じて決定される、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理である第1の処理に対応付けられる第1のコマンドを示す第1のコマンド情報、又は、画面の表示内容をキャプチャしたキャプチャ画像を保存する処理とは異なる第2の処理に対応付けられる第2のコマンドを示す第2のコマンド情報、のいずれか一方を、前記画面の表示内容に応じた当該画面内の位置に配置する」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1、2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-08-27 
出願番号 特願2015-546646(P2015-546646)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 遠藤 尊志星野 昌幸  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 ▲吉▼田 耕一
稲葉 和生
発明の名称 エンタテインメント装置、表示制御方法、プログラム及び情報記憶媒体  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  

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