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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1343591 |
審判番号 | 不服2017-15131 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-10-11 |
確定日 | 2018-08-23 |
事件の表示 | 特願2015-173882号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月18日出願公開、特開2016- 26602号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年7月5日に出願した特願2012-151765号の一部を平成27年9月3日に新たな特許出願としたものであって、平成28年8月5日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月12日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年1月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月29日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年7月6日付け(発送日:同年7月11日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年10月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成29年10月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成29年10月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲、すなわち平成29年3月29日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下のとおり、補正後の特許請求の範囲の請求項1のものに補正する事項を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。 (補正前) 「遊技を行うことが可能な遊技機であって、 遊技の進行を制御する遊技制御手段と、 演出を制御する演出制御手段を備え、 ホール用操作を受け付けて前記ホール用操作に基づいて、消費電力を抑制するための節電モードを実行するか否かを設定可能であり、 前記演出制御手段は、前記遊技制御手段からの情報に基づいて遊技者の不在条件が成立したかを判定可能であり、前記節電モードを実行するように設定されているときに、遊技者の不在条件が成立したとの判定に基づいて、消費電力が前記節電モードを実行しないように設定されているときの消費電力よりも抑制した消費電力となるように少なくとも一部の演出を制御することを特徴とする遊技機。」 (補正後) 「遊技を行うことが可能な遊技機であって、 遊技の進行を制御する遊技制御手段と、 演出を制御する演出制御手段を備え、 ホール用操作を受け付けて前記ホール用操作に基づいて、消費電力を抑制するための節電モードを実行するか否かを設定可能であり、 前記演出制御手段は、 前記遊技制御手段からの情報に基づいて遊技者の不在条件が成立したかを判定可能であり、前記節電モードを実行するように設定されているときには、遊技者の不在条件が成立したとの判定に基づいて、消費電力が前記節電モードを実行しないように設定されているときの消費電力よりも抑制した消費電力となるように少なくとも一部の演出を制御し、 前記節電モードを実行しないように設定されているときには、遊技者の不在条件が成立したか否かに関わらず、消費電力を抑制した演出の制御を実行しないことを特徴とする遊技機。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「演出制御手段」について、「前記節電モードを実行しないように設定されているときには、遊技者の不在条件が成立したか否かに関わらず、消費電力を抑制した演出の制御を実行しない」との限定を付加するするものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、平成29年10月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(上記「1」の「(補正後)」の記載を参照。)であり、分説し、A)ないしF)の符号を付与すると、以下のとおりである。 「A) 遊技を行うことが可能な遊技機であって、 B) 遊技の進行を制御する遊技制御手段と、 C) 演出を制御する演出制御手段を備え、 D) ホール用操作を受け付けて前記ホール用操作に基づいて、消費電力を抑制するための節電モードを実行するか否かを設定可能であり、 E) 前記演出制御手段は、 前記遊技制御手段からの情報に基づいて遊技者の不在条件が成立したかを判定可能であり、前記節電モードを実行するように設定されているときには、遊技者の不在条件が成立したとの判定に基づいて、消費電力が前記節電モードを実行しないように設定されているときの消費電力よりも抑制した消費電力となるように少なくとも一部の演出を制御し、 F) 前記節電モードを実行しないように設定されているときには、遊技者の不在条件が成立したか否かに関わらず、消費電力を抑制した演出の制御を実行しない A) ことを特徴とする遊技機。」 (2)引用文献とそれに記載された事項 ア 引用文献1の記載事項 本願の出願前に頒布された特開2000-271324号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。以下同様。)。 引1-a 「【0008】本発明は、遊技者に対するサービス性を低下することなく、状況に応じた最適な電力制御を行うことができるパチンコ遊技機その制御方法およびパチンコ島の制御方法を提供することを目的としている。 【0009】 【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明に係るパチンコ遊技機は、電気装置を備えたパチンコ遊技機であって、前記パチンコ遊技機の遊技者を検出する遊技者検出手段と、この遊技者検出手段による検出状態に応じて、前記電気装置の電源を遮断又は低電力化する電源節約手段とを有し、前記遊技者検出手段は、前記パチンコ遊技機の前方所定の角度範囲の遊技者を検出可能に構成されていることを特徴とする。」 引1-b 「【0011】また、上述した電気装置とは、パチンコ遊技機に備えられたディスチャージランプと白熱ランプよりなる装飾ランプ、パチンコ遊技機に関する各種データを表示する液晶表示器等である。電気装置は、パルス状の電流を供給されて発光する装飾ランプを備え、前記電源節約手段が、装飾ランプに供給する電流のデューティ比を制御することにより、その装飾ランプの消費電力を低減させるものが好ましい。」 引1-c 「【0028】(1)第一実施形態 図1はパチンコ遊技機11の外観を、図2は同遊技機の内部回路を示す。 【0029】図において、パチンコ遊技機11は、図示しない釘や入賞口、及び複数列の図柄を可変的に表示する可変表示装置21等を備えた遊技盤23と、遊技盤23の遊技域23aに向けてパチンコ玉を発射するためのハンドル25と、遊技域23aへ発射するパチンコ玉を貯留し、入賞に応じた景品玉が排出される上部受け皿27と、上部受け皿27が満杯になったときオーバーフローしたパチンコ玉が排出される下部受け皿29とを備えている。 【0030】また、前記上部受け皿27の左側には、プリペイドカード41を挿入するためのプリペイドカード投入口41が設けられているとともに、上部受け皿27の内側には、該上部受け皿27内のパチンコ玉の有無を検出するパチンコ玉センサ46が設けられている。このパチンコ玉センサ46は、赤外線センサ、超音波センサ等により構成されている。 【0031】さらに、パチンコ遊技機11は、遊技盤23の周囲に設けられた台間部用の装飾ランプ51と、遊技盤23の上方に設けられた欄間部用の装飾ランプ53、呼出ランプ55、及び液晶表示器59と、受け皿27、29の左右に設けられたスピーカ57とを備えている。 【0032】なお、装飾ランプ51、53は、共に、多数のディスチャージランプ61及び白熱ランプ63(図2参照)を用いて構成され、このうちディスチャージランプ61は、図示しないポリカーボネート飾りに光線を入力させ、プリズムによって周囲に光を発散する。また、液晶表示器59は、パチンコ遊技機11に関する種々のデータ(例えば、スタート回数、大当り回数、遊技方法、他のパチンコ遊技機のデータ等)を表示する。 【0033】そして、遊技機11の中央上部、呼出しランプ55の下側には、遊技機11の前方所定範囲の遊技者を検出するために、第1人間センサ44が設けられ、この人間センサ44としては、センサ前方の走査範囲を広くとれる超音波センサ、焦電型赤外線センサ等が採用されている。また、下部受け皿29の前面には、第2人間センサ45が設けられ、この人間センサ45としては、走査範囲は狭いが検出精度の高い光センサ、赤外線センサ等が採用されている。 【0034】各人間センサ44、45の照射範囲は、第1人間センサ44が遊技機11に人が近づいた場合に検出がなされ、また第2人間センサ45は遊技機11の前面に設置される図示しない椅子に人が座った場合にこれを検出するものである。 【0035】次に、パチンコ遊技機11には省電力制御ボックス65が内蔵され、この省電力制御ボックス65は、前記人間センサ44、45、およびパチンコ玉センサ46の検出信号等に基づいて、後述する省電力制御を実行する。 【0036】省電力制御ボックス65は、CPU65a、ROM65b、RAM65c、入力インタフェース(入力I/F)65d、及び出力インタフェース(出力I/F)65eを、バスライン65fを介して互いに接続してなるマイクロコンピュータを主要部としており、前記各センサ44?46に入力インターフェース65dを介して接続し、出力インターフェース65eを介してインバータ83、デューティ比制御回路87に接続し、各センサからの入力状態に応じた制御指令を実行するほか、各インターフェース65d,65eにはそれぞれ外部入出力端子部90a,90bが接続されている。」 引1-d 「【0038】なお、パチンコ遊技機11には、前述の可変表示装置21の他、パチンコ玉の入賞を検出する入賞スイッチ67、上部に配設された図示しない補給経路からパチンコ玉を補給して入賞時にパチンコ玉を払い出す賞球装置69、パチンコ玉の所定の入賞時に大入賞口等を開閉する役物ソレノイド(役物SOL)71、ハンドル25の操作に応じてパチンコ玉を発射する発射装置73等が設けられ、これらの各装置はECU75と信号の送受信を可能に接続されている。なお、ECU75は、CPU75a、ROM75b、RAM75cを主要部とするマイクロコンピュータによって構成されている。 【0039】ECU75は、入賞スイッチ67の検出信号に応じて賞球装置69、可変表示装置21、役物ソレノイド71等を駆動して、所定の手順に従ってパチンコ遊技を進行する。また、ECU75は、この遊技の進行状況を表すイベントデータ(例えば、大当り信号等)を省電力制御ボックス65の入力インタフェース65dへ出力している。更に、入力インタフェース65dへは、このイベントデータの他、後述の種々の設定を行うための設定スイッチ77からの信号、及びパチンコ玉センサ46の検出信号が入力されている。」 引1-e 「【0043】上記実施形態において、省電力制御ボックス65が電源節約手段に、人間センサ44,45が遊技者検出手段に、パチンコ玉センサ46が遊技者操作検出手段に相当し、省電力制御ボックス65は、それぞれのセンサの出力を受けて、図3、4のフローチャートに示すごとく省電力制御を実行する。 【0044】なお、この処理に先立って、パチンコホールの管理者は、ディップスイッチなどの設定スイッチ77によって以下の設定を行っておく。ROM65bには、表1?3に例示するテーブルが記憶されている。すなわち、上記処理の開始に先立って、これらのテーブルを用いて次のような選択を行う。 【0045】 【表1】 【0046】 【表2】 【0047】 【表3】 」 引1-f 「【0052】そこで、表1のテーブルから、パチンコ遊技機11において必要な省電力モードを選択しておく。また、表2、表3のテーブルから、適当な立上がり設定時間A及び立ち下がり設定時間Bを選択しておく。この設定時間A、Bは、第1人間センサ44、第2人間センサ45、およびパチンコ玉センサ46の検出状態から、表1で示される省電力モードを実行するまでの時間であり、例えば、パチンコ玉センサ46でパチンコ玉が検出された場合、その状態が選択された設定時間Aだけ持続すると省電力モードが解除される。一方、パチンコ玉センサ46によりパチンコ玉が検出されなくなった場合、第1および第2人間センサ44、46で遊技者が検出されなくなった場合、その状態が選択された設定時間Bだけ持続すると、第1および第2人間センサ44、45、パチンコ玉センサ46の検出状態に応じた省電力モードが実行される。尚、本実施形態の場合、具体的には、表4に示すように設定される。 【0053】 【表4】 」 引1-g 【図1】 「 」 引1-h 【図2】 「 」 イ 引用文献1の記載より認定できる事項 (ア) 引1-cに示した段落【0032】の記載を参照すると、装飾ランプ51、53はディスチャージランプ61及び白熱ランプ63により構成され、また、引1-hに示した図2を参照すると、ディスチャージランプ61、白熱ランプ63及び液晶表示器59は、出力インタフェース(出力I/F)65eを介して省電力制御ボックス65に接続されていることから、装飾ランプ51、53及び液晶表示器59は、省電力制御ボックス65に接続されていると認められる。 (イ) 引1-cに示した段落【0036】の「前記各センサ44?46に入力インターフェース65dを介して接続し」の記載、及び、引1-hに示した図2を参照すると、第1人間センサ44、第2人間センサ45及びパチンコ玉センサ46の検出信号は入力インタフェース65dを介して省電力制御ボックス65に入力されることが理解できる。 (ウ) 引1-eに示した段落【0044】には「パチンコホールの管理者は、ディップスイッチなどの設定スイッチ77によって以下の設定を行っておく。」と記載されていることから、設定スイッチ77は、パチンコホールの管理者により設定されるものであることが理解でき、また、引1-fに示した段落【0052】に「表1のテーブルから、パチンコ遊技機11において必要な省電力モードを選択しておく。」と記載されていることから、設定スイッチ77によって、表1に示された省電力モード1、2、3…のモードから、必要な省電力モードが選択される点が理解できる。 (エ) 引1-fに示した段落【0052】の「パチンコ遊技機11において必要な省電力モードを選択しておく。」との記載に基づき、必要な省電力モードとして1ないし3が選択された場合に、段落【0053】の【表4】に示されるように、省電力モード1が、全電気量の使用電力が省電力モード解除時の80%であり、省電力モード2が、同じく50%、省電力モード3が、同じく30%であることが理解できることから、(1)第1人間センサ44が「遊技者検出」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出」の検出信号を送る場合に、省電力モードが解除され、(2)第1人間センサ44が「遊技者検出」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出せず」の検出信号を送る場合に、省電力モード1が選択され、全電気量の使用電力が省電力モード解除時の80%とされ、(3)第1人間センサ44が「遊技者検出」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出せず」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出せず」の検出信号を送る場合に、省電力モード2が選択され、全電気量の使用電力が省電力モード解除時の50%とされ、(4)第1人間センサ44が「遊技者検出せず」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出せず」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出せず」の検出信号を送る場合に、省電力モード3が選択され、全電気量の使用電力が省電力モード解除時の30%とされることが記載されていると認められる。 ウ 引用発明 上記引1-aないし引1-hに摘記した引用文献1の記載事項、及び、イ(ア)ないし(エ)において認定した事項を含む引用文献1全体の記載を総合すると、引用文献1には、 「a) 釘や入賞口、及び複数列の図柄を可変的に表示する可変表示装置21等を備えた遊技盤23と、遊技盤23の遊技域23aに向けてパチンコ玉を発射するためのハンドル25と、上部受け皿27と、下部受け皿29とを備えたパチンコ遊技機11であり、上部受け皿27の内側には、該上部受け皿27内のパチンコ玉の有無を検出するパチンコ玉センサ46が設けられ、パチンコ遊技機11は、遊技盤23の周囲に設けられた台間部用の装飾ランプ51と、遊技盤23の上方に設けられた欄間部用の装飾ランプ53、及び液晶表示器59と、スピーカ57とを備え、遊技機11の中央上部、呼出しランプ55の下側には、遊技機11の前方所定範囲の遊技者を検出するために、第1人間センサ44が設けられ、下部受け皿29の前面には、第2人間センサ45が設けられ(【0029】、【0032】、【0033】、図1)、 b) パチンコ遊技機11には、可変表示装置21の他、パチンコ玉の入賞を検出する入賞スイッチ67、入賞時にパチンコ玉を払い出す賞球装置69、パチンコ玉の所定の入賞時に大入賞口等を開閉する役物ソレノイド(役物SOL)71、ハンドル25の操作に応じてパチンコ玉を発射する発射装置73等が設けられ、これらの各装置はECU75と信号の送受信を可能に接続され、ECU75は、CPU75a、ROM75b、RAM75cを主要部とするマイクロコンピュータによって構成されており、ECU75は、入賞スイッチ67の検出信号に応じて賞球装置69、可変表示装置21、役物ソレノイド71等を駆動して、所定の手順に従ってパチンコ遊技を進行し(【0038】、【0039】)、 c-1) パチンコ遊技機11には省電力制御ボックス65が内蔵され(【0035】)、 c-2) 省電力制御ボックス65は、CPU65a、ROM65b、RAM65c、入力インタフェース(入力I/F)65d、及び出力インタフェース(出力I/F)65eを、バスライン65fを介して互いに接続してなるマイクロコンピュータを主要部としており(【0036】)、 c-3) 装飾ランプ51、53及び液晶表示器59は、出力インタフェース(出力I/F)65eを介して省電力制御ボックス65に接続され(図2、イ(ア))、 c-4) ECU75は、この遊技の進行状況を表すイベントデータ(例えば、大当り信号等)を省電力制御ボックス65の入力インタフェース65dへ出力し(【0039】)、 c-5) 入力インタフェース65dへは、種々の設定を行うための設定スイッチ77からの信号、第1人間センサ44、第2人間センサ45及びパチンコ玉センサ46の検出信号が入力され(【0039】、イ(イ))、 d) ディップスイッチなどの設定スイッチ77は、パチンコホールの管理者により設定されるものであり、設定スイッチ77によって必要な省電力モードが選択され(【0043】、【0052】、イ(ウ))、 e-1) 省電力制御ボックス65は、第1人間センサ44、第2人間センサ45、およびパチンコ玉センサ46の検出信号等に基づいて、省電力制御を実行するものであり(【0035】)、 e-2) (1)第1人間センサ44が「遊技者検出」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出」の検出信号を送る場合に、省電力モードが解除され(【0052】、【0053】、イ(エ))、 e-3) (2)第1人間センサ44が「遊技者検出」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出せず」の検出信号を送る場合に、全電気量の使用電力が省電力モード解除時の80%とされ、(3)第1人間センサ44が「遊技者検出」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出せず」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出せず」の検出信号を送る場合に、全電気量の使用電力が省電力モード解除時の50%とされ、(4)第1人間センサ44が「遊技者検出せず」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出せず」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出せず」の検出信号を送る場合に、全電気量の使用電力が省電力モード解除時の30%とされる(【0052】、【0053】、イ(エ)) a) パチンコ遊技機11。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (3)本願補正発明と引用発明との対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア 本願補正発明のA)の特定事項について 引用発明の「a) 釘や入賞口、及び複数列の図柄を可変的に表示する可変表示装置21等を備えた遊技盤23と、遊技盤23の遊技域23aに向けてパチンコ玉を発射するためのハンドル25と、上部受け皿27と、下部受け皿29とを備えたパチンコ遊技機11」は、遊技を行うことが可能であることは明らかであるので、本願補正発明の「遊技を行うことが可能な遊技機」に相当する。 イ 本願補正発明のB)の特定事項について 引用発明のb)において「ECU75は、入賞スイッチ67の検出信号に応じて賞球装置69、可変表示装置21、役物ソレノイド71等を駆動して、所定の手順に従ってパチンコ遊技を進行」するものであるから、引用発明の「入賞スイッチ67の検出信号に応じて賞球装置69、可変表示装置21、役物ソレノイド71等を駆動して、所定の手順に従ってパチンコ遊技を進行」する「ECU75」は、本願補正発明の「遊技の進行を制御する遊技制御手段」に相当する。 ウ 本願補正発明のC)の特定事項について 引用発明のc-3)において「装飾ランプ51、53」が何らかの演出に寄与することは、当業者にとって明らかである。そして、「c-3) 装飾ランプ51、53及び液晶表示器59は、出力インタフェース(出力I/F)65eを介して省電力制御ボックス65に接続され」るものであり、「装飾ランプ51、53」の制御は、省電力制御ボックス65により行われるものであるから、引用発明の「出力インタフェース(出力I/F)65eを介して」「装飾ランプ51、53」が「接続され」た「省電力制御ボックス65」は、本願補正発明の「演出を制御する演出制御手段」に相当する。 エ 本願補正発明のD)の特定事項について (ア) 引用発明のd)の「パチンコホールの管理者」による「設定」は、本願補正発明の「ホール用操作」に相当し、「パチンコホールの管理者により設定される」のであれば、「パチンコホールの管理者」の操作を受け付けて設定可能であることは明らかであるから、引用発明と本願補正発明とは、「ホール用操作を受け付けて前記ホール用操作に基づいて、」「設定可能であ」る点で一致する。 (イ) 引用発明の「設定スイッチ77によって必要な省電力モードが選択され」ることと、本願補正発明の「消費電力を抑制するための節電モードを実行するか否かを設定」することは、「消費電力を抑制するための節電モード」を設定する点で両者は一致する。 (ウ) よって、引用発明と本願補正発明とは、「ホール用操作を受け付けて前記ホール用操作に基づいて、消費電力を抑制するための節電モードを」「設定可能であ」る点で共通する。 オ 本願補正発明のE)の特定事項について (ア) 引用発明のe-1)における「第1人間センサ44」及び「第2人間センサ45」は、「遊技者を検出」するためのものであり、また、「パチンコ玉センサ46」は「上部受け皿27内のパチンコ玉の有無を検出する」ものであって、この「パチンコ玉の有無を検出する」ことが、遊技が行われているか否かを検出するためのものであることは、当業者にとって明らかである。 (イ) 引用発明のe-2)及びe-3)における、「(1)第1人間センサ44が「遊技者検出」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出」の検出信号を送る場合」、「(2)第1人間センサ44が「遊技者検出」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出せず」の検出信号を送る場合」、「(3)第1人間センサ44が「遊技者検出」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出せず」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出せず」の検出信号を送る場合」、及び、「(4)第1人間センサ44が「遊技者検出せず」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出せず」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出せず」の検出信号を送る場合」は、それぞれ、遊技者の有無及び遊技が行われているか否かに応じた「場合分け」である。 したがって、引用発明の上記(1)ないし(4)のそれぞれの「場合」は、本願補正発明の「遊技者の不在条件」に相当する。 (ウ) 引用発明において、上記(イ)で示した上記(1)ないし(4)の「場合分け」は、「第1人間センサ44、第2人間センサ45、およびパチンコ玉センサ46の検出信号に基づ」き、「省電力制御を実行する」ための条件を設定するためのものであり、その「場合分け」は、c-5)において、「入力インタフェース65d」に「第1人間センサ44、第2人間センサ45及びパチンコ玉センサ46の検出信号が入力され」ることから、「省電力制御ボックス65」で行われることは当業者にとって明らかである。 よって、引用発明の「e-1) 省電力制御ボックス65は、第1人間センサ44、第2人間センサ45、およびパチンコ玉センサ46の検出信号に基づいて、省電力制御を実行する」ことと、本願補正発明の「前記演出制御手段は、」「遊技者の不在条件が成立したかを判定可能であり、」「判定に基づいて、」「少なくとも一部の演出を制御」することとは、演出制御手段は、遊技者の不在条件が成立したかを判定可能であり、判定に基づいて、少なくとも一部の演出を制御する点で一致する。 (エ) 引用発明のe-2)において、「省電力モード解除時」の「使用電力」は、本願補正発明の「節電モードを実行しないように設定されているときの消費電力」に相当する。 (オ) 引用発明のe-3)における(2)の「全電気量の使用電力が省電力モード解除時の80%」、(3)の「全電気量の使用電力が省電力モード解除時の50%」、及び、(4)の「全電気量の使用電力が省電力モード解除時の30%」は、本願補正発明の「消費電力が前記節電モードを実行しないように設定されているときの消費電力よりも抑制した消費電力」に相当し、また、引用発明において、「省電力制御を実行する」ことは、本願補正発明の「節電モードを実行しないように設定されているときの消費電力よりも抑制した消費電力となるように少なくとも一部の演出を制御」することに相当する。 そして、引用発明の上記(イ)で示した上記(2)ないし(4)のそれぞれの「場合」は、本願補正発明の「遊技者の不在条件が成立した」場合に相当する。 (カ) 以上のことから、引用発明の「e-1) 省電力制御ボックス65は、第1人間センサ44、第2人間センサ45、およびパチンコ玉センサ46の検出信号に基づいて、省電力制御を実行するものであり、e-2) (1)第1人間センサ44が「遊技者検出」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出」の検出信号を送る場合に、省電力モードが解除され、e-3) (2)第1人間センサ44が「遊技者検出」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出せず」の検出信号を送る場合に、全電気量の使用電力が省電力モード解除時の80%とされ、(3)第1人間センサ44が「遊技者検出」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出せず」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出せず」の検出信号を送る場合に、全電気量の使用電力が省電力モード解除時の50%とされ、(4)第1人間センサ44が「遊技者検出せず」の検出信号を送り、第2人間センサ45が「遊技者検出せず」の検出信号を送り、パチンコ玉センサ46が「検出せず」の検出信号を送る場合に、全電気量の使用電力が省電力モード解除時の30%とされる」点と、本願補正発明の「E) 前記演出制御手段は、前記遊技制御手段からの情報に基づいて遊技者の不在条件が成立したかを判定可能であり、前記節電モードを実行するように設定されているときには、遊技者の不在条件が成立したとの判定に基づいて、消費電力が前記節電モードを実行しないように設定されているときの消費電力よりも抑制した消費電力となるように少なくとも一部の演出を制御」する点とは、演出制御手段は、遊技者の不在条件が成立したかを判定可能であり、遊技者の不在条件が成立したとの判定に基づいて、消費電力が前記節電モードを実行しないときの消費電力よりも抑制した消費電力となるように少なくとも一部の演出を制御する点で共通する。 カ 本願補正発明のF)の特定事項について 引用発明は、本願補正発明のF)の特定事項を有さない。 以上のことから、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「A) 遊技を行うことが可能な遊技機であって、 B) 遊技の進行を制御する遊技制御手段と、 C) 演出を制御する演出制御手段を備え、 D') ホール用操作を受け付けて前記ホール用操作に基づいて、消費電力を抑制するための節電モードを設定可能であり、 E') 前記演出制御手段は、遊技者の不在条件が成立したとの判定に基づいて、消費電力が前記節電モードを実行しないときの消費電力よりも抑制した消費電力となるように少なくとも一部の演出を制御する 遊技機。」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1> 節電モードの設定に関して、本願補正発明は、消費電力を抑制するための節電モードを実行するか否かを設定可能とし、前記節電モードを実行しないように設定されているときには、遊技者の不在条件が成立したか否かに関わらず、消費電力を抑制した演出の制御を実行しないのに対して、引用発明は、節電モードを実行するか否かを設定可能であるかは不明である点。 <相違点2> 遊技者の不在条件が成立したか否かの判定が、本願補正発明は、遊技制御手段からの情報に基づいて行われるのに対して、引用発明は、そのような構成とされていない点。 (4)当審の判断 ア 相違点についての検討 (ア) 相違点1について 引用発明は、「パチンコホールの管理者」が、「ディップスイッチなどの設定スイッチ77」により、必要な省電力モードを選択するものである。 そして、ディップスイッチは、通常、複数のスイッチが並べられることにより、オン・オフを切り替えるものであるから、「パチンコホールの管理者」が、必要な省電力モードを選択するにあたって、「省電力モード」を実施する必要が無い場合に、「省電力モード」をいずれも選択しないようにディップスイッチを設定することは、当業者が適宜なし得る程度のことである。 また、「省電力モード」が、いずれも選択されないのであれば、常に「省電力モード」が「解除」の状態となることから、本願補正発明の上記相違点1に係る構成である「節電モードを実行しないように設定されているときには、遊技者の不在条件が成立したか否かに関わらず、消費電力を抑制した演出の制御を実行しない」点は、自ずと導き出せるものである。 よって、本願補正発明の上記相違点1に係る構成は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎず、それによってもたらされる作用効果も格別なものとはいえない。 (イ) 相違点2について 遊技者の有無及び遊技が行われているか否かを判別するにあたって、遊技制御手段からの情報を用いることは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-38833号公報(段落【0051】等を参照。)、特開2003-205077号公報(段落【0058】、【0059】等を参照。)、特開2004-147944号公報(段落【0107】等を参照。)などに記載されているように、本願出願遡及日前において周知の事項である。 したがって、引用発明において、第1人間センサ44、第2人間センサ45、およびパチンコ玉センサ46の検出信号に基づいて、遊技者の有無及び遊技が行われているか否かを判別し、遊技者の不在条件が成立したか否かの判定を行うのに代えて、上記周知の事項を適用し、本願補正発明の上記相違点2に係る構成を成すことは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。 イ 本願補正発明の奏する作用効果 本願補正発明によってもたらされる効果は、引用文献1に記載された事項、及び、上記周知の事項から、当業者が予測し得る程度のものである。 (5) 小括 よって、本願補正発明は、引用発明、及び、周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 むすび 以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成29年10月11日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成29年3月29日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(上記「第2」[理由]「1」の「(補正前)」の記載を参照)(以下「本願発明」という。)である。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2000-271324号公報 引用文献2:特開2003-38833号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3:特開2003-205077号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4:特開2004-147944号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献とそれに記載された事項 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、上記第2[理由]2(2)アないしエに記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、「前記節電モードを実行しないように設定されているときには、遊技者の不在条件が成立したか否かに関わらず、消費電力を抑制した演出の制御を実行しない」との限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-06-25 |
結審通知日 | 2018-06-26 |
審決日 | 2018-07-09 |
出願番号 | 特願2015-173882(P2015-173882) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小泉 早苗、河本 明彦 |
特許庁審判長 |
平城 俊雅 |
特許庁審判官 |
井海田 隆 ▲高▼橋 祐介 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 木村 満 |